エルルート2「あなたが大好き!」
帰ってきてからもねぇねぇは元気だった
「タク、何かして遊ぼー!」
「ねぇねぇは元気やの、俺は今日久々に遊んで疲れたから…あまり激しいのはダメやで?」
「そうなの?じゃあ…庭でゆっくりしよー」
庭か…さっき風呂に入って少し体も火照ってるし少し冷ますのに丁度いいかもしれない
「まぁそれならええかな」
「やったー!じゃあ先行ってるねー!」
瞬く間に庭の方へ行ってしまった、早いな
「…なんかお菓子とか持って行ってあげるかな」
「あらあら、大変そうねぇたっくん」
台所の棚でお菓子を探していたらユウねーさんに会った
「大変って、何がや?」
「エルちゃんよぉ、あの子ってば結構活発だから遊び相手になると大変なのぉ」
「あぁ、なるほど…まぁ楽しいし心配はいらんよ」
「あらあら頼もしいわぁ、それじゃあ私のお酒の相手もしてもらっちゃおうかしら?」
「ねーさん、生き物にはできることのキャパシティーってもんがあってな?」
「あら残念、じゃあまたの機会にしましょう」
そういってねーさんは棚から菓子の袋を一つ取ると台所を去った
「さて、俺も行こっと」
適当な菓子を持って庭まで行く
「ねぇねぇー?」
周りを見ると誰もいない、先に行ったはずなんだけどなぁ
「あれ、おかしいなぁ」
「タクー!こっちこっちー!」
おや、どこからかねぇねぇの声が…
「上だよー!」
「上…?」
声のする方を見ると、ねぇねぇは屋根の上にいた
「なんや、そんなところにいたんかいな」
俺が気付くと、ねぇねぇが下に降りてきてくれる
「えへへ、やっと来たね」
「あぁ、遅くなってすまんの…ほら、差し入れ持って来たんよ」
「わぁい!流石はタク、気が利くじゃないの!」
ねぇねぇが喜びながら俺を持ち上げて飛ぶ
「おぉっ!?」
「タクも一緒にココでくつろごうよ、綺麗だよー」
家の屋根に下された、確かにここら辺は遮るものが無いので夜景が綺麗に見渡せる
「いや、危ないってねぇねぇ…足とか滑らせたらどないすんの」
「大丈夫!私飛べるし、タクが落ちそうになったら助けてあげるよ」
持ってきた菓子を片手に、羽をひらひらさせるねぇねぇ
「い、いやそういうことやなくて…」
「ほらほら、私の横においで?」
危なくなったら助けてくれるらしいし、注意しながら慎重に屋根を歩き横に座る
「ぉ…」
ねぇねぇの横に来ると、ねぇねぇが月明かりに照らされて綺麗だった
蒼い髪や羽根が月明かりを反射して薄っすらと光る幻想的な美しさに、暫し見惚れてしまった
「おーいタク、ボーッとしてるぞー?」
「あ、あぁ…ごめん、確かに綺麗だったからさ」
「そうだよね、私もここから見る景色大好きなんだー!ここ私だけの場所なんだけど、タクは特別に来ていいことにしよう!」
「まぁねぇねぇがおらへんかったら上には上がれないんやけどな」
「それもそっか、じゃあまた一緒にね」
「せやなぁ…ふぁぁ…」
む、少し眠くなって来たな…
「タクったら大きな欠伸だね、眠いなら少し寝る?そうだ、お姉ちゃんの膝を貸してあげる」
ねぇねぇがポンポンと膝の上に手を乗せる
「いや、そんな…悪いよ、それに外だと風邪引きそうやし…」
「大丈夫だよー、少しして起きないようだったら部屋まで運んであげるし…せっかくだから弟に膝枕してあげたいなーって」
「そ、そこまで言うなら…じゃあ…お言葉に甘えて」
ねぇねぇの膝に頭を乗せる、ふわりといい匂いがして女性特有の柔らかさが伝わってくる
「えへへ、なでなで〜」
「ぅ…ぁ…」
膝枕をしたまま頭を撫でるねぇねぇ、羽毛のような感触の腕でされると眠気が更に襲ってくる
「可愛い寝顔だー、こういうのってシルクやシロナの役目だったから私もしてあげたかったんだよね」
「すー…」
「えへへ、タク…タクってば…起きないと風邪ひいちゃうぞ」
「…ん、ん〜…まだ、寝る…」
「こ、こらタク…もう、しょうがないんだからぁ…」
朧げな意識の中で浮遊感を覚えた、これは夢か…?
「仕方ないから部屋まで運んであげる、まったく世話の焼ける弟なんだから…♪」
「ねぇ…ねぇ…」
「やだ、タクったら私の夢見てるの?えへへ〜、可愛いやつめぇ♪」
頭がぼんやりしている…夢の中にねぇねぇが出て来てくれてる
「ほらタク、部屋についたよ?」
「…離れたくないぃ…」
「タク…そうだよね、離れたくないよね」
ぎゅっと、夢の中でねぇねぇが抱きしめてくれる…あったかい
「久しぶりに子守唄、歌ってあげるよ…だから、安心してね…」
「ん…」
「…〜♪」
あぁ…懐かしい歌だ…
昔、ねぇねぇが寝付けない俺によく歌ってくれた子守唄…何処の言葉か知らない不思議な歌だ
「…ねぇ…ねぇ」
「きゃっ…た、タク…?」
もっと、ねぇねぇの歌を感じたい…もっと側で
もっと近くで、ねぇねぇを感じたい…
「た、タク…ぁ…♪」
もう、何も考えられない…
夢の中だし…夢の中でくらいねぇねぇを求めてもいいよな…
「タク…そっか、男の子だもんね…」
夢の中のねぇねぇはそれに応じるかのように、俺に身体を預けてくれる
「…タク、好きにして…いーよっ♪」
そして夢の中で…俺は強くねぇねぇを求める
「…ぁん、こらぁ…女の子には、優しくしないとダメだぞぉ…?…ほら、最初は…キスから、ね?」
…
「…ん、朝…か?」
チュンチュンと鳥のさえずりが聞こえる、窓からも日が差し込んでいて朝になったようだ
「…なんて夢を見てたんだ俺は」
口に出すのも憚れるような…ねぇねぇ相手にあんな夢を見るなんて、しかもなんだか凄いリアルだったし…欲求不満なのか?
いや、それにしては妙にスッキリしてるし…なんだか心地よい気怠さがある
「…しかし妙に肌寒いな、風邪でも引いたか?」
布団を被ろうとして、いま俺が裸だということに気がついた
「…なんで裸なんや俺、そりゃ寒いわ」
「…ん〜、タクぅ…」
あれ、ねぇねぇがいる…
そういえば昨日屋根の上で膝枕されて、多分そのまま寝ちゃったのをねぇねぇが部屋まで運んでくれたのかな
「わぁっ!ね、ねぇねぇも裸やん…」
朝から刺激の強い…
あれ、なんだこの布団のシミ…至る所に謎のシミがある
「なんか少し赤いのもあるし…」
夢のことが頭に過る、何故だか夢なのに鮮明に感触まで覚えている…
ねぇねぇと俺が裸で同じ布団にいて、この布団のシミとやたらと鮮明に覚えている夢…これから導き出される答えは…
「もしかして…夢じゃ、ない?」
俺、夢だと思ってねぇねぇを…
「ん〜…タク、もう朝…?」
ねぇねぇが起きる、まずいぞ…非常にまずい
「あ、あぁ…もう朝やね」
「タクは早起きだねぇ、昨日…あんなに激しかったのに…」
頬をポッと染めてはにかむねぇねぇ、その様子に思わずときめくがそれどころではない
「ね、ねぇねぇ…昨日の…」
「ん、まだ少し…痛いかな…着替えるの手伝ってくれる?」
「は、はいぃ!」
ねぇねぇの様子を見る限り、確定だ
や、やってしまった…これはヤバい、冗談で済まされることでは…
「とりあえず居間へ…ね、ねぇねぇ…あ、歩ける?」
「…ごめん、ちょっと無理…」
ねぇねぇが立ち上がろうとして、足と足の付け根…つまり大事なところをおさえる
(ぐわぁぁぁぁぁぁ!俺の馬鹿野郎ぉぉぉぉぉぉ!なんて無責任なことをしているんだぁぁぁぁぁぁ!)
「タク?」
「え、えぇただいま!お運びいたします!」
「きゃっ…」
多分おんぶは足広げるし、痛いだろうなら…こうやって…
なんだっけこの持ち方、そうそうお姫様抱っこだ
「えへへ、タク…なんだか王子様みたいだね」
(うわぁぁぁぁぁぁなんで俺にそんな乙女な顔ができるんですか俺はねぇねぇに酷いことをした最低のガチ屑野郎なんですよぉぉぉぉ!ああああああああああ!!)
そんな顔で笑いかけられたら俺の心が、心が死んでしまう!いやこの場合死んで詫びたほうがいいのかもしれないな!うん!
「ね、ねぇねぇ…き、昨日のこと覚えてる…?」
居間へねぇねぇを下ろし、昨日のことを聞いてみる…そうだもしかしたら何かの間違いかもしれないし
「もう…タクの、えっち」
ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ!
「…女の子にそんなこと聞くの?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃぃぃ!」
やっぱりな!だと思ったんだよね!こんな都合のいいことなんかないもんね!とりあえず土下座しよう!
「た、タク…どうしたの?」
「ごめんなさい、俺ねぇねぇにあんなことを!謝って許してもらえないと思うけど…お、俺は…!」
「え、た、タクなんで謝ってるの?なんか変だよ…落ち着こう、ね?」
「俺が最低だから、俺が酷い奴だから…ごめんなさい…」
「もう…タク!ちょっと顔上げなさい!」
「は、はいぃ!」
ねぇねぇが声を荒げて俺の頭を無理やり上げさせる
「ほら…ぎゅーっ」
「ぅあ…?」
そしてねぇねぇの暖かい羽に包まれた、いい匂いとねぇねぇの柔らかさが俺に滲みる
「落ち着いた?」
「あ、あぁ…うん」
気分が落ち着き、ねぇねぇが離れる…すこし名残惜しい
「…じゃあ、なんで急に謝ったりしたか…話してくれる?」
俺はねぇねぇに、昨日のことが夢だと思ってやってしまったことやそれで謝っていたことを素直に話す
「んー、タクはそれで様子がおかしかったのかー」
「う、うん…まぁ」
「あのねぇ…私が好きでもない男に身体を許すと思う?」
「いや、そないなことは…」
「私はね、タクが好きだよ。だから、昨日タクに身体を許したんだよ?タクは私のこと、嫌い…?」
「そ、そんなことあるわけないやろ!俺はねぇねぇが好きや!」
多分それは、一人の女性として…夢で求めてしまうほどに好きなんだと思う
「えへへ、ありがと…ほら、何にも問題ないじゃん?」
「でも、姉と弟だし…姉の、ねぇねぇにあんな…最低や…」
「タクは私のことを姉と思って、そして一人の女の子としても見てる。だからタクは戸惑ってるだけ…どうすればいいのかわからないから、そんな風に自分を追い詰めてるんだよね?」
そうだ、確かに俺はいまこの現状に困って…自分を追い詰めることで、正当化しようとしている
「ぅ…でも、俺が最低なことに代わりは…!」
「別に私は、タクに姉と思ってもらっても…女の子として見てもらってもいいのよ?…ううん、両方の目で見てくれるともっと嬉しい!」
「そ、そんなの変や…俺の、わがままやないか…」
「だって、タクに愛情を向けられるのはどんな形でも…本当に、本当に嬉しいんだよ?姉として…女として、二倍の愛情を注いでくれるなんて…これ以上に嬉しいことは他にないよ」
ねぇねぇの言葉と温もりに、俺が溶かされていく
ねぇねぇにまた…甘えてしまっている
「…それに、別に私はタクに責任取れなんて言わないよ?」
「な…」
「確かにタクのこと、大好きだし…タクも私が好きだけど…これから先どんなことがあるか分からないから、もしかしたらタクに私以上に好きな人ができるかもしれないよね?」
そんなこと、あり得るのだろうか…ここまでされて、ねぇねぇ以上の人が現れるのだろうか
「私はね、別にお返しの気持ちとかそういうのはいらないしどうでもいいんだ。…ただ、タクが元気で幸せなら何も言うことはないの…だから無理にタクが責任を感じて、私を愛する必要はないんだよ」
「ねぇねぇ…」
「そりゃあ、もちろんタクに好かれたいなって気持ちは誰にも負けないし…タクの気持ちを向けようと小さい頃から頑張ってきたけどね?…選ぶのはタク自身だからね、私は愛人とかそういうポジションとかでも全然いいよ?」
「そんな、俺は…」
「それにね、私の方に…責任があると思うんだ。タク、セイレーンについて知ってる?」
「ま、まぁ…多少は知っとるよ。ハーピー種の魔物で、歌が上手くて大好きって…」
それくらいは魔物図鑑を開けば書いてあるし、もっと調べようと思ったらいくらでも出てくるだろう
「セイレーンの歌声にはね、特別な魔力がこもってるの…聞いた人を魅了する歌声」
セイレーンの歌声…確かにねぇねぇの歌は側から聞いていて素晴らしいものだ
「でね、セイレーンは大切な人を見つけると…その人のためにいつもとは比べものにならないくらいの魔力をこめた歌を歌うの。これを聞いた大切な人はね?まともに考えられないほどに強く魅了されて、私を求めてしまうの…」
「それが、どうしたんや…?」
「私が子守唄を歌ってあげる時ね、いつも魔力をこめて歌うの。昔からそうやったら、タク…ぐっすり寝てくれてたし…だから、いつもみたいに魔力こめてた」
確かに…昔はねぇねぇに歌ってもらえたら凄く安心してぐっすり眠れたな
「今のタクは大きくなって、成長したよね?いろんなことを知って、性にも目覚めて…それで、昔みたいに魔力をこめて歌ったから…大切な人に向けて歌ったから、タクは私を求めちゃったの…だから、責任は私にあると思う」
いや、しかしいくら歌に魅了されたからと言ってねぇねぇが好きということに代わりはない
「…だからね、私はタクに責任取れなんて言わない。…タクの好きなようにしていいんだよ?」
「…ねぇねぇ、分かった。じゃあ俺、ねぇねぇと正式に…結婚を前提にお付き合いしたい」
「へ?」
「俺、考えたけど…ねぇねぇ以上に好きな人おらんし、やっぱり昔からねぇねぇしか見てなかったんだと思う」
昔からずっと一緒にいたのはねぇねぇだったから、これからも一緒にいたい
「ダメ、かな…ねぇねぇ」
「む、むー…ずるいぞー!そんなこと言われたら「はい」以外ありえないじゃんか、断る気もないけど…タクずるい!」
「え、えぇ!?ご、ごめん…?」
「…でも、本当に私でいいの?」
「ねぇねぇじゃないと俺が嫌や」
「えへへ…もう、タクったらほんとにお姉ちゃんっ子なんだから…」
ぎゅうっと強く抱きしめられた、柔らかい感触に安やぎを感じる
「とりあえず皆に報告だねー、タクは正式に私のモノになりましたって」
「…俺、そろそろ皆起こしてくるよ。もう完全に朝だし、ご飯も用意しなきゃ…」
「じゃあ私皆起こしてくるよ、シルク先の方がいいよね?」
「い、いやねぇねぇは無理しないで居間にいてや…その、痛いだろうし」
「んー、痛みはだいぶ引いてきたから大丈夫だよ?じゃあ皆起こしてくるねー」
ねぇねぇが返事も聞かずにさっさと居間から出て行った
「破瓜ってすごい痛いって聞くけど…魔物だとそういうのにも強いんやろうか、まぁとりあえずは大丈夫そうやな」
さーて、俺は俺の仕事をこなしますかね
「タク、何かして遊ぼー!」
「ねぇねぇは元気やの、俺は今日久々に遊んで疲れたから…あまり激しいのはダメやで?」
「そうなの?じゃあ…庭でゆっくりしよー」
庭か…さっき風呂に入って少し体も火照ってるし少し冷ますのに丁度いいかもしれない
「まぁそれならええかな」
「やったー!じゃあ先行ってるねー!」
瞬く間に庭の方へ行ってしまった、早いな
「…なんかお菓子とか持って行ってあげるかな」
「あらあら、大変そうねぇたっくん」
台所の棚でお菓子を探していたらユウねーさんに会った
「大変って、何がや?」
「エルちゃんよぉ、あの子ってば結構活発だから遊び相手になると大変なのぉ」
「あぁ、なるほど…まぁ楽しいし心配はいらんよ」
「あらあら頼もしいわぁ、それじゃあ私のお酒の相手もしてもらっちゃおうかしら?」
「ねーさん、生き物にはできることのキャパシティーってもんがあってな?」
「あら残念、じゃあまたの機会にしましょう」
そういってねーさんは棚から菓子の袋を一つ取ると台所を去った
「さて、俺も行こっと」
適当な菓子を持って庭まで行く
「ねぇねぇー?」
周りを見ると誰もいない、先に行ったはずなんだけどなぁ
「あれ、おかしいなぁ」
「タクー!こっちこっちー!」
おや、どこからかねぇねぇの声が…
「上だよー!」
「上…?」
声のする方を見ると、ねぇねぇは屋根の上にいた
「なんや、そんなところにいたんかいな」
俺が気付くと、ねぇねぇが下に降りてきてくれる
「えへへ、やっと来たね」
「あぁ、遅くなってすまんの…ほら、差し入れ持って来たんよ」
「わぁい!流石はタク、気が利くじゃないの!」
ねぇねぇが喜びながら俺を持ち上げて飛ぶ
「おぉっ!?」
「タクも一緒にココでくつろごうよ、綺麗だよー」
家の屋根に下された、確かにここら辺は遮るものが無いので夜景が綺麗に見渡せる
「いや、危ないってねぇねぇ…足とか滑らせたらどないすんの」
「大丈夫!私飛べるし、タクが落ちそうになったら助けてあげるよ」
持ってきた菓子を片手に、羽をひらひらさせるねぇねぇ
「い、いやそういうことやなくて…」
「ほらほら、私の横においで?」
危なくなったら助けてくれるらしいし、注意しながら慎重に屋根を歩き横に座る
「ぉ…」
ねぇねぇの横に来ると、ねぇねぇが月明かりに照らされて綺麗だった
蒼い髪や羽根が月明かりを反射して薄っすらと光る幻想的な美しさに、暫し見惚れてしまった
「おーいタク、ボーッとしてるぞー?」
「あ、あぁ…ごめん、確かに綺麗だったからさ」
「そうだよね、私もここから見る景色大好きなんだー!ここ私だけの場所なんだけど、タクは特別に来ていいことにしよう!」
「まぁねぇねぇがおらへんかったら上には上がれないんやけどな」
「それもそっか、じゃあまた一緒にね」
「せやなぁ…ふぁぁ…」
む、少し眠くなって来たな…
「タクったら大きな欠伸だね、眠いなら少し寝る?そうだ、お姉ちゃんの膝を貸してあげる」
ねぇねぇがポンポンと膝の上に手を乗せる
「いや、そんな…悪いよ、それに外だと風邪引きそうやし…」
「大丈夫だよー、少しして起きないようだったら部屋まで運んであげるし…せっかくだから弟に膝枕してあげたいなーって」
「そ、そこまで言うなら…じゃあ…お言葉に甘えて」
ねぇねぇの膝に頭を乗せる、ふわりといい匂いがして女性特有の柔らかさが伝わってくる
「えへへ、なでなで〜」
「ぅ…ぁ…」
膝枕をしたまま頭を撫でるねぇねぇ、羽毛のような感触の腕でされると眠気が更に襲ってくる
「可愛い寝顔だー、こういうのってシルクやシロナの役目だったから私もしてあげたかったんだよね」
「すー…」
「えへへ、タク…タクってば…起きないと風邪ひいちゃうぞ」
「…ん、ん〜…まだ、寝る…」
「こ、こらタク…もう、しょうがないんだからぁ…」
朧げな意識の中で浮遊感を覚えた、これは夢か…?
「仕方ないから部屋まで運んであげる、まったく世話の焼ける弟なんだから…♪」
「ねぇ…ねぇ…」
「やだ、タクったら私の夢見てるの?えへへ〜、可愛いやつめぇ♪」
頭がぼんやりしている…夢の中にねぇねぇが出て来てくれてる
「ほらタク、部屋についたよ?」
「…離れたくないぃ…」
「タク…そうだよね、離れたくないよね」
ぎゅっと、夢の中でねぇねぇが抱きしめてくれる…あったかい
「久しぶりに子守唄、歌ってあげるよ…だから、安心してね…」
「ん…」
「…〜♪」
あぁ…懐かしい歌だ…
昔、ねぇねぇが寝付けない俺によく歌ってくれた子守唄…何処の言葉か知らない不思議な歌だ
「…ねぇ…ねぇ」
「きゃっ…た、タク…?」
もっと、ねぇねぇの歌を感じたい…もっと側で
もっと近くで、ねぇねぇを感じたい…
「た、タク…ぁ…♪」
もう、何も考えられない…
夢の中だし…夢の中でくらいねぇねぇを求めてもいいよな…
「タク…そっか、男の子だもんね…」
夢の中のねぇねぇはそれに応じるかのように、俺に身体を預けてくれる
「…タク、好きにして…いーよっ♪」
そして夢の中で…俺は強くねぇねぇを求める
「…ぁん、こらぁ…女の子には、優しくしないとダメだぞぉ…?…ほら、最初は…キスから、ね?」
…
「…ん、朝…か?」
チュンチュンと鳥のさえずりが聞こえる、窓からも日が差し込んでいて朝になったようだ
「…なんて夢を見てたんだ俺は」
口に出すのも憚れるような…ねぇねぇ相手にあんな夢を見るなんて、しかもなんだか凄いリアルだったし…欲求不満なのか?
いや、それにしては妙にスッキリしてるし…なんだか心地よい気怠さがある
「…しかし妙に肌寒いな、風邪でも引いたか?」
布団を被ろうとして、いま俺が裸だということに気がついた
「…なんで裸なんや俺、そりゃ寒いわ」
「…ん〜、タクぅ…」
あれ、ねぇねぇがいる…
そういえば昨日屋根の上で膝枕されて、多分そのまま寝ちゃったのをねぇねぇが部屋まで運んでくれたのかな
「わぁっ!ね、ねぇねぇも裸やん…」
朝から刺激の強い…
あれ、なんだこの布団のシミ…至る所に謎のシミがある
「なんか少し赤いのもあるし…」
夢のことが頭に過る、何故だか夢なのに鮮明に感触まで覚えている…
ねぇねぇと俺が裸で同じ布団にいて、この布団のシミとやたらと鮮明に覚えている夢…これから導き出される答えは…
「もしかして…夢じゃ、ない?」
俺、夢だと思ってねぇねぇを…
「ん〜…タク、もう朝…?」
ねぇねぇが起きる、まずいぞ…非常にまずい
「あ、あぁ…もう朝やね」
「タクは早起きだねぇ、昨日…あんなに激しかったのに…」
頬をポッと染めてはにかむねぇねぇ、その様子に思わずときめくがそれどころではない
「ね、ねぇねぇ…昨日の…」
「ん、まだ少し…痛いかな…着替えるの手伝ってくれる?」
「は、はいぃ!」
ねぇねぇの様子を見る限り、確定だ
や、やってしまった…これはヤバい、冗談で済まされることでは…
「とりあえず居間へ…ね、ねぇねぇ…あ、歩ける?」
「…ごめん、ちょっと無理…」
ねぇねぇが立ち上がろうとして、足と足の付け根…つまり大事なところをおさえる
(ぐわぁぁぁぁぁぁ!俺の馬鹿野郎ぉぉぉぉぉぉ!なんて無責任なことをしているんだぁぁぁぁぁぁ!)
「タク?」
「え、えぇただいま!お運びいたします!」
「きゃっ…」
多分おんぶは足広げるし、痛いだろうなら…こうやって…
なんだっけこの持ち方、そうそうお姫様抱っこだ
「えへへ、タク…なんだか王子様みたいだね」
(うわぁぁぁぁぁぁなんで俺にそんな乙女な顔ができるんですか俺はねぇねぇに酷いことをした最低のガチ屑野郎なんですよぉぉぉぉ!ああああああああああ!!)
そんな顔で笑いかけられたら俺の心が、心が死んでしまう!いやこの場合死んで詫びたほうがいいのかもしれないな!うん!
「ね、ねぇねぇ…き、昨日のこと覚えてる…?」
居間へねぇねぇを下ろし、昨日のことを聞いてみる…そうだもしかしたら何かの間違いかもしれないし
「もう…タクの、えっち」
ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ!
「…女の子にそんなこと聞くの?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃぃぃ!」
やっぱりな!だと思ったんだよね!こんな都合のいいことなんかないもんね!とりあえず土下座しよう!
「た、タク…どうしたの?」
「ごめんなさい、俺ねぇねぇにあんなことを!謝って許してもらえないと思うけど…お、俺は…!」
「え、た、タクなんで謝ってるの?なんか変だよ…落ち着こう、ね?」
「俺が最低だから、俺が酷い奴だから…ごめんなさい…」
「もう…タク!ちょっと顔上げなさい!」
「は、はいぃ!」
ねぇねぇが声を荒げて俺の頭を無理やり上げさせる
「ほら…ぎゅーっ」
「ぅあ…?」
そしてねぇねぇの暖かい羽に包まれた、いい匂いとねぇねぇの柔らかさが俺に滲みる
「落ち着いた?」
「あ、あぁ…うん」
気分が落ち着き、ねぇねぇが離れる…すこし名残惜しい
「…じゃあ、なんで急に謝ったりしたか…話してくれる?」
俺はねぇねぇに、昨日のことが夢だと思ってやってしまったことやそれで謝っていたことを素直に話す
「んー、タクはそれで様子がおかしかったのかー」
「う、うん…まぁ」
「あのねぇ…私が好きでもない男に身体を許すと思う?」
「いや、そないなことは…」
「私はね、タクが好きだよ。だから、昨日タクに身体を許したんだよ?タクは私のこと、嫌い…?」
「そ、そんなことあるわけないやろ!俺はねぇねぇが好きや!」
多分それは、一人の女性として…夢で求めてしまうほどに好きなんだと思う
「えへへ、ありがと…ほら、何にも問題ないじゃん?」
「でも、姉と弟だし…姉の、ねぇねぇにあんな…最低や…」
「タクは私のことを姉と思って、そして一人の女の子としても見てる。だからタクは戸惑ってるだけ…どうすればいいのかわからないから、そんな風に自分を追い詰めてるんだよね?」
そうだ、確かに俺はいまこの現状に困って…自分を追い詰めることで、正当化しようとしている
「ぅ…でも、俺が最低なことに代わりは…!」
「別に私は、タクに姉と思ってもらっても…女の子として見てもらってもいいのよ?…ううん、両方の目で見てくれるともっと嬉しい!」
「そ、そんなの変や…俺の、わがままやないか…」
「だって、タクに愛情を向けられるのはどんな形でも…本当に、本当に嬉しいんだよ?姉として…女として、二倍の愛情を注いでくれるなんて…これ以上に嬉しいことは他にないよ」
ねぇねぇの言葉と温もりに、俺が溶かされていく
ねぇねぇにまた…甘えてしまっている
「…それに、別に私はタクに責任取れなんて言わないよ?」
「な…」
「確かにタクのこと、大好きだし…タクも私が好きだけど…これから先どんなことがあるか分からないから、もしかしたらタクに私以上に好きな人ができるかもしれないよね?」
そんなこと、あり得るのだろうか…ここまでされて、ねぇねぇ以上の人が現れるのだろうか
「私はね、別にお返しの気持ちとかそういうのはいらないしどうでもいいんだ。…ただ、タクが元気で幸せなら何も言うことはないの…だから無理にタクが責任を感じて、私を愛する必要はないんだよ」
「ねぇねぇ…」
「そりゃあ、もちろんタクに好かれたいなって気持ちは誰にも負けないし…タクの気持ちを向けようと小さい頃から頑張ってきたけどね?…選ぶのはタク自身だからね、私は愛人とかそういうポジションとかでも全然いいよ?」
「そんな、俺は…」
「それにね、私の方に…責任があると思うんだ。タク、セイレーンについて知ってる?」
「ま、まぁ…多少は知っとるよ。ハーピー種の魔物で、歌が上手くて大好きって…」
それくらいは魔物図鑑を開けば書いてあるし、もっと調べようと思ったらいくらでも出てくるだろう
「セイレーンの歌声にはね、特別な魔力がこもってるの…聞いた人を魅了する歌声」
セイレーンの歌声…確かにねぇねぇの歌は側から聞いていて素晴らしいものだ
「でね、セイレーンは大切な人を見つけると…その人のためにいつもとは比べものにならないくらいの魔力をこめた歌を歌うの。これを聞いた大切な人はね?まともに考えられないほどに強く魅了されて、私を求めてしまうの…」
「それが、どうしたんや…?」
「私が子守唄を歌ってあげる時ね、いつも魔力をこめて歌うの。昔からそうやったら、タク…ぐっすり寝てくれてたし…だから、いつもみたいに魔力こめてた」
確かに…昔はねぇねぇに歌ってもらえたら凄く安心してぐっすり眠れたな
「今のタクは大きくなって、成長したよね?いろんなことを知って、性にも目覚めて…それで、昔みたいに魔力をこめて歌ったから…大切な人に向けて歌ったから、タクは私を求めちゃったの…だから、責任は私にあると思う」
いや、しかしいくら歌に魅了されたからと言ってねぇねぇが好きということに代わりはない
「…だからね、私はタクに責任取れなんて言わない。…タクの好きなようにしていいんだよ?」
「…ねぇねぇ、分かった。じゃあ俺、ねぇねぇと正式に…結婚を前提にお付き合いしたい」
「へ?」
「俺、考えたけど…ねぇねぇ以上に好きな人おらんし、やっぱり昔からねぇねぇしか見てなかったんだと思う」
昔からずっと一緒にいたのはねぇねぇだったから、これからも一緒にいたい
「ダメ、かな…ねぇねぇ」
「む、むー…ずるいぞー!そんなこと言われたら「はい」以外ありえないじゃんか、断る気もないけど…タクずるい!」
「え、えぇ!?ご、ごめん…?」
「…でも、本当に私でいいの?」
「ねぇねぇじゃないと俺が嫌や」
「えへへ…もう、タクったらほんとにお姉ちゃんっ子なんだから…」
ぎゅうっと強く抱きしめられた、柔らかい感触に安やぎを感じる
「とりあえず皆に報告だねー、タクは正式に私のモノになりましたって」
「…俺、そろそろ皆起こしてくるよ。もう完全に朝だし、ご飯も用意しなきゃ…」
「じゃあ私皆起こしてくるよ、シルク先の方がいいよね?」
「い、いやねぇねぇは無理しないで居間にいてや…その、痛いだろうし」
「んー、痛みはだいぶ引いてきたから大丈夫だよ?じゃあ皆起こしてくるねー」
ねぇねぇが返事も聞かずにさっさと居間から出て行った
「破瓜ってすごい痛いって聞くけど…魔物だとそういうのにも強いんやろうか、まぁとりあえずは大丈夫そうやな」
さーて、俺は俺の仕事をこなしますかね
15/04/08 23:11更新 / ミドリマメ
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