一限講義一時間前Ⅱ
ピピピピ！ ピピピピ！
「うーん……もう8時かぁ……」
唸りながら僕はスマートフォンのアラームを止めようと腕を伸ばした。途端にその腕が寒気に包まれる。
「うわっ、寒すぎでしょ……」
目覚ましをオフにし、さらにスヌーズ機能も切る。さらに手近に置いてあるストーブのスイッチを押してオンにした。大学生にしては購入費も維持コストも贅沢過ぎる逸品なのではあるが、今年の冬は寒いときは本当に寒かった。買わざるを得なかった。タイマー機能をつけて自動的にストーブがオンになるようにするという手もあったのだが、ここまで寒くなるとは思わなかったのだ。
外はしとしとと雨が降っている。冷え込んだ理由はこれだろう。スマートフォンで気温を調べてみる。最高気温は9℃と出ている。いやいやいや、昨日の最高気温は22℃だったじゃないか。昼は夏手前くらいの気温じゃないかと思うくらいに暑かったのに今日はこれだ。ここ最近の気温の乱高下は溜まったものじゃない。
「ううう……さぶさぶ……」
腕を引っ込めて部屋が温まるまで僕は潜り込むことにする。講義は9時から。正直、あんまり寝ている余裕はないのだが、この寒さに彼女のぬくもりは魅力的過ぎた。
「ねー、琉雅（りゅうが）、なに見てたの？」
さて今さっき、僕は「彼女」と言ったか。そのとおり。僕には恋人がいます。興味津津といった感じで僕のスマホを覗き込もうとしている。背中には大きくて柔らかな感触が……
狹間田佳織……ちょっといたずら好きなところもあったりするけどそれは寂しがり屋な裏返しの性格で、実は心優しく温かい、僕の彼女。
ちなみに温かいのは心だけじゃなくて身体も温かい。彼女に抱きついているととても気持ちがいい。そんな彼女も僕にぎゅーっと抱きついている。身体と、巨大な葉で。
お察しの通り、僕の彼女は人間じゃない。かと言って、アルラウネやドリアードでもない。僕を包んでいる葉が巨大なハエトリソウみたい、と言えばピンとくるだろうか。そう、僕の彼女はマンイーター……ちなみに挟葉タイプ。
植物はあんまり温かい印象はないかもしれないけど、彼女たちは植物じゃなくて植物系の魔物娘……女の子らしく柔らかくて温かくて気持ちいい。そんな彼女と抱き合いながら、彼女にもかけられるような大型の毛布をかぶって寝れば、少しも寒くはない。しかし、ご覧の通りそれはあくまで彼女に包まれている状態での話なので、外は寒い。
あーあ、昔むかしの話、勇者と魔王との時代だったらずっと彼女に包まれたまま一日をぬくぬく過ごしていたのになぁ……残念ながら僕たちは大学生なので、講義に出席しなければならない。
時間はいつのまにか8時10分になっている。朝の10分というのは大きい。いくら僕たちが住んでいるアパートが大学に近いからと言っても、そろそろ危ない時間だ。早く起きて、シャワーは絶対浴びて、朝ごはん食べて出なきゃ……出なきゃ、いけないのに……
「行っちゃやだ～、寂しぃ～！」
顔を曇らせる佳織。そ、そんな顔をされるとものすごく申し訳なくなる。概してマンイーターはさっき僕が紹介した通り、寂しがり屋だ。先ほどのように、勇者と魔王との時代だったら、マンイーターとその伴侶はずっと繋がり合っていたように。
「いいじゃん、寒すぎるし……もうちょっと日がのぼって暖かくなってから出ようよ～」
悪魔めいた提案をしてくる佳織。曇った顔から一転、にぱっと太陽のような笑顔に僕の心は揺れる。うう、それでも、それでも……
「って佳織、何しているの？」
「何って、寒いから温めあおうとしているに決まってるじゃん。おしくらまんじゅうよ」
僕に抱きついたまま、身体をゆする佳織。互いに動き合って温かくなって、布団の外に出ようとする作戦らしいけど……それは僕にとってとても都合が悪い。
……勇者と魔王の時代の前、魔物娘ではない魔物と血で血を洗っていた時代、マンイーターはそれはそれは恐ろしい魔物であった。詳細はハエトリソウと同じで自明の理。巨大な葉で捉えて消化液を出して……以降は割愛させていただく。
語るも恐ろしかった魔物は、淫魔の要素ももった魔物娘に変わると違う方向に恐ろしくなった。消化液は溶かすものはご丁寧に服や鎧だけに限定された。代わりに揮発した粘液は人間男性をエッチな気分にさせたり、液自体で快楽に弱くしたりと、魔物娘に都合の良い代物になった。その消化液は、巨大な葉からはもちろん、マンイーターの身体からもたっぷりと分泌される。
そんなマンイーターの彼女と抱き合って眠る僕は彼女の粘液だけまとって眠る……つまりは全裸だ。今も全裸で、消化液でべとべとだ。朝、絶対にシャワーを浴びたい理由はこれである。
そして身体がべとべとしている以上の問題が今、起きようとしている。僕も佳織も消化液でぬるぬる、しかも僕は消化液で感度が高まってしまっている、その状態で身体を擦り付けられるとどうなるか？
「ちょ、ちょっと佳織、それダメ……」
「んふふ～、もともと朝勃ちで大きかったけどもう我慢できそうにないくらいパンパンになっているね♡」
泡踊りをしながら僕を見上げていたずらっぽく笑う佳織。大きな胸が僕の胸で押しつぶされて形を歪める。そのビジュアルも、おっぱいの柔らかさも、お腹の柔らかさも、体温も粘液も顔も声も何もかも佳織は僕を刺激した。僕もだんだんと変な気分になっていく。うう、まずい。
「琉雅、気持ちいい？」
「確かに気持ちいいんだけど……その、講義……」
「いいじゃんいいじゃん♪ 別に一回や二回くらいサボったって大丈夫♪ それよりこうして抱き合っている方が絶対講義よりいいよ♡」
ああもうだめだこれ。このまま流されてしまおうか？ 確かにこの講義は出席日数だけじゃなくてテストさえなんとかすればいいから……いやいやそんな場合じゃないだろ。ちゃんと真面目に大学に行かないと授業料だの内申点だのうんぬんかんぬん……頭ではそう思っても身体が佳織を求めてしまっていて抗えない……いや、その思っている頭もぐずぐずに溶かされるかのように、考えられなくなってくる。
「少なくともこんなにビンビンのバキバキじゃ大学行っても集中できないからまずは一発、出してすっきりしよ？ ね？」
一方的に佳織は言って、大きなハエトリグサの中で彼女は器用に身体を動かして僕の横にとりついた。脚をぼくにからめたまま、片腕は僕を抱きしめて密着したまま、もう一方の腕を伸ばして僕のいきりたったペニスをにぎりこんできた。その手がしゅっしゅと動いてしごき始める。すでに僕の肉棒は佳織の液に濡れており、その液自体が佳織がから出ているのでもっとぬるぬるになる。彼女が手をいやらしく動かすたびににちゃにちゃと音が立って僕の耳を刺激した。
「あうぅう……佳織ぃ……」
「ふふっ、そうそう♡ 身体の力を抜いて一杯気持ちよくなろうねぇ」
私も気持ちよくなるから、と佳織も股間を僕に押し付けて腰を揺すっている。消化液を浴びている僕としては、それだけでも、生身のときに乳首をいじられたときのようにびりびりと快感がそこから走った。
「あんっ♡ あ、はぁん……んっ♡」
僕の耳に佳織の甘い吐息と喘ぎ声が響く。そんなものを聞かされたらもっとおかしな気分になってしまう。今や僕は全身を佳織に犯されていた。快感に弱くなっている僕は、あっという間に限界が近づいてきた。
「あっ、あっ！ 佳織、もうダメぇ……！」
「ふふふっ♡ 女の子みたいにあえいじゃってかわいい♪ もう出る？ 出ちゃいそう？ いいよ♡ 気持ちよくなっていっぱい射精しようね♡」
言うなり彼女は手の動きを速くした。でもただ速くするだけじゃなくて時々手のひらで亀頭を撫でたり、カリ首をひねるように撫でたりしている。耐えられなかった。
「でちゃう！ でちゃぅうう！」
情けなく声を上げながら僕は腰を突き上げて射精した。まるで刷り込まれて吸収した消化液のぶんまで精液として出したんじゃないかと思うくらいその量は多く、そして真っ白で濃かった。手で佳織は受け止めようとしたがあまりにも多く、彼女の身体の一部である大葉にまでほとばしった。
「あはっ、出た出た！ 琉雅のザーメンは濃くて美味しいなぁ……♡」
ぺろぺろと手に付いた液体を舐めとる佳織。それすらも僕の背筋をぞくぞくと震わせた。そして僕のペニスはまだ剛直を保っている。
「うふふ、さすが琉雅。まだまだ元気だね♡」
そう言って佳織はまた僕の身体に自分のそれをこすりつけ、さらにさっきまで手コキしていた手で僕の身体の前面を撫で回した。それだけでなく、大葉をぐにぐにと動かし始めた。するとさらに消化液が分泌されてぬるぬるを通り越してぬとぬとと液がしたたり落ちてくる。とろーりと僕の射精直後で敏感なペニスにその液が垂れてきた。その液の刺激だけで気持ちよくなってしまう。
「あうう！ やめてぇ……もうでないよぅ！」
「何言ってんの。そう言いながらこの間は七回も精液出してくれたじゃん♡ 大丈夫大丈夫♡」
全然大丈夫じゃないよ！ この前は確かに七回したし、なんなら出すだけならもうちょっとイケたかもしれないけど……今はそれどころじゃないんだよ！？ 僕たちは一限の講義に……
しかしそんな僕の抗議は佳織には届かなかった。僕を抱きしめ、胸をこすりつけ、そしてぬるぬるのキスをしてきた。佳織の身体はどこも柔らかくて温かい。キスして舌を絡めあってると頭の中まで溶けてきて気持ち良くなる……
余すことなく僕に抱きついて肌を密着させている佳織だけど、ペニスへの攻めも忘れていなかった。相変わらずハエトリソウの葉からは粘液が僕の肉棒をめがけてしたたり落ちている。粘液は亀頭を、竿を流動して撫でていった。そして玉袋も包み込むように撫でていく。快感のあまり思わず僕は腰を揺すってしまった。
「んふふ、そんなに気持ちいいの？ あたしの液だけで気持ちよくなってるの？」
「あ、あうぅうう……」
「ちなみにあたしのおまんこもおんなじくらい濡れているよ♡」
そう言って佳織は僕の手を自分の股間に持っていった。表面からじゃ葉が出す粘液でよく分からなかったけど……指を入れてみたらそこは熱くてとろとろだった。僕は佳織の身体をほとんど触っていないのに……佳織は僕を攻めて、自分で股間を押し当てて擦るだけでここまで興奮していたのだ。
「あと一回、琉雅が射精したら入れようね♡ というわけで、イこうか？」
ほんの少しの間、肉棒への刺激が止む。おあずけの生殺しを食らった僕は思わず佳織の顔を見てしまう。その佳織はくすくすと笑って目線で、葉のほうへと僕の眼を誘う。見てみると……大きな粘液の塊が作られていた。いまにも水滴として落ちそうに揺れ……そして落ちた。
ぶちゅ、ぐじゅるるる……
まるで滝のように消化液は落ちてきた。それはすべて、僕のいきり立った肉竿に浴びせられる。まるで流動する粘液の柱、重力を利用したオナホールのような快感だった。しかも、快感増幅する効果つき。
「こんなの、こんなのだめぇええ！ イッちゃうよぉおお！」
全身を揺すりながら、べちゃべちゃ、びちゃびちゃと粘液にまみれ、僕は肉棒から、びゅるびゅると射精した。その勢いは粘液の流れに逆らって噴き上がったくらい。
「おおお、一杯出たねぇ。そんなに気持ちよかったんだ？」
「うぅうう……」
思わず叫びながら射精してしまったことや女の子の身体ではなく粘液だけで射精してしまったことが恥ずかしくなり、眼に泪すら浮かんでしまう。けどそれが悔しさだけではなく歓喜も混じっていることは、佳織は、そして僕自身は知っている。二回も射精したのに、気持ち良すぎて、また気持ちよくなりたくて、僕のペニスは勃ったままだ。
「んもぅ♡ 本当に女の子みたいで可愛いなぁ♡」
熱い吐息を吐きながら、昂ぶった声で佳織は言って、ぺろりと僕の泪を舐めた。そして耳元でささやく。
「もうあたしも我慢できない……♡ いいよね？ 琉雅をめちゃくちゃに犯していいよね？」
「うっ、あ、あああ……」
頭が快感と彼女の香りでまとまらない。休みたい気がしなくもないけど、彼女を拒否するつもりはない。
再び彼女が僕の前に回ってきた。僕の身体をまたいで、まだ固い、粘液まみれの肉棒を掴んだ。入るところがよく見えるように、手は後ろにまわして。ぼたりと彼女の股間から、愛液か消化液か分からない粘液が僕の鈴口に滴った。それだけで僕は快感に身体を震わせてしまう。
いくよ、と彼女の笑みが告げていた。ゆっくりと脚を曲げて性器を近づけていく佳織。近づいてくるそれはまるでバラの大輪。だが一方で粘液と愛液で濡れ光るそれは雨のあとのしずくというより、ぱっくりと開いて獲物を喰らおうとするハエトリソウだ。本来は待ち構えているそれが、自ら捕食しようとするかのように僕の分身に迫ってくる。
じゅぷ……熟しきった果肉を握ったような、なんとも言えない水音を立てて、僕のペニスは佳織のヴァギナに飲み込まれた。彼女の膣は柔らかく、熱く、僕のものを包み込んでくれ、ヒダはまるで自分の意思を持って動くかのような感触だ。じゅぶじゅぶと、まるで消化蠕動のような動き。しかしそのそして彼女の淫肉から分泌される粘液……
「あっ……！」
その甘い刺激に耐えきれず、僕は彼女にしがみつきながら射精していた。三度目にも関わらずその精液は相変わらず量が多い。
腟内に放出される、自分が分泌するものとは異なる粘液の感触に、佳織は眼を丸くする。そしてにんまりと笑った。情けなさに僕はうめきながら顔を伏せる。
「さっき出したばかりなのにイッちゃったね♪」
「あ、あうううう……」
「ちょ、ちょっとそんな顔しないでよ。うれしいんだよ？」
そう言って彼女は手で強引に僕の顔を上げさせ、くちびるを奪ってきた。熱烈なそれは、僕の気持ちを持ち上げようと必死だ。
「んん……だって、私のおまんこがそれだけ気持ちよかったってことだもんね♡ それに、この一回で終わらせるつもりないし♡」
「え？ そ、そんな……ひぁああああ！」
思わず僕は声を上げた。佳織がすらりとした脚を僕の腰に巻きつけてきたのだ。ぐぐぐっとさらに奥へと招かれる。花道を進むがファンにもみくちゃにされるアイドルよろしく、僕のペニスは佳織のヴァギナのヒダに熱烈な歓迎を受けた。消化液で敏感になったそれは一つ一つのヒダを感じとれるかのように
そして招かれた先は、柔らかな肉とは異なる、弾力のある彼女の子宮口……くにくにと精液をねだるように僕の亀頭を撫でてくる。彼女の膣半ばで射精していなければ、ここで果てていたことだろう。
「うぅうう……」
僕はうめく。それでも、瞬殺されなかっただけだ。彼女は動いていないのにすぐにまた射精してしまいそうだ。
「それじゃ、動くね？」
「やめてぇえ……また出ちゃうよぉお……」
「いいよ、何回でも出しても♡ 全部受け止めてあげるから♡」
そういって彼女は腰をゆすり始めた。くねくねと、お尻でのの字を書くように。脚を僕に巻き付けたままなので、動きは激しくない。でもこの柔肉のヒダが絡みつき、そして亀頭をもみほぐされるような刺激に、今まで僕は何度も耐えきれずに射精していた。
「ほらほら……どう？ あたしのおまんこは気持ちいい？」
「あひぃい……き、気持ち良すぎてもうおかしくなっちゃうよぉお……」
「うれしい♡ 私もすっごく気持ちいいよ♡」
そうは言ってくれるけど、すぐに射精してしまう僕は佳織を満足させることができているのだろうかと心配になるのだけど、これがいいのだと彼女は言う。曰く、子宮口をぐりぐりされるのと、僕と抱きあうのが好きだそうで、激しくなくてもイケるそうだ。イクときはあまり声を上げないけど、僕にしがみついて痙攣しているらしい。僕はあまり彼女の様子を見る余裕はないのだけど、言われてみればそんなことが何回もあった気がする。一回くらいじっくり見てみたい気もするけど……それは今日もまた叶いそうにない。
「あっ、あっ、あっ！ か、かお、り！ また出る！ あひっ！ 出ちゃう！」
「んんっ♡ いいよ♡ 琉雅の精液、いっぱいちょうだい♡ あたしもイキそうだから♡」
とろけた顔でだらしなく舌を出しながら、佳織はおねだりしてくる。そのおねだりに僕は屈した。会陰のあたりがぎゅっと収縮し、輸精管から尿道を駆け巡る感触がして……
「うわあああああっ！」
四度目の射精。どくどくと彼女の蜜壺の中に精液が捧げられていく。
「……ッ♡♡♡」
円を書くように動かされていた佳織の腰が、ぐっと僕に押し付けられる。そして力いっぱい抱きしめてきた。僕も、快感に耐えるように、そして佳織の思いに答えるように力いっぱい抱きしめ返す。
僕たちはそうして二人でこれ以上にないくらい肌を合わせながら、一番気持ちいいときを味わっていた。
そしてそれが過ぎ去ると……僕はぐったりとしていた。気持ち良すぎたし、揮発した消化液を吸いすぎてしまってもう意識朦朧だ。佳織にもたれ掛かるしかない。もうだめ、限界だ。
「とっても気持ちよかった♡ 琉雅……大好きだよ♡」
そんな佳織の声が遠くに聞こえる。
いつのまにか外の雨は止んでいて、カーテンと佳織の葉越しに朝日の光がなんとなく感じられる。そんな気持ちのいい日差しとは裏腹に、僕は泥沼のような甘いまどろみに沈み込んでいく。
僕も大好きだよ……そうつぶやいたかつぶやけなかったか、自分でも確認できないまま……
「うーん……もう8時かぁ……」
唸りながら僕はスマートフォンのアラームを止めようと腕を伸ばした。途端にその腕が寒気に包まれる。
「うわっ、寒すぎでしょ……」
目覚ましをオフにし、さらにスヌーズ機能も切る。さらに手近に置いてあるストーブのスイッチを押してオンにした。大学生にしては購入費も維持コストも贅沢過ぎる逸品なのではあるが、今年の冬は寒いときは本当に寒かった。買わざるを得なかった。タイマー機能をつけて自動的にストーブがオンになるようにするという手もあったのだが、ここまで寒くなるとは思わなかったのだ。
外はしとしとと雨が降っている。冷え込んだ理由はこれだろう。スマートフォンで気温を調べてみる。最高気温は9℃と出ている。いやいやいや、昨日の最高気温は22℃だったじゃないか。昼は夏手前くらいの気温じゃないかと思うくらいに暑かったのに今日はこれだ。ここ最近の気温の乱高下は溜まったものじゃない。
「ううう……さぶさぶ……」
腕を引っ込めて部屋が温まるまで僕は潜り込むことにする。講義は9時から。正直、あんまり寝ている余裕はないのだが、この寒さに彼女のぬくもりは魅力的過ぎた。
「ねー、琉雅（りゅうが）、なに見てたの？」
さて今さっき、僕は「彼女」と言ったか。そのとおり。僕には恋人がいます。興味津津といった感じで僕のスマホを覗き込もうとしている。背中には大きくて柔らかな感触が……
狹間田佳織……ちょっといたずら好きなところもあったりするけどそれは寂しがり屋な裏返しの性格で、実は心優しく温かい、僕の彼女。
ちなみに温かいのは心だけじゃなくて身体も温かい。彼女に抱きついているととても気持ちがいい。そんな彼女も僕にぎゅーっと抱きついている。身体と、巨大な葉で。
お察しの通り、僕の彼女は人間じゃない。かと言って、アルラウネやドリアードでもない。僕を包んでいる葉が巨大なハエトリソウみたい、と言えばピンとくるだろうか。そう、僕の彼女はマンイーター……ちなみに挟葉タイプ。
植物はあんまり温かい印象はないかもしれないけど、彼女たちは植物じゃなくて植物系の魔物娘……女の子らしく柔らかくて温かくて気持ちいい。そんな彼女と抱き合いながら、彼女にもかけられるような大型の毛布をかぶって寝れば、少しも寒くはない。しかし、ご覧の通りそれはあくまで彼女に包まれている状態での話なので、外は寒い。
あーあ、昔むかしの話、勇者と魔王との時代だったらずっと彼女に包まれたまま一日をぬくぬく過ごしていたのになぁ……残念ながら僕たちは大学生なので、講義に出席しなければならない。
時間はいつのまにか8時10分になっている。朝の10分というのは大きい。いくら僕たちが住んでいるアパートが大学に近いからと言っても、そろそろ危ない時間だ。早く起きて、シャワーは絶対浴びて、朝ごはん食べて出なきゃ……出なきゃ、いけないのに……
「行っちゃやだ～、寂しぃ～！」
顔を曇らせる佳織。そ、そんな顔をされるとものすごく申し訳なくなる。概してマンイーターはさっき僕が紹介した通り、寂しがり屋だ。先ほどのように、勇者と魔王との時代だったら、マンイーターとその伴侶はずっと繋がり合っていたように。
「いいじゃん、寒すぎるし……もうちょっと日がのぼって暖かくなってから出ようよ～」
悪魔めいた提案をしてくる佳織。曇った顔から一転、にぱっと太陽のような笑顔に僕の心は揺れる。うう、それでも、それでも……
「って佳織、何しているの？」
「何って、寒いから温めあおうとしているに決まってるじゃん。おしくらまんじゅうよ」
僕に抱きついたまま、身体をゆする佳織。互いに動き合って温かくなって、布団の外に出ようとする作戦らしいけど……それは僕にとってとても都合が悪い。
……勇者と魔王の時代の前、魔物娘ではない魔物と血で血を洗っていた時代、マンイーターはそれはそれは恐ろしい魔物であった。詳細はハエトリソウと同じで自明の理。巨大な葉で捉えて消化液を出して……以降は割愛させていただく。
語るも恐ろしかった魔物は、淫魔の要素ももった魔物娘に変わると違う方向に恐ろしくなった。消化液は溶かすものはご丁寧に服や鎧だけに限定された。代わりに揮発した粘液は人間男性をエッチな気分にさせたり、液自体で快楽に弱くしたりと、魔物娘に都合の良い代物になった。その消化液は、巨大な葉からはもちろん、マンイーターの身体からもたっぷりと分泌される。
そんなマンイーターの彼女と抱き合って眠る僕は彼女の粘液だけまとって眠る……つまりは全裸だ。今も全裸で、消化液でべとべとだ。朝、絶対にシャワーを浴びたい理由はこれである。
そして身体がべとべとしている以上の問題が今、起きようとしている。僕も佳織も消化液でぬるぬる、しかも僕は消化液で感度が高まってしまっている、その状態で身体を擦り付けられるとどうなるか？
「ちょ、ちょっと佳織、それダメ……」
「んふふ～、もともと朝勃ちで大きかったけどもう我慢できそうにないくらいパンパンになっているね♡」
泡踊りをしながら僕を見上げていたずらっぽく笑う佳織。大きな胸が僕の胸で押しつぶされて形を歪める。そのビジュアルも、おっぱいの柔らかさも、お腹の柔らかさも、体温も粘液も顔も声も何もかも佳織は僕を刺激した。僕もだんだんと変な気分になっていく。うう、まずい。
「琉雅、気持ちいい？」
「確かに気持ちいいんだけど……その、講義……」
「いいじゃんいいじゃん♪ 別に一回や二回くらいサボったって大丈夫♪ それよりこうして抱き合っている方が絶対講義よりいいよ♡」
ああもうだめだこれ。このまま流されてしまおうか？ 確かにこの講義は出席日数だけじゃなくてテストさえなんとかすればいいから……いやいやそんな場合じゃないだろ。ちゃんと真面目に大学に行かないと授業料だの内申点だのうんぬんかんぬん……頭ではそう思っても身体が佳織を求めてしまっていて抗えない……いや、その思っている頭もぐずぐずに溶かされるかのように、考えられなくなってくる。
「少なくともこんなにビンビンのバキバキじゃ大学行っても集中できないからまずは一発、出してすっきりしよ？ ね？」
一方的に佳織は言って、大きなハエトリグサの中で彼女は器用に身体を動かして僕の横にとりついた。脚をぼくにからめたまま、片腕は僕を抱きしめて密着したまま、もう一方の腕を伸ばして僕のいきりたったペニスをにぎりこんできた。その手がしゅっしゅと動いてしごき始める。すでに僕の肉棒は佳織の液に濡れており、その液自体が佳織がから出ているのでもっとぬるぬるになる。彼女が手をいやらしく動かすたびににちゃにちゃと音が立って僕の耳を刺激した。
「あうぅう……佳織ぃ……」
「ふふっ、そうそう♡ 身体の力を抜いて一杯気持ちよくなろうねぇ」
私も気持ちよくなるから、と佳織も股間を僕に押し付けて腰を揺すっている。消化液を浴びている僕としては、それだけでも、生身のときに乳首をいじられたときのようにびりびりと快感がそこから走った。
「あんっ♡ あ、はぁん……んっ♡」
僕の耳に佳織の甘い吐息と喘ぎ声が響く。そんなものを聞かされたらもっとおかしな気分になってしまう。今や僕は全身を佳織に犯されていた。快感に弱くなっている僕は、あっという間に限界が近づいてきた。
「あっ、あっ！ 佳織、もうダメぇ……！」
「ふふふっ♡ 女の子みたいにあえいじゃってかわいい♪ もう出る？ 出ちゃいそう？ いいよ♡ 気持ちよくなっていっぱい射精しようね♡」
言うなり彼女は手の動きを速くした。でもただ速くするだけじゃなくて時々手のひらで亀頭を撫でたり、カリ首をひねるように撫でたりしている。耐えられなかった。
「でちゃう！ でちゃぅうう！」
情けなく声を上げながら僕は腰を突き上げて射精した。まるで刷り込まれて吸収した消化液のぶんまで精液として出したんじゃないかと思うくらいその量は多く、そして真っ白で濃かった。手で佳織は受け止めようとしたがあまりにも多く、彼女の身体の一部である大葉にまでほとばしった。
「あはっ、出た出た！ 琉雅のザーメンは濃くて美味しいなぁ……♡」
ぺろぺろと手に付いた液体を舐めとる佳織。それすらも僕の背筋をぞくぞくと震わせた。そして僕のペニスはまだ剛直を保っている。
「うふふ、さすが琉雅。まだまだ元気だね♡」
そう言って佳織はまた僕の身体に自分のそれをこすりつけ、さらにさっきまで手コキしていた手で僕の身体の前面を撫で回した。それだけでなく、大葉をぐにぐにと動かし始めた。するとさらに消化液が分泌されてぬるぬるを通り越してぬとぬとと液がしたたり落ちてくる。とろーりと僕の射精直後で敏感なペニスにその液が垂れてきた。その液の刺激だけで気持ちよくなってしまう。
「あうう！ やめてぇ……もうでないよぅ！」
「何言ってんの。そう言いながらこの間は七回も精液出してくれたじゃん♡ 大丈夫大丈夫♡」
全然大丈夫じゃないよ！ この前は確かに七回したし、なんなら出すだけならもうちょっとイケたかもしれないけど……今はそれどころじゃないんだよ！？ 僕たちは一限の講義に……
しかしそんな僕の抗議は佳織には届かなかった。僕を抱きしめ、胸をこすりつけ、そしてぬるぬるのキスをしてきた。佳織の身体はどこも柔らかくて温かい。キスして舌を絡めあってると頭の中まで溶けてきて気持ち良くなる……
余すことなく僕に抱きついて肌を密着させている佳織だけど、ペニスへの攻めも忘れていなかった。相変わらずハエトリソウの葉からは粘液が僕の肉棒をめがけてしたたり落ちている。粘液は亀頭を、竿を流動して撫でていった。そして玉袋も包み込むように撫でていく。快感のあまり思わず僕は腰を揺すってしまった。
「んふふ、そんなに気持ちいいの？ あたしの液だけで気持ちよくなってるの？」
「あ、あうぅうう……」
「ちなみにあたしのおまんこもおんなじくらい濡れているよ♡」
そう言って佳織は僕の手を自分の股間に持っていった。表面からじゃ葉が出す粘液でよく分からなかったけど……指を入れてみたらそこは熱くてとろとろだった。僕は佳織の身体をほとんど触っていないのに……佳織は僕を攻めて、自分で股間を押し当てて擦るだけでここまで興奮していたのだ。
「あと一回、琉雅が射精したら入れようね♡ というわけで、イこうか？」
ほんの少しの間、肉棒への刺激が止む。おあずけの生殺しを食らった僕は思わず佳織の顔を見てしまう。その佳織はくすくすと笑って目線で、葉のほうへと僕の眼を誘う。見てみると……大きな粘液の塊が作られていた。いまにも水滴として落ちそうに揺れ……そして落ちた。
ぶちゅ、ぐじゅるるる……
まるで滝のように消化液は落ちてきた。それはすべて、僕のいきり立った肉竿に浴びせられる。まるで流動する粘液の柱、重力を利用したオナホールのような快感だった。しかも、快感増幅する効果つき。
「こんなの、こんなのだめぇええ！ イッちゃうよぉおお！」
全身を揺すりながら、べちゃべちゃ、びちゃびちゃと粘液にまみれ、僕は肉棒から、びゅるびゅると射精した。その勢いは粘液の流れに逆らって噴き上がったくらい。
「おおお、一杯出たねぇ。そんなに気持ちよかったんだ？」
「うぅうう……」
思わず叫びながら射精してしまったことや女の子の身体ではなく粘液だけで射精してしまったことが恥ずかしくなり、眼に泪すら浮かんでしまう。けどそれが悔しさだけではなく歓喜も混じっていることは、佳織は、そして僕自身は知っている。二回も射精したのに、気持ち良すぎて、また気持ちよくなりたくて、僕のペニスは勃ったままだ。
「んもぅ♡ 本当に女の子みたいで可愛いなぁ♡」
熱い吐息を吐きながら、昂ぶった声で佳織は言って、ぺろりと僕の泪を舐めた。そして耳元でささやく。
「もうあたしも我慢できない……♡ いいよね？ 琉雅をめちゃくちゃに犯していいよね？」
「うっ、あ、あああ……」
頭が快感と彼女の香りでまとまらない。休みたい気がしなくもないけど、彼女を拒否するつもりはない。
再び彼女が僕の前に回ってきた。僕の身体をまたいで、まだ固い、粘液まみれの肉棒を掴んだ。入るところがよく見えるように、手は後ろにまわして。ぼたりと彼女の股間から、愛液か消化液か分からない粘液が僕の鈴口に滴った。それだけで僕は快感に身体を震わせてしまう。
いくよ、と彼女の笑みが告げていた。ゆっくりと脚を曲げて性器を近づけていく佳織。近づいてくるそれはまるでバラの大輪。だが一方で粘液と愛液で濡れ光るそれは雨のあとのしずくというより、ぱっくりと開いて獲物を喰らおうとするハエトリソウだ。本来は待ち構えているそれが、自ら捕食しようとするかのように僕の分身に迫ってくる。
じゅぷ……熟しきった果肉を握ったような、なんとも言えない水音を立てて、僕のペニスは佳織のヴァギナに飲み込まれた。彼女の膣は柔らかく、熱く、僕のものを包み込んでくれ、ヒダはまるで自分の意思を持って動くかのような感触だ。じゅぶじゅぶと、まるで消化蠕動のような動き。しかしそのそして彼女の淫肉から分泌される粘液……
「あっ……！」
その甘い刺激に耐えきれず、僕は彼女にしがみつきながら射精していた。三度目にも関わらずその精液は相変わらず量が多い。
腟内に放出される、自分が分泌するものとは異なる粘液の感触に、佳織は眼を丸くする。そしてにんまりと笑った。情けなさに僕はうめきながら顔を伏せる。
「さっき出したばかりなのにイッちゃったね♪」
「あ、あうううう……」
「ちょ、ちょっとそんな顔しないでよ。うれしいんだよ？」
そう言って彼女は手で強引に僕の顔を上げさせ、くちびるを奪ってきた。熱烈なそれは、僕の気持ちを持ち上げようと必死だ。
「んん……だって、私のおまんこがそれだけ気持ちよかったってことだもんね♡ それに、この一回で終わらせるつもりないし♡」
「え？ そ、そんな……ひぁああああ！」
思わず僕は声を上げた。佳織がすらりとした脚を僕の腰に巻きつけてきたのだ。ぐぐぐっとさらに奥へと招かれる。花道を進むがファンにもみくちゃにされるアイドルよろしく、僕のペニスは佳織のヴァギナのヒダに熱烈な歓迎を受けた。消化液で敏感になったそれは一つ一つのヒダを感じとれるかのように
そして招かれた先は、柔らかな肉とは異なる、弾力のある彼女の子宮口……くにくにと精液をねだるように僕の亀頭を撫でてくる。彼女の膣半ばで射精していなければ、ここで果てていたことだろう。
「うぅうう……」
僕はうめく。それでも、瞬殺されなかっただけだ。彼女は動いていないのにすぐにまた射精してしまいそうだ。
「それじゃ、動くね？」
「やめてぇえ……また出ちゃうよぉお……」
「いいよ、何回でも出しても♡ 全部受け止めてあげるから♡」
そういって彼女は腰をゆすり始めた。くねくねと、お尻でのの字を書くように。脚を僕に巻き付けたままなので、動きは激しくない。でもこの柔肉のヒダが絡みつき、そして亀頭をもみほぐされるような刺激に、今まで僕は何度も耐えきれずに射精していた。
「ほらほら……どう？ あたしのおまんこは気持ちいい？」
「あひぃい……き、気持ち良すぎてもうおかしくなっちゃうよぉお……」
「うれしい♡ 私もすっごく気持ちいいよ♡」
そうは言ってくれるけど、すぐに射精してしまう僕は佳織を満足させることができているのだろうかと心配になるのだけど、これがいいのだと彼女は言う。曰く、子宮口をぐりぐりされるのと、僕と抱きあうのが好きだそうで、激しくなくてもイケるそうだ。イクときはあまり声を上げないけど、僕にしがみついて痙攣しているらしい。僕はあまり彼女の様子を見る余裕はないのだけど、言われてみればそんなことが何回もあった気がする。一回くらいじっくり見てみたい気もするけど……それは今日もまた叶いそうにない。
「あっ、あっ、あっ！ か、かお、り！ また出る！ あひっ！ 出ちゃう！」
「んんっ♡ いいよ♡ 琉雅の精液、いっぱいちょうだい♡ あたしもイキそうだから♡」
とろけた顔でだらしなく舌を出しながら、佳織はおねだりしてくる。そのおねだりに僕は屈した。会陰のあたりがぎゅっと収縮し、輸精管から尿道を駆け巡る感触がして……
「うわあああああっ！」
四度目の射精。どくどくと彼女の蜜壺の中に精液が捧げられていく。
「……ッ♡♡♡」
円を書くように動かされていた佳織の腰が、ぐっと僕に押し付けられる。そして力いっぱい抱きしめてきた。僕も、快感に耐えるように、そして佳織の思いに答えるように力いっぱい抱きしめ返す。
僕たちはそうして二人でこれ以上にないくらい肌を合わせながら、一番気持ちいいときを味わっていた。
そしてそれが過ぎ去ると……僕はぐったりとしていた。気持ち良すぎたし、揮発した消化液を吸いすぎてしまってもう意識朦朧だ。佳織にもたれ掛かるしかない。もうだめ、限界だ。
「とっても気持ちよかった♡ 琉雅……大好きだよ♡」
そんな佳織の声が遠くに聞こえる。
いつのまにか外の雨は止んでいて、カーテンと佳織の葉越しに朝日の光がなんとなく感じられる。そんな気持ちのいい日差しとは裏腹に、僕は泥沼のような甘いまどろみに沈み込んでいく。
僕も大好きだよ……そうつぶやいたかつぶやけなかったか、自分でも確認できないまま……
24/03/02 22:45更新 / 三鯖アキラ（旧：沈黙の天使）