連載小説
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後編
きっかけは突然。それからもノリと勢いだった。
嫉妬、怒り、欲望……それらを原動力にアタシは勢いに任せて動いていた。


 一時間ほどしてアタシは裕を家に連れて帰宅した。今日は何か用事があって母さんはいない。親父は仕事。家にはアタシと裕の二人きりだ。
 アタシは裕を自分の部屋に引きずりこんだ。部屋の真ん中に崩れ落ちるようにして座った彼の顔は恐怖に引き攣っている。引っ張られて辛かったのか、肩をさすっていた。
 裕に痛い思いをさせてしまったのは少し心が傷んだが、それでも嫉妬と怒りは消えなかった。
 彼の前に腕組みをして立つ。そして冷ややかな声で命じた。
「とりあえず服脱いで、全部」
「え……?」
「…………」
 アタシは何も言わずに裕を睨みつける。ぴくりと裕の身体が震えた。怯えた様子を見せながら、彼は服を脱いでいった。制服、ズボン、Tシャツ、トランクス……すぐに裕は生まれたままの姿になる。そのペニスは少し勃起していた。いつもほど勃っていないのは、今のアタシが怖いからか。
「そこ、座って」
 アタシはベッドの前に座るよう命じる。逆らっちゃまずいと分かっているからか、彼は素直にアタシに従い、ベッドの前に正座する。
 その裕の股間に、ベッドに座ったアタシはおもむろに素足を乗せた。
「ちょ、佐志原さ……んぅ!」
「たまには趣向を変えないと、飽きちゃうでしょう?」
 アタシに飽きて、他の女と話すように。
 正直、足コキには自信がない。せいぜい、両親の営みを覗き見た知識だけだ。練習などしていない性技で裕を気持ちよくさせられるかどうか、少し不安だ。
 しかしその心配は無用だったようだ。アタシの足に踏まれて裕のおちんちんがどんどん大きく、硬くなっていく。
「何、裕? アタシに足で踏まれて興奮しちゃってるの? 変態」
「うぅ……」
 裕がくちびるを噛む。しかし勃起しているのは事実だし、今はアタシから逃げられない。
 間違っても爪で傷つけないように気をつけながら、肉球でふにふにとアタシはペニスを嬲る。足に力をこめるたびに硬くなった肉棒がアタシの肉球を押し返してくる。
「ほらほら、裕。気持ちいい?」
「気持ちいい、ですけど……ちょっと、痛いです」
 馬鹿正直に裕は答える。アタシの心に焦りが浮かぶ。やはり慣れてない技で攻め立てるのは無理があったか。
 足首を動かして、こねくり回すように踏んでみるが、裕の顔にはいつものとろけた表情が浮かばない。勃起を保ち、我慢汁を流しながらも射精に至る様子はなさそうだ。
『やっぱり足でヤるのは無理があったかな……』
 では今からいつもの尻尾に切り替えるか? いやいや、それじゃいつもと同じだ。かと言って手コキもフェラも、自信がなかった。いや、もっとぶっちゃければ、尻尾以外は自信がない。
 敗北感に似た物がアタシの脳裏をよぎる。
『いや、まだ……まだとっておきがあった』
 これも何度も見た物だ。だが実行するのはもちろん初めてだ。自信だってない。でもとっておきと言える。
 そしてとっておきだからこそ、一度使ったら後戻りはできない。瀬戸際でアタシは躊躇したが……
『ええい、ままよ!』
 アタシは足を裕の股間からどけた。裕が訝しげな、それでいてどこかホッとした顔をする。
「裕、ベッドの上に乗って」
 アタシの命令に、裕はぎこちなく疑い、おずおずとベッドに上がる。そしてアタシの方を向いて座ろうとしたが、その彼をアタシは押し倒した。さらに起き上がれないように、裕にのしかかり、尾で押さえつける。そして空いた手でアタシはスカートと下のショーツを脱いだ。
 アタシが何を考えているか分かった裕の顔が青ざめる。
「だ、ダメですよ佐志原先輩! そんなの……!」
「何がダメだよ! 裕が尻尾以外で射精するようにできればいいんでしょ!」
 なぜ尻尾以外にこだわるのか、なぜ裕を性的な意味で満足させることに執着するのか、自分でも理解できないかなり強引な論理だ。だけどアタシはいきり立っていて視野が狭くなっていた。
 左手で裕を押さえつけ、右手で彼のモノを掴んで位置を調節する。そしてアタシは腰を下ろしていった。
 ちょっと引っ張られるような痛みが走る。やっぱり見るのとするのとでは全然違う。おまけに、アタシはそこまで濡れていなかった。でも後には引かない。そのままアタシは裕を中に迎え入れていく。
 そしてとうとう、アタシは彼を最後まで飲み込んだ。濡れ具合は不足していても、彼の精を何度か受けていたためか、何とかなった。
「全部入ったよ、裕……どう? 気持ちいい?」
「あ、あああ……」
 半分くらい裕は聞いていない。アタシが処女だったように、彼もたぶん童貞だ。初めて味わう女の味に、射精をこらえるようが精一杯のようだ。
 異物を受け入れたためか、アタシの膣壁が粘液をじわじわと分泌する。もう少し濡れたら動いても大丈夫そうだ。時間を稼ぐためにも、アタシは裕に答えの催促をする。
「答えなさいよ。アタシの中、どう?」
「あったかくて、キツくて締め付けて……」
 うわ言のように裕は答える。その答えに少しアタシは安心したが、まだ満足はしていなかった。まだ挿入したばかり。これからが本番だ。
 それなりに濡れてきたようだ。少しずつ、アタシは腰を動かしてみる。なんというか、強いマッサージをされているような、痛みと快感が混在したような感覚がアソコから上ってくる。
「うあ、あ、あ……」
 うなされているかのような声が裕の口から漏れた。その声に苦痛のような物は見られない。しかしなぜか彼は涙を流していた。
「なんで泣いてんの……もっと感じてよ! 尻尾でじゅぽじゅぽやったように悶えてよ!」
 少しだけ辛かったが、アタシは腰の動きを大きくした。前後にうねらせるように動かす。アタシの動きに合わせてベッドがギシギシと悲鳴を上げた。アタシ一人用のベッドに二人乗って、さらに激しく動いているのだから無理もない。
「だめ、だめ……!」
 切羽詰まった声を上げながら裕は手を伸ばしてアタシの身体を押しのけようとする。しかし、やはり彼が力でアタシに勝てるはずがない。裕の抵抗を無視し、彼を射精に導くべくアタシは腰を動かし続けた。
腰はいつの間にか浮きだし、前後運動から上下にたたきつけるような動きに変わっていた。ぺたんぺたんと、アタシの太ももや尻が彼の太ももに当たる音が部屋に響く。
「やめ、センパイ……イク……出ちゃうぅう……!」
 言葉の通り、アタシの膣内で裕の竿がぶくりと膨れ上がり、今にも射精しそうになる。イヤイヤをするように裕が首を振り、射精をこらえようと身体に力を入れた。
 しかし、ここまで来たらもうおしまいだ。これは尻尾の時だろうとおまんこの時だろうと変わらない。
「いいよ、出しなさいよ……! 管理人の、アタシの、中に……!」
 ひたすらアタシは腰を振り続けた。アタシのおまんこで裕の射精寸前のおちんちんが激しくシェイクされる。耐えられるはずがない。
「うぅううう!」
 裕のペニスがアタシの中でどく、どくっと脈動を始める。それと同時にアタシのお腹の奥に温かい物が浴びせかけられた。彼の精液だ。アタシの大事なところに感じられる彼の精……尻尾で啜るのとはまた違う感覚だ。
 なんと言うか……尻尾で搾精した時は、温かいお風呂に入って身体全体がほぐれて気持ちいい感じ。膣内射精されるのは、肩凝りをピンポイントでほぐしてもらっている感じ……感覚は違うが、どちらも気持ちいい。アタシはうっとりと目を細めてその精を味わう。
 一方、裕は相変わらず泣いていた。瞳からぽろぽろ溢れる涙が頬を伝い、アタシのベッドのシーツに零れ落ちる。
「なんで……泣いているの?」
 一発、裕をヌいて少し落ち着きを取り戻していたアタシは、彼に泣いている理由を問いかける余裕ができていた。
「そりゃ泣きますよぅ……は、初めてがこんなのって……」
 ぶつぶつと裕は、最初はキスとかから始めたかっただのなんだのつぶやいている。なんて夢見ている乙女なんだとアタシは苦笑した。だいたい、そんな少女漫画じみたロマンチックな展開は、初めて会った時にアタシがアンタを尻尾でヌいたころから崩れているでしょうに……
「先輩のこと、好きだったのに……」
「……え?」
 突然の言葉に、アタシは頬を叩かれたかのような衝撃を受けた。え、コイツ今なんて言った? ちゃんと聞いてショックを受けたはずなのに、気分としては聞き慣れない外国語をいきなり言われたような感じだった。
「え、ちょ……裕、何を言って……」
「ずっと好きだったから、せめてエ……エッチの時くらいは……ちゃんと告白してからにしたかったのに……」
 呆然としているアタシの下から裕は抜け出し、アタシの前に座って裸体を小さく丸める。
 アタシは混乱した。え、コイツ、アタシのことが好きだったの? の割りには、村野と親しげにしゃべったり、男を見せろと言われたりして何なの?
 彼の目をまじまじと覗きこんでみるが、嘘を言っているようには見えない。じゃあ……
「村野さんは何なの?」
「恋愛相談相手です……」
 しゅんと鼻を鳴らしながら裕は答える。これも嘘ではなさそうだ。
 とすると、アタシのこの怒りは勘違いということになる……ヤバイ、やってしまった……
 あれ? でも勘違いとは言ってもアタシは確かに嫉妬して怒ったんだよね? じゃあ、この気持ちって……
「佐志原さん……」
 自分の気持ちに混乱しているアタシの前で裕は正座をする。
「さ、さっきの通り、順番がめちゃくちゃになってしまいましたが、ぼ、ぼ、僕は、さ、佐志原さんのことが……す、す、好きです! 付き合ってください!」
 いつもどおりガタガタな調子だったが、最後の一言は詰まらずに彼は言った。村野の言うとおり、男を見せた。 全裸だから別の意味で「男」を見せているのはちょっといただけないけど。
 あまりの急展開にアタシは、あー、と間抜けな声を出した。なんとかして自分の気持ちを整理して、何か言おうとする。だけど、できない。
 どのくらい時間が経ったのだろうか……3秒? 10秒? 1分? 分からないけど、アタシは口を開く。コイツの性欲管理を買って出たときもノリだったんだ。じゃあ今だってノリで答えてやる。
「……覚悟しなよ、これからはただの精液管理人とかじゃなくて、恋人として管理して搾るからね?」
 なーんでそんなひねくれた言い方するかな、自分の気持ちに正直になって「私も好き」と言えばいいものを。もっとも、アタシはマンティコアだから本心をそのまま伝えたりはしてあげないけどね。
 それでも、恋人になるという返事は確かだ。涙を流していた裕が途端に晴れやかな笑顔になる。
「え、えーっと、それじゃあ……」
「何? 晴れてセックスがしたい?」
「そ、そうじゃないです! いや、あの、したいのは確かですけど、その前に……」
 恥ずかしがって裕は黙ってしまう。彼の気持ちを聞いてようやく分かったが、彼がつっかえつっかえな口調になるのはアタシの前だけのようだ。理由は、好きなアタシと話すと緊張してしまうから。好きだからこそ緊張してしまうらしい。
「何よ、ほら、言ってみなさいよ」
「き、キスを……」
 蚊の鳴くような声でようやく裕は自分がしたいことをアタシに言う。なんだ、アタシの尻尾にもおまんこにもさんざん精液をぶちまけておきながら……特別な意味があるのは分かるけど、別に恥ずかしがることでもないし、アタシに遠慮しなくたっていいのに……
 アタシは無言で目を閉じ、裕のキスを待った。ややあって、彼がアタシにくちびるを押し付けてきた。でもそれだけ。まだまだウブだなぁ……アタシもこれが初キスだけど、もっとすることは知っている。ほら、こんなふうに……
「……!?」
 アタシが舌を差し入れると裕が驚いたように身体を震わせた。でもすでにアタシの右手が彼の後頭部に回っているから逃げられない。もう一方の左手は裕の右手を掴んでいた。その手をアタシの胸に導いてやり、押し付ける。好きに触っていいんだよ、と。
 キスも胸を触っている手もアタシにされるがままだったけど、しばらくしたら彼の方もおずおずと動き始め、そして大胆になってきた。アタシの胸の感触を確かめるように、むにゅ、むにゅっと揉みしだいてくる。
 一度アタシは顔を離してキスを中断した。そしてブラウスの前を開け、ブラを外して放り捨てる。まだおっかなびっくりで自信がない調子だったが、アタシに導かれるより先に裕は胸を揉んできた。
「んっ……」
 自分で触るよりはるかに気持ちいい。思わず口から声が漏れ、身体が震える。既に彼の精液を受けていた生殖器が、もっとセックスしたい、もっと気持ちよくなりたいと愛液を分泌した。
「どう、裕? アタシのおっぱいは?」
「すごく……や、やわらかくて……いつまでも触っていたいくらいです……」
 裕はアタシの胸を掬いあげ、そして離す。ぷるるんとアタシの胸がまるでプリンのように揺れた。自分でもこんないやらしい動かし方をしたことない。頬に血が上った感じがする。
 アタシは赤くなっている顔を見られたくなくてそっぽを向いた。照れ隠しに裕に言う。
「その……そう言ってくれるのは嬉しいけどね、おっぱいだけじゃなくて……その……そろそろ、挿れたい……」
 まさか、挿入を自分から要求する、しかもそれに恥ずかしがるだなんて思ってもみなかった。今のアタシを考えれば、裕の口調も仕方がないのかもしれない。
 アタシはベッドの上に仰向けになり、脚を開いた。魔物娘としては騎乗位が基本なのかもしれないけど、今回は彼に見せ場を作ってあげることにした。さっき、アタシの方から犯しちゃったし……恋人としての初めてのセックスは、彼にいい思い出として残る物の方がいいだろう。
 ゴクリと喉を鳴らした裕が、ちょこちょことアタシの脚の間に身体を割り入れた。そして、胸を揉んでいるだけでビンビンに再起したおちんちんをアタシのアソコに当てる。だけど入り口を探り当てるのに苦労しているのか、表面をぬるぬると擦るだけで、なかなか入らない。
「ほら、ここだよ……」
 手助けしてあげることにした。手を伸ばして裕のペニスを掴んで、入り口まで導いてあげる。にゅるっと亀頭がアタシの中に入ってきた。そこから先は男の仕事だ。アタシは手を離す。
 緊張して恐る恐ると言った性格が焦らしとなった。もどかしいほどゆっくりと、裕の肉棒がアタシの肉洞をかき分けて入ってくる。
「あっ、あはぁああ……入ってきてる……」
 長い吐息がアタシの口から漏れる。気持ちいい。さっきの挿入は少し痛みが混じっていたが、今はそんなこと一切ない。やっぱり、裕のことが好きで、裕もアタシのことが好きと分かっているからかな。
 そしてもう一つ、裕を受け入れた今分かったことがある。アタシの身体はすっかり、裕専用の物へと作り変えられていた。指先から髪の一本、口から尻尾、アソコから子宮まで、全部裕の精を味わうために仕込まれている。さっき、強引に挿入してもひどいことにならなかったのは、これがあったからだろう。それが今、分かった。
 ついに、裕とアタシは深いところでつながった。アタシと裕は今、ひとつになっている。それだけでも気持ちいいのだが、アタシはもっと気持ちよくなりたかった。
「ね、裕……動いて……」
「は、はい……」
 アタシの腰を掴み、裕が身体を揺する。彼のカリと竿がアタシの肉壁をこすり立てた。あまりの気持ちよさにアタシは身体をくねらせる。
「あああっ! いいっ! いいよ裕ぁ……!」
 泣いているような声でアタシは気持ちよさを裕に訴える。裕は何も言わない。歯を食いしばって抽送を繰り返している。腰を振りながら何かを言うほど器用じゃないっていうのもあるかもしれないけど、射精を我慢しているってのが大きいようだ。
「裕は? んくぅ! 裕は気持ちいい?」
 さっきも聞いた気がするが、改めて聞いてみたくなった。腰を振りながら彼は答える。
「き、気持ちいいです! 気持よすぎて……あっ、も、出る……!」
 まだほとんど女を知らない彼にとって自分から腰を振るのはかなり酷だったようだ。答えた直後、裕の肉棒がアタシの中で弾けた。
 一方、アタシは自分の胎内に注がれる裕の精液を堪能していたが、満足はしていなかった。ここまでしたのなら、裕によってイケるところまでイキたかった。だけど、二度目の射精で結構消耗してしまったみたいだ。裕はアタシの上で身体を弛緩させる。同じように、彼の象徴もアタシの中でぐにゃりと脱力しはじめた。
「ちょっと、何へばってんの? もっとセックスしようよ……」
「うぅう……」
 裕は呻くだけだ。アタシはため息をついた。
「しょーがない。いつものようにいきますか?」
「な、なにを……はぁうう!?」
 裕の身体が跳ね、反る。それに同調するかのように、彼のペニスもグンとアタシの中で反り返った。いつものように毒針を一本、刺してやったのだ。
「ほぉら、これで元気になったでしょう? それじゃ、いつものようにアタシの身体で気持よくなりなさい。でも今回は、尻尾じゃなくて、アタシのおまんこでね♪ おまんこを使う分、ちゃんとアタシを気持ちよくしてよ?」
「は、はぃいい……あああ!」
 返事をした直後、裕の腰が肉体の要求に従って動き始めた。中が掻き毟られ、子宮口をずんずんと突かれる。体中を走る衝撃に意識が持っていかれるんじゃないかと思った。アタシはシーツをぎゅっと握りしめる。
「あああ! すごい! もっと、もっとぉお!」
 無意識のうちにアタシは自分から腰を動かしていた。少し尻を浮かせ、股間を押し付けるようにして腰をくねらせる。
「だ、ダメ、佐志原先輩! そんなに……動かれたら、また……ひぁあああ!」
 裕のペニスが脈打ち、三たびアタシの子宮に種付けをする。下腹部から火が上がったかのようにアタシは感じた。その火はさらにアタシの全身へと巡る。膣内に出された精液はアタシの身体をさらに性的に活性化させ、感度を気持ちも身体も上昇させていた。その影響でアタシの身体は絶頂を目指してギアを上げる。さらにマンティコアの毒がまだ効いている裕が射精の最中も腰を動かし続けるのがアタシを高めていった。
「ふぁあああ! 止まらない……ううぅ!」
「あ、あう! ふあぁあん!」
 アタシと裕の嬌声が絡み合う。今までは一方的に尻尾でアタシが攻めて、あるいは裕がアタシの尻尾をオナホにして、裕一人が喘いでいた。でも今は二人でいやらしい声を出している。そのことが今、二人でセックスをして一緒に気持ちよくなっていることをアタシに認識させた。
「あ、あ、佐志原、センパイ……!」
「苗字は……んくぅう! もう、やめて……名前で……ふぅうん! 勇姫って呼んで……!」
 精液を管理するとか搾るとかイカせろとか言っているアタシだけど、せっかく恋人にステップアップしたんだ。苗字で呼ばれるのは少し余所余所しいというか距離を感じる。名前を呼ばれるくらいはしてもらってもいいだろう。
 裕は少し恥ずかしそうに顔を染めたが、ぽつんと小さな声でアタシのリクエストに応えてくれた。
「勇姫……セ、ンパイ……!」
 どきんとアタシの胸が力強く打つ。やっぱり名前で呼ばれるのは嬉しい。嬉しいことをされたらこっちもしてあげたくなる。そしてもっと欲しくなる。
「裕……」
 彼の名前を呼びながらアタシは両手を差し伸べた。そして裕の後頭部を抱き、強引に引き寄せる。二人の顔が互いの鼻先にくっつく。
 何度も射精したためか、裕の顔はだらしないくらいに歪んでいる。でもその瞳にはイキそうになっていて同じくらいだらしなくとろけたアタシの顔が映っていた。
 アタシ、こんないやらしい顔していたんだ。そんな物を見た瞬間、アタシの中で何かが飛んだ。
「もっと……もっといっぱいおまんこぐちゅぐちゅシてぇ! イ、イキそうなの……!」
 露骨な言葉でアタシは裕に要求する。
「は、はひぃい!」
 情けない返事をしながら、裕は腰の律動を早めた。また跳ね上がった快感のボルテージに、アタシは思わず腕に力を込めた。当然、近かった二人の顔が更に近づく。そのままアタシと裕は口づけをした。
 互いにいやらしく腰を振って、互いの口に嬌声を送り込みながら、二人で最高潮を目指す。
「うぅうう!」
 先に我慢ができなくなったのは裕だった。四度目の精液がアタシの中に流し込まれる。キツく締め付けるアタシの膣壁を押しのけるようにどく、どく、どくっとペニスが何度も脈打った。
「んんぅううう!」
 その中出しの刺激で、アタシもイッてしまった。
 彼の精液を漏らしたくない、無駄にしたくない、すべて吸収したいとばかりに、アタシのアソコがぎゅうぎゅうとしまる。それと一緒にアタシの身体すべてが雑巾のように絞られているような気分だった。それでもアタシは結合は解かない。精液・性欲の管理人として、そして恋人として当然の行為だ。イッている間もアタシは裕のモノを咥えつづけ、精液を受け止め続けた。


「そう言えばさ、ちょっと気になることがあるんだけど……」
 情事の後のまったりタイム。アタシは尻尾で裕をつつき、裕はアタシの手や耳を撫でている。そんな時、ふとアタシは思い立って尋ねた。
「いつから村野さんに相談していたの?」
「え、えーと……二ヶ月ちょっとくらいですかね」
 裕は答えた。アタシと裕が出会うよりは少しだけ前に、村野と裕は接触していたことになる。アタシより村野の方が付き合いが長いのにちょっと嫉妬したが、まあそこはいいだろう……実際に、恋人同士となった今ならどうでもいいことだし、何よりもっと気になることが出た。こんがらがった糸をほぐすようにアタシは段階を追って考える。
 裕は村野に恋愛相談をしていたと言う。今ですらアタシと話すのに緊張してつっかえつっかえになる彼。そんな裕が話したこともないアタシといきなり話すなんて至難の技だ。とすると、アタシと出会うために、村野にどうすれば相談したとなると……
 ハッとした。そうだ! 考えてみればあの出会いは少し不自然だった!
 まずチャックのついていないトートバッグに、エッチな本を生で入れるのは不用心すぎる。さらに、そのバッグの中にアタシの好物、メロンパンが一緒に入っていたのも不自然だ。そしてなにより、彼はあの廊下を、ふらふらと飛び出した。まるで、後ろから誰かに押されたように……押したのが村野だったとしたら?
 そうすれば辻褄が合う!
「つまり、最初から全部仕組まれていたわけだ……」
「え、あう、その……ごめんなさい……そ、そうでもないと、僕……」
「いや、いいよ。別に何かまずいわけでもないんだし」
 なんか裕とその裏にいた村野の手に乗せられて転がされたのはちょっと癪だけど、別に問題でも何もない。
「むしろ、こうして裕に出会えたから、村野さんには感謝しないとね」
「は、はう、先輩……!」
 裕が切羽詰まった声を上げる。アタシが裕の頭を胸元に抱えるようにして抱きしめたからだ。当然、彼の顔はアタシのおっぱいにむにゅっと埋まるわけで。
「んんん? 裕、また勃っちゃった? さっき、四回もアタシの中に出したってのに、元気ねぇ?」
「いや、その……だって……」
 顔を真っ赤にしながら裕は何か言おうとするが、その勃起がすべてを物語っていた。でも、勃起しても精液はあまり出ないかもしれない。アタシは彼の腰に尻尾の針を突き刺した。
「いてっ! ちょ、先輩……!」
「いいじゃん。もう二回くらい、シよ? 最初はバックでね。二回目は裕も疲れているだろうから、騎乗位で一緒に気持ち良くなろう?」
 そう言いながらアタシはライオンと同様、四つん這いの獣の姿勢となり、お尻を裕の方に向ける。毒の影響を受けている裕の手ががっしりとアタシの腰を掴み、そして四回も出したとは思えない剛直をアタシの中にねじ込んできた。
「あ、ああああっ!」
「ううっ、勇姫、先輩ぃ!」
 すぐに狂おしいまでの抽送が始まる。アタシもやられっぱなしではいない。尻を左右に振って自分と裕を刺激する。
 強気で凶暴、尻尾で男をいたぶる高位の魔獣、マンティコア。そのマンティコアを自分の物にしたかった男による毒罠。毒罠と言うとものすごく悪い印象だけど、誘導されたことに関してはこれ以上に合う言葉はない気がする。裕と きっかけは突然、それからもノリと勢いだった。
 そのため、裕と村野が仕組んだ罠にあっさりとハマり、さらに裕の精液という毒をたっぷりと喰らってしまったアタシ。けど、それは同時にアタシがかけがえのない男を手に入れたことを意味する。そういう意味では、村野にも感謝しなきゃいけないのかもしれない。
 これから注がれるであろう甘美な毒を期待しながらアタシは腰を振り、下腹部から上がる快感に声を漏らし、合間に恋人の名前を呼ぶのであった。
13/06/29 22:31更新 / 三鯖アキラ(旧:沈黙の天使)
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■作者メッセージ
はい、そんなわけでヤンデレと化したマンティコアの佐志原勇姫さんでしたが、最後は沈黙の天使仕様のデレデレになりました(殴)
いかがだったでしょうか?

そして最後の締めで悩みに悩みました。
『仕組まれた毒罠』ってタイトルで縛られているという……orz
この仕組まれた毒罠ってのは、「実は村野がこの恋愛騒動に一枚噛んでいましたよ」ってのをアピールしたかったので、このタイトルになったのですが……SSの文章として絡めるとなかなか厄介でした(汗)
さらに、当初のコンセプトにさらに「きっかけは突然、それからもノリと勢い」ってのを使うってのが加わっちゃったし……
結構、キャラが勝手に動いて私が制御できなかった感があります。
まあ、イチャエロできたので良かったのですが。

あ、ちなみに気づかれた方もいらっしゃるかと思いますが、この裏で糸を引いていた村野美穂は『彼女が望んだもの』にも出ていました。
ええ、すっかり恋愛アシスタントの立場を確立しておりますww

では、今回はこのへんにて。
またヴァンパイアSSや『多品併用』でお会いしましょう。
ええ、すっかり放置してもうた(汗)

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