シャクヤルート3「姉さまについて行きます」
姉さまと結ばれて、他の姉が大騒ぎしたところをシャクヤ姉さまが抑えたりと色々あって…
「たくまちゃん…悲しいですけど、これも運命なのですね…お、お姉ちゃんはこのままだと泣きそうなので少しトイレに行ってきます…うぅ」
と、シロねぇは言って
「えーっ!まさかシャクヤ姉さんにタクを取られるなんて…好感度上げは私が一番頑張ってたのにぃ!」
エルねぇねぇは騒いで
「…ふふ、いけない関係になりたくなったら私に言ってねぇ?」
ユウねーさんはちょっと何言ってるか分からなかった
「…たくま、おめでとう」
まぁ普通に祝ってくれたのはシルクねぇちゃんだけだった
そしてしばらくして騒動が収まり、平和な日常が帰ってきた
「…ふーん、なるほどなぁ」
俺は家に届いていた研究所の書類を見ていた、なんでも親父の研究が行き詰まったらしく俺にも意見を聞きたいのだとか
「親父が行き詰まったところを俺がどうにかできるとも思えんが」
書類はなかなか細かく目が疲れるので、度の入っていない目の疲れにくいメガネをつけて閲覧する…親父も難儀な研究をしてるなぁ
「たー坊、入るぞ?」
「あ、はーい」
「む?…たー坊、なんか雰囲気変わったのう」
雰囲気が変わった?…メガネのせいだろうか
「せやろか、メガネのせいかなぁ」
「ふむ、しかし悪くないな…」
そういや姉さまもメガネ似合いそうだよなぁ
「えいっ」
「わ、何をするっ!」
ひょいっと姉さまに眼鏡をかけてみた、おぉ…やっぱり凄い似合うな
元々姉さまは知的な顔してるし、美人だし似合わない道理がないか
「なんか目が変な感じじゃのぅ」
「度は入ってないけどな、目が疲れにくいレンズなんやで」
「そうなのかのぅ…」
「ええなぁメガネの姉さま、それあげるわ」
「む、いいのか?」
「似合うからなぁ、買い換えようと思うとったところやし」
「ふむ、ではありがたくいただこう」
姉さまはそういうとメガネを外して懐にしまった
「あれ、外しちゃうんか?」
「常に着けてるわけにはいかんじゃろ、それに…」
ぽりぽりと姉さまは頬をかいて、照れくさそうに顔を伏せた
「せっかくの、たー坊からのプレゼント…じゃから、二人きりの時にだけ…」
「…姉さま、意外と乙女チックやな」
「…っ!」
突然に頭に衝撃が走り、身体が地に倒れ伏せた…一体何が…
「ば、馬鹿っ!お、お前は乙女心のわからぬやつじゃな!」
見上げると拳を振り下げたシャクヤ姉さま、どうなら姉さまにど突かれたらしい
「ご、ごめんなさい?」
「なんで疑問系なんじゃ、たわけが…ほれ、立てるか?」
「立てないー、姉さま起き上がらせてー」
「全く甘ったれめ…ほれ」
姉さまがこちらに軽く手を引く、俺はその手を取りこちらに強く引いた
「きゃっ!?」
そうすると当然姉さまはこちらに倒れこんでくる
「へへっ」
「こりゃたー坊…っ!」
俺と姉さまはお互いに抱き合うような形になる、俺は姉さまをしっかりと抱き寄せて目線を合わせる
「ぅ…た、たわけ…近いわ…っ」
「ええやん、俺たち恋人同士やろ?」
「あぅ…間近でそんなこと、言うなぁっ…!」
顔を真っ赤にして狼狽えるシャクヤ姉さま、姉さまって攻められるのに弱いをやなぁ
「なんでそないなこと言うん?姉さまは、俺のこと嫌いか…?」
「き、嫌いなわけ…ないじゃろうが…っ、ただ近っ…」
「じゃあ…俺のこと、好きって言って…?」
「っ…な、何言ってるんじゃ…」
「言ってくれないと、どかへんよ?」
「ぁ…う…」
「俺は、姉さまのこと…好きやで?」
「う、うぅぅ…」
頭を抱き寄せて耳元で囁く、姉さまはあうあうと狼狽えるばかりだ
「わ、わしも…っ、…き、じゃ…」
「ん、なぁに?」
「わしもたー坊が好きじゃ!大好き!この世の誰よりもたー坊を愛してる!これで良いのじゃろう!?」
「そこまで言わなくても良かったんだけど…まぁええか、よく言えた姉さまにはご褒美っ♪」
「えっ、たー坊…んんっ!」
俺は姉さまの頭を抱えて深く口づけをする、意外にも姉さまは抵抗せずにそれを受け入れた
「ふぁ…っ…♪」
「姉さまってばそんなだらしない顔して…」
「だ、だれのせいじゃと…思うとる…っ」
「そりゃ俺やな、お詫びにもう一回してあげるわ」
「や、優しくしろ…馬鹿っ…♪」
「それは保証しかねるわなぁ」
…
「この大馬鹿者!たわけ!スケベ!変態!」
少し経ったらシャクヤ姉さまが冷静になったらしく、俺は姉さまに叱られていた
「罵るのにそんなレパートリーしかないシャクヤ姉さま可愛いなぁ」
「この…どこまでワシを馬鹿にする気じゃ!」
「馬鹿になんかしてへんよ、姉さまが可愛いっていうのは事実や」
「うう〜…だから、そういうのが…」
「…じゃあ、これから姉さまにそういうこと言うのやめといたほうがええの?」
「そ、それはいやじゃ…」
うーん、どうすれば…
「わ、ワシが言いたいのは!ムードを考えろということじゃ!」
「ムード、難しいなぁ…今までそんなこと考えたことなかったし」
「天然ってのも考えものじゃな…」
「姉さまだって褒められると嬉しいやろ?」
「た、確かに嬉しいんじゃがのぉ…」
「ならええやん」
「良くないわ馬鹿者が…」
頭はいい方なんだけどなぁ
「ところで姉さま、そもそもなんで俺のとこに来たの?何か用事でもあったの?」
「む、そうじゃった…お主には話さねばならぬことがあってな」
「話さねばならぬこと?」
「うむ、お前は近々また研究所に…父上の元へ戻ろうとしているな?」
「え、なんで知ってるん」
「あんな真剣に父上からの資料見てれば分かるわ、お前は分かりやすいからのぅ」
そんな分かりやすいのか俺、まぁみんなには話すつもりだったんだけど
「まぁ、親父が研究に煮詰まったらしいからそれの手伝いと…将来に向けて色々と考えた結果や」
「それについては特に異論はない、が…しかしじゃたー坊」
「はいな」
「ここで一つ問題がある、お前は…こ、恋人であるワシをどうするつもりじゃ?」
「…え、姉さまにはついて来てもらおうかと…」
「それは無論じゃが、しかしのぉ…ワシには道場がある」
「あ…そっか、あんまり道場を空けるわけにはいかないよなぁ」
「うむ…館長である身じゃからのぅ」
そうだよなぁ…姉さまには姉さまの事情がある、俺にわざわざ付き合わせる必要はないけど…
「…よし分かった、姉さま!姉さまはこっちで半年…いや三ヶ月だけ待っててくれ」
「たー坊?」
「三ヶ月で俺は研究の方をなんとかしてみせるわ、んで…こっちに戻ってくる」
「…しかし、よく分からぬがその研究とやらは難しいものなのじゃろう?たかだか三ヶ月で出来るものなのか?」
「まぁ、普通やったら無理やろうなぁ…なんせ親父が躓くぐらいやから」
「それでは…」
「でも俺は親父やない、俺は三ヶ月でこの研究を完璧にしてやるわ。…なぁに心配いらん、こう見えて俺って親父より優秀って言われとったからな」
「…たー坊、お前随分と言うようになったのぅ」
「姉さまの影響かなぁ?ま、大切なものができた男の子は強いんやで。研究がどうにかならんでも三ヶ月で戻ってくるよ…元はと言えば親父の研究なんやしな」
「…うむ、では…暫しのお別れじゃな」
「ま、行くのはすぐってわけやないけどな…それまでは二人でイチャイチャしようや!」
そう言って俺はシャクヤ姉さまの肩を抱き寄せる、三ヶ月もまた会えなくなるのだからその分イチャイチャしたいのは当然だろう
「きゃっ…ば、馬鹿者…だからムードを考えろと…」
「姉さま撫でて〜」
「はぁ…この甘ったれめ…♪」
…
あれから三ヶ月、俺は姉さまに会いたい気持ちを原動力に親父の研究に没頭した
その三ヶ月間はほぼ日替わりで姉達が様子を見にきてくれていたりしたから寂しくはなかったが、その中でもシャクヤ姉さまの頻度は少なかった
館長が道場をそう何日も空けられないというのは分かっていたので、その分姉さまが来た時には研究はしないで二人で運動したりイチャイチャしたりとなんだかんだ充実していた
そして大切な人を思う気持ちは何よりも勝るようで、三ヶ月丁度でどうにか親父の研究を形にすることができたのだった
「よーし、後はもう親父達に任せて良いはずやな…しかし三ヶ月か、だいぶ早く過ぎた気がするなぁ」
元々半年を見通していたけど、予定よりだいぶ早く終えることができた…頑張った甲斐があったものだ
「ふふ、一ヶ月で帰ってきたら姉さま驚くやろなぁ!よーし、姉さまにも早よう会いたいしさっさと帰りますか!」
そうして俺は研究が形になって賞賛してくれている他の研究員や、親父達には目もくれずに一心不乱に荷物をまとめ我が家へと向かう
家までは電車で数時間といったところか、毎回毎回姉さま達も頑張ってきてくれたものだ
「姉さま達、こんな電車でわざわざ会いに来てくれてたんか…ありがたいわ」
姉さま達に思いをふけっていると数時間なんてあっという間に過ぎてしまった、姉さま達も来るときはこうだったのだろうか?
「たー坊!」
家の最寄駅に降りると聞き慣れた凛々しい声で名前を呼ばれた、呼ばれた方を見るとシャクヤ姉さまがこちらに駆け寄ってくるのが見えた
「姉さま!?なんで…」
「ちょっと前に父上から連絡があったんじゃ、たー坊が研究終わった途端に飛び出したって…ワシに連絡くらいせんか馬鹿者」
「あはは、姉さまに会いたくてつい…」
「全く、つい数日前に会ったばかりじゃろうが…」
姉さまにこつんと小突かれる、そのあとに優しくぎゅっと抱きしめられた
暖かくて、ふわふわしてて落ち着く俺の大好きな姉さまの抱擁
「ま、よくやったと褒めてやるべきじゃな…お疲れ様、タクマ」
「姉、さま…?」
「な、なんじゃ鳩が豆鉄砲食らったような顔して…」
俺は聞き逃さなかった、今姉さまが俺を名前で呼んだ
「姉さま、いま名前で呼んでくれたな!?そうやな!聞き間違えやないな!?」
「ま、まぁ…もうお前も子供じゃないわけじゃしな、いつまでもたー坊と呼ぶわけには…」
嬉しい…こんな嬉しいことがあるだろうか、嬉しすぎて涙出てきた…
「な、泣くこたぁないじゃろ…タクマ」
「シャクヤ姉さまぁ…っ」
「タクマ…ほら、帰ろうか!もうみんな家で待っとるからな、今日はお祝いじゃ!」
「うん…帰ろうか、我が家へ!」
今日ようやく、本当の意味で俺は姉さまの隣に立って歩けた気がする
いつもはずっと背中ばかり追いかけていたけど、ちゃんと名前を呼ばれてようやく姉さまと並ぶことができた
きっとこれからも俺は姉さまについて行くだろう、だけどもう姉さまの後ろをついて行くんじゃなくて…隣で一緒に歩んで行く
ずっと、大好きな姉さまの側に
「たくまちゃん…悲しいですけど、これも運命なのですね…お、お姉ちゃんはこのままだと泣きそうなので少しトイレに行ってきます…うぅ」
と、シロねぇは言って
「えーっ!まさかシャクヤ姉さんにタクを取られるなんて…好感度上げは私が一番頑張ってたのにぃ!」
エルねぇねぇは騒いで
「…ふふ、いけない関係になりたくなったら私に言ってねぇ?」
ユウねーさんはちょっと何言ってるか分からなかった
「…たくま、おめでとう」
まぁ普通に祝ってくれたのはシルクねぇちゃんだけだった
そしてしばらくして騒動が収まり、平和な日常が帰ってきた
「…ふーん、なるほどなぁ」
俺は家に届いていた研究所の書類を見ていた、なんでも親父の研究が行き詰まったらしく俺にも意見を聞きたいのだとか
「親父が行き詰まったところを俺がどうにかできるとも思えんが」
書類はなかなか細かく目が疲れるので、度の入っていない目の疲れにくいメガネをつけて閲覧する…親父も難儀な研究をしてるなぁ
「たー坊、入るぞ?」
「あ、はーい」
「む?…たー坊、なんか雰囲気変わったのう」
雰囲気が変わった?…メガネのせいだろうか
「せやろか、メガネのせいかなぁ」
「ふむ、しかし悪くないな…」
そういや姉さまもメガネ似合いそうだよなぁ
「えいっ」
「わ、何をするっ!」
ひょいっと姉さまに眼鏡をかけてみた、おぉ…やっぱり凄い似合うな
元々姉さまは知的な顔してるし、美人だし似合わない道理がないか
「なんか目が変な感じじゃのぅ」
「度は入ってないけどな、目が疲れにくいレンズなんやで」
「そうなのかのぅ…」
「ええなぁメガネの姉さま、それあげるわ」
「む、いいのか?」
「似合うからなぁ、買い換えようと思うとったところやし」
「ふむ、ではありがたくいただこう」
姉さまはそういうとメガネを外して懐にしまった
「あれ、外しちゃうんか?」
「常に着けてるわけにはいかんじゃろ、それに…」
ぽりぽりと姉さまは頬をかいて、照れくさそうに顔を伏せた
「せっかくの、たー坊からのプレゼント…じゃから、二人きりの時にだけ…」
「…姉さま、意外と乙女チックやな」
「…っ!」
突然に頭に衝撃が走り、身体が地に倒れ伏せた…一体何が…
「ば、馬鹿っ!お、お前は乙女心のわからぬやつじゃな!」
見上げると拳を振り下げたシャクヤ姉さま、どうなら姉さまにど突かれたらしい
「ご、ごめんなさい?」
「なんで疑問系なんじゃ、たわけが…ほれ、立てるか?」
「立てないー、姉さま起き上がらせてー」
「全く甘ったれめ…ほれ」
姉さまがこちらに軽く手を引く、俺はその手を取りこちらに強く引いた
「きゃっ!?」
そうすると当然姉さまはこちらに倒れこんでくる
「へへっ」
「こりゃたー坊…っ!」
俺と姉さまはお互いに抱き合うような形になる、俺は姉さまをしっかりと抱き寄せて目線を合わせる
「ぅ…た、たわけ…近いわ…っ」
「ええやん、俺たち恋人同士やろ?」
「あぅ…間近でそんなこと、言うなぁっ…!」
顔を真っ赤にして狼狽えるシャクヤ姉さま、姉さまって攻められるのに弱いをやなぁ
「なんでそないなこと言うん?姉さまは、俺のこと嫌いか…?」
「き、嫌いなわけ…ないじゃろうが…っ、ただ近っ…」
「じゃあ…俺のこと、好きって言って…?」
「っ…な、何言ってるんじゃ…」
「言ってくれないと、どかへんよ?」
「ぁ…う…」
「俺は、姉さまのこと…好きやで?」
「う、うぅぅ…」
頭を抱き寄せて耳元で囁く、姉さまはあうあうと狼狽えるばかりだ
「わ、わしも…っ、…き、じゃ…」
「ん、なぁに?」
「わしもたー坊が好きじゃ!大好き!この世の誰よりもたー坊を愛してる!これで良いのじゃろう!?」
「そこまで言わなくても良かったんだけど…まぁええか、よく言えた姉さまにはご褒美っ♪」
「えっ、たー坊…んんっ!」
俺は姉さまの頭を抱えて深く口づけをする、意外にも姉さまは抵抗せずにそれを受け入れた
「ふぁ…っ…♪」
「姉さまってばそんなだらしない顔して…」
「だ、だれのせいじゃと…思うとる…っ」
「そりゃ俺やな、お詫びにもう一回してあげるわ」
「や、優しくしろ…馬鹿っ…♪」
「それは保証しかねるわなぁ」
…
「この大馬鹿者!たわけ!スケベ!変態!」
少し経ったらシャクヤ姉さまが冷静になったらしく、俺は姉さまに叱られていた
「罵るのにそんなレパートリーしかないシャクヤ姉さま可愛いなぁ」
「この…どこまでワシを馬鹿にする気じゃ!」
「馬鹿になんかしてへんよ、姉さまが可愛いっていうのは事実や」
「うう〜…だから、そういうのが…」
「…じゃあ、これから姉さまにそういうこと言うのやめといたほうがええの?」
「そ、それはいやじゃ…」
うーん、どうすれば…
「わ、ワシが言いたいのは!ムードを考えろということじゃ!」
「ムード、難しいなぁ…今までそんなこと考えたことなかったし」
「天然ってのも考えものじゃな…」
「姉さまだって褒められると嬉しいやろ?」
「た、確かに嬉しいんじゃがのぉ…」
「ならええやん」
「良くないわ馬鹿者が…」
頭はいい方なんだけどなぁ
「ところで姉さま、そもそもなんで俺のとこに来たの?何か用事でもあったの?」
「む、そうじゃった…お主には話さねばならぬことがあってな」
「話さねばならぬこと?」
「うむ、お前は近々また研究所に…父上の元へ戻ろうとしているな?」
「え、なんで知ってるん」
「あんな真剣に父上からの資料見てれば分かるわ、お前は分かりやすいからのぅ」
そんな分かりやすいのか俺、まぁみんなには話すつもりだったんだけど
「まぁ、親父が研究に煮詰まったらしいからそれの手伝いと…将来に向けて色々と考えた結果や」
「それについては特に異論はない、が…しかしじゃたー坊」
「はいな」
「ここで一つ問題がある、お前は…こ、恋人であるワシをどうするつもりじゃ?」
「…え、姉さまにはついて来てもらおうかと…」
「それは無論じゃが、しかしのぉ…ワシには道場がある」
「あ…そっか、あんまり道場を空けるわけにはいかないよなぁ」
「うむ…館長である身じゃからのぅ」
そうだよなぁ…姉さまには姉さまの事情がある、俺にわざわざ付き合わせる必要はないけど…
「…よし分かった、姉さま!姉さまはこっちで半年…いや三ヶ月だけ待っててくれ」
「たー坊?」
「三ヶ月で俺は研究の方をなんとかしてみせるわ、んで…こっちに戻ってくる」
「…しかし、よく分からぬがその研究とやらは難しいものなのじゃろう?たかだか三ヶ月で出来るものなのか?」
「まぁ、普通やったら無理やろうなぁ…なんせ親父が躓くぐらいやから」
「それでは…」
「でも俺は親父やない、俺は三ヶ月でこの研究を完璧にしてやるわ。…なぁに心配いらん、こう見えて俺って親父より優秀って言われとったからな」
「…たー坊、お前随分と言うようになったのぅ」
「姉さまの影響かなぁ?ま、大切なものができた男の子は強いんやで。研究がどうにかならんでも三ヶ月で戻ってくるよ…元はと言えば親父の研究なんやしな」
「…うむ、では…暫しのお別れじゃな」
「ま、行くのはすぐってわけやないけどな…それまでは二人でイチャイチャしようや!」
そう言って俺はシャクヤ姉さまの肩を抱き寄せる、三ヶ月もまた会えなくなるのだからその分イチャイチャしたいのは当然だろう
「きゃっ…ば、馬鹿者…だからムードを考えろと…」
「姉さま撫でて〜」
「はぁ…この甘ったれめ…♪」
…
あれから三ヶ月、俺は姉さまに会いたい気持ちを原動力に親父の研究に没頭した
その三ヶ月間はほぼ日替わりで姉達が様子を見にきてくれていたりしたから寂しくはなかったが、その中でもシャクヤ姉さまの頻度は少なかった
館長が道場をそう何日も空けられないというのは分かっていたので、その分姉さまが来た時には研究はしないで二人で運動したりイチャイチャしたりとなんだかんだ充実していた
そして大切な人を思う気持ちは何よりも勝るようで、三ヶ月丁度でどうにか親父の研究を形にすることができたのだった
「よーし、後はもう親父達に任せて良いはずやな…しかし三ヶ月か、だいぶ早く過ぎた気がするなぁ」
元々半年を見通していたけど、予定よりだいぶ早く終えることができた…頑張った甲斐があったものだ
「ふふ、一ヶ月で帰ってきたら姉さま驚くやろなぁ!よーし、姉さまにも早よう会いたいしさっさと帰りますか!」
そうして俺は研究が形になって賞賛してくれている他の研究員や、親父達には目もくれずに一心不乱に荷物をまとめ我が家へと向かう
家までは電車で数時間といったところか、毎回毎回姉さま達も頑張ってきてくれたものだ
「姉さま達、こんな電車でわざわざ会いに来てくれてたんか…ありがたいわ」
姉さま達に思いをふけっていると数時間なんてあっという間に過ぎてしまった、姉さま達も来るときはこうだったのだろうか?
「たー坊!」
家の最寄駅に降りると聞き慣れた凛々しい声で名前を呼ばれた、呼ばれた方を見るとシャクヤ姉さまがこちらに駆け寄ってくるのが見えた
「姉さま!?なんで…」
「ちょっと前に父上から連絡があったんじゃ、たー坊が研究終わった途端に飛び出したって…ワシに連絡くらいせんか馬鹿者」
「あはは、姉さまに会いたくてつい…」
「全く、つい数日前に会ったばかりじゃろうが…」
姉さまにこつんと小突かれる、そのあとに優しくぎゅっと抱きしめられた
暖かくて、ふわふわしてて落ち着く俺の大好きな姉さまの抱擁
「ま、よくやったと褒めてやるべきじゃな…お疲れ様、タクマ」
「姉、さま…?」
「な、なんじゃ鳩が豆鉄砲食らったような顔して…」
俺は聞き逃さなかった、今姉さまが俺を名前で呼んだ
「姉さま、いま名前で呼んでくれたな!?そうやな!聞き間違えやないな!?」
「ま、まぁ…もうお前も子供じゃないわけじゃしな、いつまでもたー坊と呼ぶわけには…」
嬉しい…こんな嬉しいことがあるだろうか、嬉しすぎて涙出てきた…
「な、泣くこたぁないじゃろ…タクマ」
「シャクヤ姉さまぁ…っ」
「タクマ…ほら、帰ろうか!もうみんな家で待っとるからな、今日はお祝いじゃ!」
「うん…帰ろうか、我が家へ!」
今日ようやく、本当の意味で俺は姉さまの隣に立って歩けた気がする
いつもはずっと背中ばかり追いかけていたけど、ちゃんと名前を呼ばれてようやく姉さまと並ぶことができた
きっとこれからも俺は姉さまについて行くだろう、だけどもう姉さまの後ろをついて行くんじゃなくて…隣で一緒に歩んで行く
ずっと、大好きな姉さまの側に
16/11/18 01:32更新 / ミドリマメ
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