読切小説
[TOP]
君と手を繋ぎたい
ヘルハウンドさんと手を繋ぎたい


「は、はぁ!?何言ってるんだお前ぇ!」


ヘルハウンドさんと手を繋ぎたい!


「同じこと言ってんじゃねーよ!」


…手を、繋ぎたいんだよぉ…


「な、泣くこたァねぇだろうがよ…どうしたんだよ急に…」


今日で発情期のヘルハウンドさんに娶られて半年が過ぎます


「あァ…それがどうしたよ」


なのに…僕らは未だにお互い手を繋いだことがないです


「…で?」


どういうことだよ!


「知らねーよ!」


恋人同士なのに…手すら繋いでないって…恋人同士って、夫婦って言えないと思うんだよね


「な、なんだよ…交尾はしてるし紛れもない夫婦だろうがよ…」


たしかに交尾だよね、ヘルハウンドさんが激しく僕を絞るだけの、エッチじゃなくて交尾だよね…つまり僕は性奴隷なのでは?


「お前だってトロ顔晒してよがるじゃねーかよ、気持ちいいんだろ?」


それとこれとはわけが違うよ!


「う…だったらなんなんだよ…?」


つまり、ヘルハウンドさんの手を繋ぎたいってことなんだけど


「なんでそうなるんだ!」


ヘルハウンドさんは手を繋ぐの、嫌なの?


「…ヤダ」


なんで?理由は?


「…無い」


嘘だ、ヘルハウンドさんは嘘が下手だからすぐ分かる


「なっ…!う、嘘じゃねーよ!嘘じゃ!」


ヘルハウンドさんは嘘つくとき僕から目逸らす


「うっ…」


理由を聞いて納得したら諦めるから


「…だ、だって…アタシと手なんか繋いじまったら、お前…怪我しちまうぞ」


は?


「あ、アタシの手は、傷つけるだけしかできねーから…手なんか繋いじまったら、お前…」


はぁぁぁぁぁぁ!?!!!?


「な、なんだよ?急に大声出すなよ…びっくりするじゃねーか」


ヘルハウンドさんの手が傷つけるだけしか出来ないって?


「…そうだよ」


馬鹿


「アァ!?」


バーカ!バーカ!ヘルハウンドさんのバーカ!


「んだとゴラァ!めちゃくちゃにブチ犯すぞ!」


ひ、ひぃそれは勘弁を…


「き、急に大人しくなるなよ…で?なんで急に馬鹿なんて言ったんだ、場合によっては精を絞り尽くす」


だ、だってヘルハウンドさんがありもしないことを言うから…


「はぁ?」


ヘルハウンドさんの手は、傷つけるだけの手じゃ無いでしょ?


「…いや、アタシの手は」


たしかに爪は鋭いし、力も強いけど…それくらい調整できるでしょ?


「ま、まぁな」


その力も獲物を狩るときとか、大切なモノを護る時以外で無闇に使ったりしないでしょ?


「ま、まぁムカつかねぇ限りはな…」


普通に何か持って勢いで壊したりしないでしょ?


「あ、あぁ…」


ほら、全然傷つけるだけの手じゃ無いじゃん


「で、でも…もし手を繋いで間違ってお前を傷つけたら…」


ふーん、怖いの?


「アァ!?誰にもの言ってんだ!ブチ犯すぞ!」


ひ、ひぃ!それだけはご勘弁を…


「だから急に大人しくなるなよ…やりずれぇな」


なんだかんだヘルハウンドさんって優しいもんね、本当に嫌がることしないし


「あ、アタシは優しくねぇよ…馬鹿」


じゃあ手を繋ごうか


「なんでそうなるんだよ!」


だって別に怪我するわけじゃないんでしょ?だったらいいじゃん


「良くねぇよ…」


やっぱ怖いの?


「う、うるせぇ!怖くねえっつってんだろ!!!!」


ひぃっごめんなさい怒らないで


「お、怒ってねぇけど…お前は、どーなんだよ」


なにが?


「…お前は、その…怖くねーのかよ?」


怖くないよ、ヘルハウンドさんが僕を傷つけるわけないもん


「そんなんわかんねぇだろうが…アタシはいつでもお前を一瞬で八つ裂きに出来るんだぞ?」


…八つ裂きかぁ


「っ…!あ、あくまで例えだからな?絶対にそんなことしねぇけどな!た、例えだとしても残虐過ぎたよな?わ、わりぃ…嫌な気分になったならあやま…」


あははははは!やっぱヘルハウンドさんって優しいや!


「…えっ?」


優しくなきゃ、わざわざそんなことで謝ろうとしたりしないでしょ?


「うっ…だ、だって…八つ裂きだぞ!?痛いんだぞ!?それも、アタシなんかに言われたら…怖くないわけないだろ?」


はぁ〜〜〜(クソデカ溜息)


「な、なんだよ…ほんとのことだろーが」


ないわ〜ヘルハウンドさんないわ〜…


「なんだよなんだよ…ぐるるるっ」


なんでヘルハウンドさんそんなに自己評価低いの?僕ヘルハウンドさんにそんなこと言った記憶ないんだけど?


「お、お前はそういうこと言わない…だって、アタシが怖いから…気ぃ使って…」


えっ、何?僕そんな風に見られてたの?半年間も同じ巣穴にいて?


「…誰だってそうだ…アタシみたいなのに捕まって、気に入られたら…怖くて従うしかないんだ、でも…アタシはお前を手放したくないから、そうするしかない」


ずっと僕がヘルハウンドさんを怖がって逆らえないと思ってたんだ、無理やり付き合ってるって思ってたんだ


「お前が、アタシを怖がるのはわかってる…でも、それでもアタシの手に入るならいいって思える程に好きになっちゃったんだ!無理やりでもアタシのものにするしか、そういう生き方しか知らないんだ!」


はぁ〜〜なんでこの子はこんなややこしいんでしょう


「ぐるるる…っ!」


いや唸られても怖くないんだけど


「お前はなんでそんないつも飄々としてるんだ!初めに襲った時も!今だって、手、手を繋ぐなんて言いやがって!」


あのね、ヘルハウンドさん?


「な、なんだよ…」


そんなの僕がヘルハウンドさんのことが好きだからに決まってるでしょ?


「なっ…!う、嘘…嘘だ嘘だ!」


僕いままでヘルハウンドさんに嘘ついたことないんだけど


「お、お前は嘘つきだ!アタシのこと、ほんとは怖いくせに怖くないとか!好きとか!よ、夜なんてアタシに、可愛い、とか言うし…」


全部本音なんだよなぁ…


「う、嘘だ嘘だ!あ、アタシが怖いから機嫌を取ろうとしてるだけだ!ふん、夜はお前が好きな鹿肉獲ってきてやる」


わぁい、ヘルハウンドさん大好き!


「ふ、ふん…!」


ってちゃうわい!


「な、なんだよ…要らないのかよ」


いや要るけど…話はそこじゃないよ、つまり僕は心の底からヘルハウンドさんが好きで、そんなヘルハウンドさんとただ肉体関係があるだけじゃなくて、手を繋げるような関係になりたいってことなんだ


「う、ううぅ〜〜〜〜〜〜…」


そんなに悩むこと?僕はヘルハウンドさんが好きで、ヘルハウンドさんも僕が好き…何も問題はないでしょ


「ぐるる…ほんとに、アタシが好き…?」


うん、大好きさ


「じゃあ…アタシのいいところ、今すぐ10個言ってみろ」


強くて頼り甲斐がある、僕を養ってくれる、僕を不自由にさせない、見た目怖いけど優しい、可愛い、美人、おっぱい大きい、フサフサで気持ちいい、犬耳可愛い、かまってちゃん、僕のことを守ってくれる、僕のことを大事にしてくれる、美味しいご飯を取ってきてくれる、内面かなり乙女、実はかなり寂しがりや、エッチ大好き…


「わー!わー!10個!10個って言っただろ!それ以上言うな!」


たった10個ぽっちでヘルハウンドさんの魅力を伝え切れるとお思いか!?


「う、うるさいうるさい!よ、よく恥ずかしがらずに言えるな…バカ…」


ヘルハウンドさんが言わせたのに…


「…わかったよ」


ん?


「…お前の気持ち、嘘じゃないって…わかった」


えぇ〜?ほんとにござるか〜?


「…ていうか、嘘だったら、やだ…」


はぁ〜〜〜くっそ可愛い僕のヘルハウンドさんくっそ可愛い


「う、うるさいうるさいうるさい!お前!なんか調子に乗ってないか!?お前はアタシの所有物なんだぞ!」


そうだね、僕は君の物だ…だから手ぐらい繋いでも、いいだろ?


「う、うー、わ、分かったよ…」


マジ!?やった〜〜〜〜〜!


「い、一回だけ!一回だけだからな!きゅってしてパッて離せよ!」


はいはい、ヘルハウンドさんはビビリだなぁ


「び、ビビってねぇし!…い、痛くなったらすぐにやめろよ…?」


よーしそれじゃあいくよ〜


「んっ…ぁ…♪」


ヘルハウンドさんの手、おっきいね…モフモフしてて、気持ちいいよ


「ひぁっ…あ、んっ…♪」


ちょっと硬い肉球とか、大きな爪とか…凄い魅力的な手だよ


「んぅ…あっ、ぁ…♪」


…ヘルハウンドさん、なんで手握るだけなのにそんな感じてるの?


「ば、ばかぁ…しらないぃ…っ、でも、お前が…アタシの、危ない手に触ってるだけで…気持ち、よくなっちゃ…あっ…♪」


普段触らない場所は敏感なのかな


「指と指に、ギュってするのっ…好き…♪アタシ、アタシ…ずっとこういうの、したかった…♪恋人みたいなこと、全部全部したかった…♪」


それは僕も同じだよヘルハウンドさん


「あぁ…アタシ、してよかったんだ…アタシも普通に恋人になって良かったんだ…♪」


これからもっと、恋人らしいことしていこう


「うん…するっ、したいっ♪」


ようやく恋人に進めたね、ヘルハウンドさん


「えへぇ…恋人、恋人…っ♪」


ヘルハウンドさんは可愛いなぁ


「なっ、恋人になったんだ♪えっちしよ?恋人えっち♪手ぇ繋いでするのっ♪」


やれやれ、あれだけ嫌がってたのに…


「ねっ、早く早くっ♪わんわんっ♪」


あぁもう子犬モードだ…くそっ、可愛いなぁ


「ねぇ〜えっ、早くするぞぉ♪ほらっ♪」


はいはい…僕明日生きてるかなぁ、ミイラにならなきゃいいけど










18/04/01 07:58更新 / ミドリマメ

■作者メッセージ
ドーモ、ミドリマメです。
拙者、強気な女の子がしおらしくなるの大好き侍。義によって助太刀致す

長いこと期間が空いてしまったので筆鳴らしに短い話を書いてみました。

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33