>ゲイザーの子が気になった
新学期、そして新しいクラス。その発表は今日だ。
なのに遅刻しそうで焦っていた僕は、玄関から下駄箱への道で勢いよく誰かにぶつかってしまった。
その時かすかに聞こえた声は女の子のものだったので、更に僕は焦ってしまう。
「いてて……ったく、どこに目ェ付けてんだオマエ!」
床にお尻を付いたその姿は確かに女性で、そして人間ではなかった。
学校ではとても珍しいゲイザーという種族の子で、真っ赤な一つ目と背中の触手と尾が特徴だ。
本か何かで見た以外では実物は初めてだったが、今は遅刻ギリギリでそれどころではない。
僕は謝るのもそこそこに、新しい教室へと走っていってしまった。
――新しいクラスになり、生徒の組み合わせも変わる事で、教室はわいわいとざわついていた。
僕の席は一番後ろのひとつ前。しかも窓側の端っこ。
前と横には口ぶりからして既に彼氏持ちらしい魔物娘さん達が座っている。
僕の後ろには誰が座るんだろう、と思って待っていると、
「……オマエ、さっきぶつかってきたヤツか」
今日の朝、下駄箱前でぶつかってしまったゲイザーの子が座ってきた。
とりあえずもう一度改めて謝ってみる。
「はんっ、今さら遅いっての。今日の分はこれから返してやるからな、覚えてろよ」
そう言って彼女は不機嫌そうに自分の椅子に座った。うねうねと触手が動いている。何本かはあてつけのようにこっちをぎっと睨んだ。気がする。
彼女が一番後ろの席になったのはたぶん、この触手が前の人の視界を妨げてしまうからだろう。
……今思うと、背中の触手はどうやって制服から出しているんだ?
気になる。
「んだよ、じろじろ見んなっつの。そんなにあたしが目障りか?」
そうじゃない、と否定しながら僕も自分の席に座る。
それを知るのはもう少し警戒を解いてもらってからになりそうだ。
――次の日。
クラス替え次の日の昼食はやはり賑わう。とはいっても、それは教室の外の話。
教室はあくまで授業用、という雰囲気があって、教室以外の場所に食べに行く生徒がほとんどだ。
それに魔物娘たちもそれぞれ生態が違うので、各々自分にとって心地のいい場所に行きたがる。
なので、僕みたいにお弁当を持ってきて、それを教室で食べる生徒はかなり少ない。
気が付くと、僕達の教室には生徒が三、四人残っているぐらいだった。
後ろを振り向くと、彼女は手持ちぶさたそうに手元の瓶をいじくっていた。
触手に付いた目の何本かはこっちを見ていたような気がするが、彼女自身が動く様子はない。
僕は自分の座る椅子をくるりと動かして、彼女の机にお弁当を載せる。
「……おい、何のマネだよ」
せっかくだから、一緒にご飯でもと思って。
「オマエな、あたしらが何食うか分かって言ってんのか?
ベツにニンゲンの飯だって食えるけどよ、それじゃ腹の足しにならねえんだ」
というと?
「だから、男の……精を取るってことだよ」
あー、そうか、そうだっけ。
ってことはもしかして、君の手元の瓶の中身は……。
「いいや、こいつは紛いモンだ。ゼンゼン味がなくてひでえもんさ。
……ところで」
うん?
「わざわざあたしに、食いモンの話してきたんだ。
カクゴはできてるよな?」
え? えーっと、
「ばあか、冗談だよ。誰がオマエなんかに頼むかっての」
……そっか。
とりあえず、ウチで作ったコロッケ、どうかな。自信作なんだけど。食べてみない?
「オマエ、人の話聞いてんのか……」
次の日。
昨日と同じで、彼女も僕も教室にいる。
後ろを振り向くと、昨日と同じような瓶を持って彼女が座っていた。
僕が見ているのに気づくと、眉をしかめて軽く睨んでくる。不機嫌にも見えるけれど、なぜかそうじゃない気がした。
「……あんだよ」
僕は返事はせず、くるりと椅子を動かし、ゲイザーである彼女の机に弁当箱を置くという行動で答える。
とりあえず、今日の朝焼いた鮭はどうだろう。
「いらねえよ。食べるもんが違うって前言ったろ」
にべもなく断られたので少し傷付いた。
でもこちらのお弁当をちらちらと――特に触手の方の目はよく見ているので、全く興味がないという訳でもなさそうだ。
食べたいかどうかは別だけど。
「……どうしてもってんなら、オマエのセイエキ、よこせよ」
元々大きい声で喋る方ではなかったけど、いつもより小さい声。
え、ここで? と反射のように僕は聞き返す。
「ばっ、バカ! んなわけないだろ!」
思わず大きな声が出てしまったらしい、慌てて彼女は周りに目線をやる。
ばつの悪そうな彼女の顔を見るのは珍しい。
もう教室にはほとんど人が残っていないのに。
「しゃあねえな……ったく」
手元で弄っていた瓶を机に置くと、彼女は教室から出ていってしまった。
トイレにでも行ったのかなと思いながら、僕は黙々とごはんを食べる。
すると、五分ほどで彼女は戻ってきた。
「それ食い終わったら、ちょっと付き合え」
彼女はそれだけ口にして、机の上の瓶を自分のカバンにしまった。
お昼休みは後三十分ほど、という所で、僕と彼女は一緒に教室から出ていく。
どこに行くかは全く聞いておらず、僕は彼女に付いていくだけだ。
着いた場所は三階の端っこの教室で、ネームプレートがない。今は空き部屋ということだ。中は一応教室という感じだけどスペースは小さく、普通の教室の半分もない。机や椅子も並べては置かれてないので、どちらかというと物置場所にさえ見える。
でも今その中に居るのは僕と彼女だけなので、それでも広く感じた。
「……ここならモンクないだろ。 誰も見てないからな」
部屋の中を僕が見て回っていると、彼女が後ろ手に引き戸を閉めながらそう言った。
たとえここが物置だったとしても、カギを掛けずに放置されているはずはない。たまたま開いていたのか、どうにかして鍵を手に入れたのか。
”暗示”という彼女達ゲイザーの能力を考えれば、おのずと答えは出てきそうだった。
彼女は我が物顔で部屋の中心に立つと、僕に「座れ」と言った。
言われるまま、僕は床に座る。
「でも、ま……あたしのカオじゃ、オマエもコーフンできないか。
だからこーしてやるよ、っと」
あぐらをかいて床に座った僕の背中から、彼女が体を寄せてくる。
背中から柔らかい色んな感触がして、同時に普通の女の子とは違う独特な匂いが漂った。
僕の肩に顎をのせて、両脇の下から腕を入れてくる。彼女の声色と香りがすぐ傍にある事を意識して、それらが普段の何倍も鮮明に感じる。
さわさわと僕の首筋を撫でる彼女の長い黒髪、僕の身体をまさぐる黒い両手、耳元で響く少し低い声。どれもが記憶に焼き付きそうなほど、僕は緊張していた。
「お? なんだ、元気がいいな。もう大きくしてるじゃんか……?」
彼女は両手で僕の股間をまさぐり始め、器用にチャックを降ろす。さらに下着もずらすと、ペニスが勢いよく跳ねて出てきた。
すぐさま彼女の真っ黒い指が竿に伸びて、ぐにぐにと触り始める。
「ほらほら、ベツに声出しちゃってもいいんだぜ」
楽しそうに声を跳ねさせながら彼女はペニスをくにくにと擦る。その刺激だけでも身体が震えそうだったが、不意にペニスに触れる手の感触が変わる。
ふっと下を見ると、彼女の両手に付着している黒い塊がどろっとしたスライムのように変化していた。
「驚いたか? その黒いのはあたしの魔力の塊でな、ある程度あたしの自由に動かせるんだ。
つまり――こういうことさ」
不思議な感触の黒い塊が僕のペニスにぐるっと纏わりつく。亀頭はもちろん、尿道口の先っぽから、裏筋、竿の一番下まで万遍なくだ。黒いスライムは彼女の手に張り付いていたせいか、まだ温もりが残っていて温かい。
僕のペニスを包み込んだ形になった黒いスライムごと、彼女は僕のペニスをぐちゃぐちゃと上下に扱きあげる。いわゆるオナホールのようなもので責められている気分だ。中に突起やヒダはないので刺激としては単一だけど、そのスライムの不思議な感触はどうしようもなく気持ちがいい。しかも中の温度もほの熱く、まるで女性器に挿入しているようだった。
それになぜか一擦りごとにペニスが熱くなり、神経が敏感になっていく気がした。
「んふふ、息、荒くなってるぜ。ほら、出しちまえよ……っ!」
黒いスライムを上下させるスピードが徐々に上がっていく。さらに彼女は僕の耳を優しく甘噛みしてきた。
不意の刺激に僕はついに声を出してしまい、同時にスライムの中でびくん、と射精してしまう。
僕の反応から射精してしまったことは分かっているはずなのに、彼女はさらにぐにゅりとペニスをしごきあげる。まるで残っている一滴まで絞り出そうとするかのように。
射精直後で敏感になったペニスをさらに擦りあげられ、腰が砕けそうだった。
「ははっ、三分も持たなかったな。
さーてと、っと……」
荒い息を整える僕を後目に、彼女は黒いスライムをペニスから抜く。ちゅぽん、と音を立てて抜けた。固形のように固まったそれは、とても分厚いコンドームのようにも見えた。
ふと下を向くと、僕のペニスは何事もなかったかのように綺麗で、精液や汁はほとんど付着していない。
彼女はスライムの中を覗き込んで鼻を近づける。彼女の表情が変わりそうになったがガマンしたように唇をきゅっとすぼませ、今一度彼女は僕の方を向いた。
「あ……味見するだけだ。
いつも飲んでるアレよりはマシそうだからな」
僕は何も言っていないけれど、彼女はどこか早口で、僕を見ながらそう言った。
彼女は指をスライムの中に入れ、白い液体をすくい、それを小さく出した唇でぺろっと舐める。
その液体が僕の出したモノだと知っている僕は、目の前でそれを咀嚼されることをどこか気恥ずかしく思った。
「ん、……っ」
ぱちぱちと彼女が瞬きをした。そして目の焦点がずれたように、一瞬だけぼんやりと表情を崩した。
思い出したように、彼女はもう一度指で白い液体をすくい出す。
そしてそれを素早く口の中へ。
「……ふぅっ、あっ……。 ……あ、」
まるで僕が今突然現れたかのように、彼女は驚いた表情で声を上げた。
「な、何見てんだよ! ほら、さっさと出てけッ!」
有無を言わさず彼女に押していかれ、僕は部屋の外へ放り出された。
さらに中から鍵が閉められたらしく、開けられない。
「あたしは用があるから……その、とにかくオマエは教室に帰ってろ!」
という返事が返ってきたので、おとなしく自分の教室に戻る。
――次の日の、お昼休み。
やっぱり昨日と同じで、彼女も僕も教室にいる。
後は昼寝をしている(寝ているのはいつもだけど)ドーマウスの子と、誰かを待っているようなリザードマンの子ぐらい。
今日は僕が椅子を動かす前からこっちを見ていたらしく、振り返った瞬間に彼女と目が合った。
くるりと椅子を動かして、ゲイザーである彼女の机に僕は弁当箱を置く。
「なんだよ」
いや、今日も一緒に食べようと思って。
「だからな、オマエとあたしじゃ食べるモンが違うって何べん言ったら――」
まあそう言わずに食べてみてよ。今日の手作りは卵焼きしかないけど。
「……ま、くれるってなら貰ってやるよ」
はい、どうぞ。
「……は、箸も貸せよ。自分で取るから」
あ、ごめん。
「ったく……んぐんぐ、……うーん、味は分かるんだけどなあ。
やっぱり……物足んないな」
そういう物なのか。人間と魔物って結構違うんだね。
「そりゃそうだろ。外見が違えば中身だって変わるっての」
そうだね。君は特に、目が一つしかないし。
「るっせえ。あたしだって、好きでこんな見た目になってねえよ」
あ、ちょっと。
卵焼き、一つは残しといて欲しかったのに……。
「あ……わ、わりい」
――その日の放課後。
「……おい。ちょっと、こっち来い」
言われるままに僕は彼女に付いていく。
どこに行くのだろうと思っていたら、前も行った事のある、三階の端っこの教室に連れて行かれた。
彼女は僕に背を向けたまま、その部屋の中で話しかけてくる。
「えーっと……そうだ、昼の卵焼きのアレだけどよ。
あたしだけ人のモン貰うってのは気分良くねえんだよ……特に、オマエなんかからは!」
振り返って、彼女が僕をきっ、と睨む。
「……あ、」
ただ思ったより距離が近すぎたのか、彼女はすぐに目を逸らし、頬を赤くさせながら少しだけ後ろに下がった。
触手の動きもあんまり安定していないようで、感情を表す点はまるで犬や猫の尻尾のように思えた。
「だ、だから、今日は気分がイイからトクベツに、特別にだぞ?
オマエのアレを手伝ってやるよ」
アレ……っていうのはもちろん、やっぱり?
「い、いいからそこの椅子に座れ! そんで、目ェ瞑れ! 開けるなよ!」
う、うん。これでいいかな。
「えっと、確か……」
そう言いながら彼女が僕のズボンに触れる感触がして、さらにジッパーを降ろしていくのが分かった。そのまま彼女は僕の下着をずらして、中に指を入れてくる。
下着の中にあるペニスが彼女の指と触れて、びくっと反応してしまう。
突然の事でびっくりしたけれど、僕は息を止めたまま何も言えない。
「よ、よーし。ゼッタイ目ェ開けるなよ……」
外に引っ張り出されたペニスに、温い吐息のようなものが当たる。
柔らかい指で上下にしゅっしゅっと擦られて、同時に液体のようなものが僕のペニスに纏わりつく。おそらく彼女の唾液だろう。
「はぁむ、っん、」
温い口内にペニスがじんわりと包まれ、ざらっとした舌が万遍なく表面をにゅるりと撫でていく。
誰かに自分の性器を、ましてや口で丹念に愛撫されるなんてことが僕にとっては初めてで、それはあまりに刺激的だった。
「んぐっ、ぷはっ」
正直に言うと、僕は薄らと目を開けてしまった。
いくら以前のコトがあったとはいえ、どちらかというと授業中や放課後は僕につっけんどんな態度を取る彼女が、本当にそんな事をしているのだろうかと。
薄暗い視界の中に見えたのは、僕の股間に顔を近づける彼女の、繊細に流れる黒髪だった。
その光景にはどこか現実感がなく、けれど現実的な生々しい快感が確かに温もりを伴って伝わるのだ。
「んぅ、ん。ちゅっ、ふぅっ」
彼女の熱烈な口淫は勢いを緩めず、僕のペニスを舐め溶かそうとするかのように、舌を絡みつけてぐにゅぐにゅと這い回る。
限界が近い事を伝えると、追い打ちをかけるようにペースを上げていく。
玉袋を優しく撫でながら、じゅぷじゅぷと上下運動を繰り返して竿全体を熱い唇と舌とで擦りあげられ、堪らず僕は声を上げて射精してしまう。
「――っ、じゅるっ、ん、はぁっ」
ペニスの中に残った精液まで吸い出そうとするように、彼女が唇を窄ませるのが伝わる。
その刺激がまた耐え難く僕の腰が浮いてしまいそうで、目を閉じたフリをすることを忘れそうにさえなった。
「ふぅ、うっ……。
”直接”は、やっぱり違うな。瓶詰めの出来損ないなんて……比べ物にならねェよ」
目をきっちりと閉じなおした僕の目前に、彼女が顔をぐっと近づけるのが声の伝わり方で分かった。
「……一応、念を押しとくぞ。
今回のはただの気まぐれだ、調子乗って他のヤツにテキトー言いふらすなよな。
もし余計なコトしたら、あたしの”眼”で……わ、分かったな!」
口ぶりは少し怒っているようにも感じる。
彼女は今、どんな顔を、表情をして僕に話しかけているのだろう。
目を開けたいけれど、それは本当に彼女との約束を破る気がして、何故かできなかった。
少し経って、がたがたと机の揺れる音と、部屋の扉を閉める音がした。
恐る恐る目を開けてみると、もう彼女は部屋のどこにも居なかった。
その翌日。
彼女は何の気なしに登校してきているように見えたが、僕はというと内心そうでもない。
何しろ僕には彼女が出来た経験もないのだから、昨日の体験はあまりに刺激的だった。
一度ならず二度までも、それもあんなに丁寧に、優しく。
彼女にとって、その行為はどんな意味を、どれだけの意味を持つのだろう?
もちろん僕が初めてではないはずだ。
そして、それは彼女にとっての食事である。僕がお弁当を食べるのと変わりはない。
けれど、
「おい」
普段から周りと話さない彼女にとって、それは多少なりとも特別な行為だったように思える。
「……昼飯なら、たまには外に行こうぜ」
彼女は立ち上がって、僕の返事は聞かないまま教室の外へ向かっていった。
付いて行った先にあるのは昨日と同じ、三階の端にある空き部屋だ。
カーテンは閉まっていて、もちろん先客は誰もいない。僕と彼女だけがそこにいた。
適当な机と椅子を持ってきて、二人で向かい合って座る。それは教室と同じで、ただいつもよりも静かなだけだった。
「今日の弁当は?」
残念だけど今日は冷凍食品ばっかりかな、と僕が言うと、彼女はそうかと言って窓の外を見た。
何回か学校のコトで話をしてみるけれど、いつもより上の空な返事が多い。
というより、何かを考えているような、悩んでいるような仕草。
「……なぁ。
今日も、いいか?」
僕がお弁当を食べ終えペットボトルのお茶に口を付けたところで、彼女が言った。
前後の文脈を無視した唐突な一言。しかし僕にはその意味が良く伝わった。
でも、僕がされるばかりではなんというか不公平かも、とそんな感じの事を言ってみる。
「……」
予想に反して、彼女は何故か下を向いて口をつぐんでしまった。ぎょろぎょろと大きな目が動いていたから、緊張しているような雰囲気は伝わってくる。
「ち……違うんだ、オマエがどうとかじゃ、なくて……あ、いや。
ただ、その……あたしは。オマエの精が、ちょっと気に入ってた、だけだっての」
節々で言葉が詰まり、言いにくそうに彼女は語尾を濁す。
真っ黒な手と触手の動きもせわしなく、どこかに気を逸らそうと必死なのが目に見えて分かるようだった。
「おっ、オマエは、もうしばらくあたしの言いなりになってればいいんだ」
力のない言葉と共に、椅子に座った僕の後ろに彼女が近づく。
僕に触れようとしたその時に、僕は立ちあがって彼女へ振り向く。目を大きく開いて驚く表情が印象的だった。
「な、なんだよ」
僕が彼女に近づこうとすると、少しずつ彼女も後ろに下がる。
狭い部屋の中なので、すぐに彼女の背が壁に付いた。
僕から目を逸らす彼女の肩をそっと掴み、顔を近づける。
「なっ、」
大きな一つ目を閉じながら僕の方へ彼女が顔を向ける。表情は硬く、不安そうに。
静まり返った部屋の中、そのまま、ゆっくり唇を重ねる。
「――っ、」
口から伝わる軟い唇の感触は僅かに湿っていて、微かに開けた目からは彼女の大きな瞼と睫毛が見えた。
顔を離すと、力が抜けたように彼女はその場へ座り込んだ。
「だ、め、」
力なく彼女が呟く。僕は彼女と同じようにその場に座り込んで、そのか細い身体を撫でていく。
小さな鎖骨を、胸を、腋を、お腹を、手を滑らすようにしてそっと撫ぜる。
制服のブレザーのボタンを外し、白いシャツのボタンに手を掛けると、
「やめ、っ」
抵抗しようとして彼女が僕の両手首を掴む。
けれどその手には力がなく、ほとんど止める力を持たない。
ほどなくしてシャツがはだけ、白い素肌と小ぶりな胸、その上に点在する黒い塊が目の前に晒される。ブラジャーは付けておらず、乳首の部分には黒いスライムが付着して隠れている。
驚くほど柔らかい彼女の肢体は、白と黒が入り混じった芸術品のように見えた。
「……っ」
少しずつ、僕の手首を握る力が強くなる。しかしその程度の抵抗では僕は止まらない。
僕は更に目線を下げていって、彼女のスカートを見た。
その下から伸びる艶めかしい真っ白な太腿をそっと撫ぜると、びくっと彼女の身体が震える。僕の手首に絡みついた彼女の手に、ぎゅっと力が込められた。
すべっとした肌を手で感じながら、僕はより彼女の内、スカートの深くに手を伸ばそうとして――
「やめ……てぇっ……」
はっと顔を上げる。
彼女が泣いている事に気づいて、僕はぴたっと手を止めた。
「……えぐっ、うぅっ」
泣いている。大きな一つ目が大粒の涙がいくつもこぼれて、服に染みを作ってしまいそうになる。
彼女を泣かせた罪悪感と、なぜ彼女が泣いているかの疑問が一緒になって溢れ、戸惑いを生む。
僕は何も言えず、何も出来ずにそのまま止まっていた。
「あ、ちがっ、ちがう、のっ、」
大きな涙で表情は歪み、口から出そうとする言葉が嗚咽で途切れて、何度も鼻をすする。
顔をぐしゃぐしゃにして絞り出す言葉の意味をまだ理解できず、僕は黙って彼女から少しだけ離れる。
「あぁ、ああっ、うわああっ……!」
言葉にならない言葉を喋りながら彼女は立ち上がり、何かに追われるように部屋の外へ飛び出していく。
それを止める事も、言葉を掛けることもできないまま僕は動けない。
彼女が鳴らす乱れた足音が遠ざかっていくのを、僕は教室の中で黙って聞いていた。
何分か経ってようやく現実を飲み込んだ僕は、自分達の教室へ戻る。
五限目が始まっても彼女は帰ってこなかった。
五限目が終わると同時に教室の後ろ側の扉が開いて、ある先生が僕を呼んだ。
確かあれは保健の先生――いわゆる養護教諭だ。彼女と同じ一つ目だったからわりとよく覚えている。
その一つ目のせいで、たしかクラスの皆は「ヒトミちゃん」とか「ヒトミ先生」とか呼んでいたが、おそらくは勝手なあだ名だろう。よく壁にぶつかったりするおっちょこちょいな先生だが、だからこそ親しみが持てる先生として評判は高い。
その先生が「ちょっと付いてきて」というので、保健室の前まで歩いて行く。
先生は僕に向かって「しー」のポーズを取った後、音を立てないようにそっと保健室の扉を開け、中を覗く。
それからまた扉を閉めて、少し保健室から離れた場所へと歩いた。僕もそれに付いていく。
人が周りにいないのを確認してから、先生は僕の方を向いた。
「それで……話っていうのは、君の後ろに座ってる、ゲイザーの子のコトなんだけどね。
あ、今日の事はあの子からぜーんぶ聞いたわ。
ホントおませさんねえ。空き教室のカギを貸してほしいっていうから、もしかしたらとは思ったケド」
やはり、と僕は心の中で身構える。
しかしヒトミ先生は僕を責める気はないのか、楽しそうに僕へ話しかけてくる。
「あの子、ちょっと特別な事情が、それも”二つ”あってね。
それがカラダの事だったりもするから、余計気にしちゃってるのよ。思春期だもんね」
特殊?身体? おうむ返しに僕は返事をした。
「うーん、ホントはあの子から直接聞いてあげて欲しいんだけど……。
あの子はすぐ逃げちゃうし、アナタもゴーインにいくって人じゃなさそうだし……このままじゃ進展しないわよね。
でも! とってもデリケートなオンナノコのヒミツだから大切にするように。
……分かった?」
何らかの事情があったとは思っていたけど、そんな風に言われるとドキッとしてしまう。
僕は意を決して先生の言葉を待った。
「あの子はね――」
僕は静かに保健室の扉を開ける。
部屋に二つ並んでいるベッドの片方には厚手のカーテンが掛かっていた。
まるでそこに居る誰かに聞かせるように、足音を鳴らしながらゆっくりと近づいて、僕はカーテンの前で止まった。
窓と扉の閉まった保健室はとても静かで、布団がもそもそと動く音も僕にはよく聞こえた。
「……誰? 先生?」
カーテンから聞こえる彼女の声。
いつものように低音な気だるげの声ではなく、飾らない自然な声だった。
「入っていいかな」と、僕は緊張しながら口を開く。
ぎしっ、ベッドが軋む音と、布団が揺れる音がした。
「な……何しに来たんだよ。
あたしは別に、大丈夫だ。ちょっと気分が悪くなっただけで、だから、」
言い終わる前に僕はカーテンをしゃっと捲り、その中に身体を滑らせる。
ベッドに背をもたれかけさせた彼女が、驚いた表情で僕を見る。布団はお腹あたりまでは掛かっていた。
「い、いきなり開けるなよ!服もまだ着てないのに――」
慌てた様子で彼女はそう言った。
ブレザーは横に掛けられていて、カッターシャツはボタンが外れたまま。普通の女性ならそれも当然の反応だ。
しかし彼女は魔物娘かつゲイザーで、元々服を着て暮らす種族ではない。学校も制服の服装に関しては自由な所が多く、裸のままで良いわけではないが、彼女のような種族は制服まで着ることを改まっては義務付けられていない。
なのに、彼女はいつもしっかりと服装を整えていた。
僕は彼女に詰め寄る。すると、何かを察したような表情で彼女がうつむいた。
「……。聞いたのか? あの先生から」
僕はうん、と返事をした。
もう六限目が始まっているのに保健室を訪れたのだ、単に謝るだけなら、授業を抜け出してまで来る必要はない。
怒っているわけではないけれど、それが嬉しいという表情もしなかった。
「じゃあ……もう隠す必要もないよな。
どうせもう”暗示”じゃごまかせないんだ、あたしにはどうしようもない」
先生は”彼女には二つのヒミツがある”と言った。
その一つは、暗示のこと。
彼女はゲイザーとしての特異体質で、目を見て相手に”暗示”を掛けることができないのだ。
今までの生活で一度も僕に暗示を掛けたような素振りが無かったのは、それが理由だった。
「でも……違うよ、オマエを騙そうとしてたワケじゃないんだ。
けどいざとなると、そんなの、言い出せるわけなくて、あたし、は、」
顔を隠すように頭を抱え、彼女が声を漏らす。僕は靴を脱いでベッドに上がった。
同時に彼女の言葉が止まって僕の様子を伺う。
「君の身体を見せてほしい」と、僕は言った。
「もう……ヤダって言っても、ダメだよな。
じゃあ、あたしからも、頼みがある。
……服は、オマエに脱がしてほしいんだ……」
ゆっくりと彼女は両手を自分の横に置いてうつむき、僕を上目遣いで見た。
僕が布団を剥がすと、その下にあるスカートが見えた。
よくよく近づいて見れば、スカートの上からでも少し違和感はある。
「……んん」
僕が下半身に顔を近づけると、彼女が息を呑むのが分かった。泣き出しそうにはないけれど、まだ不安なのだろう。
スカートのホックを探して外し、ファスナーを降ろす。
彼女がゆっくりと腰を上げてくれたので、僕もそっとスカートを脱がせていく。何も話さない静かな空間の中、お互いの緊張が伝わるようだった。
控えめに開かれた両足の間に、飾り気のない白いショーツが現れる。
そこには確かに、不自然なほどの膨らみがあった。
彼女の表情を確かめる。とても不安そうな顔と、真っ赤な頬が重なり合って、とても淫らに見えた。
僕はそのショーツにゆっくりと手を伸ばして、降ろしていく。
「あっ、」
露わになった股間は、紛れもなく女の子の性器で、ただ一部が肥大化しているように見えた。
女性器で言う所のクリトリスにあるモノがとても大きく、その形も男性器、つまりペニスの竿から上の部分にやや似ている。しかし陰嚢などはないようだ。クリトリスなのかペニスなのかは分からないが、先生は「ペニスに近い」と言っていた。
いままでショーツで押さえつけられていたその部分は、ショーツを降ろすと勢いよく跳ねて飛び出てきて、勃起しているみたいにピンと上を向いた。
「ぁ……う、」
彼女の荒い吐息がより激しくなる。
女性器の部分には例の黒い塊が付着して露出を隠していて、その大きなペニスも黒い何かで津包まれている。
僕は更に顔を近づけて、その大きなクリにふーっと息を吹きかけた。
「やっ、あ、」
たちまち彼女は声を漏らす、思ったより敏感な箇所のようだ。
異変を察知した彼女が何かを言おうとしたが、それよりも早く僕はそのペニスを口内に含んでいた。
熱い肉の感触と、彼女の不思議な体液の味を感じる。
「えぁっ?! な、にっ、」
ほんの少し先っぽを咥えただけなのに、彼女の身体が跳ねる。
僕は以前彼女に受けたフェラチオをお返しするつもりで、丹念に口の中で彼女のペニスを舐め回していく。
自分が気持ちいいと思う所を愛撫してあげると、彼女も艶めかしい吐息で反応を返してくれる。
「やだ」とか「だめ」という言葉も出てくるけれど口先だけで、身体は快感によがって腰をくねらせていた。両手はぎゅっとベッドシーツを掴んで、ぷるぷると震えている。
「は、あっ、や、やめっ、でちゃっ、あぁっ!」
一際大きく身体をびくんと跳ねさせると、熱いどろっとした液体がペニスから出てくる。量が多く、殆どは喉を通っていったけれど、少し口からこぼれてしまった。精液のようなきつい味や匂いはなく、少し甘くさえ感じた。
出てきた液体をすくって見てみると、コーヒーゼリーのような黒みがかった色をしている。
「はぁっ、はぁっ。 ば、ばか、出ちゃった、だろ……」
彼女のペニスから口を離すと、僕は満足そうに彼女の顔を眺めた。
顔を真っ赤にさせたまま、彼女は息を整えながらにやっと笑う。
「……はは。こんなの生えてて、嫌なカオしないのかよ、オマエ。
やっぱり、ヘンなヤツだ」
微笑みを浮かべる彼女の顔はどこか安堵したような、優しい笑顔だった。
彼女はそっと腰を上げ、僕に顔を近づける。
目を閉じるヒマもなく、僕と彼女は唇を重ねていた。
「それぐらいヘンじゃないと、あたしと釣り合わないもんな」
彼女の声が震える。大きな一つ目から、また涙が一粒こぼれる。
「――センセイ、”用事があって保健室には来れない”けど、六時間目が終わるまで寝ててイイってさ。
だからもうちょっとだけ――な?」
嬉しそうに微笑みながら、彼女の細い身体が僕をぎゅっと抱きしめた。
「……ふふっ、」
……?
「へへ、ふへへっ。
なあ、先生は”二つ”って言ったんだよな? あたしのヒミツを」
ぎゅっと彼女と抱きしめあっている途中、不意に彼女が言った。
戸惑いながらも僕はうん、と返事をする。
「実はもう一つ、あるんだよ。……どうせ関係ないなって思って黙ってたんだ。
ベツに隠すつもりじゃなかったけどなあ?」
秘密を明かそうかという口ぶりなのに、彼女の声はうってかわってとても楽しそうに聞こえる。
どういうことか分からない僕は彼女に聞き返す。
「オマエ、ついさっきあたしをイかせて、黒い液体飲み込んだよな。
あれはさ、あたしの魔力の塊がちょっとばかし変質したモンなんだよ」
へえ、そうなのか。
「あたし達の”暗示”はフツー、目から掛けるけどよ。魔力さえ相手に届けば暗示は掛けられるんだ。
ただ、普通のゲイザーは目からじゃないとそれができない。
五本の指がある手で文字は書けるけど、だからって足の指でも簡単に書けるワケじゃない。
それと一緒だな」
うん。
「つまりだ。あたしは”暗示が掛けられない”なんて、ヒトコトも言ってない」
えっ?
「普通のゲイザーができるかどうかは知らねえ。
けど、あたしの場合は――ある程度、魔力の塊を相手に入れちまえば、それでいい。
そうなりゃ、暗示を掛ける用意は整ってるのさ」
つまり……。
「……なあ。あたしさ、前から、男を犯す側になってみたかったんだよ。
セイエキを搾り取るとかじゃなくて、そう、本当に女を犯すみたいに……」
……えっと。
「いいだろ? あんなに優しくあたしのを舐めてくれたんだ。
オマエもちゃんと気持ちよくしてやるから、さっ」
彼女が僕の制服に手を掛けてくる。
何をするのか薄々感づいているけれど、彼女の行動を止められない。止めたいと思わない。
いつの間にか僕の下半身は下着まで脱がされていて、ベッドの上に僕が四つん這いになる形にされている。彼女は僕の後ろに座っていて、熱い吐息が僕のお尻に掛かった。
「んふふ、いただきまぁす……」
何をされるのかと緊張していると、お尻の穴に熱く滑った物が当たる。
穴の表面を丹念に動くそれはどうやら彼女の舌で、敏感な箇所をべろべろと這いずりまわっていく。
自分の汚い場所を見られ、更にそこを舌でれろれろ舐められるというのはとにかく恥ずかしい。
熱い舌がつんつんと穴をつつき、その周りを余すところなく舐め回していく。
お尻への愛撫を続けながら、ぎゅっと僕のペニスを彼女が掴んだ。
「……ん、ぷはっ。 ははっ、舐めるたびに手の中でビクビクさせちゃって……。
もーっと声出してもいいんだぞ?」
お尻の穴を舌で愛撫しながら、更にペニスをしごかれる。
彼女のアナル舐めはさらにエスカレートして、今度は舌を穴の中へと入れ始めた。ぐにぐにと蠢きながら侵入してくる舌は熱くて滑っていて、アナルの中を撫でるたびにたまらない快感を生む。
たっぷりと唾液を塗り付けていく舌は、お尻の中で動くたびにじゅぷ、ちゅぱ、といやらしい音を響かせた。
その強烈な刺激に声をガマンする事も出来ず、僕は情けなく喘いでしまう。
「女にお尻の穴舐められてイっちゃいそうなのって、どんな気分だ?
こーんなところで気持ちよくなるなんて、やっぱりヘンタイだなあ、オマエは……♪」
舌が離れたかと思うと、今度はぬるりとした液体がお尻の穴に触れる。唾液よりもどろっとしたこの感触はおそらくあの黒いスライムだ。
同時に彼女の指がにゅるっと穴に入ってきて、中に塗り込むようにぐちゃぐちゃと二本の指で掻きまわされる。中の肉壁を擦られるたびにお尻の中が熱くなって、僕のペニスも射精してしまいそうだった。
「さーて……そろそろほぐれてきたかな。
ほら、力抜いてろよ……っと」
一度指がちゅぽんと音を立てて引き抜かれ、その直後に熱い肉棒がお尻に押し当てられる。お尻の穴にまたぬるっとした感触が当たった。どうやら黒いスライムは潤滑剤代わりに塗り込んだらしい。
僕のアナルを押し広げながら、彼女のペニスがにゅるにゅるとゆっくり挿入されていった。
舌や指とは比べ物にならない異物感と、身体の奥を抉られる感覚に息が止まる。
それと共に快感が押し寄せて、身体に力が入らなくなっていく。
僕は四つん這いの姿勢が保てなくなり、うつ伏せに倒れてしまった。
「ははっ、そんなに気持ちよかったか……?
じゃあ、もっと、良くして、やるよ……っ!」
ベッドにうつ伏せになった僕を組み伏せるかのように、彼女が覆いかぶさってくる。
僕のお尻には彼女のお腹がぺたんとくっついて、同時にアナルの奥までペニスが入ってくるのが分かった。
さらに彼女の背中から伸びる触手が万遍なく僕の身体に絡みつき、僕をそっと持ち上げ、動きやすい位置をキープした。
彼女は僕の腰にしがみつくようにして、ゆっくりとピストン運動を始める。その動きは僕が今まで味わった事のない妙な快感を生み始めていた。
「んっ、はっ、あっ、ああっ! こ、これ、すごく、いいッ……!
オマエの穴、すっごく締め付けてきてっ、たまんないっ!」
涎を飛ばしながら彼女は僕の身体にぎゅっと抱きつき、ペニスの抽送を繰り返す。
ぱんぱんと肉のぶつかりあう音がして、彼女のペニスは激しい動きで僕のお尻の中を擦っていく。一突きごとにぞわっとするような快感が走った。
ペニスがびくん、と大きな脈動を繰り返し、荒々しく彼女が声を絞り出す。
「は……ひんっ、んあっ!
だ、出すぞっ、……オマエの中にっ、で、でちゃうぅっ!」
びゅくんっ、びゅくんと、彼女のペニスがまた震える。
その瞬間、どぷどぷっと音が立ちそうなほどの勢いで、熱いジェルのようなものが僕のお尻の中を満たしていく。彼女の絶頂と同時に、僕も勢いよく射精してしまった。
僕のペニスは擦られてもいないのに勝手にびくんびくんと震えて、壊れた蛇口みたいに精液をこぼし続ける。お尻の中をぐちゅっと彼女のペニスが擦っていくたびに、快感がお尻の奥から駆け上っていく。
絶頂が終わっても少しの間、彼女は余韻に浸るかのように腰を振り続け、言葉にならない言葉を喋っていた。
「あ、あ、あぁぁ、はぁっ、で、でひゃっ、たぁ……ッ」
彼女の吐き出した液体は火傷しそうなほど熱く、射精したばかりの僕の身体に追い打ちを掛けるように快楽を生ませた。
僕と彼女はまだ繋がったまま、力尽きたように倒れ込んだ。
「はーっ、はーっ……。あ、うぅ、気持ち、よかったぁ……♪」
満足そうに彼女が呟く。
そのまま何も言わずに、彼女はぎゅっと僕を背中から抱きしめた。
ふっと気が付くと――
六限目のチャイムが鳴って、僕と彼女ははっと夢から覚めるように飛び起きた。
二人ともここが保健室のベッドであることなんて忘れていて、好き放題に絡み合っていたのだから。
しかもベッドは二人分の色んな液体で汚れてしまっている。
色々な事を大目に見てくれていたヒトミ先生だが、これで怒られるのは火を見るよりも明らかだった。
「……なぁ。どーせ怒られるんだし、もう少し……だけ、」
これも彼女の暗示なのかどうか、僕には分からない。
「あたし、まだ、足りないんだ」
ただ、僕はその甘い言葉に抗うことができず、
「今度は……オマエにしてほしいから、さ」
そっと目を閉じた彼女に、唇を重ねた。
なのに遅刻しそうで焦っていた僕は、玄関から下駄箱への道で勢いよく誰かにぶつかってしまった。
その時かすかに聞こえた声は女の子のものだったので、更に僕は焦ってしまう。
「いてて……ったく、どこに目ェ付けてんだオマエ!」
床にお尻を付いたその姿は確かに女性で、そして人間ではなかった。
学校ではとても珍しいゲイザーという種族の子で、真っ赤な一つ目と背中の触手と尾が特徴だ。
本か何かで見た以外では実物は初めてだったが、今は遅刻ギリギリでそれどころではない。
僕は謝るのもそこそこに、新しい教室へと走っていってしまった。
――新しいクラスになり、生徒の組み合わせも変わる事で、教室はわいわいとざわついていた。
僕の席は一番後ろのひとつ前。しかも窓側の端っこ。
前と横には口ぶりからして既に彼氏持ちらしい魔物娘さん達が座っている。
僕の後ろには誰が座るんだろう、と思って待っていると、
「……オマエ、さっきぶつかってきたヤツか」
今日の朝、下駄箱前でぶつかってしまったゲイザーの子が座ってきた。
とりあえずもう一度改めて謝ってみる。
「はんっ、今さら遅いっての。今日の分はこれから返してやるからな、覚えてろよ」
そう言って彼女は不機嫌そうに自分の椅子に座った。うねうねと触手が動いている。何本かはあてつけのようにこっちをぎっと睨んだ。気がする。
彼女が一番後ろの席になったのはたぶん、この触手が前の人の視界を妨げてしまうからだろう。
……今思うと、背中の触手はどうやって制服から出しているんだ?
気になる。
「んだよ、じろじろ見んなっつの。そんなにあたしが目障りか?」
そうじゃない、と否定しながら僕も自分の席に座る。
それを知るのはもう少し警戒を解いてもらってからになりそうだ。
――次の日。
クラス替え次の日の昼食はやはり賑わう。とはいっても、それは教室の外の話。
教室はあくまで授業用、という雰囲気があって、教室以外の場所に食べに行く生徒がほとんどだ。
それに魔物娘たちもそれぞれ生態が違うので、各々自分にとって心地のいい場所に行きたがる。
なので、僕みたいにお弁当を持ってきて、それを教室で食べる生徒はかなり少ない。
気が付くと、僕達の教室には生徒が三、四人残っているぐらいだった。
後ろを振り向くと、彼女は手持ちぶさたそうに手元の瓶をいじくっていた。
触手に付いた目の何本かはこっちを見ていたような気がするが、彼女自身が動く様子はない。
僕は自分の座る椅子をくるりと動かして、彼女の机にお弁当を載せる。
「……おい、何のマネだよ」
せっかくだから、一緒にご飯でもと思って。
「オマエな、あたしらが何食うか分かって言ってんのか?
ベツにニンゲンの飯だって食えるけどよ、それじゃ腹の足しにならねえんだ」
というと?
「だから、男の……精を取るってことだよ」
あー、そうか、そうだっけ。
ってことはもしかして、君の手元の瓶の中身は……。
「いいや、こいつは紛いモンだ。ゼンゼン味がなくてひでえもんさ。
……ところで」
うん?
「わざわざあたしに、食いモンの話してきたんだ。
カクゴはできてるよな?」
え? えーっと、
「ばあか、冗談だよ。誰がオマエなんかに頼むかっての」
……そっか。
とりあえず、ウチで作ったコロッケ、どうかな。自信作なんだけど。食べてみない?
「オマエ、人の話聞いてんのか……」
次の日。
昨日と同じで、彼女も僕も教室にいる。
後ろを振り向くと、昨日と同じような瓶を持って彼女が座っていた。
僕が見ているのに気づくと、眉をしかめて軽く睨んでくる。不機嫌にも見えるけれど、なぜかそうじゃない気がした。
「……あんだよ」
僕は返事はせず、くるりと椅子を動かし、ゲイザーである彼女の机に弁当箱を置くという行動で答える。
とりあえず、今日の朝焼いた鮭はどうだろう。
「いらねえよ。食べるもんが違うって前言ったろ」
にべもなく断られたので少し傷付いた。
でもこちらのお弁当をちらちらと――特に触手の方の目はよく見ているので、全く興味がないという訳でもなさそうだ。
食べたいかどうかは別だけど。
「……どうしてもってんなら、オマエのセイエキ、よこせよ」
元々大きい声で喋る方ではなかったけど、いつもより小さい声。
え、ここで? と反射のように僕は聞き返す。
「ばっ、バカ! んなわけないだろ!」
思わず大きな声が出てしまったらしい、慌てて彼女は周りに目線をやる。
ばつの悪そうな彼女の顔を見るのは珍しい。
もう教室にはほとんど人が残っていないのに。
「しゃあねえな……ったく」
手元で弄っていた瓶を机に置くと、彼女は教室から出ていってしまった。
トイレにでも行ったのかなと思いながら、僕は黙々とごはんを食べる。
すると、五分ほどで彼女は戻ってきた。
「それ食い終わったら、ちょっと付き合え」
彼女はそれだけ口にして、机の上の瓶を自分のカバンにしまった。
お昼休みは後三十分ほど、という所で、僕と彼女は一緒に教室から出ていく。
どこに行くかは全く聞いておらず、僕は彼女に付いていくだけだ。
着いた場所は三階の端っこの教室で、ネームプレートがない。今は空き部屋ということだ。中は一応教室という感じだけどスペースは小さく、普通の教室の半分もない。机や椅子も並べては置かれてないので、どちらかというと物置場所にさえ見える。
でも今その中に居るのは僕と彼女だけなので、それでも広く感じた。
「……ここならモンクないだろ。 誰も見てないからな」
部屋の中を僕が見て回っていると、彼女が後ろ手に引き戸を閉めながらそう言った。
たとえここが物置だったとしても、カギを掛けずに放置されているはずはない。たまたま開いていたのか、どうにかして鍵を手に入れたのか。
”暗示”という彼女達ゲイザーの能力を考えれば、おのずと答えは出てきそうだった。
彼女は我が物顔で部屋の中心に立つと、僕に「座れ」と言った。
言われるまま、僕は床に座る。
「でも、ま……あたしのカオじゃ、オマエもコーフンできないか。
だからこーしてやるよ、っと」
あぐらをかいて床に座った僕の背中から、彼女が体を寄せてくる。
背中から柔らかい色んな感触がして、同時に普通の女の子とは違う独特な匂いが漂った。
僕の肩に顎をのせて、両脇の下から腕を入れてくる。彼女の声色と香りがすぐ傍にある事を意識して、それらが普段の何倍も鮮明に感じる。
さわさわと僕の首筋を撫でる彼女の長い黒髪、僕の身体をまさぐる黒い両手、耳元で響く少し低い声。どれもが記憶に焼き付きそうなほど、僕は緊張していた。
「お? なんだ、元気がいいな。もう大きくしてるじゃんか……?」
彼女は両手で僕の股間をまさぐり始め、器用にチャックを降ろす。さらに下着もずらすと、ペニスが勢いよく跳ねて出てきた。
すぐさま彼女の真っ黒い指が竿に伸びて、ぐにぐにと触り始める。
「ほらほら、ベツに声出しちゃってもいいんだぜ」
楽しそうに声を跳ねさせながら彼女はペニスをくにくにと擦る。その刺激だけでも身体が震えそうだったが、不意にペニスに触れる手の感触が変わる。
ふっと下を見ると、彼女の両手に付着している黒い塊がどろっとしたスライムのように変化していた。
「驚いたか? その黒いのはあたしの魔力の塊でな、ある程度あたしの自由に動かせるんだ。
つまり――こういうことさ」
不思議な感触の黒い塊が僕のペニスにぐるっと纏わりつく。亀頭はもちろん、尿道口の先っぽから、裏筋、竿の一番下まで万遍なくだ。黒いスライムは彼女の手に張り付いていたせいか、まだ温もりが残っていて温かい。
僕のペニスを包み込んだ形になった黒いスライムごと、彼女は僕のペニスをぐちゃぐちゃと上下に扱きあげる。いわゆるオナホールのようなもので責められている気分だ。中に突起やヒダはないので刺激としては単一だけど、そのスライムの不思議な感触はどうしようもなく気持ちがいい。しかも中の温度もほの熱く、まるで女性器に挿入しているようだった。
それになぜか一擦りごとにペニスが熱くなり、神経が敏感になっていく気がした。
「んふふ、息、荒くなってるぜ。ほら、出しちまえよ……っ!」
黒いスライムを上下させるスピードが徐々に上がっていく。さらに彼女は僕の耳を優しく甘噛みしてきた。
不意の刺激に僕はついに声を出してしまい、同時にスライムの中でびくん、と射精してしまう。
僕の反応から射精してしまったことは分かっているはずなのに、彼女はさらにぐにゅりとペニスをしごきあげる。まるで残っている一滴まで絞り出そうとするかのように。
射精直後で敏感になったペニスをさらに擦りあげられ、腰が砕けそうだった。
「ははっ、三分も持たなかったな。
さーてと、っと……」
荒い息を整える僕を後目に、彼女は黒いスライムをペニスから抜く。ちゅぽん、と音を立てて抜けた。固形のように固まったそれは、とても分厚いコンドームのようにも見えた。
ふと下を向くと、僕のペニスは何事もなかったかのように綺麗で、精液や汁はほとんど付着していない。
彼女はスライムの中を覗き込んで鼻を近づける。彼女の表情が変わりそうになったがガマンしたように唇をきゅっとすぼませ、今一度彼女は僕の方を向いた。
「あ……味見するだけだ。
いつも飲んでるアレよりはマシそうだからな」
僕は何も言っていないけれど、彼女はどこか早口で、僕を見ながらそう言った。
彼女は指をスライムの中に入れ、白い液体をすくい、それを小さく出した唇でぺろっと舐める。
その液体が僕の出したモノだと知っている僕は、目の前でそれを咀嚼されることをどこか気恥ずかしく思った。
「ん、……っ」
ぱちぱちと彼女が瞬きをした。そして目の焦点がずれたように、一瞬だけぼんやりと表情を崩した。
思い出したように、彼女はもう一度指で白い液体をすくい出す。
そしてそれを素早く口の中へ。
「……ふぅっ、あっ……。 ……あ、」
まるで僕が今突然現れたかのように、彼女は驚いた表情で声を上げた。
「な、何見てんだよ! ほら、さっさと出てけッ!」
有無を言わさず彼女に押していかれ、僕は部屋の外へ放り出された。
さらに中から鍵が閉められたらしく、開けられない。
「あたしは用があるから……その、とにかくオマエは教室に帰ってろ!」
という返事が返ってきたので、おとなしく自分の教室に戻る。
――次の日の、お昼休み。
やっぱり昨日と同じで、彼女も僕も教室にいる。
後は昼寝をしている(寝ているのはいつもだけど)ドーマウスの子と、誰かを待っているようなリザードマンの子ぐらい。
今日は僕が椅子を動かす前からこっちを見ていたらしく、振り返った瞬間に彼女と目が合った。
くるりと椅子を動かして、ゲイザーである彼女の机に僕は弁当箱を置く。
「なんだよ」
いや、今日も一緒に食べようと思って。
「だからな、オマエとあたしじゃ食べるモンが違うって何べん言ったら――」
まあそう言わずに食べてみてよ。今日の手作りは卵焼きしかないけど。
「……ま、くれるってなら貰ってやるよ」
はい、どうぞ。
「……は、箸も貸せよ。自分で取るから」
あ、ごめん。
「ったく……んぐんぐ、……うーん、味は分かるんだけどなあ。
やっぱり……物足んないな」
そういう物なのか。人間と魔物って結構違うんだね。
「そりゃそうだろ。外見が違えば中身だって変わるっての」
そうだね。君は特に、目が一つしかないし。
「るっせえ。あたしだって、好きでこんな見た目になってねえよ」
あ、ちょっと。
卵焼き、一つは残しといて欲しかったのに……。
「あ……わ、わりい」
――その日の放課後。
「……おい。ちょっと、こっち来い」
言われるままに僕は彼女に付いていく。
どこに行くのだろうと思っていたら、前も行った事のある、三階の端っこの教室に連れて行かれた。
彼女は僕に背を向けたまま、その部屋の中で話しかけてくる。
「えーっと……そうだ、昼の卵焼きのアレだけどよ。
あたしだけ人のモン貰うってのは気分良くねえんだよ……特に、オマエなんかからは!」
振り返って、彼女が僕をきっ、と睨む。
「……あ、」
ただ思ったより距離が近すぎたのか、彼女はすぐに目を逸らし、頬を赤くさせながら少しだけ後ろに下がった。
触手の動きもあんまり安定していないようで、感情を表す点はまるで犬や猫の尻尾のように思えた。
「だ、だから、今日は気分がイイからトクベツに、特別にだぞ?
オマエのアレを手伝ってやるよ」
アレ……っていうのはもちろん、やっぱり?
「い、いいからそこの椅子に座れ! そんで、目ェ瞑れ! 開けるなよ!」
う、うん。これでいいかな。
「えっと、確か……」
そう言いながら彼女が僕のズボンに触れる感触がして、さらにジッパーを降ろしていくのが分かった。そのまま彼女は僕の下着をずらして、中に指を入れてくる。
下着の中にあるペニスが彼女の指と触れて、びくっと反応してしまう。
突然の事でびっくりしたけれど、僕は息を止めたまま何も言えない。
「よ、よーし。ゼッタイ目ェ開けるなよ……」
外に引っ張り出されたペニスに、温い吐息のようなものが当たる。
柔らかい指で上下にしゅっしゅっと擦られて、同時に液体のようなものが僕のペニスに纏わりつく。おそらく彼女の唾液だろう。
「はぁむ、っん、」
温い口内にペニスがじんわりと包まれ、ざらっとした舌が万遍なく表面をにゅるりと撫でていく。
誰かに自分の性器を、ましてや口で丹念に愛撫されるなんてことが僕にとっては初めてで、それはあまりに刺激的だった。
「んぐっ、ぷはっ」
正直に言うと、僕は薄らと目を開けてしまった。
いくら以前のコトがあったとはいえ、どちらかというと授業中や放課後は僕につっけんどんな態度を取る彼女が、本当にそんな事をしているのだろうかと。
薄暗い視界の中に見えたのは、僕の股間に顔を近づける彼女の、繊細に流れる黒髪だった。
その光景にはどこか現実感がなく、けれど現実的な生々しい快感が確かに温もりを伴って伝わるのだ。
「んぅ、ん。ちゅっ、ふぅっ」
彼女の熱烈な口淫は勢いを緩めず、僕のペニスを舐め溶かそうとするかのように、舌を絡みつけてぐにゅぐにゅと這い回る。
限界が近い事を伝えると、追い打ちをかけるようにペースを上げていく。
玉袋を優しく撫でながら、じゅぷじゅぷと上下運動を繰り返して竿全体を熱い唇と舌とで擦りあげられ、堪らず僕は声を上げて射精してしまう。
「――っ、じゅるっ、ん、はぁっ」
ペニスの中に残った精液まで吸い出そうとするように、彼女が唇を窄ませるのが伝わる。
その刺激がまた耐え難く僕の腰が浮いてしまいそうで、目を閉じたフリをすることを忘れそうにさえなった。
「ふぅ、うっ……。
”直接”は、やっぱり違うな。瓶詰めの出来損ないなんて……比べ物にならねェよ」
目をきっちりと閉じなおした僕の目前に、彼女が顔をぐっと近づけるのが声の伝わり方で分かった。
「……一応、念を押しとくぞ。
今回のはただの気まぐれだ、調子乗って他のヤツにテキトー言いふらすなよな。
もし余計なコトしたら、あたしの”眼”で……わ、分かったな!」
口ぶりは少し怒っているようにも感じる。
彼女は今、どんな顔を、表情をして僕に話しかけているのだろう。
目を開けたいけれど、それは本当に彼女との約束を破る気がして、何故かできなかった。
少し経って、がたがたと机の揺れる音と、部屋の扉を閉める音がした。
恐る恐る目を開けてみると、もう彼女は部屋のどこにも居なかった。
その翌日。
彼女は何の気なしに登校してきているように見えたが、僕はというと内心そうでもない。
何しろ僕には彼女が出来た経験もないのだから、昨日の体験はあまりに刺激的だった。
一度ならず二度までも、それもあんなに丁寧に、優しく。
彼女にとって、その行為はどんな意味を、どれだけの意味を持つのだろう?
もちろん僕が初めてではないはずだ。
そして、それは彼女にとっての食事である。僕がお弁当を食べるのと変わりはない。
けれど、
「おい」
普段から周りと話さない彼女にとって、それは多少なりとも特別な行為だったように思える。
「……昼飯なら、たまには外に行こうぜ」
彼女は立ち上がって、僕の返事は聞かないまま教室の外へ向かっていった。
付いて行った先にあるのは昨日と同じ、三階の端にある空き部屋だ。
カーテンは閉まっていて、もちろん先客は誰もいない。僕と彼女だけがそこにいた。
適当な机と椅子を持ってきて、二人で向かい合って座る。それは教室と同じで、ただいつもよりも静かなだけだった。
「今日の弁当は?」
残念だけど今日は冷凍食品ばっかりかな、と僕が言うと、彼女はそうかと言って窓の外を見た。
何回か学校のコトで話をしてみるけれど、いつもより上の空な返事が多い。
というより、何かを考えているような、悩んでいるような仕草。
「……なぁ。
今日も、いいか?」
僕がお弁当を食べ終えペットボトルのお茶に口を付けたところで、彼女が言った。
前後の文脈を無視した唐突な一言。しかし僕にはその意味が良く伝わった。
でも、僕がされるばかりではなんというか不公平かも、とそんな感じの事を言ってみる。
「……」
予想に反して、彼女は何故か下を向いて口をつぐんでしまった。ぎょろぎょろと大きな目が動いていたから、緊張しているような雰囲気は伝わってくる。
「ち……違うんだ、オマエがどうとかじゃ、なくて……あ、いや。
ただ、その……あたしは。オマエの精が、ちょっと気に入ってた、だけだっての」
節々で言葉が詰まり、言いにくそうに彼女は語尾を濁す。
真っ黒な手と触手の動きもせわしなく、どこかに気を逸らそうと必死なのが目に見えて分かるようだった。
「おっ、オマエは、もうしばらくあたしの言いなりになってればいいんだ」
力のない言葉と共に、椅子に座った僕の後ろに彼女が近づく。
僕に触れようとしたその時に、僕は立ちあがって彼女へ振り向く。目を大きく開いて驚く表情が印象的だった。
「な、なんだよ」
僕が彼女に近づこうとすると、少しずつ彼女も後ろに下がる。
狭い部屋の中なので、すぐに彼女の背が壁に付いた。
僕から目を逸らす彼女の肩をそっと掴み、顔を近づける。
「なっ、」
大きな一つ目を閉じながら僕の方へ彼女が顔を向ける。表情は硬く、不安そうに。
静まり返った部屋の中、そのまま、ゆっくり唇を重ねる。
「――っ、」
口から伝わる軟い唇の感触は僅かに湿っていて、微かに開けた目からは彼女の大きな瞼と睫毛が見えた。
顔を離すと、力が抜けたように彼女はその場へ座り込んだ。
「だ、め、」
力なく彼女が呟く。僕は彼女と同じようにその場に座り込んで、そのか細い身体を撫でていく。
小さな鎖骨を、胸を、腋を、お腹を、手を滑らすようにしてそっと撫ぜる。
制服のブレザーのボタンを外し、白いシャツのボタンに手を掛けると、
「やめ、っ」
抵抗しようとして彼女が僕の両手首を掴む。
けれどその手には力がなく、ほとんど止める力を持たない。
ほどなくしてシャツがはだけ、白い素肌と小ぶりな胸、その上に点在する黒い塊が目の前に晒される。ブラジャーは付けておらず、乳首の部分には黒いスライムが付着して隠れている。
驚くほど柔らかい彼女の肢体は、白と黒が入り混じった芸術品のように見えた。
「……っ」
少しずつ、僕の手首を握る力が強くなる。しかしその程度の抵抗では僕は止まらない。
僕は更に目線を下げていって、彼女のスカートを見た。
その下から伸びる艶めかしい真っ白な太腿をそっと撫ぜると、びくっと彼女の身体が震える。僕の手首に絡みついた彼女の手に、ぎゅっと力が込められた。
すべっとした肌を手で感じながら、僕はより彼女の内、スカートの深くに手を伸ばそうとして――
「やめ……てぇっ……」
はっと顔を上げる。
彼女が泣いている事に気づいて、僕はぴたっと手を止めた。
「……えぐっ、うぅっ」
泣いている。大きな一つ目が大粒の涙がいくつもこぼれて、服に染みを作ってしまいそうになる。
彼女を泣かせた罪悪感と、なぜ彼女が泣いているかの疑問が一緒になって溢れ、戸惑いを生む。
僕は何も言えず、何も出来ずにそのまま止まっていた。
「あ、ちがっ、ちがう、のっ、」
大きな涙で表情は歪み、口から出そうとする言葉が嗚咽で途切れて、何度も鼻をすする。
顔をぐしゃぐしゃにして絞り出す言葉の意味をまだ理解できず、僕は黙って彼女から少しだけ離れる。
「あぁ、ああっ、うわああっ……!」
言葉にならない言葉を喋りながら彼女は立ち上がり、何かに追われるように部屋の外へ飛び出していく。
それを止める事も、言葉を掛けることもできないまま僕は動けない。
彼女が鳴らす乱れた足音が遠ざかっていくのを、僕は教室の中で黙って聞いていた。
何分か経ってようやく現実を飲み込んだ僕は、自分達の教室へ戻る。
五限目が始まっても彼女は帰ってこなかった。
五限目が終わると同時に教室の後ろ側の扉が開いて、ある先生が僕を呼んだ。
確かあれは保健の先生――いわゆる養護教諭だ。彼女と同じ一つ目だったからわりとよく覚えている。
その一つ目のせいで、たしかクラスの皆は「ヒトミちゃん」とか「ヒトミ先生」とか呼んでいたが、おそらくは勝手なあだ名だろう。よく壁にぶつかったりするおっちょこちょいな先生だが、だからこそ親しみが持てる先生として評判は高い。
その先生が「ちょっと付いてきて」というので、保健室の前まで歩いて行く。
先生は僕に向かって「しー」のポーズを取った後、音を立てないようにそっと保健室の扉を開け、中を覗く。
それからまた扉を閉めて、少し保健室から離れた場所へと歩いた。僕もそれに付いていく。
人が周りにいないのを確認してから、先生は僕の方を向いた。
「それで……話っていうのは、君の後ろに座ってる、ゲイザーの子のコトなんだけどね。
あ、今日の事はあの子からぜーんぶ聞いたわ。
ホントおませさんねえ。空き教室のカギを貸してほしいっていうから、もしかしたらとは思ったケド」
やはり、と僕は心の中で身構える。
しかしヒトミ先生は僕を責める気はないのか、楽しそうに僕へ話しかけてくる。
「あの子、ちょっと特別な事情が、それも”二つ”あってね。
それがカラダの事だったりもするから、余計気にしちゃってるのよ。思春期だもんね」
特殊?身体? おうむ返しに僕は返事をした。
「うーん、ホントはあの子から直接聞いてあげて欲しいんだけど……。
あの子はすぐ逃げちゃうし、アナタもゴーインにいくって人じゃなさそうだし……このままじゃ進展しないわよね。
でも! とってもデリケートなオンナノコのヒミツだから大切にするように。
……分かった?」
何らかの事情があったとは思っていたけど、そんな風に言われるとドキッとしてしまう。
僕は意を決して先生の言葉を待った。
「あの子はね――」
僕は静かに保健室の扉を開ける。
部屋に二つ並んでいるベッドの片方には厚手のカーテンが掛かっていた。
まるでそこに居る誰かに聞かせるように、足音を鳴らしながらゆっくりと近づいて、僕はカーテンの前で止まった。
窓と扉の閉まった保健室はとても静かで、布団がもそもそと動く音も僕にはよく聞こえた。
「……誰? 先生?」
カーテンから聞こえる彼女の声。
いつものように低音な気だるげの声ではなく、飾らない自然な声だった。
「入っていいかな」と、僕は緊張しながら口を開く。
ぎしっ、ベッドが軋む音と、布団が揺れる音がした。
「な……何しに来たんだよ。
あたしは別に、大丈夫だ。ちょっと気分が悪くなっただけで、だから、」
言い終わる前に僕はカーテンをしゃっと捲り、その中に身体を滑らせる。
ベッドに背をもたれかけさせた彼女が、驚いた表情で僕を見る。布団はお腹あたりまでは掛かっていた。
「い、いきなり開けるなよ!服もまだ着てないのに――」
慌てた様子で彼女はそう言った。
ブレザーは横に掛けられていて、カッターシャツはボタンが外れたまま。普通の女性ならそれも当然の反応だ。
しかし彼女は魔物娘かつゲイザーで、元々服を着て暮らす種族ではない。学校も制服の服装に関しては自由な所が多く、裸のままで良いわけではないが、彼女のような種族は制服まで着ることを改まっては義務付けられていない。
なのに、彼女はいつもしっかりと服装を整えていた。
僕は彼女に詰め寄る。すると、何かを察したような表情で彼女がうつむいた。
「……。聞いたのか? あの先生から」
僕はうん、と返事をした。
もう六限目が始まっているのに保健室を訪れたのだ、単に謝るだけなら、授業を抜け出してまで来る必要はない。
怒っているわけではないけれど、それが嬉しいという表情もしなかった。
「じゃあ……もう隠す必要もないよな。
どうせもう”暗示”じゃごまかせないんだ、あたしにはどうしようもない」
先生は”彼女には二つのヒミツがある”と言った。
その一つは、暗示のこと。
彼女はゲイザーとしての特異体質で、目を見て相手に”暗示”を掛けることができないのだ。
今までの生活で一度も僕に暗示を掛けたような素振りが無かったのは、それが理由だった。
「でも……違うよ、オマエを騙そうとしてたワケじゃないんだ。
けどいざとなると、そんなの、言い出せるわけなくて、あたし、は、」
顔を隠すように頭を抱え、彼女が声を漏らす。僕は靴を脱いでベッドに上がった。
同時に彼女の言葉が止まって僕の様子を伺う。
「君の身体を見せてほしい」と、僕は言った。
「もう……ヤダって言っても、ダメだよな。
じゃあ、あたしからも、頼みがある。
……服は、オマエに脱がしてほしいんだ……」
ゆっくりと彼女は両手を自分の横に置いてうつむき、僕を上目遣いで見た。
僕が布団を剥がすと、その下にあるスカートが見えた。
よくよく近づいて見れば、スカートの上からでも少し違和感はある。
「……んん」
僕が下半身に顔を近づけると、彼女が息を呑むのが分かった。泣き出しそうにはないけれど、まだ不安なのだろう。
スカートのホックを探して外し、ファスナーを降ろす。
彼女がゆっくりと腰を上げてくれたので、僕もそっとスカートを脱がせていく。何も話さない静かな空間の中、お互いの緊張が伝わるようだった。
控えめに開かれた両足の間に、飾り気のない白いショーツが現れる。
そこには確かに、不自然なほどの膨らみがあった。
彼女の表情を確かめる。とても不安そうな顔と、真っ赤な頬が重なり合って、とても淫らに見えた。
僕はそのショーツにゆっくりと手を伸ばして、降ろしていく。
「あっ、」
露わになった股間は、紛れもなく女の子の性器で、ただ一部が肥大化しているように見えた。
女性器で言う所のクリトリスにあるモノがとても大きく、その形も男性器、つまりペニスの竿から上の部分にやや似ている。しかし陰嚢などはないようだ。クリトリスなのかペニスなのかは分からないが、先生は「ペニスに近い」と言っていた。
いままでショーツで押さえつけられていたその部分は、ショーツを降ろすと勢いよく跳ねて飛び出てきて、勃起しているみたいにピンと上を向いた。
「ぁ……う、」
彼女の荒い吐息がより激しくなる。
女性器の部分には例の黒い塊が付着して露出を隠していて、その大きなペニスも黒い何かで津包まれている。
僕は更に顔を近づけて、その大きなクリにふーっと息を吹きかけた。
「やっ、あ、」
たちまち彼女は声を漏らす、思ったより敏感な箇所のようだ。
異変を察知した彼女が何かを言おうとしたが、それよりも早く僕はそのペニスを口内に含んでいた。
熱い肉の感触と、彼女の不思議な体液の味を感じる。
「えぁっ?! な、にっ、」
ほんの少し先っぽを咥えただけなのに、彼女の身体が跳ねる。
僕は以前彼女に受けたフェラチオをお返しするつもりで、丹念に口の中で彼女のペニスを舐め回していく。
自分が気持ちいいと思う所を愛撫してあげると、彼女も艶めかしい吐息で反応を返してくれる。
「やだ」とか「だめ」という言葉も出てくるけれど口先だけで、身体は快感によがって腰をくねらせていた。両手はぎゅっとベッドシーツを掴んで、ぷるぷると震えている。
「は、あっ、や、やめっ、でちゃっ、あぁっ!」
一際大きく身体をびくんと跳ねさせると、熱いどろっとした液体がペニスから出てくる。量が多く、殆どは喉を通っていったけれど、少し口からこぼれてしまった。精液のようなきつい味や匂いはなく、少し甘くさえ感じた。
出てきた液体をすくって見てみると、コーヒーゼリーのような黒みがかった色をしている。
「はぁっ、はぁっ。 ば、ばか、出ちゃった、だろ……」
彼女のペニスから口を離すと、僕は満足そうに彼女の顔を眺めた。
顔を真っ赤にさせたまま、彼女は息を整えながらにやっと笑う。
「……はは。こんなの生えてて、嫌なカオしないのかよ、オマエ。
やっぱり、ヘンなヤツだ」
微笑みを浮かべる彼女の顔はどこか安堵したような、優しい笑顔だった。
彼女はそっと腰を上げ、僕に顔を近づける。
目を閉じるヒマもなく、僕と彼女は唇を重ねていた。
「それぐらいヘンじゃないと、あたしと釣り合わないもんな」
彼女の声が震える。大きな一つ目から、また涙が一粒こぼれる。
「――センセイ、”用事があって保健室には来れない”けど、六時間目が終わるまで寝ててイイってさ。
だからもうちょっとだけ――な?」
嬉しそうに微笑みながら、彼女の細い身体が僕をぎゅっと抱きしめた。
「……ふふっ、」
……?
「へへ、ふへへっ。
なあ、先生は”二つ”って言ったんだよな? あたしのヒミツを」
ぎゅっと彼女と抱きしめあっている途中、不意に彼女が言った。
戸惑いながらも僕はうん、と返事をする。
「実はもう一つ、あるんだよ。……どうせ関係ないなって思って黙ってたんだ。
ベツに隠すつもりじゃなかったけどなあ?」
秘密を明かそうかという口ぶりなのに、彼女の声はうってかわってとても楽しそうに聞こえる。
どういうことか分からない僕は彼女に聞き返す。
「オマエ、ついさっきあたしをイかせて、黒い液体飲み込んだよな。
あれはさ、あたしの魔力の塊がちょっとばかし変質したモンなんだよ」
へえ、そうなのか。
「あたし達の”暗示”はフツー、目から掛けるけどよ。魔力さえ相手に届けば暗示は掛けられるんだ。
ただ、普通のゲイザーは目からじゃないとそれができない。
五本の指がある手で文字は書けるけど、だからって足の指でも簡単に書けるワケじゃない。
それと一緒だな」
うん。
「つまりだ。あたしは”暗示が掛けられない”なんて、ヒトコトも言ってない」
えっ?
「普通のゲイザーができるかどうかは知らねえ。
けど、あたしの場合は――ある程度、魔力の塊を相手に入れちまえば、それでいい。
そうなりゃ、暗示を掛ける用意は整ってるのさ」
つまり……。
「……なあ。あたしさ、前から、男を犯す側になってみたかったんだよ。
セイエキを搾り取るとかじゃなくて、そう、本当に女を犯すみたいに……」
……えっと。
「いいだろ? あんなに優しくあたしのを舐めてくれたんだ。
オマエもちゃんと気持ちよくしてやるから、さっ」
彼女が僕の制服に手を掛けてくる。
何をするのか薄々感づいているけれど、彼女の行動を止められない。止めたいと思わない。
いつの間にか僕の下半身は下着まで脱がされていて、ベッドの上に僕が四つん這いになる形にされている。彼女は僕の後ろに座っていて、熱い吐息が僕のお尻に掛かった。
「んふふ、いただきまぁす……」
何をされるのかと緊張していると、お尻の穴に熱く滑った物が当たる。
穴の表面を丹念に動くそれはどうやら彼女の舌で、敏感な箇所をべろべろと這いずりまわっていく。
自分の汚い場所を見られ、更にそこを舌でれろれろ舐められるというのはとにかく恥ずかしい。
熱い舌がつんつんと穴をつつき、その周りを余すところなく舐め回していく。
お尻への愛撫を続けながら、ぎゅっと僕のペニスを彼女が掴んだ。
「……ん、ぷはっ。 ははっ、舐めるたびに手の中でビクビクさせちゃって……。
もーっと声出してもいいんだぞ?」
お尻の穴を舌で愛撫しながら、更にペニスをしごかれる。
彼女のアナル舐めはさらにエスカレートして、今度は舌を穴の中へと入れ始めた。ぐにぐにと蠢きながら侵入してくる舌は熱くて滑っていて、アナルの中を撫でるたびにたまらない快感を生む。
たっぷりと唾液を塗り付けていく舌は、お尻の中で動くたびにじゅぷ、ちゅぱ、といやらしい音を響かせた。
その強烈な刺激に声をガマンする事も出来ず、僕は情けなく喘いでしまう。
「女にお尻の穴舐められてイっちゃいそうなのって、どんな気分だ?
こーんなところで気持ちよくなるなんて、やっぱりヘンタイだなあ、オマエは……♪」
舌が離れたかと思うと、今度はぬるりとした液体がお尻の穴に触れる。唾液よりもどろっとしたこの感触はおそらくあの黒いスライムだ。
同時に彼女の指がにゅるっと穴に入ってきて、中に塗り込むようにぐちゃぐちゃと二本の指で掻きまわされる。中の肉壁を擦られるたびにお尻の中が熱くなって、僕のペニスも射精してしまいそうだった。
「さーて……そろそろほぐれてきたかな。
ほら、力抜いてろよ……っと」
一度指がちゅぽんと音を立てて引き抜かれ、その直後に熱い肉棒がお尻に押し当てられる。お尻の穴にまたぬるっとした感触が当たった。どうやら黒いスライムは潤滑剤代わりに塗り込んだらしい。
僕のアナルを押し広げながら、彼女のペニスがにゅるにゅるとゆっくり挿入されていった。
舌や指とは比べ物にならない異物感と、身体の奥を抉られる感覚に息が止まる。
それと共に快感が押し寄せて、身体に力が入らなくなっていく。
僕は四つん這いの姿勢が保てなくなり、うつ伏せに倒れてしまった。
「ははっ、そんなに気持ちよかったか……?
じゃあ、もっと、良くして、やるよ……っ!」
ベッドにうつ伏せになった僕を組み伏せるかのように、彼女が覆いかぶさってくる。
僕のお尻には彼女のお腹がぺたんとくっついて、同時にアナルの奥までペニスが入ってくるのが分かった。
さらに彼女の背中から伸びる触手が万遍なく僕の身体に絡みつき、僕をそっと持ち上げ、動きやすい位置をキープした。
彼女は僕の腰にしがみつくようにして、ゆっくりとピストン運動を始める。その動きは僕が今まで味わった事のない妙な快感を生み始めていた。
「んっ、はっ、あっ、ああっ! こ、これ、すごく、いいッ……!
オマエの穴、すっごく締め付けてきてっ、たまんないっ!」
涎を飛ばしながら彼女は僕の身体にぎゅっと抱きつき、ペニスの抽送を繰り返す。
ぱんぱんと肉のぶつかりあう音がして、彼女のペニスは激しい動きで僕のお尻の中を擦っていく。一突きごとにぞわっとするような快感が走った。
ペニスがびくん、と大きな脈動を繰り返し、荒々しく彼女が声を絞り出す。
「は……ひんっ、んあっ!
だ、出すぞっ、……オマエの中にっ、で、でちゃうぅっ!」
びゅくんっ、びゅくんと、彼女のペニスがまた震える。
その瞬間、どぷどぷっと音が立ちそうなほどの勢いで、熱いジェルのようなものが僕のお尻の中を満たしていく。彼女の絶頂と同時に、僕も勢いよく射精してしまった。
僕のペニスは擦られてもいないのに勝手にびくんびくんと震えて、壊れた蛇口みたいに精液をこぼし続ける。お尻の中をぐちゅっと彼女のペニスが擦っていくたびに、快感がお尻の奥から駆け上っていく。
絶頂が終わっても少しの間、彼女は余韻に浸るかのように腰を振り続け、言葉にならない言葉を喋っていた。
「あ、あ、あぁぁ、はぁっ、で、でひゃっ、たぁ……ッ」
彼女の吐き出した液体は火傷しそうなほど熱く、射精したばかりの僕の身体に追い打ちを掛けるように快楽を生ませた。
僕と彼女はまだ繋がったまま、力尽きたように倒れ込んだ。
「はーっ、はーっ……。あ、うぅ、気持ち、よかったぁ……♪」
満足そうに彼女が呟く。
そのまま何も言わずに、彼女はぎゅっと僕を背中から抱きしめた。
ふっと気が付くと――
六限目のチャイムが鳴って、僕と彼女ははっと夢から覚めるように飛び起きた。
二人ともここが保健室のベッドであることなんて忘れていて、好き放題に絡み合っていたのだから。
しかもベッドは二人分の色んな液体で汚れてしまっている。
色々な事を大目に見てくれていたヒトミ先生だが、これで怒られるのは火を見るよりも明らかだった。
「……なぁ。どーせ怒られるんだし、もう少し……だけ、」
これも彼女の暗示なのかどうか、僕には分からない。
「あたし、まだ、足りないんだ」
ただ、僕はその甘い言葉に抗うことができず、
「今度は……オマエにしてほしいから、さ」
そっと目を閉じた彼女に、唇を重ねた。
15/01/07 01:12更新 / しおやき