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「影無しのレックス」 |
○種族:人間
○特徴:筋力は自然界の獣の中ではさほど強くないが、知能は高い。 筋力のなさを武器と技で補い、時には魔法を使う事で自然界最強とも言われている。 現在は神々の僕となり魔物を敵対する人間が多く、かなり危険な存在である。 「じいさん。質問がいっこあるんだけどな。」 「なんだ。」 「じいさんはさ、人を殺すのがいやなんじゃ無いのか?」 森の中。いつもの様に星空を見上げながら寝転がっている。 じいさんは木の上でしか眠れないという。 本当に根っからの変人だな。 「どうしてそう思うんだ。」 「なんとなく。じいさんはまだ、迷っている感じがする。」 「そりゃお前からすれば、他のアサシンも大抵は迷っているってことなるんだろうさな。」 しゃがれた枯れ木みたいな声。 カサカサしているのになぜか温かいこのじいさんの声が、少しだけ好きだった。 「ずっと昔の話だ。俺もお前さんみたいに疑問も無く人を殺していた頃があった。」 「今は違うのか。」 「ああ。色々と知っちまったんだ。だから冒険者になったんだよ。」 「ふーん。」 「まだ若いお前にはわからんだろうさ。」 「んなこというな。俺だってもう大人だ。」 「そう言っている内はまだまだ子供なんだよ。」 その頃の俺はもう10人は軽く殺していて、他の子供たちよりも自分の方が大人なんだって、一人前なんだって思っていた。 だから何時まで経っても子ども扱いするじいさんに腹を立てていた。 積極的に暗殺をしてきたのも、じいさんに一人前だって認めて欲しかったからかもしれない。 「人には誰だってな、大事なもんがあるんだ。いや、人間だけじゃねえ。獣も、魔物にだって大事なもんがあるんだよ。」 「魔物にも、か。教会にぶっ殺されるぞ。」 「かっかっか。そんなもん、怖かねぇよ。第一、今更なんだっていうんだ。」 「それもそうか。」 伝説の暗殺者「影無し」。 「影無し」はまるで不治の病だ。 教会の偉い人間も、千を越える兵士を持つ貴族も、ソレの前じゃ子供と同じ。 狙われたら死んでしまう。 誰もその姿を見たことが無いから、ついたあだ名が「影無し」。 影さえ知られる事無く殺してしまう、暗殺者の中の暗殺者。 じっさい今でもじいさんの事は凄いと思うし、深いと思う。 でも俺の前に居るじいさんは、あったかくて、そして疲れていた。 聞いてみたら、じいさんはわらった。 伝説の暗殺者でも勝てない相手が居る、ということだとか。 「なぁ。結局どうなんだよ、じいさん。」 「は、小僧に教えるほど大したもんじゃねえよ。」 「小僧じゃねえって。俺はレックスだ!」 「かっかっか。わかったわかった。」 結局じいさんから答えは引き出せなかった。 でも何となく、今ならわかる。 殺せないなんて言ってしまったら最後、もう誰も殺せなくなるから。 あるいは、伝説の暗殺者に憧れる子供に夢を持たせたかったのかもしれない。 伝説の暗殺者は、最後まで暗殺者だったんだと。 今となってはもうわからない。 バルトワン領の西の森。その森に面している町がある。 西の森には魔物が住み着き危険であるとして誰も近寄ろうとしない。 やってくるのは商人か冒険者ぐらいなもので、彼らだって長居はしない。 一晩泊まって翌朝出て行く。 観光名所なら遠くに見える山があるかもしれないが、あいにくここより山に近い場所にも町がある。 山を観に行きたい人はそこに滞在するのだ。 中継地点としても不便だ。馬車道は整備されていないのででこぼこ道が続き、道の幅も狭い。 だから馬車の中継地点としても選ばれない。 この町はそういう場所だ。 しかし今この町は、降って沸いたような騒ぎになっている。 商人や冒険者、傭兵達が街中に溢れている。 屋台は軒を連ね、そこかしこで物売りの声が響く。 さながらお祭りみたいにな光景だが、この町では祭りを開く習慣は無い。 この騒ぎの理由を知りたければ足元を見ればいい。町の人たちの回答はそれだけだ。 見れば地面に散らばっている劣化草紙、もっと良く見れば人物の顔が描かれている事に気づくだろう。 どこにでも居るような、特徴らしい特徴の無い少年。 彼がこの町に大騒ぎをもたらしたのだ。 「酷い騒ぎだな。」 不満を隠しきれていない少女がぼやく。 頭巾以外に特徴の無い服装の少女。 その目つきは鋭く、喜びまわる人々をかみ殺さんばかりに睨みつけている。 「いよぉお嬢ちゃん。おにーさんと遊ばないか?」 たまたま近くを歩いていた酔っ払いが少女に声をかける。 「遊ばない。どっか失せな。」 「おお、気の強いお嬢ちゃんだな。こんなめでたい日にしかめっ面はいけねぇな。」 酔っ払いは火に油を注いでいる事に気づかず、オーバーアックションで楽しさを表現する。 「2度は言わない。失せな。」 「あっはっは。ほんとうに気の強いお嬢ちゃん……あれ?」 機嫌を直せよとばかりに少女の頭を撫でた酔っ払いは、怪訝そうな顔をする。 同時に少女の顔に焦りが浮かぶ。 「およ? お嬢ちゃん、頭になんか入れてんのか?」 言って頭巾を取り払おうとして、 「ぎゃっ!?」 落ちてきた植木鉢が頭に直撃し、その場に倒れこんだ。 「まったく、うかつだよ。」 「ごめん、ありがと。」 慌てて頭巾を直す少女。 そしてその少女の肩に「腰掛けて」、頭巾の少女の頬を撫でる。 「しっかりしてよ。失敗したら元も子もないんだから。」 「ああ、わかってる。わかってるんだよ。」 頭巾の少女は憤りを噛み締める。 彼女の唇の境から僅かに見えた犬歯は獣のように尖っている。 「面が割れてなくて町に顔出せるのはあなたぐらいしかいないんだよ。しっかりしてよ。」 「ああ、大丈夫だ。少しだけ頭が冷えた。」 「それをいうなら肝が冷えた、でしょ。」 「はは、それもあるかもしれない。」 少しだけ頭巾を被っている少女の表情が緩む。 その様を見て安心したもう一人の少女は、ふわりと背の羽を動かして宙に浮く。 「じゃ、引き続き頼んだよ、バゥル。」 「ん、わかった。そっちも気をつけて。」 こくりと頷くバゥル。それを見た妖精のフィンはにぃーと笑う。 「ふふ、久しぶりに素直なバゥルが見られたねー。」 「っ!」 慌てて口元を押さえるバゥル。 十分のその様を満喫したフィンは、人目につかないように森へと飛んで行った。 「隊長。やっと、やっとですね。」 「ああ。手柄が横からやってきた小娘のもんになるってのは気に食わないけど。」 「お前達。あまり悪く言うものじゃない。」 「えー、だって生意気でしょう。」 「そうそう。俺らより年上の兵士連中を顎で使ってさ。」 口々に不平を言う若い兵士達に大きく肩を落とす人物。 彼はミルフ=バートン。バルトワン特別部隊隊長。32歳独身。 今この宿に泊まっている兵士達の中で、いやこの町で唯一「生意気な小娘」が実はバルトワンの恐ろしき宰相なのだと知っている人物でもある。 いつ彼らの軽はずみな発言で彼が部隊ごと消されるかと思うと胃が痛くてたまらない。 最近になってやっと彼らも「隊長離れ」してきたのが不幸中の幸いだ。 「これで晴れて俺らも正規軍か。」 「そうだな。」 特別部隊は正規軍ではない。 だが、任務が終われば晴れて正規軍の仲間入りが出来る。 幾ら領主の悪い噂が耐えなくても、正規軍というのはそれだけで若者の憧れなのだ。 紋章の入った鎧。刃こぼれの無い剣と色付き布のついた槍。 この若い兵士達もそうした兵士の姿に憧れて志願した口だ。 正規軍の選考には零れたが、それでも兵士になりたいと願った者たちだ。 戦場の苦味を知らず、兵士達の勇壮な姿に憧れ、今なお憧れ続けている若者なのだ。 無論、ミルフはそうであってほしいと願っているが、戦場を知る彼の表情は暗い。 成果を挙げていない特別部隊に何の功労があるのか。 むしろ証拠隠滅のために消しやすいが為の特別部隊なのではないか。 彼が隊長に任命されてからずっと本気になれなかった、その理由がそこにあった。 本気になっても消されてしまうかもしれない。 懸念が疑惑になり、つい先日領主との謁見で半ば核心に至った。 領主は必要であれば兵士の10やそこらは消してしまう。 「隊長?」 「いや何でもない。我々がすべき事は、最善を尽くす事だ。」 自分に言い聞かせるように声を出し、兵士たちを見渡す。 「刻限は夜だ。彼女からは刻限までに人質が奪われる事は無いと聞いている。それまではゆっくりと休んでおけ。」 「はい!」 「わっかりました!」 全員が足を揃えて敬礼をする。 まるでもう正規軍になったような変わり様だ。 もっともミルフにしてみれば、普段から「らしく」していないと直ぐにメッキが剥がれてしまうので意味が無いのだが。 敬礼が終わると子供の様に騒ぎながら各々の部屋に戻っていく様を見送り、自分一人になるとミルフは腕を組み思案する。 「それよりも気になるな。」 人質を捕まえたとは聞いたし、実際にその姿を見て確認も取らされた。 だが何かが引っかかっている。 彼が見たのは、縄で包まれてぐったりとしている少年の姿。 機密性を高めるためだとは聞いていたが、暗い室内では少年の大まかな外見を確認する程度しか出来ない。 「まさか、既に殺しているんじゃないだろうな。」 そうは思うものの、頭を振り否定する。 「そんなことすれば直ぐにばれる。死体にはハエが集る。」 それでもミルフが晴れない疑念の霧に悩み続けた。 「隊長。センハイム公からの書状です。」 「ありがとう。下がって良いわ。」 「はっ。」 兵士を下がらせると、バルトワン領の女宰相は書状を開く。 「やはり公は慎重ね。実際に人魚の血とその効果を確認するまでは気を緩める気は無いのね。」 いえ、と彼女は付け足す。 「むしろそこからが始まりという事かしら。計画が始まれば親魔派、いえ下手すれば教会からも敵視される事になる。」 マーナはセンハイム公の底知れぬ意志力に肝を冷やす。 あの老いた領主は、本気で魔王を倒す気なのかも知れない。 勇者などと言う不安定な要素ではなく、純然たる兵力で以って。 「よくまぁ考えた物ね。『人魚の血で作り上げた若い熟練兵士』による武力行使ね。子に恵まれなかった彼らしい考え方。」 人は経験をつむほどに熟練する。 あるいは10年に一人、20年に一人の天才もいるだろう。 だがそれら天才は軍に5人いれば良いほうで、大抵は揃わない。 熟練した兵士もやがては老いて消えていく。 しかし、人魚の血により長寿になればどうなるか。 50年後には他に追随を許さない部隊になり、100年後には魔界と戦うだけの戦力が備わっているだろう。 また、「不老長寿」を求めてやってくる人間は幾らでもいる。 その中から有能な物を選び、兵士として組み込んでいく。 センハイム公の計画とはすなわち、この「100年計画」なのだ。 幾ら彼が人魚の血を使っても、100年生きることが出来ないかもしれない。 だが彼は知っている。マーナが魔物に対し強い憎しみを抱いている事に。 魔物を憎むが故に魔王を討つためには手段を選ばない。 マーナが若くして宰相にまで上り詰めた最大の理由はそこにあった。 「100年計画」の中核として兵を率い、「100年変わらず魔王を討とうとし続ける有能な人材」を確保するため、センハイム公自らが率先して動いていたのだ。 「そういう人だからきっと、私の研究のことも知っているのでしょうね。」 彼女は彼女なりの方法で魔物に対抗しようとしていた。 特に話してもいないが、魔王を討つためならば領主は何も言わないだろうと知っていた。 領主と宰相。互いが互いに利用し合っている関係。 世間で言われているような、寝床に忍び込んで得ただの、隠し子説だのは所詮噂に過ぎない。 現実は氷よりも冷たい、利害のみで築かれた関係だった。 「待ってなさい、魔王。100年だろうと1000年だろうと関係ない。必ず滅ぼしてあげるから。」 氷の宰相は彼女の内にある感情の中で唯一熱の篭った、憎しみの炎をその瞳に浮かべて誓いを新たにした。 「なるほどー、わかったー。」 フィンから事情を聞いたネイルが、間延びした声で答える。 「でもさ、本当に人が多かったよ。」 「だろうねー。領主もー、馬鹿じゃないからー。」 町にいるのは賞金目当ての冒険者達。 彼らはネイル達を見れば即座に捕まえようとするだろう。 兵士を使えばセンハイム領の金を使わなければならず、しかも質のいい兵士で無いと意味が無い。 捜し求めている物を見つけるのに、彼は兵士以外の人間を使う事にした。 それが第三者。冒険者、傭兵、商人といった、利益で動く人間たち。 彼らは「お金を払わずに自発的に全力で動く」。 成功報酬を支払うとしても、それ以外の金は払わなくて良い。 この方法は大量の兵士を呼び込むよりも低コストなのだ。 また兵士であれば町の空気が重くなるが、彼らであれば町は逆に明るくなる。 客商売をするものたちからすれば商売の機だ。 少なくとも商人たちは率先して「お祭り」騒ぎへと発展させる。 そうすれば旅人の財布の紐が緩むからだ。 町に明るさが生まれれば旅人が町に金を落とし、結果的にセンハイム領の利益となる。 ネイルはまだ見たことの無い領主のやり辛さに僅か目を細める。 「他の皆は?」 「定位置ー。」 「なるほどねー。」 「あの子はー?」 「ちょっと心配だけど、大丈夫だと思うよ。」 「引き続きお願いー。」 「わかったよ。」 具体的な単語の無い会話。 彼女達は自分達の会話が誰かに聞かれても良いように、言葉を選んでいる。 レックス救出劇の幕は既に上がっている。 飛んで行く妖精を見送り、ネイルは深い息をつく。 「あの、馬鹿。」 沢山の人を心配させている少年に毒づく。 今度会ったら徹底的に苛めよう。 「そうじゃないと、許さないから。」 彼女は怒っていた。 少年の生存率が低い事を承知の上で、しかりつけると決めていた。 だから彼女は怒っていた。 悲しさでは戦えないから。 「そろそろか。」 「いえ、まだよ。」 日はまだ沈んでいない。 今すぐにでも飛び出していきそうなガイツをマリンが押し留める。 「落ち着いて、ガイツ。」 「わかってらぁ、マリンさん。」 「私、貴方が居なくなったら、わたし。」 「マリンさん。」 少し強い口調で肩に手を置かれ、慌ててマリンは口を閉じる。 二人から少し離れた位置に、コリンが膝を抱えるようにして座っている事を思い出したのだ。 「ごめんなさい。私ったら、その。」 「んー、いい。」 コリンはぬいぐるみを抱きしめながらじっと動かない。 ワーウルフのバゥルは言っていた。コレはレックスの血だと。 言われなくてもコリンはわかっていた。 可愛らしい二本の耳が特徴の人形。 短いその耳は猫のようだが、コリンにはそれが角のようだと思った。 ふかふかして柔らかいぬいぐるみに顔をうずめる。 ぬいぐるみの香料に混じって鉄臭い匂いが鼻腔をくすぐり、悲しい思いになる。 悲しくて何度も泣いた。ずっと泣いた。 泣き続けて目を真っ赤に腫らしてもなお泣いた。 心配したマリン達が来なくても良いと言ったが、コリンは行くと言って聞かなかった。 「俺も悪かった。確かに、焦っても仕方ないな。」 大きく息を吐いてガイツは腰を下ろす。 「でも、本当にいいの?」 「ん、どういうことなんだ、マリンさん。」 「だって私たち、お尋ね者なんでしょう。それなのに。」 「逆だ。俺たちがこうやって目の届くところにいるから、連中は余分な事をしない。」 今ガイツたちは町の宿に泊まっている。 マリンを捕まえようとする男どもをガイツが殴り飛ばし、投げ飛ばす。 そうやって自分達の存在を強調するのが目的だ。 嘘をつくのが苦手なマリンたちには言っていないが、裏で動くバゥルから少しでも注意を反らすためだ。 もちろん敵には頭の回る人間もいるから警戒はされているだろうが、そちらに注げる労力は少ない。 「それにしても驚いたもんだな。思ったよりもいい待遇だ。」 「ええ。私も驚いた。」 襲いかかってくる敵は予想通りだったが、応援してくれる人たちがいることには驚いた。 よく知った商人たちや、町の娘達。 中には町の騒ぎに釣られてやってきた冒険者や傭兵も居た。 彼らはお金ほしさで集まったが、マリンの美しさにコロっと態度を変えたのだとか。 無論、マリンに色目を使った連中は一人残らずガイツに投げ飛ばされたが。 コンコンとドアがノックされる。 「どうぞ。」 「お邪魔するよ。」 ドアを開けたのは恰幅のいい女性。 白頭巾に白エプロン姿、景気のいい笑い顔が揃えば宿の女主人の出来上がりだ。 「どうだい。腹は減った無いかい?」 「いえ、お気づかなく。」 「遠慮なんてしなくていいよ。大変なのはあんた達だろう。」 態度も見た目も太っ腹な女主人がドンと自分の胸を叩いてみせる。 「元はといえばあたしらが変に騒ぎ立てたからあの坊やが捕まったようなもんだ。詫び代わりみたいなもんだよ。」 「かまわねぇよ。元々、こんな時期にのこのこ出かけて行ったあの小僧が悪いんだ。」 フンと鼻を鳴らすガイツだが、その発言は不味かった。 「ちょっとアンタ、自分の女のために動いた男に対してなんて言葉だい!」 「そうよ、ガイツ。コリンに好意を示すために動いたレックスをそんな風に言わないで。」 う、と思わずたじろぐ。 「いいかい、アンタ。うちの亭主もそうだけどね、女心ってのをまるでわかっちゃいないんだよ! あの子の爪の垢でも飲ませてやりたいくらいだよ!」 「い、いや、物事にはときとばあ、」 「女心を踏みにじってやり遂げるような大事がどこにあるっていうんだい!? 第一、それならあんたも一緒にいってやればよかっただろう!」 「………。」 そう言われればガイツには反論の術が無い。 少年の暗殺者としての一面を思い知らされて動揺していた彼は、少年の事を忘れていた。 いや、少しだけ距離を置こうとしていた。 夜になってマリンたちに言われるまで、少年がどこにいるのかを全く考えていなかった。 「……あ、悪いね。ついかっとなっちまってさ。辛いのは、あんたたちだってのにさ。」 「いや。言われるとおりだ。小僧がこんなことになったのは、俺の責任だ。」 「……ガイツ。」 沈んだ空気。生まれる沈黙。 誰も口を開く事が出来ない中、ぽつりと呟く声。 「レックスー。会いたいよぉー。」 消えるように小さな声は、その場にいる3人の心に突き刺さる、切ない物だった。 各々の思いが巡り錯綜する。 当事者達は焦り、それ以外の人間はお祭り騒ぎに浮かれる。 そして町は潤い多くの人が笑顔になった。 娯楽が少ない町の住民はここぞとばかりに騒ぎ、店を構える家では嬉しい忙しさに辺りを駆け回る。 町は一部を除いて、幸せで満ちていた。 そして、日は落ちた。 お祭り騒ぎで盛り上がる町から少し離れた場所に、篝火を焚く兵士の一団がある。 片方は油断無く武器を構え、周囲を警戒している。 やや気ばかりが逸っているような部隊だ。 隊長はミルフ。彼の表情は暗く、兵士達だけが期待を胸に張り切っている。 もう片方は矛先を天に向けるようにして垂直に槍を地面に置くように、所謂門番の姿勢で待機している。 有事以外では無駄に体力を消耗させないのが兵士に必要とされるスキルの一つ。 もちろん警戒もしなければならない。 その為には実力がなくても警戒する兵士が必要となる。 ミルフの兵士が張り切って警戒をしているから、精鋭たる彼らはいくらか寛いでいられる。 油断ではなく余裕でも無く、必要な休息に身をゆだねる部隊。 隊長はマーナ。 「本物の」特別部隊を率いる、「100年計画」の中核たる人物。 彼女の表情は炎の影になり判別しづらい。 「来ました! 奴らです!」 兵士の一人が声を上げた。 全員が視線を向けた先にのそりと動く影が見える。 背に担がれた大斧はマーナも知っている。 海辺の事件で暴れまわった大男。 彼が居なければ人魚の血はとうの昔に手に入っていただろう。 「来たぜ。小僧はどこだ。」 「待て。人魚の血はどこだ!」 「人魚の血、だぁ?」 低く怒りの篭った声に、問いかけた兵士がひっと後ずさる。 釣られて他の兵士達も一歩下がる。 ミルフもマーナも、小さくため息をつく。 武器を持たない相手に槍を向けているにも拘らず、この体たらくか。 しかし二人はそれも仕方ないかとも思った。 あの恫喝の声はその体躯もあり、恐ろしく感じたからだ。 「マリンさん、だ。人魚の血じゃねえ。」 「わ、わわわかった。それで、どこにいるんだ!」 「はぁ。おまえには目がついているだろう。俺様の後ろだ。」 言われて気づく。 彼の後ろには一人の女性と、その後ろに少女がいた。 背の低い方の少女は何かを大事そうに抱きかかえている。 「おい、おまえ何を持っているんだ!」 警戒した兵士が松明を掲げる。 「ん、なんだありゃ。」 最初、兵士はソレが何なのかわからなかった。 何度か見直して、ソレが何なのかに気づく。 松明の明かりに照らされた少女の頭部には、角が生えていた。 「え、な、こいつ魔物か!」 「角だ、角が生えてるぞ!」 今まで魔物を見たことがなかったのか、兵士達は口々に騒ぐ。 驚きと恐怖とがない交ぜになり徐々にヒートアップしていく。 「おまえ、ソレを使って何をするつもりだ!」 「危険なヤツだ。とっととソレを捨てろ!」 「な、貴方達、なんて事を言うの!?」 物静かに見えた女性が声を上げる。 だが兵士達は止まらず、逆に彼女を睨みつける。 「あんたは黙ってろ。黙って隊長の所に行ってろ!」 「く、貴方達!」 「マリンさん!」 大男に制止されても、彼女は止めようとしない。 そのやり取りの中、マーナの兵士達は角を生やした少女が何を持っているのかに気づき、僅かに動揺する。 松明の明かりに照らされているのは、血がついて汚れたままのぬいぐるみ。 それを大事そうに抱きかかえているのだ。 戦いの最中に少年が一度も手放さなかったぬいぐるみ。 それを抱える少女。 少しでも察しのつく人間なら、それらが意味する所が何なのかは判る。 そして、訓練を積んでいても彼らは心を持つ人間だ。 任務であればあの少女を殺すことは厭わない。 しかし、動揺するなといわれても無理な物は無理なのだ。 声一つ上げず、身じろぎもせずに何時戦闘が始まっても良いように身構えているが、彼らの心は揺れていた。 血のついたぬいぐるみを抱きしめる少女に対し、それを捨てろといい続ける彼ら。 その彼らに対し仲間に制止されてなお怒りをあらわにし続ける女性。 いったいどちらが人間的なのだろうか。 「外見に惑わされるな。それがやつらの手だ。」 感情を押し殺した隊長の声に兵士達は直立する。 冷水を背中に流し込まれた様な、冷え切った声だ。 続いて彼らの隊長、マーナは「人魚の血一行」に告げる。 「お前達。早く人魚の血を渡しなさい。彼がどうなってもいいの?」 親指を背後に向ける。 その合図に従い兵士が松明を掲げる。 大きな木箱に無理やり座らされている少年が松明の明かりに照らされる。 少年の姿を見た少女は、顔を上げて走り出す。 「レックス、レックスー!!」 「な、こ、こら、寄るな! 下がれ!」 「くそ、この馬鹿力め、斬れ、斬っちまえ!」 マーナが舌打ちをする。 ぬいぐるみを抱きしめたまま兵士の囲みを抜けていく少女を前に、ミルフの兵士達は冷静さを失った。 これでは交渉も何もあったものではない。 「お前達、落ち着け! 我々のすべき事は交渉だ! 戦闘ではない!」 「ち、この、死にやがれ魔物が!」 「させるかぁ!」 槍を構えた兵士が少女を突き刺すより早く、大男が兵士を張り飛ばす。 火薬が破裂したような音を立て、兵士が吹っ飛んでいく。 「てめぇら! おい、やっちまえ!」 「おう!!」 仲間がやられて激情に駆られ、次々と襲い掛かる兵士達。 ぬいぐるみを抱えた少女は周りの事など目に入らず、真っ直ぐ少年の方へと走り続ける。 「レックス、れっくすぅー!」 「コリン、危ない!」 「ち、まにあわねぇ!」 剣を構えた一人の兵士が少女に駆け寄りながら剣を振り上げる。 何人かの兵士を薙ぎ払うも、間に合わない。 一目散に少年へと駆け寄ろうとする少女へ、剣が振り下ろされる。 「れっく、すぅ。」 剣が振り下ろされた。 鈍い音を立てて、少女が地面に倒れる。 倒れたまま動かない少女。 人魚の血一行に動揺が走り、兵士達がざわつく。 「え、な、え?」 「いま、どうなったの?」 「どういうつもりだ、あんた。」 「ええ。説明してもらえるかしら、ミルフ隊長。」 現状を上手く把握できない彼らに代わってマーナが問いかける。 その場の全員が、彼に注視する。 倒れた少女を見下ろし、ミルフはマーナに向き直る。 「我々は交渉をするためにここに居るのでしょう。でしたら、殺してしまっては交渉も何も無い。」 ミルフは鞘に納まったままの剣を剣帯に通す。 少女に駆け寄り剣を振り上げたままの兵士は、まだそのままの状態で固まっている。 ミルフは彼が剣を振り下ろす前に、鞘に納められたままの剣を払って少女の後頭部を叩き据えたのだ。 多少なりとも訓練を受けた彼が反応できないほどの早業だった。 「そちらの二人もそれでいいか?」 「え、ええ。」 「ふん。」 大男もこれ以上暴れるつもりは無いらしく、どすんと腰を下ろす。 「やるなアンタ。」 「コレでも隊長なんでね。」 二人は互いに思った。 もし海辺の町で二人が衝突していればどうなったかと。 松明の爆ぜる音が響く中、一時の沈黙が場を覆い尽くした。 紆余曲折を経た物の、センハイム公側の予定通りに交渉は始まった。 交渉の内容は以下の通り。 1.人魚の血の定期的供給がもっとも望ましい。 2.それが適わないならば、人魚の血を一定量提供して欲しい。 3.それさえも適わないならば実力行使も辞さない。 「もし定期的供給が出来るのであれば、あなた方の罪状は全て白紙にし、十分な地位と出来うる限りの保障を与えます。」 「その代わりマリンさんとは二度と会うなってか。」 内容を聞き終わったガイツが顔全体で不満を表す。 要するに、ガイツ側に選択の余地は無い。 家畜同然に飼われるか、家畜以下の扱いをされるかの違いだ。 対するマーナは予想通りとばかりに余裕の態度で返す。 「会いたいならば同室でも構わないですよ。それこそ、逃亡や反逆をしない限りは何をしても。」 「随分とまたいい待遇だな。裏があるんじゃねえのか。」 「裏ならあります。しかしそれはあなた方とは関係ない話です。言ったでしょう。人魚の血が定期供給される事が可能なら、出来うる限りの保障を与えると。」 「そうだなぁ。例えばアレか。俺様とマリンさん以外の魔物は全部殺すって事か。」 「察しが良いようで。」 機嫌よく目を細めるマーナ。 ガイツの不機嫌さが増すが、マリンはそれどころではなかった。 彼女ははある事柄を予測して顔色を失ってしまう。 「まさか、あなた方は不死の兵隊を作る気なのですか!?」 「人魚の貴女ならわかるでしょう。貴女の血の貴重さを。」 「ふざけないで! どうして、私に、そんなことを。」 「嫌ならば、彼がどうなっても知りませんよ。」 冷徹な事実を突きつけられ、マリンは顔を手で覆う。 怒号を上げるかと思われたガイツだが、彼は皮肉めいた笑みを浮かべるだけだ。 「まぁそうだな。こうやって縄で縛られちゃあ俺様もどうしようもねぇわ。」 ガイツもマリンも、そして当然の様にコリンも、縄で縛られて動きを封じられている。 その上で剣や槍で武装した兵士に囲まれているなら、彼が幾ら暴れてもどうしようもない。 「あと、あなたが暴れて私を人質にしようものなら、腕の一本や二本くらい失っても構わないとこちらで判断させてもらうわ。」 「は。腕の1,2本が脅しになると思うか?」 「少なくとも、彼女の腕にはその価値があるのでは?」 「……ち、てめぇとは一生友達にはなれそうに無いな。」 「奇遇ね。私もそう思っていたところよ。」 相手をかみ殺さんばかりに睨みつけるガイツと、相手を刺し殺さんばかりに目を細めるマーナ。 二人がにらみ合っている間も、ミルフは気になっていた事がある。 やはり少年は身動き一つしない。 しかしハエが集る様子も無い。 何かが引っかかっているが、どうにも頭の隅から出てこない。 少年が動かない事に関してもそうだが、他にも何かありそうな気がする。 彼は町の方を見やる。 敵の援軍は来ない。 森からは離れているし、今いる場所は交渉の場所から北へ馬車で移動した荒野だ。 敵は人間ではなく魔物であるなら、ジャイアントアントが穴を掘って救出するという事が考えられた。 それを回避するために移動したのだ。 上空も警戒させている。 彼は空からの襲撃(主にトラップ)で苦々しい思いを味わった。 取るべき手段は取っている。 だが、何かが引っかかっているのだ。 「それで答えはいかが?」 「決まってらぁ。くそったれだ。」 「で、あなたはどう? 彼と一緒にいたいか、それとも。」 マリンに顔を近づけ、マーナは一呼吸置く。 答えに迷うマリンを氷の瞳が射抜く。 「彼が冷たくなっていくのを目の当たりにしてから決める?」 「てめぇ!」 「動くな!」 可能ならばマーナを食い千切りかねないガイツの首に刃が当てられる。 「わたしに、選べというの?」 「彼は選んだ。あとはあなたが選べば決まる事よ。」 「選べば、コリンが死ぬのね。」 「ええ。要らないから。」 マリンは初めてマーナと視線を合わせる。 心底今のやり取りが楽しいのだろう。 堪えきれない笑みが口元に浮かんでいる。 だが凍った瞳の奥に、魔物に対する憎しみが燃え上がって見える。 「あなたはきっと、私のことも殺したいのね。」 「ええ。人魚の血を栽培できるなら、あなたもすぐに殺してあげるわ。」 「その前に俺がお前を殺してやる!」 「そっくりそのまま返しわよ、その言葉!」 刃が食い込んで血が滲むにも拘らず、ガイツは動く事を止めない。 対するマーナも、今まで抑えてきた憎しみを溢れさせるように大きく声を出す。 常に無い姿にミルフを含んだ兵士達全員が驚く。 「魔物と一緒にいたい? ふざけないで。本当なら魔物も、魔物と行動する人間も、全部殺してやりたいのよ。それを堪えてやってるのに、その言い草はいい度胸ね。」 「ハン。てめぇがマリンさんに傷一つでもつけたら、全員殺してやるよ。」 「良いわ。その時は彼女の目の前であなたを惨殺してあげるわ。」 「だったら私も死んでやるわよ!」 「残念だけど、自殺することも許さないよ。本当に、残念だけど。」 怒り憎しみが合い混ざる。 ドロドロとマグマのように煮え滾る空気に耐えかねて視線を反らしたミルフは、少年の傍にいる誰かに気づく。 「おまえ、何者だ!」 剣を向けるミルフに対し、返事は無い。 兵士が松明を掲げる。 明かりに照らされているのは頭巾を被った少女。 少年の傍で何をしていたかはわからないが、少女はゆらりと身を起こす。 彼女が何者なのか、マリンは直ぐに気づいた。 「バゥル!」 「やはり仲間か! 悪いがそいつは渡すわけにはいかん。だが、お前一人で逃げるなら逃がしてやるぞ。」 「……。」 少女は何も言わない。 何かの感情が溢れてごちゃ混ぜになり、表情が上手く作れていない。 そんな顔をしている。 ガイツとマリンは彼女の表情から不吉な物を感じ取る。 「バゥル、どうしたの?」 「おい、まさか、冗談じゃねぇぞ。」 「ミルフ、その娘を切りなさい!」 硬直した空気が勢い良く流れ出す。 命令に従いミルフが切りかかるが、常人離れ、いや人間離れした跳躍力を持つ彼女には通じなかった。 獣の様に地に手をつき低い姿勢をとる少女。 口から漏れるのは獣のうなり声。 跳んだ拍子に脱げ落ちた頭巾が地面に落ちる。 灰色の髪に混じって、同色の尖った獣耳が頭から生えている。 「ワーウルフか!」 ふー、ふー。 少女は怒りに獣の尾を逆立て、 「がぁああああああ!!」 その目には大粒の涙を溢れさせていた。 ミルフとワーウルフが戦闘を開始し、マーナの状況も一変した。 「うそ、うそでしょう。」 うわ言の様に繰り返すマリン。 苦味をかみ締めた顔のガイツ。 既に目が覚めているはずのコリンは、身じろぎ一つしない。 坂道を転がるが如き勢いで計画が破綻していく。 最早取り繕う気すらないマーナは薄ら笑みを浮かべる。 「あなた達が来るのが遅くて、死んでしまったのよ。」 「嘘をつくな。あの失血量。大方、あんたが失敗して、そいつらの槍でやっちまっただろ。」 ガイツの言葉にマーナの眦(まなじり)が上がる。 図星だった。 3日前のあの時、囲みを作っていた兵士達はマーナが殺されると思って少年を槍で貫いた。 いくら精鋭といっても実戦経験が乏しいのでは、いざという時判断ミスをする。 理論として知っていた事実を目の当たりにしたのだった。 胴体を何本もの槍で貫かれた彼は、蘇生のしようがなかった。 「だが変だな。何故、腐りもせずにいられるんだ。」 ガイツの疑問はその通りだ。 人間の死体は放置していれば虫が沸くか腐る。 3日前に死んだにしては、少年は余りにも綺麗だった。 ガイツの疑問は、彼の予想外の所からやってきた。 「腐るのはー、細菌のせいー。だったらー、それをなんとかーすればいい。」 「ネイル!?」 「なんだ、新手か!?」 どこに居るのかと兵士達が見回す。 だが周囲を見回しても誰もいない。 「落ち着きなさい! 声の感じからして距離は遠い!」 「そのとーりー。」 兵士の一人が明かりを照らし、それでも気づかない。 右を見ても左を見てもわからない。 「く、まさか地面、地面の下から!?」 ジャイアントアントに見つかったかと思い、マーナが足元を睨む。 言われて兵士達も地面へと視線を下ろす。 「地面の下って、……あ、いた。」 「みつかったー。」 彼らからやや離れた位置に、這うようにして近付いてくる魔物が居た。 下半身は良く見えないが、人が地面を這って近付いてくる姿に兵士達は恐怖を感じた。 「わたしのあしをー、かえしなさいー。」 「ひっ、あ、あしはやらねぇ!」 「落ち着きなさい! あれはそういう魔物よ!」 よく見れば下半身がなめくじになっているのだが、その事実がわかったとしても恐怖は消えない。 得体の知れない物に対する無知こそが恐怖の源泉なのだ。 兵士達を叱咤した所で状況は何一つ好転しない。 周囲が混乱した事で逆に落ち着きを取り戻したマーナだが、事態は止まらず流れ続ける。 「くそ、こうなったらこの魔物を殺して、あいつもころして!」 「落ち着きなさい! く、殴りつけてでも止めなさい!」 恐慌に陥ったミルフの兵士が叫び、マーナが制止の声を上げる。 マーナも出来る限りならば魔物を、そして魔物に組する人間を殺したい。 だが最大の目標は魔王討伐。 その為には人魚の血の定期供給が必要で、その為には形上であっても良好な関係を作らなければならない。 故に脅しで「殺す」と口にするが、彼女はコリンたちを殺せないのだ。 「く、どうして、どうしてこうなるのよ!」 城での冷徹さが嘘の様に、自らの髪をかき乱して動揺する。 何度と無く練り直した計画が狂い始めている事が彼女の冷静さを打ち崩しつつあった。 「へ。ざまぁねえな。頭でっかちじゃ何一つ出来はしねぇぜ。」 ぴたりと、マーナの動きが止まる。 彼女の時だけが止まったように、完全に動きが止まる。 「たいちょ……ひっ!!」 たまたまその時彼女の顔を見た兵士が、小さく悲鳴を上げる。 その兵士など気にも留めずに、彼女はゆらりとガイツに向き直る。 マリン、そして肝の太いガイツでさえ表情を変える。 彼女は笑っていた。 楽しそうにクスクスと笑っていた。 危うくも妖しい、破滅を内包した笑みが彼女の顔に浮かんでいた。 「そう。なら仕方ないわね。予定は変更。変更しないといけないわね。」 今までの激昂が嘘の様に落ち着き払った姿。 落ち着き払ったまま、彼女はレイピアを引き抜く。 口付けをするほどマリンに顔を近づけ、甘く囁く。 「ねぇ、あなた。あなたが一言、『言う事は何でも聞きます』といえば済むの。いつでも良いわ。気持ちが決まったら言いなさい。」 「あなた、なにを。」 訊ねるより早くレイピアが動く。 「ぐぅ。」 太ももを刺しぬかれ、ガイツが呻き声をもらす。 「ガイツ! あなた、なんて事を!」 「私が聞きたいのはそんな言葉じゃないのよ。」 歌うように、うっとしとした表情で囁く。 レイピアを引き抜き、刺す。 引き抜き、刺す。 2度目以降は声を殺し続けたが、苦悶の表情ばかりは堪えきれない。 「やめて! どうして、どうしてそんなひどいことをするの!」 「違う、違うのよ。私が聞きたいのはそんな言葉じゃない。」 夢遊病の様に淡々と語りながらマーナはガイツを傷つけ続ける。 「く、あの小娘、ついにキレたか!」 悲鳴に釣られてミルフは騒動の先へと視線を向ける。 状況はとんだ地獄絵図になっていた。 大声で叫びながら剣を振り払う兵士。 身動きできない相手に対し剣を向ける兵士とそれを殴り飛ばす兵士。 延々とレイピアで交渉相手を突き刺す女隊長と、豹変した女隊長を前に戸惑う兵士達。 槍を構えて遠くにいるらしい魔物へ襲い掛かっていく兵士もいた。 そこにあったのは、遠い昔に置き捨てて行った戦場の光景だった。 陰惨でどうしようもない、血と泥と憎しみと嘆きで満ちた世界。 若い新兵達が同士討ちにまで発展する前に駆け寄ろうとし、寸前で頭を大きく反らす。 直後、鋭い爪が彼の前髪を掠めた。 「がぁああ!!」 「しばし休戦だ! あのままじゃお前の仲間も死ぬぞ!」 「黙れ、だまれだまれだまれぇえええ!! お前達はいつもそうだ、いつも殺してばかりだ!」 「くそっ、こっちも駄目か!」 手甲で鋭い爪を防ぎながらの説得を試みたが、こちらの声が届いていない。 どうやら彼女の憎しみに火がついてしまったようだ。 幼い顔に大粒の涙が溢れ、松明の明かりに映し出される。 泣きながら襲ってくる相手というのは、やはり見ていて気分の良いものではない。 それが嫌で戦場から逃げたのに。 彼は、自分の不運に心底自嘲する。 「すまんがな。これ以上憎しみだのそういった事は、ごめんにしたい!」 振り下ろされる爪を掻い潜り、空いた胴を殴りつける。 「がはっ!!」 鋼鉄の手甲は幼い少女の腹にめり込み、踏み込んだ足になお力を込めてそのまま少女を殴り飛ばす。 「女子供に手を上げるのは、本当に勘弁したいもんだな。」 地面に転がる彼女を一瞥してマーナの元に向かおうとし、ぎょっとする。 「あの馬鹿。自分で最初に練り上げた計画さえ忘れているのか!?」 彼女が恐ろしい宰相であった事さえ忘れて罵倒し、間に合わないと承知で駆け寄る。 マーナは戸惑う兵士達を押しのけて、倒れているゴブリンの少女の元へと近付いている。 手には血の垂れ落ちるレイピア。 表情は見えないが、彼女は笑っているように見えた。 風の悪戯か。 怒号飛び交う中、彼女達の声だけが鮮明に耳に届く。 「そう。じゃあもう少し現実を見てもらいましょう。」 「やめて、やめてぇええ!」 「やめやがれ、ぐぅ、!」 止めなければいけない。 なぜ魔物を助けるような事に必死になっているのか、ミルフはわからなかった。 ただここで止めなければいけないと感じていた。 コリンは動かない。 動く気力も何かも失ってしまった。 殺す殺される、そんなのはどうでもよくなってしまった。 大好きなレックスがいない。 もう会えない。 知ってしまって、体の力が抜けてしまった。 「ねぇ、レックスー。死んだらさ、また会えるかなー?」 ぎゅうとぬいぐるみを抱きしめたまま、コリンは最後まで動かなかった。 「はーいストップ。おまえら全員動くな。」 唐突に明るい声が響く。 その場の時が止まった。 シンと耳を刺す静寂が辺りに染み渡る。 松明の爆ぜる音がパチパチと響く。 覚えのある声に驚き、そしてそこに立っている人物に驚く。 兵士達も、ガイツも、マリンも、その場に居る全員がマーナを見ている。 いや、マーナの隣に居る誰かを見ている。 「え、な、え?」 「今の声は、まさか、まさか!?」 マーナは自分の隣に誰かがいることに気づいて振り向き、心臓が止まるほど驚愕した。 「うそ、でしょ。あなたは、死んだはずよ。」 「らしいなー。いやーあっはっは。俺も驚いてる。まさか、俺の姿を俺が見るなんて思わなかった。」 彼女の隣で場に不釣合いな笑い声を上げる。 おかしそうに笑っているのは、死んだはずのレックスだった。 「レックス? レックス!!」 「よ、コリン。わるいな、遅れた。」 今まで動かなかったコリンが慌てて起き上がって抱きつこうとするが、縄で縛られているためにその場に倒れこんでしまう。 その彼女の傍にしゃがみこむと、レックスはなんともいえない表情を浮かべる。 「れっくすぅ〜。」 「心配かけちまったな。わりぃ。」 「っく、ひくっ、ん、れっくすー、っく、無事、だったのー?」 「いや、んー。どういったらいいんだろうかな。」 手に持ったナイフでコリンの縄を切りながらもレックスは、しゃくり上げるコリンの頭を撫で続ける。 その彼の姿は明かりの加減からか、うっすらと透けているように見える。 「あなた、その姿、どうして。」 「マリンさん。ありゃ、一体どういうことなんだ?」 「ええと、どういう……あ、まさか!」 マリンが何かに思い当たると同時に、プツリと縄の切れる音がする。 レックスが持っていたナイフでコリンの縄を切ったのだ。 「れっくすぅー!!」 ぬいぐるみを投げ捨ててレックスに抱きつこうとするコリン。 「れっくすぅ、わたっ!!」 そして地面に倒れこんだ。 「え、あれ、え?」 慌てて起き上がって後ろを見ると、困ったように笑うレックスがいる。 ぽりぽりと頬をかきながら、どういっていいか迷うよう今をおいて、告げる。 「いやー、わるい。おれ、まだあんまし実体化できて無いんだ。」 「やっぱりその姿。レックス、あなた……ゴーストになったのね。」 「ゴースト? それって……ああ、そういうことか。」 「馬鹿な、どうして、死んだはずなのに!?」 激情したマーナがレイピアで突き刺す。 しかしレックスは表情一つ変えていない。 レイピアは確かにレックスを貫いているが、血は出ない。 「当たったはずなのに、どうして、どうして!!」 何度も突き刺す。目を、体を、足を、手を。 しかしその全てが当たらない。 「あれー、レックス、あたんないー?」 「そりゃまー、体が無いからな。」 ちなみにレックスのナイフは地面に転がっている。 服は着ているものの、やはり服に穴が開くということもない。 「しかし、こりゃいったいどういう原理で?」 「あらー。これはこれはー、めずらしいことにー。」 「お、ネイルか。遅かった……な。」 ガイツが問いかけて、顔を引きつらせる。 ネイルは間延びした顔につやつやとした良い表情を浮かべている。 何をしたのかはわからないが、機嫌がいい。 そういえば確か彼女に襲い掛かった兵士たちが居たはずだが。 「どういうことなんだ、ありゃ。」 「恐らく、ゾンピパウダーの効果ではないか。」 「ぞんびぱうだー? なんだそりゃ。」 ガイツは敵の中では比較的まともそうな彼に問いかける。 未だ信じられないといった顔のミルフは、これ以上事態が進まない事に気づいてガイツの問いに答える。 「時々だが戦場で見かけた事がある。ネクロマンサーが死体が必要以上に腐る事を防ぐため、特殊な粉を死体に振り掛けるのだ。そうする事で腐臭のしないゾンビが作られるのだ。」 「えげつねぇな。」 「ああ。私もさすがにアレにはほとほと嫌気が差したさ。」 ミルフの引っかかっていた部分は、そこだった。 ゾンビパウダーは原料は知らないが体に悪そうな甘ったるい香りがする。 少年を見た時、部屋には場に不釣合いな甘い匂いが漂っていた。 「思い出せなかったのは簡単な事だったな。あれはあまり思い出したくは無い記憶だ。」 「なるほどな。で、あんたはどうするつもりだ。」 「君達の境遇には同情する所はある。あの娘がやや先走ったにせよ、我々が為す事は変わらない。」 思惑が外れてガイツが目を細める。 本当に済まなそうにミルフが笑う。 「悪いな。私としても出来うる限りの便宜を図るつもりだ。」 「へ。少しは話が出来るやつかと思ったんだがな。」 「私は古い人間でね。仮にも忠義を尽くした相手がいるのだ。納得できずとも、従わなければならない。」 「はっ。俺はな、そういうのが嫌で戦場を逃げ出したんだよ。」 「なるほど。私も次の職場はもう少し考えた方が良さそうだ。」 「樵なんてどうだ? あんたはいい樵になれると思うぞ。」 「次があるなら考えておこう。」 ち、とガイツが舌打ちをする。 話がわかる、いや話が出来るやつ相手ならと思ったが、意味がなかった。 迷っていても任務は遂行する。 理想的な兵士だ。 マーナとの違いは魔物を憎んでおらず、ガイツたちのことも出来る事なら傷一つつけずに済ませたがっていたというぐらいだ。 相好を崩していたミルフが突然大きく一歩下がる。 「おっと。おおなめくじの粘液には酷い目に会った事がある。」 「むー、残念ー。」 寸前までミルフが立っていた場所に粘液がこびり付いている。 ネイルもそれ以上彼にどうこうする気も無く、ヌタヌタと近付いてくる。 「ちょうどいい。彼の止血をしてやってくれないか。」 「んー、いわれずともー。」 言いながら彼女はガイツの太ももに粘液を垂らす。 「う、っく。」 「ガイツ、痛むの?」 「むしろ痛いのが気持ちいいー、だったらいいなー。」 「え、えっと、なにそれ。」 「マリンさん。知らなくて良いことですよ。」 「私もそう思う。」 治療を施しながらネイルはレックスを見て、それからぐるりと周囲を見回す。 最後にミルフで視線を止めると、にんまりと意味ありげな笑みを浮かべる。 「な、なんだ?」 「んふふー。ご愁傷サマー。」 「え、な、なにがだ?」 「遅くて早いなんとやらー。でもー、今回はざんねんしょー。」 「ど、どういう意味なんだ。」 「俺様に聞くな。」 「わ、わたしもよくわからないの。」 マイペースなネイルに3人が戸惑っている内に、ガイツの止血は完了した。 「はい、しゅーりょー。」 「ふぃー、たすかった。」 「よかった、ガイツ。」 「本来ならば治療魔法で治す方がいいのだが。さすがにマーメイドに自由を与えるほど寛容ではないのだ。それで我慢してくれ。」 心労で消耗し切っているマリンに笑いかける。 唐突に向けられた優しい表情にマリンが戸惑う。 「あ、いえ、その。」 「てめぇ、マリンさんに色目を使うなよ!!」 「いや、彼女が美人であるのは認めるがな。認めるが、所詮私には関係の無い話なんだよ。」 遠い、とても遠い目をするミルフ。 苛立ちはあるもののガイツは彼を追撃しなかった。 彼は思いやりのある男なのだ。 「はぁ、はぁ、はぁ、くっ!」 「レックスー。帰ろうー。」 「ん、ああ、そうだな。」 幾ら攻撃しても意味が無いと知りながらも、現実を認めたくない彼女はレイピアを繰り出し続け、ついには肩で息をするほどにまで疲労してしまった。 すっかり安心しきっているコリンと場の空気を読んでいない様に余裕泰然とするレックス。 既にどちらが勝者なのかは一目瞭然だった。 「これ以上ここに居ても意味無いし、帰るか。」 「悪いが逃がしはしない。」 「ああ、あんたは攻撃できないが、他は違うからな!」 マーナの兵士たちが武器を構える。 幾ら実戦経験が無いとは言え、彼らは精鋭の部隊。 先ほどとは全く逆で、平静さを失ったマーナを見て彼らが落ち着きを取り戻した。 ミルフも自然体のまま、鞘つきの剣を構える。 「ちぃ。どうするかな。」 「んー、なんとかなるー。」 「ネイル。その自信はどっから来るんだ。」 「お腹の中からー。」 ぺちゃんと自分の腹を叩くネイル。 彼女はどうやら現状に危機を感じていないらしい。 「悪いが、私は油断をしないぞ。」 言葉そのままに周囲を警戒するミルフ。 だが、レックスのとった行動は簡単、あまりに予想外だった。 「おい、お前ら。何とかしろ。」 レックスは兵士達に命令をしたのだ。 何をしているんだろうとその場の全員が思ったが、反応は劇的だった。 「ははっ!!」 「な、おまえたち何をする!」 「おー、なわもほどくー?」 マーナの兵士達はマーナを拘束し、ガイツたちの縄を解いていった。 「な、おまえたち一体何を!?」 「すみません隊長。俺たち、ついに目覚めたんです!」 「あー、もしかしてー。」 ミルフの兵士もまた、ミルフの動きを止めにかかる。 久々に怖気の走る思いをしたが、彼はなぜか今までと何かが違うと感じた。 「食べすぎ厳禁ー。」 一人だけ状況を把握しているネイル味のある笑みをレックスに向ける。 対するレックスもにんまりと笑い返す。 「詳しい事は後で話す。やろうども、ずらかるぞ!」 「おうよ!」 「ええ。」 「わかったー、あ、ぬいぐるみぬいぐるみー!」 「バゥルー。持ってってー。」 「んん、く……え、一体何が起きて、あぇ、あ、あれ、えっと、うん、わかった。」 「くそ、離せ、離せ!」 「まじすみません!」 「おれら、隊長離れします!」 「なにがあったお前らぁああああ!!」 あまりにも予想外な事態に、ミルフは混乱の渦から抜け出せなかった。 一行は戻って、ネイルの小屋。 今はコリンとレックスだけが小屋の中にいる。 「れっくすー、れっくすぅー。」 抱きつこうにも上手くいかず、もどかしくてぬいぐるみをぎゅうっと抱きしめるコリン。 そのコリンの頭をやさしく撫でるレックス。 「なぁ、コリン。一つ、いいか?」 「ん、なーに。」 「コリンはさ。俺がこんな風になってもさ、んっと。」 言い辛そうに視線をそらしてから、レックスが続ける。 「あのさ、俺はやっぱり、コリンが好きなんだ。コリンは俺がこんな風になっても、好きで居てくれるのか?」 照れくさそうに顔を赤くする。 言われたコリンは目をぱちくりとさせてから、すぐにレックスに抱きつく。 今度は実体化していたのか、ちゃんと抱きしめることが出来た。 「うん、大好き! レックス、大好きだよー!!」 「そっか。うん、俺も大好きだ。」 顔を近づけ、キスをする。 「ちゅ、ちゅ、ちゅう。」 「ん、ちゅ、んん。」 互いが互いに甘えるような、愛らしいキスの応酬。 一息ついて、二人してベッドに寝転がる。 「ふふー。」 柔らかい抱き心地に終始笑顔のコリン。 レックスもコリンの頭を抱き寄せて満足そうに目を細める。 「んふー、……あれ?」 コリンは抱きつきながら、変に思った。 「あれ、レックスの胸ー、やわらかいー?」 「は、なにいってんだおまえ。」 実体化しているレックスの胸をコリンが触る。 ふにふにと柔らかい胸は、コリンの胸のようだ。 「あれー、おっぱいおっきいー?」 「馬鹿言うな。コリンと同じくらいだろうが。」 「あれー、あれー?」 コリンの頭はこんがらがった。 よくわからなくなったので聞いてみた。 「レックスの胸ー、前はもっと小さかったー。」 「いや、かわんねぇから。むしろこれ以上下はねぇ、あ、ルーネが居たっけ。」 「あれー、あれー?」 「どうしたんだよコリン。」 もっと良くわからなくなった。 だからえっちすればわかると思った。 「えっちしようー。」 「いやまー、まだあんまり実体化できて無いからさ。」 「出したりー入れたりしたらーわかるきがするー。」 「まぁ、指くらいなら何とか。」 「ゆびじゃなくてー、もっとー。」 「指以外に何を入れろと。舌か?」 「違うよー。お○んちん〜。」 沈黙。沈黙。 言って恥ずかしくなったコリンがレックスの胸に顔をうずめるが、レックスは硬直していた。 「待て。俺が、いつ、おちん○んなんて入れた。」 「…………あれー?」 「あれー、じゃねえっての。」 後日、判明した事がある。 どうやらレックスはゴーストになったが、魔王の影響を受けて魔物化しているということ。 魔物になったという事で体も少年ではなく少女になっていたが、それに影響してか記憶が変わっていて、「元から女だった」という事になっているという事。 それに気づくまでの間、二人は互いに不思議そうにしてばかりだった。 「ふふー。怒ろうと思ったけどー、いまはいいやー。」 唯一、そういった事情も込みで知っていたネイルは、レックスに何時告げようかと楽しみにしていた。 審判の日は、まだ来ない。 |
「ところでさ。俺の死体ってどこにあるんだ。」
「んー。持って帰られたー。」 「いやまておい。俺が元々女だったって証拠はどこにあるんだ!?」 「ちがうー、レックスはお○ん○んあったよー。」 「だからねえって。ほら、みてみろよ!」 「あれー? でもー。」 「んふふー。」 「えっと、マリンさん?」 「ごめんなさい。私もなんといっていいのか、その、わからなくて。」 「zzZ、えっち、したいー」 「どうしたのバゥル。レックス無事だったのに嬉しくないの?」 「いや、すごく嬉しいし、ほっとしたけどさ。」 「んー、何かあるでしょー?」 「あーなんでもないよ。ただ、あいつ、強かったなーって。」 「なるほどね。負けたんだ。」 「いや、ち、ちがっ。」 「バゥルも女の子なんだねー。ほら、行ってきなよ。」 「う、えっと、フィン。」 「行ってらっしゃい。いつでも待ってるからさ。」 「……うん。行って来ます!」 ----作者コメント ごめんなさいごめんなさいごめんなさいOrz(三回復唱 主人公がやられちゃって、ありゃりゃーと思ったら無事でした(命以外は) っていう流れを思いついちゃって、つい やっちゃいました☆(’γ’ これにて「ふつうの冒険者の旅」は終了しました(。。 次回があるときはきっと、「ふつうじゃない冒険者の旅」とかなんか、 そういうのになっていると思います(’’ 連載開始から見守っていただいた方々、 最後まで読んでくださった方々、 ご愛読ありがとうございました!(。。 10/04/12 21:59 るーじ |