番外編「お姉ちゃん達とクリスマス」
今まではこの季節になっても俺にはパーティーだとかそんなものは一切縁の無いものだった、研究所にいた頃はそんなことより研究に没頭する人しかいなかったからだ
俺自身、研究所にいた10年間はクリスマスなんて関係無かった…しかし実家に帰ってきた今は違う
「タク!買い出し行ってきたよ!」
「たー坊、こっちの飾り付けも頼むぞ」
「たくまちゃん、大変そうですからお姉ちゃんがそっちも手伝っちゃいますよー」
「たくま…お料理の方、手伝って」
「たっくん、お酒たくさん持ってきたわよぉ」
「はいはい!一つずつ聞くから待ってな!」
俺は今、5人の姉達とのクリスマスパーティーの準備で大忙しだ
「クリスマスってこんな忙しかったんか…今まで経験無かったからなぁ」
「お父様も酷いわよねぇ、たっくんがこんなクリスマスパーティーもロクに経験の無い子になっちゃったのはお父様のせいよぉ?」
「肝心な父上も仕事でいないしな、叱ろうにも叱れん…まぁ今回はたー坊の為のクリスマスパーティーじゃからな、盛大に楽しもうぞ!」
俺がクリスマスについて無頓着だったのもあるが、娘達からの親父の株がだだ下がりで気の毒に思える
まぁ長年俺と姉達を離していたんだから、これくらいは因果応報だろうな
「たくまちゃん、これからはみんなでクリスマスを祝えますからね?もうたくまちゃんに寂しい思いなんてさせませんから♪」
「たくま…これからは、おねーちゃんが一緒だよ…?」
「タクの為にこのねぇねぇがクリスマスのいろはについてちゃんと手取り足取り教えてあげるからね!」
俺はみんなに言われるがままにキラキラの装飾をしたり、ツリーを運んだり…はたまた料理を作ったりと雑用をこなしていた
そしてクリスマスパーティーの準備は慌ただしくもみんながテキパキと動いてくれたおかげで結構すぐに終わった
「さ、じゃあたっくんはこれに着替えてぇ?」
「え、何これ…」
「タク、クリスマスパーティーに白衣じゃ味気ないでしょ?ドレスコードもパーティーには必要なのよ!」
「さぁさぁたくまちゃん、お姉ちゃんが着替えさせてあげますよ!」
「シロナ…抜け駆けはダメなの」
「ほらほら、みんなはおとなしく待っとれ!さぁ、たー坊は扉の外で着替えてから来るのじゃ」
いざパーティーを始めようとなった時、1着の服を渡された。赤と白の…これはサンタのコスプレみたいだけど、そうか…クリスマスパーティーだから普通はこれを着るのか
俺は扉の外で手早くサンタの服に着替えて、姉達の待っている居間へ入った
「ほぉ…♪」
「あらあら…♪」
「わぁ…♪」
「ぁ…♪」
「まぁ…♪」
みんなの視線が俺に突き刺さる、着方は間違ってないはずだけど…と、とりあえずサンタっぽいことでも言っておこうか
「め、メリークリスマス…」
「お、おぉ…メリークリスマスじゃな」
「たっくんったらよく似合ってるわぁ、やっぱ元がカッコいいと何でも似合うのねぇ」
「タクってばもー!ウケ狙いだったのになんでそんな似合うのさ!」
「たくま、似合ってるよ」
「はぅ…サンタたくまちゃん、可愛いですよぅ…♪」
感想はみんなそれぞれだ、しかし特に何か変なわけじゃなかったようだ
「ふむ、それじゃあみんな飲み物が入ったグラスはいいか?」
「ちなみにぃ、お酒以外は呑ませないわよぉ〜」
「今日のために高いの開けちゃったんだからね!」
「あぅ…お酒は、苦手なの」
「たくまちゃんはまだ未成年ですよ!」
「まぁまぁ、乾杯の一杯くらいならええやろ」
そしてみんなで卓を囲み飲み物が入ったグラスを掲げる
「よし、それじゃあ…メリークリスマスじゃ!乾杯!」
「「乾杯!」」
そしてシャクヤ姉さまの音頭によりクリスマスパーティーが始まった
「さ、まずはお楽しみ…プレゼントじゃな」
「たっくんの為にみんなで選んで買ったのよぉ〜」
「タクに似合うと思うな!私が保証するよ!」
「え、みんなから俺に?なんやろ…」
俺は少し大きめの紙袋を渡された、中身はなんだろうか
「これ…服?」
「たくま、ちゃんとしたのあまり持ってないから…」
「白衣のたくまちゃんも素敵ですが、みんなでたくまちゃんに似合う服を買ったんですよ♪」
中身は男物の服一式だった、俺にはあまり縁が無いと思っていたお洒落な感じの服だ
「わぁ…なんやお洒落な感じやな、ありがとうみんな…俺いま嬉しすぎて泣きそうやで…」
「ふむ、泣くのはちゃんと着てからじゃな?」
「せっかく買ったんですもの、さぁ着てみてちょうだい♪」
「わ、分かった!ちょっと来てみるな!」
俺は一旦また居間から出て、サンタのコスプレから貰ったプレゼントの服に着替えた
あまり着たことのあるような服じゃ無いから手間取ったがどうにか着れた
「ほぅ…なかなか似合っとるではないか、白衣は卒業じゃな?」
「まぁまぁ、これは予想外の格好良さねぇ…スタイルも良いしモデルでもいけそうよぉ」
「わ、わっ…た、タク…!か、かっこよすぎでしょ…」
「たくま、見違えたの…かっこいいよ…♪」
「た、たくまちゃん…こんなの私には刺激が強過ぎますっ!あーもうたくまちゃん、そんなかっこいいたくまちゃんが悪いんですからねっ!?」
着替えた俺に各々の感想が飛び交った、そして俺に飛び込んできたシロ姉をみんなが止めて…またパーティーの席に戻る
「えーっと、こんな立派なもの貰っといて俺自身見合うプレゼントか分からないけど…俺からもみんなにプレゼントがあるんや」
「たー坊から?」
「あらまぁ何かしら…」
「タクからなんて考えてなかったなぁ」
「…楽しみ」
「たくまちゃん、そんなに気を遣わなくたって私はたくまちゃんさえいれば…」
えーっと、たしかさっき着替えた白衣の中に隠してたはず…あったあった
「えーっと、まずはシャクヤ姉さまから…」
「ふむ、小包じゃな…開けるぞ?」
姉さまは俺から受け取った小包を開ける、そこには黄色と黒のシマシマの尻尾のキーホルダーが入っている
「姉さまに似合うかなって思って、身につけるアクセサリーとかでも良かったんだけど…姉さま指輪とかブレスレットとか着けられないと思ったから」
「たー坊、ちょっとこい…」
姉さまが俺のことを肉球のある手でおいでおいでする、声は低く唸るようで…しまった、選択を間違えたか?
「は、はい」
「お前ってやつは…なんて良い弟なんだ!この姉孝行者めっ!」
「わ、わぁっ!?」
いままでで一番激しく、頭を揺さぶられるようななでなでが俺を襲った。視界や身体全体がシェイクされるような振動だ、目の前がぐるぐるする
「ね、姉さん!やりすぎやりすぎ!」
「あっ、すまぬ…感動してしまってつい、な?わっはっはっは!」
「よ、喜んでもらえたなら良かったで〜…」
間一髪のところで姉さまが止められた、酒も入っているようで物凄い上機嫌だ…あんなに喜んでもらえるならこちらも嬉しい限りだ
「つ、次はユウねーさん…」
「あらまぁ何かしら?」
ねーさんは手に取った小包を開けた、中に入っているものは少し大きめのグラスで…不思議な凹凸がある
「これはまた…何かのグラスかしら?」
「あぁ、ねーさんはお酒よく飲むみたいで…人間用のグラスじゃ飲みにくいかなって思ったから、龍の手に合わせて持ちやすくしたグラスを用意したんや」
ちなみにこれはうちの研究所で、俺が戯れに作ったもので…何故か製品化まで企画が通り、近日中に市場に出回るらしい
「あらまぁ、これなら不用意に落としたりしないわねぇ…実は結構困ってたのよぉ、ありがとねたっくん♪」
「ぐ、ぐぇ…どういたしましてぇ…!」
ねーさんの下半身が俺をぐるぐる巻きにした、このまま絞め落とされてしまうんじゃないかという程の強さでかなりヤバイ…まぁユウねーさんが手加減を忘れるほど喜んでくれているわけだけど…
「ちょっと姉さん、やりすぎです!」
「あ、あらあら…ちょっとはしゃぎ過ぎちゃったかしらぁ?」
「だ、大丈夫やで…じゃあ次はエルねぇねぇ」
「えへへ〜、待ってましたぁ♪」
エルねぇねぇは器用に羽の手で俺が渡した小箱を開ける、中に入っていたのはねぇねぇの羽根と同じ色をした煌びやかな青い羽根のヘアピンだ
「わっ…きれー、ヘアピンだね!」
「ほら、ねぇねぇってば髪短いからあまり弄れへんやろ?ヘアピンくらいならつけられるかなって思って…」
「えへへ、ねぇタク!つけてつけて!」
ねぇねぇと向き合うように前髪の端にヘアピンをつけてあげる、ふわりと髪から良い匂いがしてドキッとする
「つ、つけたで…」
「んふふ、ありがと…ぎゅーっ♪」
見つめ合うようにエルねぇねぇが俺に手を回して抱きしめる、視線が合っているからかとても恥ずかしい
「こらエル!やめんか!」
「えへへ〜、はぁい♪」
シャクヤ姉さまがねぇねぇを引き離してくれた、助かった…あのままだと俺はまともな考えが出来そうになかった
「えっと、次は…シルクねぇちゃん」
「ん…」
俺は珍しく目をキラキラさせているシルクねぇちゃんに小さい紙袋を渡した、すぐに中を確認すると…
「ぁ…これ、ブローチ…?」
「あぁ、ねぇちゃん花好きやろ。俺は花とかよう分からんかったけど、ねぇちゃんに似合う様に可愛い花のやつ選んできたんやで」
「っ〜…!」
ねぇちゃんの頬が赤く染まり、今までで一番激しく触角をピコピコさせた…たぶん、喜んでると思う
「ほら、せっかくやしつけさせてな。おぉ、やっぱり似合うなぁ…かわええよねぇちゃん」
「ぁ、ぁぅ…あ、ありがと…っ」
顔を真っ赤にしてシルクねぇちゃんが俯いてしまった、俺の手をぎゅっと握っているところを見ると照れているらしい
マンティスのねぇちゃんがここまで分かりやすく表情が出るのは珍しいなぁ
「じゃあ最後に…シロ姉」
「はい、たくまちゃんがくれるものならなんだって喜んでいただきますよ♪」
「うーん、シロ姉はそういうと思ってたから…一番何選ぼうか悩んだんやけど…はい、これ」
俺は最後に残った小包をシロ姉に渡した。シロ姉はしばらく色々な角度で見つめた後、慎重に小包を開ける
「まぁ…これは、櫛…ですね」
「へへ、よく模様を見てや」
「あ、白い蛇の柄ですね!可愛らしいですよー」
シロ姉は和風な感じなので色々と考えたのだ、そもそも女性に何かプレゼントすること自体がなかったので気の利いたものとか思い浮かばなかったのだが…
「シロ姉って言えばその綺麗な白い髪かなって思ってさ、櫛とかあれば嬉しいと思って…」
「た、たくまちゃん…おねえちゃんは感激です!こ、これはもう愛の告白と受け取ってもよろしいんですよねっ!?」
「わ、シロね…ぐぇっ!?」
身体の骨が軋むような強さで全身が締め付けられた、いかん酒が入っているからかシロ姉はまるで加減をしていない
「もぉたくまちゃんったら!ちゅっ♪ちゅっ♪」
「あーあー!シロナ!タクが青くなってる!」
「こらシロナ!たー坊が死んでしまうわ!加減をせい加減を!」
「たくまちゃん♪たくまちゃん♪たくまちゃん♪」
「もぉシロナちゃんったらぁ、ほら離れなさい…っ!」
「だ、ダメなの…ビクともしないみたい…」
薄れゆく意識の中で、俺が最後に見たのは…幸せそうなみんなの笑顔だった
みんな喜んでくれたみたいだし、いいクリスマスだったなぁ…
「わー!タクー!」
「たー坊ー!」
「たくま…っ!」
「たっくんっ!」
「え、きゃーっ!たくまちゃんー!」
でも、こんな風に、命の危険があるなら…次は、用心しなくちゃ…なぁ…
…
俺自身、研究所にいた10年間はクリスマスなんて関係無かった…しかし実家に帰ってきた今は違う
「タク!買い出し行ってきたよ!」
「たー坊、こっちの飾り付けも頼むぞ」
「たくまちゃん、大変そうですからお姉ちゃんがそっちも手伝っちゃいますよー」
「たくま…お料理の方、手伝って」
「たっくん、お酒たくさん持ってきたわよぉ」
「はいはい!一つずつ聞くから待ってな!」
俺は今、5人の姉達とのクリスマスパーティーの準備で大忙しだ
「クリスマスってこんな忙しかったんか…今まで経験無かったからなぁ」
「お父様も酷いわよねぇ、たっくんがこんなクリスマスパーティーもロクに経験の無い子になっちゃったのはお父様のせいよぉ?」
「肝心な父上も仕事でいないしな、叱ろうにも叱れん…まぁ今回はたー坊の為のクリスマスパーティーじゃからな、盛大に楽しもうぞ!」
俺がクリスマスについて無頓着だったのもあるが、娘達からの親父の株がだだ下がりで気の毒に思える
まぁ長年俺と姉達を離していたんだから、これくらいは因果応報だろうな
「たくまちゃん、これからはみんなでクリスマスを祝えますからね?もうたくまちゃんに寂しい思いなんてさせませんから♪」
「たくま…これからは、おねーちゃんが一緒だよ…?」
「タクの為にこのねぇねぇがクリスマスのいろはについてちゃんと手取り足取り教えてあげるからね!」
俺はみんなに言われるがままにキラキラの装飾をしたり、ツリーを運んだり…はたまた料理を作ったりと雑用をこなしていた
そしてクリスマスパーティーの準備は慌ただしくもみんながテキパキと動いてくれたおかげで結構すぐに終わった
「さ、じゃあたっくんはこれに着替えてぇ?」
「え、何これ…」
「タク、クリスマスパーティーに白衣じゃ味気ないでしょ?ドレスコードもパーティーには必要なのよ!」
「さぁさぁたくまちゃん、お姉ちゃんが着替えさせてあげますよ!」
「シロナ…抜け駆けはダメなの」
「ほらほら、みんなはおとなしく待っとれ!さぁ、たー坊は扉の外で着替えてから来るのじゃ」
いざパーティーを始めようとなった時、1着の服を渡された。赤と白の…これはサンタのコスプレみたいだけど、そうか…クリスマスパーティーだから普通はこれを着るのか
俺は扉の外で手早くサンタの服に着替えて、姉達の待っている居間へ入った
「ほぉ…♪」
「あらあら…♪」
「わぁ…♪」
「ぁ…♪」
「まぁ…♪」
みんなの視線が俺に突き刺さる、着方は間違ってないはずだけど…と、とりあえずサンタっぽいことでも言っておこうか
「め、メリークリスマス…」
「お、おぉ…メリークリスマスじゃな」
「たっくんったらよく似合ってるわぁ、やっぱ元がカッコいいと何でも似合うのねぇ」
「タクってばもー!ウケ狙いだったのになんでそんな似合うのさ!」
「たくま、似合ってるよ」
「はぅ…サンタたくまちゃん、可愛いですよぅ…♪」
感想はみんなそれぞれだ、しかし特に何か変なわけじゃなかったようだ
「ふむ、それじゃあみんな飲み物が入ったグラスはいいか?」
「ちなみにぃ、お酒以外は呑ませないわよぉ〜」
「今日のために高いの開けちゃったんだからね!」
「あぅ…お酒は、苦手なの」
「たくまちゃんはまだ未成年ですよ!」
「まぁまぁ、乾杯の一杯くらいならええやろ」
そしてみんなで卓を囲み飲み物が入ったグラスを掲げる
「よし、それじゃあ…メリークリスマスじゃ!乾杯!」
「「乾杯!」」
そしてシャクヤ姉さまの音頭によりクリスマスパーティーが始まった
「さ、まずはお楽しみ…プレゼントじゃな」
「たっくんの為にみんなで選んで買ったのよぉ〜」
「タクに似合うと思うな!私が保証するよ!」
「え、みんなから俺に?なんやろ…」
俺は少し大きめの紙袋を渡された、中身はなんだろうか
「これ…服?」
「たくま、ちゃんとしたのあまり持ってないから…」
「白衣のたくまちゃんも素敵ですが、みんなでたくまちゃんに似合う服を買ったんですよ♪」
中身は男物の服一式だった、俺にはあまり縁が無いと思っていたお洒落な感じの服だ
「わぁ…なんやお洒落な感じやな、ありがとうみんな…俺いま嬉しすぎて泣きそうやで…」
「ふむ、泣くのはちゃんと着てからじゃな?」
「せっかく買ったんですもの、さぁ着てみてちょうだい♪」
「わ、分かった!ちょっと来てみるな!」
俺は一旦また居間から出て、サンタのコスプレから貰ったプレゼントの服に着替えた
あまり着たことのあるような服じゃ無いから手間取ったがどうにか着れた
「ほぅ…なかなか似合っとるではないか、白衣は卒業じゃな?」
「まぁまぁ、これは予想外の格好良さねぇ…スタイルも良いしモデルでもいけそうよぉ」
「わ、わっ…た、タク…!か、かっこよすぎでしょ…」
「たくま、見違えたの…かっこいいよ…♪」
「た、たくまちゃん…こんなの私には刺激が強過ぎますっ!あーもうたくまちゃん、そんなかっこいいたくまちゃんが悪いんですからねっ!?」
着替えた俺に各々の感想が飛び交った、そして俺に飛び込んできたシロ姉をみんなが止めて…またパーティーの席に戻る
「えーっと、こんな立派なもの貰っといて俺自身見合うプレゼントか分からないけど…俺からもみんなにプレゼントがあるんや」
「たー坊から?」
「あらまぁ何かしら…」
「タクからなんて考えてなかったなぁ」
「…楽しみ」
「たくまちゃん、そんなに気を遣わなくたって私はたくまちゃんさえいれば…」
えーっと、たしかさっき着替えた白衣の中に隠してたはず…あったあった
「えーっと、まずはシャクヤ姉さまから…」
「ふむ、小包じゃな…開けるぞ?」
姉さまは俺から受け取った小包を開ける、そこには黄色と黒のシマシマの尻尾のキーホルダーが入っている
「姉さまに似合うかなって思って、身につけるアクセサリーとかでも良かったんだけど…姉さま指輪とかブレスレットとか着けられないと思ったから」
「たー坊、ちょっとこい…」
姉さまが俺のことを肉球のある手でおいでおいでする、声は低く唸るようで…しまった、選択を間違えたか?
「は、はい」
「お前ってやつは…なんて良い弟なんだ!この姉孝行者めっ!」
「わ、わぁっ!?」
いままでで一番激しく、頭を揺さぶられるようななでなでが俺を襲った。視界や身体全体がシェイクされるような振動だ、目の前がぐるぐるする
「ね、姉さん!やりすぎやりすぎ!」
「あっ、すまぬ…感動してしまってつい、な?わっはっはっは!」
「よ、喜んでもらえたなら良かったで〜…」
間一髪のところで姉さまが止められた、酒も入っているようで物凄い上機嫌だ…あんなに喜んでもらえるならこちらも嬉しい限りだ
「つ、次はユウねーさん…」
「あらまぁ何かしら?」
ねーさんは手に取った小包を開けた、中に入っているものは少し大きめのグラスで…不思議な凹凸がある
「これはまた…何かのグラスかしら?」
「あぁ、ねーさんはお酒よく飲むみたいで…人間用のグラスじゃ飲みにくいかなって思ったから、龍の手に合わせて持ちやすくしたグラスを用意したんや」
ちなみにこれはうちの研究所で、俺が戯れに作ったもので…何故か製品化まで企画が通り、近日中に市場に出回るらしい
「あらまぁ、これなら不用意に落としたりしないわねぇ…実は結構困ってたのよぉ、ありがとねたっくん♪」
「ぐ、ぐぇ…どういたしましてぇ…!」
ねーさんの下半身が俺をぐるぐる巻きにした、このまま絞め落とされてしまうんじゃないかという程の強さでかなりヤバイ…まぁユウねーさんが手加減を忘れるほど喜んでくれているわけだけど…
「ちょっと姉さん、やりすぎです!」
「あ、あらあら…ちょっとはしゃぎ過ぎちゃったかしらぁ?」
「だ、大丈夫やで…じゃあ次はエルねぇねぇ」
「えへへ〜、待ってましたぁ♪」
エルねぇねぇは器用に羽の手で俺が渡した小箱を開ける、中に入っていたのはねぇねぇの羽根と同じ色をした煌びやかな青い羽根のヘアピンだ
「わっ…きれー、ヘアピンだね!」
「ほら、ねぇねぇってば髪短いからあまり弄れへんやろ?ヘアピンくらいならつけられるかなって思って…」
「えへへ、ねぇタク!つけてつけて!」
ねぇねぇと向き合うように前髪の端にヘアピンをつけてあげる、ふわりと髪から良い匂いがしてドキッとする
「つ、つけたで…」
「んふふ、ありがと…ぎゅーっ♪」
見つめ合うようにエルねぇねぇが俺に手を回して抱きしめる、視線が合っているからかとても恥ずかしい
「こらエル!やめんか!」
「えへへ〜、はぁい♪」
シャクヤ姉さまがねぇねぇを引き離してくれた、助かった…あのままだと俺はまともな考えが出来そうになかった
「えっと、次は…シルクねぇちゃん」
「ん…」
俺は珍しく目をキラキラさせているシルクねぇちゃんに小さい紙袋を渡した、すぐに中を確認すると…
「ぁ…これ、ブローチ…?」
「あぁ、ねぇちゃん花好きやろ。俺は花とかよう分からんかったけど、ねぇちゃんに似合う様に可愛い花のやつ選んできたんやで」
「っ〜…!」
ねぇちゃんの頬が赤く染まり、今までで一番激しく触角をピコピコさせた…たぶん、喜んでると思う
「ほら、せっかくやしつけさせてな。おぉ、やっぱり似合うなぁ…かわええよねぇちゃん」
「ぁ、ぁぅ…あ、ありがと…っ」
顔を真っ赤にしてシルクねぇちゃんが俯いてしまった、俺の手をぎゅっと握っているところを見ると照れているらしい
マンティスのねぇちゃんがここまで分かりやすく表情が出るのは珍しいなぁ
「じゃあ最後に…シロ姉」
「はい、たくまちゃんがくれるものならなんだって喜んでいただきますよ♪」
「うーん、シロ姉はそういうと思ってたから…一番何選ぼうか悩んだんやけど…はい、これ」
俺は最後に残った小包をシロ姉に渡した。シロ姉はしばらく色々な角度で見つめた後、慎重に小包を開ける
「まぁ…これは、櫛…ですね」
「へへ、よく模様を見てや」
「あ、白い蛇の柄ですね!可愛らしいですよー」
シロ姉は和風な感じなので色々と考えたのだ、そもそも女性に何かプレゼントすること自体がなかったので気の利いたものとか思い浮かばなかったのだが…
「シロ姉って言えばその綺麗な白い髪かなって思ってさ、櫛とかあれば嬉しいと思って…」
「た、たくまちゃん…おねえちゃんは感激です!こ、これはもう愛の告白と受け取ってもよろしいんですよねっ!?」
「わ、シロね…ぐぇっ!?」
身体の骨が軋むような強さで全身が締め付けられた、いかん酒が入っているからかシロ姉はまるで加減をしていない
「もぉたくまちゃんったら!ちゅっ♪ちゅっ♪」
「あーあー!シロナ!タクが青くなってる!」
「こらシロナ!たー坊が死んでしまうわ!加減をせい加減を!」
「たくまちゃん♪たくまちゃん♪たくまちゃん♪」
「もぉシロナちゃんったらぁ、ほら離れなさい…っ!」
「だ、ダメなの…ビクともしないみたい…」
薄れゆく意識の中で、俺が最後に見たのは…幸せそうなみんなの笑顔だった
みんな喜んでくれたみたいだし、いいクリスマスだったなぁ…
「わー!タクー!」
「たー坊ー!」
「たくま…っ!」
「たっくんっ!」
「え、きゃーっ!たくまちゃんー!」
でも、こんな風に、命の危険があるなら…次は、用心しなくちゃ…なぁ…
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15/12/25 22:09更新 / ミドリマメ
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