風邪ひきさんに差し入れを
木曜日の昼過ぎ・・・
ブイ〜ン ブイ〜ン
枕元においてあった携帯電話が振動音を立てる。
「う〜〜〜む・・・」
唸りながら俺は携帯を取った。
俺の名前は村木 陽太。
高校2年生だ。
部活はサッカー部に所属している。
そんな俺が平日の昼過ぎだというのにベッドで横になっている理由・・・簡単だ。
風邪を引いて寝込んでいたからだ。
熱は下がってきたが、まだ頭はボーっとするし、身体はだるい。
携帯のバイブ音でもそんな体調では頭に響いた。
今は眠っていなかったが、午前中はかなりこれでうつらうつらしていたところを邪魔された。
携帯の用件のほとんどはお見舞いメールだった。
お見舞いメールは悪くないが、つらい。
それに加え、女子の媚びた文面は調子が悪くて気が立っている俺には正直うざかった。
「・・・誰だ」
サブディスプレイには今回は「本田 萌黄」と表示されている。
サッカー部の後輩で、ホーネットだ。
昨日の夜、突然の通り雨で萌黄が学校の昇降口で立ち往生していたためカサを貸したのだが・・・
メールを見てみる。
『起こしてしまったらスミマセン。昨日はありがとうございました。』
強気、凶暴と称せられるホーネットらしからぬ丁寧な文面だ。
関係が先輩後輩だから、当然ではあるのだが・・・
『でも今日、先輩が風邪を引いて休んだと光から聞いて・・・私がカサを貸してもらって、先輩が濡れちゃったからですよね、スミマセン』
別に謝らなくていいのにと俺は考える。
好きで俺は萌黄にカサを貸した。
いや、あれは押し付けたと言ったほうがいいか?
ちょっと相合傘をする勇気はなかった。
ちなみに「光」と言うのは俺の妹で、萌黄のクラスメートだ。
メールは続いている。
『カサも返したいですし、放課後、先輩の家にお見舞いに行ってもいいですか?』
気持ちは嬉しいが、うつる可能性がある・・・だが一人ベッドで横になっているのもつらい。
父親は仕事、母親は10年前に離婚したためいない。
妹は学校にいるため、今家にいるのは自分だけだ。
一人で粥を温めたり飲み物を取ったりするのは辛い。
妹が帰ってくるのを待てばいいだけの話なのだが・・・
『頭が痛い・・・』
俺は眉間をもんだ。
もう長く考えられない。
ボーっとする頭で俺は短く返事を書いて携帯を枕元に放り投げた。
『いいよ』
ぶっきらぼうなメールになってしまったが、少なくとも萌黄が来てくれるのは嬉しかった。
むしろ来てもいいと言った理由はそれだった。
16時ごろ、玄関のチャイムが鳴った。
「・・・・・・」
ここは自分が出なければならない。
ベッドから出てベンチコートをはおり、重く感じる身体を引きずってドアを開ける。
「お邪魔しま〜す」
肩に学生鞄と愛用の槍を担ぎ、片手に物が詰まったスーパーのビニールの袋を、もう一方の手に貸したカサを持った、制服姿の萌黄が入ってきた。
文字通り、大急ぎで飛んできたのか、息が少し上がっていて、背中は翅を出すためにフリーになっている。
「どうぞ・・・光は?」
「ちょっと買い物とかいろいろ用事があるって言ってました」
・・・じゃあ彼女が持っているビニール袋はなんなんだ?
疑問に思ったが頭が重たくて何も考えられなかった。
「先輩、カサ、ありがとうございました」
「いえいえ・・・どういたしまして ・・・すまんがまたベッドで横になるわ」
「分かりました。何か欲しいものとかありますか?」
「あ〜〜・・・」
鼻詰まりを起こした間抜けな声をだして考える。
「・・・ちょっとお腹すいた。それから温かい飲み物が欲しい」
萌黄の言葉に甘えてリクエストする。
「分かりました。ちょっと待っててくださいね。キッチン借りま〜す」
にっこりと笑いながら萌黄は楽しそうにキッチンに向かった。
「お待たせしました、ご主人様♪」
数分後、お盆に紫色のゼリーと湯気を立てているマグカップを乗せて萌黄が部屋に入ってきた。
しかし、なぜかメイド言葉・・・
「・・・なんだ、それは?」
「いや、『お待たせしました』って言ったらついやってみたくなって・・・」
「・・・なんかシチュが違うぞ」
「じゃあ、ナースの真似をしたほうが良かったですか?」
萌黄が目を細めてクスクス笑う。
後輩ではあるのだが、こうやってS気をだしたり先輩をからかったりするのはやっぱりホーネットらしい。
「あ〜〜・・・」
萌黄の言葉に、ナースだったらなんて言うんだろうと俺は考えたが、風邪を引いた頭では何も考えられなかった。
「はい、ブドウゼリーとホットレモネードです」
「プリンじゃないのか?」
「プリンだとレモネードが渋く感じちゃうので・・・」
萌黄が微笑む。
「食べさせてあげましょうか?」
「そこまで重病じゃねぇよ」
「いいじゃないですか。ほぅら、あ〜ん・・・」
俺は苦笑しながら半身を起こし、萌黄がすくったゼリーを口に含んだ。
甘いブドウの味が舌をなで、つるりと、物を受け付けにくい喉を通っていく。
あっという間にブドウゼリーはなくなった。
「うまかった」
「良かったです。冷めないうちにレモネードもどうぞ」
ニコニコしながら萌黄はレモネードを勧める。
「ああ、ありがとう」
ずずずっとレモネードをすする。
「はぁ・・・温まる。それに甘くて美味しい。 ・・・・?」
「どうしました?」
「いや、家にある、粉のレモネードってこんなに甘かったっけなって」
「ふふふ・・・いえ、それは家にあったインスタントのレモネードではなく、あたしお手製のレモネードです」
「そうか・・・わざわざありがとう」
萌黄の気持ちがうれしく、一口、また一口と飲んでいく。
そんな俺を萌黄はニコニコしながら見つめている。
ちょっと照れくさい。
甘くて暖かいレモネードが喉を通って胃に落ちていく。
身体が温まって、底から力が湧いてくるようだ。
でもなんか変だ。
確かに力が湧いてくるような気がするが、それ以外も・・・
「どう、効きそうですか? 元気になれそうですか?」
ズイっと萌黄が近づいてくる。
ドキン・・・
『萌黄ってこんなに可愛かったっけ?』
いや、可愛いとは前から思っていて気になっていた。
だが今はなんかそれ以上に感じる。
少し切れ長で勝気そうな、それでいて今は潤んでいる目、小さな鼻、ちょっと薄めの、だがつやつやしているくちびる・・・
「あ、ああ・・・元気になれそうだ」
答えてからハッとする。
『い・・・いかん、俺は何を見ているんだ!?』
目を下に向けるがそれも失敗だった。
萌黄は結構胸が大きい。
胸が制服のブラウスを押し上げてボタンを浮かせ、隙間からブラが覗いている・・・
「先輩・・・」
いつの間にか萌黄がベッドにのっており、俺をまたぐ形になっている。
そしてそのまま顔を近づけてきた。
ちゅっ・・・
俺のくちびると萌黄のくちびるが重なる。
「萌黄・・・一体なに・・・ん!?」
さえぎるように萌黄は俺の喉元に両手を当てて上を向かせ、くちびるを貪る。
萌黄の舌が俺のくちびるを割って侵入してきて、俺の口の中を蹂躙し始めた。
舌を絡めとり、歯列をなぞり、唾液を混ぜて俺に飲ませ、自分も飲む。
ぐっ・・・
萌黄の腰が下りた。
俺の股間と萌黄の股間が密着する。
そのとき俺は自分が勃っていることに気付いた。
今は萌黄の制服のスカートで隠れているが、相当大きくなっている。
多分、キスされる前から勃っていた。
だが、なぜ・・・
確かにエロいシチュエーションだが、それだけでは説明が付かない。
考えられるとしたら・・・
「ぷはっ・・・・萌黄、お前さっき何を飲ませ・・・?」
「先輩・・・今はあたしだけを見てください!」
俺の言葉は萌黄にさえぎられた。
萌黄が制服を脱いでいく。
「おかしいぞ、萌黄・・・一体どうしたんだ?」
「おかしいのは分かっています! でもこうするしかバカなあたしは思いつかなかったんです!」
ブラウスを脱ぎ捨てた萌黄が叫ぶ。
「先輩・・・ずっと、ずっと好きでした・・・! 優しくて、サッカーも上手くて、イケメンで、でもちょっと抜けていたり甘えん坊だったり草食系だったりする先輩が好きでした!」
・・・萌黄には悪いのだが、半分くらいは俺の頭に入っていない。
風邪の影響かさっきのキスの影響か、俺はボーっとしてしまっている。
かまわず萌黄は続ける。
「でも先輩はモテていろんな女の子に囲まれていて・・・だから・・・だから・・・あたしだけを見て欲しくて・・・その・・・!」
しゃべっているうちに興奮してパニックに陥ったのか、萌黄の言葉が迷子になる。
ここまでの手段に出るとは、相当焦っていたのだろう。
「先輩、好きです・・・付き合ってください! 抱いてください・・・!」
ややこしいことを言うのはやめにしたのか、スカートを脱ぎ捨て萌黄はそう言いきった。
両思いだったとは・・・嬉しかった。
だけど、風邪引いている人間に『抱いてくれ』とかなんて無茶な・・・思わず俺は苦笑する。
そんな俺の状態に構わず、萌黄は俺のパジャマのズボンを下着ごと下ろした。
大きくなっていた俺の性器があらわになる。
「すごい大きい・・・これが先輩のおち○ち○・・・」
まじまじと萌黄は俺のアソコを見つめる。
ちょっと恥ずかしくて、さらに熱が上がったかかと思った。
萌黄の手がそっと俺のアソコを包む・・・
「熱い・・・」
ボソッと萌黄がつぶやいた。
その手が上下に動き始める。
「あっ・・・くっ・・・」
思わず俺は声を漏らした。
萌黄の手はぎこちないのに、自分でやるより気持ちいい。
俺の反応にくすりと笑った萌黄はさらに大胆になり、手の動きが速くなる。
「先輩、気持ちいいですか?」
上目遣いで萌黄は尋ねる。
今まで女子の上目遣いは媚びていて気持ち悪い態度だと思っていたが、萌黄のそれはとてもかわいらしかった。
どくん、頭とアソコが強く脈打つ。
それを感じ取ったのか、萌黄が嬉しそうに微笑んだ。
「今、ビクッてなりましたよ。気持ちいいんですね?」
そして萌黄が俺のアソコに顔を近づけていく。
チュッ・・・
萌黄が俺のアソコに口付けをする。
さらにそのまま俺のアソコを飲み込んだ。
「ああ・・・萌黄・・・!」
自分の後輩が俺のをしゃぶっている・・・快感とエロいシチュエーションに俺は身体を震わせた。
「あ、ちょ・・・萌黄、ストッ・・・やめ・・・!」
出そうになって、俺は萌黄にやめるように言おうとした。
だが、萌黄はやめない。
萌黄が俺の反応を見て目を細める。
その目は俺をからかっているときに良く見られる目だった。
萌黄が追い込みをかけてきた。
「ちょ・・・本当に・・・あ・・・!」
なす術もなく、俺は萌黄の口の中に白濁の液をぶちまけてしまう。
萌黄は驚いたように、細めていた眼を見開いたが、すぐにそれを飲み下した。
「うふふ、飲んじゃった・・・先輩、かわいかったです」
萌黄がにやりと笑う。
「ちょ、先輩にかわいい言うな」
「でも言われてちょっと嬉しいんですよね?」
見抜かれている。
俺は苦笑した。
でも言われるままというのも癪だから反撃しようとするが、萌黄に押しとどめられた。
「一応風邪引いてますから・・・先輩は今日はマグロでもいいですよ」
「でも俺ばかり気持ちよくなるのは・・・」
「大丈夫ですよ、ほら・・・あたしももうこんなに・・・」
見せ付けるように萌黄がショーツを下ろす。
銀色の露が糸を引いていた。
それを見て俺のアソコが再び勃つ。
「行きますよ・・・楽にしていてください」
俺にまたがっていた萌黄がゆっくりと腰を落としていく。
にゅぶ・・・
なんとも言えないイヤラシイ音が立つ。
「ん・・・あ・・・んぅ」
「萌黄・・・ぃ・・・」
二人の嬌声が絡まりあう。
「はぁ・・・・全部入りましたよ。うふふ・・・これで先輩はあたしのもの・・・」
俺と一つになり、萌黄が笑みを浮かべて俺を見下ろす。
その笑みはエロさと満足感が混ざっていた。
「動きますね。ん・・・はう!」
ゆっさゆっさと萌黄が腰を動かす。
萌黄は何もしなくていいと言っていたけど、それじゃやっぱりさびしい。
かと言って激しく動くのもつらい。
とりあえず俺は伸ばしていた手を持ち上げ、萌黄の太ももを、お尻を、そして昆虫の腹部を撫でる。
「んあ! そ・・・そこは今はダメ・・・」
意外にも萌黄が体をよじって声を上げた。
そこが弱点だった?
「今は・・・先輩を刺していない分、淫毒がたまっているから・・・」
そういうことだったのか・・・・そう思っていると萌黄が体を倒してきた。
「先輩・・・やってくれるならそこだけじゃなくて、おっぱいとかも触ってください」
言われるがまま、萌黄の胸に手を這わせる。
萌黄の大きな胸はすべすべしていて弾力もあり、握るとゴムボールのように俺の指を押し返した。
さらに親指で胸の頂点をはじく。
「うっ・・・あん・・・!」
萌黄が身体をすくませる。
やっぱりそこは気持ちいいらしい。
じゃあ、同じように硬くなるここは・・・?
「ひゃっ! そこは・・・そこはダメェ・・・!」
口ではそうは言っているけど、本当に嫌がっているわけではない。
聞き流してクリトリスをいじり続ける。
しかし、すぐ後悔することになった。
「もう!すぐイキそうになるからダメなのに・・・そんなにしちゃうんだったら、一緒にイカせちゃいますよ?」
そう言って萌黄は体を密着させて抱きつき、俺を拘束した。
そして腰を激しくくねらせ始める。
「くっ・・・萌黄・・・やめ・・・出そうだ・・・」
再び湧き上がってきた射精感に俺は萌黄に手加減を求めたが・・・
「うふふ・・・だ〜め♪」
萌黄は目を細めて笑い、相変わらず腰をくねらせ続ける。
「先輩、あたしがダメって言ってもやめなかったですもん。イキそうなところまで追いやられたんだから・・・責任とって一緒にイッてもらうんですから・・・後輩のことはちゃんと先輩に責任をとってもらうんですからぁ!」
そう言って俺がそれ以上なにも言えないように、くちびるで口を塞がれる。
「んっ・・・んっ、んん!」
キスをしている萌黄の口から甘い声が漏れている。
俺も耐えられないほど気持ちいいが、萌黄も気持ちいいらしい。
そして、それ以上我慢できなくなるのは、二人ほぼ同時だった。
「んんんっ!」
キスをしたまま、萌黄がくぐもった絶叫を上げて身体を固くした。
膣がひとりでに激しくうねる。
まるで、一人でイッたのが悔しいから道づれにするかのような、強気な萌黄にふさわしい動きだった。
「んぐっ!」
萌黄に拘束されたままだったので抜くこともままならず、俺は萌黄によって、一緒に絶頂を見た・・・
どくどくと俺の精液が萌黄の体内に注がれていく。
萌黄は絶頂の影響で硬くしている体でその精液を子宮に受け止めた。
しばらく二人は身体を固くしていたが、やがて絶頂が過ぎ去り、脱力する。
「んふぅ・・・ねぇ、先輩・・・もうこんなにしちゃったから、先輩はあたしのもの、あたしは先輩のものですよね?」
俺の上で身体を預けたまま、しかし腕は俺をしっかりと抱きしめながら萌黄がささやく。
「ああ、そうだな」
全裸の萌黄を抱きしめ返しながら俺は答える。
そうだ、順番がめちゃくちゃになっちゃったけど、これは言わないとな・・・
「なぁ萌黄・・・俺がお前にカサを貸したのは、お前が好きだったからなんだぜ?」
「・・・え?」
萌黄が驚いた顔をする。
「萌黄、俺もお前が好きだ。付き合ってくれ」
「・・・はい!」
俺が何を言っているか理解し、萌黄はギュッときつく抱きついてきた。
可愛いなぁ、もう。
「でもさぁ・・・風邪ひいている俺に『エッチしてくれ』なんて酷いぞ。風邪が悪化したらどうするんだ?」
「・・・大丈夫です」
何を根拠にしているのか、やけにきっぱりと萌黄は言う。
そう言おうと萌黄のほうに顔を向けようとすると、ちょうど萌黄も俺を覗き込もうとしたのか、顔を上げた。
二人の眼が合う。
こうなっちゃったらもう野暮なことを聞く雰囲気じゃない。
やることは一つだ。
俺たちはキスをする。
少し甘くて爽やかな唾液が俺の舌にたっぷりとなすりつけられた。
翌朝・・・金曜日の朝。
俺と萌黄は一緒に登校していた。
もう恋人同士だが、手は繋いで歩かない。
萌黄が望んだことだった。
「さすがに昨日、風邪で学校を休んでいたのに、今日付き合っているのバレバレで登校したら『昨日何やっていたんだ?』って事になりますから・・・」
萌黄がラフな言葉を使わず、まだ丁寧語で俺に話しかけているのもそのためだ。
そんなわけで、手を繋いだり大々的にラブラブな雰囲気を出したりするのは、明日のデートからと言うことになりそうだ。
恋人同士ってことを隠して、今までどおりの先輩後輩の関係を表に出す・・・
ちょっとギクシャクしながら、俺たちは並んで歩く。
手は繋げないが、でも互いが隣にいて意識しあっているのは何か幸せな気分だった。
「そういえば・・・」
俺が口を開いた。
「はい、なんでしょう?」
「昨日、俺に何を飲ませたんだ?」
気になっていたが、萌黄にさえぎられてしまった疑問を今更ながら口にする。
「・・・アレですか。ハニービーからもらった元気が出るタイプの特製のハチミツをレモネードに入れました。」
「やっぱり一服盛ったか・・・って、え?」
俺は耳を疑った。
今、ハニービーからもらったと言わなかったか?
「え、たしかホーネットとハニービーって・・・」
「ええ、仲悪いですとも。でも・・・ううん、だからあたしは頭を下げてまでしてもらいました」
昨日「他の人にとられたくない」と言っていたが、そこまでしてまで俺を手に入れたかったらしい。
「ただ単に『その気にさせる』だけなら、私が刺せばいいだけの話ですけど、風邪引きさんにそれをやっちゃマズイですからね〜」
にやりと萌黄が笑い、風邪は治ったのに背筋が少し寒くなる。
その笑顔は『今度はたっぷりやるから覚悟してね』と言っていた。
学校が見えてきた。
名残惜しみながら、いつの間にか寄っていた俺たちはあわてて半歩ずつ身を離す。
風邪を引いて休んでいる間に起こった大きな変化を隠しながら、俺たちは学校に行く。
ブイ〜ン ブイ〜ン
枕元においてあった携帯電話が振動音を立てる。
「う〜〜〜む・・・」
唸りながら俺は携帯を取った。
俺の名前は村木 陽太。
高校2年生だ。
部活はサッカー部に所属している。
そんな俺が平日の昼過ぎだというのにベッドで横になっている理由・・・簡単だ。
風邪を引いて寝込んでいたからだ。
熱は下がってきたが、まだ頭はボーっとするし、身体はだるい。
携帯のバイブ音でもそんな体調では頭に響いた。
今は眠っていなかったが、午前中はかなりこれでうつらうつらしていたところを邪魔された。
携帯の用件のほとんどはお見舞いメールだった。
お見舞いメールは悪くないが、つらい。
それに加え、女子の媚びた文面は調子が悪くて気が立っている俺には正直うざかった。
「・・・誰だ」
サブディスプレイには今回は「本田 萌黄」と表示されている。
サッカー部の後輩で、ホーネットだ。
昨日の夜、突然の通り雨で萌黄が学校の昇降口で立ち往生していたためカサを貸したのだが・・・
メールを見てみる。
『起こしてしまったらスミマセン。昨日はありがとうございました。』
強気、凶暴と称せられるホーネットらしからぬ丁寧な文面だ。
関係が先輩後輩だから、当然ではあるのだが・・・
『でも今日、先輩が風邪を引いて休んだと光から聞いて・・・私がカサを貸してもらって、先輩が濡れちゃったからですよね、スミマセン』
別に謝らなくていいのにと俺は考える。
好きで俺は萌黄にカサを貸した。
いや、あれは押し付けたと言ったほうがいいか?
ちょっと相合傘をする勇気はなかった。
ちなみに「光」と言うのは俺の妹で、萌黄のクラスメートだ。
メールは続いている。
『カサも返したいですし、放課後、先輩の家にお見舞いに行ってもいいですか?』
気持ちは嬉しいが、うつる可能性がある・・・だが一人ベッドで横になっているのもつらい。
父親は仕事、母親は10年前に離婚したためいない。
妹は学校にいるため、今家にいるのは自分だけだ。
一人で粥を温めたり飲み物を取ったりするのは辛い。
妹が帰ってくるのを待てばいいだけの話なのだが・・・
『頭が痛い・・・』
俺は眉間をもんだ。
もう長く考えられない。
ボーっとする頭で俺は短く返事を書いて携帯を枕元に放り投げた。
『いいよ』
ぶっきらぼうなメールになってしまったが、少なくとも萌黄が来てくれるのは嬉しかった。
むしろ来てもいいと言った理由はそれだった。
16時ごろ、玄関のチャイムが鳴った。
「・・・・・・」
ここは自分が出なければならない。
ベッドから出てベンチコートをはおり、重く感じる身体を引きずってドアを開ける。
「お邪魔しま〜す」
肩に学生鞄と愛用の槍を担ぎ、片手に物が詰まったスーパーのビニールの袋を、もう一方の手に貸したカサを持った、制服姿の萌黄が入ってきた。
文字通り、大急ぎで飛んできたのか、息が少し上がっていて、背中は翅を出すためにフリーになっている。
「どうぞ・・・光は?」
「ちょっと買い物とかいろいろ用事があるって言ってました」
・・・じゃあ彼女が持っているビニール袋はなんなんだ?
疑問に思ったが頭が重たくて何も考えられなかった。
「先輩、カサ、ありがとうございました」
「いえいえ・・・どういたしまして ・・・すまんがまたベッドで横になるわ」
「分かりました。何か欲しいものとかありますか?」
「あ〜〜・・・」
鼻詰まりを起こした間抜けな声をだして考える。
「・・・ちょっとお腹すいた。それから温かい飲み物が欲しい」
萌黄の言葉に甘えてリクエストする。
「分かりました。ちょっと待っててくださいね。キッチン借りま〜す」
にっこりと笑いながら萌黄は楽しそうにキッチンに向かった。
「お待たせしました、ご主人様♪」
数分後、お盆に紫色のゼリーと湯気を立てているマグカップを乗せて萌黄が部屋に入ってきた。
しかし、なぜかメイド言葉・・・
「・・・なんだ、それは?」
「いや、『お待たせしました』って言ったらついやってみたくなって・・・」
「・・・なんかシチュが違うぞ」
「じゃあ、ナースの真似をしたほうが良かったですか?」
萌黄が目を細めてクスクス笑う。
後輩ではあるのだが、こうやってS気をだしたり先輩をからかったりするのはやっぱりホーネットらしい。
「あ〜〜・・・」
萌黄の言葉に、ナースだったらなんて言うんだろうと俺は考えたが、風邪を引いた頭では何も考えられなかった。
「はい、ブドウゼリーとホットレモネードです」
「プリンじゃないのか?」
「プリンだとレモネードが渋く感じちゃうので・・・」
萌黄が微笑む。
「食べさせてあげましょうか?」
「そこまで重病じゃねぇよ」
「いいじゃないですか。ほぅら、あ〜ん・・・」
俺は苦笑しながら半身を起こし、萌黄がすくったゼリーを口に含んだ。
甘いブドウの味が舌をなで、つるりと、物を受け付けにくい喉を通っていく。
あっという間にブドウゼリーはなくなった。
「うまかった」
「良かったです。冷めないうちにレモネードもどうぞ」
ニコニコしながら萌黄はレモネードを勧める。
「ああ、ありがとう」
ずずずっとレモネードをすする。
「はぁ・・・温まる。それに甘くて美味しい。 ・・・・?」
「どうしました?」
「いや、家にある、粉のレモネードってこんなに甘かったっけなって」
「ふふふ・・・いえ、それは家にあったインスタントのレモネードではなく、あたしお手製のレモネードです」
「そうか・・・わざわざありがとう」
萌黄の気持ちがうれしく、一口、また一口と飲んでいく。
そんな俺を萌黄はニコニコしながら見つめている。
ちょっと照れくさい。
甘くて暖かいレモネードが喉を通って胃に落ちていく。
身体が温まって、底から力が湧いてくるようだ。
でもなんか変だ。
確かに力が湧いてくるような気がするが、それ以外も・・・
「どう、効きそうですか? 元気になれそうですか?」
ズイっと萌黄が近づいてくる。
ドキン・・・
『萌黄ってこんなに可愛かったっけ?』
いや、可愛いとは前から思っていて気になっていた。
だが今はなんかそれ以上に感じる。
少し切れ長で勝気そうな、それでいて今は潤んでいる目、小さな鼻、ちょっと薄めの、だがつやつやしているくちびる・・・
「あ、ああ・・・元気になれそうだ」
答えてからハッとする。
『い・・・いかん、俺は何を見ているんだ!?』
目を下に向けるがそれも失敗だった。
萌黄は結構胸が大きい。
胸が制服のブラウスを押し上げてボタンを浮かせ、隙間からブラが覗いている・・・
「先輩・・・」
いつの間にか萌黄がベッドにのっており、俺をまたぐ形になっている。
そしてそのまま顔を近づけてきた。
ちゅっ・・・
俺のくちびると萌黄のくちびるが重なる。
「萌黄・・・一体なに・・・ん!?」
さえぎるように萌黄は俺の喉元に両手を当てて上を向かせ、くちびるを貪る。
萌黄の舌が俺のくちびるを割って侵入してきて、俺の口の中を蹂躙し始めた。
舌を絡めとり、歯列をなぞり、唾液を混ぜて俺に飲ませ、自分も飲む。
ぐっ・・・
萌黄の腰が下りた。
俺の股間と萌黄の股間が密着する。
そのとき俺は自分が勃っていることに気付いた。
今は萌黄の制服のスカートで隠れているが、相当大きくなっている。
多分、キスされる前から勃っていた。
だが、なぜ・・・
確かにエロいシチュエーションだが、それだけでは説明が付かない。
考えられるとしたら・・・
「ぷはっ・・・・萌黄、お前さっき何を飲ませ・・・?」
「先輩・・・今はあたしだけを見てください!」
俺の言葉は萌黄にさえぎられた。
萌黄が制服を脱いでいく。
「おかしいぞ、萌黄・・・一体どうしたんだ?」
「おかしいのは分かっています! でもこうするしかバカなあたしは思いつかなかったんです!」
ブラウスを脱ぎ捨てた萌黄が叫ぶ。
「先輩・・・ずっと、ずっと好きでした・・・! 優しくて、サッカーも上手くて、イケメンで、でもちょっと抜けていたり甘えん坊だったり草食系だったりする先輩が好きでした!」
・・・萌黄には悪いのだが、半分くらいは俺の頭に入っていない。
風邪の影響かさっきのキスの影響か、俺はボーっとしてしまっている。
かまわず萌黄は続ける。
「でも先輩はモテていろんな女の子に囲まれていて・・・だから・・・だから・・・あたしだけを見て欲しくて・・・その・・・!」
しゃべっているうちに興奮してパニックに陥ったのか、萌黄の言葉が迷子になる。
ここまでの手段に出るとは、相当焦っていたのだろう。
「先輩、好きです・・・付き合ってください! 抱いてください・・・!」
ややこしいことを言うのはやめにしたのか、スカートを脱ぎ捨て萌黄はそう言いきった。
両思いだったとは・・・嬉しかった。
だけど、風邪引いている人間に『抱いてくれ』とかなんて無茶な・・・思わず俺は苦笑する。
そんな俺の状態に構わず、萌黄は俺のパジャマのズボンを下着ごと下ろした。
大きくなっていた俺の性器があらわになる。
「すごい大きい・・・これが先輩のおち○ち○・・・」
まじまじと萌黄は俺のアソコを見つめる。
ちょっと恥ずかしくて、さらに熱が上がったかかと思った。
萌黄の手がそっと俺のアソコを包む・・・
「熱い・・・」
ボソッと萌黄がつぶやいた。
その手が上下に動き始める。
「あっ・・・くっ・・・」
思わず俺は声を漏らした。
萌黄の手はぎこちないのに、自分でやるより気持ちいい。
俺の反応にくすりと笑った萌黄はさらに大胆になり、手の動きが速くなる。
「先輩、気持ちいいですか?」
上目遣いで萌黄は尋ねる。
今まで女子の上目遣いは媚びていて気持ち悪い態度だと思っていたが、萌黄のそれはとてもかわいらしかった。
どくん、頭とアソコが強く脈打つ。
それを感じ取ったのか、萌黄が嬉しそうに微笑んだ。
「今、ビクッてなりましたよ。気持ちいいんですね?」
そして萌黄が俺のアソコに顔を近づけていく。
チュッ・・・
萌黄が俺のアソコに口付けをする。
さらにそのまま俺のアソコを飲み込んだ。
「ああ・・・萌黄・・・!」
自分の後輩が俺のをしゃぶっている・・・快感とエロいシチュエーションに俺は身体を震わせた。
「あ、ちょ・・・萌黄、ストッ・・・やめ・・・!」
出そうになって、俺は萌黄にやめるように言おうとした。
だが、萌黄はやめない。
萌黄が俺の反応を見て目を細める。
その目は俺をからかっているときに良く見られる目だった。
萌黄が追い込みをかけてきた。
「ちょ・・・本当に・・・あ・・・!」
なす術もなく、俺は萌黄の口の中に白濁の液をぶちまけてしまう。
萌黄は驚いたように、細めていた眼を見開いたが、すぐにそれを飲み下した。
「うふふ、飲んじゃった・・・先輩、かわいかったです」
萌黄がにやりと笑う。
「ちょ、先輩にかわいい言うな」
「でも言われてちょっと嬉しいんですよね?」
見抜かれている。
俺は苦笑した。
でも言われるままというのも癪だから反撃しようとするが、萌黄に押しとどめられた。
「一応風邪引いてますから・・・先輩は今日はマグロでもいいですよ」
「でも俺ばかり気持ちよくなるのは・・・」
「大丈夫ですよ、ほら・・・あたしももうこんなに・・・」
見せ付けるように萌黄がショーツを下ろす。
銀色の露が糸を引いていた。
それを見て俺のアソコが再び勃つ。
「行きますよ・・・楽にしていてください」
俺にまたがっていた萌黄がゆっくりと腰を落としていく。
にゅぶ・・・
なんとも言えないイヤラシイ音が立つ。
「ん・・・あ・・・んぅ」
「萌黄・・・ぃ・・・」
二人の嬌声が絡まりあう。
「はぁ・・・・全部入りましたよ。うふふ・・・これで先輩はあたしのもの・・・」
俺と一つになり、萌黄が笑みを浮かべて俺を見下ろす。
その笑みはエロさと満足感が混ざっていた。
「動きますね。ん・・・はう!」
ゆっさゆっさと萌黄が腰を動かす。
萌黄は何もしなくていいと言っていたけど、それじゃやっぱりさびしい。
かと言って激しく動くのもつらい。
とりあえず俺は伸ばしていた手を持ち上げ、萌黄の太ももを、お尻を、そして昆虫の腹部を撫でる。
「んあ! そ・・・そこは今はダメ・・・」
意外にも萌黄が体をよじって声を上げた。
そこが弱点だった?
「今は・・・先輩を刺していない分、淫毒がたまっているから・・・」
そういうことだったのか・・・・そう思っていると萌黄が体を倒してきた。
「先輩・・・やってくれるならそこだけじゃなくて、おっぱいとかも触ってください」
言われるがまま、萌黄の胸に手を這わせる。
萌黄の大きな胸はすべすべしていて弾力もあり、握るとゴムボールのように俺の指を押し返した。
さらに親指で胸の頂点をはじく。
「うっ・・・あん・・・!」
萌黄が身体をすくませる。
やっぱりそこは気持ちいいらしい。
じゃあ、同じように硬くなるここは・・・?
「ひゃっ! そこは・・・そこはダメェ・・・!」
口ではそうは言っているけど、本当に嫌がっているわけではない。
聞き流してクリトリスをいじり続ける。
しかし、すぐ後悔することになった。
「もう!すぐイキそうになるからダメなのに・・・そんなにしちゃうんだったら、一緒にイカせちゃいますよ?」
そう言って萌黄は体を密着させて抱きつき、俺を拘束した。
そして腰を激しくくねらせ始める。
「くっ・・・萌黄・・・やめ・・・出そうだ・・・」
再び湧き上がってきた射精感に俺は萌黄に手加減を求めたが・・・
「うふふ・・・だ〜め♪」
萌黄は目を細めて笑い、相変わらず腰をくねらせ続ける。
「先輩、あたしがダメって言ってもやめなかったですもん。イキそうなところまで追いやられたんだから・・・責任とって一緒にイッてもらうんですから・・・後輩のことはちゃんと先輩に責任をとってもらうんですからぁ!」
そう言って俺がそれ以上なにも言えないように、くちびるで口を塞がれる。
「んっ・・・んっ、んん!」
キスをしている萌黄の口から甘い声が漏れている。
俺も耐えられないほど気持ちいいが、萌黄も気持ちいいらしい。
そして、それ以上我慢できなくなるのは、二人ほぼ同時だった。
「んんんっ!」
キスをしたまま、萌黄がくぐもった絶叫を上げて身体を固くした。
膣がひとりでに激しくうねる。
まるで、一人でイッたのが悔しいから道づれにするかのような、強気な萌黄にふさわしい動きだった。
「んぐっ!」
萌黄に拘束されたままだったので抜くこともままならず、俺は萌黄によって、一緒に絶頂を見た・・・
どくどくと俺の精液が萌黄の体内に注がれていく。
萌黄は絶頂の影響で硬くしている体でその精液を子宮に受け止めた。
しばらく二人は身体を固くしていたが、やがて絶頂が過ぎ去り、脱力する。
「んふぅ・・・ねぇ、先輩・・・もうこんなにしちゃったから、先輩はあたしのもの、あたしは先輩のものですよね?」
俺の上で身体を預けたまま、しかし腕は俺をしっかりと抱きしめながら萌黄がささやく。
「ああ、そうだな」
全裸の萌黄を抱きしめ返しながら俺は答える。
そうだ、順番がめちゃくちゃになっちゃったけど、これは言わないとな・・・
「なぁ萌黄・・・俺がお前にカサを貸したのは、お前が好きだったからなんだぜ?」
「・・・え?」
萌黄が驚いた顔をする。
「萌黄、俺もお前が好きだ。付き合ってくれ」
「・・・はい!」
俺が何を言っているか理解し、萌黄はギュッときつく抱きついてきた。
可愛いなぁ、もう。
「でもさぁ・・・風邪ひいている俺に『エッチしてくれ』なんて酷いぞ。風邪が悪化したらどうするんだ?」
「・・・大丈夫です」
何を根拠にしているのか、やけにきっぱりと萌黄は言う。
そう言おうと萌黄のほうに顔を向けようとすると、ちょうど萌黄も俺を覗き込もうとしたのか、顔を上げた。
二人の眼が合う。
こうなっちゃったらもう野暮なことを聞く雰囲気じゃない。
やることは一つだ。
俺たちはキスをする。
少し甘くて爽やかな唾液が俺の舌にたっぷりとなすりつけられた。
翌朝・・・金曜日の朝。
俺と萌黄は一緒に登校していた。
もう恋人同士だが、手は繋いで歩かない。
萌黄が望んだことだった。
「さすがに昨日、風邪で学校を休んでいたのに、今日付き合っているのバレバレで登校したら『昨日何やっていたんだ?』って事になりますから・・・」
萌黄がラフな言葉を使わず、まだ丁寧語で俺に話しかけているのもそのためだ。
そんなわけで、手を繋いだり大々的にラブラブな雰囲気を出したりするのは、明日のデートからと言うことになりそうだ。
恋人同士ってことを隠して、今までどおりの先輩後輩の関係を表に出す・・・
ちょっとギクシャクしながら、俺たちは並んで歩く。
手は繋げないが、でも互いが隣にいて意識しあっているのは何か幸せな気分だった。
「そういえば・・・」
俺が口を開いた。
「はい、なんでしょう?」
「昨日、俺に何を飲ませたんだ?」
気になっていたが、萌黄にさえぎられてしまった疑問を今更ながら口にする。
「・・・アレですか。ハニービーからもらった元気が出るタイプの特製のハチミツをレモネードに入れました。」
「やっぱり一服盛ったか・・・って、え?」
俺は耳を疑った。
今、ハニービーからもらったと言わなかったか?
「え、たしかホーネットとハニービーって・・・」
「ええ、仲悪いですとも。でも・・・ううん、だからあたしは頭を下げてまでしてもらいました」
昨日「他の人にとられたくない」と言っていたが、そこまでしてまで俺を手に入れたかったらしい。
「ただ単に『その気にさせる』だけなら、私が刺せばいいだけの話ですけど、風邪引きさんにそれをやっちゃマズイですからね〜」
にやりと萌黄が笑い、風邪は治ったのに背筋が少し寒くなる。
その笑顔は『今度はたっぷりやるから覚悟してね』と言っていた。
学校が見えてきた。
名残惜しみながら、いつの間にか寄っていた俺たちはあわてて半歩ずつ身を離す。
風邪を引いて休んでいる間に起こった大きな変化を隠しながら、俺たちは学校に行く。
11/01/20 00:07更新 / 三鯖アキラ(旧:沈黙の天使)