浜辺のエンジェル
「あっち〜……あっちぃなぁおい!」
手を額にかざしながら俺は空を見上げた。
太陽の光がさんさんと浜辺に、海水浴に来ている人たちに、そして俺に降り注いでいる。
今日、俺こと原田満弘は彼女の天野由衣と海にきていた。
俺たちは大学のソフトボール部のプレイヤーとマネージャーで、付き合って3ヵ月くらいである。
彼女は部活でみんなのためにドリンクを用意してくれて優しかったり、プレイヤーがだれてくると激を飛ばしてくれる厳しいマネージャーだ。
今日は部活がオフだったので、貴重な休みを利用して俺たちは海水浴デートをすることにした。
浜辺は夏休みだけど平日ということもあり、比較的空いていた。
「なのに、由衣のやつ遅いな……」
空いているのだからすぐに着替えて来れると思うのに……
ちらっと時計を見てみる。
俺がここで待ち始めてから、3分しか経っていなかった。
『あれ? まだこれだけしか経っていない? うーむ、結構経った気がするんだけど……』
俺は首をひねったが、すぐにその理由が分かった。
彼女の水着姿を期待していて、気がそわそわしているからだ。
自覚するとそのそわそわした気分がさらに高まった。
「まだかな〜、まだかな〜♪」
小さく鼻歌すら歌ってしまった。
そうしていると……
「満弘せんぱーい!」
更衣室のある小屋から彼女がやってきた。
「ごめんなさい先輩。着替える前にトイレに行っていたらちょっと遅くなってしまって……」
「あ〜、3分くらいしか待っていないから気にしてないよ」
「本当ですか? でも暑かったでしょう、すみません」
腰から生えている白い翼と頭がしゅんと垂れ、頭の動きに同調して上で浮かんでいる輪っかも少し下がる。
そう、俺の彼女、天野由衣はエンジェルなのだ。
「いいってば。それにしても、可愛い水着じゃん。似合っているよ」
由衣の気分を変えるためにも、俺は水着の感想を述べる。
彼女の水着は可愛らしい白ビキニだった。
布地はシンプルに白色で、形のいいCカップの胸とキュートなお尻を包んでいる。
水着の縁にはピンク色のフリルがついていて、可愛らしさをさらに引き立てていた。
だが良く見れば……いや、良く見なくたって生地の面積は結構小さく、露出度が高い水着だ。
特に胸元は大胆に開かれていて、そこから覗くエッチな谷間と胸の膨らみが眩しい。
清楚可憐な魅力を生かしつつ、健康的なセクシーさも出した、エンジェルの彼女にぴったりの水着と言えた。
浜辺のエンジェル……まさにそんな感じだ。
「に、似合ってますか? 恥ずかしいけど……そう言ってくれて嬉しいです……」
白い頬を桃色に染めながら彼女はにこりと笑った。
その笑顔に俺はまた堕とされる。
相手は天使なのに堕とされる。
「先輩、何ボーッとしているんですか?」
のぞき込むようにしながらかけてくれた由衣の声で、俺は我に帰った。
危ない危ない、由衣の笑顔に堕ちていて見とれていたようだ。
「さぁ、いつも頑張っていますから今日はたくさん遊びましょう!」
由衣が俺の手を取って海へと駆け出そうと俺を誘う。
「よっしゃ! 行くぞ!」
「はい!」
俺たち二人は手をつないだまま、海へと突撃したのであった。
ビーチボールで遊んだり遠くまで泳いだりと、俺たちは海に入ってたくさん遊んだ。
他にも、単純に海水をかけ合ったりもした。
「キャッ!? 冷たいです〜!」
つかっている分には温かい海水だが、その水滴が顔とかにかかったらやはり冷たい。
彼女が身を守るようにちょっと縮こまるような仕草を見せる。
その様子がまた可愛らしくて、俺はさらに水を跳ねとばして彼女に海水をかけた。
「あぁん! もうっ! 意地悪な先輩にはこうですっ!」
彼女が右脚を蹴り上げる。
イルカのようなつるりとした、そして白い脚が水面から勢い良く飛び出した。
だがそれと同時に激しく海水が飛び散り、俺の顔に浴びせられる。
「うおっ!? やったな〜!」
「あははっ!」
反撃が上手くいったのが嬉しかったのか笑いながら由衣は海水を飛ばしてくる。
キラキラと飛ぶ水滴、無邪気な笑顔、滑らかで白い彼女の肌とそれを引き立てる水着、白い翼……その姿はまさに浜辺のエンジェルだった。
こんな素敵なエンジェルが俺の彼女だなんて、幸せで胸が一杯になってくる。
しかし……確かに由衣は俺だけの彼女だが、それに関係なく彼女は男の目を引いてしまい、男は無遠慮に寄って来てしまうのだ。
「おいおいお二人さん、さっきからこっちに水がかかってんだよ」
ざぶざぶと波をかき分けてこちらに近づいてくるガラの悪い男二人組……嫌な展開だ。
海の中にいるのだから水がかかったってどうってことはないとも言えるけど悪いのはこちら側だし、これは謝った方がよさそうだ……
「すみません」
「謝って済むんなら警察はいらねぇんだよぉ」
「こりゃあ彼女に身体で謝ってもらうしかねぇよなぁ!」
がしっと男の一人が由衣の左腕を掴む。
ぷつりと俺の中で何かが切れた。
ここまでされて黙っている道理はないし、男が廃る!
俺は右腕を振りかぶってフックを、由衣の腕をつかんでいる男の頬をめがけて叩き込もうとした。
「ダメです、先輩!」
俺が男に殴りかかろうとしたとき、由衣が鋭く抑止の声を上げた。
たしかに俺がここで暴力沙汰を起こすと夏の大会や大学に響く……
何より由衣の悲痛な声に俺の動きが鈍った。
おそらく俺がこいつを殴ったら、由衣が自分のために俺がこんな行動をとったことを悲しむだろう。
「てめぇはおとなしくしてろっ!」
「くそっ……!」
動きが止まってしまった隙を突かれてもう一方の男に抱え込まれる。
まずい、絶体絶命のピンチだ……!
「いやーっ!」
由衣が上げる悲鳴がこの状況の悲壮感を一層引き立てる。
だが、そこまでだった。
次の瞬間、由衣が目にも止まらぬ速さで身体をひねり、空いている右手の掌底で男の顎を突き上げた。
なんだかんだ言っても彼女は人間より頑強な身体を持つエンジェルである。
人間を進んで傷つけようだなんてこれっぽっちも思わないが、必要であれば大の男数人を伸すことくらい朝飯前だ。
……間違っても彼女と本気の殴り合いの喧嘩を俺はしたくない。
ざぶんっ!
掌底で顎と突き上げられた男は脳を揺らされ、崩れ落ちて派手な飛沫を上げて海に浮いた。
驚いていたもう一方の男のみぞおちに俺は肘を叩き込んでダウンさせた。
「さ、逃げますよ、先輩!」
俺に駆け寄った由衣が俺を背後から抱え、翼を使って宙に浮いた。
確かに逃げる手段としてはもっとも速くて確実な方法だと思うが、たとえ相手が自分より強いエンジェルであっても、このように女に抱え上げられるのは男としては少々恥ずかしい。
「ちょ、由衣っ! これはちょっと恥ずかし……」
「もがいちゃダメです。行きますよ!」
ぎゅんっと音を立てて由衣はその場から俺を抱えて飛び去った。
「ふい〜、どうなるかと思ったぜ」
「あはは、そうですね」
人気のない、岩影になっている砂浜に俺と由衣は逃げてきた。
彼女に砂浜の上に下ろしてもらうと、とたんに安心感からか俺は腰が抜けて座り込んでしまった。
恋人の前で情けない……
まぁ、由衣も俺と同じようにへなへなと座り込んでしまったから、気にすることもないかもしれないが。
「それにしても先輩、私を守ろうとして男を攻撃しようとしましたね? ダメなことですけど……でも私を守ろうとしてくれた姿は格好良かったです」
座り込んだまま、にこりと由衣が俺に笑いかけてくる。
誰もが守りたくなる、天使の笑顔。
その笑顔に見とれていると、由衣は顔を赤くして顔を背けた。
「じっと見られちゃ恥ずかしいです! 目を閉じてください」
「え、あ、ああ……」
彼女が何を考えているか察し、俺は目を閉じる。
想定していたとおり、すぐにくちびるに柔らかいものが当たった。
由衣のくちびるだ。
彼女が普段から言うには「ご褒美・お礼のキス」。
一回押し付けられてすぐ離れ、そしてもう一度くちびるが当たる。
そして二回目のキスで彼女の舌が俺のくちびるを割って侵入してきた。
俺もそれに応え、由衣の舌の先端に自分の舌を絡めつける。
はたから見るとくちびるを押し付け合っているだけの軽いキスのように見えるが、互いの口内では結構激しい舌の絡み合いがあった。
「ん、んんっ?」
不意に下半身に違和感を覚え、俺は声をあげる。
見えなかったが、由衣が俺の水着を下ろそうとしていた。
慌てて俺はキスを中断し、由衣の手を抑えようとしたが、それより先にペニスが外気に晒される。
「え、えーっと……由衣? どうしてこんなことを?」
「お礼です」
取り出した性器に軽く指を這わせながら、由衣はにっこりと俺に笑いかけてくる。
俺のペニスはキスの影響で既に少し硬くなり始めており、由衣に触れられることによって徐々に力を増してきていた。
「ちょっと乱暴だったかもしれませんが、助けてくれて嬉しかったです。だからお礼に先輩を気持ちよくするんです」
キスと同様、今回のようにお礼と言ったり褒美と言ったり、何かにつけて由衣は俺と交わろうとする。
本人の中ではあくまで俺を気持ちよくするため、らしいが……聖なる存在であると同時に彼女は淫らな魔の存在であるのだ。
「先輩、どうですか? 気持ちいいですか?」
あまり握りこまず、掌と指を軽く這わせる程度に添えられた手がいやらしく上下に動く。
竿を撫で上げられる度にじんわりと快感が腰から広がり、敏感な亀頭を触れられる度に腰が震えた。
「き、気持ちいいけど、こんなところで……」
「大丈夫です、人は来ないと思いますよ」
いたずらっぽい笑顔を浮かべて由衣は言う。
天使なのに小悪魔的な笑顔だ。
その顔を由衣は俺の股間に近づけていった。
「もっと気持ちよくしますね……あむっ」
そう言うと、由衣は小さな口を目一杯開け、亀頭を銜え込んだ。
口が小さいのでそれ以上は銜えこめないがその分は手と、そして舌での刺激で補ってくる。
指先で竿を優しく扱きながら、くるくると口内の舌が亀頭を不規則に撫で回す。
亀頭表面を由衣の舌が這うたびに俺は声を漏らした。
清楚可憐なエンジェルが俺のペニスを銜えている……その映像だけで俺の肉棒はさらに力を増す。
俺を射精に導こうと由衣は懸命に俺の性器に口で奉仕を続けた。
「んんっ、んふぅ……んっ、うぅ、あむっ、んちゅう、んんっ?」
彼女が俺のモノを銜えたまま声を上げ、そして目だけでにぃっと笑う。
俺の身体の変化のことだから、俺にはすぐ分かった。
鈴口から出ている先走り汁を舐めたのだ。
「んちゅ……先輩、もう射精しそうですか?」
一度口を離し、再び指だけでペニスを愛撫しながら由衣が訊ねる。
首を傾げながらにっこりと笑うその様子は天使の姿をしていながら、サキュバスそのもの。
「ああ、もう出そうだ……」
「先輩が気持ちいいと私も嬉しいです。いっぱい気持ちよくなって、いっぱい出してください」
そう言って彼女は追い込みにかかった。
再び俺のモノを銜えこんで舌を這わせ、指で竿をさする。
さらに、頭を緩やかに上下させる動きも加えてきた。
口が小さいのでその動きは激しくはないが、下くちびるが俺のペニスの敏感な裏筋をぬるぬると撫でている。
耐えられなかった。
いきなり俺の肉棒がぶくりと膨れ上がり、そのまま爆発する。
「ん、んぐっ!? んんっ、けほっ!」
あっと言う間に由衣の小さな口内が白濁液で満たされ、耐え切れなくなった彼女は咳き込んで吐き出してしまった。
口から漏れた精液がだらだらと垂れる。
「ご、ごめん由衣! 大丈夫かっ!?」
「けほっ、こほっ……だ、大丈夫です。私の方こそごめんなさい……先輩の精液、全部飲みきれなくて……」
彼女は精液をこぼしたことを謝ってくる。
無理してそんなことしなくてもいいのに……人間からすれば精液なんて不味くてとても飲めたものではない代物だ。
魔物は良いと言うが、それを口の中でいきなり出されて、由衣も苦しかったかもしれない。
彼女を辛い目にあわせてしまったこともあり、逆に俺が申し訳ない気持ちになる。
だが……
「先輩の……まだ硬いままですね」
「あ、いや、だって……」
由衣の口はこぼした精液で汚れている。
さらに垂れた精液は彼女の胸元や谷間、さらには白い水着のブラにかかっていた。
天使の彼女が俺の汚らわしい牡汁にまみれている……
そのなんとも背徳的な映像に俺の剛直は、申し訳ない気持ちとは裏腹に、相変わらず硬く張り詰めていた。
「こぼしてしまって申し訳ないので……」
言いながら彼女が俺を跨いだ。
腰が俺の腰の上に来るように調節する。
そして……
「今度はこっちで先輩を気持ちよくしますね」
水着のクロッチをずらし、彼女の秘密の花園を露わにした。
由衣のそこは何も愛撫を加えていないのに、海水などとは違う液体がとろとろと滴っている。
その淫らな様子に、そしてぽたりと垂れてかかった彼女の愛液に、俺のペニスがひくりと動いた。
ゆっくりと由衣が腰を下ろしていく。
にちゅっといやらしい水音を立てて俺と由衣の性器が接した。
それだけでも甘美な快感が二人の身体を駆け巡る。
由衣の動きは止まらず、そのまま腰が下ろされ、ついに俺と由衣は一番深いところで繋がった。
「は、んっ、うんっ、くふっ! ひううん!」
「由衣……くっ、ああ……」
全身の毛が逆立つかのような快感に、互いにしがみつく。
しばらく俺たちは抱き合っていたが、やがて由衣が動き出した。
深く、長く俺に味わわせるように彼女は身体を上下に揺らす。
動きながら由衣が俺の様子を伺ってきた。
「先輩、んくぅ……気持ち、いいですか? 私の身体、あんっ、気持ちいい……ですか?」
「あ、ああ、気持ち……っ、い、いいよ……くっ」
肉棒をぬめった肉壁で扱かれる感触に俺の返答はとぎれとぎれになってしまう。
訊かなくても分かっていたらしいが、直接俺の口から言って欲しかったようだ。
由衣の笑顔がさらに明るく、淫らな物になる。
「分かりますよ。先輩の顔、とても気持ち良さそう……ちゅっ、ん……」
そのまま由衣は俺の顔に手をかけ、くちびるを強引に奪ってきた。
さっきのキスよりそのキスは大胆で激しかった。
腰の動きもそれと同調するかのようにより淫猥な物となる。。
しかもその動きはただ上下に腰を動かすだけではなく、前後にもうねるようにぐねぐねと動いていた。
由衣の動きのいやらしさにつられるかのように、俺は彼女の胸に手を伸ばす。
水着を退けて小ぶりだけど柔らかく張りのある胸を露わにした。
その旨を手で揉みしだき、親指でぷくりと尖った乳首を転がす。
「んっ、んふぁあ……だめぇ、集中できなくなるからダメですぅ……!」
キスを中断して彼女は抗議し、いやいやをするように頭を振る。
腰の動きのペースも、快感に逆らうかのように少し速くなった。
くちくちといやらしい粘着音が二人の結合部から響く。
「や、やめ……由衣っ、そんなにされ、ると……また、出るっ……くうっ!」
「ああっ、あっ……い、良いですよ……ひぐっ、先輩の好きな時に……ふあっ、射精して下さい……」
優しくそう言って由衣はお尻に全体重をかけて互いの股間を密着させた。
俺の亀頭と彼女の子宮口がぎゅっとくっつく。
その状態で彼女は前後に大きく腰を揺すった。
敏感な亀頭がコリコリと硬い子宮口とクニュクニュと擦れ合い、刺激される。
細かく上下に動いて扱く刺激を加えてくるのも忘れない。
さっきの優しい言葉とは裏腹にその動きは、男の射精を貪欲に求める淫魔のもの……水着から溢れ出て揺れる胸が、彼女の性器が立てるぐちゅぐちゅという音が、よりその卑猥さを掻き立てる。
今俺の上で腰を振っているのが、普段は清楚で優しくて厳しくて、少し前までは無邪気な笑顔で海水を跳ねとばして一緒に遊んでいた、エンジェルの天野由衣とはとても思えない。
だが彼女は確かに天野由衣であり、俺の恋人だ。
その事実による男としての征服感、目の前のエロチックなビジョン、下肢からの快感が、膣内で揉みくちゃにされている肉棒をさらに怒張させ、射精の準備をさせる。
俺のペニスが膨れ上がったのを感じ取ったか、由衣の身体がびくんと跳ねた。
「あんっ! あ、あっ、ふわああっ! イッて、先輩っ! イッてください! 私、もう……ダメっ、だめェええっ!」
彼女の言う「ダメ」とは、本当は俺を気持ちよくしたいのにイってしまいそうなとき……
俺もこのまま由衣と気持ちいい状態を味わい続けていたかった。
だが、どちらが先かは分からないが、限界はすぐに二人に訪れた。
「先輩、せんぱイいいいぃ!」
「由衣……くっ、あああっ!」
互いにしっかりと繋がった状態で互いを抱きしめ合う。
そして俺は由衣の胎内に思いのたけを吐き出し、震える身体で彼女もそれを膣奥で受け止めた。
事後のまったりタイム。
俺と由衣は波打ち際に体育座りをして腰かけている。
何か会話をする訳でもなく、イチャつく訳でもなく、手をつないで波が寄せては返す様子を見ていた。
ただ見ているだけではつまらない物だが、横に恋人がいると波を見ているだけでも幸せに感じられる。
とは言え、やっぱり俺はそんな物より、幸せな気分にしてくれる恋人に目が寄せられた。
幸せそうに微笑みを浮かべている横顔、彫像すら逃げ出すような美しい白い肌、控えめながらも女性らしい魅力的な身体、それを包む水着、腰から伸びている白い翼と頭に浮かぶ輪っか、背景には白い砂浜と青い海と空……
爽やかながらもセクシーで、そして魅力的だった。
「どうしました、先輩? 私の顔に砂でも付いていますか?」
視線に気付いた由衣が顔を俺の方を向く。
横顔も綺麗だったけど、こちらを向いた顔もまた綺麗だ。
やっぱり彼女は浜辺のエンジェル……そんな言葉がまた浮かぶ。
「いや、やっぱり由衣は綺麗だなぁと……」
「もうっ!」
恥ずかしがって由衣は俺にもたれかかってきた。
ちょうど俺の視線から身体が隠れることになる。
残念。
「明日からまた練習ですね……」
俺にもたれかかったままぽつりと由衣がつぶやいた。
さらに残念なことを思い出させてくれる。
だけど、この隣にいるエンジェルのためなら、頑張れる気がする。
と、突然由衣は立ち上がって海に駆け込んだ。
海に飛び込んだ由衣の肌と水着はまた海水で濡れる。
「まだ日がありますよ、先輩! せっかくだからもっと遊びましょう!」
水を跳ねとばしながら、俺の浜辺のエンジェルはそう俺を誘うのだった。
手を額にかざしながら俺は空を見上げた。
太陽の光がさんさんと浜辺に、海水浴に来ている人たちに、そして俺に降り注いでいる。
今日、俺こと原田満弘は彼女の天野由衣と海にきていた。
俺たちは大学のソフトボール部のプレイヤーとマネージャーで、付き合って3ヵ月くらいである。
彼女は部活でみんなのためにドリンクを用意してくれて優しかったり、プレイヤーがだれてくると激を飛ばしてくれる厳しいマネージャーだ。
今日は部活がオフだったので、貴重な休みを利用して俺たちは海水浴デートをすることにした。
浜辺は夏休みだけど平日ということもあり、比較的空いていた。
「なのに、由衣のやつ遅いな……」
空いているのだからすぐに着替えて来れると思うのに……
ちらっと時計を見てみる。
俺がここで待ち始めてから、3分しか経っていなかった。
『あれ? まだこれだけしか経っていない? うーむ、結構経った気がするんだけど……』
俺は首をひねったが、すぐにその理由が分かった。
彼女の水着姿を期待していて、気がそわそわしているからだ。
自覚するとそのそわそわした気分がさらに高まった。
「まだかな〜、まだかな〜♪」
小さく鼻歌すら歌ってしまった。
そうしていると……
「満弘せんぱーい!」
更衣室のある小屋から彼女がやってきた。
「ごめんなさい先輩。着替える前にトイレに行っていたらちょっと遅くなってしまって……」
「あ〜、3分くらいしか待っていないから気にしてないよ」
「本当ですか? でも暑かったでしょう、すみません」
腰から生えている白い翼と頭がしゅんと垂れ、頭の動きに同調して上で浮かんでいる輪っかも少し下がる。
そう、俺の彼女、天野由衣はエンジェルなのだ。
「いいってば。それにしても、可愛い水着じゃん。似合っているよ」
由衣の気分を変えるためにも、俺は水着の感想を述べる。
彼女の水着は可愛らしい白ビキニだった。
布地はシンプルに白色で、形のいいCカップの胸とキュートなお尻を包んでいる。
水着の縁にはピンク色のフリルがついていて、可愛らしさをさらに引き立てていた。
だが良く見れば……いや、良く見なくたって生地の面積は結構小さく、露出度が高い水着だ。
特に胸元は大胆に開かれていて、そこから覗くエッチな谷間と胸の膨らみが眩しい。
清楚可憐な魅力を生かしつつ、健康的なセクシーさも出した、エンジェルの彼女にぴったりの水着と言えた。
浜辺のエンジェル……まさにそんな感じだ。
「に、似合ってますか? 恥ずかしいけど……そう言ってくれて嬉しいです……」
白い頬を桃色に染めながら彼女はにこりと笑った。
その笑顔に俺はまた堕とされる。
相手は天使なのに堕とされる。
「先輩、何ボーッとしているんですか?」
のぞき込むようにしながらかけてくれた由衣の声で、俺は我に帰った。
危ない危ない、由衣の笑顔に堕ちていて見とれていたようだ。
「さぁ、いつも頑張っていますから今日はたくさん遊びましょう!」
由衣が俺の手を取って海へと駆け出そうと俺を誘う。
「よっしゃ! 行くぞ!」
「はい!」
俺たち二人は手をつないだまま、海へと突撃したのであった。
ビーチボールで遊んだり遠くまで泳いだりと、俺たちは海に入ってたくさん遊んだ。
他にも、単純に海水をかけ合ったりもした。
「キャッ!? 冷たいです〜!」
つかっている分には温かい海水だが、その水滴が顔とかにかかったらやはり冷たい。
彼女が身を守るようにちょっと縮こまるような仕草を見せる。
その様子がまた可愛らしくて、俺はさらに水を跳ねとばして彼女に海水をかけた。
「あぁん! もうっ! 意地悪な先輩にはこうですっ!」
彼女が右脚を蹴り上げる。
イルカのようなつるりとした、そして白い脚が水面から勢い良く飛び出した。
だがそれと同時に激しく海水が飛び散り、俺の顔に浴びせられる。
「うおっ!? やったな〜!」
「あははっ!」
反撃が上手くいったのが嬉しかったのか笑いながら由衣は海水を飛ばしてくる。
キラキラと飛ぶ水滴、無邪気な笑顔、滑らかで白い彼女の肌とそれを引き立てる水着、白い翼……その姿はまさに浜辺のエンジェルだった。
こんな素敵なエンジェルが俺の彼女だなんて、幸せで胸が一杯になってくる。
しかし……確かに由衣は俺だけの彼女だが、それに関係なく彼女は男の目を引いてしまい、男は無遠慮に寄って来てしまうのだ。
「おいおいお二人さん、さっきからこっちに水がかかってんだよ」
ざぶざぶと波をかき分けてこちらに近づいてくるガラの悪い男二人組……嫌な展開だ。
海の中にいるのだから水がかかったってどうってことはないとも言えるけど悪いのはこちら側だし、これは謝った方がよさそうだ……
「すみません」
「謝って済むんなら警察はいらねぇんだよぉ」
「こりゃあ彼女に身体で謝ってもらうしかねぇよなぁ!」
がしっと男の一人が由衣の左腕を掴む。
ぷつりと俺の中で何かが切れた。
ここまでされて黙っている道理はないし、男が廃る!
俺は右腕を振りかぶってフックを、由衣の腕をつかんでいる男の頬をめがけて叩き込もうとした。
「ダメです、先輩!」
俺が男に殴りかかろうとしたとき、由衣が鋭く抑止の声を上げた。
たしかに俺がここで暴力沙汰を起こすと夏の大会や大学に響く……
何より由衣の悲痛な声に俺の動きが鈍った。
おそらく俺がこいつを殴ったら、由衣が自分のために俺がこんな行動をとったことを悲しむだろう。
「てめぇはおとなしくしてろっ!」
「くそっ……!」
動きが止まってしまった隙を突かれてもう一方の男に抱え込まれる。
まずい、絶体絶命のピンチだ……!
「いやーっ!」
由衣が上げる悲鳴がこの状況の悲壮感を一層引き立てる。
だが、そこまでだった。
次の瞬間、由衣が目にも止まらぬ速さで身体をひねり、空いている右手の掌底で男の顎を突き上げた。
なんだかんだ言っても彼女は人間より頑強な身体を持つエンジェルである。
人間を進んで傷つけようだなんてこれっぽっちも思わないが、必要であれば大の男数人を伸すことくらい朝飯前だ。
……間違っても彼女と本気の殴り合いの喧嘩を俺はしたくない。
ざぶんっ!
掌底で顎と突き上げられた男は脳を揺らされ、崩れ落ちて派手な飛沫を上げて海に浮いた。
驚いていたもう一方の男のみぞおちに俺は肘を叩き込んでダウンさせた。
「さ、逃げますよ、先輩!」
俺に駆け寄った由衣が俺を背後から抱え、翼を使って宙に浮いた。
確かに逃げる手段としてはもっとも速くて確実な方法だと思うが、たとえ相手が自分より強いエンジェルであっても、このように女に抱え上げられるのは男としては少々恥ずかしい。
「ちょ、由衣っ! これはちょっと恥ずかし……」
「もがいちゃダメです。行きますよ!」
ぎゅんっと音を立てて由衣はその場から俺を抱えて飛び去った。
「ふい〜、どうなるかと思ったぜ」
「あはは、そうですね」
人気のない、岩影になっている砂浜に俺と由衣は逃げてきた。
彼女に砂浜の上に下ろしてもらうと、とたんに安心感からか俺は腰が抜けて座り込んでしまった。
恋人の前で情けない……
まぁ、由衣も俺と同じようにへなへなと座り込んでしまったから、気にすることもないかもしれないが。
「それにしても先輩、私を守ろうとして男を攻撃しようとしましたね? ダメなことですけど……でも私を守ろうとしてくれた姿は格好良かったです」
座り込んだまま、にこりと由衣が俺に笑いかけてくる。
誰もが守りたくなる、天使の笑顔。
その笑顔に見とれていると、由衣は顔を赤くして顔を背けた。
「じっと見られちゃ恥ずかしいです! 目を閉じてください」
「え、あ、ああ……」
彼女が何を考えているか察し、俺は目を閉じる。
想定していたとおり、すぐにくちびるに柔らかいものが当たった。
由衣のくちびるだ。
彼女が普段から言うには「ご褒美・お礼のキス」。
一回押し付けられてすぐ離れ、そしてもう一度くちびるが当たる。
そして二回目のキスで彼女の舌が俺のくちびるを割って侵入してきた。
俺もそれに応え、由衣の舌の先端に自分の舌を絡めつける。
はたから見るとくちびるを押し付け合っているだけの軽いキスのように見えるが、互いの口内では結構激しい舌の絡み合いがあった。
「ん、んんっ?」
不意に下半身に違和感を覚え、俺は声をあげる。
見えなかったが、由衣が俺の水着を下ろそうとしていた。
慌てて俺はキスを中断し、由衣の手を抑えようとしたが、それより先にペニスが外気に晒される。
「え、えーっと……由衣? どうしてこんなことを?」
「お礼です」
取り出した性器に軽く指を這わせながら、由衣はにっこりと俺に笑いかけてくる。
俺のペニスはキスの影響で既に少し硬くなり始めており、由衣に触れられることによって徐々に力を増してきていた。
「ちょっと乱暴だったかもしれませんが、助けてくれて嬉しかったです。だからお礼に先輩を気持ちよくするんです」
キスと同様、今回のようにお礼と言ったり褒美と言ったり、何かにつけて由衣は俺と交わろうとする。
本人の中ではあくまで俺を気持ちよくするため、らしいが……聖なる存在であると同時に彼女は淫らな魔の存在であるのだ。
「先輩、どうですか? 気持ちいいですか?」
あまり握りこまず、掌と指を軽く這わせる程度に添えられた手がいやらしく上下に動く。
竿を撫で上げられる度にじんわりと快感が腰から広がり、敏感な亀頭を触れられる度に腰が震えた。
「き、気持ちいいけど、こんなところで……」
「大丈夫です、人は来ないと思いますよ」
いたずらっぽい笑顔を浮かべて由衣は言う。
天使なのに小悪魔的な笑顔だ。
その顔を由衣は俺の股間に近づけていった。
「もっと気持ちよくしますね……あむっ」
そう言うと、由衣は小さな口を目一杯開け、亀頭を銜え込んだ。
口が小さいのでそれ以上は銜えこめないがその分は手と、そして舌での刺激で補ってくる。
指先で竿を優しく扱きながら、くるくると口内の舌が亀頭を不規則に撫で回す。
亀頭表面を由衣の舌が這うたびに俺は声を漏らした。
清楚可憐なエンジェルが俺のペニスを銜えている……その映像だけで俺の肉棒はさらに力を増す。
俺を射精に導こうと由衣は懸命に俺の性器に口で奉仕を続けた。
「んんっ、んふぅ……んっ、うぅ、あむっ、んちゅう、んんっ?」
彼女が俺のモノを銜えたまま声を上げ、そして目だけでにぃっと笑う。
俺の身体の変化のことだから、俺にはすぐ分かった。
鈴口から出ている先走り汁を舐めたのだ。
「んちゅ……先輩、もう射精しそうですか?」
一度口を離し、再び指だけでペニスを愛撫しながら由衣が訊ねる。
首を傾げながらにっこりと笑うその様子は天使の姿をしていながら、サキュバスそのもの。
「ああ、もう出そうだ……」
「先輩が気持ちいいと私も嬉しいです。いっぱい気持ちよくなって、いっぱい出してください」
そう言って彼女は追い込みにかかった。
再び俺のモノを銜えこんで舌を這わせ、指で竿をさする。
さらに、頭を緩やかに上下させる動きも加えてきた。
口が小さいのでその動きは激しくはないが、下くちびるが俺のペニスの敏感な裏筋をぬるぬると撫でている。
耐えられなかった。
いきなり俺の肉棒がぶくりと膨れ上がり、そのまま爆発する。
「ん、んぐっ!? んんっ、けほっ!」
あっと言う間に由衣の小さな口内が白濁液で満たされ、耐え切れなくなった彼女は咳き込んで吐き出してしまった。
口から漏れた精液がだらだらと垂れる。
「ご、ごめん由衣! 大丈夫かっ!?」
「けほっ、こほっ……だ、大丈夫です。私の方こそごめんなさい……先輩の精液、全部飲みきれなくて……」
彼女は精液をこぼしたことを謝ってくる。
無理してそんなことしなくてもいいのに……人間からすれば精液なんて不味くてとても飲めたものではない代物だ。
魔物は良いと言うが、それを口の中でいきなり出されて、由衣も苦しかったかもしれない。
彼女を辛い目にあわせてしまったこともあり、逆に俺が申し訳ない気持ちになる。
だが……
「先輩の……まだ硬いままですね」
「あ、いや、だって……」
由衣の口はこぼした精液で汚れている。
さらに垂れた精液は彼女の胸元や谷間、さらには白い水着のブラにかかっていた。
天使の彼女が俺の汚らわしい牡汁にまみれている……
そのなんとも背徳的な映像に俺の剛直は、申し訳ない気持ちとは裏腹に、相変わらず硬く張り詰めていた。
「こぼしてしまって申し訳ないので……」
言いながら彼女が俺を跨いだ。
腰が俺の腰の上に来るように調節する。
そして……
「今度はこっちで先輩を気持ちよくしますね」
水着のクロッチをずらし、彼女の秘密の花園を露わにした。
由衣のそこは何も愛撫を加えていないのに、海水などとは違う液体がとろとろと滴っている。
その淫らな様子に、そしてぽたりと垂れてかかった彼女の愛液に、俺のペニスがひくりと動いた。
ゆっくりと由衣が腰を下ろしていく。
にちゅっといやらしい水音を立てて俺と由衣の性器が接した。
それだけでも甘美な快感が二人の身体を駆け巡る。
由衣の動きは止まらず、そのまま腰が下ろされ、ついに俺と由衣は一番深いところで繋がった。
「は、んっ、うんっ、くふっ! ひううん!」
「由衣……くっ、ああ……」
全身の毛が逆立つかのような快感に、互いにしがみつく。
しばらく俺たちは抱き合っていたが、やがて由衣が動き出した。
深く、長く俺に味わわせるように彼女は身体を上下に揺らす。
動きながら由衣が俺の様子を伺ってきた。
「先輩、んくぅ……気持ち、いいですか? 私の身体、あんっ、気持ちいい……ですか?」
「あ、ああ、気持ち……っ、い、いいよ……くっ」
肉棒をぬめった肉壁で扱かれる感触に俺の返答はとぎれとぎれになってしまう。
訊かなくても分かっていたらしいが、直接俺の口から言って欲しかったようだ。
由衣の笑顔がさらに明るく、淫らな物になる。
「分かりますよ。先輩の顔、とても気持ち良さそう……ちゅっ、ん……」
そのまま由衣は俺の顔に手をかけ、くちびるを強引に奪ってきた。
さっきのキスよりそのキスは大胆で激しかった。
腰の動きもそれと同調するかのようにより淫猥な物となる。。
しかもその動きはただ上下に腰を動かすだけではなく、前後にもうねるようにぐねぐねと動いていた。
由衣の動きのいやらしさにつられるかのように、俺は彼女の胸に手を伸ばす。
水着を退けて小ぶりだけど柔らかく張りのある胸を露わにした。
その旨を手で揉みしだき、親指でぷくりと尖った乳首を転がす。
「んっ、んふぁあ……だめぇ、集中できなくなるからダメですぅ……!」
キスを中断して彼女は抗議し、いやいやをするように頭を振る。
腰の動きのペースも、快感に逆らうかのように少し速くなった。
くちくちといやらしい粘着音が二人の結合部から響く。
「や、やめ……由衣っ、そんなにされ、ると……また、出るっ……くうっ!」
「ああっ、あっ……い、良いですよ……ひぐっ、先輩の好きな時に……ふあっ、射精して下さい……」
優しくそう言って由衣はお尻に全体重をかけて互いの股間を密着させた。
俺の亀頭と彼女の子宮口がぎゅっとくっつく。
その状態で彼女は前後に大きく腰を揺すった。
敏感な亀頭がコリコリと硬い子宮口とクニュクニュと擦れ合い、刺激される。
細かく上下に動いて扱く刺激を加えてくるのも忘れない。
さっきの優しい言葉とは裏腹にその動きは、男の射精を貪欲に求める淫魔のもの……水着から溢れ出て揺れる胸が、彼女の性器が立てるぐちゅぐちゅという音が、よりその卑猥さを掻き立てる。
今俺の上で腰を振っているのが、普段は清楚で優しくて厳しくて、少し前までは無邪気な笑顔で海水を跳ねとばして一緒に遊んでいた、エンジェルの天野由衣とはとても思えない。
だが彼女は確かに天野由衣であり、俺の恋人だ。
その事実による男としての征服感、目の前のエロチックなビジョン、下肢からの快感が、膣内で揉みくちゃにされている肉棒をさらに怒張させ、射精の準備をさせる。
俺のペニスが膨れ上がったのを感じ取ったか、由衣の身体がびくんと跳ねた。
「あんっ! あ、あっ、ふわああっ! イッて、先輩っ! イッてください! 私、もう……ダメっ、だめェええっ!」
彼女の言う「ダメ」とは、本当は俺を気持ちよくしたいのにイってしまいそうなとき……
俺もこのまま由衣と気持ちいい状態を味わい続けていたかった。
だが、どちらが先かは分からないが、限界はすぐに二人に訪れた。
「先輩、せんぱイいいいぃ!」
「由衣……くっ、あああっ!」
互いにしっかりと繋がった状態で互いを抱きしめ合う。
そして俺は由衣の胎内に思いのたけを吐き出し、震える身体で彼女もそれを膣奥で受け止めた。
事後のまったりタイム。
俺と由衣は波打ち際に体育座りをして腰かけている。
何か会話をする訳でもなく、イチャつく訳でもなく、手をつないで波が寄せては返す様子を見ていた。
ただ見ているだけではつまらない物だが、横に恋人がいると波を見ているだけでも幸せに感じられる。
とは言え、やっぱり俺はそんな物より、幸せな気分にしてくれる恋人に目が寄せられた。
幸せそうに微笑みを浮かべている横顔、彫像すら逃げ出すような美しい白い肌、控えめながらも女性らしい魅力的な身体、それを包む水着、腰から伸びている白い翼と頭に浮かぶ輪っか、背景には白い砂浜と青い海と空……
爽やかながらもセクシーで、そして魅力的だった。
「どうしました、先輩? 私の顔に砂でも付いていますか?」
視線に気付いた由衣が顔を俺の方を向く。
横顔も綺麗だったけど、こちらを向いた顔もまた綺麗だ。
やっぱり彼女は浜辺のエンジェル……そんな言葉がまた浮かぶ。
「いや、やっぱり由衣は綺麗だなぁと……」
「もうっ!」
恥ずかしがって由衣は俺にもたれかかってきた。
ちょうど俺の視線から身体が隠れることになる。
残念。
「明日からまた練習ですね……」
俺にもたれかかったままぽつりと由衣がつぶやいた。
さらに残念なことを思い出させてくれる。
だけど、この隣にいるエンジェルのためなら、頑張れる気がする。
と、突然由衣は立ち上がって海に駆け込んだ。
海に飛び込んだ由衣の肌と水着はまた海水で濡れる。
「まだ日がありますよ、先輩! せっかくだからもっと遊びましょう!」
水を跳ねとばしながら、俺の浜辺のエンジェルはそう俺を誘うのだった。
12/07/30 21:25更新 / 三鯖アキラ(旧:沈黙の天使)