4話:里帰り後編 BACK NEXT

反魔物側の首都リーデル
魔物を滅ぼさんとする騎士団と勇者が多く生み出されてきた町である
しかし、この町の中に魔物が隠れ住んでいることを知っているものはほとんどいない

「やっとついた、ここがリーデルか」
「なかなか大きな町なんだな」
「おなかすいたぁご飯〜」
「はいはいわかったよ、フーさんもどうですか?」
「私は・・・用事があるからここで失礼させてもらうよ」
「そうか・・・短い間だったが世話になったな」
「今度あったときは一緒にご飯食べましょうね」
「ええ、楽しみにしているね、それじゃあ私はこれで」
「ありがとうございました」

そう言うと、彼らは近場の飲食店へと入っていった
さて・・・適当にお土産になりそうなものを探して家に行きましょうか














「・・・これ少し値引きできませんか?」
「それは難しいな、こっちにも生活がかかっているんだ」

何気なくハーブショップに立ち寄ってみたところ、黄金色のハーブ入りの文鎮があったので値段を聞いてみたのだが・・・
高い・・・高すぎる・・・金貨5枚とかどれだけ高いの・・・
ちなみに金貨5枚がどれくらい高いかというと・・・3ヶ月は生活に困らない程度の金額だ

「そこをなんとかお願いできませんか?」
「そうはいってもねぇ・・・金の代わりになりそうなものがあれば少しは値引きしてやってもいいが」
「本当ですか?ちょっと探してみます」

そういいつつ、ポーチの中を探すが何も無い
・・・なんとなく・・・なんとなくだけどマントの内側を探ってみる
あれ?妙に広い・・・?
手に何かが触れる、取り出してみるとそれは宝石だった

「お!宝石か!」
「え?あ・・・なぜかはいってました」
「こっちがこの文鎮にハーブティー多めにつけるからそれを譲ってくれ!」
「あ、ありがとうございます」
「これでやっと結婚指輪の材料がそろった、助かったよ」
「そうですか、おめでとうございます」
「礼を言うのはこっちのほうだ、ありがとよ!」

目当ての物をオマケ付きで手に入れれた、お土産はこれくらいでいいかな
さて・・・懐かしの我が家へ帰りますか・・・!















そのころ・・・大教会では・・・

「念願の勇者になったぞ!」
「念願の騎士になったぞ!」
「念願の賢者になったぞ!」
「・・・相当嬉しかったんですね」

彼ら3人は、神の加護を受け、勇者とその仲間として生まれ変わっていた

「おめでとう、君達の様な勇気ある若者が勇者として立ち上がってくれた事に心から感謝をする、我々は君達を歓迎するぞ」
「勿体無いお言葉・・・ありがとうございます」
「君達に適した装備を支給させてもらった、魔物との戦いに役立ててくれ」
「すごい・・・軽くて丈夫で・・・本当に貰っていいんですか?」
「もちろんだとも、世界を救おうと旅立つものを全力でサポートするのも我々の使命なのだ」
「ありがとうございます!大事に使います!」
「気に入ってもらえたならよかった、ところで早速で悪いのだが頼みたいことがある」
「私達に出来ることなら何でも言ってください」
「うむ、まずはこの手配書を見てくれ」

そう言って、神官は一枚の紙を渡す

「これは・・・指名手配書?」
「うむ、この手配書に載っている人物を捕まえて欲しい」
「アルト=V=ラグナロック?・・・この顔・・・どこかで見たような・・・」
「情報によるとこの男は女装が得意な変態らしい」
「うーん・・・この人フーさんに似てない?」
「・・・!そういえば・・・ということはフーさんは・・・」
「居場所はまだわかっていのだが・・・」
「この人は・・・多分この町にいます・・・」
「何っ!?本当か!?」
「憶測ですけど・・・」
「よし!騎士団を集めよ!この町から犯罪者を逃がすな!」
「・・・何かの間違いであればいいけど・・・」














そのころ・・・ヴァンダルハーツ家では・・・

「・・・アルトは来てくれるだろうか・・・」
「あの子もいろいろと大変みたいだし・・・来れないかもしれないわね」
「まったく、行商人をやっていると思ったら今度は指名手配犯か」
「一体何をやらかしたのやら・・・」
「私はアルト君にあったことがないから楽しみなんだけどね」
「アルト・・・まだ見ぬ私のお兄様・・・♪」
「おいおい、お兄ちゃんならここにもいるだろう?」
「おっと、お前の相手は私だぞ、余所見はいけないな」
「ちょっ!まて!おちtアッー!」
「・・・アルト・・・早く来てくれ・・・」

一家の大黒柱がため息を吐いたとき、ドアのほうからノックが聴こえる
ライトは立ち上がってドアの前まで歩み寄り、ドアを開けた

「はい、どちら様で・・・ん?」
「どうしたの?」
「うむ、誰もいない、コンコンダッシュの様だ」
「そんな古典的な・・・」

ライトはため息を吐きつつドアを閉めた、瞬間

ガンッ!ガンッ!・・・ドサッ!

突然暖炉から硬いものが壁にぶつかる鈍い音と共に何かが落ちてきた
そして落下地点に溜まっていた灰を撒き散らして、"それ"は灰の中に埋まった

「ゲホッ!ゴホッ!な、何だ一体!?」
「ケホッ!ケホッ!何!?何が落ちてきたの!?」
「と、とりあえず窓を開けよう、ゴホッ!」

窓が開けられ、部屋に舞った灰が風と共に外へ流れていく
そして視界が開けたとき・・・灰の中に埋まっている足のようなものが姿を現した

「なんだ・・・これ・・・」
「ど、泥棒かしら?」
「とりあえず引っこ抜こう」

ライトと少年によって埋まっていたものが引っ張り出される
中からは長髪の少女が出てきた

「・・・女?」
「イタタタ・・・驚かせようとしたら失敗した・・・」
「アルト・・・?アルトなのか!?」
「ただいま、お父さん、お母さん、姉さん、兄さん」

埃をはたきながら久しぶりに会う家族に挨拶をする

「まったく、普通に入ってくればいいのにな・・・お帰りアルト」
「お帰りなさい、久しぶりに顔が見れて嬉しいわ」
「久しぶりだなアルト、元気にしてたか?」
「うん、いろいろあったけど元気だよ」
「指名手配されているのを知ったときはどうなるかと思ったが、無用な心配だったな」
「僕がそう簡単に捕まると思うかい?あれくらいじゃ捕まらないよ」
「はじめまして、貴方がアルト君ね?」
「はじめまして、お初にお目にかかります」
「紹介しよう、彼女が前に言っていたレイラだ」
「レイラよ、よろしくね、そしてこの子は私とダーリンの愛の結晶よ♪」
「まったく・・・こんなに可愛い妻がいるのに他の魔物とするなんて、どれだけ盛っているのかしら」
「うぅ・・・でも家族になったんだし・・・その・・・ごめんなさい」
「・・・はじめまして・・・アルトお兄様・・・」
「はじめまして、改めて僕はアルト、君の名前は?」
「・・・クリス」
「クリスか、よろしくね」
「・・・よろしく・・・♪」

頬を赤らめながら抱きついてくる、末っ子の僕にも妹が出来たと思うと嬉しくなってくる
でも父親が一緒で母親が違っても兄妹というのだろうか?
そんな疑問が浮かぶも、抱きついて甘えてくる妹の存在によって掻き消されていった

「かなり懐かれているな、アルトには魔物が惹かれるような何かを持っているようだな」
「何でなのかは分からないけどその何かのおかげで指名手配されることになったんだけどね」
「・・・アルトも苦労しているんだな・・・」
「ところで引越しの準備は出来ているの?」
「うむ、もう直ぐで終わるぞ」
「間に合わなかったか・・・」
「そんなことは無い、護衛は何人でも居て貰ったほうが助かるからな」
「護衛無しでもお父さんなら問題ないと思うけど、むしろ騎士団が今まで手出ししなかったのもお父さんが原因だと思う」
「ふむ・・・否定は出来んな」
「だって教団の騎士が来たときも『妻に指一本でも触れたら遺伝子の欠片まで切り刻むぞ』って言って守ってくれたもの♪」
「愛する妻を守るのは男の役目だろう、褒められるような事ではないと思うぞ?」
「あなた・・・襲いたくなってきちゃったんだけど」
「まあまて、少し落ち着くんだ」
「ダメ・・・我慢できない、いただきます♪」
「うわなにをするやmアッー!」
「・・・家族の前で堂々とするなよ・・・」
「負けていられん!私たちもするぞ!」
「おまっ!ちょっとおちtウボァー!」
「・・・(変なフラグを立てないように黙っておこう・・・)」

しばらくは収まりそうにないな・・・どうしよう
・・・とりあえず服が灰だらけなので着替えてこよう
















そのころ・・・広場では・・・

「やつは見つかったか?」
「何処を探してもいない、何処かに潜伏しているのかもしれん」
「あのー・・・少しいいですか?」

誰かを探している様子の騎士達に話しかける
「今は忙しい・・・」と言い掛けて僕の顔を覗き込んでくる

「!?これは勇者殿、我々に何のようですか?」
「怪しい家とかはなかったか?」
「怪しい家・・・そういえば魔物が住んでいる家がありましたね」
「そういえばあったな、だがあそこは下手に手出しは出来んな・・・」
「旦那がソードマスター兼学者だとよ、手の出しようが無いぞ」
「その家が怪しいと思うんですが・・・行ってみませんか?」
「ふむ・・・勇者殿がいれば大丈夫だろう、行きましょう」

騎士達と共に、その家へと向かう
道行く人が騎士や僕達を見てざわめいている・・・そんなに珍しいのだろうか?

「勇者や騎士が町を大勢で歩くことって滅多にないことなんでしょうか?」
「滅多にないことですね、普段は少数で見回りをする程度ですので」
「そうなんですか・・・」
「着きましたよ、ここが問題の家です」

どうやら話しているうちにたどり着いたようだ
何処からどう見ても普通の家にしか見えないけど

「勇者殿、行きましょう!」
「・・・はい!」

僕は深呼吸をして、目の前の扉を開けた















「失礼するぞ!」

いきなりドアが開き、騎士や子供が入ってくる

「あら、教会の騎士が何の用ですか?」
「この家にアルト=V=ラグナロックという男はいないか?」
「・・・さぁな、そんなやつは知らん」
「隠し立てしても何の得にもならんぞ」
「知らないものは知らないと言っているだろう!」
「勇者の特権としてこの家を調べさせてもらいますがよろしいですか?」
「くっ・・・ここまでか・・・」

勇者と言った少年が家の奥に入り込もうとしたそのとき

「呼んだかい?」
「!?アルト!早く逃げろ!」
「僕は逃げも隠れもしないよ、勇者ロイドさん」
「やはり貴方でしたか・・・フーさん・・・いえ、アルト=V=ラグナロック!」
「フー?誰だそれは」
「あぁ、変装している時の名前だよ」
「そうなのか」
「・・・この人たちには緊張感というものがないのだろうか・・・」

緊迫した雰囲気の教会側とは裏腹に、のんびりとした雰囲気のアルト達
あまりの緊張感のなさに、ロイドはため息が漏れ出してしまう

「ところで引越しの準備は出来たの?」
「バッチリだ、アレの準備も出来ている」
「アレ?なにそれ?」
「それは・・・見てのお楽しみだ」
「逃がしはしない!大人しく捕まれ!」
「アルト・・・時間を稼げるか?」
「やってみる」
「たった一人で私達を足止めするというのか!?」
「出来るか出来ないかじゃない・・・」

アルトの前にフレーム状の物体が浮かびだす

「運命を捻じ曲げてでも成功させるんだよ!」

そう言い放った瞬間、フレーム状の物体からレーザーが発射される

「うわっ!?盾で防げないだと!?」
「ちぃ!一気に仕留めるぞ!」

レーザーの隙間を縫う様にしてサラが突撃し、アルトに斬りかかる
しかし間一髪のところで回避されてしまう

「僕を仕留めたかったら拘束するか全体攻撃魔法でも用意しなよ」
「それじゃあお望み通りに全体攻撃魔法をプレゼントしてあげますよ」
「え!?今の冗談・・・」

そう言いかけた時、アルトは固まってしまった
なぜなら、目の前に炎の壁が出来ていたからだ

「燃え尽きちゃえ!ファイアーウォール!」
「無理無理無理!避けれない!それに属性魔法h」

最後まで言い切らないうちに炎に飲み込まれていく
凄まじい熱が辺りを包み込み息苦しくなってくるが必死で耐える
そして、家全体が炎で埋め尽くされたとき、凄まじい轟音と共に壁を突き破って何かが飛び出してきた!

「アルト!大丈夫か!?」
「うぅ・・・遅すぎるよ・・・」
「しっかり捕まっていろ!飛ばすぞ!」

巨大な金属の塊は家の壁を突き破り外へと飛び出していく

「待て!逃がさんぞ!」
「・・・よくもお兄様を・・・許さない」

クリスはは手を前にかざし、静かに言い放った

「・・・ビームガンポッド」

クリスの背後から出現したポッドが騎士達にビームを乱射し始めた

「くっ!攻撃が激しくて近づけない!」
「・・・これくらいで勘弁してあげる」

アルト達を乗せた鉄の塊が動き出し、凄まじい速さで町の外へと走っていく

「取り逃がしたか・・・次こそは・・・」
「勇者殿、気を落とさないでください、チャンスはまだあるはずですから・・・」
「・・・アルト=V=ラグナロック・・・フフフ」

指名手配犯を取り逃がしたことの悔しさと、自分の予想を超える人物に遭遇出来たことの喜びに包まれて
ただ一人、勇者は笑っていた

「ど、どうしたの?」
「フフッ、何でもないよ・・・」




「アルト=V=ラグナロック・・・僕がこの手で捕らえてみせる・・・」
10/07/18 04:29 up
アルトさんの里帰り後編です
新規登場人物数がすごいことになっています
そしてさらにカオスになっていく強引な展開
そして勇者による追っかけの幕開け

この小説は何処へ向かっているのか・・・私にも分かりません
白い黒猫
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