六章 真・運命の日
東帝大学の合格発表日の翌日の12時……
俺は静海公園の時計台で斉田を待っていた。
この静海公園は港に近い公園で、有名なデートスポットだ。
今もベンチでまったりしたり弁当を食べたりしているカップルが見受けられる。
奥まったところには茂みが用意されているが……これは市がサキュバスの意見を取り上げて作った青姦用らしい。
夜になれば港の建物がライトアップされてロマンチックな雰囲気になる。
そんなところの時計台で俺は斉田を待っている。
「お待たせ〜! ごめん、待った?」
約束の時間を5分ほど過ぎて斉田が走ってやってきた。
ん、走って?
見てみると、斉田には脚があった。
「たいして待ってないけど……斉田、脚はどうした?」
「これ? 魔力で形成しているものよ。美穂から精の薬をもらってね……どう? 似合うかな?」
くるりと俺の前で斉田は回ってみせる。
白いブラウスの上にネイビーのカーディガンを羽織り、茶色っぽい短めのフレアスカート、ショートブーツと言った格好だ。
俺たちの年齢にしてはちょっと背伸びしたコーディネートに見えるが、まぁ、真面目な印象が強い斉田にはこれくらいがちょうどいいのかもしれない。
髪型は小細工などせず、さらさらのストレートヘアだ。
顔もほんのりと化粧をしている。
そして眼鏡も生前に使っていた無骨な丸い眼鏡ではなく、ちょっとおしゃれな赤いフレームの眼鏡だった。
『斉田って、オシャレをしたらここまで綺麗になるのか』
見た目に気を使えば綺麗になるとは思ってはいたが、まさかここまで綺麗になるとは……
思わず俺は見とれてしまった。
「何ボーッと見ているのよ、返事しなさいよ」
「あ、ごめん。ついつい見とれていた。 似合っていて綺麗だよ」
「ん……ありがとう」
俺が褒めると斉田はちょっと照れたように顔を赤くした。
「それじゃ、行こうか」
「うん!」
俺が手を差し出すと、斉田が少し緊張した感じでその手を握ってきた。
そこから俺たちはいろいろ廻っていろんなことをした。
まずは近くのおしゃれな喫茶店に入っておしゃべり。
そこで昼食とお茶を楽しみながら、改めて二人のことについて語り合う。
好きな食べ物とか、読んでいる本とか、趣味とか、そういうのを……
昨日のうちに俺が調べて印刷した、東帝大学にあるサークルの紹介のホームページを二人で見たりもした。
そこを出たらカラオケに行く。
やはり斉田はカラオケとかに行くのは初めてだったようで、とても楽しそうだった。
もっとも、あまり歌を知らなかったらしく、歌ったのは童歌や音楽の授業で習ったような歌だったけど。
こうして俺たちは楽しく初デートを過ごしていった。
「さて、これからどうしようか?」
カラオケを出て俺は斉田に訊ねるともなく、口にする。
時刻は5時……本当はこれから映画でも見て、それから夕食にしようと思っていた。
だが、ちょっとここで俺が準備不足だったことに、近所の映画館はメンテナンスかなんかで休みになっていのだった。
夕食にするにしてはちょっと早すぎる時間だ。
かと言ってこれから隣街まで行って映画を見たり、さらに他の何かをしたりするにはちょっと遅すぎる。
『適当にブラブラして……ウィンドウショッピングでもしながら、夕飯食べるところを探すかな……』
やや行き当たりばったりな案だ。
悪くはないけど、食べるところが見つからなかったら面倒だし、カラオケ後に歩き回るのはちょっとだけ辛いかもしれない。
もうちょっと何か考えて、何も浮かばなかったら歩くことにしよう……そう思った時、携帯が震え出した。
「誰だよ、こんな時に……」
つぶやきながら俺は携帯を取り出す。
村野からだった。
「やっほー! デートは上手く行っているみたいね♪ 今は困っているみたいだけど」
「見もせずにどうして分かるんだ?」
「見ているから分かるわよ」
「はぁっ!?」
思わず大きな声を上げてしまう。
どうやらあのサキュバス、俺たちを尾行していたらしい。
ここまで俺たちに気づかれることなく跡をつけてきたことにも驚くが、あまり気分のいいものではない。
「あはは〜、ごめんごめん。あなたたちがうまく行くかどうか不安だったからさ〜」
「……悪趣味だな」
「だからごめんってば〜。お詫びとデートがうまく行っているお祝いにちょっとしたプレゼントをしてあげるからさ〜」
すぐにメールで送ると言って、村野は電話を切った。
はたして5分ほどしたらメールが届いた。
そこには……
「村野め……」
「何? どうしたの?」
ぷかぷかと浮かびながら斉田が俺の横から携帯をのぞき込んでくる。
俺は斉田にも見えるように携帯の位置を調節した。
ディスプレイにはとある場所の住所とその地図、そして村野からのメッセージが表示されている。
私からのプレゼント!
あなたたちのために一番高い部屋を取っておいたから。
「佐々木です。支払いは村野が済ませています」て言えば良いから。
俺たちは顔を見合わせる。
斉田の顔は恥ずかしさからか、少し赤くなっていた。
「佐々木君、これって……」
黙って俺は頷く。
ああ、俺もこういう場所は斉田よりは慣れているけど、ちょっと恥ずかしい。
『村野め、余計なことをしてくれる……』
とは言え、ありがたいプレゼントであることも確かだ。
村野が用意したプレゼントの代金は、自腹を切ろうとしたら俺たち学生にしては結構な額になる……それを負担してくれた。
また、このメールを二人で見たから、口実にもなって誘いやすい。
息をそっと吐き出し、それから思いっきり息を吸ってから、一息に俺は斉田を誘った。
「せっかく村野が用意してくれたから、行こうか。このラブホに……」
俺の誘いに、斉田はさっきよりさらに顔を赤くしながら、それでもはっきりと頷いた。
俺は静海公園の時計台で斉田を待っていた。
この静海公園は港に近い公園で、有名なデートスポットだ。
今もベンチでまったりしたり弁当を食べたりしているカップルが見受けられる。
奥まったところには茂みが用意されているが……これは市がサキュバスの意見を取り上げて作った青姦用らしい。
夜になれば港の建物がライトアップされてロマンチックな雰囲気になる。
そんなところの時計台で俺は斉田を待っている。
「お待たせ〜! ごめん、待った?」
約束の時間を5分ほど過ぎて斉田が走ってやってきた。
ん、走って?
見てみると、斉田には脚があった。
「たいして待ってないけど……斉田、脚はどうした?」
「これ? 魔力で形成しているものよ。美穂から精の薬をもらってね……どう? 似合うかな?」
くるりと俺の前で斉田は回ってみせる。
白いブラウスの上にネイビーのカーディガンを羽織り、茶色っぽい短めのフレアスカート、ショートブーツと言った格好だ。
俺たちの年齢にしてはちょっと背伸びしたコーディネートに見えるが、まぁ、真面目な印象が強い斉田にはこれくらいがちょうどいいのかもしれない。
髪型は小細工などせず、さらさらのストレートヘアだ。
顔もほんのりと化粧をしている。
そして眼鏡も生前に使っていた無骨な丸い眼鏡ではなく、ちょっとおしゃれな赤いフレームの眼鏡だった。
『斉田って、オシャレをしたらここまで綺麗になるのか』
見た目に気を使えば綺麗になるとは思ってはいたが、まさかここまで綺麗になるとは……
思わず俺は見とれてしまった。
「何ボーッと見ているのよ、返事しなさいよ」
「あ、ごめん。ついつい見とれていた。 似合っていて綺麗だよ」
「ん……ありがとう」
俺が褒めると斉田はちょっと照れたように顔を赤くした。
「それじゃ、行こうか」
「うん!」
俺が手を差し出すと、斉田が少し緊張した感じでその手を握ってきた。
そこから俺たちはいろいろ廻っていろんなことをした。
まずは近くのおしゃれな喫茶店に入っておしゃべり。
そこで昼食とお茶を楽しみながら、改めて二人のことについて語り合う。
好きな食べ物とか、読んでいる本とか、趣味とか、そういうのを……
昨日のうちに俺が調べて印刷した、東帝大学にあるサークルの紹介のホームページを二人で見たりもした。
そこを出たらカラオケに行く。
やはり斉田はカラオケとかに行くのは初めてだったようで、とても楽しそうだった。
もっとも、あまり歌を知らなかったらしく、歌ったのは童歌や音楽の授業で習ったような歌だったけど。
こうして俺たちは楽しく初デートを過ごしていった。
「さて、これからどうしようか?」
カラオケを出て俺は斉田に訊ねるともなく、口にする。
時刻は5時……本当はこれから映画でも見て、それから夕食にしようと思っていた。
だが、ちょっとここで俺が準備不足だったことに、近所の映画館はメンテナンスかなんかで休みになっていのだった。
夕食にするにしてはちょっと早すぎる時間だ。
かと言ってこれから隣街まで行って映画を見たり、さらに他の何かをしたりするにはちょっと遅すぎる。
『適当にブラブラして……ウィンドウショッピングでもしながら、夕飯食べるところを探すかな……』
やや行き当たりばったりな案だ。
悪くはないけど、食べるところが見つからなかったら面倒だし、カラオケ後に歩き回るのはちょっとだけ辛いかもしれない。
もうちょっと何か考えて、何も浮かばなかったら歩くことにしよう……そう思った時、携帯が震え出した。
「誰だよ、こんな時に……」
つぶやきながら俺は携帯を取り出す。
村野からだった。
「やっほー! デートは上手く行っているみたいね♪ 今は困っているみたいだけど」
「見もせずにどうして分かるんだ?」
「見ているから分かるわよ」
「はぁっ!?」
思わず大きな声を上げてしまう。
どうやらあのサキュバス、俺たちを尾行していたらしい。
ここまで俺たちに気づかれることなく跡をつけてきたことにも驚くが、あまり気分のいいものではない。
「あはは〜、ごめんごめん。あなたたちがうまく行くかどうか不安だったからさ〜」
「……悪趣味だな」
「だからごめんってば〜。お詫びとデートがうまく行っているお祝いにちょっとしたプレゼントをしてあげるからさ〜」
すぐにメールで送ると言って、村野は電話を切った。
はたして5分ほどしたらメールが届いた。
そこには……
「村野め……」
「何? どうしたの?」
ぷかぷかと浮かびながら斉田が俺の横から携帯をのぞき込んでくる。
俺は斉田にも見えるように携帯の位置を調節した。
ディスプレイにはとある場所の住所とその地図、そして村野からのメッセージが表示されている。
私からのプレゼント!
あなたたちのために一番高い部屋を取っておいたから。
「佐々木です。支払いは村野が済ませています」て言えば良いから。
俺たちは顔を見合わせる。
斉田の顔は恥ずかしさからか、少し赤くなっていた。
「佐々木君、これって……」
黙って俺は頷く。
ああ、俺もこういう場所は斉田よりは慣れているけど、ちょっと恥ずかしい。
『村野め、余計なことをしてくれる……』
とは言え、ありがたいプレゼントであることも確かだ。
村野が用意したプレゼントの代金は、自腹を切ろうとしたら俺たち学生にしては結構な額になる……それを負担してくれた。
また、このメールを二人で見たから、口実にもなって誘いやすい。
息をそっと吐き出し、それから思いっきり息を吸ってから、一息に俺は斉田を誘った。
「せっかく村野が用意してくれたから、行こうか。このラブホに……」
俺の誘いに、斉田はさっきよりさらに顔を赤くしながら、それでもはっきりと頷いた。
12/03/21 20:06更新 / 三鯖アキラ(旧:沈黙の天使)
戻る
次へ