連載小説
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お姉ちゃん達との再会
俺には5人の姉がいる


俺が生まれて間もない頃に母が亡くなり、それから6年後親父が仕事で知り合った女性と再婚した


魔物娘というのはもう世界では珍しい存在じゃなかったが、まさか親父が魔物の人と結婚するとは思っていなくて初めは戸惑った


その新しい母の娘たちが姉となったのだが、勿論魔物娘だった。


と、いってもその人達は新しい母が引き取った身寄りのない子供なので血が繋がっているわけじゃなく種族はバラバラ


上には魔物の姉が5人、男は俺だけでしかも人間で末っ子なのでそれはもう壮大に可愛がられる日々だった


しかしそんな大変でも楽しい期間はすぐに終わった


親父の仕事は魔物娘関係の研究なのだが、その手伝いということで俺は親父と共に地方の研究施設へと行くことになった。


当然俺と姉達は反対したが、聞き入れてもらえずに研究施設へと飛ばされてしまった


今になって聞くと、当時の親父はどうやら6歳の俺が魔物娘の姉と関係を持ってしまうことを恐れていたらしい


まだ流石に早すぎるが、姉達が我慢できるかわからないとのことだ


魔物娘は非常に好色だというし、姉とのスキンシップも今を思えばやたらと肌接触が多かった気がするので親父の考えは間違ってなかったのかもしれない


それから大体10年研究施設で親父と一緒に暮らし、ついこの間の16歳の誕生日にまた一緒に暮らせることが決まったのだ。


まぁ別に10年間の全く関わりが無かったわけではなかった


母だけは時折顔を見せにきて互いに話をして俺を優しく抱きしめてくれた、親父には鯖折りのような抱きしめだったがたぶん愛情表現。


実際に姉達に会うのは10年振りくらいだが、お互いに情報は交換できていたのだ


まぁそんなわけで俺は姉達がいる故郷へと帰ってきたわけだ


「うーん、地図通りのはずなんやけど…」


俺、志賀タクマは早速故郷の駅で迷っていた


「ここ10年で変わり過ぎやろ、俺が住んでた頃はこんな駅ビルやなかったで!」


地方にいたためか方言が移ってしまった悲痛な叫びをあげる俺、昔からだいぶ発展していた都会の駅だったが10年でさらに進化してるとは思わなかった


辺りを見渡すと結構人が多かった、その中でもちらほらと魔物の人もいてまさに大都会って感じだ


「うわぁ人が多い、都会こわっ!」


一応生まれはここだが、今まで地方にいたので都会の雰囲気にイマイチ馴染めない


「これはあれやな、とりあえず外に出ていたほうがええな…メールに連絡を入れて、っと」


人混みを通り抜けて駅の外まで出る


「おぉ、変わっているとこは変わっとるがなんとなく覚えとるでこの風景!」


並んだ店などは変わってしまっているが大まかな部分は変わっていないようで、昔の記憶にある駅前の大きな噴水も変わっていなかった


「ここで待ってれば迎えに来てもらえるやろなぁ」


噴水近くで立っていると急に視界が塞がれて体が何かに巻きつかれて動けなくなった


「な、なんやなんや!?」


「うふふ、たくまちゃん見つけましたぁ」


耳元で懐かしい声が聞こえた、変わらない蕩かすようなこの声は…間違いない


「…久しぶりやの、シロ姉」


「はぁい、シロナお姉ちゃんですよっ♪」


視界が開くと、目の前に和服で長い絹のような髪の紅い目をした美しい女性がいた


目が合うとぎゅうぅぅぅぅと身体が更に締め付けられた


「あだだだだだっ!ギブギブっ!」


「ああもうこんなに男前になってしまわれて、お姉ちゃんはどうにかなってしまいそうですっ!たくまちゃん大好き大好き…うふふふ」


この女性は姉の一人であるシロナ…シロ姉だ


種族は白蛇で、昔っから俺を「たくまちゃん」と呼んでよく甘やかしてくれた


確か5人の中で一番下の五女だったはずだ


「うふふ、10年ぶりのたくまちゃん…すりすりすり」


「ぐあぁぁぁぁぁ!」


体をすりすりされるにつれて身体の拘束も強まってく、このままだと背骨から折られてしまう


「あ…ごめんなさい、あまりの嬉しさについ…」


「え、ええんやで…それだけ嬉しがってもらえるならこっちも得したわ」


やっと身体が自由になった、シロ姉は嬉しくなると下半身の蛇の胴体で巻きついてくるのだ


「まぁ…なんて可愛らしいことを、もうっ大好きですよっ!」


「シロ姉は昔から変わらんなぁ…」


昔から何かと締め付けられては大変だった気がする


「シロナあまり先に行くでないわ、迷子になっては大変じゃからの」


シロ姉の後ろからまた懐かしい声が聞こえた


「ごめんなさい姉さん、だってたくまちゃんが帰ってくるって聞いたらいてもたってもいられなくて…」


「まぁ、気持ちはわからんでもないが…たー坊、よくぞ戻った」


「姉さまも相変わらずのようやな、ただいま戻りました。」


視線の先にいる、俺を「たー坊」と呼ぶこの黒が入り混じった金の長い髪にピンとした三角耳を生やした女性


両手と両足が金と黒の虎模様の毛皮で覆われてネコ科の動物のようになっている、その全貌は人のような虎だ。


シャクヤ姉さま、姉さまは人虎と言われる種族の魔物で5人の姉の長女だ


「ふむ、たー坊は昔から背が高い方だったがだいぶ逞しくなっておるな…あ、今のは名前をかけた洒落だ。」


「…なんでやねんって突っ込んだほうがええですかね?」


「まぁ、本場のツッコミですね」


いや別に本場とかそういうんじゃないんですけどね


「姉さまも一段と逞しくなったね」


「…それは女性に対して使う言葉ではないと思うぞ、まぁ逞しくなったのは確かなのだが…」


どうやらあまり触れられたくない話題だったらしい


シャクヤ姉さまは体を動かすのが昔から好きで、そのため女性にしては少々筋肉質なのだ


「で、でもほら!俺はええと思うで、姉さまプロポーション凄いし…セクシーってやつなんちゃうん?」


「は、白昼堂々何を言っとるんだお前は…」


どうやらフォローになっていないようだ


「まぁ久しぶりに会ったわけじゃ、ほれ」


「うん?」


姉さまが肉球のついた大きい掌を俺の頭に乗せる


「10年ぶりか、こうやって頭を撫でてやるのは…昔はあんなに小さかったお前が本当に立派になったな」


「ね、姉さま恥ずかしいって…ちゅうか姉さまの方が今も背ぇ高いやろ」


「むぅ、失礼だなお前は」


「姉さんズルいですー!私もたくまちゃんなでなでしますー!」


そういえば後の三人はどうしてるんだろうか、迎えに来てると思ったんだけど


「なでなで♪」


「ちょ、こそばゆいってシロ姉…後の三人は家で待っとるん?」


「シロナが先に突っ走って、ワシが追いかけてたのでな…ワシらが早かっただけじゃ。いま向かってる最中だから、ワシらが折り返せば良い」


「シロ姉…」


「ご、ごめんなさい…」


「というわけでさっさと戻ってやるか、妹達も楽しみにしていたぞ」


「はいな」


ずっとシロ姉に撫でられながら、こっちに向かってきていたみんなと合流できた


「やっほータク!おかえりー!」


「ねぇねぇただいま…うぉわっ!?」


出会い頭に極上の羽毛布団のような感触に包まれた…というより実際に羽根なのだが


俺を「タク」と呼んだこの煌びやかな青い翼と短い髪、膝から下は鳥の足のようになっているこの女性も姉の一人だ


エルねぇねぇ…種族はセイレーンで姉弟の三女にあたり、明るいムードメーカーで陽気な人だ


「うわぁ、背大っきくなったねぇ!何センチ!?」


「今年で180ちょいぐらいやったかな」


「あの弱々しかったタクがこんなになるなんて…お父さんの研究の手伝いっていってたからもっとモヤシみたいになってるかと思ったよ!」


確かに研究員とか聞くとひ弱なイメージが付いてしまうだろうが、実際は結構動いたり重たい機材を運んだりするからわりと身体が鍛えられたりする


「そういうねぇねぇはあまり変わらんなぁ」


「おー?なんだータク、私は成長してるぞ!ほら!」


腕でぎゅっと胸を強調させるポーズを取る、うん…確かに昔とは比べものにならないな


「おっ、そうやな」


「むー、そっけないぞータク!もっと何かあるでしょー!」


「大変美しゅうございますお姉様…でええか?」


「や、やだ…もうタクったら、えへへ…♪」


ねぇねぇは昔から結構単純な性格で不機嫌な時とかはちょっと褒めたりするとすぐに機嫌が直る


「…おかえり、たくま」


「ねぇちゃん、ただいま」


みんなが喜びの表情を浮かべてる中で一人だけ表情を変えないこの人、茶色い髪に黄色い飾りのようなものが二つついていて腕から鎌のような鋭い突起をつけた見た目は無愛想な女性


シルクねぇちゃんはマンティスという魔物だ。

姉弟で四女にあたり、種族的に感情をあまり表に出す魔物じゃないので無表情だが、ねぇちゃんはこれでも俺の帰還を喜んでくれてるはず


「…ん、大きくなった」


「そりゃまぁ10年もあれば大きくもなるで、俺ももう小さい子供やないしな」


「…まだまだ、可愛い子供」


頭を撫でられる、表情が少しだけ柔らかくなっているのはねぇちゃん的にかなり上機嫌な証拠だ


「…また、一緒に暮らせる」


「あぁ、またよろしゅう頼むでねぇちゃん」


「…ん、お姉ちゃんにまかせて」


表情を出さないから初対面ではけっこう怖がられるけど、優しさならたぶん5人の中で一番なんじゃないかと思う


「えぇと、あとは…」


「ふふっ、私よぉ?」


後ろから美しい声が聞こえた瞬間、目を塞がれて何かが体に巻きついて身体を拘束する、このシロ姉みたいなことができるのは…


「ねーさん…」


「うふふ、びっくりしたぁ?」


「いや全く同じことをシロ姉にされとるんやけど」


綺麗な色白の肌に薄紫の長い髪、雄々しくも美しく見える双角を頭から生やし、腕と下半身は深緑の鱗に包まれており、下半身は長い胴体のようになっているこの女性。


ユウねーさんは龍という種族で次女にあたる、母性の溢れる包容力の持ち主で昔は何かと甘えていた。


「んー、10年前に比べて見違えたわぁ…カッコよくなっちゃってぇ」


「ねーさんも美人になっとるよ、あまりひっつくとドキドキするからやめてーな」


「あらあら、大丈夫よぉ?私もドキドキするからぁ」


そういって巻きついて話してくれないねーさん、10年前もシロ姉とこんな感じだったと記憶しているが何か違和感があった


(あぁ、10年もあれば色々成長するからなぁ…)


みんな身体の凹凸が著しく成長しているので違和感があったのか…


「んー?たっくんどうしたのぉ、ぼーっとしてぇ…久しぶりにお姉ちゃんと会えて嬉しくない?」


「え、いやそんなことあらへんよ?みんなが美人さんになってたからちょっと驚いてただけやで」


「まぁまぁ、嬉しいからぎゅーってしてあげちゃう♪」


いや離れて…とは言えない、みんなだってこんな美人なお姉ちゃんに抱きしめられたらきっと言えないはず


「…姉さん、そういうのは家に帰ってから」


「あらぁ、そうねぇ…お祝いのパーティーもしたいし早く戻りましょうか」


シルクねぇちゃんがユウねーさんを離してくれて助けてくれた


「たくまちゃん家までの道覚えてますか?迷子にならないようにお姉ちゃんが手を繋いであげますから大丈夫ですよ♪」


「あっ、シロナズルい!私も私も!」


「いや子供やないんやから…」


瞬く間に両手を塞がれてしまった


「シルク、お前は良いのか?たー坊と手を繋ぎたいのであろう?」


「…うん、姉さん達うれしそうだから」


「もぉ、シルクちゃんは優しいんだからぁ…じゃあ私たちと繋ぎましょう♪」


「…ありがと」


こうして俺は10年ぶりの再会を経て、懐かしき我が家へ帰ってきたのだった。
15/03/11 01:47更新 / ミドリマメ
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■作者メッセージ
ドーモ、ミドリマメです。沢山のお姉ちゃんに甘えたいですよね。

白蛇、人虎、セイレーン、マンティス、龍がお姉ちゃんという大変よくわからないものですがあまり気にせず見ていただけたら幸いです。

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