とろける
「んぅ……」
うめき声を上げて私は目を覚ます。
快感の余韻で頭も身体も少しだるい気がするが、調子は良さそうだった。
起き上がろうと手を大地につく。
ぬちゃ……
手に触れたのは硬い地面ではなく、紫色の粘液だった。
見てみると私の周囲に紫色の粘液が広がっている。
メジストのものではない。
彼女は私から少し離れたところに立っていた。
じゃあこれは……
「おはよう、ようこそこちらの世界へ♪ どお、ダークスライムになった気分は?」
メジストが話しかけてくる。
『ダークスライムになった気分?』
大地についている手を見てみる。
それはメジストと同じ、透き通った紫色の粘液で出来ている。
脚も、お腹も、胸も、そこにかかっている髪も、みんな紫色のスライムで出来ていた。
そして私の胸元にはメジストと同じ、子どもの落書きのような顔があるコアが浮かんでいる。
『わたし……ダークスライムなんだ』
人間ではなくなったことに悲しみはない。
むしろすがすがしい気分だ。
今までキツく縛り付けられていたものから全て解放された感じだった。
身体を起こして立ち上がる。
とそのとき、何かが私の頭からずり落ちた。
それは、レスカティエ軍の暗殺者に支給されるベレー帽、兄が被っていたものだった。
「あ、それなんだけど、どうもあなたの大事な思い出の品だったようだから、溶かさずに残しておいたわ」
マークだけは変えちゃったけど、とメジストはいたずらっぽく笑いながら言う。
なるほど、レスカティエの紋章はダークスライムのコアのようなマークに変えられていた。
『兄さん……』
ダークスライムになったことで兄はどう思うだろうか?
仮にも反魔物立場のまま死んだ兄だから……軽蔑するだろうか?
一瞬チクリと胸が痛む。
でも、兄とした約束
「笑ってあの世の兄に会いに行く」
という約束は果たせそうだ。
今まで笑えなかったが、自分を硬く凍り付け、縛り付けていたものがなくなった今、笑うことが出来る。
……だが、何か足りない。
足りないのは……
『ああ……』
脳裏から兄に代わって一人の男の姿が浮かび上がる。
偶然だけど山賊に私が捕まっていたのを助けてくれた男、私を優しく扱ってくれた男、教団の暗殺者人形になりかけていた私に人間らしい心を保たせ続けてくれた男……
その人間らしい心が魔物になったことで一気にふくれあがり、私の心と身体をどうしようもないくらいに火照らせる。
「もう行ったほうが良いわ。欲しいんでしょ? 彼が……」
メジストもそれを感じ取ったらしく、私にそうささやきかける。
「あたしも、男を捕まえに行くわ。それじゃ、達者でねん♪」
そう言い残してメジストは去って行った。
しばらく私はそれを見送っていたが、我に帰る。
こうしてはいられない。
ぐずぐずしていたら他の魔物に彼を取られてしまうかもしれない。
私は跳躍する。
今までのどの跳躍よりも高く、早く、スムーズな跳躍だった。
とろとろなスライムの身体だが、暗殺者だったころの身体機能は失われていないようだ。
屋根に着地した私はそのまま駆け出した。
彼の元へ……
「早く! こっちに避難するんだ!」
彼はある大通りで避難する市民の誘導をし、そこから先に魔物を通さないよう守備をしていた。
ほとんどの市民はもう魔物に捕まってしまったらしく、避難してくる者は極少数だった。
それでも彼は仕事を投げ出したりせずにその場を一人で死守しようとしている。
彼の正義感ぶりや人に対する優しさは人間だった頃から見ていて知っていたが、やはりさすがだ。
だから、彼が欲しい。
その優しさをもっと私に向けて欲しい。
その心も身体も何もかもが欲しい……!
ひゅんっ!
頭上から彼に襲いかかる。
不意を突かれた彼は私に押し倒された。
「おのれ、魔物……め……っ?」
威勢良く言って私をはねのけようとしたが、その手が止まり、言葉も尻すぼみになる。
「久しぶり、という言葉がいいかな?」
「き、君は……あの時、山賊に捕まっていた……!?」
彼は私のことを覚えてくれていたらしい。
嬉しくて私の心が温かく感じる。
あ、嬉しいなんて感情も久しぶりに感じるな……
「覚えていてくれたのね。わたしもあなたのことを覚えていたよ。ううん、あなたのことをしょっちゅう見ていた。あなたにあの時助けられたときから、ずっとあなたが好きだった。でも、わたしはレスカティエ軍の暗殺者だったから、あなたたちの前にそう姿を現すわけにはいかなかったの……」
話しかけながら私は彼の服を溶かしていく。
すぐに彼の兵士らしい、鍛え上げられた肉体が露になった。
「でも、もう魔物になったからそんなこと気にしなくていいの。好きなだけあなたとしゃべることができて、好きなだけあなたと交わることが出来るの」
「うっ、やめろ……それでも、お前は魔物……」
抵抗しようと彼はもがくが、彼の身体はほぼ全て私が包んでいるから、逃げられるはずがない。
そして……
「そんなこと言ってもぉ……あなた、勃っているわよ?」
粘液に触れているから分かる。
彼の性器はまだ完全ではないようだが、むくむくと固くなっていた。
粘液で刺激とかしていないのに、だ。
「もしかして、わたしのおっぱいとか見て興奮しちゃったかなぁ?」
「くっ……!」
彼は顔を紅くして背けた。
だが、それでも横目でちらちらと私の胸を見ている。
それと同時に性器の怒張も激しくなった。
もしかして、初めてなのかもしれない。
その初々しい反応も愛おしい。
「おちんちんがさっきより硬くなったよ? すっごく熱くて、ぴくぴくしていて辛そう……楽にしてあげるからね」
粘液で出来た手を彼の肉棒に伸ばす。
そのまま亀頭をぬるりと撫でる。
「あっ、ふあっ……」
精悍そうな顔つきなのに、女の子のような声を彼はあげる。
「うふふ、可愛いね。ほら、ここをこうすると気持ちいいかな?」
人間だったころの閨房術の知識を動員し、私は肉棒をしごき立てる。
腕を上下させながら、手首のスナップを利かせて愛撫する。
私の手は粘液で出来ているため、手を動かす度にくちゃくちゃと音がするのがひどく卑猥だ。
扱くときは親指と人差し指にこめる力をちょっとだけ強めにし、その二つの指でリングをつくるようにする。
その環に敏感な亀頭やカリをくぐらせると男は非常に喜ぶ。
かと言ってそこだけを攻めない。
残る中指から小指までは竿の部分を包み込んで扱く。
「やめ、やめ……あああっ!」
「やめて欲しいの? うふふ、ここはそうは言っていないけどなぁ? 気持ちいいんでしょ? これ、実は司祭や神父が教えてくれた技なんだよ?」
「えっ……」
普段、主神の教えを説いている彼らがそんなことに詳しいなどと思っていなかったのだろう。
彼の顔が驚愕に染まる。
「わたしたち女暗殺者はね、殺し以外にもこんなことをさせられていたんだよ? 命じられた相手を骨抜きにするために淫らなことをさせられたり、あるいは訓練と言われて奉仕させられたり……」
手の攻めを止めずに私は彼が知らない、レスカティエ教国の裏側を明かしていく。
彼の今まで支えていたものがガラガラと音を立てて崩れていくのを感じる。
悪く言えば物事の裏側や暗い面を知らなかったということだが……でも、その純粋なところも可愛らしい。
「わたしも本当はいやだった……心を凍らせて何も感じないようにしていたけど、それでもいやだった。でも……」
でも、だ。
「それで身に付けた技術と知識があなたを気持ちよくさせることが出来ているなら、それも悪くなかったかなぁ♪」
「くっ、あああっ、やめ……て、やめて……」
彼の身体がぶるぶると震え、切なげな声をあげる。
「ん〜? 出ちゃうの? いいよ。とろとろの精液、たっぷりだして〜♪」
耳元で私は囁く。
それが引き金になったようだ。
彼の精液が私の手の中にほとばしる。
どくんどくんと何度も彼の肉棒は震え、震えるたびに私の手が精液にまみれた。
「たくさんでたね〜。 ん……れろ、じゅるり……」
魔物の本能なのだろうか、私はその精液を口にする。
『何、これ……』
男の精液は人間だった頃、口での奉仕で何度も口の中に出されて人によっては飲み込むことを強制された。
苦かったり塩辛かったりと、とても不味くて飲めた代物ではない。
だが、彼の精液は、どこか甘くて美味しかった。
「あむっ、んちゅ……ん〜、すごくおいしい……ねーねー、もっとたくさんだしてくれる?」
答えなど聞いていない。
私は身体をずらして、顔を彼の肉棒に近づけていく。
そのまま、その肉棒を口に含んだ。
亀頭を口の中で転がすかのように舌で弄ぶ。
裏筋に舌を這わせて、カリ首のところに舌を巻きつけ、亀頭全体をしゃぶり、尿道口をれろれろとつつき……
「だ、だめだ……そんなの……! やめて……くれ……!」
「ん〜? 何がダメなの〜?」
一度口を離し、シュッシュと手で肉棒を扱きながら私は訊ねる。
切なげに眉を寄せて喘ぎながら彼は答えた。
「そんなところ……汚い、し……こんなこと……やっちゃ、ダメだって……」
「神父たちがそう言っていた?」
そう言えば教団は、表向きはオーラルセックスを禁じていた気がする。
だが……
「でもこれも神父や司祭から教わったものだよ〜? それに……」
それにだ。
つい油断してしまったが、私は彼の手の拘束をおろそかにしていた。
武器の鉄槍は離れたところに転がっているが、少なくとも彼は抵抗できる状態にある。
本当に私から逃げたりしたいのであれば、私を引き離そうと頭を掴んだり殴ったりすればいいはずだ。
だが彼はそれをしない。
つまり、本心は……
「シて欲しいんでしょう? わたしにお口でぐちゅぐちゅにしてもらって、気持ちよくして欲しいんでしょう?」
「そんなこと……あ、あっ、あああ!」
彼の言葉が途切れる。
私が再び彼の肉棒を口にふくんでいたからだ。
今度は少し趣向を変えてみて、スライムの特性を生かしてみる。
粘度の高い唾液をたっぷりと溜め、それを口の中で攪拌するように動かした。
私の舌や口腔粘膜だけでなく、唾液ですら潤滑油にとどまらず愛撫の役をする。
「うあっ、んっ……くああっ!」
もう彼は私を制止する声を発しない。
快楽でそんな余裕がなさそうだ。
そして耳をすますと、私の粘液と彼のペニスが私の口の中で立てるぐちゅぐちゅと卑猥な音が聞こえてくる。
彼の喘ぎ声を聞いていると、もっと彼を気持ちよくしてあげようという気持ちが沸き起こり、フェラチオに熱が入った。
必然的に、口の中の粘着音が大きくなる。
『あ……先走り液が……♪』
精液とは少し味が違う液体が私の舌に触れる。
ここまでくれば射精までもう少しだ。
射精が近いということは、彼は気持ちよくなっているのだろう。
それは分かるが……なんとなく直接、彼の口から聞いてみたくなった。
「ねーねー、気持ちいーい?」
一旦口を離して訊ねてみる。
だら〜っと私の口から涎が溢れて彼の肉棒にかかった。
その感触に彼はびくりと身体を震わせてから答える。
「き、気持ち……いい……」
うわごとのように彼がつぶやいた。
さっきまで口では嫌がっていたが、もう口も素直に快感に溺れたことを告白している。
彼をそこまで堕としたことに閨房術を学んだ暗殺者として、魔物娘として、そして女として誇りに思う。
「うれしい……それじゃ、一気にイかせちゃうわよ」
そう言って私は追い込みにかかった。
閨房術の技と魔物の特性を一気に総動員させる。
肉棒をちゅうちゅう吸い、舌で亀頭をじゅるじゅると舐め回し、唾液を溜めてそれでペニスを攪拌し、首を動かして唇でサオをじっくりと締め付けて扱きたてて……
「また、また出る……!」
がくんと彼が腰を突き上げる。
それと同時に肉棒が爆ぜた。
二回目の射精だというのに濃厚な精液が私の口内に直接ほとばしる。
「んぐっ!? んっ、んっ……こくっ、んっ……」
突き上げられた時はちょっと驚いたが、すぐに私は受け入れた。
吐き出される精液を嚥下していく。
……ダークスライムの内蔵とかどうなっているか分からないけど。
そんなことより、私は口いっぱいに広がる彼の味に酔いしれる。
「ちゅぅう……んふふ、あなたの味がするよ♪」
「はぁ、はぁ……」
彼は言わない。
荒い呼吸をしているだけだ。
眼も焦点が合っておらず、身体はぴくぴくと軽く動くだけでだらりと弛緩させている。
だが、彼のペニスは未だに剛直を保っていた。
二回目の射精直後にも関わらず、まだまだ出せる、まだまだ出したいとアピールするかのようにひくついている。
『これ……わたしの中に挿れられて、直接精液出されたらどうなるかな……?』
ふとそんな欲求が頭をもたげてきた。
一度意識すると、魔物の私はもうその欲求を止められない。
でも……彼が私の完全に虜になっているかどうかもちょっと気になった。
女の経験が浅そうな彼が、暗殺者の性技を受けたらもう骨抜きになっているはずだが……もはや抵抗する様子はなく、素直に快感を口にするほど堕ちているはずだが……
『ちょっと、試してみようかな……』
拒絶されると面白くないけど、でもこれで彼の方から求めてくれたら、これ以上嬉しいことはない。
拘束を完全に解き、私は彼の前に座って脚を広げて誘う。
「ねーねー♥ わたしと一緒にとろとろになろうよぉ♥ ソレぇ……とろとろのわたしの中に挿れてぇ……♥ とろとろのせーえきぃ、いっぱいいっぱいだしてほしいなぁ♥」
子どものころと同じように、私はおねだりする。
そんな私のおねだりに対して彼は……
「あ、ああ……」
肯定なのかただのうめき声なのか何なのか分からない声をあげる。
だが、自由に動く彼の身体は、はっきりとした意思を持って私の身体に腕を回して抱きしめ、私を組み敷いた。
『ああ、彼が……わたしを求めてくれている……!』
嬉しさに、これからの交わりの期待に胸が激しく踊る。
彼がゆっくりと腰を進めてきた。
彼の分身がとろとろの私の身体の中に入ってくる。
「あああっ! 入ってきている! あんっ、ああんっ、すごく気持ちいいのぉ!!」
下腹部からの圧迫感に私は歓喜の声をあげる。
メジストによる人外の挿入も気持ちよかったが、彼のペニスの挿入も勝るとも劣らない快感だった。
まるで今まで失っていた何かが満たされるような……そんな感じがする。
彼に挿れられただけで達してしまいそうだ。
一方彼は……彼も挿入だけでどうやら射精しそうになっているらしい。
腰を動かすことなく、歯を食いしばっている。
「ねーねー、動いてよぉ……一緒に、気持ちよくなろうよ〜」
彼の下で私は腰を動かす。
「ダメだ……動いたらまた出てしまう……!」
「いいよ……何度でも出して……わたしが全部、受け止めてあげるから……」
まるでその言葉で縛り付けられていた呪いが解けたかのように、彼は振り出した。
魔物相手に交わって射精することを嫌がっていた訳じゃなかったようだ。
だがそのことに安堵している余裕はない。
彼の腰使いはややぎこちなさこそあるものの、ぐいぐいと私の中を抉って掻き回す動きは私に嬌声をあげさせた。
男の方も腰を動かせば、その快感が返ってくる。
女性経験の浅い男が腰を動かすのは自滅行為とも言えた。
「くっ、がはぁ!」
なすすべもなく、彼は身体を震わせて白濁液を私の体内にぶちまけた。
彼の射精を私の粘液の身体は敏感に感じ取る。
「あはぁ!出てるっ! ああ……あぁん、すごい!」
達することはなかったが、それでも体内での射精は心地よかった。
精液が私の体内に拡散し、ふよふよとみぞおちのあたりに浮かんでいる。
「ああ……」
私は思わず声を漏らす。
今まで何度か無理やり膣内に射精されたことがあったが、あの時は子を孕むのではないかと不安になったものだった。
だが、今は違う。
愛しい人の精液をこの身体で受け止められるなんて、なんて気持ちいい、なんて素敵……そう思っていた。
ガクッ……
射精した彼が脱力して私の上に倒れ込んできた。
そんな彼に私は耳元で囁いて訊ねる。
「えへへ……ねーねー、気持ちよかった?」
「あ、ああ……」
私に身体をあずけたまま、彼は答えた。
だが、そのまま動く様子がない。
腰をゆすって私は動くことを要求する。
「ねーねー、また動いてよ〜」
「む、無理だ……体中の、力が抜け……ちゃって……」
「あれ? もう? しょーがないなぁ……」
私は身体をねじって彼の下から抜け出し、逆に押し倒す。
「じゃあ、わたしが動くね。」
前後にくいくいと私は腰をくねらせた。
肉棒がとろとろの私の身体の中を切るようにして掻き回してくる。
その快感に私は悶え、声をあげた。
「んんっ! 気持ち……ふあっ! あなたのがわたしの中をかき乱しているのぉ!」
彼も気持ちいいらしく、私の下で「すごい、すごい」とうわごとのように言っている。
魔物の快楽に、私の身体に虜になった彼がそこにいた。
「すごいでしょう? これも……あんっ!訓練のたまものなのよ? うふふ、じゃあ、これはどうかな?」
腰の動きを変えてみる。
前後の運動から腰を回転させて捻るような動きだ。
粘液の身体をよりいっそうかき回されるような感触を私は味わう。
二人の結合部からぐちゅぐちゅと音が響くのが卑猥だ。
「あ……あああ……」
彼が虚ろな嬌声を上げながら結合部を凝視する。
いや、正確にはその「辺り」を凝視していた。
「ん〜?」
彼の目をそんなに捉えて離さない物に興味をひかれ、私は背中を丸めて同じものを見ようとする。
「わぁ……なんか、ひわい〜♪」
思わず私は声を漏らす。
スライムの私の身体は半透明だ。
よって、私の身体の中に挿入されているペニスが私の身体越しに見えるのだ。
彼の肉棒が私のなかで揉みくちゃにされているのが手に取るように分かる。
そのとき、彼の亀頭がぷくっと一回り大きくなったように見えた。
「うああああっ……!」
それと同時に彼が切羽詰った悲鳴をあげる。
「あっ、でるの? んあっ、だしてだして〜♪」
私はぐいっと腰をより押しつけながら、腰をぐるぐると彼の上で回転させる。
もうすでに肉棒が膨らみ切っていたため、射精までは間がなかった。
どくっ、どくん……
彼が何度目か分からない射精をする。
私の腰の動きに合わせて動かされながらペニスが私の体の中で白いマグマを吹き上げてまき散らしているのが、私にも彼にもよく見える。
「や、やめ……! 出ている最中に……くうぅっ!」
「でも気持ちいーんでしょう? 萎えないからわたしもあなたも気持ちいいしぃ……んっ、あん♪」
私の言葉通り、射精の最中も刺激されていたペニスは萎えることを許されず、剛直を保ち続けていた。
この分ならまだまだ出せそうだ。
思わず私は舌なめずりをする。
「ほらほら、連続でイかせちゃうわよ♪」
また私は腰の動きを変えた。
今度は上下運動……彼の身体の上で自分の腰を弾ませる。
腰を浮かせて彼の肉棒がもう少しで抜けるというところまで持ち上げた。
そこから一転、私は腰を打ち下ろす。
彼の肉棒が私の粘液の身体を掻き分けて入ってくる……
「あっ!?」
突然身体に甘くも激しい快感の衝撃が走り、私は身体をすくめた。
そのままその快感が全身で爆発する。
「あっ、あっ! ふああああああ!」
身体を弓なりに反らせて私は痙攣した。
口からは狂おしい嬌声が漏れる。
『な、何っ!? わたし……イッちゃってる!?』
急な身体の反応に私は戸惑う。
でもこの感覚は間違いなく、メジストに何度も味わわされた絶頂の味だ。
いや、それ以上の感覚だった。
「くぅ! し、しめつけてきて……うわああああ!」
すぐその後で、射精したばかりだと言うのに彼がまた射精した。
勢い良く吐き出された精液は粘液の海を突き進み、コアにぶつかる……
「ひっ!? あんっ! あああああっ!」
コアに精液がかかった瞬間、私はまたイッてしまった。
ぶるぶると私の身体はふるえてから、ぐにゃりと彼の胸板の上に崩れおちる。
気持ちよすぎて、とろとろの頭が更にとろけて何も考えられない……いや、考えることは今の快楽についてだけだ。
ぼーっと考えているうちにひとつの結論にたどり着く。
『そうか……ダークスライムって、コアが一番の弱点なんだ……クリトリスと同じように……』
改めて自分が人間ではなく、ダークスライムであることを実感した。
失ったものもあるかもしれないが、得られたものも大きいはずだ。
得られたもので一番大きなものは、今私の下でとろけた顔をしている彼……そして、他に手に入れたものは、人間の身体ではできない技……
考えただけで身体がそれを試すことを命じて燃え上がった。
自分がどのように身体の粘液を動かすことができるか試してみる。
『まずは、メジストのマネをして……』
メジストによる全身愛撫の快感を思い出しながら、私は大地に広がっているスライムで彼の身体を包み込んだ。
それをじゅるじゅると、粘液を波打たせるようにして彼を愛撫してみる。
「あっ、あっ……!」
それだけで彼は引き込まれるような声を上げるが、でもどこか物足りなそうだ。
やはり男の性感帯はペニスに集中しているみたいだ。
『ならば……』
にちゅ……
絡み込むようにペニスの表面に吸い付き、甘く押し潰す。
亀頭のくびれを粘液で捕らえ、じゅぷじゅぷとヒダで執拗に擦り立てる。
彼の反応が激しくなった。
「あっ、うあっ! そ、そんなにされたら! くぅ!」
身体をよじりながら彼は嬌声を上げる。
一方、私の口からも嬌声が漏れる。
腰を動かしていないのに、粘液と彼のペニスがぬるぬると擦れあうのが気持ちいい。
「はぁっ、はぁ……んぅ、気持ちいーい? また出ちゃいそう? いいよ……あんっ♪ またいっぱいだして……」
膣を締め付けるように、彼のペニスにまとわりついているスライムを動かす。
スライムはまるで蛇が身体を擦りつけながら締め上げるかのように、とくにカリ首と亀頭を刺激するように動いた。
「ま、また出る……くぅ!」
腰を動かすことなく、ぬるぬるとスライムに愛撫されただけで、彼は達してしまった。
また私の体内に白濁液がぶちまけられる。
「わたし、腰を動かさなかったよ? なのにだしちゃうなんて……えへへ、そんなに気持ちよかったの?」
「あ、あう……」
バツが悪そうに彼がくちびるを噛む。
そんな様子の彼を見たら、悪戯心が私の中に浮かび上がってきた。
彼の顔に自分の顔をずいと近づけて訊ねる。
「ねーねー、今のダークスライムの能力とぉ……わたしの術を最大限に使ったらどうなるかなぁ……?」
彼の顔に恐怖の影が差す。
でも、本当に怖がっている顔ではない。
どこか期待をしている、物欲しそうな顔……メジストに気持ちよくされていたとき、私もこんな顔をしていたはずだ。
「じゃあ、いくよ……一緒に、気持ちよくなろう……んっ、あんっ」
まずゆるやかに私は腰を上下に弾ませて彼の肉棒を刺激した。
それと同時にスライムをぐじゅぐじゅと四方からペニスを押し包むように絡みつけ、彼のペニスをしごき抜く。
すぐに彼が音を上げた。
「や、やめ……そんなに動かないでくれっ……!」
「どーして? ひあっ……また、すぐに……んぅう、イッちゃう? もうちょっとだけ……あんっ、ガマンしてぇ! 一緒にイこうよぉ……!」
腰の動きを止めずに私は言う。
彼のペニスが私の粘液を掻き分けながら体内を突き上げてくる。
突き上げる衝撃は粘液越しに私のコアに伝わり、私を悶えさせた。
彼も歯を食いしばって我慢してくれている。
その表情が可愛らしくて、私に悪戯心が湧いてくる。
「んふふ……」
彼の顔を両手で抑え、くちびるを奪った。
そのまま舌を侵入させ、彼の舌を蹂躙する。
歯を食いしばれなくなったらどうするのだろうか?
「ぐっ、んぐっ……!」
彼の身体が堅くなり、歯を食いしばる代わりに体中に力をいれたのが分かった。
『ああ、頑張ってくれるんだ……♪』
嬉しくて私は腰をくねらせ、彼に打ち付ける。
私が動くたびに、くぐもった声が私と彼の口から漏れ、結合部はびちゃびちゃと卑猥な水音とも破裂音ともつかない音が響いた。
彼は確かに頑張ってくれている。
だが、閨房術で鍛えられた腰の動きと魔物の身体による攻めはやはり彼には強すぎたようだった。
「も、もう本当に……!」
彼の声がいよいよ切羽詰ってきた。
私はもう少しこの感覚を味わいたいが、もう限界だろう。
つながっている感覚より、今は二人同時に絶頂して同じ感覚を共有したい。
「いいよ、一緒に……イこう!」
そう言いながら私はぐりぐりとコアを彼の亀頭に押し付けた。
ちょっと突かれただけでも、精液をかけられただけでも絶頂に達してしまうコア。
そんなものを愛しい男の大事なところにこすりつけて耐えられるはずがない。
「あっ、うあああっ! イク、イクぅうう!!」
私の身体がびくびくと痙攣する。
いや、痙攣しているだけじゃない。
身体の中で粘液が激しく流動し、暴れまわっている。
コアから弾ける刺激がスライムの流れに乗って全身に回っているかのようだ。
外からでは分からないだろうが、頭も、胸も、お腹も、太腿も、体中のどこもかしこも中で、とろとろなスライムがぎゅるぎゅると動き回って快感が爆発していた。
もちろん、スライムは股間でも流動している。
当然、ぎりぎりまで追い詰められていたペニスはその刺激に晒され、爆発した。
「がはっ! うああっ!」
彼の腰が跳ね上がり、私の体内に白濁液をまき散らした。
絶頂して流動している粘液は、彼の精液を攪拌する。
「んああああっ! すごいぃいっ! あなたで……いっぱいにぃ! ふあああんっ!」
彼の精液がまるで身体の隅々まで行き渡たって染み込み、肉一片、血の一滴まで満ち足りる気分だった。(もっとも、ダークスライムには肉も血もないけど)
私の身体から絶頂の爆発が過ぎ去ったころ、彼の狂おしいほどの射精も止んだ。
ぐったりと彼の身体が弛緩し、静かになる。
「ありゃりゃ、気絶しちゃったかな?」
一瞬、死んでしまったのかとひやりとしたが、彼の胸は上下に動いており、彼の鼓動は粘液の身体に響いてくる。
ほっとした私は、疲れはてて意識を失った彼の顔をそっと撫でた。
「えへへ、もう骨抜き……とろとろだね♪ 私と一緒だね……ねーねー、これからはずっと一緒だよ……今まで離れていた分、ずっと……」
宗教国家 レスカティエ教国は闇に堕ちた。
いや、堕ちたと言うより、生まれ変わったという言い方の方が良いのかもしれない。
レスカティエ教国は煌びやかであったが、その光の裏で貧民や勇者、そして私たちのような暗殺者の苦しみは黙殺されていた。
だが、それが生まれ変わった。
もうここには苦しみも悲しみも、人としてのしがらみもない。
ただ、とろとろにとろけた快楽があるだけだ。
そして、レスカティエ教国と同じように、私も生まれ変わった。
凍った心も身体もとろとろに融けている存在に……
そして私は、人間のままでは手に入らなかった彼と共に、とろとろに融けて生まれ変わった私自身とレスカティエを愉しむのであった。
うめき声を上げて私は目を覚ます。
快感の余韻で頭も身体も少しだるい気がするが、調子は良さそうだった。
起き上がろうと手を大地につく。
ぬちゃ……
手に触れたのは硬い地面ではなく、紫色の粘液だった。
見てみると私の周囲に紫色の粘液が広がっている。
メジストのものではない。
彼女は私から少し離れたところに立っていた。
じゃあこれは……
「おはよう、ようこそこちらの世界へ♪ どお、ダークスライムになった気分は?」
メジストが話しかけてくる。
『ダークスライムになった気分?』
大地についている手を見てみる。
それはメジストと同じ、透き通った紫色の粘液で出来ている。
脚も、お腹も、胸も、そこにかかっている髪も、みんな紫色のスライムで出来ていた。
そして私の胸元にはメジストと同じ、子どもの落書きのような顔があるコアが浮かんでいる。
『わたし……ダークスライムなんだ』
人間ではなくなったことに悲しみはない。
むしろすがすがしい気分だ。
今までキツく縛り付けられていたものから全て解放された感じだった。
身体を起こして立ち上がる。
とそのとき、何かが私の頭からずり落ちた。
それは、レスカティエ軍の暗殺者に支給されるベレー帽、兄が被っていたものだった。
「あ、それなんだけど、どうもあなたの大事な思い出の品だったようだから、溶かさずに残しておいたわ」
マークだけは変えちゃったけど、とメジストはいたずらっぽく笑いながら言う。
なるほど、レスカティエの紋章はダークスライムのコアのようなマークに変えられていた。
『兄さん……』
ダークスライムになったことで兄はどう思うだろうか?
仮にも反魔物立場のまま死んだ兄だから……軽蔑するだろうか?
一瞬チクリと胸が痛む。
でも、兄とした約束
「笑ってあの世の兄に会いに行く」
という約束は果たせそうだ。
今まで笑えなかったが、自分を硬く凍り付け、縛り付けていたものがなくなった今、笑うことが出来る。
……だが、何か足りない。
足りないのは……
『ああ……』
脳裏から兄に代わって一人の男の姿が浮かび上がる。
偶然だけど山賊に私が捕まっていたのを助けてくれた男、私を優しく扱ってくれた男、教団の暗殺者人形になりかけていた私に人間らしい心を保たせ続けてくれた男……
その人間らしい心が魔物になったことで一気にふくれあがり、私の心と身体をどうしようもないくらいに火照らせる。
「もう行ったほうが良いわ。欲しいんでしょ? 彼が……」
メジストもそれを感じ取ったらしく、私にそうささやきかける。
「あたしも、男を捕まえに行くわ。それじゃ、達者でねん♪」
そう言い残してメジストは去って行った。
しばらく私はそれを見送っていたが、我に帰る。
こうしてはいられない。
ぐずぐずしていたら他の魔物に彼を取られてしまうかもしれない。
私は跳躍する。
今までのどの跳躍よりも高く、早く、スムーズな跳躍だった。
とろとろなスライムの身体だが、暗殺者だったころの身体機能は失われていないようだ。
屋根に着地した私はそのまま駆け出した。
彼の元へ……
「早く! こっちに避難するんだ!」
彼はある大通りで避難する市民の誘導をし、そこから先に魔物を通さないよう守備をしていた。
ほとんどの市民はもう魔物に捕まってしまったらしく、避難してくる者は極少数だった。
それでも彼は仕事を投げ出したりせずにその場を一人で死守しようとしている。
彼の正義感ぶりや人に対する優しさは人間だった頃から見ていて知っていたが、やはりさすがだ。
だから、彼が欲しい。
その優しさをもっと私に向けて欲しい。
その心も身体も何もかもが欲しい……!
ひゅんっ!
頭上から彼に襲いかかる。
不意を突かれた彼は私に押し倒された。
「おのれ、魔物……め……っ?」
威勢良く言って私をはねのけようとしたが、その手が止まり、言葉も尻すぼみになる。
「久しぶり、という言葉がいいかな?」
「き、君は……あの時、山賊に捕まっていた……!?」
彼は私のことを覚えてくれていたらしい。
嬉しくて私の心が温かく感じる。
あ、嬉しいなんて感情も久しぶりに感じるな……
「覚えていてくれたのね。わたしもあなたのことを覚えていたよ。ううん、あなたのことをしょっちゅう見ていた。あなたにあの時助けられたときから、ずっとあなたが好きだった。でも、わたしはレスカティエ軍の暗殺者だったから、あなたたちの前にそう姿を現すわけにはいかなかったの……」
話しかけながら私は彼の服を溶かしていく。
すぐに彼の兵士らしい、鍛え上げられた肉体が露になった。
「でも、もう魔物になったからそんなこと気にしなくていいの。好きなだけあなたとしゃべることができて、好きなだけあなたと交わることが出来るの」
「うっ、やめろ……それでも、お前は魔物……」
抵抗しようと彼はもがくが、彼の身体はほぼ全て私が包んでいるから、逃げられるはずがない。
そして……
「そんなこと言ってもぉ……あなた、勃っているわよ?」
粘液に触れているから分かる。
彼の性器はまだ完全ではないようだが、むくむくと固くなっていた。
粘液で刺激とかしていないのに、だ。
「もしかして、わたしのおっぱいとか見て興奮しちゃったかなぁ?」
「くっ……!」
彼は顔を紅くして背けた。
だが、それでも横目でちらちらと私の胸を見ている。
それと同時に性器の怒張も激しくなった。
もしかして、初めてなのかもしれない。
その初々しい反応も愛おしい。
「おちんちんがさっきより硬くなったよ? すっごく熱くて、ぴくぴくしていて辛そう……楽にしてあげるからね」
粘液で出来た手を彼の肉棒に伸ばす。
そのまま亀頭をぬるりと撫でる。
「あっ、ふあっ……」
精悍そうな顔つきなのに、女の子のような声を彼はあげる。
「うふふ、可愛いね。ほら、ここをこうすると気持ちいいかな?」
人間だったころの閨房術の知識を動員し、私は肉棒をしごき立てる。
腕を上下させながら、手首のスナップを利かせて愛撫する。
私の手は粘液で出来ているため、手を動かす度にくちゃくちゃと音がするのがひどく卑猥だ。
扱くときは親指と人差し指にこめる力をちょっとだけ強めにし、その二つの指でリングをつくるようにする。
その環に敏感な亀頭やカリをくぐらせると男は非常に喜ぶ。
かと言ってそこだけを攻めない。
残る中指から小指までは竿の部分を包み込んで扱く。
「やめ、やめ……あああっ!」
「やめて欲しいの? うふふ、ここはそうは言っていないけどなぁ? 気持ちいいんでしょ? これ、実は司祭や神父が教えてくれた技なんだよ?」
「えっ……」
普段、主神の教えを説いている彼らがそんなことに詳しいなどと思っていなかったのだろう。
彼の顔が驚愕に染まる。
「わたしたち女暗殺者はね、殺し以外にもこんなことをさせられていたんだよ? 命じられた相手を骨抜きにするために淫らなことをさせられたり、あるいは訓練と言われて奉仕させられたり……」
手の攻めを止めずに私は彼が知らない、レスカティエ教国の裏側を明かしていく。
彼の今まで支えていたものがガラガラと音を立てて崩れていくのを感じる。
悪く言えば物事の裏側や暗い面を知らなかったということだが……でも、その純粋なところも可愛らしい。
「わたしも本当はいやだった……心を凍らせて何も感じないようにしていたけど、それでもいやだった。でも……」
でも、だ。
「それで身に付けた技術と知識があなたを気持ちよくさせることが出来ているなら、それも悪くなかったかなぁ♪」
「くっ、あああっ、やめ……て、やめて……」
彼の身体がぶるぶると震え、切なげな声をあげる。
「ん〜? 出ちゃうの? いいよ。とろとろの精液、たっぷりだして〜♪」
耳元で私は囁く。
それが引き金になったようだ。
彼の精液が私の手の中にほとばしる。
どくんどくんと何度も彼の肉棒は震え、震えるたびに私の手が精液にまみれた。
「たくさんでたね〜。 ん……れろ、じゅるり……」
魔物の本能なのだろうか、私はその精液を口にする。
『何、これ……』
男の精液は人間だった頃、口での奉仕で何度も口の中に出されて人によっては飲み込むことを強制された。
苦かったり塩辛かったりと、とても不味くて飲めた代物ではない。
だが、彼の精液は、どこか甘くて美味しかった。
「あむっ、んちゅ……ん〜、すごくおいしい……ねーねー、もっとたくさんだしてくれる?」
答えなど聞いていない。
私は身体をずらして、顔を彼の肉棒に近づけていく。
そのまま、その肉棒を口に含んだ。
亀頭を口の中で転がすかのように舌で弄ぶ。
裏筋に舌を這わせて、カリ首のところに舌を巻きつけ、亀頭全体をしゃぶり、尿道口をれろれろとつつき……
「だ、だめだ……そんなの……! やめて……くれ……!」
「ん〜? 何がダメなの〜?」
一度口を離し、シュッシュと手で肉棒を扱きながら私は訊ねる。
切なげに眉を寄せて喘ぎながら彼は答えた。
「そんなところ……汚い、し……こんなこと……やっちゃ、ダメだって……」
「神父たちがそう言っていた?」
そう言えば教団は、表向きはオーラルセックスを禁じていた気がする。
だが……
「でもこれも神父や司祭から教わったものだよ〜? それに……」
それにだ。
つい油断してしまったが、私は彼の手の拘束をおろそかにしていた。
武器の鉄槍は離れたところに転がっているが、少なくとも彼は抵抗できる状態にある。
本当に私から逃げたりしたいのであれば、私を引き離そうと頭を掴んだり殴ったりすればいいはずだ。
だが彼はそれをしない。
つまり、本心は……
「シて欲しいんでしょう? わたしにお口でぐちゅぐちゅにしてもらって、気持ちよくして欲しいんでしょう?」
「そんなこと……あ、あっ、あああ!」
彼の言葉が途切れる。
私が再び彼の肉棒を口にふくんでいたからだ。
今度は少し趣向を変えてみて、スライムの特性を生かしてみる。
粘度の高い唾液をたっぷりと溜め、それを口の中で攪拌するように動かした。
私の舌や口腔粘膜だけでなく、唾液ですら潤滑油にとどまらず愛撫の役をする。
「うあっ、んっ……くああっ!」
もう彼は私を制止する声を発しない。
快楽でそんな余裕がなさそうだ。
そして耳をすますと、私の粘液と彼のペニスが私の口の中で立てるぐちゅぐちゅと卑猥な音が聞こえてくる。
彼の喘ぎ声を聞いていると、もっと彼を気持ちよくしてあげようという気持ちが沸き起こり、フェラチオに熱が入った。
必然的に、口の中の粘着音が大きくなる。
『あ……先走り液が……♪』
精液とは少し味が違う液体が私の舌に触れる。
ここまでくれば射精までもう少しだ。
射精が近いということは、彼は気持ちよくなっているのだろう。
それは分かるが……なんとなく直接、彼の口から聞いてみたくなった。
「ねーねー、気持ちいーい?」
一旦口を離して訊ねてみる。
だら〜っと私の口から涎が溢れて彼の肉棒にかかった。
その感触に彼はびくりと身体を震わせてから答える。
「き、気持ち……いい……」
うわごとのように彼がつぶやいた。
さっきまで口では嫌がっていたが、もう口も素直に快感に溺れたことを告白している。
彼をそこまで堕としたことに閨房術を学んだ暗殺者として、魔物娘として、そして女として誇りに思う。
「うれしい……それじゃ、一気にイかせちゃうわよ」
そう言って私は追い込みにかかった。
閨房術の技と魔物の特性を一気に総動員させる。
肉棒をちゅうちゅう吸い、舌で亀頭をじゅるじゅると舐め回し、唾液を溜めてそれでペニスを攪拌し、首を動かして唇でサオをじっくりと締め付けて扱きたてて……
「また、また出る……!」
がくんと彼が腰を突き上げる。
それと同時に肉棒が爆ぜた。
二回目の射精だというのに濃厚な精液が私の口内に直接ほとばしる。
「んぐっ!? んっ、んっ……こくっ、んっ……」
突き上げられた時はちょっと驚いたが、すぐに私は受け入れた。
吐き出される精液を嚥下していく。
……ダークスライムの内蔵とかどうなっているか分からないけど。
そんなことより、私は口いっぱいに広がる彼の味に酔いしれる。
「ちゅぅう……んふふ、あなたの味がするよ♪」
「はぁ、はぁ……」
彼は言わない。
荒い呼吸をしているだけだ。
眼も焦点が合っておらず、身体はぴくぴくと軽く動くだけでだらりと弛緩させている。
だが、彼のペニスは未だに剛直を保っていた。
二回目の射精直後にも関わらず、まだまだ出せる、まだまだ出したいとアピールするかのようにひくついている。
『これ……わたしの中に挿れられて、直接精液出されたらどうなるかな……?』
ふとそんな欲求が頭をもたげてきた。
一度意識すると、魔物の私はもうその欲求を止められない。
でも……彼が私の完全に虜になっているかどうかもちょっと気になった。
女の経験が浅そうな彼が、暗殺者の性技を受けたらもう骨抜きになっているはずだが……もはや抵抗する様子はなく、素直に快感を口にするほど堕ちているはずだが……
『ちょっと、試してみようかな……』
拒絶されると面白くないけど、でもこれで彼の方から求めてくれたら、これ以上嬉しいことはない。
拘束を完全に解き、私は彼の前に座って脚を広げて誘う。
「ねーねー♥ わたしと一緒にとろとろになろうよぉ♥ ソレぇ……とろとろのわたしの中に挿れてぇ……♥ とろとろのせーえきぃ、いっぱいいっぱいだしてほしいなぁ♥」
子どものころと同じように、私はおねだりする。
そんな私のおねだりに対して彼は……
「あ、ああ……」
肯定なのかただのうめき声なのか何なのか分からない声をあげる。
だが、自由に動く彼の身体は、はっきりとした意思を持って私の身体に腕を回して抱きしめ、私を組み敷いた。
『ああ、彼が……わたしを求めてくれている……!』
嬉しさに、これからの交わりの期待に胸が激しく踊る。
彼がゆっくりと腰を進めてきた。
彼の分身がとろとろの私の身体の中に入ってくる。
「あああっ! 入ってきている! あんっ、ああんっ、すごく気持ちいいのぉ!!」
下腹部からの圧迫感に私は歓喜の声をあげる。
メジストによる人外の挿入も気持ちよかったが、彼のペニスの挿入も勝るとも劣らない快感だった。
まるで今まで失っていた何かが満たされるような……そんな感じがする。
彼に挿れられただけで達してしまいそうだ。
一方彼は……彼も挿入だけでどうやら射精しそうになっているらしい。
腰を動かすことなく、歯を食いしばっている。
「ねーねー、動いてよぉ……一緒に、気持ちよくなろうよ〜」
彼の下で私は腰を動かす。
「ダメだ……動いたらまた出てしまう……!」
「いいよ……何度でも出して……わたしが全部、受け止めてあげるから……」
まるでその言葉で縛り付けられていた呪いが解けたかのように、彼は振り出した。
魔物相手に交わって射精することを嫌がっていた訳じゃなかったようだ。
だがそのことに安堵している余裕はない。
彼の腰使いはややぎこちなさこそあるものの、ぐいぐいと私の中を抉って掻き回す動きは私に嬌声をあげさせた。
男の方も腰を動かせば、その快感が返ってくる。
女性経験の浅い男が腰を動かすのは自滅行為とも言えた。
「くっ、がはぁ!」
なすすべもなく、彼は身体を震わせて白濁液を私の体内にぶちまけた。
彼の射精を私の粘液の身体は敏感に感じ取る。
「あはぁ!出てるっ! ああ……あぁん、すごい!」
達することはなかったが、それでも体内での射精は心地よかった。
精液が私の体内に拡散し、ふよふよとみぞおちのあたりに浮かんでいる。
「ああ……」
私は思わず声を漏らす。
今まで何度か無理やり膣内に射精されたことがあったが、あの時は子を孕むのではないかと不安になったものだった。
だが、今は違う。
愛しい人の精液をこの身体で受け止められるなんて、なんて気持ちいい、なんて素敵……そう思っていた。
ガクッ……
射精した彼が脱力して私の上に倒れ込んできた。
そんな彼に私は耳元で囁いて訊ねる。
「えへへ……ねーねー、気持ちよかった?」
「あ、ああ……」
私に身体をあずけたまま、彼は答えた。
だが、そのまま動く様子がない。
腰をゆすって私は動くことを要求する。
「ねーねー、また動いてよ〜」
「む、無理だ……体中の、力が抜け……ちゃって……」
「あれ? もう? しょーがないなぁ……」
私は身体をねじって彼の下から抜け出し、逆に押し倒す。
「じゃあ、わたしが動くね。」
前後にくいくいと私は腰をくねらせた。
肉棒がとろとろの私の身体の中を切るようにして掻き回してくる。
その快感に私は悶え、声をあげた。
「んんっ! 気持ち……ふあっ! あなたのがわたしの中をかき乱しているのぉ!」
彼も気持ちいいらしく、私の下で「すごい、すごい」とうわごとのように言っている。
魔物の快楽に、私の身体に虜になった彼がそこにいた。
「すごいでしょう? これも……あんっ!訓練のたまものなのよ? うふふ、じゃあ、これはどうかな?」
腰の動きを変えてみる。
前後の運動から腰を回転させて捻るような動きだ。
粘液の身体をよりいっそうかき回されるような感触を私は味わう。
二人の結合部からぐちゅぐちゅと音が響くのが卑猥だ。
「あ……あああ……」
彼が虚ろな嬌声を上げながら結合部を凝視する。
いや、正確にはその「辺り」を凝視していた。
「ん〜?」
彼の目をそんなに捉えて離さない物に興味をひかれ、私は背中を丸めて同じものを見ようとする。
「わぁ……なんか、ひわい〜♪」
思わず私は声を漏らす。
スライムの私の身体は半透明だ。
よって、私の身体の中に挿入されているペニスが私の身体越しに見えるのだ。
彼の肉棒が私のなかで揉みくちゃにされているのが手に取るように分かる。
そのとき、彼の亀頭がぷくっと一回り大きくなったように見えた。
「うああああっ……!」
それと同時に彼が切羽詰った悲鳴をあげる。
「あっ、でるの? んあっ、だしてだして〜♪」
私はぐいっと腰をより押しつけながら、腰をぐるぐると彼の上で回転させる。
もうすでに肉棒が膨らみ切っていたため、射精までは間がなかった。
どくっ、どくん……
彼が何度目か分からない射精をする。
私の腰の動きに合わせて動かされながらペニスが私の体の中で白いマグマを吹き上げてまき散らしているのが、私にも彼にもよく見える。
「や、やめ……! 出ている最中に……くうぅっ!」
「でも気持ちいーんでしょう? 萎えないからわたしもあなたも気持ちいいしぃ……んっ、あん♪」
私の言葉通り、射精の最中も刺激されていたペニスは萎えることを許されず、剛直を保ち続けていた。
この分ならまだまだ出せそうだ。
思わず私は舌なめずりをする。
「ほらほら、連続でイかせちゃうわよ♪」
また私は腰の動きを変えた。
今度は上下運動……彼の身体の上で自分の腰を弾ませる。
腰を浮かせて彼の肉棒がもう少しで抜けるというところまで持ち上げた。
そこから一転、私は腰を打ち下ろす。
彼の肉棒が私の粘液の身体を掻き分けて入ってくる……
「あっ!?」
突然身体に甘くも激しい快感の衝撃が走り、私は身体をすくめた。
そのままその快感が全身で爆発する。
「あっ、あっ! ふああああああ!」
身体を弓なりに反らせて私は痙攣した。
口からは狂おしい嬌声が漏れる。
『な、何っ!? わたし……イッちゃってる!?』
急な身体の反応に私は戸惑う。
でもこの感覚は間違いなく、メジストに何度も味わわされた絶頂の味だ。
いや、それ以上の感覚だった。
「くぅ! し、しめつけてきて……うわああああ!」
すぐその後で、射精したばかりだと言うのに彼がまた射精した。
勢い良く吐き出された精液は粘液の海を突き進み、コアにぶつかる……
「ひっ!? あんっ! あああああっ!」
コアに精液がかかった瞬間、私はまたイッてしまった。
ぶるぶると私の身体はふるえてから、ぐにゃりと彼の胸板の上に崩れおちる。
気持ちよすぎて、とろとろの頭が更にとろけて何も考えられない……いや、考えることは今の快楽についてだけだ。
ぼーっと考えているうちにひとつの結論にたどり着く。
『そうか……ダークスライムって、コアが一番の弱点なんだ……クリトリスと同じように……』
改めて自分が人間ではなく、ダークスライムであることを実感した。
失ったものもあるかもしれないが、得られたものも大きいはずだ。
得られたもので一番大きなものは、今私の下でとろけた顔をしている彼……そして、他に手に入れたものは、人間の身体ではできない技……
考えただけで身体がそれを試すことを命じて燃え上がった。
自分がどのように身体の粘液を動かすことができるか試してみる。
『まずは、メジストのマネをして……』
メジストによる全身愛撫の快感を思い出しながら、私は大地に広がっているスライムで彼の身体を包み込んだ。
それをじゅるじゅると、粘液を波打たせるようにして彼を愛撫してみる。
「あっ、あっ……!」
それだけで彼は引き込まれるような声を上げるが、でもどこか物足りなそうだ。
やはり男の性感帯はペニスに集中しているみたいだ。
『ならば……』
にちゅ……
絡み込むようにペニスの表面に吸い付き、甘く押し潰す。
亀頭のくびれを粘液で捕らえ、じゅぷじゅぷとヒダで執拗に擦り立てる。
彼の反応が激しくなった。
「あっ、うあっ! そ、そんなにされたら! くぅ!」
身体をよじりながら彼は嬌声を上げる。
一方、私の口からも嬌声が漏れる。
腰を動かしていないのに、粘液と彼のペニスがぬるぬると擦れあうのが気持ちいい。
「はぁっ、はぁ……んぅ、気持ちいーい? また出ちゃいそう? いいよ……あんっ♪ またいっぱいだして……」
膣を締め付けるように、彼のペニスにまとわりついているスライムを動かす。
スライムはまるで蛇が身体を擦りつけながら締め上げるかのように、とくにカリ首と亀頭を刺激するように動いた。
「ま、また出る……くぅ!」
腰を動かすことなく、ぬるぬるとスライムに愛撫されただけで、彼は達してしまった。
また私の体内に白濁液がぶちまけられる。
「わたし、腰を動かさなかったよ? なのにだしちゃうなんて……えへへ、そんなに気持ちよかったの?」
「あ、あう……」
バツが悪そうに彼がくちびるを噛む。
そんな様子の彼を見たら、悪戯心が私の中に浮かび上がってきた。
彼の顔に自分の顔をずいと近づけて訊ねる。
「ねーねー、今のダークスライムの能力とぉ……わたしの術を最大限に使ったらどうなるかなぁ……?」
彼の顔に恐怖の影が差す。
でも、本当に怖がっている顔ではない。
どこか期待をしている、物欲しそうな顔……メジストに気持ちよくされていたとき、私もこんな顔をしていたはずだ。
「じゃあ、いくよ……一緒に、気持ちよくなろう……んっ、あんっ」
まずゆるやかに私は腰を上下に弾ませて彼の肉棒を刺激した。
それと同時にスライムをぐじゅぐじゅと四方からペニスを押し包むように絡みつけ、彼のペニスをしごき抜く。
すぐに彼が音を上げた。
「や、やめ……そんなに動かないでくれっ……!」
「どーして? ひあっ……また、すぐに……んぅう、イッちゃう? もうちょっとだけ……あんっ、ガマンしてぇ! 一緒にイこうよぉ……!」
腰の動きを止めずに私は言う。
彼のペニスが私の粘液を掻き分けながら体内を突き上げてくる。
突き上げる衝撃は粘液越しに私のコアに伝わり、私を悶えさせた。
彼も歯を食いしばって我慢してくれている。
その表情が可愛らしくて、私に悪戯心が湧いてくる。
「んふふ……」
彼の顔を両手で抑え、くちびるを奪った。
そのまま舌を侵入させ、彼の舌を蹂躙する。
歯を食いしばれなくなったらどうするのだろうか?
「ぐっ、んぐっ……!」
彼の身体が堅くなり、歯を食いしばる代わりに体中に力をいれたのが分かった。
『ああ、頑張ってくれるんだ……♪』
嬉しくて私は腰をくねらせ、彼に打ち付ける。
私が動くたびに、くぐもった声が私と彼の口から漏れ、結合部はびちゃびちゃと卑猥な水音とも破裂音ともつかない音が響いた。
彼は確かに頑張ってくれている。
だが、閨房術で鍛えられた腰の動きと魔物の身体による攻めはやはり彼には強すぎたようだった。
「も、もう本当に……!」
彼の声がいよいよ切羽詰ってきた。
私はもう少しこの感覚を味わいたいが、もう限界だろう。
つながっている感覚より、今は二人同時に絶頂して同じ感覚を共有したい。
「いいよ、一緒に……イこう!」
そう言いながら私はぐりぐりとコアを彼の亀頭に押し付けた。
ちょっと突かれただけでも、精液をかけられただけでも絶頂に達してしまうコア。
そんなものを愛しい男の大事なところにこすりつけて耐えられるはずがない。
「あっ、うあああっ! イク、イクぅうう!!」
私の身体がびくびくと痙攣する。
いや、痙攣しているだけじゃない。
身体の中で粘液が激しく流動し、暴れまわっている。
コアから弾ける刺激がスライムの流れに乗って全身に回っているかのようだ。
外からでは分からないだろうが、頭も、胸も、お腹も、太腿も、体中のどこもかしこも中で、とろとろなスライムがぎゅるぎゅると動き回って快感が爆発していた。
もちろん、スライムは股間でも流動している。
当然、ぎりぎりまで追い詰められていたペニスはその刺激に晒され、爆発した。
「がはっ! うああっ!」
彼の腰が跳ね上がり、私の体内に白濁液をまき散らした。
絶頂して流動している粘液は、彼の精液を攪拌する。
「んああああっ! すごいぃいっ! あなたで……いっぱいにぃ! ふあああんっ!」
彼の精液がまるで身体の隅々まで行き渡たって染み込み、肉一片、血の一滴まで満ち足りる気分だった。(もっとも、ダークスライムには肉も血もないけど)
私の身体から絶頂の爆発が過ぎ去ったころ、彼の狂おしいほどの射精も止んだ。
ぐったりと彼の身体が弛緩し、静かになる。
「ありゃりゃ、気絶しちゃったかな?」
一瞬、死んでしまったのかとひやりとしたが、彼の胸は上下に動いており、彼の鼓動は粘液の身体に響いてくる。
ほっとした私は、疲れはてて意識を失った彼の顔をそっと撫でた。
「えへへ、もう骨抜き……とろとろだね♪ 私と一緒だね……ねーねー、これからはずっと一緒だよ……今まで離れていた分、ずっと……」
宗教国家 レスカティエ教国は闇に堕ちた。
いや、堕ちたと言うより、生まれ変わったという言い方の方が良いのかもしれない。
レスカティエ教国は煌びやかであったが、その光の裏で貧民や勇者、そして私たちのような暗殺者の苦しみは黙殺されていた。
だが、それが生まれ変わった。
もうここには苦しみも悲しみも、人としてのしがらみもない。
ただ、とろとろにとろけた快楽があるだけだ。
そして、レスカティエ教国と同じように、私も生まれ変わった。
凍った心も身体もとろとろに融けている存在に……
そして私は、人間のままでは手に入らなかった彼と共に、とろとろに融けて生まれ変わった私自身とレスカティエを愉しむのであった。
12/05/03 13:31更新 / 三鯖アキラ(旧:沈黙の天使)
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