火のないところにゃ煙は立たぬ
「本当に降ったな……」
ほのかに空気に緑と湿気の香りが混じり始める、暖かくなり始める3月……この調子なら今日は快適な日光の元過ごせるだろうと思ったが、彼女が「今日は傘を持った方がいいよ。信頼あるところから聞いた」と言うので、傘を持ってでた。結果これだ。天気予報じゃ雨の可能性はなかったのに、にわか雨が降った。ざあざあと音を立てて降る雨の中、俺は安っぽいビニール傘をさして歩いていた。今回は彼女に助けられたことになった。そのことに俺はため息をついた。
彼女の情報網・アンテナは恐ろしい。いつの間にか色んな事を知っている。地獄耳。ワーラビットを差し置いてこの二つ名を名乗ったとしても許されるレベルだ。
そんな彼女はラタトスク。魔物娘の情報屋だ。あらゆる情報を収集し、対価に応じて提供し、公利にあえば拡散し、場合によっては秘匿する。彼女も例に漏れず、情報屋だった。
そして彼女が厄介なのは、嘘は付かない。良いことじゃないかって? もう一度言う。嘘は付かない。だが、本当の事も言わない。微妙に脚色はしているが嘘は言っていない。それに俺はどれだけ振り回されてきたことか……物心がついてからだから十何年にもなる。
……だからなおさら疑ってしまう。最近周りでささやかれている、俺と彼女が付き合っている疑惑の噂……あの時、一緒に帰っているのを見かけた。あの時、一緒にいるのを見かけた。あの時、一緒にファストフードで二人で勉強していた……一緒にいたのは事実だ。でも、一緒にいたからなんだと言うんだ。俺と彼女は幼馴染なだけで付き合っているわけではない。
でも、そんな噂を耳にするとつい彼女が気になってしまう。気づけば目で追ってしまう。そして……疑ってしまう。噂の出処は実は本人なんじゃないかと。
あまり彼女は拡散はしない方だった。受信のアンテナは張るが、送信のアンテナはあまり張らない。全く張らないわけではないけど。実際、俺は彼女の情報にガキのころから何度も振り回されたわけだし。でも、他のラタトスクと比べると、少ない方だ。
しないわけじゃないから今回も違うかもしれない。でも今までしたこともあるから、今回もそうかもしれない……そして、やっぱり悪戯かもしれない。考えても考えても分からない。
「くそっ……」
また、いつもの悩みがぶり返して雨の中、俺は悪態をついた。これだけ悩むってことは……俺は彼女の事が好きなんだろう。だからこそ苦しい。どのくらい眠れない夜を明かしたことか。彼女はどう思っているのか気になる。噂を流したのは本人でその気があって流しているのか、それともそうじゃないのか……
それだと言うのに周りは暢気なものだ。お似合いだとか、本当に付き合っていないのかとか……好き勝手言ってくれる。俺は何度目か分からないため息を雨の中でついた。
「ん?」
ふと、雨に煙る視線の先……大木の陰に小さな影が二つ見える。一つは子どもの魔物娘のようだ。もう一方は子どもではない。俺の学校の女子の制服を着ている。だが身長はその子どもより多少高い程度で、同年代の女子にしてはかなり低い方だ。そして、その腰からは身体と同じくらい大きな物が伸びている。
シルエットで俺は彼女がラタトスクだと分かった。そしてなんとなく、遠目でも、彼女が誰か分かった。先程まで俺が思い悩んでいた人物、栗栖美佳だ。
なんとなく顔を合わせるのは気恥ずかしい。だが、気になっている人物の顔を見たい。相反する二つの気持ちを抱え解決しないまま、俺は歩を進め続ける。そうしている間に、子どもの方が去っていった。傘をさして。一方の美佳は、傘をさしていない。
今日は雨が降ると教えた彼女が傘を持たずに外に出たはずがない。なのに今彼女は傘を持っていない。となると考えられるのは一つ。美佳は今の子どもに傘をあげてしまったと言うことだ。この雨の中、小さな子どもが濡れるというのも可哀想な話だが、かと言って自分を犠牲にしてずぶ濡れになると言うのもおかしな話だ。そしてそれ以上に、それを無視して通り過ぎるのは道理にかなっていない。
「おいおい何やっているんだよ」
俺は美佳に駆け寄った。美佳は「あ、和人(わと)」と眉を掲げる。
「傘持って帰れないって女の子がいたから傘をあげたんだ」
「それは大変結構だが、お前はどうするんだ?」
「ブレザーでなんとかなるでしょ!」
言うや否や彼女はモスグリーンのブレザーを脱ぎ、頭の上で広げた。これで雨を凌ぐつもりらしい。今は木の下だから大丈夫だが、これで雨の中を走るのはさすがに……
「それっ! バス停までダッシュ!」
「お、おい待てって!」
ブレザーをひらひらとはためかせながら彼女は雨の中を走りだす。大慌てで俺は彼女を追った。だが傘をさしながら走るというのは少し難しい。少なくとも、全力を出すことはできない。そして、リスの魔物娘であるラタトスクは非常に素早い。彼女との距離はあっという間に離されていく。
美佳が先にバス停についてから俺が彼女に追いつくまで、たっぷりと10秒はあった気がした。
「よーし、ここまで来ればボクの家までもうすぐだ!」
「ぜぇ、ぜぇ……それはそうだけどお前さぁ……」
息が苦しい。俺は膝に手を置いて背中を丸めて荒い息をつく。しかし、俺が背中を丸めて視線を上げないのは、苦しいからばかりじゃない。どしゃぶりの雨の中、頭だけをガードして走った彼女。自慢のふさふさの尾は濡れて毛がヘタってしまいる。そして……彼女の制服のブラウスは濡れて透けていた。薄い白の布の奥に、年頃の女にしては情熱的な、朱鷺色の布地が見える。とても目を向けられない。
「え? あっ!」
言われて初めて気付いたのだろう。彼女は驚いた声をあげて胸元を腕で隠した……いや、本当に言われて初めて気付いたのだろうか? 本当は全部分かってやっていたりしないだろうか? 彼女を信じられない自分に嫌悪感が積もる。
「み、見ないでよぉ!」
「見てねぇよ!」
そんな嫌悪感があってもブラウスが貼り付いている腹や、水滴となって雨を弾いている太ももを見る。見てしまう。情けない。
「そう言って和人見ているじゃ……っくしゅん!」
どんなに頑丈な魔物娘でもさすがにこの寒さは堪えたらしい。可愛らしいくしゃみが彼女から放たれる。
「言わんこっちゃない。だから待てと言ったんだ。ほら……」
俺は傘を差し出す。きょとんとした表情で彼女は俺を見上げてくる。分かっていない様子の美佳に俺ははぁとため息を付く。見上げてくるくりくりとした目が可愛らしかったからというのもあるが。
「入れよ。家まで送るから」
「え? でも……」
「いいから」
あんまり大きな傘ではないが、小柄な彼女を一人入れる分にはなんとかなるだろう。俺は傘を差し出して彼女の身体が入るようにする。美佳はうつむいてぼそりとつぶやいた。
「……んなん……から、……わさ……しやすいのよ」
「なんか言ったか?」
「べっつにぃ! ほら、行くよ! ボクが風邪を引いちゃう前に」
ツンと彼女は俺に背を向け、ブレザーを着直して歩きだす。俺は苦笑しながら彼女を雨から守るべく、傘を差し出して歩くのであった。
さて、これはどうしたことだろうか? 美佳を送り届けたらさっさと帰るつもりだったのに、俺は彼女の家にいた。どうしてこうなった。
雨の中をダッシュした美佳はもとより、俺も濡れ鼠になっていた。いくら美佳が小柄とは言え、さすがに小さな傘に二人で入るのは無理があったのだ。まあそれはいい。帰って風呂に入ればいいだけだ。
だがタイミングが悪いことに、彼女が玄関のドアを開けると美佳の姉、美依さんがちょうど出てきたのだ。俺たちの姿を見て美依さんは風邪を引くといけないからと言って風呂に入るように言ってきた。そして美依さんに背中を押されるようにして家に上げられて今にいたる。
「じゃ、お風呂が湧いたら入りなさいな」
そう言って美依さんは出ていってしまった。なんでも合コンかなにかがあるらしい。この雨の中よく出ていく気があるなと思う。ちなみに、美佳の両親や他の姉は今の時間、仕事でいない。つまり今、俺は美佳と二人きりでこの家にいることになる。
そんながらんどうな家のリビングにいるというのはさらに落ち着かない。俺は押されるようにして2階の美佳の部屋に入れられていた。ガキのころ、美佳の部屋に入ったりしたことはあったが、思春期を迎えてからは入ったことなど一度もない。
ラタトスクの尻尾はクッションやベッドの代わりになるというが、それはあくまで代わり。ふかふかのベッドに飛び込んで布団に包まる感覚はまた別で良いらしい。そのため、美佳の部屋にはベッドがちゃんと置かれている。
「……」
「……」
お互い気まずい。美佳は黙ってドライヤーで尻尾を乾かしている。どうせあとで風呂に入るというのに、濡れたままでいるのは気持ち悪いというのだ。その割に濡れた服は着替えようとしないのだが。おかげで俺はまたアレを見るハメになってしまう。濡れたブラウスで透けて見える、彼女の下着……帰ってきてブレザーを脱いでいるので見えてしまう。
ふと、クラスメイトから回ってきた噂話を思い出してしまう。
――栗栖のスリーサイズってどのくらいだろう?
――確か72の55の78じゃなかったか?
――どこの情報だよ……
だが貧乳を売りにしたグラビアアイドルの事も考えるとそのくらいだろう。そのバストとヒップがあの朱鷺色のブラとショーツに包まれているのだ。それを考えると……ムラムラしてきた。雨で濡れたズボンとその下のトランクスが内側からの圧迫でピンと張り始める。
尻尾を乾かし終わった美佳が着替えをするためか、タンスに近寄って中を物色し始めた。
「あれ〜? どこに行ったんだろう?」
そんな事を言いながらタンスの中身を引っ掻き回している。乾いてもふもふとした尻尾と、幅が比較的狭い腰がこちらに突き出されフリフリと軽く揺らされる。注意して見てみると、ブラと同じ色のショーツがスカートの奥からちらりと見えた。そしてそのショーツは……
「あったあった。って和人、それどうしたの?」
白のブラとショーツとキャミソールらしき物を手にとり振り向いた彼女が俺の股間を指さす。俺のペニスは今ので興奮してしまったのか、下着の中で完全に熱り立っていた。ズボンが見事なテントを作っている。
「あれれ〜? もしかしてボクの透けブラだけで勃起しちゃったのかなぁ?」
実際にはパンチラと、ショーツにフィットして盛り上がって見えたアソコの膨らみで反応してしまったのだが。いずれにせよ、好きな女に勃起を指摘されたのは恥ずかしさがあった。そして同時に怒りのような物が沸き起こる。俺の身体を、俺の心をこんなにまでしておいて、クスクスと笑っている彼女が。
「そんなに溜まってるなら抜いてあげよっか〜? なんちゃ……」
「言ったな?」
「て、え?」
もう我慢できなかった。俺の中で何かがキレたような気がした。部活でも出したことのないような瞬発力だった。俺は栗栖美佳をベッドに押し倒していた。
「え? えっ!?」
突然のことに目を白黒させる美佳。パニックに陥り俺から逃げようとバタバタと手足を動かす。だが俺の身体は動かない。
「や、やめ……和人やめて!」
「やめねえよ! お前から誘ったんじゃねぇか!」
「確かに誘ったし部屋に入れたのも期待してたけど……うわ、わ……!?」
しまったと彼女は目を開く。普段「ボクは嘘は言ってないよ〜♪」と言って相手の追求をのらりくらりと躱していた彼女はそこにはいない。パニックのあまり余計なことを彼女は口走っていた。そして俺はそれを聞き逃さなかった。
俺は無言で彼女のくちびるを奪った。再び美佳はもがいたが、その動きは徐々に鈍くなる。さすがにやりすぎたか、窒息したか。心配になって俺は口を離す。だが
「わ、和人ぉ……」
その目はとろけていた。遠慮はいらない。強引に俺は彼女のブラウスに手をかけた。弱々しく美佳は俺の手首を握って抵抗を示すが、形ばかりのそんなものを俺は強引に引き剥がす。濡れて透けているため、下のブラが見える。だが障壁であることは変わらない。荒々しく俺はその障壁を剥いだ。朱鷺色のブラの縁は無数のスモークピンクの花模様で飾られていた。色気づいたその下着を拝み俺の心は昂ぶるが、それへの興味はすぐに失せる。次なる目標はその下だ。
外し方なんか分からない。低い丘陵を繋ぐ橋の下に俺は指を突っ込み、押し上げる。丘陵は抵抗になどならず、あっさりとブラは上へとずり上がった。
そんな胸だろうと膨らみは膨らみ。そして生乳である。現れた獲物は俺を大いに興奮させた。胸の外側に手を這わせ、親指と人差し指で挟むようにしてその膨らみをモンでみる。小さくても、それは確かに男にはない柔らかな物であった。俺に揉まれることで、丘陵の頂点がぷくりと搾り出されるかのように立ち上がる。人差し指の仕事は中指に任せ、俺はその頂点を人差し指の先で転がす。
「ひあっ、ああっ!」
美佳の口から上る悲鳴。その悲鳴に苦痛はないように俺は聞こえた。勢いづいた俺は顔を落とし、その突起物を口に含んだ。再び美佳の口から声が上がる。さっきより伸びやかに。
「あ、あああっ……! ダメ、和人……!」
ダメ? ダメだと? 俺は腰を落とし、美佳の太ももに固く張りつめたアソコを擦りつけた。俺をこんなにしたお前が何を言っている?
魔物娘の性か、美佳は短い手を伸ばして俺のソレに何も言われていないのに撫でた。ズボン越しだと言うのに指先は的確に亀頭を捕らえており、ぞくぞくとした快感が腰から沸き起こった。だが、布越しではもどかしい。
美佳を組み敷いたまま、俺はシャツを脱ぎ捨て、ズボンを下着ごと下ろした。幼馴染の痴態を見て痛いほど勃起していたペニスが、トランクスの抑えが除かれたことで暴れるようにして飛び出す。美佳がハッと息を飲む。「す、すごい……」「あんなの入れられたら……」とかぶつぶつつぶやいている。そしてこうもつぶやいた「聞いていたのと違う……」と。何を聞いたのかは知らないが、その聞いたのは噂とか回っていた情報なのだろう。情報屋が情報に溺れたな、ざまあみろ。
「お前がここまでにしたんだからな。責任もって気持ちよくしろよ」
「は、はい……」
観念したのか、彼女は神妙に俺の命令に従った。胡座をかいた俺の前に跪くが、解放されたのに逃げようとしない。小さな口を目一杯開け、俺のモノを頬張る。
「うっ……」
思わず俺は低くうめいた。彼女の口の中は温かく、よだれでぬるぬるしていた。彼女は咥えただけではない。美佳は口の中に迎え入れたペニスにちろちろと舌で攻撃をしていた。亀頭をぺろぺろとなめまわし、裏筋をつつき、カリ首をなぞるように撫でる……情報はきっちりと把握していたのだろう。男の弱点を的確に攻めてくる。
俺のペニスを咥えたまま、うるうるとした目で美佳は俺を見上げてきた。「気持ちいい?」と不安そうにその目が訊ねてきている。こればかりは噂話なんかじゃ確認できないことだ。そしてそんな彼女に乱暴な言葉をかけたり、イラマチオに持ち込んだりできるほど俺は鬼じゃない。そっと俺は彼女の頭を撫でる。気持ちよさそうにそっと美佳は目を閉じた。
それだけではない。フェラチオで彼女の心も昂ぶったのか、俺のモノを攻めながら彼女は一人遊びに興じていた。左手はペニスに添えられているが、右手はスカートの中に入り込み、ショーツをずらしている。その中で何をやっているかまでは見ることは叶わないが、想像に難くない。その想像は俺のモノをさらに怒張させる。
「よせ美佳……やめ……」
「んん? んっ!?」
警告が彼女に届くより暴発するのが先であった。欲望の証が奔流となってどぷりと美佳の口の中に放出される。その量はおびただしく、彼女の頬を軽くではあるが膨らませすらした。それこそ栗鼠のように。
ペニスで口を塞がれているため吐き出すわけにもいかない。美佳は口内の圧迫を飲み下していく。だけどその様子に迷いがないのは、彼女もやぶさかではなかったか。
「ぷはっ……」
一通り落ち着いたところで美佳は俺のペニスから口を離した。今まで口を塞がれていたぶん、肺の隅々まで酸素を送り込もうと肩で息をしている。さすがに酷いことをしてしまったかと一抹の後悔が俺の中で起こった。だがそれらはすべて情欲の炎で塗りつぶされる。現に俺の肉棒は一度射精したにもかかわらず、剛直を保っている。まだまだ足りない。この幼馴染の栗鼠娘に種付けしたいと熱り立っている。
美佳を俺はベッドに再び押し倒して上になる。されるがまま、美佳はベッドの上に仰向けになって弛緩する。
「……さっきみたいに逃げないのかよ?」
「無理だよ……だって……」
惚けた目で美佳は俺を見上げる。
「和人の精液飲んだら……頭がぽーっとして……お股ぐちょぐちょになって……力入らないよ……」
美佳も俺を受け入れる準備を整えている。その言葉は俺の肉棒をぴくりとひくつかせた。俺は美佳のスカートのホックとファスナーを解き、下着ごと下ろした。もうショーツなんて興味ない。早く挿れたい。俺は美佳の脚の間に身体を割り入れる。
「あ、待って」
押し倒されて抵抗の様子を見せなかった美佳が、ここで手をこちらに突き出し制してきた。どうしたのか、俺は動きを止める。美佳はしばらくもじもじしていたが、ぽつんとつぶやいた。
「ボク、初めてなんだから……優しくしてよね」
「あ、ああ……」
しおらしい様子に、先程まで熱り立って欲望をぶつけていた俺は毒気を抜かれる。もっとも、それで行為をやめる気にはなれないのだけど。
俺は自分のモノに指を這わせ、美佳のアソコに先端をあてがう。彼女が自分でさっき言っていたとおり、そこは物凄く濡れていた。あまりにもぬるぬるするため亀頭は滑り、美佳の入り口を探り当てられない。
「えーっと……ちょっと待って……」
再びかかる美佳の制止。待っていると美佳の腰がブリッジをしたかのようにぐっと上がった。人間だとその姿勢を保つのは辛いであろうが、美佳は難なくその姿勢を保っている。何をしたのか。彼女は尻尾を丸めて自分の腰の下に敷いたのだ。
「これなら挿れやすいかな?」
彼女の心遣いのおかげで、入れるべき穴が同定できた。思った以上にその穴は肛門に近く、下側にあった。そこに俺は先端をあてがう。先程まではぬるりと滑ったが、今度は押し込むと沈み込んだ。
「ん……っ!」
美佳が少し苦しげな声を上げる。
「大丈夫か?」
「平気……平気だから早く……」
自分から美佳は腰を動かして挿入をねだる。その希望に答えたのか、それとも自分本位な欲望に突き動かされたか、無意識のうちに俺は腰を突き出した。かすかな抵抗があったかもしれない。しかしそれを物ともせず、俺と美佳は一つになった。
「ぎっ……」
「ぐっ……」
押し殺した声が二人の口から漏れる。美佳は苦痛の声だっただろう。俺は……歓喜の声であった。美佳の膣内はとても狭く、ぎゅうぎゅうと俺を締め付けてくる。かといって拒否的であるかというとそんなことはなく、ぐぐっと伸びて俺を受け入れている。中はヒダがたっぷりとあり、さきほどのフェラチオのようにちろちろと俺の敏感なところを攻め立ててきた。腰を動かしていないのにぞくぞくと快感が沸き起こってきた。これで腰を動かしたらどうなるのか。
美佳のことを気遣うべきだったのかもしれないが、そんな余裕は俺にはなかった。身体全体を動かすようにして、小さな体に突きを入れる。薄い胸が上下しないのが背徳的だ。
「んっ、あっ、んんっ……」
はじめは苦しげだった美佳の声にもだんだん艶が出てきた。苦痛は減り、快感の方が大きくなっている。初めてでも性の快楽を味わえるのはやはり魔物娘だからか。
だが彼女が気持ちよくなるより先に俺の方に再び余裕がなくなってきた。ペニスから腰へと快感が伝わり、そこからぞわぞわとした感覚がまた沸き起こる。俺は腰を引こうとした。
「ダメっ……!」
ふいに美佳との結合部の高さが変わった。彼女は腰の下で丸めていた尻尾を伸ばし、俺の腰へと回していた。抜こうとしたところをロックされてしまったみたいだ。
「挿れたんだから……ちゃんと最後までシて……ボクの中に出して……」
「何を言って……や、やめ……!」
下から美佳が腰を緩やかに動かしていた。ゆっくりと亀頭、カリ首、裏筋、竿が美佳の肉壷の中でかき回される。ぐちゃぐちゃと結合部がイヤラシイ音を立てた。
「やめろ美佳、そんなにされると……」
「だ、だってボクも気持ちよくて、止まらなくて……」
俺の懇願は美佳に却下される。そうしている間にも腰の疼きは広がっていき、そして……再び放たれた。さっきは口の中だったが、今度は然るべき場所、膣内に、その白濁液は放出される。
「うっ……!」
「う、あ……出てる……和人の精液……ボクの中に……」
身体を震わせて射精している俺を美佳は尻尾と脚で拘束しながら、射精をその小さな身体で受け止めていた。彼女は恍惚とした表情を浮かべ、身体を弛緩させる。
一方の俺もぐったりとしていた。そもそも男は射精すると力が抜ける。それを俺は二回もやった。彼女の身体を押しつぶさないように、俺は横にごろんと転がった。美佳の中から抜けたペニスも流石に疲れ気味であり、横を向いている。だが……
「ねぇ……」
仰向けになっていた美佳が転がり、女豹のポーズを取る。尻尾はぴんと立てているため、薄いけど丸い尻も、その割れ目も、そしてその奥に潜んでいて俺が先程中出ししたアソコも丸見えだ。
そんな物を見せつけながら、彼女はふりふりと尻尾と尻を振って見せる。
「もっとシて……和人のおちんちんでボクをもっと気持ちよくして……」
甘え媚びたそのメスのおねだりに……力を失いかけていた俺のオスが再び滾った。俺と美佳は今度は、獣の体勢で繋がる。
「あああっ! 入ってきた……!」
身体を弓なりに反らせ、俺を受け入れる彼女の声にもう苦痛はない。快感に染まりきっている。
疲れはないわけではなかったが、ここで気張らないと男が廃る。彼女の狭い腰を抱え、俺は後ろから彼女を突く。
「んあっ! イイ! 和人のおちんちんでおまんこずぽずぽされて……聞いていたより……一人でするより……ずっと気持ちいい!」
後ろから貫かれながら美佳は、自分の秘密をあられもなく淫語とともに口にする。そう言えば彼女はフェラをしたときもオナニーをしていた。やり慣れているのだろう。その痴態が俺の脳裏によぎり、膣内で過労気味の肉棒を怒張させる。
その時、俺の鼻先を何かがかすめた。美佳の尻尾の先だった。一抱えもある、身体と同じくらい大きなラタトスクの尾。先程は彼女の背中や尻に敷かれていたり俺の身体に巻きつけられたりして大きな動きを見せていなかったが、今は快感であちらへこちらへと所在なげに揺れている。
ふと思い立って俺は美佳の腰から両手を離し、その揺れている大きな尾を抱きしめた。
「ひゃあああ!? ちょ、和人!? それダメ! そこはよわ……!」
美佳の口から思わぬ嬌声が上がる。だが俺はほとんど聞いていなかった。念入りに乾かされていたその栗鼠の尾のさわり心地はどんな絹や毛皮よりも素晴らしかった。つややかで、やわらかで、ふかふかしていて……いつまでも触っていたいくらいだ。またさらに素晴らしいのが、尾の芯が太くしっかりとしていることだ。俺の腕はその柔らかな毛の海に沈み切ることなく、受け止められていた。その芯ゆえに先程、美佳は自分の腰を持ち上げることができたのだ。これなら抱きまくらにすることもできるだろう。
俺は腕に力を込めてその尻尾を抱きしめる。それだけでは満足できず、さらに俺は自分の頬をそのふかふかな尾に擦りつけた。
「だめ、だめぇえ……! おちんちんだけでも気持ちいいのにぃい! んああっ! し、尻尾もそんなにされたらぁ……! ボク、ボク……! おかしく……あぁん! おかしくなっちゃうよぉおお! 和人のチンポ奴隷になっちゃうぅう!」
快感のあまり美佳が歓喜の悲鳴混じりにおかしなことを言っているが、気にしない。彼女の尾を堪能しながら抽送を続ける。
しかし俺の方も余裕かと言うとそんなことはない。2回出しているから瞬殺を避けただけだ。3度めの射精がその身体に迫りつつある。
「美佳……! またナカでいいか!?」
「うん! 出して! ボクのナカに全部出して! ボクもイク……イクからぁあ! 一緒に、一緒にぃい!」
美佳の方も限界が近かった。快感を貪るように彼女も腰を左右に振って精と快感の極値をねだる。
俺たちは声を上げながら快感と互いの身体を貪る交尾をする。先にアクメを迎えたのは美佳の方だった。
「ひっ……きゅうぅううううう!」
絞められたかのような声をあげて彼女は小さな身体を仰け反らせて硬直した。同時に、彼女の膣がぎゅうぎゅうと収縮し、ペニスを搾る。そのキツイ締め付けに耐えきれず、彼女の尻尾にしがみつきながら俺も射精した。3度目とは思えない量の精液が小柄な幼馴染の身体の中へドクドクと注がれていく。
「はひゅ……ひゅい……」
腕と脚の力が美佳から抜ける。そのまま彼女はうつ伏せにベッドに突っ伏した。目は少し上転しており、口からはよだれが垂れ流しになっている。身体はアクメの余韻でピクピクと小さく痙攣している。情報を扱う理知的な姿はもうなかった。
そしてそんな彼女の上に俺も倒れる。衝突の危機だったが、ラタトスクの尾がクッションとなった。それで衝撃を吸収される。
いつの間にか外の雨は止んでいた。雨音はしない。部屋の中では、俺たちの上がった息の音だけが響き続けた……
「うう……激しかった……」
しばらくして、俺たちは美依さんが沸かしておいてくれた風呂に一緒に入っていた。自動で加温してくれるタイプだったから、部屋でドッタンバッタン騒いだあとでも風呂は温かかった。
腰が抜けてしまった美佳を抱えて俺は風呂場に行き、今こうして一緒に入っている。
「確かにボクの方から誘うような真似はしたし、こうなるように色々仕込んだけど……」
「やっぱり仕込んでいたんだな……」
実は付き合っていると言う噂、まだ付き合っていないのかと訊ねてくるヤツら……俺が訊ねると、美佳は口まで風呂につかり、ぶくぶくと泡を作り出した。
「まあそうだよ。男は『付き合っている』『気になっている』って噂を流すとソノ気になるって良く言われるし」
「はぁ……」
それにまんまと乗せられてしまった自分が情けない。まあ、いいんだけど。
「でもさ、ボクは、嘘はついていなかったでしょ?」
「……たぶんな」
火のないところに煙は立たぬとは言うが、付き合っていると言う噂は俺たちがいつも一緒にいると言うところが原因だ。だから嘘をつかれたわけではないだろう。このような会話を何度繰り返したことか……
「でもさ、和人」
ぱしゃりと音を立てて美佳は首をひねり、こちらを見上げてきた。
「ここまでやって『付き合っていない』は嘘になるよね?」
いたずらっぽい言い方ではあったが、彼女の目は少し潤んでおり、不安げである。今まで彼女に翻弄されたように、答えを濁して彼女を翻弄することもできたかもしれないが……意趣返しにならない。彼女は嘘はついていなかったんだから……俺も嘘をついてはいけない。
「そうだな。俺はお前のことが好きだし……付き合いたい」
「ん……」
美佳の目から不安の色が消える。雨が止み、春の日差しが一面に注ぎだした……そのような輝きが灯っていた。
「ボクも和人の事が好きだよ。だからここまでしたんだしね」
「本当か?」
「嘘はいっていないよ〜♪」
今までと同じように、はぐらかすような調子で言っているが……彼女は嘘は付かない。そして脚色して本当の事も言わなかったりもするけど、この短い言葉で嘘を言っていないと言うのは……そういうことだろう。
互いの気持ちを確認しあったところで、俺たちは向き合ってキスをした。さっき俺がしたような荒々しい物ではなく、互いにくちびるを押し付け合う、初めてらしいキスだった……
「ところで……さっき『ここまでした』と言ったけど、それってヤッたことだけじゃないだろ? 何をしたんだ?」
再び風呂に肩までつかる俺たち。ふと思った疑問を俺は口にした。ん〜? と彼女は振り向く。
「ボクはラタトスクだよ? 尾ひれがつくことを期待して噂を回したり、いつも一緒にいるってことがみんなに分かるように一緒にいたり、スリーサイズを恥を承知で流したりしたよ?」
「それ以外だ」
そう、美佳はラタトスク。情報を流したり、その情報に合うような行動をしたりするのは朝飯前だ。俺が聞いたさっきの「ここまでした」と言うのは何か、違うものを感じる。しょっちゅう翻弄されたけど、それでも幼馴染だ。そのくらい分かる。意外そうに美佳は眉を掲げてみせた。
「あはは〜、サクラをお願いしたのはともかく、さすがにこの街を物理的に巻き込んだのはやりすぎたかな〜」
「え? お前、何を言って……」
「ふふふ〜♪ ボクは嘘は言っていないよ〜♪」
いつもの言葉を上機嫌に口にする美佳。俺はあーでもないこーでもないと悩む。やれやれ、俺は相変わらず彼女に翻弄されそうだ。口調と同じようにご機嫌に揺らされている尻尾を眺めながら俺は苦笑してそう思うのであった。
ほのかに空気に緑と湿気の香りが混じり始める、暖かくなり始める3月……この調子なら今日は快適な日光の元過ごせるだろうと思ったが、彼女が「今日は傘を持った方がいいよ。信頼あるところから聞いた」と言うので、傘を持ってでた。結果これだ。天気予報じゃ雨の可能性はなかったのに、にわか雨が降った。ざあざあと音を立てて降る雨の中、俺は安っぽいビニール傘をさして歩いていた。今回は彼女に助けられたことになった。そのことに俺はため息をついた。
彼女の情報網・アンテナは恐ろしい。いつの間にか色んな事を知っている。地獄耳。ワーラビットを差し置いてこの二つ名を名乗ったとしても許されるレベルだ。
そんな彼女はラタトスク。魔物娘の情報屋だ。あらゆる情報を収集し、対価に応じて提供し、公利にあえば拡散し、場合によっては秘匿する。彼女も例に漏れず、情報屋だった。
そして彼女が厄介なのは、嘘は付かない。良いことじゃないかって? もう一度言う。嘘は付かない。だが、本当の事も言わない。微妙に脚色はしているが嘘は言っていない。それに俺はどれだけ振り回されてきたことか……物心がついてからだから十何年にもなる。
……だからなおさら疑ってしまう。最近周りでささやかれている、俺と彼女が付き合っている疑惑の噂……あの時、一緒に帰っているのを見かけた。あの時、一緒にいるのを見かけた。あの時、一緒にファストフードで二人で勉強していた……一緒にいたのは事実だ。でも、一緒にいたからなんだと言うんだ。俺と彼女は幼馴染なだけで付き合っているわけではない。
でも、そんな噂を耳にするとつい彼女が気になってしまう。気づけば目で追ってしまう。そして……疑ってしまう。噂の出処は実は本人なんじゃないかと。
あまり彼女は拡散はしない方だった。受信のアンテナは張るが、送信のアンテナはあまり張らない。全く張らないわけではないけど。実際、俺は彼女の情報にガキのころから何度も振り回されたわけだし。でも、他のラタトスクと比べると、少ない方だ。
しないわけじゃないから今回も違うかもしれない。でも今までしたこともあるから、今回もそうかもしれない……そして、やっぱり悪戯かもしれない。考えても考えても分からない。
「くそっ……」
また、いつもの悩みがぶり返して雨の中、俺は悪態をついた。これだけ悩むってことは……俺は彼女の事が好きなんだろう。だからこそ苦しい。どのくらい眠れない夜を明かしたことか。彼女はどう思っているのか気になる。噂を流したのは本人でその気があって流しているのか、それともそうじゃないのか……
それだと言うのに周りは暢気なものだ。お似合いだとか、本当に付き合っていないのかとか……好き勝手言ってくれる。俺は何度目か分からないため息を雨の中でついた。
「ん?」
ふと、雨に煙る視線の先……大木の陰に小さな影が二つ見える。一つは子どもの魔物娘のようだ。もう一方は子どもではない。俺の学校の女子の制服を着ている。だが身長はその子どもより多少高い程度で、同年代の女子にしてはかなり低い方だ。そして、その腰からは身体と同じくらい大きな物が伸びている。
シルエットで俺は彼女がラタトスクだと分かった。そしてなんとなく、遠目でも、彼女が誰か分かった。先程まで俺が思い悩んでいた人物、栗栖美佳だ。
なんとなく顔を合わせるのは気恥ずかしい。だが、気になっている人物の顔を見たい。相反する二つの気持ちを抱え解決しないまま、俺は歩を進め続ける。そうしている間に、子どもの方が去っていった。傘をさして。一方の美佳は、傘をさしていない。
今日は雨が降ると教えた彼女が傘を持たずに外に出たはずがない。なのに今彼女は傘を持っていない。となると考えられるのは一つ。美佳は今の子どもに傘をあげてしまったと言うことだ。この雨の中、小さな子どもが濡れるというのも可哀想な話だが、かと言って自分を犠牲にしてずぶ濡れになると言うのもおかしな話だ。そしてそれ以上に、それを無視して通り過ぎるのは道理にかなっていない。
「おいおい何やっているんだよ」
俺は美佳に駆け寄った。美佳は「あ、和人(わと)」と眉を掲げる。
「傘持って帰れないって女の子がいたから傘をあげたんだ」
「それは大変結構だが、お前はどうするんだ?」
「ブレザーでなんとかなるでしょ!」
言うや否や彼女はモスグリーンのブレザーを脱ぎ、頭の上で広げた。これで雨を凌ぐつもりらしい。今は木の下だから大丈夫だが、これで雨の中を走るのはさすがに……
「それっ! バス停までダッシュ!」
「お、おい待てって!」
ブレザーをひらひらとはためかせながら彼女は雨の中を走りだす。大慌てで俺は彼女を追った。だが傘をさしながら走るというのは少し難しい。少なくとも、全力を出すことはできない。そして、リスの魔物娘であるラタトスクは非常に素早い。彼女との距離はあっという間に離されていく。
美佳が先にバス停についてから俺が彼女に追いつくまで、たっぷりと10秒はあった気がした。
「よーし、ここまで来ればボクの家までもうすぐだ!」
「ぜぇ、ぜぇ……それはそうだけどお前さぁ……」
息が苦しい。俺は膝に手を置いて背中を丸めて荒い息をつく。しかし、俺が背中を丸めて視線を上げないのは、苦しいからばかりじゃない。どしゃぶりの雨の中、頭だけをガードして走った彼女。自慢のふさふさの尾は濡れて毛がヘタってしまいる。そして……彼女の制服のブラウスは濡れて透けていた。薄い白の布の奥に、年頃の女にしては情熱的な、朱鷺色の布地が見える。とても目を向けられない。
「え? あっ!」
言われて初めて気付いたのだろう。彼女は驚いた声をあげて胸元を腕で隠した……いや、本当に言われて初めて気付いたのだろうか? 本当は全部分かってやっていたりしないだろうか? 彼女を信じられない自分に嫌悪感が積もる。
「み、見ないでよぉ!」
「見てねぇよ!」
そんな嫌悪感があってもブラウスが貼り付いている腹や、水滴となって雨を弾いている太ももを見る。見てしまう。情けない。
「そう言って和人見ているじゃ……っくしゅん!」
どんなに頑丈な魔物娘でもさすがにこの寒さは堪えたらしい。可愛らしいくしゃみが彼女から放たれる。
「言わんこっちゃない。だから待てと言ったんだ。ほら……」
俺は傘を差し出す。きょとんとした表情で彼女は俺を見上げてくる。分かっていない様子の美佳に俺ははぁとため息を付く。見上げてくるくりくりとした目が可愛らしかったからというのもあるが。
「入れよ。家まで送るから」
「え? でも……」
「いいから」
あんまり大きな傘ではないが、小柄な彼女を一人入れる分にはなんとかなるだろう。俺は傘を差し出して彼女の身体が入るようにする。美佳はうつむいてぼそりとつぶやいた。
「……んなん……から、……わさ……しやすいのよ」
「なんか言ったか?」
「べっつにぃ! ほら、行くよ! ボクが風邪を引いちゃう前に」
ツンと彼女は俺に背を向け、ブレザーを着直して歩きだす。俺は苦笑しながら彼女を雨から守るべく、傘を差し出して歩くのであった。
さて、これはどうしたことだろうか? 美佳を送り届けたらさっさと帰るつもりだったのに、俺は彼女の家にいた。どうしてこうなった。
雨の中をダッシュした美佳はもとより、俺も濡れ鼠になっていた。いくら美佳が小柄とは言え、さすがに小さな傘に二人で入るのは無理があったのだ。まあそれはいい。帰って風呂に入ればいいだけだ。
だがタイミングが悪いことに、彼女が玄関のドアを開けると美佳の姉、美依さんがちょうど出てきたのだ。俺たちの姿を見て美依さんは風邪を引くといけないからと言って風呂に入るように言ってきた。そして美依さんに背中を押されるようにして家に上げられて今にいたる。
「じゃ、お風呂が湧いたら入りなさいな」
そう言って美依さんは出ていってしまった。なんでも合コンかなにかがあるらしい。この雨の中よく出ていく気があるなと思う。ちなみに、美佳の両親や他の姉は今の時間、仕事でいない。つまり今、俺は美佳と二人きりでこの家にいることになる。
そんながらんどうな家のリビングにいるというのはさらに落ち着かない。俺は押されるようにして2階の美佳の部屋に入れられていた。ガキのころ、美佳の部屋に入ったりしたことはあったが、思春期を迎えてからは入ったことなど一度もない。
ラタトスクの尻尾はクッションやベッドの代わりになるというが、それはあくまで代わり。ふかふかのベッドに飛び込んで布団に包まる感覚はまた別で良いらしい。そのため、美佳の部屋にはベッドがちゃんと置かれている。
「……」
「……」
お互い気まずい。美佳は黙ってドライヤーで尻尾を乾かしている。どうせあとで風呂に入るというのに、濡れたままでいるのは気持ち悪いというのだ。その割に濡れた服は着替えようとしないのだが。おかげで俺はまたアレを見るハメになってしまう。濡れたブラウスで透けて見える、彼女の下着……帰ってきてブレザーを脱いでいるので見えてしまう。
ふと、クラスメイトから回ってきた噂話を思い出してしまう。
――栗栖のスリーサイズってどのくらいだろう?
――確か72の55の78じゃなかったか?
――どこの情報だよ……
だが貧乳を売りにしたグラビアアイドルの事も考えるとそのくらいだろう。そのバストとヒップがあの朱鷺色のブラとショーツに包まれているのだ。それを考えると……ムラムラしてきた。雨で濡れたズボンとその下のトランクスが内側からの圧迫でピンと張り始める。
尻尾を乾かし終わった美佳が着替えをするためか、タンスに近寄って中を物色し始めた。
「あれ〜? どこに行ったんだろう?」
そんな事を言いながらタンスの中身を引っ掻き回している。乾いてもふもふとした尻尾と、幅が比較的狭い腰がこちらに突き出されフリフリと軽く揺らされる。注意して見てみると、ブラと同じ色のショーツがスカートの奥からちらりと見えた。そしてそのショーツは……
「あったあった。って和人、それどうしたの?」
白のブラとショーツとキャミソールらしき物を手にとり振り向いた彼女が俺の股間を指さす。俺のペニスは今ので興奮してしまったのか、下着の中で完全に熱り立っていた。ズボンが見事なテントを作っている。
「あれれ〜? もしかしてボクの透けブラだけで勃起しちゃったのかなぁ?」
実際にはパンチラと、ショーツにフィットして盛り上がって見えたアソコの膨らみで反応してしまったのだが。いずれにせよ、好きな女に勃起を指摘されたのは恥ずかしさがあった。そして同時に怒りのような物が沸き起こる。俺の身体を、俺の心をこんなにまでしておいて、クスクスと笑っている彼女が。
「そんなに溜まってるなら抜いてあげよっか〜? なんちゃ……」
「言ったな?」
「て、え?」
もう我慢できなかった。俺の中で何かがキレたような気がした。部活でも出したことのないような瞬発力だった。俺は栗栖美佳をベッドに押し倒していた。
「え? えっ!?」
突然のことに目を白黒させる美佳。パニックに陥り俺から逃げようとバタバタと手足を動かす。だが俺の身体は動かない。
「や、やめ……和人やめて!」
「やめねえよ! お前から誘ったんじゃねぇか!」
「確かに誘ったし部屋に入れたのも期待してたけど……うわ、わ……!?」
しまったと彼女は目を開く。普段「ボクは嘘は言ってないよ〜♪」と言って相手の追求をのらりくらりと躱していた彼女はそこにはいない。パニックのあまり余計なことを彼女は口走っていた。そして俺はそれを聞き逃さなかった。
俺は無言で彼女のくちびるを奪った。再び美佳はもがいたが、その動きは徐々に鈍くなる。さすがにやりすぎたか、窒息したか。心配になって俺は口を離す。だが
「わ、和人ぉ……」
その目はとろけていた。遠慮はいらない。強引に俺は彼女のブラウスに手をかけた。弱々しく美佳は俺の手首を握って抵抗を示すが、形ばかりのそんなものを俺は強引に引き剥がす。濡れて透けているため、下のブラが見える。だが障壁であることは変わらない。荒々しく俺はその障壁を剥いだ。朱鷺色のブラの縁は無数のスモークピンクの花模様で飾られていた。色気づいたその下着を拝み俺の心は昂ぶるが、それへの興味はすぐに失せる。次なる目標はその下だ。
外し方なんか分からない。低い丘陵を繋ぐ橋の下に俺は指を突っ込み、押し上げる。丘陵は抵抗になどならず、あっさりとブラは上へとずり上がった。
そんな胸だろうと膨らみは膨らみ。そして生乳である。現れた獲物は俺を大いに興奮させた。胸の外側に手を這わせ、親指と人差し指で挟むようにしてその膨らみをモンでみる。小さくても、それは確かに男にはない柔らかな物であった。俺に揉まれることで、丘陵の頂点がぷくりと搾り出されるかのように立ち上がる。人差し指の仕事は中指に任せ、俺はその頂点を人差し指の先で転がす。
「ひあっ、ああっ!」
美佳の口から上る悲鳴。その悲鳴に苦痛はないように俺は聞こえた。勢いづいた俺は顔を落とし、その突起物を口に含んだ。再び美佳の口から声が上がる。さっきより伸びやかに。
「あ、あああっ……! ダメ、和人……!」
ダメ? ダメだと? 俺は腰を落とし、美佳の太ももに固く張りつめたアソコを擦りつけた。俺をこんなにしたお前が何を言っている?
魔物娘の性か、美佳は短い手を伸ばして俺のソレに何も言われていないのに撫でた。ズボン越しだと言うのに指先は的確に亀頭を捕らえており、ぞくぞくとした快感が腰から沸き起こった。だが、布越しではもどかしい。
美佳を組み敷いたまま、俺はシャツを脱ぎ捨て、ズボンを下着ごと下ろした。幼馴染の痴態を見て痛いほど勃起していたペニスが、トランクスの抑えが除かれたことで暴れるようにして飛び出す。美佳がハッと息を飲む。「す、すごい……」「あんなの入れられたら……」とかぶつぶつつぶやいている。そしてこうもつぶやいた「聞いていたのと違う……」と。何を聞いたのかは知らないが、その聞いたのは噂とか回っていた情報なのだろう。情報屋が情報に溺れたな、ざまあみろ。
「お前がここまでにしたんだからな。責任もって気持ちよくしろよ」
「は、はい……」
観念したのか、彼女は神妙に俺の命令に従った。胡座をかいた俺の前に跪くが、解放されたのに逃げようとしない。小さな口を目一杯開け、俺のモノを頬張る。
「うっ……」
思わず俺は低くうめいた。彼女の口の中は温かく、よだれでぬるぬるしていた。彼女は咥えただけではない。美佳は口の中に迎え入れたペニスにちろちろと舌で攻撃をしていた。亀頭をぺろぺろとなめまわし、裏筋をつつき、カリ首をなぞるように撫でる……情報はきっちりと把握していたのだろう。男の弱点を的確に攻めてくる。
俺のペニスを咥えたまま、うるうるとした目で美佳は俺を見上げてきた。「気持ちいい?」と不安そうにその目が訊ねてきている。こればかりは噂話なんかじゃ確認できないことだ。そしてそんな彼女に乱暴な言葉をかけたり、イラマチオに持ち込んだりできるほど俺は鬼じゃない。そっと俺は彼女の頭を撫でる。気持ちよさそうにそっと美佳は目を閉じた。
それだけではない。フェラチオで彼女の心も昂ぶったのか、俺のモノを攻めながら彼女は一人遊びに興じていた。左手はペニスに添えられているが、右手はスカートの中に入り込み、ショーツをずらしている。その中で何をやっているかまでは見ることは叶わないが、想像に難くない。その想像は俺のモノをさらに怒張させる。
「よせ美佳……やめ……」
「んん? んっ!?」
警告が彼女に届くより暴発するのが先であった。欲望の証が奔流となってどぷりと美佳の口の中に放出される。その量はおびただしく、彼女の頬を軽くではあるが膨らませすらした。それこそ栗鼠のように。
ペニスで口を塞がれているため吐き出すわけにもいかない。美佳は口内の圧迫を飲み下していく。だけどその様子に迷いがないのは、彼女もやぶさかではなかったか。
「ぷはっ……」
一通り落ち着いたところで美佳は俺のペニスから口を離した。今まで口を塞がれていたぶん、肺の隅々まで酸素を送り込もうと肩で息をしている。さすがに酷いことをしてしまったかと一抹の後悔が俺の中で起こった。だがそれらはすべて情欲の炎で塗りつぶされる。現に俺の肉棒は一度射精したにもかかわらず、剛直を保っている。まだまだ足りない。この幼馴染の栗鼠娘に種付けしたいと熱り立っている。
美佳を俺はベッドに再び押し倒して上になる。されるがまま、美佳はベッドの上に仰向けになって弛緩する。
「……さっきみたいに逃げないのかよ?」
「無理だよ……だって……」
惚けた目で美佳は俺を見上げる。
「和人の精液飲んだら……頭がぽーっとして……お股ぐちょぐちょになって……力入らないよ……」
美佳も俺を受け入れる準備を整えている。その言葉は俺の肉棒をぴくりとひくつかせた。俺は美佳のスカートのホックとファスナーを解き、下着ごと下ろした。もうショーツなんて興味ない。早く挿れたい。俺は美佳の脚の間に身体を割り入れる。
「あ、待って」
押し倒されて抵抗の様子を見せなかった美佳が、ここで手をこちらに突き出し制してきた。どうしたのか、俺は動きを止める。美佳はしばらくもじもじしていたが、ぽつんとつぶやいた。
「ボク、初めてなんだから……優しくしてよね」
「あ、ああ……」
しおらしい様子に、先程まで熱り立って欲望をぶつけていた俺は毒気を抜かれる。もっとも、それで行為をやめる気にはなれないのだけど。
俺は自分のモノに指を這わせ、美佳のアソコに先端をあてがう。彼女が自分でさっき言っていたとおり、そこは物凄く濡れていた。あまりにもぬるぬるするため亀頭は滑り、美佳の入り口を探り当てられない。
「えーっと……ちょっと待って……」
再びかかる美佳の制止。待っていると美佳の腰がブリッジをしたかのようにぐっと上がった。人間だとその姿勢を保つのは辛いであろうが、美佳は難なくその姿勢を保っている。何をしたのか。彼女は尻尾を丸めて自分の腰の下に敷いたのだ。
「これなら挿れやすいかな?」
彼女の心遣いのおかげで、入れるべき穴が同定できた。思った以上にその穴は肛門に近く、下側にあった。そこに俺は先端をあてがう。先程まではぬるりと滑ったが、今度は押し込むと沈み込んだ。
「ん……っ!」
美佳が少し苦しげな声を上げる。
「大丈夫か?」
「平気……平気だから早く……」
自分から美佳は腰を動かして挿入をねだる。その希望に答えたのか、それとも自分本位な欲望に突き動かされたか、無意識のうちに俺は腰を突き出した。かすかな抵抗があったかもしれない。しかしそれを物ともせず、俺と美佳は一つになった。
「ぎっ……」
「ぐっ……」
押し殺した声が二人の口から漏れる。美佳は苦痛の声だっただろう。俺は……歓喜の声であった。美佳の膣内はとても狭く、ぎゅうぎゅうと俺を締め付けてくる。かといって拒否的であるかというとそんなことはなく、ぐぐっと伸びて俺を受け入れている。中はヒダがたっぷりとあり、さきほどのフェラチオのようにちろちろと俺の敏感なところを攻め立ててきた。腰を動かしていないのにぞくぞくと快感が沸き起こってきた。これで腰を動かしたらどうなるのか。
美佳のことを気遣うべきだったのかもしれないが、そんな余裕は俺にはなかった。身体全体を動かすようにして、小さな体に突きを入れる。薄い胸が上下しないのが背徳的だ。
「んっ、あっ、んんっ……」
はじめは苦しげだった美佳の声にもだんだん艶が出てきた。苦痛は減り、快感の方が大きくなっている。初めてでも性の快楽を味わえるのはやはり魔物娘だからか。
だが彼女が気持ちよくなるより先に俺の方に再び余裕がなくなってきた。ペニスから腰へと快感が伝わり、そこからぞわぞわとした感覚がまた沸き起こる。俺は腰を引こうとした。
「ダメっ……!」
ふいに美佳との結合部の高さが変わった。彼女は腰の下で丸めていた尻尾を伸ばし、俺の腰へと回していた。抜こうとしたところをロックされてしまったみたいだ。
「挿れたんだから……ちゃんと最後までシて……ボクの中に出して……」
「何を言って……や、やめ……!」
下から美佳が腰を緩やかに動かしていた。ゆっくりと亀頭、カリ首、裏筋、竿が美佳の肉壷の中でかき回される。ぐちゃぐちゃと結合部がイヤラシイ音を立てた。
「やめろ美佳、そんなにされると……」
「だ、だってボクも気持ちよくて、止まらなくて……」
俺の懇願は美佳に却下される。そうしている間にも腰の疼きは広がっていき、そして……再び放たれた。さっきは口の中だったが、今度は然るべき場所、膣内に、その白濁液は放出される。
「うっ……!」
「う、あ……出てる……和人の精液……ボクの中に……」
身体を震わせて射精している俺を美佳は尻尾と脚で拘束しながら、射精をその小さな身体で受け止めていた。彼女は恍惚とした表情を浮かべ、身体を弛緩させる。
一方の俺もぐったりとしていた。そもそも男は射精すると力が抜ける。それを俺は二回もやった。彼女の身体を押しつぶさないように、俺は横にごろんと転がった。美佳の中から抜けたペニスも流石に疲れ気味であり、横を向いている。だが……
「ねぇ……」
仰向けになっていた美佳が転がり、女豹のポーズを取る。尻尾はぴんと立てているため、薄いけど丸い尻も、その割れ目も、そしてその奥に潜んでいて俺が先程中出ししたアソコも丸見えだ。
そんな物を見せつけながら、彼女はふりふりと尻尾と尻を振って見せる。
「もっとシて……和人のおちんちんでボクをもっと気持ちよくして……」
甘え媚びたそのメスのおねだりに……力を失いかけていた俺のオスが再び滾った。俺と美佳は今度は、獣の体勢で繋がる。
「あああっ! 入ってきた……!」
身体を弓なりに反らせ、俺を受け入れる彼女の声にもう苦痛はない。快感に染まりきっている。
疲れはないわけではなかったが、ここで気張らないと男が廃る。彼女の狭い腰を抱え、俺は後ろから彼女を突く。
「んあっ! イイ! 和人のおちんちんでおまんこずぽずぽされて……聞いていたより……一人でするより……ずっと気持ちいい!」
後ろから貫かれながら美佳は、自分の秘密をあられもなく淫語とともに口にする。そう言えば彼女はフェラをしたときもオナニーをしていた。やり慣れているのだろう。その痴態が俺の脳裏によぎり、膣内で過労気味の肉棒を怒張させる。
その時、俺の鼻先を何かがかすめた。美佳の尻尾の先だった。一抱えもある、身体と同じくらい大きなラタトスクの尾。先程は彼女の背中や尻に敷かれていたり俺の身体に巻きつけられたりして大きな動きを見せていなかったが、今は快感であちらへこちらへと所在なげに揺れている。
ふと思い立って俺は美佳の腰から両手を離し、その揺れている大きな尾を抱きしめた。
「ひゃあああ!? ちょ、和人!? それダメ! そこはよわ……!」
美佳の口から思わぬ嬌声が上がる。だが俺はほとんど聞いていなかった。念入りに乾かされていたその栗鼠の尾のさわり心地はどんな絹や毛皮よりも素晴らしかった。つややかで、やわらかで、ふかふかしていて……いつまでも触っていたいくらいだ。またさらに素晴らしいのが、尾の芯が太くしっかりとしていることだ。俺の腕はその柔らかな毛の海に沈み切ることなく、受け止められていた。その芯ゆえに先程、美佳は自分の腰を持ち上げることができたのだ。これなら抱きまくらにすることもできるだろう。
俺は腕に力を込めてその尻尾を抱きしめる。それだけでは満足できず、さらに俺は自分の頬をそのふかふかな尾に擦りつけた。
「だめ、だめぇえ……! おちんちんだけでも気持ちいいのにぃい! んああっ! し、尻尾もそんなにされたらぁ……! ボク、ボク……! おかしく……あぁん! おかしくなっちゃうよぉおお! 和人のチンポ奴隷になっちゃうぅう!」
快感のあまり美佳が歓喜の悲鳴混じりにおかしなことを言っているが、気にしない。彼女の尾を堪能しながら抽送を続ける。
しかし俺の方も余裕かと言うとそんなことはない。2回出しているから瞬殺を避けただけだ。3度めの射精がその身体に迫りつつある。
「美佳……! またナカでいいか!?」
「うん! 出して! ボクのナカに全部出して! ボクもイク……イクからぁあ! 一緒に、一緒にぃい!」
美佳の方も限界が近かった。快感を貪るように彼女も腰を左右に振って精と快感の極値をねだる。
俺たちは声を上げながら快感と互いの身体を貪る交尾をする。先にアクメを迎えたのは美佳の方だった。
「ひっ……きゅうぅううううう!」
絞められたかのような声をあげて彼女は小さな身体を仰け反らせて硬直した。同時に、彼女の膣がぎゅうぎゅうと収縮し、ペニスを搾る。そのキツイ締め付けに耐えきれず、彼女の尻尾にしがみつきながら俺も射精した。3度目とは思えない量の精液が小柄な幼馴染の身体の中へドクドクと注がれていく。
「はひゅ……ひゅい……」
腕と脚の力が美佳から抜ける。そのまま彼女はうつ伏せにベッドに突っ伏した。目は少し上転しており、口からはよだれが垂れ流しになっている。身体はアクメの余韻でピクピクと小さく痙攣している。情報を扱う理知的な姿はもうなかった。
そしてそんな彼女の上に俺も倒れる。衝突の危機だったが、ラタトスクの尾がクッションとなった。それで衝撃を吸収される。
いつの間にか外の雨は止んでいた。雨音はしない。部屋の中では、俺たちの上がった息の音だけが響き続けた……
「うう……激しかった……」
しばらくして、俺たちは美依さんが沸かしておいてくれた風呂に一緒に入っていた。自動で加温してくれるタイプだったから、部屋でドッタンバッタン騒いだあとでも風呂は温かかった。
腰が抜けてしまった美佳を抱えて俺は風呂場に行き、今こうして一緒に入っている。
「確かにボクの方から誘うような真似はしたし、こうなるように色々仕込んだけど……」
「やっぱり仕込んでいたんだな……」
実は付き合っていると言う噂、まだ付き合っていないのかと訊ねてくるヤツら……俺が訊ねると、美佳は口まで風呂につかり、ぶくぶくと泡を作り出した。
「まあそうだよ。男は『付き合っている』『気になっている』って噂を流すとソノ気になるって良く言われるし」
「はぁ……」
それにまんまと乗せられてしまった自分が情けない。まあ、いいんだけど。
「でもさ、ボクは、嘘はついていなかったでしょ?」
「……たぶんな」
火のないところに煙は立たぬとは言うが、付き合っていると言う噂は俺たちがいつも一緒にいると言うところが原因だ。だから嘘をつかれたわけではないだろう。このような会話を何度繰り返したことか……
「でもさ、和人」
ぱしゃりと音を立てて美佳は首をひねり、こちらを見上げてきた。
「ここまでやって『付き合っていない』は嘘になるよね?」
いたずらっぽい言い方ではあったが、彼女の目は少し潤んでおり、不安げである。今まで彼女に翻弄されたように、答えを濁して彼女を翻弄することもできたかもしれないが……意趣返しにならない。彼女は嘘はついていなかったんだから……俺も嘘をついてはいけない。
「そうだな。俺はお前のことが好きだし……付き合いたい」
「ん……」
美佳の目から不安の色が消える。雨が止み、春の日差しが一面に注ぎだした……そのような輝きが灯っていた。
「ボクも和人の事が好きだよ。だからここまでしたんだしね」
「本当か?」
「嘘はいっていないよ〜♪」
今までと同じように、はぐらかすような調子で言っているが……彼女は嘘は付かない。そして脚色して本当の事も言わなかったりもするけど、この短い言葉で嘘を言っていないと言うのは……そういうことだろう。
互いの気持ちを確認しあったところで、俺たちは向き合ってキスをした。さっき俺がしたような荒々しい物ではなく、互いにくちびるを押し付け合う、初めてらしいキスだった……
「ところで……さっき『ここまでした』と言ったけど、それってヤッたことだけじゃないだろ? 何をしたんだ?」
再び風呂に肩までつかる俺たち。ふと思った疑問を俺は口にした。ん〜? と彼女は振り向く。
「ボクはラタトスクだよ? 尾ひれがつくことを期待して噂を回したり、いつも一緒にいるってことがみんなに分かるように一緒にいたり、スリーサイズを恥を承知で流したりしたよ?」
「それ以外だ」
そう、美佳はラタトスク。情報を流したり、その情報に合うような行動をしたりするのは朝飯前だ。俺が聞いたさっきの「ここまでした」と言うのは何か、違うものを感じる。しょっちゅう翻弄されたけど、それでも幼馴染だ。そのくらい分かる。意外そうに美佳は眉を掲げてみせた。
「あはは〜、サクラをお願いしたのはともかく、さすがにこの街を物理的に巻き込んだのはやりすぎたかな〜」
「え? お前、何を言って……」
「ふふふ〜♪ ボクは嘘は言っていないよ〜♪」
いつもの言葉を上機嫌に口にする美佳。俺はあーでもないこーでもないと悩む。やれやれ、俺は相変わらず彼女に翻弄されそうだ。口調と同じようにご機嫌に揺らされている尻尾を眺めながら俺は苦笑してそう思うのであった。
17/03/15 20:56更新 / 三鯖アキラ(旧:沈黙の天使)