読切小説
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箱物フィギュアの落とし方
部屋に帰ってくるなり彼女は顔を枕にうずめて不貞寝していた。
寝るときはいつも宝箱の中で眠る彼女だが今日は俺の布団でうつ伏せになっていた。

「…何やってんだ。」

「なくした。」

「何を。」

「箱。」

「……箱ぉ!?箱って…お前の…アレ!?」

いろいろ言葉を失ってしまった。
フォローしてあげたいところだが仕事が終わってさっさと風呂にでも入りたい
この心境ではどうフォローしていいかわからなかった。
彼女にとって箱とは住処そのもの。
俺の家で同居しておきながら住処と言うのもおかしな話だが、まあ人形にはそ
れをしまう専用の箱が必要だっていうことなんだろう。
不機嫌な態度も声も全部その住処がなくなってしまったのが原因か。
普段は挑発と誘惑でそれなりに困らせてくる彼女も今日ばかりはご機嫌斜め…
いや、ご機嫌垂直落下コースだった。
あんなにキャアキャア部屋に響いてた甲高い声がこんなに暗いトーンになるの
は結構新鮮だ。
彼女には気の毒だけど。

「いや…だってさ。箱って…俺の部屋に置き去りしてあったあれだろ?なくし
 たってありえないだろ?何か心当たりはないのか?」

「こないださ…家具買い取りショップ行ったじゃん?」

「ああ…防弾ガラスでできたガラスのテーブル売りに行ったな。」

「あの時に昔使ってた宝箱持っていったじゃん。」

「蓋が壊れて使い物にならなくなったって言ってたあのぼろっちいのか。確か
 にまとめて売ったな。」

「それが今ここにあるんだけど。」

「……。」

「……。」

ミミックはうつぶせのままバンバンとベッドの横に置いてあった宝箱の蓋を叩
く。
蓋は叩かれるたびにミシミシと音が鳴り、蝶番がぐらぐらと揺れていた。
紛れもなく売り飛ばしたはずの箱がここにあったのだ。

「あー!もう!なんで売るときに気付かなかったの!アンタしか売ること出来
 ないんだからそれぐらい普通気をつけるでしょ!!」

「お…落ち着け!枕はともかくスタンドは投げない…いたぁ!?…でっ!!」

「バカ!バカ!バーカ!あたしどこで寝たらいいんだよ!」

「だいたい俺が宝箱が壊れてるかどうかなんてわかるわけないだろ?『これも
 売っといて』言ってそれっきりだったじゃないか。それに宝箱の見た目なん
 て気にしないから!」

「気にしない?フツーするでしょ!男の欲望をかき立てないとミミックは生き
 てけないんだぞ!」

「んなこと知るか!おれはミミックじゃねえ!!」

ああもう全ての歯を牙立てて。
布団から飛び起きたミミックはこちらに不機嫌な姿を見せた。
激しい家具の弾幕に見え隠れする相も変わらず愛くるしい姿。
これが宝箱から出てくるんだから男は幸せだよな。
今のこの姿はとてもじゃないが見せられないけど。

「お前さ…どうして服着てないの?」

「だーかーらー!例のあの箱に全部入れっぱなしなんだよ!」

「…ああなるほど。ならいつも来てるあの服着ればいいじゃないか。ほらあの
 スケスケの変な服。」

「変なっていうな!あのデザインすっごく気にいってるんだぞ!男受け良いん
 だぞ!そもそも昨日あれにぶっかけまくったのはお前じゃんかよう…。」

「…ああ…うん。なんかごめん。」

あのシースルーで出来た衣装はまだ幼さを残す彼女にすごく似合っている。
なんと言うか…あの衣装があってこそミミックのセクシーさとかわいらしさを
両立しているのだと思う。
そんな余裕たっぷりな誘い受けの達人がここまでただの女の子になるとは。
今の彼女をみると「なに勝手に中出ししてんだよバカ!」とか言わんばかり
の不機嫌な少女でしかない。
だんだんと落ち込んでいく彼女に平謝りをすると彼女は再び布団にもぐった。
ため息をひとつついているあたりもう本当に参っているのだろう。
男の前ならいつでもきらびやかな彼女がため息をついているのだから。

「でも箱の予備なら部屋探せばあるでしょ。服も買えばいいし。」

「マジで!?さっすがぁ〜♪やっぱりお兄さんは最高だねっ☆えらいえら
い☆」

「確かここに…よっこいせ。」

「ねえ段ボール箱とか舐めてんでしょ?」

「そんなこと言ったって他に…クーラーボックスは小さすぎるし、金庫だと
 出入り不能だし。入ったら入ったでなんか死体遺棄みたいで個人的に嫌だし。」

「勝手に殺すなよう。」

「だからやっぱり段ボールが一番現実味があると思う…あ、いや!宝箱だよね!
 目覚まし時計から手を離してください!お願いします!」

いけない。
これ以上怒らせたら今度は電気スタンドどころか箪笥とかラジカセとか投げて
来そうだ。

「あ!そうだ!箱から箱へ瞬間移動すればいいんじゃないか?それで持って帰
 れば…」

「もう試した。蓋が重くて開かなかったからもう無理だと思った。狭くて暗く
 て怖いのはもういい。」

「お前いつも自分で使ってるじゃねーか。」

「あれはほんのちょっとだけ隙間空けて寝てるの。それに簡単に開けられ
 た方が罠に引っ掛かりやすいでしょ。もっと頭使いなよ。」

「なるほどな。つまり簡単に開けられちゃうのが好きなんだな。おもに
 股の間とか…」

大型コンポを彼女が両手に掴んだのでその場ですぐ土下座して謝った。
というかお前それ持ち上げられんのか。
それ全体で13キロぐらいあったと思ったぞ。

「ともかく、あたしは新しい箱が欲しいの。」

「ほら、新しいの。」

「その段ボールはもうしまって。新しい箱が見つかるまでベッドの上で寝る
 から。」

「ちょっ…俺のベッドだぞ。」

「あんたの新しいベッドならそこにあるじゃない。」

ミミックの目線が俺の手元に映る。
顎で使うようにそれを使えと指示した。

「屋内で段ボールはちょっと…」

「えー?なーにー?だってそれをあたしに使えっていったんでしょ?かよわい
 女の子のミミックちゃんが使っても大丈夫な代物なんでしょ?じゃあお兄さ
 んが使っても別に問題ないよねー☆」

「いや問題大アリだよ!」

「そうなの?でもでもーあたし今日着る服もないしー…住処もないしー…。」

「ぐっ…!」

「あーあだれのせいかなー。私が今日一日全裸で過ごして寒い思いをしたのは
 誰のせいだっけかなー?」

意地悪な笑みを浮かべ布団をばふっと一叩きする。
間違えて新しい自分の住処を渡したお前にも少しは非があるんだぞ。

「待て、見た目で判断してはだめだ。段ボールは梱包から潜入、果ては住居に
 も使えるんだ。ためしに入ってみたらどうだ?」

「はあ!?」

声がでかい。本気で嫌がっているようだ。
プライドと言うか…最低限の身の安全を保障したいといわんばかりの悲しみを
感じ取れる。
だが個人的には見てみたかったのだ。
ミミックが全裸で段ボールに入っているところを。
理由はただ単に可愛いとかそれだけじゃない。
普段俺はミミックに良いように使われている。
もともと女性に頭が上がらない性質だが、今日のミミックは弱気な姿を俺の目
の前でさらしていた。
こんな自分の人生において最初で最後のアタックチャンスを見逃すわけにはいかない。
普段から彼女へのうっ憤がたまっているわけじゃない。
良いようにこき使われたり、養っているのにエッチしたい時に限って寝た振り
ばっかしている彼女への腹いせじゃない。
事あるごとに舐め切った発言ばかりするその年相応の生意気な性格に嫌気がさ
したわけではない。
ただ今日というレアケースを身に刻んでおくレベルにまで楽しまなくてはこの
先きっと自分は彼女に反論一つできなくなってしまうだろうという思惑がある
からだ。
…ホントだぞ?

「ほれほれお嬢さん。住処はこっちぞ?」

「わたし…寒いの嫌だから…ね?」

えへっ☆と笑って見せる。
だがもう遅いです。
雨天決行よ!雨降ってないけど!
段ボールの中に部屋にあった厚手のタオルを絨毯のように敷き詰め、ぽんぽん
と箱の側面をたたいた。
完全な挑発だ。

「むむむ…鬼畜…おにいさんの鬼畜ー!!」

「普段こき使ってくれてるからなー!たまには良いよなー!?」

「覚えてろよ…ばかー!!」

あらん限りの声量で罵声を浴びせられたがなんの事はない。
むしろ気持ちの良い限りだった。
加虐心に駆られるというのはこういうことを言うんだろう。
嫌がるミミックを担ぎあげ、藁にすがるように掴んだ毛布をその手から取り上
げる。
力なく殴りかかってくる彼女を優越感と言うスーパーアーマーで受け止め
ながら彼女を段ボールに放り込む。
こらーおろせー!って聞こえたような…聞こえてないような…いや、きこえんなあ!?
全裸の彼女は段ボールに入るなりすぐさまその体を箱の縁まで沈めた。

「うう…地味に中敷の毛布と段ボールのあったかさが居心地良くてムカツク。」

「……なんか絵になるな。」

「はあ!?」

怒り全開だ。
こごえながら全裸で段ボールの中で泣きそうな顔をしている少女。
それでも懸命に自らを誇示する少女。
ああ、あれだ。と脳内ですぐさまに合点があった。

「なんか捨て猫みたい。」

「にゃろー!」

なんだろうすごくかわいそうに見えてきた。
その愛くるしい素敵なシルエットが武骨な段ボールと言う要素に合わさり、反
抗的な態度が様々な心の内側をくすぐりまわす。
その姿はまさに捨て猫。
弱々しい姿に見えつつたくましい本性が見え隠れするあの捨て猫だ。
べつにミミックは捨てられているわけじゃないが。

「ほら…」

「憐れんだ目をしながらお皿にミルクを注ぐなバカー!!そして捨て猫相手に
 ミルク出すなら少しあっためないとだめなんだぞー!!」

「はっ…!?俺としたことが…。すまん。」

「そう思ってるならさっさとここから出せ!」

「こっちのミルクが良かったんだな…。」

「わかってないし!!」

寒い中まだ風呂にも入っていないが俺はズボンを脱ぎ捨てた。
正直寒いが体の内側はもう温まっているはずだ。
だって全裸の少女がいるんだから。
でも建前は寒さを共有するどうたらこうたらってことにしておこう。

「いや!それは違うぞミミックちゃん!いいか?捨て猫って言うのは愛情をも
 って接してやらなくてはならないんだ!」

「はい!?」

「たとえ後でどんなにつっけんどんな態度をされようとも飼い主は愛情を与え
 てやらなくてはならないんだ。責務とかそういうのではない!これは生物と
 しては当たり前のことなんだっ!相互理解と言う奴なのだよぉ!」

「ようするにえっちさせろってことでしょ。」

「…はい。」

「もう…わがままなんだから…お兄さんは。いいよ、もう観念したから好きに
 していいよ。その代わりちゃんと明日は箱を探してよね。」

「わかった。約束する。だから箱にうずくまらないでくれ。手出しできん。」

姿勢をかがめ段ボール箱にすっぽりと収まったミミック。
さしずめこのまま輸送できそうな感じだ。

「はーいじゃあ箱から出しますよー」

「あひっ!?」

「…何今の声?」

「ちょ、ちょっと!くすぐったいな!変なところ触らないでよ!」

「……」

ためしに脇からアバラにかけて人差し指でツツーっとなぞってみる。
顔がぷるぷるとひきつって即座に笑い声に変わりそうになる。
が、堪える。
面白いな。こんなのがデパートのバラエティコーナーとかにあった気がする。

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!?」

「おっほっほっほなんぞこれなんぞこれ。」

「遊ぶな!人の体をもてあそぶなぁ!」

そういいつつ頑なに箱から出てこない。
ミミックはその姿勢のまま俺の腕を掴んだ。
だが掴む力は強かった。
離すまいという力。
弱々しい彼女からは思いもよらないほどの力だった。
時として、人間は他人が怒っていることに気づかないことがある。
今回の出来事は良い例だと思う。
彼女は怒っていたのだ。
表面上からは見えないところで適度に相手をしながらもミミックは普段こき使
っているこの男のはたから見れば些細な反撃に。
ミミックは、子供らしい子供なりの理由で、怒っていた。

「お兄さん…調子に乗りすぎちゃったね…もう許さないよ!」

「悪かった悪かったから。あははぁ。」

半分笑いながらの謝罪。
これがいけなかったんだと思う。
本気でキレてしまったようだ。

「ゆ…許さないんだからぁーー!!オラー!!」

今日何度目になるだろうか。
再び甲高い声で大きな声が部屋に響く。
しかしそれは悲鳴ではなく、怒号。
相変わらずキュートな声だがドスが効いている。
普段の振る舞いからは想像できない声に少しビビってしまった。
動揺して身をたじろいだその刹那。
およそ信じられない力でミミックは俺の手を引き段ボールの中へ引っ張り込んだ。

「おあっ!?せ、狭い!?」

「必殺、ミミックちゃん流男の子収納術。完成です。」

「ってただ単純に俺が段ボールに入ってお前が箱から出ただけじゃないか。
 この一人分のスペースでそれをやったのはすごいけど。」

「それだけじゃないよーおにいさんっ☆」

いつものトーンにでしゃべっているが、やっぱり怒っているようだ。
どうやら箱に人間を引っ張りいれるときだけはすごい力が発揮されるらしい。
とんでもなく限定的な能力だ。
それだけならまだよかった。
いつの間にか服は脱がされ、来ていたシャツは俺の両手に結び目つきで巻きつ
けられている。
つまり…自分が全裸で拘束されてしまったのだ。

「いっ…いつの間に!?寒い!!」

「お兄さんは一度全裸になって段ボールに詰められて私の気持ちを確認した方
 が良いと思います。うんうん。」

「俺はお前と違って人間でちゃんと風邪ひくからあんまりこういうことしたくない。」

「へえ〜?風邪引かなければ良いんだね?わかったー☆」

張り付いた笑顔でミミックは段ボールに再び入ってきた。
狭い箱の中で自分の体をまたぎそのまま腰を落とす。
対面座位のような形になり厚紙の箱は許容を超え少し膨らんだ。

「なっ…何して…っ!?」

「え?風邪引かないように。」

「ぐっ…駄目だ。足ががっちりハマって抜けない。」

ジタバタともがく。
駄目だどんなに暴れてもミミックが小刻みに揺れるだけだ。
当の本人は勝ち誇った顔してるし。

「…お兄さんの弱点は…ここだよねー☆ミミック知ってるよ♪」

彼女の頭が耳元に近づいていく。
体は密着し、余すことなく抱き合う。
彼女の温かみを感じた時同時に寒気が走った。

「ふー…」

「ひっ!?」

「あはっ…どう?息吹きかけられちゃうのいいでしょ?」

「ぐぅ…なんてこった。手も足も出ない。」

ミミックの手が背中に回り背中を指先でこちょこちょとくすぐる。
むずがゆさに手を伸ばしたいが伸ばせない。
体を動かそうにも動かせない。
そんな心を察してかミミックはますますいじらしい笑顔になっていく。

「くそう!ハメ技なんて卑怯だ!」

「ハメ技なんかじゃないし。ハメ技って言うのは麻痺させて永久に殴り続ける
 ことを言うんだし。」

「大してかわんねーよ!麻痺状態がバインド状態に変わっただけだ!」

「んんーお兄さんなんだか可愛い♪やっぱりお兄さんはSっ気よりもMっ気が
 あったほうが可愛いよ☆」

ミミックが唇を耳に触れながら徐々に徐々に胸元へと下げて行く。
心地よい柔らかさが感じる神経をついばんでいった。

「じゃあ…しちゃうね…んっ…ちゅっ…ちゅ…」

胸に口づけ、ちゅっという音がすると体が震えた。
甘えた時の彼女の可愛さに何度籠絡されただろう。
そこが彼女のいいところだが、このままだとミミックの言うとおりになってし
まう。
Mっ気がどうこうと言うのは自分でもそこそこ理解しているが、今日はあそこ
までミミックを追い詰めたこともある。
このチャンスを殺すのはもったいない。
せめて今日だけは!今日だけはこの状態からなんとか逆転したい!

「くそう…箱に詰められるまではいい感じだったのに。」

「ん…ちゅ…ふふっ♪…なに?アレのどこがいい感じだったの?私から主導権
 を奪おうだなんておにいさんじゃ一生無理だよ。ほら、こうやって密着した
 まま腰をぐりぐりしちゃう♪」

背中に回ったミミックの手がより強くなると股間に強力な圧迫感が伝わる。
ぐりぐり…といきり立った自分のペニスがミミックの素股と自分の体に挟まれ
ぷにぷにと、ぐにぐにと押しつぶされる。

「どうお兄さん。気持ちいい?」

「あっ…ああ。」

「へーそんな簡単に素直になっちゃうんだ。さっきの威勢はどこへ行っちゃっ
 たのかなー?」

「ぐっ…お前」

「あーそうそうまだイったらだめだよ?お兄さんはミミックちゃんを怒らしち
 ゃったんだからねー。今日は『それなりの覚悟を持って』気持ちのいいこと
 しちゃおうね、お兄さん☆」

普段から彼女に頭が上がらない。
それはわかっていたことだがいざ逆転されてしまうとどうにも悔しい。
そんな気持ちが顔に出てしまったのか、彼女の顔がより一層小悪魔に近しく
なっていく。

「あーそんな顔しちゃうんだー♪どうせ頭が上がらないクセに私にイタズラし
 ようだなんて10年早いよ♪結構へこんでた私にさえ勝てないだなんてもう
 いろいろダメダメだよねー☆」

「う…うるせえ…」

「だいたい同居している女の子に手も出せないようなお兄さんが生きてるだけ
 でハニートラップなミミックちゃんに勝てるわけないよね。ミミックちゃん
 頭いいのに忘れていましたー☆」

「生きてるだけで!?」

「あはっ♪じゃあもっとひどいことしてあげちゃうね?覚悟するんだよー?」

ミミックが一旦腰を離すと、肌寒さが元に戻る。
浮き上がった腰からてらてらと輝く液体がミミックの太ももに滴っていた。

「このままここに腰、降ろしちゃうね?」

か細い指が自分の肉棒を捉えるとミミックは秘所に先端をあてがう。
ぬるりとした快楽が伝わり、体の芯を震わせる。
既に何度か彼女とエッチをしているがいまだに彼女の体はそこのしれない快楽
を生み出してくれる。
男の精を搾りとる…という謳い文句もまんざら嘘ではないのだと改めて思った。

「ねえお兄さん。いいことおしえてあげよっか?」

「いいこと?」

「うんっ☆ミミックちゃんねぇ?今日はアブナイ日なんだよっ☆」

「あ、危ない日!?」

危ない日、つまりそういう日だ。
満月の夜覚醒するワーウルフとか性欲に飢えきって半分暴走しそうなダンピー
ルとかそういう性欲に危ない日ではない。
単純に危ない日だ。
むしろそういう危ない日であればもっと良かっただろう。
っていうかそれ人生を左右しかねないぞ!

「そうだよー♪ねえお兄さん?このままお兄さんを逆レイプした精子で赤ちゃ
 ん産んであげよっか?」

「まっ…まってくれ!それだけは!」

「ええー?どうして?ミミックと結婚したくない?愛を育みたくない?それと
 も勃起したまま今日は箱で寝る?」

顔は笑顔だが心は悪魔だ。
じらすように亀頭を秘所で擦り合わせると、にちゅ、という音がかすかに聞こ
えた。
情欲そのものを愛撫されるような感覚に呼吸を躊躇ってしまう。

「ねえどうする?赤ちゃんができちゃったらなんて説明する?君はパパが箱に
 押し込められて逆レイプされて出来た子なんだよって☆」

「お前子供をなんだと思ってるの!?トラウマ植え付けちゃだめでしょ!!」

「えー大丈夫だよー☆だって私の子だもん。すぐにパパと仲良くなっちゃうよ?」

「お前に似すぎ!!俺の要素ゼロだからそれ!」

「そんなの産んでみないとわかんないよー?確かめちゃおっか?あはっ☆」

じらした肉棒が徐々にぬめった圧迫感が押し迫る。
暖かい彼女の体温が粘膜を通して伝わりヒダが徐々に亀頭を奥へと咥え込んで
いく。
溶けきってしまいそうな彼女の膣に肉棒を包み込まれると奥歯がギュッと閉じ
た。
しかしすかさずミミックは両の手で顎をなぞるとその食いしばりもすぐに溶け
てしまった。

「ふふー。そんなに食いしばっても気持ちいいんだよね?お兄さんはいっつも
 私の中に入れるとそうやって我慢しちゃうんだよね?余裕ないんだよねー?」

「んぐっ…そんなこと…」

「いつもなら手加減してあげちゃうんだけれどー。今日は子作りセックスだか
 ら本気出しちゃうからね?」

本気…。
そう聞いて体を身構える。
彼女は今、今までのエッチは手を抜いていたと言っていた。
快楽に対する期待が満ち溢れていく半面、それは射精に対する強い屈服感を味
わうことになる。
しかしそんな疑念などこれから始まることに全てかき消されてしまうことなど
今まで何度も快楽を味わってきた自分が一番良く知っていた。

「じゃあ…腰動かしちゃうよ?んっ…えいっ…☆」

にゅぷ…にゅぷっ…
腰が密着したかと思えばすぐさま離れ、そしてまた肉棒を咥え込みながら腰を
密着させていく。
小さな体積が卑猥な音を立てながら自分に情欲を与えて行く。
今までも何度か味わってきたミミックの膣。
時折迫る射精感に身を震わせるたびに、段ボールがミシミシと音を立てる。
普段とは違う拘束を加えられ快楽は我慢の行き場をなくしていた。

「なっ…これは!」

激しいエッチを好む彼女にしてみればそれは少し意外だったかもしれない。
ゆっくりと動かされる腰づかい。
しかし普段と違う圧倒的な違和感と快感。
ミミックの膣内が今までにないくらいに締めつけてきていた。

「あれれー?どうしたのー?もう余裕ないカンジじゃん?」

「しっ…締まる!?いつもより狭い!」

「えへへー♪いつもより多めに締めつけておりますよ?」

膣内のヒダが全て密着する。
自分の握力でオナホールをしごくように、ミミックの膣内は隙間なく肉棒を咥
え込み、締めつけていた。
それだけの快感を与えられながらもどかしげにゆっくりとじわじわとスローペ
ースで快感をすりこんでいく。
ヒダが肉棒に擦れる度に、理性の糸が快楽のやすりで削られていく。

「どう?ゆっくりエッチするのって…初めてじゃない?普段ハードだからこう
 いうのですぐ漏らしちゃったりして。」

「まっ…まだ余裕…だなっ!」

「私はそれでも全然構わないから出したくなったらすぐにイっていいからねっ☆」

完璧に虚勢を破られてしまった。
こうなると俺はもうなすすべがない。
普段のエッチならこのまま誘導されるように射精してしまうのが俺だ。
だが今回は違う。
いろいろ生活がかかってくるかもしれない。
彼女との間に子供が欲しくないわけではないが、それでもこんな屈辱的なエッ
チで敗北の証を…ましてや実子という形で残したくはない。
いや、生まれてくる命に罪はないのだが…。

「ほーら…こんなふうにしっかりしめつけながらぁー…」

「あぐっ!?」

「ペースを保ちながらゆーっくりとうごいてぇ…」

「うっ…うう…」

「私の中でさきっちょをぬりゅぬりゅしちゃうとぉー?」

「まっ…まってくれ!射精る!射精るから!」

「じゃあ止める?」

「そこまで聞いておいて…締めつけっ…!?」

ドクン!ドクッ!

ミミックの悪戯な笑顔を最後に射精する。
精液を膣内で受け止め膣内を締めあげ、細い両手両足は自分の体を縛り上げる。
離すまいと、愛情を訴えながら。
あるいはこの快楽から逃すまいと。

「ん〜〜っ☆」

「あっ…で…出ちまった…うう。」

「あはっ…やっぱりお兄さんは…責めるよりも責められてた方が似合ってるよ。」

うるせえよ。
そう言いかけて、ミミックが唇で自分の口をふさいだ。
ぷにっとした薄い感触がいつまでも離れない。
たまっていた仕事の疲れが今になってどっとでてきたのか、もう体が動かせそう
にない。
仕方ない。もう今日は寝るか。
服ぐらいは着たいが…もう今日はこのままベッドで…。

「あ…あれ?ミミックちゃん?どこ行くの?ねえ!?」

「おやすみー☆」

「ちょっ!まって!百歩譲って段ボールで寝るのは良いとしてせめて服は着さ
 せて…」

「言ったじゃん。わたし今日からここで寝るって。お兄さん…結構体大きいから
 このベッド二人だと狭いし。」

「う…嘘だろ…!?」

「大丈夫!風邪引いて明日休んだら明日一日中エッチできるよ?もうその必要
 もないかもだけどー☆」

布団の中にもぐっていくミミックの姿を見つめながら俺は箱を壊すことに専念
した。
しかしそんな努力もむなしく俺は結局段ボールの中で一晩を過ごした。
あらかじめ毛布を中に敷いていたおかげで風邪をひくのだけは免れる…かもしれない。
捨て猫って結構たくましい生き物なのだと実感しつつ俺は眠りについた。


――――――――――


「と、まあこうやってミミっ子ちゃんは出来たんだよ☆」

「パパサイテー…。」

「言うなよ…。」


☆おしまい☆
14/08/03 23:34更新 / にもの

■作者メッセージ
仲良く喧嘩できるってちょっとうらやましいよね。
だからなんだよって顔しないでください(まがお)
お読みいただきありがとうございました><

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