読切小説
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茶臼
ここは、とある田舎街にあるちょっと大きなホテル【福来ホテル かみおりの宿】……
そのホテルの住み込み従業員に当てられた部屋で稲荷の琴葉は『準備』をしていた。
彼女には鈴木 大地という恋人がいるのだが、彼はここから少し離れた都会に住んでいてちょっとした遠距離恋愛だ。
二人は二週間に一度のペースで琴葉が働くホテルか、大地のアパートで過ごす。
明日は琴葉が大地のアパートを訪ねる日だ。
今、彼女はその準備をしていた。
ふりふりと揺れる二本の狐の尻尾が彼女の機嫌の良さを表している。
「なんや、今から楽しみでしゃあないって感じやなぁ」
そんな彼女に後ろから声をかける者がいた。
琴葉が振り返ると部屋の入口で壁にもたれている、五本の尾を持つ稲荷がいた。
琴葉の母親、美琴である。
「まぁ、夜の方も楽しんでおるみたいやしね」
突然の母親の言葉に美琴は顔を赤くした。
「ちょ……かか様、急に何を言うん? なんでそないに思うん?」
「肌の様子とかを見て…」
母親の答えに琴葉の顔がさらに朱に染めた。
もう、と言って琴葉は顔を伏せて準備を続ける。
「そやけどねぇ、琴葉。うち、心配なんやわぁ」
準備をしていた琴葉は手を止め、美琴の方を見た。
今の琴葉と大地の関係に母親はなにか心配事があるのだろうか……
「琴葉、エッチを大地に任せきりにしてへん? ずっと受身なのとちゃう?」
なんの話かと思えば引き続き艶事の話だったので、思わず琴葉は脱力した。
しかし、美琴の考えてみれば指摘通りだ。
前戯の時は手で大地を愛撫したりはするが、それ以降は常に大地に任せている気がする。
「なんでそないに思うん?」
「図星やったか。自慰も恥ずかしがる琴葉さかいに、そないなことやないかと思てたんやけど……」
母親だけあって琴葉の性格も理解し、そして現状も見ていないのに見抜いていた。
「せやかて、うちはどないすれば……」
琴葉は、色事に興味はあるが恥ずかしい気持ちが先行してしまう。
加えて今まで生きてきた時間の大半を母の美琴と二人で静かに山奥で過ごしていたため、性の知識も稲荷にしては少し疎いところがあった。
戸惑ったように訊ねる琴葉に美琴はにこりと笑って答える。
「そやね……まずは、上になってみや。大地くん、きっと喜びはるよ?」
「えっ……」
再び琴葉の顔が赤くなり、狐の耳がぴこぴこと動く。
上になる……つまり騎乗位などのことだろう。
知識はある。
だが美琴の指摘通り、自慰をするのも恥ずかしがったりする琴葉には、自分が大地にまたがるという選択肢は頭になかった。
『き、気持ちいいんやろうか…?』
興味はある。
だが……
「せやかて、どないに動いたらええか分からへんし……」
「仕方ないなぁ、そないな琴葉に稲荷の性技の秘伝書を貸しますぇ」
そう言って美琴は勢い良く手を差し出す。
その手には一冊の書……
「いや、かか様……そらどないに見たってホテルにあった女性誌やない……」
確か人間の女性も読めるもので、成人指定されていないソフトな雑誌である。
古いものなので、処分されるはずだったのだが…
「ええから持っていきよし。きっと役に立つわ。ほな、うちは仕事が残っとるさかいに、もう行くわ」
琴葉に雑誌を持たせ、美琴は部屋から出ていく。
しばらく雑誌を手に持って呆然としていた琴葉だったが、やがてそっと、その雑誌を荷物の中に一緒に入れた。






翌日の午後三時ごろ、琴葉は大地のアパートに到着していた。
合鍵を使って部屋に入る。
大地は仕事中で家にはいなかった。
ちなみに大地はエコロジー関係の小さい会社『Re nature』という会社で、新商品開発部門で働いている。
自然環境にこだわる大地の性格を表しているかのように、大地の部屋はまぁまぁ綺麗に掃除されていた。
あるいは、琴葉が来ることを意識していたのかもしれない。
「なんや、掃除とか手伝ったろうかと思っておったのに」
これでは、夕飯の準備と洗濯機にあったものを干して畳む以外に特にやることはない。
それも済ませてしまうといよいよやることがなくなってしまった。
時刻はまだ午後の五時……大地はまだ帰ってこないだろう。
何かひまつぶしのものはないかと琴葉は大地の部屋を見渡す。
大地の部屋はどこか教授の部屋を思わせる(もっとも、琴葉は大学に行ったことがないのでイメージだけなのだが)
そして自然環境に携わる仕事に就いているからか、大地の部屋には無駄なものがあまり置かれていなかった。
そのため、いくつか目を引くものがある。
一つは狭い部屋にどんと置かれている本棚だ。
そこには自然環境関係と数学の本や雑誌、そして会社で使うものらしいファイルが並べられている。
一つは2m程もある観葉植物だ。
もう一つは、机の上に飾られている、琴葉と大地のツーショット写真だ。
しばらく琴葉はそれを見て和んでいたが、やがてそれにも飽きた。
テレビも面白いものはやっていない。
『なんかすることないかな……せや!』
そのとき、琴葉は母親から渡された雑誌のことを思い出した。
さっそく鞄の中から取り出し、ソファに座って広げる。
「………!?」
思わず雑誌をすぐに閉じてしまう。
適当に開いたページがちょうど体位紹介のページだった。
そこには騎乗位や後背位、側位など、琴葉が経験したことのない体位がイラスト付きで紹介されていた。
簡単な模式図ではあるが、それでも生々しい。
また、琴葉が馴染んでいる正上位の紹介もあったが、応用編として女性が片脚を持ってもらって大胆に開脚するというものが紹介されていた。
『あ、あないなの……恥ずかしくてでけへん!』
恥ずかしさのあまり両手で顔を押さえて琴葉は身体と尾をくねらせる。
しかし、恥ずかしいと思うと同時に、他の女性はこんなことをどんなことをやっているのかという興味が頭をもたげてきた。
「………む、うぅ……」
目次を開いて体位紹介のページを開く。
『まずは、上になってみや』
母親の言葉を思い出し、女性が上になっている体位を見てみる。
『騎乗位と座位……』
二つ該当する体位があった。
とりあえずよく聞く騎乗位の説明を見てみる。
【騎乗位は女性が主導権を握れる代表的なポジションです。むしろ人によっては『男を犯せるポジション』とも言えるでしょう。女性が主体的に気持ちよくなれる体位です】
『う、う〜ん……せやかて、上手く動けなくて自分も大地も気持ちよくなかったらどないしよう?』
雑誌を広げたまま琴葉は首をかしげる。
『一人で気持ちよくなるのは悪い気もするし……やっぱり、恥ずかしいし……』
かと言ってそれを言い訳にして逃げるのも、大地に悪い気がした。
【詳しくは52ページに】
無意識のうちにごくりと喉を鳴らし、琴葉は52ページを開く。
そこには琴葉が抱いた疑問の答えが書かれていた。
【恥ずかしいと思う人は逆に考えてみましょう。 男の人だってあなたと同じように恥ずかしいところを見せています】
『あ〜……うん、確かにそやなぁ……』
なんか上手く丸め込まれている気もするが、間違ってはいない。
『ほんで、大地の恥ずかしい姿を見とるのはうちだけ、うちの恥ずかしい姿を見とるのは大地だけやしなぁ……』
それでも、いやらしい女と見られないだろうか……そう不安に思った琴葉の脳裏に、ふと初めて大地と身体を重ねた時の、大地の言葉がよぎった。
『いくらでも乱れていいよ。その姿を見れるのは、俺だけだからな』
あの時、大地はそう言った。
『う、うん……大地ならきっと大丈夫や……』
琴葉の心の中にふつふつと勇気と自信が湧いてきた。
さらに雑誌を読み進める。
【動き方は、確かに熟練しているとかそう言う違いはあるかもしれません。が、誰にだって初めてはあります。騎乗位に挑戦していないだけで、あなたにも彼にもセックスそのものが初めてだったという時があったはず】
『う、う〜……痛いところをついて来はるな……』
だが、言われてみればそうだ。
『つまるところ、うちは大地に任せきりにしすぎたんやな……よし! 今日は気張ってうちが上になってみるっ!』
一人で琴葉は頷き、決意を込めて拳を握る。
と、そのとき。
「ただいまぁ。 琴葉、来てくれたか!」
大地が帰ってきた。
はっと時計を見てみるといつの間にか七時を回っており、外も暗くなっている。
それもともかく今、琴葉の膝の上には騎乗位のページが紹介されている女性誌が開かれていた。
恥ずかしさを押して騎乗位に挑戦することを決意した琴葉だったが、さすがにこれを読んでいたのを見られるのは恥ずかしい。
「う、うわあああっ!? 痛っ!?」
パニックに陥った琴葉は立ち上がり、その拍子に脚をテーブルにぶつけてしまった。
「琴葉? 大丈夫か?」
玄関から上がった大地が琴葉に近寄り、かがみ込む。
そしてテーブルに打ち付けて紅くなった脚を撫でた。
「あ、うん……大丈夫や。ありがとう」
良かったと微笑む大地の視点が、ふと別のところに注がれる。
琴葉もそちらに視点を転じると、先程まで自分が読んでいた雑誌が落ちていた。
カッと琴葉の顔に熱がのぼる。
「こ、これはちゃうねん! これは、その……かか様が持たせてくれた雑誌で、うちが買ったわけじゃ……いや、確かにうちは読んだけど……」
訊かれてもいないのに琴葉は言い訳めいたことを口走る。
大地はそれを、目を丸くして聞いていた。
「せ、せや! お腹すいてはるやろ? ご飯をすぐ用意するさかいに、待っててな」
そう言って琴葉は逃げるように立ち上がって狭いキッチンに向かった。
「どうしたと言うんだ……」
大地はつぶやいて置き去りにされた雑誌を拾い上げ、ぺらぺらとページをめくって目を通す。
「見ちゃ嫌やーっ!」
大慌てで戻ってきた琴葉が取り上げた。







「んちゅ、はふっ……大地ぃ」
「……琴葉」
夕食時は気まずい雰囲気が漂い、あまり言葉をかわせなかった。
『こないなことになるんやったら、あの雑誌なんか持ってこんほうが良かった!』
そうとすら思ったが、夕食が終わって二人で並んで座って手を繋ぐころには、二人の止まっていた時は動き出していた。
琴葉も大地も互いに求め合い、互いにその気持ちに応える。
付き合いだした頃は大地が言ってくれるまでひたすらもじもじして待っていた琴葉だったが、今では尻尾をすりつけるなどして自分の求めている気持ちを表すことができるようになっていた。
「あっ……」
大地の手が琴葉の衣服にかかった。
ブラに包まれた、小ぶりながらハリのある乳房が表に出る。
だがすぐに大地の手は胸を鷲掴みにしたりはしない。
髪、うなじ、胸元と流れるように手の甲で撫でたり、くちづけを落としたりしてから胸を攻める。
胸を攻める時も優しく、羽毛で触るかのように撫でたり、かと思えば時に大胆に舌で頂を舐め上げたりと変化する。
その優しくも意地の悪い愛撫にいつも琴葉は悶えていた。
下腹部がしびれるような快感が溜まり、琴葉は脚をもじもじさせる。
『こないに気持ちいい愛撫、うちの反応を見て覚えていってくれはったらしいけど……』
快感でモヤがかかっている頭で琴葉は考える。
我慢できなさそうな様子を見て大地が琴葉の下着を下ろし、指を侵入させた。
のけぞって声を上げる。
『この愛撫もすごい気持ちええのやけど……』
ぐねぐねと、自分の下腹部内の柔肉を泳ぐ指の感触にシーツを掴んで身体をよじりながら琴葉は思う。
『こないにする、と言う選択肢が頭の中にありはるのは、過去の女性といろいろシてはったからやろうか……』
ふわふわとした快楽だけを感じていた身体が、ちくりと胸の痛みのようなものを感じる。
それと同時に、下肢から湧き上がっていた快感がひいていった。
「んぅ…?」
大地の方を見てみると、彼は琴葉への愛撫を中断していた。
そして戸惑った表情で琴葉をのぞき込んでいた。
「どうした、琴葉? なんだか難しい顔をしていたけど……もしかして、気持ちよくなかった?」
「う、うぅん。そないなことない……もっと、して欲しい……」
琴葉はそう言うが、大地は腑に落ちない顔をしている。
「何か、考えていることがある?」
まだ付き合ってから月日はそこまで長くないのに、琴葉の状態を大地は見抜く。
「いや………」
ない、と言おうとして琴葉は止めた。
これは自分がしたいことを切り出すいい機会かもしれない。
「あのね、大地?」
琴葉が何か今まで黙っていたことを、勇気を出して言うことを悟ったのだろう。
安心させるかのように大地の腕が琴葉の身体に回される。
やはり口にするのは恥ずかしく琴葉はもじもじしてしまう。
だが、大地はそれでも急かすことなく、優しく撫でながら、琴葉が口を開くのを待っていた。
その優しさに押され、琴葉はやっと口を開いた。
「うち……騎乗位って言うのを、やってみたいんやわ……」
琴葉の言葉を聞いて大地が片眉を掲げた。
その反応を見て琴葉は慌ててフォローする。
「ちゃ、ちゃうねん! うちが急に淫乱になったわけやないんやよ!? せやけど、その……そう! かか様がたまには上になりんさいと言わはったし、さっき読んでいた雑誌にもいろいろ書いてあって、うち……あっ…」
琴葉の言葉が途切れる。
大地が、琴葉の言葉に小さく頷きながら、彼女を落ち着かせようと頭を撫でていた。
「いいよ、しよう。実は俺、今まで琴葉に遠慮させてしまっていたかなと不安になっていたんだ」
「いや、その……」
今まで言わなかったのは遠慮していた訳ではなく、思いつかなかっただけ、またそれを盾に甘えていただけ……だが、それは言わないことにした。
『また大地に甘えて……ほんま、うちは大地に甘えてばかりやなぁ』
思わず苦笑が漏れる。
だが苦笑でも、笑うと舞い上がっていた気持ちが落ち着き、勇気が出てきた。
それを見た大地も軽く笑う。
「ほな大地、仰向けになってくれはる?」
「ああ……」
服を脱ぎながら大地は言われるがまま仰向けになる。
彼の性器はこれからの行為への期待と琴葉への気持ち、そして乱れる琴葉の様子を見ていていきり立っていた。
その様子を見て琴葉はちょっと固まるが、それでも意を決して、膝立ちの姿勢から大地を跨ぐ。
「う、やっぱり……恥ずかしいわ……」
大地に跨ったまま琴葉は口元を手で被って顔を隠す。
だがいつまでも恥ずかしがっている訳にはいかない。
そっと、腰を下ろしていく。
琴葉の媚粘膜と大地の亀頭が近づき、こすれ合う。
「んっ、ん……!」
それだけで快感が身体に走り、琴葉は声を漏らす。
だがそれ以上腰を下ろそうとしたら、身体が緊張で固くなっているためか痛みが走り、挿れることができない。
勇気は出たが、緊張はまだ拭えていなかった。
固い身体だと大地を受け入れられず、魔物の体でも苦痛に感じた。
「んぁ……ごめんね、大地。すぐに挿れるさかい、もうちょっと待っとってな……くっ、ぎっ……」
焦る琴葉はそう言って強引に剛直を自分の膣内にねじ込もうとする。
だが焦れば焦るほど身体は固くなり、より大地を受け入れることが困難となり、より苦痛が増す。
「琴葉、ストップ。無理しちゃダメだって……」
見かねた大地が琴葉を制止する。
情けなさに琴葉は涙が出てきた。
「わわっ!? 琴葉?」
琴葉の涙を見て大地は慌てた。
「かんにんな、大地……うちが下手くそなばかりに……」
「そんなことないよ。緊張しすぎているだけだよ……」
大地は上体を起こして琴葉の涙を拭い、抱きしめる。
抱きしめられて初めて琴葉は自分が思った以上に身体を固くしていたことに気がついた。
大地の腕の中で少しずつ琴葉は身体から力を抜いていく。
「琴葉、ちょっとだけ俺に任せてもらっていいか?」
琴葉が落ち着いたころを見計らって大地は話しかける。
「え? あ、うん。ええよ……お願いするわ」
「じゃあ……」
そっと大地は琴葉の身体を横たえ、自分が上になる。
いつもの体位だ。
ゆっくりと大地が自分の分身を侵入させてくる。
「あっ、 ふあああっ……」
大地からもたらされる存在感と快感に身体をくねらせながら、琴葉は大地にしがみついて声を上げる。
燃え盛っている炎をさらに掻き立てるように、大地が腰を動かす。
『す、すっごく、気持ちいいっ……! 騎乗位ってこないより気持ちいいんやろうか……?』
快感でモヤのかかった頭で琴葉はかすかに思う。
と、突然、大地の腕が琴葉の背中に回された。
交わりの最後に、互いに密着するために大地がよくやることだが、これはいつもよりちょっと早い。
「んあっ、だ、大地?」
「行くよ、琴葉」
戸惑う琴葉をよそに大地が行動を起こす。
突然、琴葉はふわりと身体が浮いたかに感じた。
「えっ!? あ、あっ!?」
何が起こったかを理解するのに一瞬の時間を要した。
琴葉は大地に抱え上げられ、正座をしている大地の上に繋がったまま座っている体勢になっていた。
大地が脚を動かして伸ばし、上体を倒していく。
そうすると……
「ほら、琴葉。君がやりたがっていた騎乗位だよ」
大地はそう言いながら、姿勢を調節するために腰を上げた。
「あっ!?」
その瞬間、琴葉の口から大きな嬌声が上がる。
「あっ、あっ、あああっ!」
そして短い嬌声を上げながらそのまま大地の方へ倒れ込んだ。
慌てて大地はそれを受け止める。
「くっ、琴葉……もしかして……」
大地の口調は確信めいていたものがあった。
「いやっ! 恥ずかし……!」
恥ずかしさに琴葉は顔を被う。
大地が腰を浮かせた瞬間、ちょうど弱点を下から突き上げられていた。
正上位で既に高められていたことや普段とは異なる快感に、その大地の腰の動きだけで琴葉は絶頂に達してしまったのだった。
「すごかった……下からズンと突き上げられて、気持ちよくて、頭の中が真っ白になって……は、果ててしもたわぁ……」
大地の上でぐったりしながら、琴葉はぽつりぽつりと感想を漏らした。
言ってから琴葉はハッとする。
「ごめんな、うちばっかり果ててしもてたね。今から大地のことも気持ちよくするさかい……え〜っと、どないに動いたら良いんかなぁ……こ、こないかな? んっ、ふあっ……」
身体を起こし、ゆるゆると腰を上げていく。
その感触ですら心地いい。
あまり腰を上げすぎると抜けそうで怖かったので、すぐに下ろす。
「んっ、ああっ!」
「くっ!」
媚粘膜と肉棒が擦れ合い、二人の嬌声が絡まる。
「ん、ふああ……これを、大地が普段腰を振っとるくらい速くすれば、ええのかな……ん、あっ、はああっ!」
ゆさゆさと琴葉が腰を弾ませる。
「琴葉、そんなにされると……うぅっ」
「あ、あんっ!これ? これがいいん?」
大地の反応を見て琴葉が腰の動きを激しくする。
「ちょ、そんなにすると本当にヤバイって……!」
さっきの琴葉の絶頂の際にも危うく道連れにされかけていた大地は、あっという間に追い込まれた。
その様子を、先程果てて余裕がある琴葉は敏感に感じ取る。
「んっ、大地、イキそう……なん? 大地のが、大きく……ならはったよ?」
「ああ、琴葉。ダメだっ、もう……出るっ! ……くっ!」
言葉と共に、大地の我慢に限界が来た。
大地の性器から、重力に逆らって精液が琴葉の膣奥に吐き出される。
「あ、ああ……出てる、大地の精が出てはる……うち、上になって大地をイカせたんやなぁ……ふふふ」
精液を受け止めているのを感じながら、琴葉は恍惚とした表情に笑みを浮かべた。
「どうやった、大地? 初めてさかい、あまり上手くできひんかったけど……」
身体を倒して琴葉は訊ねる。
「あ、ああ。すごく気持ちよかった」
大地の言葉に琴葉は
「せやけど、うちはちょっと疲れたわぁ」
慣れない騎乗位で、さらに自分から激しく動いたためか、琴葉は少し疲れていた。
身体を倒したのも、そのほうが楽だからだ。
「じゃあ、代わろうか……」
「あっ、待って!」
上下入れ替わろうとする大地を、琴葉は両手を突っ張って断る。
「もうちょいうちが上になったままでいたいん……騎乗位で、二人でイッてみたいんやけど……あかん?」
「い、いいけど、疲れているんじゃないの? 大丈夫?」
「ん……こないに、動くのはなんとかなりそうやさかい……ひっ、ふあっ!」
大地に身体をあずけて密着させたまま、琴葉が全身を前後させるようにゆっくり動く。
二人の声が絡まった。
大地が琴葉を抱きしめるようにしがみつく。
「こ、琴葉……これも、いい。締め付けられて……それで、こすれて……くっ」
「ん、ふぁあ……うちも、すごく気持ちええよ。大地に抱きしめられて、くっついて……ああんっ! ん、んちゅう……」
大地に抱きしめられたことによって二人の身体の密着度が高まり、顔も近くなる。
磁石が吸い寄せられるように、互いの唇が重なった。
上から下から、互いに腰を振り合いながら、相手の舌に自分の舌を絡みつかせ、唾液を舐めとり、口内を蹂躙する。
部屋に二人の結合部から響く水音とベッドが軋む音、そしてキスの合間に漏れる荒い吐息が響いた。
「はふっ、ちゅ……あんっ、うふふ……大地、気持ち良さそうにとろけた顔してはる……うちの騎乗位、そないにいいん?」
大地を上から見下ろして琴葉は恍惚とした顔で訊ねる。
訊ねている間も琴葉の腰の動きは止まらない。
先程まで前後だけの動きだったが、いつの間にか琴葉は腰をくねらせる動きを無意識のうちに加えていた。
互いに密着しあっているため動きは素早くないが、その動きは互いを着実に追い詰めていく。
「ああ、すごく気持ちいいよ。琴葉は?」
「うん、気持ちええ……騎乗位ってこないに気持ち良かったんやね、知らへんかったわ……腰が、勝手に動いてまうよ……あっ!? ふあああ!?」
突然、背筋を駆け登った快感に琴葉は声を上げた。
大地の左腕は琴葉を抱きしめていたが、右手がいつの間にか下に降りており、尻尾の根元を撫でていた。
「やっ、あかん! そこは……そこは弱い、さかい……あっ!」
弱点を攻められ、琴葉が身をよじった。
その動きがさらに刺激となって二人の声が絡まり合う。
だが、大地は攻めの手を鈍らせない。
大地の右手が腰を掴んで琴葉の動きを手伝うように動く。
自分の動きにさらに力が加わって快感が増し、琴葉は声を上げた。
「やっ! あああ! 大地! それも、それもええ! 激しくって……ひぐっ! う、あああっ! また、また来はる……!」
絶頂の予感に琴葉は大地にすがりつく。
大地の方も余裕がないようだった。
「琴葉、俺も……イキそうだっ……!」
「ああんっ! 大地、大地ぃ! 一緒に、一緒にぃ! ふっ、くあああああ!」
大地の肩と胸板にしがみつきながら、琴葉が絶頂に達する。
絶頂の際の膣の動きにつられたか、大地も達した。
「んあっ、くっ、はぁんっ、大地も……イッてはる、うちの中に……また、出してはる……あっ、ああ……」
大地の上で身体を絶頂の余韻でびくびく震わせながら、琴葉は膣奥に吐き出される精液を感じて表情をとろけさせていた。







「『対面座位』って言うのも、大地と密着できて気持ち良さそうやわぁ。バックも激しく突かれて気持ち良さそう……せやけど、やっぱり恥ずかしいなぁ……どないしよ? 迷ってまうわ」
「もう次の事を考えているのか」
事が終わり、大地のベッドで少し窮屈ながらも二人並んで寝転んで会話を楽しむ。
今、二人は琴葉が持ってきていた雑誌を一緒に見ていた。
「う〜ん、何やて?『これらの他にも、性交の体位四十八手なるものがあります』? なんや、ぎょうさんあるんやなぁ……」
自分が如何に性に関して知らなかったかを琴葉は思い知った。
しかし、今回の件で興味と勇気が出てきた。
『かか様に、感謝せなあかんなぁ……』
大地に身体と三本の尾を擦りつけながら、琴葉は心の中で思った。
これから、この大事な大地とより楽しく交われることに思いを馳せながら……
11/11/15 19:24更新 / 三鯖アキラ(旧:沈黙の天使)

■作者メッセージ
そんなわけで、ラジオで宣言したとおり、大地×琴葉SSでした。
琴葉、騎乗位に挑戦する!
いかがだったでしょうか?
タイトルは、エロに詳しい方ならピンと来たかもしれませんが、性交体位四十八手で、仰向けになった男性に女性が跨って腰を下ろす女性上位の形の総称らしいのですが、そこから持ってきました。
ちなみに、茶臼=騎乗位って訳ではないようです、にゃへー。
さらにちなむと、琴葉が最後に見せた騎乗位は四十八手では「茶臼のばし」と言うそうです。
男女共に脚を伸ばして挿入する騎乗位ですが……実際はこんな風に上手くいきません(爆)
上手くイッているのはSSだから!
いや〜、SSって便利(殴


お楽しみいただけたでしょうか?
これからも頑張って行くので、どうぞよろしくお願いします。

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