後編
アポピスのハーメスロータスがファラオのネフェルランタナより命を受けていた頃。
勇者の一行は遺跡の入口にまでたどり着いていた。
「……おかしい。衛兵の姿がない」
ハーフプレートアーマーで身を固め、油断なく腰の剣に手をかけて周囲の様子を伺っているのは勇者のリデルだ。
「なんでしょう。不気味な物を感じます」
同じように周囲の様子を見ている茶色の麻のローブを身にまとい杖を持っている青年は攻撃魔法も回復魔法も操る魔術師、サボイである。
「……あるいは衛兵なんぞに頼らんでも、トラップで侵入者を排除できると思っているのかもしれないわね」
そう言ったのは薄衣の上に簡単な革鎧だけといった格好の女盗賊のライラだ。リデルやサボイと違い、褐色の肌を持っている。実は彼女は昔からリデルやサボイと行動しているわけではなく、最近この遺跡を攻略するためにリデルとサボイからスカウトされた者だ。
「……それもそうかもな。では中に入ったらより警戒しなければ……行くぞ!」
「そうは問屋が下ろさないわね」
リデルが号令をかけようとしたその時、三人の頭上から声が響く。入口の高台の上に一匹の魔物が腕組みをして立っていた。毒々しい紫色の肌をしており、豊かに実った乳房は銀装飾で覆っているだけの卑猥な姿をしている。腕や腰にも銀装飾が付けられているが、それはアクセサリーであると同時にどこか装甲のような印象もあった。そして腰から下は黒にも近い紫色の鱗を持った蛇であった。
アポピスのハーメスロータスだ。
「なっ!? 魔物!?」
「しかも結構手練みたいですね……」
「手練なんて物じゃないわ! アイツ、アポピスはファラオを凌ぐ実力者よ!」
ハーメスロータスを見て口々に言いながら、勇者のパーティーは武器を構える。一方、ハーメスロータスは眉をひそめていた。本来は女盗賊の言うとおりファラオの上に立つ自分が、そのファラオによってついさっき屈服させられた。その雪辱を思い出したからだ。
ハーメスロータスは高台から降り、入口を塞ぐようにしてハーメスロータスは身構えて立つ。
「忌々しいけど私はファラオからあんたたちを撃退するように言われているの。悪いけど全力で叩き潰させてもらうわ。そして男の一方は私の婿に迎えてあげる♥」
一匹のアポピスと三人の勇者のパーティーの戦闘が今、遺跡の入口で火蓋を落とされた。
「うおおおおおっ!」
剣を大上段に振りかぶってリデルが突進してくる。振り下ろされたその刃をハーメスロータスは左手を掲げ、銀のバングルで受け止めた。そのまま身体をひねって掌底をリデルの腹部に叩き込もうとする。間一髪リデルは身体を反らしてそれを躱し、牽制に剣を横薙に薙いで跳び下がる。
「……燃えよ!」
それとほぼ同時にサボイが魔法攻撃を放ってきた。ファイアボールだ。躱しきれない。舌打ちしながらハーメスロータスは掲げていた左手を振り下ろした。指先から黒い稲妻が走る。空中で火炎弾と黒い稲妻がぶつかり、火花を散らして二つとも消え去った。
「私のファイアボールを無詠唱の呪文で相殺……!?」
サボイが目を剥く。アポピスの実力を見て驚いたのだろう。しかしそれを確認している暇はない。ハーメスロータスは後ろに振り返りながら右肘打ちを繰り出した。
「くおっ……!」
背後から急襲しようとしていたライラがトンボを切って後ろに跳んだ。追撃をしたいところだったがそうもいかない。今度はまたリデルがハーメスロータスに襲いかかってくる。しかもサボイが攻撃力上昇魔法のサポートをしていた。赤いオーラを纏った刃がハーメスロータスに向かって突き出される。ハーメスロータスはそれをスウェーイングで躱した。身体を反らした体勢から左チョップを叩き込む。躱しきれないと判断したか、リデルはそれを魔力のこもった刃で受け止めた。しかし防御した瞬間は、動けない事を意味する。
「ルーアッハ、風よ吹け!」
突き出されたアポピスの手から強力な風魔法が放たれる。勇者の身体が宙に投げ出され、地面に叩きつけられて引きずられた。
「あらぁ? 意外と勇者と名乗る割には見かけ倒しなのね」
腰に手を当ててハーメスロータスは挑発をしてみせる。
「ず、図に乗るなよ、蛇が……」
「お前を倒して、ファラオも倒す!」
リデルとサボイが左右に散開して挟み撃ちの状態を取ろうとする。一方、ハーメスロータスの目は怒りに燃えていた。自分を見ておらず、この先のファラオだけを見ている二人の姿勢が彼女の逆鱗に触れたのだ。
「どいつもこいつもファラオ、ファラオと……腹立つわね!」
ばっと彼女が腕を開くと、その手に魔力塊が無数に形成された。ダークマターやリリムが作り出す淫らな黒い魔力塊とは違う、非常に攻撃的な物だ。それをまるで粘土でもこねるかのようにハーメスロータスはつなぎ合わせていく。あっという間に一抱えもありそうな、バチバチと火花を散らす黒い魔力の玉がハーメスロータスの左右の手に作り出された。それらを宙に浮かせたハーメスローガスが指をパチンと一回鳴らす。唸りを上げて魔力球が一つずつ、リデルとサボイに飛んでいく。
「ぐっ……!」「ぐわああっ!」
リデルは攻撃を諦めて防御に徹したが、サボイはそれを防ぐことができず避けることもできなかった。魔力球がサボイにぶつかって爆ぜる。バチッと火花が飛ぶ音がして強烈な爆風が巻き起こった。その爆風にサボイの身体が吹き飛んでいく。8メートルほど吹き飛ばされたところでサボイは地面に転がった。
「やああっ!」
二つの攻撃魔法を放ったところにライラがまた奇襲をかけてきた。一気に懐に潜り込んで逆手に持ったショートソードで斬り上げてくる。だがそれもハーメスロータスは織り込み済みだ。左にかがむようにしてそれを躱し、さらに前に跳んでライラとの間合いを取る。奇襲に失敗したライラも慌ててハーメスロータスの前から離れた。
「でやあぁあ!」
間髪いれずにリデルが襲いかかってきた。彼の少し後ろにサボイが立ち、能力上昇の魔法や牽制の魔法で援護に回っている。
「ふん、しゃらくさい……!」
リデルの攻撃を受け流して彼は捨て置き、ハーメスロータスはサボイに向かって突進した。右拳を振りかぶって彼の頭に叩き込もうとするが、リデルが戻ってきてその攻撃を剣で受け止める。
「させるか!」
「助かった、リデル! プロミネンス!」
リデルに礼を言い、サボイが攻撃魔法を唱える。反射的に横に跳んだハーメスロータスの耳元を火炎の帯がかすめていった。
『さて……』
二人から跳びずさり、距離をとってからハーメスロータスは考える。今までの攻防で分かったことがいくつかあった。
まず、リデルとサボイのコンビネーションはなかなかの物だ。攻めと守りと補助、全てを互いにうまく補い合って戦っている。ハーメスロータスをもってしても、一人でこの二人を崩すのは難しい。そしてその間にライラが奇襲をかけてくる。盗賊だけあって正面切って戦うのは得意ではないのだろう。自分の武器を上手く活かして戦っていると言える。
しかし、リデルやサボイと連携が取れているかとなると、そうではないように見える。どちらかというと、自分が隙を見出して襲いかかる、ワンマン的な戦い方だった。また、先ほどハーメスロータスがサボイに奇襲をしかけた際、位置的にはライラがサボイを守った方が早いはずであった。それなのにライラは特に何をすることもなく、リデルが守りに行った。
『ライラは連携を取れてはいない……肌の色から考えても、遺跡攻略のために雇われた傭兵的な立場かしらね』
ハーメスロータスは全てを見破った。
バチンと尾で地面を打ち、砂埃を上げてみせる。リデルとサボイは迎撃すべく重心を前に置いて身構えたが、ライラは逃げるべく重心を後ろに置いて身構えた。戦い方の差もあるだろうが、ここからして三人のリズムが少しずれている。
ハーメスロータスが突進した。ライラではなく、リデルに向かって。右手を突き出し、魔光弾を放つ。リデルはそれを剣で叩き落とした。だがハーメスロータスは攻撃の手を止めない。さらにアンダースローをするかのように左手を動かし、魔光弾をもう一発放つ。それもリデルは叩き落とした。そしてサボイの援護魔法を受けて反撃に移る。
ここでハーメスロータスがいきなり横に跳んだ。そして奇襲する機会を伺っていたライラの後ろに回り込む。
「きゃっ……!?」
安全なところで観察していると思っていたライラは不意を突かれ、短く悲鳴を上げる。彼女が硬直している間にハーメスロータスは素早く蛇の胴体で彼女を縛り上げた。
「しまった……!」
リデルたちがライラを助けようと向き直るがもう遅い。彼女の首筋にはアポピスの毒牙が深々と刺さっていた。
「あ、あああ……」
見る間にライラの身体が弛緩し、手からぽとりとショートソードが落ちる。その顔がとろけきっており、口の端から涎がこぼれはじめていた。
たっぷりと毒を注ぎ込んだハーメスロータスはライラの身体を地面に転がした。蛇体に解放されるやいなや、ライラが悶え始める。
「ふぅううん! あつい……からだがあついよぉおお!」
艶かしい声を上げて身体を波打たせながら彼女は革の胸当てを剥ぎ取り、現れた薄衣に包まれた控えめで丸い果実を片手で揉みしだき、もう一方の手をスカートの中に突っ込む。もはやさっきまで一緒に行動していたリデルやサボイのことなど頭から消し去っていた。
女の淫らな姿を見慣れていないのか、二人の男はわずかの間、呆然としていた。しかしすぐに気を取り直して武器を構える。もうちょっとボーッとしていてくれたらよかったのにとハーメスロータスは舌打ちをした。
「おのれ魔物め、ライラをそんな目にあわせるとは……もう許さん!」
チャキッと剣を構えてリデルが叫ぶ。だがその声には焦りが見える。ライラが奇襲で敵を仕留めると言う手が一つ消えたのは痛かったのだろう。しかし、ハーメスロータスがしたことは、手段を封じただけではない。
『でもそれまでほんのちょっと時間が必要だから、もう一攻防くらい楽しみましょうか』
薄く笑ったハーメスロータスは指をぱちんと鳴らす。彼女の背後に黒い炎の玉が4つ浮かぶ。その炎はゴウッと音を立ててリデルとサボイに向かった。
「こんなもの!」
サボイが前に出て、白いオーラを纏った杖でそれらを全て打ち返した。その炎を追うようにしてリデルが剣を振り上げて突擊する。
「くっ……」
跳ね返された魔法とリデルの両方に対応しなければならない。負担は大きいがやむを得ずハーメスロータスはシールド魔法を張って跳ね返された魔法を受け止め、そしてリデルの剣は白刃取りすることで対処した。挟まれている剣を強引に抜き取ろうとリデルが踏ん張る。その足を払おうとハーメスロータスの尾が動いた。
「ぬおっ!?」
剣に気を取られていたリデルはあっという間に転がされる。そのリデルを蛇体で巻きとろうとアポピスの身体が動いた。
「させるか……うわああっ!?」
リデルを助けるべく杖をハーメスロータスに向けて魔法を唱えようとしたサボイだったが、動きを封じられて声を上げた。彼の身体に蛇身が巻きついている。しかしそれはハーメスロータスのものではない。
「うっふふふ……捕まえた。あたい、前からあんたに興味があったのよね」
その身体はなんとライラの物であった。彼女はラミアに魔物化していた。
アポピスの猛毒は人や魔物を発情させるだけではない。人間の女性に注がれると彼女らをラミアに変えるのだ。ラミアに変わった女性は自分を変えたアポピスの忠実な下僕となる。
今、女盗賊ライラはラミアとなり、ハーメスロータスに、そして同時に男と愛と快楽の欲望に忠実な一匹の魔物娘となっていた。
「サボイ……うおっ!?」
「勝負あったわね」
サボイの心配をしようとしたリデルだったが、その身にハーメスロータスの下半身が巻き付いた。彼女の言うとおり、侵入者を無力化しかつ男を自分と下僕の分も手に入れる事となった、ハーメスロータスの完全勝利だ。
「さて……ファラオに対抗すべく、さっそく愛を交わしましょう。ファラオに用意された場所というのは気に入らないけど、そこでじっくりと……」
ちろりと蛇の長い舌を出してぺろりとくちびるを舐めながら、情欲に目を爛々と輝かせてハーメスロータスは勇者に囁くのであった。
★
ネフェルランタナが指定した、離れの建物にハーメスロータスとライラはそれぞれの男を引き連れて入った。ここでライラはハーメスロータスと別の部屋に篭る。
「さて……これで私とあなたの二人だけね」
巻きついているリデルを見下ろしながらハーメスロータスがねっとりと囁く。その声には捕食者をいたぶるような嗜虐性も見えていた。
「さぁ、お楽しみの愛と快楽の時間よ……」
「くっ、誰がお前なんかに……うわっ!?」
リデルが驚きの声を上げる。彼の鎧の留め金があっさりとハーメスロータスによって引きちぎられていた。このくらい、その気になればアポピスをはじめとする魔物娘には朝飯前だ。そしてさらにこれが意味することは、先ほどの勇者一行との戦闘は、力などに関しては手を抜いていたということであった。そのことに勇者が蛇の下半身に縛り上げられたまま、戦慄する。
「ふふふ……怖くはないわ。あんたがこれまで見たことのない天国を見せてあげるから……」
とうとうハーメスロータスは勇者の肌着も引きちぎって剥き、彼を丸裸にした。しかし恐怖や緊張からか、勇者のペニスは萎えたままだ。
「へぇ……私を目の前にしてちんぽを勃てないだなんて、随分と失礼な勇者ね。それともちょっと怖いかしら? なら……これならどう?」
蛇体で勇者を締め上げたまま、ハーメスロータスはリデルを胸元にぎゅっと抱え込んだ。リデルの頭がアポピスの柔らかな双乳の中に埋まる。筋肉質な四肢や腹部、蛇体と異なり、そこはマシュマロのようなやわらかさで、彼の顔を包み込んだ。
勇者ゆえ禁欲的な生活を送っており、女性の胸に触ったことすらなかったリデルはパニックに陥る。しかし男としての本能ゆえか、その象徴が徐々に反応を始めていた。
「あっははは! でもおっぱいだけで勃ち始めちゃったんだ! 勇者くんもスケベねぇ?」
「ううう……」
顔を赤くする。その顔の熱が乳房を通してハーメスロータスにも感じられた。リデルはうつむくが勃起は収まらない。彼のうぶな様子にくすくすと笑いながら、ハーメスロータスは尾先を肉棒の先端に這わせた。
「な、何をする!?」
「まずは蛇らしく、しっぽで抜いてあげる。ふっふふ……人間で言えば足みたいなものよ? そんなので射精しちゃっていいのかしら?」
ニヤニヤ笑いながらアポピスは、尾先で亀頭を撫で始めた。まるで親が子どもの頭を撫でるかのように。しかしリデルにとってはそんな優しいものではない。敏感な先端を撫で回され、痛いのと気持ちいいのと間くらいの快感が下腹部から全身へと走り抜けていた。びくびくとリデルの身体が震える。
「何〜? びくびくしちゃうほど気持ちいいの〜? しっぽで嬲られて?」
それだけの快感を与えていると自覚しているのに、意地悪くハーメスロータスは訊ねる。
「く、くそ……」
快感から逃れようと勇者は身体をよじるが、がっちりと蛇体で締め上げられているので逃げられなかった。獲物がもがく様子をハーメスロータスはますますサディスティックな表情に顔を染めながら楽しむ。
「もうちょっと、サービスしてあげようかしら」
蛇の尾がペニスの根元の方まで巻き付いた。そしてしごく運動を始める。みっちりと筋肉が詰まって弾力のある尾がぐいぐいと肉棒を締め付けてしごきぬく。
「や、やめろ……! 何か……何か変なのが……!」
「んん? あらぁ、もしかして射精するのも初めてなのかしら? 年齢からして精通がまだなんてことはないとは思うけど……もしかして、今までのは全部夢精だったかなぁ?」
じっくりと観察するかのようにハーメスロータスはリデルが悶える様子を見つめる。その間もしっぽでのしごきと先端いじりは止まらない。
「じゃあ、教えてあげる。この先、男はどうなるか……さぁ、イキなさい!」
尾の動きをハーメスロータスは変えた。しごく運動に加えてうねらせるような動きを与える。まるで肉棒を揉みほぐし、精液の通りを良くするかのようだ。
アポピスの尾による総攻撃に勇者はあっという間に白旗を挙げる。
「うあ、あああああ!」
「あっははは! 出た出た! 濃い勇者のザーメン、いっぱい出た!」
びゅるびゅると精液を放つリデルのペニスを、嬉々とした表情でハーメスロータスは言う。勇者も身体を震わせながらその様子を見ていた。
黒い蛇の胴体にかかった白濁液はむしろ塊に近い。反対色ゆえに精液は鮮やかに映った。
「ふふふ……どう? 実際に自分の射精を見たのは初めてでしょう? 気持ち良かったかしら?」
精液を掬い取ってリデルに見せつけながらハーメスロータスは訊ねる。絶頂の余韻に浸っているリデルは答えられない。その様子にハーメスロータスは呆れる。
「ったく、仲間を率い、反魔物領の希望の星であるはずの勇者が、ザマァないわね」
言いながらハーメスロータスはリデルの拘束を解き、仰向けに転がした。飽きて逃がすつもりなのか。いや、そんなことはない。
アポピスの蛇の胴体のうち、腰にちかい根元の部分がリデルの太腿に絡みついた。さらに蛇の尾は勇者の上体にも巻き付き強引に引き起こす。
「ねぇ勇者サマ? さっきの精液って何のための液か分かる?」
「あ、赤ちゃんの元……」
「そう、そこまでは分かっているのね……じゃあ、これから何をするか、分かるわね?」
捕食者はぺろりと舌なめずりをして獲物を見下ろす。被食者の勇者の目が見開かれた。
「ま、まさか……!?」
「そのとーり。リデルとか言ったっけ? あんたには私を孕ませてもらうわよ。勇者サマは魔物のパパになるってわけ……」
「や、やめろ……やめてくれ……!」
勇者としての尊厳を完全に奪われる事態。それを避けようとリデルはもがくが、先ほど以上に蛇体は強く巻きついており、びくともしない。そしてリデルのあがきはハーメスロータスを喜ばせるだけであった。
「あっははは! それでもがいているつもり? まるでお話にならないわね。さぁ、身体に正直に、私に種付けをしなさい……嫌だなんて言っても、童貞のあんたが私のおまんこに耐えられるとは思わないけどね」
そう言ってハーメスロータスは左手を軽く肉棒に添えて位置を調節する。すでにハーメスロータスの膣は生殖の準備を整えており、早く男が欲しいと涎を垂らしていた。ニチャリと音を立てて秘裂と亀頭が擦れ合う。それだけでリデルは短く声を漏らし、身体を震わせる。そんなリデルにお構いなく、ハーメスロータスは腰を押し進め、そに身にリデルの分身をねじ込んだ。
「んはぁあああ♥」
「く、うわあああ!」
二つの嬌声が部屋に絡み合う。勇者と闇の蛇は一つとなったていた。
「んふふ……瞬殺は避けたようね。一回出した分、耐久力がついたかしら?」
「あ、ぐ……」
リデルは答えない。歯を食いしばっている。彼の様子を見てハーメスロータスは訝しげな表情で首をかしげたが、すぐに彼が何をしているのか分かり、嗜虐的に笑った。
「はっはーん、射精をこらえているんだ? 私の中に出すまいと我慢しているんだ?」
図星だったが、リデルは何も言わない。少しでも気を抜くと射精してしまいそうだからだ。ハーメスロータスの笑みがますます広がっていく。
「そんな我慢しても無駄よ。今から腰を動かすから。ま、私も気持ち良くなりたいから少しは我慢してくれると嬉しいかもね」
そしてついに言葉の通り、ハーメスロータスの腰が動き始めた。姿通り、蛇のように腰がうねる。腰が引かれ、打ち付けられる。そのたびにリデルの剛直は熱くぬめっている女の柔肉にしごき抜かれた。ハーメスロータスの膣内は襞も多く、まるで蛇腹だ。それが引くとカリ首を撫で、入れると亀頭を撫でる。
こんな愛撫を男性器に加えられたら、大抵の男は耐えられない。ましてや、これまで女性経験のなかったリデルが耐えられるはずがない。
「うわああああああっ!」
悲鳴のような声を上げてリデルは達した。ハーメスロータスの膣内で勇者のペニスがどくどくと脈打ち、精液を吐き出していく。
「んん〜っ、いっぱい出ているわね〜」
一度腰の動きを止め、中出しの感触をじっくりと目を閉じてハーメスロータスは味わう。しかし、本人はまだ達していないし、一度の男の中出しで満足するはずがない。
「ほらほらほぉら。まだ出るでしょう?」
再び艶かしい腰の運動が始まる。今度は左右に腰が振り動かされた。
「や、やめ……ひあああああっ!」
アポピスが腰を動かすのにあわせてペニスも左右に激しく動かされ、揺さぶられた。その度に二人の結合部からグチュグチュと下品な音が響く。また、腰の動きにあわせて肉棒全体がハーメスロータスの膣肉が撫でられる。射精直後の敏感な男性器にこの刺激は強烈だった。萎えることは許されず、リデルの肉刀はハーメスロータスから与えられる快楽を受け止めざるをえなかった。
「ひあ! ダメっ! そんな……うあああっ!」
「あはっ♥ 女みたいな悲鳴を上げるのね。いじめがいがあるわ……あんっ♥ ああん♥」
ハーメスロータスは腰を淫らにくねらせて自らも楽しむ。彼女の口からも甘くて伸びやかな嬌声が上がっていた。
しかしリデルの方は性交を楽しんでいる余裕はなかった。その身に早くも三度目の射精が迫っている。
「ま、また出ちゃう……!」
「ふあん♥ いいわよ……たーっぷり、んふぅ♥ 私に中出ししなさい♥ んっ……♥」
とどめとばかりにハーメスロータスは下腹部に力を入れ、膣肉を収縮させた。リデルの剛直に柔肉がうにゅうにゅと絡みつき、射精をねだる。その強請に勇者はあっさりと屈した。
「ふああああああっ!」
三度目の射精が始まる。しかしいくら溜め込んでいたとはいえ、連続で三度目となると量は少ない。膣内でぴくぴくと肉棒が痙攣するだけだった。
「あら、三度目はさすがにきつかったかしら? 元気もなくなってきたみたいだし……」
もはや限界と言った感じで勇者の肉刀がアポピスの魔膣の中で折れる。だが……
「これで終わりだと思った!?」
「なっ……くああっ!?」
勇者が声をあげる。アポピスの毒牙がリデルの首筋に深々と突き刺さっていた。そのまま毒液がどくんどくんと注がれていく。どんな生物も発情させる、強力な毒が。
注がれた毒液の影響でリデルの身体は火が付いたかのように火照り、肉鞘に刺さったままの肉刀がグンと力を取り戻す。
「うわあああっ!? 勃っちゃう! 勝手に勃っちゃうぅ!」
毒液による快楽で喘ぎながら、勇者は恥も外聞もなく泣き喚く。一方、自分の膣内で力を取り戻し、自分の中を圧迫する存在を感じ取ってハーメスロータスは満足げに微笑んだ。
「ほぉら、元気になった。それじゃ、今度こそ私を満足させなさ……」
ハーメスロータスが何かに気づき、言葉が尻すぼみになる。リデルが彼女の胴体の中で必死にもがいていた。しかしそれは逃げ出そうとしているからではない。アポピスがにぃと笑う。
「あっはは! 何勇者サマ、自分から腰を振ろうとしているの?」
「あ、が……苦しい……!」
苦しいのは締め付けられているからではないだろう。自分の中の滾りを解放したくてもできない、その状況に苦しんでいるのだ。少し前まで禁欲的だった勇者をここまで変貌させるのが、アポピスの毒である。ネフェルランタナに対しては不覚をとったが、これがアポピスの本来の姿。
「んん〜……でもリデルは私の獲物だし〜、主導権は私にあるしぃ……」
「頼む、苦しい! 出させてくれぇ……! 何でもするからぁ!」
「あらぁ? 何でもしてくれるのぉ? じゃあみっつほどお願いしちゃおうかなぁ?」
ハーメスロータスは首を無邪気な感じで傾げて見せた。
「ひとつめは、私をちゃんとイカせること。ふたつめは私にさっきと同じようにたっぷり中出しすること。そしてみっつめは……」
リデルの顎に軽く右手を添え、上を向かせる。その目を見つめながらハーメスロータスは最後の要求をする。
「私と結婚し、生涯私を愛すること。さぁ……どうする? 同意したいなら私のくちびるを奪いなさい」
勇者はすっかり目の前の闇の蛇に魅了されていた。首を懸命に伸ばし、自らくちづけをする。ハーメスロータスはさらに彼を背中から抱きしめて、そのキスをさらに深いものにした。
「ん、ちゅう……あっははは! これで完全にリデルは私の物! 誰にも渡さない! 誰にも……ファラオにも!」
喜びにハーメスロータスは高笑いをする。ラミア種らしい独占欲の言葉がその口から漏れた。そして、男を身も心も手に入れた魔物娘はもう我慢ができない。
「さぁ、今度はキスだけじゃなくて、身体で私への気持ちを示しなさい……私をイカせて、リデルも中出ししなさい……!」
そう言ってハーメスロータスは少し、リデルの腰の拘束を弱めた。とたんにリデルの腰が、まるで陸に打ち上げられた魚のように激しく動き出す。彼の激しい腰使いに今まで余裕風を吹かせていたハーメスロータスも嬌声を上げ、悶えた。
「あ、あんっ♥ うっふふふ……こんなに激しく腰振っちゃって……よっぽど勇者をやっていた時は溜まっていたのね♥」
ぞくぞくと身体を快感で震わせながら、ハーメスロータスはとろけた顔でリデルを見下ろして呟く。そっと優しく抱きしめると、再びリデルの顔がハーメスロータスの胸に埋もれた。
「ふーっ! ふーっ!」
リデルは鼻息荒く、ハーメスロータスに腰を打ち付けている。もはや真面目な教団の勇者だったリデルはどこにもいない。アポピスの毒によって浮かされた、一匹の獣であった。
「ああっ! いいっ! おまんこ、ぐちゅぐちゅ掻き回されて……くあああっ! そこぉ!」
感じるポイントを偶然攻められたのだろう。声にも余裕がなくなってきた。それ以降はその部分に当たるように、ハーメスロータスは腰をねっとりと揺らして位置を調節する。
離れの部屋からは肉同士がぶつかり合う音とハーメスロータスの蜜壷から響く卑猥な水音だけが聞こえた。
「いやっ!? あっ、はうぅう!」
ハーメスロータスが切羽詰まった声を上げる。目から火花が散ったかのように思えた。絶頂が近い。しかしそれはリデルの方もそうであった。ハーメスロータスの膣の中で肉竿がぷくりと膨れ上がり、射精の準備をする。リデルの男性器の変化をハーメスロータスは意識が少し朦朧としながらも感じ取っていた。
「あんたも……リデルもイクのね? いっしょに、いっしょにぃい!」
その言葉を最後にハーメスロータスはアクメに達した。身体中に力が入る。もちろん、下半身の蛇の胴体にも。そのため、ふたたびリデルの身体がきつく拘束され、ハーメスロータスの身体に限りなく密着することになった。リデルの亀頭がハーメスロータスの子宮口にロックされる。
「うおおおおおっ!」
雄叫びを上げて、拘束されたままリデルはさらにハーメスロータスを突き上げた。その中で勇者の肉刀がどくどくと白濁液を噴火の如く漏らしている。アポピスの毒による影響でその量はおびただしく、最初の射精の量とは比べ物にならない。ハーメスロータスの膣内に収まらなかった精液が結合部から漏れた。
「あんっ♥ うっふふふ……こんなにたくさん出しちゃって……♥ もったいないけど、嬉しい……♥」
自分の膣から漏れ出る愛液混じりの精液を見てハーメスロータスはうっとりとした笑みを浮かべる。だがその表情がすぐに野心に満ちた物に変わった。
「見ていなさい、ネフェルランタナ……今回は負けたけど、いつまでもこうはいかないわよ……いつかきっと、娘を産んで、その娘があんたの寝首をかきに行くわよ……! ふふふ……あっはははは!」
★
「ふふふ……上手くいきましたね……クリネス、あなたの策のおかげです。これで一石で二鳥も三鳥も落とせました。みんなが幸せです」
遺跡の主の間の窓から離れにこもったハーメスロータスや女盗賊だったライラの様子を見て、ネフェルランタナが微笑んで言う。
「しかし、このまま性交によってハーメスロータスが力を持って暗黒魔界が広がったり、あるいは娘がこの遺跡に攻めてきたりしたら……!」
「それを防ぐのもあなたと私の役目です」
心配事を言おうとするクリネスのくちびるをネフェルランタナは右手の人差し指でちょんと押さえる。そして左手で彼の片手をとり、自分の胸に押し当てた。
「彼女に負けないように、私たちも交わればいいだけの話……協力、してくれますよね?」
「……精一杯務めさせていただきます」
苦笑しながらクリネスはネフェルランタナを抱き寄せる。そしてそのくちびるを奪った。
かくしてアポピスをも取り込み、自分の配下に置いたネフェルランタナ。
彼女の国は暗黒魔界を内包しながら、ますます大きく、豊かに、淫らに発展していくのであった。
勇者の一行は遺跡の入口にまでたどり着いていた。
「……おかしい。衛兵の姿がない」
ハーフプレートアーマーで身を固め、油断なく腰の剣に手をかけて周囲の様子を伺っているのは勇者のリデルだ。
「なんでしょう。不気味な物を感じます」
同じように周囲の様子を見ている茶色の麻のローブを身にまとい杖を持っている青年は攻撃魔法も回復魔法も操る魔術師、サボイである。
「……あるいは衛兵なんぞに頼らんでも、トラップで侵入者を排除できると思っているのかもしれないわね」
そう言ったのは薄衣の上に簡単な革鎧だけといった格好の女盗賊のライラだ。リデルやサボイと違い、褐色の肌を持っている。実は彼女は昔からリデルやサボイと行動しているわけではなく、最近この遺跡を攻略するためにリデルとサボイからスカウトされた者だ。
「……それもそうかもな。では中に入ったらより警戒しなければ……行くぞ!」
「そうは問屋が下ろさないわね」
リデルが号令をかけようとしたその時、三人の頭上から声が響く。入口の高台の上に一匹の魔物が腕組みをして立っていた。毒々しい紫色の肌をしており、豊かに実った乳房は銀装飾で覆っているだけの卑猥な姿をしている。腕や腰にも銀装飾が付けられているが、それはアクセサリーであると同時にどこか装甲のような印象もあった。そして腰から下は黒にも近い紫色の鱗を持った蛇であった。
アポピスのハーメスロータスだ。
「なっ!? 魔物!?」
「しかも結構手練みたいですね……」
「手練なんて物じゃないわ! アイツ、アポピスはファラオを凌ぐ実力者よ!」
ハーメスロータスを見て口々に言いながら、勇者のパーティーは武器を構える。一方、ハーメスロータスは眉をひそめていた。本来は女盗賊の言うとおりファラオの上に立つ自分が、そのファラオによってついさっき屈服させられた。その雪辱を思い出したからだ。
ハーメスロータスは高台から降り、入口を塞ぐようにしてハーメスロータスは身構えて立つ。
「忌々しいけど私はファラオからあんたたちを撃退するように言われているの。悪いけど全力で叩き潰させてもらうわ。そして男の一方は私の婿に迎えてあげる♥」
一匹のアポピスと三人の勇者のパーティーの戦闘が今、遺跡の入口で火蓋を落とされた。
「うおおおおおっ!」
剣を大上段に振りかぶってリデルが突進してくる。振り下ろされたその刃をハーメスロータスは左手を掲げ、銀のバングルで受け止めた。そのまま身体をひねって掌底をリデルの腹部に叩き込もうとする。間一髪リデルは身体を反らしてそれを躱し、牽制に剣を横薙に薙いで跳び下がる。
「……燃えよ!」
それとほぼ同時にサボイが魔法攻撃を放ってきた。ファイアボールだ。躱しきれない。舌打ちしながらハーメスロータスは掲げていた左手を振り下ろした。指先から黒い稲妻が走る。空中で火炎弾と黒い稲妻がぶつかり、火花を散らして二つとも消え去った。
「私のファイアボールを無詠唱の呪文で相殺……!?」
サボイが目を剥く。アポピスの実力を見て驚いたのだろう。しかしそれを確認している暇はない。ハーメスロータスは後ろに振り返りながら右肘打ちを繰り出した。
「くおっ……!」
背後から急襲しようとしていたライラがトンボを切って後ろに跳んだ。追撃をしたいところだったがそうもいかない。今度はまたリデルがハーメスロータスに襲いかかってくる。しかもサボイが攻撃力上昇魔法のサポートをしていた。赤いオーラを纏った刃がハーメスロータスに向かって突き出される。ハーメスロータスはそれをスウェーイングで躱した。身体を反らした体勢から左チョップを叩き込む。躱しきれないと判断したか、リデルはそれを魔力のこもった刃で受け止めた。しかし防御した瞬間は、動けない事を意味する。
「ルーアッハ、風よ吹け!」
突き出されたアポピスの手から強力な風魔法が放たれる。勇者の身体が宙に投げ出され、地面に叩きつけられて引きずられた。
「あらぁ? 意外と勇者と名乗る割には見かけ倒しなのね」
腰に手を当ててハーメスロータスは挑発をしてみせる。
「ず、図に乗るなよ、蛇が……」
「お前を倒して、ファラオも倒す!」
リデルとサボイが左右に散開して挟み撃ちの状態を取ろうとする。一方、ハーメスロータスの目は怒りに燃えていた。自分を見ておらず、この先のファラオだけを見ている二人の姿勢が彼女の逆鱗に触れたのだ。
「どいつもこいつもファラオ、ファラオと……腹立つわね!」
ばっと彼女が腕を開くと、その手に魔力塊が無数に形成された。ダークマターやリリムが作り出す淫らな黒い魔力塊とは違う、非常に攻撃的な物だ。それをまるで粘土でもこねるかのようにハーメスロータスはつなぎ合わせていく。あっという間に一抱えもありそうな、バチバチと火花を散らす黒い魔力の玉がハーメスロータスの左右の手に作り出された。それらを宙に浮かせたハーメスローガスが指をパチンと一回鳴らす。唸りを上げて魔力球が一つずつ、リデルとサボイに飛んでいく。
「ぐっ……!」「ぐわああっ!」
リデルは攻撃を諦めて防御に徹したが、サボイはそれを防ぐことができず避けることもできなかった。魔力球がサボイにぶつかって爆ぜる。バチッと火花が飛ぶ音がして強烈な爆風が巻き起こった。その爆風にサボイの身体が吹き飛んでいく。8メートルほど吹き飛ばされたところでサボイは地面に転がった。
「やああっ!」
二つの攻撃魔法を放ったところにライラがまた奇襲をかけてきた。一気に懐に潜り込んで逆手に持ったショートソードで斬り上げてくる。だがそれもハーメスロータスは織り込み済みだ。左にかがむようにしてそれを躱し、さらに前に跳んでライラとの間合いを取る。奇襲に失敗したライラも慌ててハーメスロータスの前から離れた。
「でやあぁあ!」
間髪いれずにリデルが襲いかかってきた。彼の少し後ろにサボイが立ち、能力上昇の魔法や牽制の魔法で援護に回っている。
「ふん、しゃらくさい……!」
リデルの攻撃を受け流して彼は捨て置き、ハーメスロータスはサボイに向かって突進した。右拳を振りかぶって彼の頭に叩き込もうとするが、リデルが戻ってきてその攻撃を剣で受け止める。
「させるか!」
「助かった、リデル! プロミネンス!」
リデルに礼を言い、サボイが攻撃魔法を唱える。反射的に横に跳んだハーメスロータスの耳元を火炎の帯がかすめていった。
『さて……』
二人から跳びずさり、距離をとってからハーメスロータスは考える。今までの攻防で分かったことがいくつかあった。
まず、リデルとサボイのコンビネーションはなかなかの物だ。攻めと守りと補助、全てを互いにうまく補い合って戦っている。ハーメスロータスをもってしても、一人でこの二人を崩すのは難しい。そしてその間にライラが奇襲をかけてくる。盗賊だけあって正面切って戦うのは得意ではないのだろう。自分の武器を上手く活かして戦っていると言える。
しかし、リデルやサボイと連携が取れているかとなると、そうではないように見える。どちらかというと、自分が隙を見出して襲いかかる、ワンマン的な戦い方だった。また、先ほどハーメスロータスがサボイに奇襲をしかけた際、位置的にはライラがサボイを守った方が早いはずであった。それなのにライラは特に何をすることもなく、リデルが守りに行った。
『ライラは連携を取れてはいない……肌の色から考えても、遺跡攻略のために雇われた傭兵的な立場かしらね』
ハーメスロータスは全てを見破った。
バチンと尾で地面を打ち、砂埃を上げてみせる。リデルとサボイは迎撃すべく重心を前に置いて身構えたが、ライラは逃げるべく重心を後ろに置いて身構えた。戦い方の差もあるだろうが、ここからして三人のリズムが少しずれている。
ハーメスロータスが突進した。ライラではなく、リデルに向かって。右手を突き出し、魔光弾を放つ。リデルはそれを剣で叩き落とした。だがハーメスロータスは攻撃の手を止めない。さらにアンダースローをするかのように左手を動かし、魔光弾をもう一発放つ。それもリデルは叩き落とした。そしてサボイの援護魔法を受けて反撃に移る。
ここでハーメスロータスがいきなり横に跳んだ。そして奇襲する機会を伺っていたライラの後ろに回り込む。
「きゃっ……!?」
安全なところで観察していると思っていたライラは不意を突かれ、短く悲鳴を上げる。彼女が硬直している間にハーメスロータスは素早く蛇の胴体で彼女を縛り上げた。
「しまった……!」
リデルたちがライラを助けようと向き直るがもう遅い。彼女の首筋にはアポピスの毒牙が深々と刺さっていた。
「あ、あああ……」
見る間にライラの身体が弛緩し、手からぽとりとショートソードが落ちる。その顔がとろけきっており、口の端から涎がこぼれはじめていた。
たっぷりと毒を注ぎ込んだハーメスロータスはライラの身体を地面に転がした。蛇体に解放されるやいなや、ライラが悶え始める。
「ふぅううん! あつい……からだがあついよぉおお!」
艶かしい声を上げて身体を波打たせながら彼女は革の胸当てを剥ぎ取り、現れた薄衣に包まれた控えめで丸い果実を片手で揉みしだき、もう一方の手をスカートの中に突っ込む。もはやさっきまで一緒に行動していたリデルやサボイのことなど頭から消し去っていた。
女の淫らな姿を見慣れていないのか、二人の男はわずかの間、呆然としていた。しかしすぐに気を取り直して武器を構える。もうちょっとボーッとしていてくれたらよかったのにとハーメスロータスは舌打ちをした。
「おのれ魔物め、ライラをそんな目にあわせるとは……もう許さん!」
チャキッと剣を構えてリデルが叫ぶ。だがその声には焦りが見える。ライラが奇襲で敵を仕留めると言う手が一つ消えたのは痛かったのだろう。しかし、ハーメスロータスがしたことは、手段を封じただけではない。
『でもそれまでほんのちょっと時間が必要だから、もう一攻防くらい楽しみましょうか』
薄く笑ったハーメスロータスは指をぱちんと鳴らす。彼女の背後に黒い炎の玉が4つ浮かぶ。その炎はゴウッと音を立ててリデルとサボイに向かった。
「こんなもの!」
サボイが前に出て、白いオーラを纏った杖でそれらを全て打ち返した。その炎を追うようにしてリデルが剣を振り上げて突擊する。
「くっ……」
跳ね返された魔法とリデルの両方に対応しなければならない。負担は大きいがやむを得ずハーメスロータスはシールド魔法を張って跳ね返された魔法を受け止め、そしてリデルの剣は白刃取りすることで対処した。挟まれている剣を強引に抜き取ろうとリデルが踏ん張る。その足を払おうとハーメスロータスの尾が動いた。
「ぬおっ!?」
剣に気を取られていたリデルはあっという間に転がされる。そのリデルを蛇体で巻きとろうとアポピスの身体が動いた。
「させるか……うわああっ!?」
リデルを助けるべく杖をハーメスロータスに向けて魔法を唱えようとしたサボイだったが、動きを封じられて声を上げた。彼の身体に蛇身が巻きついている。しかしそれはハーメスロータスのものではない。
「うっふふふ……捕まえた。あたい、前からあんたに興味があったのよね」
その身体はなんとライラの物であった。彼女はラミアに魔物化していた。
アポピスの猛毒は人や魔物を発情させるだけではない。人間の女性に注がれると彼女らをラミアに変えるのだ。ラミアに変わった女性は自分を変えたアポピスの忠実な下僕となる。
今、女盗賊ライラはラミアとなり、ハーメスロータスに、そして同時に男と愛と快楽の欲望に忠実な一匹の魔物娘となっていた。
「サボイ……うおっ!?」
「勝負あったわね」
サボイの心配をしようとしたリデルだったが、その身にハーメスロータスの下半身が巻き付いた。彼女の言うとおり、侵入者を無力化しかつ男を自分と下僕の分も手に入れる事となった、ハーメスロータスの完全勝利だ。
「さて……ファラオに対抗すべく、さっそく愛を交わしましょう。ファラオに用意された場所というのは気に入らないけど、そこでじっくりと……」
ちろりと蛇の長い舌を出してぺろりとくちびるを舐めながら、情欲に目を爛々と輝かせてハーメスロータスは勇者に囁くのであった。
★
ネフェルランタナが指定した、離れの建物にハーメスロータスとライラはそれぞれの男を引き連れて入った。ここでライラはハーメスロータスと別の部屋に篭る。
「さて……これで私とあなたの二人だけね」
巻きついているリデルを見下ろしながらハーメスロータスがねっとりと囁く。その声には捕食者をいたぶるような嗜虐性も見えていた。
「さぁ、お楽しみの愛と快楽の時間よ……」
「くっ、誰がお前なんかに……うわっ!?」
リデルが驚きの声を上げる。彼の鎧の留め金があっさりとハーメスロータスによって引きちぎられていた。このくらい、その気になればアポピスをはじめとする魔物娘には朝飯前だ。そしてさらにこれが意味することは、先ほどの勇者一行との戦闘は、力などに関しては手を抜いていたということであった。そのことに勇者が蛇の下半身に縛り上げられたまま、戦慄する。
「ふふふ……怖くはないわ。あんたがこれまで見たことのない天国を見せてあげるから……」
とうとうハーメスロータスは勇者の肌着も引きちぎって剥き、彼を丸裸にした。しかし恐怖や緊張からか、勇者のペニスは萎えたままだ。
「へぇ……私を目の前にしてちんぽを勃てないだなんて、随分と失礼な勇者ね。それともちょっと怖いかしら? なら……これならどう?」
蛇体で勇者を締め上げたまま、ハーメスロータスはリデルを胸元にぎゅっと抱え込んだ。リデルの頭がアポピスの柔らかな双乳の中に埋まる。筋肉質な四肢や腹部、蛇体と異なり、そこはマシュマロのようなやわらかさで、彼の顔を包み込んだ。
勇者ゆえ禁欲的な生活を送っており、女性の胸に触ったことすらなかったリデルはパニックに陥る。しかし男としての本能ゆえか、その象徴が徐々に反応を始めていた。
「あっははは! でもおっぱいだけで勃ち始めちゃったんだ! 勇者くんもスケベねぇ?」
「ううう……」
顔を赤くする。その顔の熱が乳房を通してハーメスロータスにも感じられた。リデルはうつむくが勃起は収まらない。彼のうぶな様子にくすくすと笑いながら、ハーメスロータスは尾先を肉棒の先端に這わせた。
「な、何をする!?」
「まずは蛇らしく、しっぽで抜いてあげる。ふっふふ……人間で言えば足みたいなものよ? そんなので射精しちゃっていいのかしら?」
ニヤニヤ笑いながらアポピスは、尾先で亀頭を撫で始めた。まるで親が子どもの頭を撫でるかのように。しかしリデルにとってはそんな優しいものではない。敏感な先端を撫で回され、痛いのと気持ちいいのと間くらいの快感が下腹部から全身へと走り抜けていた。びくびくとリデルの身体が震える。
「何〜? びくびくしちゃうほど気持ちいいの〜? しっぽで嬲られて?」
それだけの快感を与えていると自覚しているのに、意地悪くハーメスロータスは訊ねる。
「く、くそ……」
快感から逃れようと勇者は身体をよじるが、がっちりと蛇体で締め上げられているので逃げられなかった。獲物がもがく様子をハーメスロータスはますますサディスティックな表情に顔を染めながら楽しむ。
「もうちょっと、サービスしてあげようかしら」
蛇の尾がペニスの根元の方まで巻き付いた。そしてしごく運動を始める。みっちりと筋肉が詰まって弾力のある尾がぐいぐいと肉棒を締め付けてしごきぬく。
「や、やめろ……! 何か……何か変なのが……!」
「んん? あらぁ、もしかして射精するのも初めてなのかしら? 年齢からして精通がまだなんてことはないとは思うけど……もしかして、今までのは全部夢精だったかなぁ?」
じっくりと観察するかのようにハーメスロータスはリデルが悶える様子を見つめる。その間もしっぽでのしごきと先端いじりは止まらない。
「じゃあ、教えてあげる。この先、男はどうなるか……さぁ、イキなさい!」
尾の動きをハーメスロータスは変えた。しごく運動に加えてうねらせるような動きを与える。まるで肉棒を揉みほぐし、精液の通りを良くするかのようだ。
アポピスの尾による総攻撃に勇者はあっという間に白旗を挙げる。
「うあ、あああああ!」
「あっははは! 出た出た! 濃い勇者のザーメン、いっぱい出た!」
びゅるびゅると精液を放つリデルのペニスを、嬉々とした表情でハーメスロータスは言う。勇者も身体を震わせながらその様子を見ていた。
黒い蛇の胴体にかかった白濁液はむしろ塊に近い。反対色ゆえに精液は鮮やかに映った。
「ふふふ……どう? 実際に自分の射精を見たのは初めてでしょう? 気持ち良かったかしら?」
精液を掬い取ってリデルに見せつけながらハーメスロータスは訊ねる。絶頂の余韻に浸っているリデルは答えられない。その様子にハーメスロータスは呆れる。
「ったく、仲間を率い、反魔物領の希望の星であるはずの勇者が、ザマァないわね」
言いながらハーメスロータスはリデルの拘束を解き、仰向けに転がした。飽きて逃がすつもりなのか。いや、そんなことはない。
アポピスの蛇の胴体のうち、腰にちかい根元の部分がリデルの太腿に絡みついた。さらに蛇の尾は勇者の上体にも巻き付き強引に引き起こす。
「ねぇ勇者サマ? さっきの精液って何のための液か分かる?」
「あ、赤ちゃんの元……」
「そう、そこまでは分かっているのね……じゃあ、これから何をするか、分かるわね?」
捕食者はぺろりと舌なめずりをして獲物を見下ろす。被食者の勇者の目が見開かれた。
「ま、まさか……!?」
「そのとーり。リデルとか言ったっけ? あんたには私を孕ませてもらうわよ。勇者サマは魔物のパパになるってわけ……」
「や、やめろ……やめてくれ……!」
勇者としての尊厳を完全に奪われる事態。それを避けようとリデルはもがくが、先ほど以上に蛇体は強く巻きついており、びくともしない。そしてリデルのあがきはハーメスロータスを喜ばせるだけであった。
「あっははは! それでもがいているつもり? まるでお話にならないわね。さぁ、身体に正直に、私に種付けをしなさい……嫌だなんて言っても、童貞のあんたが私のおまんこに耐えられるとは思わないけどね」
そう言ってハーメスロータスは左手を軽く肉棒に添えて位置を調節する。すでにハーメスロータスの膣は生殖の準備を整えており、早く男が欲しいと涎を垂らしていた。ニチャリと音を立てて秘裂と亀頭が擦れ合う。それだけでリデルは短く声を漏らし、身体を震わせる。そんなリデルにお構いなく、ハーメスロータスは腰を押し進め、そに身にリデルの分身をねじ込んだ。
「んはぁあああ♥」
「く、うわあああ!」
二つの嬌声が部屋に絡み合う。勇者と闇の蛇は一つとなったていた。
「んふふ……瞬殺は避けたようね。一回出した分、耐久力がついたかしら?」
「あ、ぐ……」
リデルは答えない。歯を食いしばっている。彼の様子を見てハーメスロータスは訝しげな表情で首をかしげたが、すぐに彼が何をしているのか分かり、嗜虐的に笑った。
「はっはーん、射精をこらえているんだ? 私の中に出すまいと我慢しているんだ?」
図星だったが、リデルは何も言わない。少しでも気を抜くと射精してしまいそうだからだ。ハーメスロータスの笑みがますます広がっていく。
「そんな我慢しても無駄よ。今から腰を動かすから。ま、私も気持ち良くなりたいから少しは我慢してくれると嬉しいかもね」
そしてついに言葉の通り、ハーメスロータスの腰が動き始めた。姿通り、蛇のように腰がうねる。腰が引かれ、打ち付けられる。そのたびにリデルの剛直は熱くぬめっている女の柔肉にしごき抜かれた。ハーメスロータスの膣内は襞も多く、まるで蛇腹だ。それが引くとカリ首を撫で、入れると亀頭を撫でる。
こんな愛撫を男性器に加えられたら、大抵の男は耐えられない。ましてや、これまで女性経験のなかったリデルが耐えられるはずがない。
「うわああああああっ!」
悲鳴のような声を上げてリデルは達した。ハーメスロータスの膣内で勇者のペニスがどくどくと脈打ち、精液を吐き出していく。
「んん〜っ、いっぱい出ているわね〜」
一度腰の動きを止め、中出しの感触をじっくりと目を閉じてハーメスロータスは味わう。しかし、本人はまだ達していないし、一度の男の中出しで満足するはずがない。
「ほらほらほぉら。まだ出るでしょう?」
再び艶かしい腰の運動が始まる。今度は左右に腰が振り動かされた。
「や、やめ……ひあああああっ!」
アポピスが腰を動かすのにあわせてペニスも左右に激しく動かされ、揺さぶられた。その度に二人の結合部からグチュグチュと下品な音が響く。また、腰の動きにあわせて肉棒全体がハーメスロータスの膣肉が撫でられる。射精直後の敏感な男性器にこの刺激は強烈だった。萎えることは許されず、リデルの肉刀はハーメスロータスから与えられる快楽を受け止めざるをえなかった。
「ひあ! ダメっ! そんな……うあああっ!」
「あはっ♥ 女みたいな悲鳴を上げるのね。いじめがいがあるわ……あんっ♥ ああん♥」
ハーメスロータスは腰を淫らにくねらせて自らも楽しむ。彼女の口からも甘くて伸びやかな嬌声が上がっていた。
しかしリデルの方は性交を楽しんでいる余裕はなかった。その身に早くも三度目の射精が迫っている。
「ま、また出ちゃう……!」
「ふあん♥ いいわよ……たーっぷり、んふぅ♥ 私に中出ししなさい♥ んっ……♥」
とどめとばかりにハーメスロータスは下腹部に力を入れ、膣肉を収縮させた。リデルの剛直に柔肉がうにゅうにゅと絡みつき、射精をねだる。その強請に勇者はあっさりと屈した。
「ふああああああっ!」
三度目の射精が始まる。しかしいくら溜め込んでいたとはいえ、連続で三度目となると量は少ない。膣内でぴくぴくと肉棒が痙攣するだけだった。
「あら、三度目はさすがにきつかったかしら? 元気もなくなってきたみたいだし……」
もはや限界と言った感じで勇者の肉刀がアポピスの魔膣の中で折れる。だが……
「これで終わりだと思った!?」
「なっ……くああっ!?」
勇者が声をあげる。アポピスの毒牙がリデルの首筋に深々と突き刺さっていた。そのまま毒液がどくんどくんと注がれていく。どんな生物も発情させる、強力な毒が。
注がれた毒液の影響でリデルの身体は火が付いたかのように火照り、肉鞘に刺さったままの肉刀がグンと力を取り戻す。
「うわあああっ!? 勃っちゃう! 勝手に勃っちゃうぅ!」
毒液による快楽で喘ぎながら、勇者は恥も外聞もなく泣き喚く。一方、自分の膣内で力を取り戻し、自分の中を圧迫する存在を感じ取ってハーメスロータスは満足げに微笑んだ。
「ほぉら、元気になった。それじゃ、今度こそ私を満足させなさ……」
ハーメスロータスが何かに気づき、言葉が尻すぼみになる。リデルが彼女の胴体の中で必死にもがいていた。しかしそれは逃げ出そうとしているからではない。アポピスがにぃと笑う。
「あっはは! 何勇者サマ、自分から腰を振ろうとしているの?」
「あ、が……苦しい……!」
苦しいのは締め付けられているからではないだろう。自分の中の滾りを解放したくてもできない、その状況に苦しんでいるのだ。少し前まで禁欲的だった勇者をここまで変貌させるのが、アポピスの毒である。ネフェルランタナに対しては不覚をとったが、これがアポピスの本来の姿。
「んん〜……でもリデルは私の獲物だし〜、主導権は私にあるしぃ……」
「頼む、苦しい! 出させてくれぇ……! 何でもするからぁ!」
「あらぁ? 何でもしてくれるのぉ? じゃあみっつほどお願いしちゃおうかなぁ?」
ハーメスロータスは首を無邪気な感じで傾げて見せた。
「ひとつめは、私をちゃんとイカせること。ふたつめは私にさっきと同じようにたっぷり中出しすること。そしてみっつめは……」
リデルの顎に軽く右手を添え、上を向かせる。その目を見つめながらハーメスロータスは最後の要求をする。
「私と結婚し、生涯私を愛すること。さぁ……どうする? 同意したいなら私のくちびるを奪いなさい」
勇者はすっかり目の前の闇の蛇に魅了されていた。首を懸命に伸ばし、自らくちづけをする。ハーメスロータスはさらに彼を背中から抱きしめて、そのキスをさらに深いものにした。
「ん、ちゅう……あっははは! これで完全にリデルは私の物! 誰にも渡さない! 誰にも……ファラオにも!」
喜びにハーメスロータスは高笑いをする。ラミア種らしい独占欲の言葉がその口から漏れた。そして、男を身も心も手に入れた魔物娘はもう我慢ができない。
「さぁ、今度はキスだけじゃなくて、身体で私への気持ちを示しなさい……私をイカせて、リデルも中出ししなさい……!」
そう言ってハーメスロータスは少し、リデルの腰の拘束を弱めた。とたんにリデルの腰が、まるで陸に打ち上げられた魚のように激しく動き出す。彼の激しい腰使いに今まで余裕風を吹かせていたハーメスロータスも嬌声を上げ、悶えた。
「あ、あんっ♥ うっふふふ……こんなに激しく腰振っちゃって……よっぽど勇者をやっていた時は溜まっていたのね♥」
ぞくぞくと身体を快感で震わせながら、ハーメスロータスはとろけた顔でリデルを見下ろして呟く。そっと優しく抱きしめると、再びリデルの顔がハーメスロータスの胸に埋もれた。
「ふーっ! ふーっ!」
リデルは鼻息荒く、ハーメスロータスに腰を打ち付けている。もはや真面目な教団の勇者だったリデルはどこにもいない。アポピスの毒によって浮かされた、一匹の獣であった。
「ああっ! いいっ! おまんこ、ぐちゅぐちゅ掻き回されて……くあああっ! そこぉ!」
感じるポイントを偶然攻められたのだろう。声にも余裕がなくなってきた。それ以降はその部分に当たるように、ハーメスロータスは腰をねっとりと揺らして位置を調節する。
離れの部屋からは肉同士がぶつかり合う音とハーメスロータスの蜜壷から響く卑猥な水音だけが聞こえた。
「いやっ!? あっ、はうぅう!」
ハーメスロータスが切羽詰まった声を上げる。目から火花が散ったかのように思えた。絶頂が近い。しかしそれはリデルの方もそうであった。ハーメスロータスの膣の中で肉竿がぷくりと膨れ上がり、射精の準備をする。リデルの男性器の変化をハーメスロータスは意識が少し朦朧としながらも感じ取っていた。
「あんたも……リデルもイクのね? いっしょに、いっしょにぃい!」
その言葉を最後にハーメスロータスはアクメに達した。身体中に力が入る。もちろん、下半身の蛇の胴体にも。そのため、ふたたびリデルの身体がきつく拘束され、ハーメスロータスの身体に限りなく密着することになった。リデルの亀頭がハーメスロータスの子宮口にロックされる。
「うおおおおおっ!」
雄叫びを上げて、拘束されたままリデルはさらにハーメスロータスを突き上げた。その中で勇者の肉刀がどくどくと白濁液を噴火の如く漏らしている。アポピスの毒による影響でその量はおびただしく、最初の射精の量とは比べ物にならない。ハーメスロータスの膣内に収まらなかった精液が結合部から漏れた。
「あんっ♥ うっふふふ……こんなにたくさん出しちゃって……♥ もったいないけど、嬉しい……♥」
自分の膣から漏れ出る愛液混じりの精液を見てハーメスロータスはうっとりとした笑みを浮かべる。だがその表情がすぐに野心に満ちた物に変わった。
「見ていなさい、ネフェルランタナ……今回は負けたけど、いつまでもこうはいかないわよ……いつかきっと、娘を産んで、その娘があんたの寝首をかきに行くわよ……! ふふふ……あっはははは!」
★
「ふふふ……上手くいきましたね……クリネス、あなたの策のおかげです。これで一石で二鳥も三鳥も落とせました。みんなが幸せです」
遺跡の主の間の窓から離れにこもったハーメスロータスや女盗賊だったライラの様子を見て、ネフェルランタナが微笑んで言う。
「しかし、このまま性交によってハーメスロータスが力を持って暗黒魔界が広がったり、あるいは娘がこの遺跡に攻めてきたりしたら……!」
「それを防ぐのもあなたと私の役目です」
心配事を言おうとするクリネスのくちびるをネフェルランタナは右手の人差し指でちょんと押さえる。そして左手で彼の片手をとり、自分の胸に押し当てた。
「彼女に負けないように、私たちも交わればいいだけの話……協力、してくれますよね?」
「……精一杯務めさせていただきます」
苦笑しながらクリネスはネフェルランタナを抱き寄せる。そしてそのくちびるを奪った。
かくしてアポピスをも取り込み、自分の配下に置いたネフェルランタナ。
彼女の国は暗黒魔界を内包しながら、ますます大きく、豊かに、淫らに発展していくのであった。
13/03/26 12:49更新 / 三鯖アキラ(旧:沈黙の天使)
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