読切小説
[TOP]
ヒトツメガタリ
……何かと思えば、また、オマエか。
なんだよ、そんな怖い顔しちゃってさ。
にしても、わざわざこんなヘンピな洞窟までご苦労さんだねぇ。
暗くてじめじめしてて、さぞかしイヤな気分だろ。あたしは嫌いじゃないけどね。

……ああ。
その剣見れば、オマエが何しに来たかぐらい、あたしにも分かるよ。
どっかの誰かに、頼まれてきたんだろ?
あたし、気に入らなかったヤツには二度と暗示を掛けてないからな。
一度犯して、気に入らなかったらそいつはもうオシマイだ。
そんで、逃がした後で暗示が解けて、正気に戻ったどっかのニンゲンが依頼を出した。
「一つ目のバケモノに酷い目に遭わされた、ぶっ殺してくれ」ってカンジか。
ま、あたしもいちいちニンゲンの顔なんて覚えてないから、誰かは知らないけどさ。
――つまりオマエは、あたしを恨んでる誰かに依頼されて、あたしを殺しに来た。
そうだろ?

……違うのか? 
でも、オマエのコトは犯したことなんてないと思うけど――なに、それも違うって?
じゃあなんだ、ただあたしとおしゃべりしに来たとか言うんじゃないだろうな。
……そりゃ、そうか。 ちょっと雨宿り、って場所でもないもんな。

……はあ?
つまりそれは、あたしにここから出てけ、って言ってるのか?
この洞窟に思い入れがあるワケじゃないけど、どこに住もうがあたしの勝手だろ。
オトコを襲うのだって、お前らが動物を食うのと何にも変わらないんだ。
お前らニンゲンだけの勝手な都合なんて、押し付けられたくないね。

……そんな申し訳なさそうに言われてもな。
いいよ、別にオマエが悪いなんて思ってないよ。どうせ誰かに言われて来たんだろ。
魔物のあたしを怒らせないように、話し合いでカタ付けてこいって。
この辺で、あたしを力づくでどうこう出来るヤツなんかいるとは思えないしな。
違うのかよ?

……そうか。ひでえコトするんだな、オマエの村のヤツらも。
ああ、そんぐらい分かってる。「みんなの意見」じゃあ、断れるわけない。
ははっ、オマエも相当厄介もんにされてるなあ。他人の気がしないね。

……その武器も、飾りじゃなかったワケだ。
それでお前、あたしを懲らしめるか、あたしのイケニエになるか、選ばされたってわけか。

じゃ、あたしの言ったコト、半分は当たってたんだな。
分かっちゃいたけど、そんなにニンゲンから嫌われてたなんてねぇ。
ま、元々魔物嫌いなヤツの多い地域ってのはどっかで聞いてたけどさ。

でも、そんならますますココに居たくなるな。
……なんだよオマエ、分かってないのか?
ニンゲンがあたしのトコにやってくるなら、そんだけあたしにとっちゃエサが増えるんだよ。
オトコのセイエキは、あたしら魔物にとってたまんないエモノなんだ。
それもあっちの方からやってきてくれるなんて、こんな美味い話があるかっての。

……ああ、オマエはそれ、知ってたのか。 で、なんだ?
さっき言った通りに、これからオマエがエサになってくれるってのか?

……ははっ。オマエ、面白いコト言うなぁ。あたしにそんなコト言ったヤツ、初めてだよ。
まだ暗示も掛けてないのにね。
でもさあ、あたしなんか連れてたら、そうそう旅なんて出来ないって。
こんな一つ目のバケモノ、どこに行ったって気味悪がられるからな。

……ああ、もういいって。面白いジョークだったけどさ。
そんな何回も言わなくっていいよ。ニンゲンにとっちゃ気味悪いだろ、こんな赤い一つ目。

……んあ? 冗談じゃないって? オマエ、何言ってんだ。
一緒に行く、って……それ、どういう意味か分かってんのかよ。

……バカ言うな。こっから近い村全部、魔物嫌いなトコばっかりだろ。
あたしと一緒に居るトコなんて誰かに見られたら、オマエだって白い目で見られるぞ。
店も宿も門前払いだ。あたしを厄介払いするまで、ずーっと野宿でもイイってのか。
……え? あたしの厄介払い、じゃなくて?

……だ、だから。オマエ言ってるコトが滅茶苦茶だっての。
そんなの、オマエには何の得も無いだろ。
あ、あたしはどこに居たって、平気のつもり、だけど……。

……。 そっか。
もう分かったぞ。オマエ、あたしをバカにして遊んでやろうってハラだな。
いーや、そんなワケないね。もうあんたの魂胆なんか分かってんだ。
意地でもホントって言いたいんなら、あたしにオマエの覚悟、見せてみろよ。
ほら、どうしたんだ?
わざわざ目まで閉じてやってんだ、キスの一つでもしてみろよ?

おっと、言っとくけど不意打ちで切りかかろうとしたってムダだぞ。
こうやって目閉じてたって、素人丸出しなオマエの攻撃ぐらい簡単に避けられるからな。
どうせ口先だけで、てきと、うに、

――んむっ、?! っ!? お、オマエ、なに、して……?!

え、あ、ち、ちが……ほ、ホントに、なんて……思ってなくて。
……ま、待って。まだ、ココロの準備――んっ、むぅ……っ!

ぷはっ、んぁ……ど、どうして。ウソだとおもった、のに……。
……い、イヤじゃ、ない……けど。
ちょ、ちょっ、だから待ってよ、あたし、ソコ、弱く、てっ……!


……はぁ、はぁっ。わ、分かったよ。
もうウソじゃないって、分かった、からぁっ……。
え、あっ、やっ……いま、そんな熱いの、入れられ、たらぁ……ッ!


――っ……♪


んぅ……すっごく……せーえき、美味しい……。
……ち、違うよ。久しぶりだったし、お、オトコのセイエキなんて、どれも――
あ、ちょ、ちょっと、じょ……冗談だって。
そんな、に、二回目、ってぇ……っ、い、イったの、まだ残って、――んぁぁっ!

はーっ、はーっ……。もう、ナカ、いっぱい……。
……あんたの気持ち、ちゃんと、分かったよ。
疑ったのは悪かったけど、さ。……もーちょっと優しくしてくれたって、いいじゃん。
……や、そんな謝んなくってもいいって。
その……あたしも、気持ち良かったし。

……なっ、なんだよ、ヘンな顔して。
あたしが恥ずかしがるのが、そんなにおかしいかよ。
……ば、ばぁか。そ、そんな褒められかた、ちっとも嬉しくないっての。

……でさ。これから、どうしよっか。
分かってる、ベツに未練なんかない。ちゃんとあたしはこの洞窟から出てくよ。
でも……オマエは違うだろ。
これは全部あたしの問題だし、あたしが自分から引き起こしたコトだ。
無理してオマエがここから離れる必要なんてないし、オマエまで巻き込めるか。
オマエには家族だっているはずだろ。

……そっか、ごめん。余計なコト聞いちゃった。
そうでもないと、こんな役回りにされるワケないもんな。

けど……それならあたしも、似たようなもんだよ。
言い訳するつもりじゃないし、ムジュンしてるかもしんないけど。
あたし、独りでいるの……寂しかったんだ。
だから、ココに来たヤツには軽い暗示を掛けて、少しでも誤魔化してた。

……ああ、そうだね。
あたしの暗示なら、来たヤツをずーっとここに引き留めることだって出来るかもしれない。
でも、そいつらにはみんな、ちゃんと大切な誰かがいたんだ。
そう思うとさ、何度も暗示なんて掛けたくなかったんだよ。
人のモン奪って、幸せになんかなれるワケないんだ。

けど、あたしもガマン出来ないし、オトコを襲わないワケにいかなかった。
嫌いでも何でもいい、構ってほしくて、わざと暗示が解けるようにしてたんだ。
それなら、どっちにしろ誰か来てくれるかなって。

……うん。そりゃ、その。
あんたみたいに、そう思ってくれるヤツがいたんなら。
そっちのが、……う、嬉しいに、決まってるっての。

……うるさいな、オマエだってカオ真っ赤のくせに……。

なあ。
家族とかそういうのって、あんまりよく分かんないけどさ。憧れてたんだ、ちょっとだけ。
ごっこ遊びでもいいんだ。
オマエが一緒に、あたしと来てくれるっていうならさ。
……あたしの、家族になってくれないか。

え? ……ちょっとだけ、違う?


 ああ、そっか。
 ニンゲンはこういうの、コイビトっていうんだよね。
13/11/12 09:16更新 / しおやき

■作者メッセージ
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

展開にひねりがないなら見せ方を変えればいいじゃない! という小学生的発想。
しかもゲイザーちゃんで書いてるのに暗示を使わせないというあるまじき書き方。
もっと素材の味を生かした物語を書ける方は早く書いてください。
あ、えろいのでお願いします。

11/12 変な文がありましたのでちょっとだけ修正しました。

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33