4話:里帰り前編 BACK NEXT

「アイリスさーん、手紙でーす」

間延びした配達員の声が外から聞こえてくる
外へ出てみると、既に飛び立ち小さくなりゆくハーピーの姿が見えた
しばらく眺めていたが、手紙が届いていることを思い出しポストの方へと向かう

「3通か・・・誰からだろう」

家へ入りながら宛名を確認する

1通目、ルイス=グリットロック・・・この前の九尾の人だろう
2通目、オリファー=ガーランド・・・誰だろう?
3通目、ライト=ヴァンダルハーツ・・・お父さんからだ

あれ?ここに居ること教えてないのになんでわかったんだろうか・・・?
・・・お父さんだから仕方がないか・・・

「アイリス手紙が来ているよ」
「うむ?誰からじゃ?」
「この前の九尾の人とオリファーって人からだよ」
「ふむ、あやつからか」
「知り合いなの?」
「む?・・・まあの」

アイリスに手紙を渡し、僕は自分宛に届いた手紙を読み始めた




  






アルトへ

突然手紙が届いたことに驚いているだろう
何故手紙を届けることが出来たかについてだが・・・
一つ目にアルトが賞金首として町中に張り紙がしてあったこと
二つ目にその張り紙にアイリス=フランベルジュという者の名前が書いてあったこと
これらのものからアルトがアイリスという人物のところに居るだろうと予測したのだ
何故手紙が届いたかについて理解してもらえたと思うので本題に入らせてもらう
母さんが魔物になったことが教団の奴らにばれてしまい、引っ越すことになったのだ
その手伝いをして欲しいので手紙を送らせてもらった
突然ですまないが手が空いていたら手伝いに来て欲しい
いい返事を待っているぞ

ライトより











・・・呆れて言葉が出ない
手紙の内容にではなく、今の今まで気づかなかった教団にである

「誰からの手紙じゃ?」
「僕のお父さんからだよ」
「ふむ、アルトの父上か・・・一度挨拶に行かねばの」
「うーん・・・挨拶はまた今度にしようよ、ちょっと急がないと不味そうだし」
「残念じゃのう、まあ仕方がない」
「それじゃあ身支度を済ませて行って来るよ」

そういうと、僕は自室へと入り、身支度を始めた
縛っていた髪を解いて女性物の服に着替える、スカート以外特に変わらないけど
女装する理由は・・・この方が少しでも判り辛くなるだろうと思ったからで性癖の問題ではない・・・本当ですよ?
必要最低限の物をポーチに入れ、武器を持ち、部屋を出る

「もう行くのか?」
「うん、早めにいったほうが良さそうだからね」
「それにしても・・・まるで別人の様じゃな」
「それは褒めているのかい?」
「もちろん褒めているのじゃよ、なかなか可愛らしいのう」
「それはどうも」
「おっと、忘れるところじゃった、これを持っていくのじゃ」

そう言うと、アイリスはブレスレットのようなものを渡してきた

「これは?」
「御守のようなものじゃよ」
「ありがとう、ありがたくつかわさせてもらうよ」

そう言いつつ、ブレスレットを腕にはめる
カチッと小気味良い音が聞こえる・・・え?

「あれ?外れなくなったんだけど」
「ふふふ、こうもあっさりと引っかかってくれるとはのう♪」
「え?どういうこと?」
「そのブレスレットはワシしか外せんのじゃよ」
「なにその都合のいいブレスレット」
「さらにそのブレスレットには探知魔法を掛けておっての、ワシから逃げようとしても何処にいるかいつでもわかる優れものなのじゃよ」
「どう見ても呪われているよねこれ!?」
「大丈夫じゃよ、突然混乱し始めたりするようなことは無い」
「それならいいけど・・・」
「とにかく無事に帰ってくるのじゃ、ワシとの特訓はまだ終わっておらんからな」
「まあ死なない程度に気をつけるよ」

話しながら外にでる
ああ・・・今日もいい天気だ

「お土産もよろしくのー」
「はいはいわかりましたよ」

お土産を要求されたけど買う暇があるかどうか・・・
まあいい、とにかく急いでいこう















反魔物勢力の首都リーデルへと続く道を三人の若者が歩いている

「もう直ぐでリーデルに着くね」
「長い道のりだったな」
「でも、これで念願の勇者になれますね」

彼らは勇者になろうとリーデルへ行こうとしている者たちのようだ

一人は小柄な少年、大剣を背負い皮製の鎧と布のマントを羽織っている
一人は背の高い女性、片手剣と盾を持ち鉄製の鎧を着ている
一人は小柄な少女、杖と魔道書を持ちローブを羽織っている

「それにしても・・・結構遠いね、リーデルって」
「何を言っている、出発してまだ2時間しか経ってないぞ」
「勇者になったらこれよりもいっぱい歩くことになるのかな?」
「当たり前だ、それくらいの体力が勇者にはあって当然だろう」
「もうつかれたぁぁ!休みたいぃぃ!」
「しょうがないなぁ・・・少し休憩にしようか」

手ごろな場所を見つけて休憩を始める三人
それぞれが汗を拭いたり水を飲んだりなどして休憩をとっている

ガサガサッ・・・

突然周囲の草むらが不自然にゆれる
三人は驚きはするものの、直ぐに武器を手に取り周囲を見渡した

「な、なんだ?」
「気をつけろ・・・囲まれているぞ」
「うぅ・・・緊張してきたよ・・・」
「!?来るぞ!」

突如、茂みの中から黒い影が飛び出てくる
黒い影からの攻撃を盾で防ぐ

「チッ・・・外したか・・・」
「・・・ワーウルフか、これは骨が折れそうだな・・・」
「あたしだけだと思うかい?お前たち!出て来な!」

ガサガサと草むらを掻き分けて魔物が出てくる

「最近出没しだした盗賊団か!?」
「へぇ、ガキの割には詳しいんだね、痛い目に遭いたくなかったら金目のものを置いていきな!」
「断る・・・といったら?」
「そのときはちょっと話し合いをしないといけないねぇ・・・もちろんあたし達に金目のものを渡したくなるようにね」
「(この人数では不利かもしれない、ここは大人しく従ったほうがいいか?)」
「(でも・・・勇者を目指しているものが魔物の言いなりになるのは悔しいですよ・・・)」
「(では戦うというのか?懸命な判断とは思えないな)」
「何をごちゃごちゃ言っているんだい!出すか出さないかはっきりしな!」
「・・・仕方が無い、だs」「その必要は無いよ」

突然魔物たちの後ろから声が聞こえる

「な、何だてめぇは!」
「何処にでもいる可愛い冒険者ですよ?」
「あたしにケンカ売ってんのかこのガキが!」
「そんな商売はしてませんよ、行商人はしていますけどね」
「きさまぁ!」

リーダー格であろう魔物が少女に殴りかかるが、少女はひらりと身をかわしてクスクスと笑っている

「何処を狙っているんですか?私はこっちですよ?」
「とことん舐めやがって・・・お前ら!やっちまえ!」
「「「「はい!」」」」
「あらあら・・・こんなか弱い子供相手に大勢で挑むなんて・・・」

少女に向かって魔物達が一斉に飛び掛っていく

「これは・・・お仕置きが必要かな?」
「危ない!避けろ!」
「くたばれぇ!!」
「・・・クロックアウト」

彼女・・・彼が言い放った時、世界が止まった、

「何だこれは・・・一体どうなって・・・」
「!?・・・さて・・・今日はこれでも投げようかな」

そういうと彼は手投げ用の小さなハンマーを複数取り出した
そしてそのハンマーを力一杯、魔物たちにに向かって投げつけた

「この人・・・3秒だけど時止めに対抗できるなんて・・・」
「・・・この人だけは敵に回したくないな・・・」

そういい終わると彼は一呼吸置き、誰も聞こえない空間で静かに言い放った

「・・・そして時は動き出す・・・」

彼・・・彼女が言い放った時、世界が動き出した
瞬間、無数のハンマーが魔物たちに向かって降り注いだ

「ぐふぅ!?」
「ぎゃあ!」

予想だにしない方向からの攻撃に対応できず回避行動を取れない魔物たちに、容赦なくハンマーが直撃していった

「くっ・・・一体どうなってやがる・・・こんなガキ相手に全滅だと・・・?」
「さて・・・もっとお仕置きしてほしい?」
「くそっ!・・・煮るなり焼くなり好きにしろ!」
「往生際がいいね・・・そういう子、嫌いじゃないよ」

そういうと、彼女は懐から金貨を二枚取り出した

「・・・それは何だい」
「何って、金貨だよ」
「それはわかっている!何故金貨を出しているのかと聞いているんだよ!」
「金目のものが欲しくて襲ってきたんでしょ?だから私からあなたたちへの贈り物だよ」
「・・・情けのつもりかい?」
「そうじゃないよ、君たちのことが放って置けなくなってね、これがあれば少しは足しになるかなと思ってね」
「ふんっ・・・返せって言っても返さないからな」

そういうと魔物は金貨を乱暴に受け取った

「ほら!何時まで寝てんだい!早く起きな!」
「ふえぇ・・・逃げるですぅ・・・」
「・・・あんたのこと・・・覚えておいてやるからな・・・」

そういうと、魔物たちは草むらの中へと入っていった

「すごい・・・こんなに強い人がいたんですね・・・」
「どんな魔法を使ったかはわからんが攻撃が早すぎて見えなかった・・・只者じゃないな」
「・・・なんだったんだろうあの奇妙な感覚は・・・」
「っと、怪我はないですか?旅のお方達」
「私たちに怪我は無い、あなたに助けられたおかげでな」
「それはよかった、この辺りは他のところより危険な魔物が少ないですが、十分注意してくださいね」
「あっ、これからどちらへ行かれるんですか?」
「今からリーデルへと向かうところです、両親が住んでいるんですよ」
「私たちと目的地は同じか・・・よければご一緒させてもらえないか?」
「私は一向に構いませんよ」
「そうですか、では短い間ですがよろしくお願いします」
「そういえば名前を伺っていませんでしたね?」
「あ、申し送れました、僕の名前はロイド=ラストダンサーです」
「私はサラ=ワルキュリアだよろしく頼む」
「私はユリア=プリンスダムです、よろしくお願いしますね」
「私の名前は・・・フーとでも名乗っておきますか」
「よろしくお願いします、フーさん」

こうして、彼らの旅に一人の少女(?)が加わった


彼らが少女の正体に気づくまで、後3時間・・・

10/07/15 22:26 up
アルトさんの女装趣味疑惑や勇者志望の少年達などいろいろややこしい状況になってきました
そんなこんなで第4羽です
後編の追加は少し後になるかも・・・です
白い黒猫
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