連載小説
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異世界のはじまり・・・
目を覚ますと、そこは石造りの室内だった。
「目が覚めたか?」
目の前には、髭を蓄えた精悍な男がいた。
「ここは?」
身体を動かそうとすると、精悍な男は抑えつけながら言った。
「おっと、無理するなよ。 遺跡の入口に倒れていたんだから。 まずはこれを飲め。」
そう言って、男は飲み物を渡してくれた。

そうか、バケモノに襲われて、遺跡までたどり着いたがその後に気絶したようだ。
やはり、アレは夢ではなかったようだ。

その時、不意に男がこう言った。
「ギルタブリルのお嬢さん方に襲われたんだろ?」
「ぎる?たぶ・・」
聞き慣れない言葉だった。

「俺の部隊もそうだったぜ。」
「え? それじゃ、あんたは・・・」
男は笑いながら
「救難信号の主ではない。 今は、とにかく休め。 話はその後だ。」
「・・・分かった。」

いろいろとあり、少し混乱している俺は、しばらく休むことにした。

救難信号を追って俺達は、砂漠への探索に出掛けた。
そこで、あのバケモノに襲われて・・・みんな、すまない。


少し眠った後だった。
「よう。 起きてるかい?」
先ほどの男が料理を持って部屋に入って来た。
「あぁ。」
「よし。 食いながら聞いてくれ。」
そう言って、俺にスープの入った器を渡してくれた。

「俺の名前はシュナイダー 階級は大尉だ。」
「お・・ 自分はラッツ。 階級は中尉です。」
「いや、堅苦しい軍隊式はなしだ。 なんせここは・・・」

男、シュナイダーの話によると、ここは自分たちが居た世界とは、全く違う世界だった。
ここは、魔物と呼ばれる種族と人間とが共存、反発する世界。
魔物は人間の精を糧にしており、性行為が目的で襲ってくる。
なので、俺たちやシュナイダーの部隊で、ギルタブリルに襲われたものは死んではいないとの話だが、ギルタブリル達は、襲った男を自分の巣に持ち帰り、そこで永遠に交わるそうだ。
だから、ハンクスや他のみんなが無事に帰ってくる事は、無い。

「ギルタブリルに連れて行かれた奴は諦めな。」
シュナイダーが冷めた目で、こちらに言い放った。
「ギルタブリルのお嬢さん達に可愛がられているんだ。 幸せだと思うからな。」
その言葉は、まるで自分にも言い聞かせるような言葉だった。

「俺や他のものは、ここのファラオに世話になってる。 お前が回復した時に合わせるよ。」
「了解しました。」
「おいおい。 さっきも言っただろ? ここでは、それは無しだ。」
「分かった。」
「OKOK。」

まずは休めと、言いながらシュナイダーは部屋を後にした。

魔物・・・異世界、考える事はいくらでもある。しかし、まずは身体を休めないと、それに部隊のみんなが生きている。

俺は少し眠りに付いた。


「・・・!!!」
俺の方に近づいてくる気配を感じた。 しばらくして、手が伸びて来た。
「誰だ!!」
その瞬間、相手の手を掴みながら強い口調で叫んだ。

「キャ!!」ガチャーーン!!
予想していたのとは、違う反応の声・・・モッフとした掴んだ感触??。 何かを落とす音。
「ん??なんだ??」
見てみると、

「犬?のコスプレ??」
「コスプレ?! 犬!!!! 誇り高き、アヌビスが一族に対して犬とは!! 貴様、殺す!!!」

どうやら、犬は禁句らしい。それもかなりの上位らしい。

「すまなかった。」
俺は素直に謝った。
「・・・・・」

どうやら、彼女?からの雰囲気では殺されることはないようだが、ブツブツと何か言ってる。

「急に目を覚まして・・・ ちょっとイイ男だと思ったのに・・・ 脅かすから体調管理の計画が・・・ 管理表作るのに・・・ これだから異界から来たものは好きになれない・・・ まったく・・・ブツブツ・・・」

ひとり言?それにしては大きい気がする。 文句なのか? でも、うつむきながら言われると少し呪われてるような気がするが・・・

そこにシュナイダーが入って来た。

「おい。 大丈夫か?」
「俺は大丈夫だが・・・」
少し焦りながら、強い口調で
「私も大丈夫だ!!」
「それならイイが・・・ ラッツ、紹介する。 彼女は、アヴィ ここの医療担当で、君の体調管理をしてくれるそうだ。」
「ふん。 せっかく作った薬をこの男が脅かすから落としてしまったがな。」
さっきの落とした器の方に目を向けながら、彼女・・アヴィは、恨みのこもった声で言った。
「おいおい。 呪いは勘弁してくれよ。」
呪い?その言葉が気になったが、俺はもう一度、アヴィに謝罪を述べた。
「すまなかった。 感じの違う気配だったので、敵かと思ってしまった。」
「・・・作り直してくるわ。」
そう言うと、アヴィは部屋を出て行こうとするが、
「ちょっと待ってくれ。 ファラオ様がお呼びなんだ。」
そう、アヴィに声を掛けながら、こちらを向きながら、
「少しは動けそうか?」
「大丈夫だ。 少し休んだからな。」
「え? もう動けるの??」
少し、残念そうにアヴィが、こちらを見ながら小声で、「また計画が狂った!!もう!!!・・ブツブツ」
性格なのか??

俺は、シュナイダーの誘導でファラオの部屋に連れて行かれた。


「お前が、ラッツ殿か?」
その人物は、一言で言うと「威厳」、自然と膝を着くような感じだ。
「はい。 この度は、助けて頂いてありがとうございます。」
自然と、言葉が丁寧になった。
「よいよい。 異界のものは、この世界と少し違う所があって面白い。 のう、アヴィ?」
「・・・!!! はい!!」
もともと緊張していた所に、急に話しかけられてアヴィの声はひっくり返っていた。
「ふふふ・・・、 さて、ラッツ殿よ。 これからどうする?ここに留まって、生活するもよし。 それともここを出て行くのもよし。」
急な話だな、もう少し考える時間が欲しいかったが俺は・・・
「仲間を探しに行きます。」
「仲間? ギルタブリルに連れて行かれた?」
シュナイダーが身動ぎした。 顔を見ると、苦い顔だった。
そんなシュナイダーの様子を見ながらファラオは
「ふむ・・・ やめておけ。」
「なぜ?」
シュナイダーはファラオに向かってうなずいた。
「そこに居るシュナイダーも同じ事を言ったぞ。 その願いに我も協力した。」
「では!」
「慌てるな、我の協力もあり、シュナイダー殿は、ギルタブリル達の巣に到着した。 しかし、そこで見たものは・・・快楽漬けになった仲間たちだったぞうだ。」
「どういうことですか?」
「そなたたちは知らぬと思うが、ギルタブリルは、自分の針から相手に快楽を増幅させる毒液を注入する。 それにより、快楽と精を増幅させ交わるのじゃ。 多分、ラッツ殿の仲間も今頃はそうなっておるじゃろう。」
「ラッツ・・・ さっきも言ったが諦めろ。」
シュナイダーの力の無い声が聞こえた。あの精悍な顔が、今では老兵のようになっている。
「・・・・。」
「まぁ、しばらくは身体を癒して、ここに居るが良い。 まだ、この世界にも慣れて無いようだからな。 アヴィ、ラッツ殿の身の周りの世話とこの世界について教えてやれ。」
「ははっ!」
「それと、シュナイダー殿は残ってくれ。」
「はい。」
「では、ラッツ殿、考えがまとまったらいつでも来てくれ。」
そう言うと、もう話は無いっと言った感じで、シュナイダーを奥の部屋に導きながら、ファラオは退室していった。

・・・・・どうするか、あの感じでは仲間の救出は無理そうだ。 しかし、仲間を置き去りにして来た俺は・・・

「ぉぃ・・・おい!!! ぼぉーーっとするな!!!」
耳元で急にアヴィが叫んだ。
「あっああ。 済まない。」
「まったく・・・ブツブツ・・・ これだから・・・・」
「仲間の事を考えてた。」
「!!! そうか・・・」
「あぁ・・」
「忘れた方がいい。 私も医療班として、シュナイダーに同行したが・・・あの光景を見ると正直羨まし・・・いや、手の施しようがなかった。」
「羨ましい!! どういうことだ?」
「声を荒げるな・・・。 シュナイダーの仲間たちは、全員、幸せそうだったんだ。」
「え?」
「ギルタブリルたちは一途だ。 生涯の伴侶を得た者を引き離すことは出来なかった。」
「しかし、それは毒液の作用だったのでは?」
「実は、解毒をした者が何人かは居たのだ。」
「では、可能性は・・・」
「それがダメだった。 一度でも、ギルタブリルたちから毒液と愛を受けてしまうとその快楽と幸福感が忘れられなくなり、 全員、元に戻って行ってしまった。」
「・・・。」
「忘れた方がいい。 シュナイダーの表情を見ただろ?」
「・・・確かに、あの顔は忘れられない。」
「それが現実だ。」
「・・・そうか。」

そんな話をしながら歩いていると、俺が休んでいた部屋に着いた。
「とりあえず、今日はもう休んでくれ。 明日からは、お前の管理だな。 それと、この世界について少し勉強してもらう。」
「分かった。」
「では、また明日な。」
そう言うと、アヴィは部屋を後にした。


まずは、この世界をアヴィから学ぶしかない。俺の居た世界とは、かなり違うようだ。なにかの行動を起こすにしてもそれからだ。 
しかし、「お前の管理」っと言ったアヴィの顔は、かなり嬉しそうだった。・・・なぜだろう。


アヴィの部屋
「もう! あの男はまったく・・・ ブツブツ・・・」
アヴィは、職務机に向いながら何か作成していた。
それは、『ラッツ体調管理表』『ラッツ勉学計画表』その題目を書いた書類だった。それから少し考えて、『ラッツとアヴィの○○けいかく・・・』
「まだ早いかな? でも、ちょっとイイ男なんだよねぇ。 もう、なんて言うか、母性本能刺激されるしw もう、今から慰め(襲い)に行こうかなぁ。 ・・・・ダメダメ!まだダメだ!! もうちょっと計画してああなってこうなって、それからアレしてコレして・・・・・ブツブツ・・・」


ファラオの部屋
「チェックメイト。また、我の勝ちだ。」
「チェスを教えたのは私なのに・・・さすがにファラオ様ですね。」
「ふっふっふ・・・ ラッツ殿の話を聞いて動揺したではないか?」
笑いながらファラオがシュナイダーに聞いた。
「そうかもしれませんね。」
シュナイダーは自嘲気味につぶやいた。
「さて・・・敗者にはそれなりのペナルティを払ってもらうかな。」
そう言って、ファラオはベットの方に歩いていった。
「分かっています。 ご主人様。」


こうして、それぞれの夜が更けて行く。
10/10/10 11:12更新 / sasa
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■作者メッセージ
続編に変更しました。

頂いたコメントへの回答でーすw
アヴィは、ツン(管理?)デレになりますねww
あと、ファラオさまは・・・・どちらなんでしょうかww

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