優しくて甘い毒
俺、寒河江(さがえ)リョウは都会を離れて懐かしい生まれ故郷にやってきた
都会の騒がしくも冷たい空気とは違う静寂な、それでいて暖かな空気のこの地方にやってくるととても懐かしい気分になった
別に俺はそんな懐かしい生まれ故郷を観光や、帰省しに来たわけではなく…仕事があってわざわざ都会から何時間も掛けて故郷まで帰ってきたのだ
俺の仕事は生物関係の研究…微生物から魔物まで幅広く研究しており、その中でも俺はまぁまぁ若いながらもある程度の功績を挙げている
普通俺くらい若いとなると、その道の仕事に就いたばかりの新人…当然功績などそうそう挙げられるものではない
しかし俺は期待の若手新人…というわけではなく、両親が研究者であり小さい頃から仕事を手伝っていて周りより経験や知識は豊富ってだけであり、特別出来が良い訳ではない
「さて、懐かしさに浸っている場合じゃないな…仕事仕事」
今回俺に任された仕事は、地方の山に出る怪物の調査をしてほしい…とのことだった
最初は耳を疑った、こんな仕事が俺に任されるなんて…そもそもこの山に出る怪物って言うのは噂や言い伝えみたいなもので確実性が無いに等しい
大昔ならば未確認生物、ネッシーやツチノコと同様にいないという事で議論は終わる筈だった。しかし、今世界には俺ら人間の他に魔物と呼ばれる知的生命体が存在している
もしかしたら人間社会に溶け込めない逸れた魔物かもしれないということ、それから新しい生物かもしれないからという理由で研究室に仕事が来たらしい
(そもそも俺はこの地方出身で、その件の山で遊んだことがあるが全くその話は知らなかったし…ただのデマだとは思うんだけど)
たまたま空いている研究者が俺で、なおかつその地方出身だということで駆り出されてしまった…というかこう言う捜索の調査は研究者に依頼するもんじゃ無いだろうに…
「やれやれ、まぁ仕事だからなぁ…探していなかったら久々に故郷を満喫して帰ろうかな」
俺は仕事資料として渡された紙束を鞄から取り出す、目撃情報や場所など捜索に必要なことが記してあるのでこれを使えということだ
この地方には研究内容自体は違うが、俺が所属している研究所と同じような研究所がある。そこは昔、俺が両親の手伝いで出入りしていたこともあり知り合いもいる
俺一人では大変そうなので、知り合いを頼りにその研究所へ足を運んだ。アイツは俺と同じ年で俺と似たような、親の手伝いで研究所に出入りしていた
俺と違って優秀で、よく名前を聞くので元気にやっているようだしこの仕事も手伝ってもらおうかと思ったのだが
「あぁ、アイツなら暫く前に「姉達に会いに行く」って研究所開けてるよ」
「なんと」
どうやら暫くいないらしい、そういえばアイツには5人の魔物の姉がいるのだと聞いたな…
「どうやらその中の誰かと結婚するんだとか…あくまで噂だけどな」
「何ぃ、アイツ女には興味ありませんよーって感じだったのに…俺にも出会いがほしいなぁ」
「君は生物関係の研究者だろ、魔物も例外じゃないだろうし上手くいけば…」
「周りは結構そうなってるんだけどなぁ…俺には全然ない。…言ってて悲しくなってきたからそろそろ行きますか、アイツにはよろしく言っといて」
そういって俺は地方の研究所を後にした、どうやら仕事は一人でやれということらしい
山の所有者や近隣の村には話が通ってるから、好きに調査をしてくれってことなのだが…まずどうしようか
とりあえず資料の目撃情報に目を通してみる
「ふむ…」
長く大きなムカデのような姿が見えた…女性の声もした…人は襲われてない、襲われたと思われる動物の死体を地面に埋める習性を持つ…
「俺があの山で遊んだときはそんなもん見なかったんだけどなぁ…目撃情報とかは結構詳しいな」
俺はまず、女性の声という点に着眼した。人とは違う姿持ち、それでいて人間の女性に近いのが魔物だ…魔物には基本雌しかいない、人間から変異するインキュバスは例外だが
ムカデの姿がということは…大百足と呼ばれる魔物が近いか、あれは資料で見たときは大きなムカデの下半身に女性の上半身みたいな感じだった
「十中八九、この魔物だろうな…しかし今頃人と関わらない魔物とはなぁ」
大昔は、まだ魔物に差別意識があり人間と魔物とで色々問題はあったが今じゃ全然なくなったはずで…逸れた魔物というのは滅多にいない
とはいえ、虫が苦手な人というのは一定数存在するわけで…今でも虫系の魔物を敬遠する人がいないわけじゃない
しかしこの地方は自然も多いし、虫が苦手な人はあまりいないはず…まぁここら辺の地域じゃ都会ほど魔物がいるわけでもないから、驚かれるとは思うが
「わざわざ山で噂が立つなんて…まぁ研究にはあんまり関係無さそうだけど仕事だからな、注意とか保護くらいはしてやるかな」
その時の俺は今思うと物凄く迂闊だっただろう、いくつもの仕事で魔物と関わってきたにも関わらず油断しきってきた、いや…むしろ研究で魔物と関わってきたからこその油断だったのか
「ふぅ、山登りなんて久々だなぁ」
俺は件の山までやってきていた、近隣の村で話を聞いたり荷物を整えたりして準備は完璧だ
そこまで大きな山じゃないし、ある程度の地理はうっすらと覚えている…遭難はしないだろうし日が暮れるまでには下山できるだろう
俺は山を進んだ、暫くして奥深くまでやってくると気候が悪くなってきた…山というのは気候が変わりやすいのだ
「雨か…困ったな」
雨の山というのは危険だ、と昔両親に言われたことがある。しかし濡れたままじゃ大変なので、俺は近くの雨がしのげそうなところを探した
「あっ」
そして…泥に足を滑らせて転び俺は急な坂道のようになっている傾斜を転がり落ちる
「ぐぉ…痛っ…!」
身体中を強く打ち、痛みに悶えながら傾斜を転がり降る俺はやっと地面に着いたかと思われたが…運悪く頭を強く打ち、気を失った
雨が身体を打ち付ける音だけが耳によく残っていた
…
「…ぅ、ん」
近くでパチパチと弾けるような音と、身体に伝わる暖かさに目を覚ました
焚き火…?ここは…洞窟のようだ、外は雨がまだ降っているみたいだ
「あ、ぅ…お、起きた…かな?」
急に目の前に、とても美しい女性が現れて暫し見入ってしまった
「あ、あぅ…お、起きてないの…?で、でも目は覚ましたし…」
「…あ、いや、起きてる…起きてます…」
ハッと我に返って起き上がった、すると頭の鋭い痛みと身体中に鈍い痛みが走った
「ぐぉっ…いってぇ…!」
「ま、まだ起き上がっちゃだめだ…頭、強く打ってた…」
「お、覚えてる、足を滑らせて…それで」
美しい女性の方をよく見ると、上半身は大事な箇所こそ着物のような布で隠されている…しかし下半身からは長く節々に分かれ、そこから無数の足を生やしたムカデの身体…頭には二本の触角がある
「あ、あぅ…そんなに身体を…み、見ないで…」
「あ、す、すいません…」
女性の身体をジロジロと見るのは確かに失礼だった、さっと目線をこの彼女に合わせた
「ご、ごめんね…怖いだろうけど、君をほっとくわけにはいかなかったから…」
どうやら彼女は俺の手当てをしてくれたらしい、包帯やら何やらで見事な応急処置がしてある
「別に怖くなんて…助けてくれてありがとう」
俺がそういうと、彼女は驚いたような表情を見せた。
「こ、怖く…ないの?私、こんな姿で…魔物だよ…?」
「いや、全然?魔物なんて今まで何度も見てきてるし」
仕事柄今までに見てきた魔物は数え切れない、別個体の大百足だって見たことあるし…そもそも俺は虫が苦手なわけじゃなくてむしろ得意だ
「お、大百足…だよ?み、みんな私を変な目で見るの…君は違うの?」
「うーん、俺は別にそんなことないけど…」
確かに何も知らない人は最初は驚いてしまったりするかもしれない、結構インパクトあるしな
「あー…その、もしかして人間が変な目で見てくるのが怖くて人目のつかないように山に篭ってたりする魔物だったりする?」
「わっ、すごい…何で分かったの…?」
「稀にいるんだ、人間からの奇異な目で見られるのが耐えきれなくて人目のつかないとこで暮らす魔物ってのはさ」
「う、うん…わ、私、誰かと話すのが…苦手で、人間からも変な目で見られるから…迷惑掛けないように山で暮らしてたの…」
確かに俺と話すとき、言葉が少したどたどしい…人間にもコミュニケーションがうまく取れなくてって人はいるし…魔物だってそういう個体を見たことがある
「他の魔物は、みんなちゃんとしてるけど…わ、私はちゃんと話せなくて…人間からも怖がられるし…」
「あー…うん、それは辛かったな…でもそんな後ろ向きに考えなくてもいいんだぞ?誰かと話すのが苦手ってのは対して珍しくないし…」
「で、でも…人間、ってそういう性格の仲間を、集団で傷つけるって…イジメって言うんでしょ…?わ、私…そんなのやだ…怖いよ…」
どうやら人間という生き物を勘違いしているような…いやまぁそういう人だっていっぱいいるから否定はできないけどさ
「人間みんながみんなそんなわけじゃないって、いい奴もいれば悪い奴もいるんだ。ちなみに俺はいい奴側って自負してる」
「う、うん…君は、な、なんだか不思議…私を怖がらなかったし、話しやすいし…いい人間、かな」
「うんうん、とりあえずそれが分かればいい」
ひとまず俺への印象は悪くないらしい、こちらは助けてもらっているので出来るなら彼女に不快な思いはさせたくない
「あぅ…君は何でこんな山奥に…?雨だって降ってるし、危ないよ…」
「いや俺が登ったときはまだ晴れてたんだけど…まぁ山は天気が変わりやすいからなぁ、俺は仕事で来たんだけど…」
仕事のことを思い出した、件の怪物というのはやはり彼女なのだろう…目撃情報や聞いた話はやはり当てにならない
人目につかないようにひっそりと暮らしていた彼女を怪物扱いだなんて…人間が怖いというのに怪我して倒れた俺を助けてくれる心優しい素敵な魔物じゃないか
「お仕事…?や、山の猟師さんには見えないけど…」
「あぁ、この山で怪物が出るとかで調査を任されて…目撃情報によると、まぁ十中八九大百足さんだけど」
「あ、あぅ…そんな風に思われてたんだ…迷惑掛けないように山でひっそりと暮らしてるだけなのに…」
ああいかん失言だったか、こんなこと言ったら更に彼女は人間不信に陥ってしまうじゃないか
「き、君は…わ、私を見つけてどうするの…?い、痛いのはやだよぉ…」
「いや別に何もしないし…人に危害を加えてるならまだしも、わざわざ助けてくれた心優しい大百足さんに恩を仇で返すようなことはできないっての」
「あ、あぅ…本当に…?」
「怖くて信じられないなら俺を何かで拘束でもしてくれ、まぁそもそも怪我で動けないけどな」
「君は…たぶん、いい人間だから…信じる」
「ありがとう、優しい大百足さん」
俺がそういうと、彼女は何か言いたげに口をモゴモゴさせた
「あ、うぅ…」
「何、どうかしたのか?」
「…な、まえ…」
名前?
「き、君の、名前は…?」
「ああそういえば自己紹介してなかった、俺は寒河江リョウ。生物関係の研究をしていて、さっきも言ったように山の調査で来たんだ」
「わ、私は…アカネ…魔物で、大百足…だよ」
「アカネさんか…成る程触角とか足とか赤いところがあるからか、いい名前だなぁ。俺なんかリョウってのは良いってのから取られてるんだ、安直だよなー」
「あ、あぅ…」
俺がアカネさんの名を褒めると照れたのか顔を赤くして俯いてしまった、ここまで茜色にならなくても…綺麗な女性ということもあり俺もドキドキするなぁ
「アカネさんは褒めると顔が茜色になって綺麗だなぁ」
「っ…!?」
おっと思ったことがすぐに口に出てしまうのは俺の悪い癖だ、ただでさえ失言が多いんだしそんなんじゃモテないよなぁ
「ご、ごめん…俺って思ったことすぐ口にしちゃうから…」
「あ、ぅ…だ、大丈夫…わ、私…ご飯取ってくるから…!」
そう言ってアカネさんは脱兎のごとく外に出て行ってしまった、雨がまだ降ってるようだが大丈夫だろうか?
「くそー、身体は痛くてろくに動かないし…もう情けないなぁ」
俺は頭だけを動かして洞窟内を見渡した、ここが山の何処なのか知らないけどアカネさんはここで暮らしているようで生活感にあふれていた
「人間社会に入らなくてもちゃんと生活していけるんだなぁ」
魔物の強い生命力にある種の感動を覚える、大体が雌…女性なのに凄いなぁ
しかし一度状況を整理して、アカネさんが優しい魔物だって知れたら何だか気が抜けて眠くなってきた
ここはベッドのように柔らかい植物が敷かれてて寝心地も良さそうだ…どうせ動けないしアカネさんが戻るまで寝ようか
…
心地よい何かが頭に触れているような感触がして、不意に目を覚ました
「ぁ…」
「アカネ、さん?」
「お、おはよう…」
目の前には再びアカネさんがいた、そしてアカネさんから伸びる手が俺の頭に…どうやら頭を撫でられていたらしい
「あ、あぅ…ち、違うんだ…その、け、怪我が早く治るかなって…か、可愛い寝顔だったからとかじゃなくて…!あぅ…だから、その…」
「はいはい落ち着いて、ゆっくりで大丈夫だから…一言ずつ慌てないで…な?」
「う、うん…帰ってきたら、寝てたから…頭の怪我が一番深くて…頭をさすってあげれば少しは良くなるかなって…」
なんて優しいんだアカネさんは、手当までしてくれた上に更にそんな心配までしてくれるとは…
「そうか、ありがとう」
「お、怒ってない…?」
「なんで怒る必要があるのさ、心配してくれてるんだからありがたいって…それで、手は止まってるけどもう撫でてはくれないの?」
「え、あ…ぅ…いいの?」
「いいというか、してほしい…とても心地よかったし…怪我も早く治りそうだからな」
「あ、あぅ…わかった、頑張る…♪」
再びアカネさんが俺の頭を撫でる、こりゃ怪我もすぐに治りそうだなぁ…
俺って昔からあまり親に甘やかされてこなかったから、こう甘やかされるようなのに密かな憧れがあった…まさかこんな形で叶うとは
「あは、リョウ…子供みたいだね…♪」
「確かに背はあまり高くないけどさぁ、一応成人してんのよー俺…おっさんよ、おっさん」
「わ、私には若く見えるけど…」
流石におっさんは言い過ぎか、まだ若い若いピチピチ(死語)の若者だしな
「あっ…」
ふとお腹の音が鳴った、そういえば今日は何も食べてなかった…
「あぅ…今ご飯用意するから、さっき狩ってきたんだ…」
「何から何まで申し訳ない…」
恥ずかしくて死にそうだ、どうしてこう俺はこんな情けないのだろうか…ってアレ今アカネさん狩ってきたって言ったか?
「今日は鹿が獲れたんだ…人間は火を通さないと食べれないんだよね、焼いてあげる…」
どうやらさっきのうちに鹿を狩猟したらしい、奥から鹿を引っ張ってきた。流石大百足というか…今時凄いサバイバル能力だ
「ごめんなさい、いただきます…」
そう言いながら器用に鹿を解体していくアカネさん、そして切り分けた沢山の肉を俺の前に置いた
「綺麗に捌くなぁ、凄い…俺には出来ないな」
「あは、慣れてるから…」
そういってアカネさんは照れくさそうにまた顔を赤くする、嬉しくはあるのか触角はピコピコ動いている
「リョウ、どのくらい…食べる?」
「アカネさんの余りでいいよ、俺は介抱されてる身だし…」
「だ、だめだ!怪我してるんだからちゃんと食べないと…」
「お、おぅ…わかった…」
アカネさんに押されて俺はいつも飯を食べるより多い量の肉を食べることになった、怪我で動けないのでアカネさんに食べさせてもらうことになったのだが…
「は、はい…焼けたから、く、口開けて…?」
「う、うん…」
とこんな感じで初々しいカップルのようにお互いが照れあって食べ終えるのにやたらと時間が掛かってしまった
「ごちそうさま、俺が怪我してなければちゃんと一人で食べれたんだけど…」
「し、仕方ないよ…私は大丈夫だから、ほ、ほら…包帯を取り替えてあげる…」
献身的にアカネさんが看病してくれたおかげか、頭の怪我自体はもう傷が塞がりかけていた
「大丈夫…?痛く、ないかな…」
「まぁ怪我してんだし多少痛いのは仕方ないだろ、男は我慢さ」
飯食ったり休めたりしたからか、いくらか身体は楽になった。明日ぐらいになれば体を動かすことくらいはできるだろう
「とりあえず、身体を休めよ…?その、寝床は一つだから…私も寝るけど、ちょっとだけ我慢してね…」
そういって焚き火を消して寝床に入ってくるアカネさん、下半身が長いので丸まめて寝る体制にはいった
「あ…私の身体を枕にしても大丈夫だからね」
「え、あ…うん」
流石に恩人にそんな失礼な真似は出来ない、大人しく端によって寝ることにしよう
そうして俺は目を閉じて寝ようと意識を集中させるのだが…夜の山ということ、さっきまで着いていた焚き火が消えたことで予想外の肌寒さに身を震わせる
「…寒い」
寝ようかとは思うが思いの外寒い、少しだけアカネさんに寄って…
「ぁ…リョウ…?」
「ご、ごめん…起こしちゃったか」
「う、ううん…大丈夫…どうしたの…?」
「いや…その、ちょっと寒くて…少しアカネさん側に寄ろうかと…」
「あぅ…そうだよね、今日はちょっと寒いかも…」
アカネさんが長い身体をくねらせると、俺の身体を包むように優しく巻きついてきた…虫って冷たいイメージだったけど、アカネさんの身体はあったかい
「あは、ちょっと恥ずかしいけど…私もあったかいし、これなら大丈夫かな…?」
「あ、ありがとう…」
物凄く恥ずかしいが、アカネさんは厚意でしてくれてるのを断るわけにはいかない…暖かいしこのまま寝させてもらうことにしよう
…
朝、目を覚ますと身体が何か暖かいものに包まれてる感覚で目を覚ました
「…あ、そうか」
昨晩アカネさんが俺を暖めてくれる為に巻きついてくれてたのを思い出す、当の本人はまだ寝ているようだ
昨日より身体の痛みは引いて歩けるようにはなっているようだ、俺は起こさないように巻きついているアカネさんの身体から抜け出す
「ふぅ、だいぶお世話になっちゃったなぁ…」
昨日は俺が寝顔を観察されていたが、今日は俺がアカネさんの寝顔を観察する
本当に美人だな…少しだけ憂いを見せるような雰囲気で、優しくて…それですごい照れ屋さんだけど意外と大胆…
おっと、何を考えてるんだ俺は…アカネさんは俺を助けてくれた恩人だぞ?変なことを考えるなんて失礼だ…こんな優しい魔物が、なんで周りから変な目で見られるんだろうなぁ
「…ぁう…?り、リョウ…早起きだね…」
「あ、おはようアカネさん。ほら、アカネさんのおかげで何とか歩けるようにはなったよ」
「わ、本当だ…もう大丈夫なの?」
「痛くないわけじゃないけどね、とりあえず下山はできると思うよ。いやぁ本当にお世話になりました」
「あ、ぅ…お、おめで、とう…」
俺が元気な様子を見て、アカネさんは嬉しそうな顔を…じゃなくて何故か凄く悲しそうな顔でそういった
「え、アカネさん?な、なんでそんな悲しそうな…」
「り、リョウ…私、私ね…私を変な目で見ない人に初めて会って…すごい、嬉しかった…こんなに人と話せたの、リョウが初めてで…」
「お、おう」
「だ、だから…リョウと、離れたくなくて…でも、リョウに迷惑かけられないよ…」
アカネさん…そんなに俺のことを思ってくれてたのか、確かに彼女からしたら奇異な目で見ないで普通に喋れるのは俺くらい…
俺はアカネさんの悲しい顔は見たくないけど、それでもやらなくちゃならないことはあるんだ
「アカネさん、俺にはやらなくちゃいけないことがあるんだ。噂の怪物は、こんなにも優しい女の子だってことを伝えなくちゃいけない…皆の誤解を解かなくちゃいけないんだ…アカネさんの為にも」
「あぅ…」
「仕事だから…って言うのもそうだけど、それ以上にアカネさんと関わって…優しくしてもらって、アカネさんを好きになったから」
俺がそういうとアカネさんの顔がだんだんと茜色になって、恥ずかしそうに下を向いた
「ぁ…う…り、リョウは…本当、に…私が、好きなの…?」
「あぁ、恥ずかしがり屋で臆病だけど…今まで会ってきた誰よりも優しいアカネさんが俺は好きだ。アカネさんみたいな優しい魔物が、皆から変な目で見られるなんて…俺には耐えられない」
「…っ…ぁ、でも…っ…」
俯いたまま、何か言っているようだけど聞き取れない…何かと聞き返そうとした瞬間
「え」
首筋に鋭い痛みと快感が走った…これは、アカネさんが俺の首に…
「あ、かね…さん…?」
「ごめん…ごめんね…リョウは、私を優しい魔物って言ってくれた…でも、私は…皆の言う怖い怪物だった、みたい…」
力が抜けて、俺が膝から崩れ落ちるところを優しくアカネさんが抱きとめた
「私、リョウが好きって…言ってくれて、もう…離したくなくなっちゃったの…ごめんね、ごめんね…っ…」
「ぅ…ぐっ…」
「リョウの暖かさを知って、離れなくなっちゃった…ひどいよね、全然優しくないよ…こんな無理やり、でも…そうしないと、リョウがいなくなっちゃうから…」
俺の身体に、アカネさんの身体が巻きつき拘束をする…全身を締め付けられてるのにも関わらず甘い快楽が身体中を駆け巡る
「大丈夫…ちゃんとお世話してあげるから、ずっとここにいよ…?」
「あか…ね、…さ」
「こんなことされて、怖い…よね、そうだよ…私は怖い怪物なの…皆そう言って…」
いきなりのことに驚いたが、冷静に思考を張り巡らせる…幸い大百足の毒は死ぬようなことはない、物凄い快楽が続くだけで力が入らなくなるだけ…
アカネさんはさっきから泣きそうな顔をしている、俺が無理やり襲われるのはいいとしてアカネさんが悲しい顔してっていうのはだめだ
「別に、怖くなんかないさ…」
「嘘、怖いに決まってる…リョウは顔には出さないだけ、ポーカーフェイスが上手いんだね…」
「そんなこと、ないぞ…俺は顔によく出るし考えたことは、すぐに口から出る人だからな…」
俺がそういうとアカネさんが俺の顔を覗き込んでジッと見つめる
「…」
「じーっ」
「あぅ…」
そして俺が見つめ返してやると照れくさそうに目を逸らした
「ほ、本当に怖くない、の?わ、私…無理やり、リョウを襲おうとしてるんだよ…?」
「ないない、むしろ可愛いと思ってる」
「あぅ…」
照れくさそうに顔を赤くして俯いた、いつものアカネさんの調子になってきた
「もう一度言うぞ、アカネさんは、怖い怪物なんかじゃなくて…優しくて可愛い女の子だ。文句を言ってくる奴がいたら言え、そいつ殴るから」
「り、リョウ…」
「俺はアカネさんに悲しい顔をしてもらないたくない、正直に言うならこのまま襲われても一向に構わないけど…それならこう、アカネさんにいやらしく襲われないなぁって」
「あぅ…い、いやらしくなんて…そんな…」
余程恥ずかしいのか身をくねらせて悶えるアカネさん、どうやら先ほどの悲しい感じの空気は無くなったようだ
「あ、あの、リョウ…本気にして、いいの?わ、私…そんなこと言われたら、我慢できないよ…?」
「俺こそ本気にするけどいいの?今まで女性との付き合いがなかった童貞なめんなよ」
「わ、私…離れたくないから、リョウのこと縛って外に出してあげないかもよ…?」
「だったらアカネさんが俺から離れないでについてくればいい、外に連れ出してやる。他の人間が怖いなら俺が守ってやるから」
俺がそういうとアカネさんは俺を上半身の手で抱き寄せた、女性の柔らかさにドキドキしてしまう
「あは、そんな毒で動けないのに…説得力ないよ…?」
「ぐっ…痛いところを突くなぁ」
「…ねぇ、もし…私がリョウに、ついていくなら…ちゃんと離れないでいてくれる…?」
「当たり前だろ、何があっても離れないよ」
「絶対に…?」
「絶対に」
「…わかった、私…リョウに、ついていくよ…いつまでも、山に逃げてないで、前に進んでみる…」
「そうだな、手始めにここら辺の人たちにアカネさんの誤解を解くところから始めようか」
「うん…あ、でもその前に…」
アカネさんの手が俺の下半身に伸びてきた、俺の股間はアカネさんの毒で目に見えるほどそそり立っている
「このままじゃ、苦しいよね…?わ、私のせいだから…スッキリ、させてあげるね…♪」
毒で動けない俺はなすがままにズボンを下ろされて、下半身を露出された。ズボンを下ろすと同時に飛び出す俺の肉棒にアカネさんは顔を真っ赤にした
「そ、そんな反応されても…」
「あ、あぅ…は、初めて見たから…そ、その…おっきいね…?」
「ふぉっ!?」
ツンと指先で突かれると毒の影響か物凄い快楽を感じて身体が跳ね上がる、それを見たアカネさんもびっくりしたようで「わっ…」と身体をビクッとさせた
「い、痛かった…?」
「や、気持ち良すぎて…」
「そう、なんだ…じゃあ、その…わ、私も脱ぐから…」
そういって身体の局部を隠している着物のような布を脱いでいくアカネさん、元から際どい格好だったがこう目の前で脱いでいく姿はものすごく扇情的で…
「あぅ…は、恥ずかしいからそんな見ないで…」
「やだ、網膜に焼き付ける。アカネさんだって、俺の大事なとこ弄んだし…」
「そ、そうだけど…あぅ…恥ずかしい…」
そう言いながらもアカネさんはその女性的な身体を見せつけるように全て脱ぎ終えた、俺の肉棒はそれだけでもう爆発寸前だった
「わ、私の体…に、人間とちょっと違うけど…へ、変じゃないかな…?」
「もう辛抱堪らん、下半身が爆発しそうです」
「あは…嬉しいな…そ、それじゃ…その、しよっか…♪」
俺に巻きついているアカネさんが俺の上に乗っかるような体勢になる、限界まで奮え上がった俺の肉棒のすぐそばにアカネさんの身体の暖かさを感じる
「えっと、これを…私の中に…うぁ、入るかな…」
「ま、待ってアカネさん…は、初めてだからよく知らないけど、いきなり挿れるんじゃなくて、その…濡らしたりしないといけないんじゃ…?」
「あぅ…そうなの、かな…でも、わ、私のは…ほら…」
指先で自らの秘所、身体を走る紫色の模様の毒腺のさらに下…百足の下半身と人間の上半身の分かれ目にある肉の割れ目を開き見せつけるアカネさん
うねる様に肉の壁が奥まで続き、その奥から粘度のある透明な体液がこぷりと溢れ出して…
「も、もう準備…多分できてるから…はやく、リョウのが…欲しいな…♪」
「わ、分かった…そんなこと言われたら俺も、我慢できない…!」
毒が切れてきたのか、身体が少しだけ動く様になってきた…俺はアカネさんの身体を抱き寄せるとその秘所に自らの肉棒を押し付け…
「あ、あれ…上手く入らない…?」
「ん…♪ぁ…お互い、初めてだから…あ、焦っちゃ、ダメ…っ…ほ、ほら…ゆっくり、ね…?」
上手く挿れられない俺の手を取り、ゆっくりと肉棒を秘所に埋めていく…只ならぬ快楽が下半身から体全体に広がり力が入らなくなる
「ひぁ…っ、ぁあっ♪り、りょぉ…の、はいって…ぇ…♪」
「あ、あかねさん…っ!あか、ね…さ、まって…も、う…俺…!」
半分入った辺りで限界がやってきた、俺は下半身から昇ってくる快楽の波に耐え切れず白い欲情を爆発させた
「あぁぁぁぁぁあぁぁぁぁっ♪」
「ぐっ、あぁっ!?」
そしてそれに絶頂を迎えたアカネさんの身体に力が抜けて、ゆっくり挿れていた残りの半分が勢いよく叩きつけられる様に奥まで入る
それにまた、快楽の波が押し寄せて俺は休む間も無く二発目の射精をアカネさんの膣内の奥で爆発させた
「ひゃあぁぁっ♪おく、おくにぃっ♪し、しきゅうの、ぁっ♪あついのぁぁぁぁぁあぁぁぁぁっ♪」
「うぁっ、そんな締め付け…ぇ…!?」
二発目の射精にアカネさんはまた絶頂を迎えて身体をビクビクと反らした。膣内はギュッと締まり、身体に巻きついているアカネさんの下半身が俺をキツく締め付ける
苦しい筈なのに、それさえも快楽に変わって俺は三発目の射精をアカネさんの奥にまた叩きつける。アカネさんの身体からは力が完全に抜けてだらんと俺に身体を預けてきた
「ぁー…あー…っ♪はぁっ…はぁっ…♪」
「あ、アカネさん…」
「ぅー…?」
呂律が回らないほどの絶頂の余韻があるようで、俺の呼びかけにはだらけきった蕩けたような顔で生返事で答えるアカネさん
その姿もとても扇情的でいやらしく…そっと顔を近づけてキスをする、先ほどは毒を流された口であるがアカネさんはそのキスを抵抗なく受け入れる
「ちぅ…んっ、ふぁ…っ♪」
「んんっ…」
俺はその口の中に舌を絡めていく、アカネさんも俺の舌に絡ませてぐちょぐちょと下品な音を立ててお互い唾液を交換するように口内を貪る
「ひぃ…ぁ、ふぁぁ…っ♪こ、れ…きもち、い…あぁっ♪」
「…アカネさんはキスが好きなんだ?」
容赦なく俺はアカネさんの口内を蹂躙するように貪る、その度に身体をビクビクとさせて俺の欲情を煽り立てる
「ぢゅぅぅ…っ♪くちゅぅ…ん、これぇ…♪あたま、ぼーって…おくちで、こうびしてるみたいぃぃ♪」
只ひたすらに口内を蹂躙していると、アカネさんの身体が一際大きく跳ねる…どうやらキスだけで絶頂を迎えたらしい
「〜っ♪〜〜〜…っ♪」
そういえば研究所の資料で見た、大百足は強い毒を持ちその毒に耐性があって自らが犯されることはない
しかし男性の唾液を取り込むと、魔力反応を起こして毒が変異して耐性のない毒となり…自らが快楽に飲み込まれてしまうのだとか
(なるほど、そりゃ童貞のキスで絶頂なんて迎えないよなぁ…いやいや俺はもう童貞じゃなかったな)
「ひぃ…ぁ…ぅ…♪」
もう目の焦点は合ってなく、意識があるのかもわからない蕩けたような顔で低い呼吸を繰り返すアカネさん…流石に俺も限界だし、休憩だ…
俺はアカネさんの身体を抱きしめながら、寝床に倒れこみ意識を手放した…
…
「えー、山の怪物という噂の正体は大百足という魔物で…見ての通り無害の優しい性格で〜」
俺はあの後、アカネさんと山を降りて村の人達の誤解を解きに走り回った
まぁ、ちゃんと話せば誤解もすぐとけて村の人達はアカネさんを怪物呼ばわりしたことをみんなで謝っていた
そしてしばらくして…
「あぅ…リョウ、この資料まとめといたよ」
「お、ありがとうアカネさん」
アカネさんは俺の研究所で助手として一緒に働くこととなった、うちの研究所の人達は魔物と結婚している人もいるし特に何かあるわけじゃなかった
うちの研究所は魔物が結構出入りするので、アカネさんも友好関係が広がって嬉しい限りだ
まぁそれでもまだ一人で俺以外の誰かと話すことはできないようなので、俺がついていてやらないといけないけど
「アカネさん、そろそろ切り上げて帰ろう」
「うん、わかった」
俺とアカネさんは一緒の家で暮らしている、最初はアカネさんが慣れない住処にあたふたしてたけど今じゃ慣れたものだ
ただ人用に作られている家だからすこしアカネさんには狭いようで…結婚、ってなったら広い家に引っ越そうかと思ってる
ただ結婚式とか、新しい家とか…資金が足りてないからまだ先の話だけど…あまり焦ってしまってはかえって大変なことになるし
あとすこししたら、アカネさんに合う指輪とか買って…ちゃんとプロポーズしたいと思っている
「リョウ、考えごと…?」
「え、ぁ…いや、アカネさんを連れてきて良かったなぁって思ってただけだよ」
「あは、私も…リョウが連れ出してくれて、良かったって思ってる…♪」
ぎゅっとアカネさんが俺の身体を抱きしめた、アカネさんの下半身は俺の身体をぐるぐる巻きにする
「なにアカネさん、このまま抱っこして帰る?みんなにラブラブなところ見せびらかしてく?」
「あ、あぅ…違うけど…ただ、リョウが好きで…抱きしめちゃった…♪」
はい可愛い、はい俺堕ちました!勝てるわけがないもんねこんなの、このまま俺とアカネさんがラブラブなところ見せびらかしながら帰るもんね
「り、リョウ…?いま解くから…あ、ダメだって…そっちは玄関だよ…」
「このまま帰る、アカネさんとラブラブなところみんなに見せびらかしながら帰る」
「え、えぇっ…!」
「アカネさんの恥ずかしがり屋も克服できるんじゃない?反対は受け入れないので悪しからず」
「わ、わぁ…!だ、だめだってぇ…っ!」
このアカネさんに巻きつかれて抱きしめながら俺は研究所から家へ帰った
終始アカネさんは顔を茜色に染めて顔を伏せていて…帰ったら涙目になりながら俺に毒を注入して押し倒してきた
そして十分にお互い愛し合って、アカネさんにロールミーされて仲良く寝たのであった…
都会の騒がしくも冷たい空気とは違う静寂な、それでいて暖かな空気のこの地方にやってくるととても懐かしい気分になった
別に俺はそんな懐かしい生まれ故郷を観光や、帰省しに来たわけではなく…仕事があってわざわざ都会から何時間も掛けて故郷まで帰ってきたのだ
俺の仕事は生物関係の研究…微生物から魔物まで幅広く研究しており、その中でも俺はまぁまぁ若いながらもある程度の功績を挙げている
普通俺くらい若いとなると、その道の仕事に就いたばかりの新人…当然功績などそうそう挙げられるものではない
しかし俺は期待の若手新人…というわけではなく、両親が研究者であり小さい頃から仕事を手伝っていて周りより経験や知識は豊富ってだけであり、特別出来が良い訳ではない
「さて、懐かしさに浸っている場合じゃないな…仕事仕事」
今回俺に任された仕事は、地方の山に出る怪物の調査をしてほしい…とのことだった
最初は耳を疑った、こんな仕事が俺に任されるなんて…そもそもこの山に出る怪物って言うのは噂や言い伝えみたいなもので確実性が無いに等しい
大昔ならば未確認生物、ネッシーやツチノコと同様にいないという事で議論は終わる筈だった。しかし、今世界には俺ら人間の他に魔物と呼ばれる知的生命体が存在している
もしかしたら人間社会に溶け込めない逸れた魔物かもしれないということ、それから新しい生物かもしれないからという理由で研究室に仕事が来たらしい
(そもそも俺はこの地方出身で、その件の山で遊んだことがあるが全くその話は知らなかったし…ただのデマだとは思うんだけど)
たまたま空いている研究者が俺で、なおかつその地方出身だということで駆り出されてしまった…というかこう言う捜索の調査は研究者に依頼するもんじゃ無いだろうに…
「やれやれ、まぁ仕事だからなぁ…探していなかったら久々に故郷を満喫して帰ろうかな」
俺は仕事資料として渡された紙束を鞄から取り出す、目撃情報や場所など捜索に必要なことが記してあるのでこれを使えということだ
この地方には研究内容自体は違うが、俺が所属している研究所と同じような研究所がある。そこは昔、俺が両親の手伝いで出入りしていたこともあり知り合いもいる
俺一人では大変そうなので、知り合いを頼りにその研究所へ足を運んだ。アイツは俺と同じ年で俺と似たような、親の手伝いで研究所に出入りしていた
俺と違って優秀で、よく名前を聞くので元気にやっているようだしこの仕事も手伝ってもらおうかと思ったのだが
「あぁ、アイツなら暫く前に「姉達に会いに行く」って研究所開けてるよ」
「なんと」
どうやら暫くいないらしい、そういえばアイツには5人の魔物の姉がいるのだと聞いたな…
「どうやらその中の誰かと結婚するんだとか…あくまで噂だけどな」
「何ぃ、アイツ女には興味ありませんよーって感じだったのに…俺にも出会いがほしいなぁ」
「君は生物関係の研究者だろ、魔物も例外じゃないだろうし上手くいけば…」
「周りは結構そうなってるんだけどなぁ…俺には全然ない。…言ってて悲しくなってきたからそろそろ行きますか、アイツにはよろしく言っといて」
そういって俺は地方の研究所を後にした、どうやら仕事は一人でやれということらしい
山の所有者や近隣の村には話が通ってるから、好きに調査をしてくれってことなのだが…まずどうしようか
とりあえず資料の目撃情報に目を通してみる
「ふむ…」
長く大きなムカデのような姿が見えた…女性の声もした…人は襲われてない、襲われたと思われる動物の死体を地面に埋める習性を持つ…
「俺があの山で遊んだときはそんなもん見なかったんだけどなぁ…目撃情報とかは結構詳しいな」
俺はまず、女性の声という点に着眼した。人とは違う姿持ち、それでいて人間の女性に近いのが魔物だ…魔物には基本雌しかいない、人間から変異するインキュバスは例外だが
ムカデの姿がということは…大百足と呼ばれる魔物が近いか、あれは資料で見たときは大きなムカデの下半身に女性の上半身みたいな感じだった
「十中八九、この魔物だろうな…しかし今頃人と関わらない魔物とはなぁ」
大昔は、まだ魔物に差別意識があり人間と魔物とで色々問題はあったが今じゃ全然なくなったはずで…逸れた魔物というのは滅多にいない
とはいえ、虫が苦手な人というのは一定数存在するわけで…今でも虫系の魔物を敬遠する人がいないわけじゃない
しかしこの地方は自然も多いし、虫が苦手な人はあまりいないはず…まぁここら辺の地域じゃ都会ほど魔物がいるわけでもないから、驚かれるとは思うが
「わざわざ山で噂が立つなんて…まぁ研究にはあんまり関係無さそうだけど仕事だからな、注意とか保護くらいはしてやるかな」
その時の俺は今思うと物凄く迂闊だっただろう、いくつもの仕事で魔物と関わってきたにも関わらず油断しきってきた、いや…むしろ研究で魔物と関わってきたからこその油断だったのか
「ふぅ、山登りなんて久々だなぁ」
俺は件の山までやってきていた、近隣の村で話を聞いたり荷物を整えたりして準備は完璧だ
そこまで大きな山じゃないし、ある程度の地理はうっすらと覚えている…遭難はしないだろうし日が暮れるまでには下山できるだろう
俺は山を進んだ、暫くして奥深くまでやってくると気候が悪くなってきた…山というのは気候が変わりやすいのだ
「雨か…困ったな」
雨の山というのは危険だ、と昔両親に言われたことがある。しかし濡れたままじゃ大変なので、俺は近くの雨がしのげそうなところを探した
「あっ」
そして…泥に足を滑らせて転び俺は急な坂道のようになっている傾斜を転がり落ちる
「ぐぉ…痛っ…!」
身体中を強く打ち、痛みに悶えながら傾斜を転がり降る俺はやっと地面に着いたかと思われたが…運悪く頭を強く打ち、気を失った
雨が身体を打ち付ける音だけが耳によく残っていた
…
「…ぅ、ん」
近くでパチパチと弾けるような音と、身体に伝わる暖かさに目を覚ました
焚き火…?ここは…洞窟のようだ、外は雨がまだ降っているみたいだ
「あ、ぅ…お、起きた…かな?」
急に目の前に、とても美しい女性が現れて暫し見入ってしまった
「あ、あぅ…お、起きてないの…?で、でも目は覚ましたし…」
「…あ、いや、起きてる…起きてます…」
ハッと我に返って起き上がった、すると頭の鋭い痛みと身体中に鈍い痛みが走った
「ぐぉっ…いってぇ…!」
「ま、まだ起き上がっちゃだめだ…頭、強く打ってた…」
「お、覚えてる、足を滑らせて…それで」
美しい女性の方をよく見ると、上半身は大事な箇所こそ着物のような布で隠されている…しかし下半身からは長く節々に分かれ、そこから無数の足を生やしたムカデの身体…頭には二本の触角がある
「あ、あぅ…そんなに身体を…み、見ないで…」
「あ、す、すいません…」
女性の身体をジロジロと見るのは確かに失礼だった、さっと目線をこの彼女に合わせた
「ご、ごめんね…怖いだろうけど、君をほっとくわけにはいかなかったから…」
どうやら彼女は俺の手当てをしてくれたらしい、包帯やら何やらで見事な応急処置がしてある
「別に怖くなんて…助けてくれてありがとう」
俺がそういうと、彼女は驚いたような表情を見せた。
「こ、怖く…ないの?私、こんな姿で…魔物だよ…?」
「いや、全然?魔物なんて今まで何度も見てきてるし」
仕事柄今までに見てきた魔物は数え切れない、別個体の大百足だって見たことあるし…そもそも俺は虫が苦手なわけじゃなくてむしろ得意だ
「お、大百足…だよ?み、みんな私を変な目で見るの…君は違うの?」
「うーん、俺は別にそんなことないけど…」
確かに何も知らない人は最初は驚いてしまったりするかもしれない、結構インパクトあるしな
「あー…その、もしかして人間が変な目で見てくるのが怖くて人目のつかないように山に篭ってたりする魔物だったりする?」
「わっ、すごい…何で分かったの…?」
「稀にいるんだ、人間からの奇異な目で見られるのが耐えきれなくて人目のつかないとこで暮らす魔物ってのはさ」
「う、うん…わ、私、誰かと話すのが…苦手で、人間からも変な目で見られるから…迷惑掛けないように山で暮らしてたの…」
確かに俺と話すとき、言葉が少したどたどしい…人間にもコミュニケーションがうまく取れなくてって人はいるし…魔物だってそういう個体を見たことがある
「他の魔物は、みんなちゃんとしてるけど…わ、私はちゃんと話せなくて…人間からも怖がられるし…」
「あー…うん、それは辛かったな…でもそんな後ろ向きに考えなくてもいいんだぞ?誰かと話すのが苦手ってのは対して珍しくないし…」
「で、でも…人間、ってそういう性格の仲間を、集団で傷つけるって…イジメって言うんでしょ…?わ、私…そんなのやだ…怖いよ…」
どうやら人間という生き物を勘違いしているような…いやまぁそういう人だっていっぱいいるから否定はできないけどさ
「人間みんながみんなそんなわけじゃないって、いい奴もいれば悪い奴もいるんだ。ちなみに俺はいい奴側って自負してる」
「う、うん…君は、な、なんだか不思議…私を怖がらなかったし、話しやすいし…いい人間、かな」
「うんうん、とりあえずそれが分かればいい」
ひとまず俺への印象は悪くないらしい、こちらは助けてもらっているので出来るなら彼女に不快な思いはさせたくない
「あぅ…君は何でこんな山奥に…?雨だって降ってるし、危ないよ…」
「いや俺が登ったときはまだ晴れてたんだけど…まぁ山は天気が変わりやすいからなぁ、俺は仕事で来たんだけど…」
仕事のことを思い出した、件の怪物というのはやはり彼女なのだろう…目撃情報や聞いた話はやはり当てにならない
人目につかないようにひっそりと暮らしていた彼女を怪物扱いだなんて…人間が怖いというのに怪我して倒れた俺を助けてくれる心優しい素敵な魔物じゃないか
「お仕事…?や、山の猟師さんには見えないけど…」
「あぁ、この山で怪物が出るとかで調査を任されて…目撃情報によると、まぁ十中八九大百足さんだけど」
「あ、あぅ…そんな風に思われてたんだ…迷惑掛けないように山でひっそりと暮らしてるだけなのに…」
ああいかん失言だったか、こんなこと言ったら更に彼女は人間不信に陥ってしまうじゃないか
「き、君は…わ、私を見つけてどうするの…?い、痛いのはやだよぉ…」
「いや別に何もしないし…人に危害を加えてるならまだしも、わざわざ助けてくれた心優しい大百足さんに恩を仇で返すようなことはできないっての」
「あ、あぅ…本当に…?」
「怖くて信じられないなら俺を何かで拘束でもしてくれ、まぁそもそも怪我で動けないけどな」
「君は…たぶん、いい人間だから…信じる」
「ありがとう、優しい大百足さん」
俺がそういうと、彼女は何か言いたげに口をモゴモゴさせた
「あ、うぅ…」
「何、どうかしたのか?」
「…な、まえ…」
名前?
「き、君の、名前は…?」
「ああそういえば自己紹介してなかった、俺は寒河江リョウ。生物関係の研究をしていて、さっきも言ったように山の調査で来たんだ」
「わ、私は…アカネ…魔物で、大百足…だよ」
「アカネさんか…成る程触角とか足とか赤いところがあるからか、いい名前だなぁ。俺なんかリョウってのは良いってのから取られてるんだ、安直だよなー」
「あ、あぅ…」
俺がアカネさんの名を褒めると照れたのか顔を赤くして俯いてしまった、ここまで茜色にならなくても…綺麗な女性ということもあり俺もドキドキするなぁ
「アカネさんは褒めると顔が茜色になって綺麗だなぁ」
「っ…!?」
おっと思ったことがすぐに口に出てしまうのは俺の悪い癖だ、ただでさえ失言が多いんだしそんなんじゃモテないよなぁ
「ご、ごめん…俺って思ったことすぐ口にしちゃうから…」
「あ、ぅ…だ、大丈夫…わ、私…ご飯取ってくるから…!」
そう言ってアカネさんは脱兎のごとく外に出て行ってしまった、雨がまだ降ってるようだが大丈夫だろうか?
「くそー、身体は痛くてろくに動かないし…もう情けないなぁ」
俺は頭だけを動かして洞窟内を見渡した、ここが山の何処なのか知らないけどアカネさんはここで暮らしているようで生活感にあふれていた
「人間社会に入らなくてもちゃんと生活していけるんだなぁ」
魔物の強い生命力にある種の感動を覚える、大体が雌…女性なのに凄いなぁ
しかし一度状況を整理して、アカネさんが優しい魔物だって知れたら何だか気が抜けて眠くなってきた
ここはベッドのように柔らかい植物が敷かれてて寝心地も良さそうだ…どうせ動けないしアカネさんが戻るまで寝ようか
…
心地よい何かが頭に触れているような感触がして、不意に目を覚ました
「ぁ…」
「アカネ、さん?」
「お、おはよう…」
目の前には再びアカネさんがいた、そしてアカネさんから伸びる手が俺の頭に…どうやら頭を撫でられていたらしい
「あ、あぅ…ち、違うんだ…その、け、怪我が早く治るかなって…か、可愛い寝顔だったからとかじゃなくて…!あぅ…だから、その…」
「はいはい落ち着いて、ゆっくりで大丈夫だから…一言ずつ慌てないで…な?」
「う、うん…帰ってきたら、寝てたから…頭の怪我が一番深くて…頭をさすってあげれば少しは良くなるかなって…」
なんて優しいんだアカネさんは、手当までしてくれた上に更にそんな心配までしてくれるとは…
「そうか、ありがとう」
「お、怒ってない…?」
「なんで怒る必要があるのさ、心配してくれてるんだからありがたいって…それで、手は止まってるけどもう撫でてはくれないの?」
「え、あ…ぅ…いいの?」
「いいというか、してほしい…とても心地よかったし…怪我も早く治りそうだからな」
「あ、あぅ…わかった、頑張る…♪」
再びアカネさんが俺の頭を撫でる、こりゃ怪我もすぐに治りそうだなぁ…
俺って昔からあまり親に甘やかされてこなかったから、こう甘やかされるようなのに密かな憧れがあった…まさかこんな形で叶うとは
「あは、リョウ…子供みたいだね…♪」
「確かに背はあまり高くないけどさぁ、一応成人してんのよー俺…おっさんよ、おっさん」
「わ、私には若く見えるけど…」
流石におっさんは言い過ぎか、まだ若い若いピチピチ(死語)の若者だしな
「あっ…」
ふとお腹の音が鳴った、そういえば今日は何も食べてなかった…
「あぅ…今ご飯用意するから、さっき狩ってきたんだ…」
「何から何まで申し訳ない…」
恥ずかしくて死にそうだ、どうしてこう俺はこんな情けないのだろうか…ってアレ今アカネさん狩ってきたって言ったか?
「今日は鹿が獲れたんだ…人間は火を通さないと食べれないんだよね、焼いてあげる…」
どうやらさっきのうちに鹿を狩猟したらしい、奥から鹿を引っ張ってきた。流石大百足というか…今時凄いサバイバル能力だ
「ごめんなさい、いただきます…」
そう言いながら器用に鹿を解体していくアカネさん、そして切り分けた沢山の肉を俺の前に置いた
「綺麗に捌くなぁ、凄い…俺には出来ないな」
「あは、慣れてるから…」
そういってアカネさんは照れくさそうにまた顔を赤くする、嬉しくはあるのか触角はピコピコ動いている
「リョウ、どのくらい…食べる?」
「アカネさんの余りでいいよ、俺は介抱されてる身だし…」
「だ、だめだ!怪我してるんだからちゃんと食べないと…」
「お、おぅ…わかった…」
アカネさんに押されて俺はいつも飯を食べるより多い量の肉を食べることになった、怪我で動けないのでアカネさんに食べさせてもらうことになったのだが…
「は、はい…焼けたから、く、口開けて…?」
「う、うん…」
とこんな感じで初々しいカップルのようにお互いが照れあって食べ終えるのにやたらと時間が掛かってしまった
「ごちそうさま、俺が怪我してなければちゃんと一人で食べれたんだけど…」
「し、仕方ないよ…私は大丈夫だから、ほ、ほら…包帯を取り替えてあげる…」
献身的にアカネさんが看病してくれたおかげか、頭の怪我自体はもう傷が塞がりかけていた
「大丈夫…?痛く、ないかな…」
「まぁ怪我してんだし多少痛いのは仕方ないだろ、男は我慢さ」
飯食ったり休めたりしたからか、いくらか身体は楽になった。明日ぐらいになれば体を動かすことくらいはできるだろう
「とりあえず、身体を休めよ…?その、寝床は一つだから…私も寝るけど、ちょっとだけ我慢してね…」
そういって焚き火を消して寝床に入ってくるアカネさん、下半身が長いので丸まめて寝る体制にはいった
「あ…私の身体を枕にしても大丈夫だからね」
「え、あ…うん」
流石に恩人にそんな失礼な真似は出来ない、大人しく端によって寝ることにしよう
そうして俺は目を閉じて寝ようと意識を集中させるのだが…夜の山ということ、さっきまで着いていた焚き火が消えたことで予想外の肌寒さに身を震わせる
「…寒い」
寝ようかとは思うが思いの外寒い、少しだけアカネさんに寄って…
「ぁ…リョウ…?」
「ご、ごめん…起こしちゃったか」
「う、ううん…大丈夫…どうしたの…?」
「いや…その、ちょっと寒くて…少しアカネさん側に寄ろうかと…」
「あぅ…そうだよね、今日はちょっと寒いかも…」
アカネさんが長い身体をくねらせると、俺の身体を包むように優しく巻きついてきた…虫って冷たいイメージだったけど、アカネさんの身体はあったかい
「あは、ちょっと恥ずかしいけど…私もあったかいし、これなら大丈夫かな…?」
「あ、ありがとう…」
物凄く恥ずかしいが、アカネさんは厚意でしてくれてるのを断るわけにはいかない…暖かいしこのまま寝させてもらうことにしよう
…
朝、目を覚ますと身体が何か暖かいものに包まれてる感覚で目を覚ました
「…あ、そうか」
昨晩アカネさんが俺を暖めてくれる為に巻きついてくれてたのを思い出す、当の本人はまだ寝ているようだ
昨日より身体の痛みは引いて歩けるようにはなっているようだ、俺は起こさないように巻きついているアカネさんの身体から抜け出す
「ふぅ、だいぶお世話になっちゃったなぁ…」
昨日は俺が寝顔を観察されていたが、今日は俺がアカネさんの寝顔を観察する
本当に美人だな…少しだけ憂いを見せるような雰囲気で、優しくて…それですごい照れ屋さんだけど意外と大胆…
おっと、何を考えてるんだ俺は…アカネさんは俺を助けてくれた恩人だぞ?変なことを考えるなんて失礼だ…こんな優しい魔物が、なんで周りから変な目で見られるんだろうなぁ
「…ぁう…?り、リョウ…早起きだね…」
「あ、おはようアカネさん。ほら、アカネさんのおかげで何とか歩けるようにはなったよ」
「わ、本当だ…もう大丈夫なの?」
「痛くないわけじゃないけどね、とりあえず下山はできると思うよ。いやぁ本当にお世話になりました」
「あ、ぅ…お、おめで、とう…」
俺が元気な様子を見て、アカネさんは嬉しそうな顔を…じゃなくて何故か凄く悲しそうな顔でそういった
「え、アカネさん?な、なんでそんな悲しそうな…」
「り、リョウ…私、私ね…私を変な目で見ない人に初めて会って…すごい、嬉しかった…こんなに人と話せたの、リョウが初めてで…」
「お、おう」
「だ、だから…リョウと、離れたくなくて…でも、リョウに迷惑かけられないよ…」
アカネさん…そんなに俺のことを思ってくれてたのか、確かに彼女からしたら奇異な目で見ないで普通に喋れるのは俺くらい…
俺はアカネさんの悲しい顔は見たくないけど、それでもやらなくちゃならないことはあるんだ
「アカネさん、俺にはやらなくちゃいけないことがあるんだ。噂の怪物は、こんなにも優しい女の子だってことを伝えなくちゃいけない…皆の誤解を解かなくちゃいけないんだ…アカネさんの為にも」
「あぅ…」
「仕事だから…って言うのもそうだけど、それ以上にアカネさんと関わって…優しくしてもらって、アカネさんを好きになったから」
俺がそういうとアカネさんの顔がだんだんと茜色になって、恥ずかしそうに下を向いた
「ぁ…う…り、リョウは…本当、に…私が、好きなの…?」
「あぁ、恥ずかしがり屋で臆病だけど…今まで会ってきた誰よりも優しいアカネさんが俺は好きだ。アカネさんみたいな優しい魔物が、皆から変な目で見られるなんて…俺には耐えられない」
「…っ…ぁ、でも…っ…」
俯いたまま、何か言っているようだけど聞き取れない…何かと聞き返そうとした瞬間
「え」
首筋に鋭い痛みと快感が走った…これは、アカネさんが俺の首に…
「あ、かね…さん…?」
「ごめん…ごめんね…リョウは、私を優しい魔物って言ってくれた…でも、私は…皆の言う怖い怪物だった、みたい…」
力が抜けて、俺が膝から崩れ落ちるところを優しくアカネさんが抱きとめた
「私、リョウが好きって…言ってくれて、もう…離したくなくなっちゃったの…ごめんね、ごめんね…っ…」
「ぅ…ぐっ…」
「リョウの暖かさを知って、離れなくなっちゃった…ひどいよね、全然優しくないよ…こんな無理やり、でも…そうしないと、リョウがいなくなっちゃうから…」
俺の身体に、アカネさんの身体が巻きつき拘束をする…全身を締め付けられてるのにも関わらず甘い快楽が身体中を駆け巡る
「大丈夫…ちゃんとお世話してあげるから、ずっとここにいよ…?」
「あか…ね、…さ」
「こんなことされて、怖い…よね、そうだよ…私は怖い怪物なの…皆そう言って…」
いきなりのことに驚いたが、冷静に思考を張り巡らせる…幸い大百足の毒は死ぬようなことはない、物凄い快楽が続くだけで力が入らなくなるだけ…
アカネさんはさっきから泣きそうな顔をしている、俺が無理やり襲われるのはいいとしてアカネさんが悲しい顔してっていうのはだめだ
「別に、怖くなんかないさ…」
「嘘、怖いに決まってる…リョウは顔には出さないだけ、ポーカーフェイスが上手いんだね…」
「そんなこと、ないぞ…俺は顔によく出るし考えたことは、すぐに口から出る人だからな…」
俺がそういうとアカネさんが俺の顔を覗き込んでジッと見つめる
「…」
「じーっ」
「あぅ…」
そして俺が見つめ返してやると照れくさそうに目を逸らした
「ほ、本当に怖くない、の?わ、私…無理やり、リョウを襲おうとしてるんだよ…?」
「ないない、むしろ可愛いと思ってる」
「あぅ…」
照れくさそうに顔を赤くして俯いた、いつものアカネさんの調子になってきた
「もう一度言うぞ、アカネさんは、怖い怪物なんかじゃなくて…優しくて可愛い女の子だ。文句を言ってくる奴がいたら言え、そいつ殴るから」
「り、リョウ…」
「俺はアカネさんに悲しい顔をしてもらないたくない、正直に言うならこのまま襲われても一向に構わないけど…それならこう、アカネさんにいやらしく襲われないなぁって」
「あぅ…い、いやらしくなんて…そんな…」
余程恥ずかしいのか身をくねらせて悶えるアカネさん、どうやら先ほどの悲しい感じの空気は無くなったようだ
「あ、あの、リョウ…本気にして、いいの?わ、私…そんなこと言われたら、我慢できないよ…?」
「俺こそ本気にするけどいいの?今まで女性との付き合いがなかった童貞なめんなよ」
「わ、私…離れたくないから、リョウのこと縛って外に出してあげないかもよ…?」
「だったらアカネさんが俺から離れないでについてくればいい、外に連れ出してやる。他の人間が怖いなら俺が守ってやるから」
俺がそういうとアカネさんは俺を上半身の手で抱き寄せた、女性の柔らかさにドキドキしてしまう
「あは、そんな毒で動けないのに…説得力ないよ…?」
「ぐっ…痛いところを突くなぁ」
「…ねぇ、もし…私がリョウに、ついていくなら…ちゃんと離れないでいてくれる…?」
「当たり前だろ、何があっても離れないよ」
「絶対に…?」
「絶対に」
「…わかった、私…リョウに、ついていくよ…いつまでも、山に逃げてないで、前に進んでみる…」
「そうだな、手始めにここら辺の人たちにアカネさんの誤解を解くところから始めようか」
「うん…あ、でもその前に…」
アカネさんの手が俺の下半身に伸びてきた、俺の股間はアカネさんの毒で目に見えるほどそそり立っている
「このままじゃ、苦しいよね…?わ、私のせいだから…スッキリ、させてあげるね…♪」
毒で動けない俺はなすがままにズボンを下ろされて、下半身を露出された。ズボンを下ろすと同時に飛び出す俺の肉棒にアカネさんは顔を真っ赤にした
「そ、そんな反応されても…」
「あ、あぅ…は、初めて見たから…そ、その…おっきいね…?」
「ふぉっ!?」
ツンと指先で突かれると毒の影響か物凄い快楽を感じて身体が跳ね上がる、それを見たアカネさんもびっくりしたようで「わっ…」と身体をビクッとさせた
「い、痛かった…?」
「や、気持ち良すぎて…」
「そう、なんだ…じゃあ、その…わ、私も脱ぐから…」
そういって身体の局部を隠している着物のような布を脱いでいくアカネさん、元から際どい格好だったがこう目の前で脱いでいく姿はものすごく扇情的で…
「あぅ…は、恥ずかしいからそんな見ないで…」
「やだ、網膜に焼き付ける。アカネさんだって、俺の大事なとこ弄んだし…」
「そ、そうだけど…あぅ…恥ずかしい…」
そう言いながらもアカネさんはその女性的な身体を見せつけるように全て脱ぎ終えた、俺の肉棒はそれだけでもう爆発寸前だった
「わ、私の体…に、人間とちょっと違うけど…へ、変じゃないかな…?」
「もう辛抱堪らん、下半身が爆発しそうです」
「あは…嬉しいな…そ、それじゃ…その、しよっか…♪」
俺に巻きついているアカネさんが俺の上に乗っかるような体勢になる、限界まで奮え上がった俺の肉棒のすぐそばにアカネさんの身体の暖かさを感じる
「えっと、これを…私の中に…うぁ、入るかな…」
「ま、待ってアカネさん…は、初めてだからよく知らないけど、いきなり挿れるんじゃなくて、その…濡らしたりしないといけないんじゃ…?」
「あぅ…そうなの、かな…でも、わ、私のは…ほら…」
指先で自らの秘所、身体を走る紫色の模様の毒腺のさらに下…百足の下半身と人間の上半身の分かれ目にある肉の割れ目を開き見せつけるアカネさん
うねる様に肉の壁が奥まで続き、その奥から粘度のある透明な体液がこぷりと溢れ出して…
「も、もう準備…多分できてるから…はやく、リョウのが…欲しいな…♪」
「わ、分かった…そんなこと言われたら俺も、我慢できない…!」
毒が切れてきたのか、身体が少しだけ動く様になってきた…俺はアカネさんの身体を抱き寄せるとその秘所に自らの肉棒を押し付け…
「あ、あれ…上手く入らない…?」
「ん…♪ぁ…お互い、初めてだから…あ、焦っちゃ、ダメ…っ…ほ、ほら…ゆっくり、ね…?」
上手く挿れられない俺の手を取り、ゆっくりと肉棒を秘所に埋めていく…只ならぬ快楽が下半身から体全体に広がり力が入らなくなる
「ひぁ…っ、ぁあっ♪り、りょぉ…の、はいって…ぇ…♪」
「あ、あかねさん…っ!あか、ね…さ、まって…も、う…俺…!」
半分入った辺りで限界がやってきた、俺は下半身から昇ってくる快楽の波に耐え切れず白い欲情を爆発させた
「あぁぁぁぁぁあぁぁぁぁっ♪」
「ぐっ、あぁっ!?」
そしてそれに絶頂を迎えたアカネさんの身体に力が抜けて、ゆっくり挿れていた残りの半分が勢いよく叩きつけられる様に奥まで入る
それにまた、快楽の波が押し寄せて俺は休む間も無く二発目の射精をアカネさんの膣内の奥で爆発させた
「ひゃあぁぁっ♪おく、おくにぃっ♪し、しきゅうの、ぁっ♪あついのぁぁぁぁぁあぁぁぁぁっ♪」
「うぁっ、そんな締め付け…ぇ…!?」
二発目の射精にアカネさんはまた絶頂を迎えて身体をビクビクと反らした。膣内はギュッと締まり、身体に巻きついているアカネさんの下半身が俺をキツく締め付ける
苦しい筈なのに、それさえも快楽に変わって俺は三発目の射精をアカネさんの奥にまた叩きつける。アカネさんの身体からは力が完全に抜けてだらんと俺に身体を預けてきた
「ぁー…あー…っ♪はぁっ…はぁっ…♪」
「あ、アカネさん…」
「ぅー…?」
呂律が回らないほどの絶頂の余韻があるようで、俺の呼びかけにはだらけきった蕩けたような顔で生返事で答えるアカネさん
その姿もとても扇情的でいやらしく…そっと顔を近づけてキスをする、先ほどは毒を流された口であるがアカネさんはそのキスを抵抗なく受け入れる
「ちぅ…んっ、ふぁ…っ♪」
「んんっ…」
俺はその口の中に舌を絡めていく、アカネさんも俺の舌に絡ませてぐちょぐちょと下品な音を立ててお互い唾液を交換するように口内を貪る
「ひぃ…ぁ、ふぁぁ…っ♪こ、れ…きもち、い…あぁっ♪」
「…アカネさんはキスが好きなんだ?」
容赦なく俺はアカネさんの口内を蹂躙するように貪る、その度に身体をビクビクとさせて俺の欲情を煽り立てる
「ぢゅぅぅ…っ♪くちゅぅ…ん、これぇ…♪あたま、ぼーって…おくちで、こうびしてるみたいぃぃ♪」
只ひたすらに口内を蹂躙していると、アカネさんの身体が一際大きく跳ねる…どうやらキスだけで絶頂を迎えたらしい
「〜っ♪〜〜〜…っ♪」
そういえば研究所の資料で見た、大百足は強い毒を持ちその毒に耐性があって自らが犯されることはない
しかし男性の唾液を取り込むと、魔力反応を起こして毒が変異して耐性のない毒となり…自らが快楽に飲み込まれてしまうのだとか
(なるほど、そりゃ童貞のキスで絶頂なんて迎えないよなぁ…いやいや俺はもう童貞じゃなかったな)
「ひぃ…ぁ…ぅ…♪」
もう目の焦点は合ってなく、意識があるのかもわからない蕩けたような顔で低い呼吸を繰り返すアカネさん…流石に俺も限界だし、休憩だ…
俺はアカネさんの身体を抱きしめながら、寝床に倒れこみ意識を手放した…
…
「えー、山の怪物という噂の正体は大百足という魔物で…見ての通り無害の優しい性格で〜」
俺はあの後、アカネさんと山を降りて村の人達の誤解を解きに走り回った
まぁ、ちゃんと話せば誤解もすぐとけて村の人達はアカネさんを怪物呼ばわりしたことをみんなで謝っていた
そしてしばらくして…
「あぅ…リョウ、この資料まとめといたよ」
「お、ありがとうアカネさん」
アカネさんは俺の研究所で助手として一緒に働くこととなった、うちの研究所の人達は魔物と結婚している人もいるし特に何かあるわけじゃなかった
うちの研究所は魔物が結構出入りするので、アカネさんも友好関係が広がって嬉しい限りだ
まぁそれでもまだ一人で俺以外の誰かと話すことはできないようなので、俺がついていてやらないといけないけど
「アカネさん、そろそろ切り上げて帰ろう」
「うん、わかった」
俺とアカネさんは一緒の家で暮らしている、最初はアカネさんが慣れない住処にあたふたしてたけど今じゃ慣れたものだ
ただ人用に作られている家だからすこしアカネさんには狭いようで…結婚、ってなったら広い家に引っ越そうかと思ってる
ただ結婚式とか、新しい家とか…資金が足りてないからまだ先の話だけど…あまり焦ってしまってはかえって大変なことになるし
あとすこししたら、アカネさんに合う指輪とか買って…ちゃんとプロポーズしたいと思っている
「リョウ、考えごと…?」
「え、ぁ…いや、アカネさんを連れてきて良かったなぁって思ってただけだよ」
「あは、私も…リョウが連れ出してくれて、良かったって思ってる…♪」
ぎゅっとアカネさんが俺の身体を抱きしめた、アカネさんの下半身は俺の身体をぐるぐる巻きにする
「なにアカネさん、このまま抱っこして帰る?みんなにラブラブなところ見せびらかしてく?」
「あ、あぅ…違うけど…ただ、リョウが好きで…抱きしめちゃった…♪」
はい可愛い、はい俺堕ちました!勝てるわけがないもんねこんなの、このまま俺とアカネさんがラブラブなところ見せびらかしながら帰るもんね
「り、リョウ…?いま解くから…あ、ダメだって…そっちは玄関だよ…」
「このまま帰る、アカネさんとラブラブなところみんなに見せびらかしながら帰る」
「え、えぇっ…!」
「アカネさんの恥ずかしがり屋も克服できるんじゃない?反対は受け入れないので悪しからず」
「わ、わぁ…!だ、だめだってぇ…っ!」
このアカネさんに巻きつかれて抱きしめながら俺は研究所から家へ帰った
終始アカネさんは顔を茜色に染めて顔を伏せていて…帰ったら涙目になりながら俺に毒を注入して押し倒してきた
そして十分にお互い愛し合って、アカネさんにロールミーされて仲良く寝たのであった…
15/11/27 20:51更新 / ミドリマメ