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問題解決、問題発生、問題解決

今日は久しぶりの特訓の日。
少年は走ったり薬草を集めたりしてる。
クエスト用の薬草じゃなくて、旅に出るための準備。
ハーピーとピクシーが少年の手伝いをしてる。

そして私と4人の魔物は切り株を囲んで座ってる。
切り株の上には町で買ったケーキとカップの紅茶。
「さて。会議といこうじゃないか」
今日はみんなで話し合い。
魔物の姿で話し合い。

「まず屋敷の事だけど。実は魔物はいなくて無人だったって事に出来ない?」
「無理だろう。既に撃退してしまっている」
ラージマウスの提案をリザードマンが否定。
「じゃあさ。討伐隊が来るたびに私たちが撃退するってのは?」
「無理だと思うよー。躍起になってドンドン数を増やしてくるだろうしね。下手したら勇者が来るよ」
ラージマウスの次の案に、金槌リザードマンが首を横に振る。

「じゃあさ。討伐しましたーって報告したら?」
「討伐した証拠をどうやって示す」
「えっと。首?」
「私たちが魔物を狩るのか」
ラージマウスがこれならどうと提案すると、眼鏡ラージマウスが駄目だと言う。

「ああ、もう。じゃあどうしたらいいんだよ」
ラージマウスが切り株に顎を乗せる。
皆も悩み顔。
金槌リザードマンが名案だとばかりに手を打つ。
「いっその事。中にいる人を皆、近くの魔界に引っ越しさせたらいいんじゃない?」

「その話は既にデュラハンとしている」
「じゃあ決まりだね」
「だが、それは出来ないらしい」
眼鏡ラージマウスを金槌リザードマンが見る。
「どうして?」

「わからないが。デュラハンも何度か試したらしいが。あの令嬢、動かす事が出来ないのだそうだ」
首をかしげる。
重いの?
「似たようなものだ。抱き上げようとしてもびくともしないのだと言う」
私が運べばいい。
「それもいいのだが。調べた所、どうも呪いの一種の様でね」

首をかしげる。
一体だれが魔物を好き好んで人の町に固定しているのだろう。
「呪いの類は私も学がなくて不明だ。だが、何らかの魔術によりあの場所で固定されている事だけは確かだ」
「魔方陣はどんなの?」
「探したが見当たらなかった」
ラージマウスが聞いたけど、眼鏡ラージマウスにもわからないみたい。

それにしても、今日はいい天気。
ケーキを食べているとちょっと眠たい。
「……久しぶりの魔物の姿で気を楽にしているのは大いに結構なのだが」
首をかしげる。
「涎が垂れているぞ」
袖で口元を拭う。

「ああ、そう言えば。前に探して欲しいって言っていた人の事だけどさ」
ラージマウスがちょこちょこやってくる。
「見つけたよ。もしかしたら、その人に協力してもらったら、上手くいくかもしれないけど」
どんな人?
「会えば分かるんだけど。今から行ってみる?」
うなずく。

「わわ。飛ばない飛ばない! 町に行くんだから!」
翼を畳む。
飛んだほうが速いのに。

みんなで一緒に会いに来た。
そしてその人を連れて屋敷までやってきた。
「大丈夫。私たちと一緒なら大丈夫だって」
「私たちは腕に覚えがある」
ラージマウスとリザードマンに引っ張られてその人は屋敷の中へ。

途中、降ったり寄ってきたりした黒いのを投げて、眠っている人の部屋へ。
「今日は大勢なのだな」
少しだけ笑ったデュラハンの人が、驚いた顔をする。
「人間を連れてきたのか!」
「まーまー。落ち着いて」
金槌リザードマンが慌てて抑えに掛かる。

大丈夫。
きっと大丈夫。
怪しいけど大丈夫。
「ひどい言い草だね」
糸目のお兄さんは相変わらず笑ってる。

「お久しぶりです。エリナさん」
誰の事を呼んだんだろうと首をかしげる。
みんなも違うよって顔をしてる。
デュラハンだけ、驚いた顔をしてる。
「僕ですよ。お嬢様に良くお世話になっていました、カリムです」

よくわからないけど、糸目のお兄さん……カリムの話を聞いた。
お嬢様と小さい頃によく一緒に遊んでいて。
ある日突然お嬢様が死んじゃって。
でもある日、屋敷に魔物が住むようになったって聞いて。

色々と調べたらお嬢様やエリナが魔物になったんじゃないかってわかって。
それからなるべく討伐されないように頑張っていたって。
闘技大会に魔物を絶対に入れないようにって決めたのは昔からだけど、その事を教会の人たちにいっぱい話して魔物はいないんだよってアピールしてた。

でも今年は勇者が来るからって教会の人たちが町を調べて、それで見つかっちゃった。
どうしていいかわからなかったら、教会の人が負けた。
応援を呼んでから教会の人がいなくなって、勇者も町に来たりして、色々と困っていたんだって。
魔物と話し合いをしたいと言っていた少年の面倒を見ていたのも、他の人が少年に酷いことをするかもしれないからだって。
リザードマンにも気づいていたし、他にも魔物っぽい子がいることに気づいていたけど、他の人に気づかれないようにしていたんだって。

……糸目のお兄さん、魔物と仲良くしたい人だった。
糸目のお兄さん、ごめんなさい。
「え、ああ。いいよ。自分でも胡散臭いと思うしね」
糸目のお兄さんは笑ってるけど、何だか何時もと違う。

「お嬢様を連れ出していた悪ガキが、今では私たちに味方する数少ない人間だったとは」
デュラハン……エリナの表情がちょっと優しい。
「それで、彼をつれてきた理由は?」

「例のお嬢様は、今は魔物。間違いないのだな」
眼鏡ラージマウスが聞くと、エリナが頷く。
「なら簡単な事だ。お嬢様はカリムを待っていたと言う事だ」
首をかしげる。

「魔物の本能については理解しているつもりだが」
「やってみて駄目なら次の案だ」
エリナは戸惑ってる。
近所の悪ガキはお嬢様に近付いちゃ駄目?
「それもあるのだが。むぅ」
エリナが困っている。

「複雑だよねぇ。ずっと見守っていた身としちゃあね」
金槌リザードマンがエリナの肩を叩く。
「いいじゃん。お嬢様が幸せになったら、それでさ」
「それは、そうなのだが」

糸目のお兄さん、ごぉ。
「うん。僕が起こして起きてくれるとは思わないけど。やれるだけやってみるよ」
糸目のお兄さんがお嬢様に近付く。
「お嬢様。朝ですよ」
お嬢様は起きた。
代わりに、糸目のお兄さんが押し倒された。

「え、えっと、あの?」
「お嬢様!?」
お嬢様は寝ぼけているみたい。
糸目のお兄さんの上に乗ってぼーっとしてる。

「計画通り」
眼鏡ラージマウスが眼鏡をかけなおす。
たまに思うけど、何でかけ直してる?
「気分だ」

それからお嬢様は糸目のお兄さんと、なんか色々して。
目を覚ました。
「あら。エリナ、おはよう。何だか今日は熱いわね」
「おはよう、ございます」
「エリナ。顔が赤いわよ」
「も、問題ありません!」
ちなみに、部屋にいるみんなの顔が赤い。

「あらあら。私が寝ている間に随分といろいろな事があったのね」
話しながらお嬢様は糸目のお兄さんに抱きついてる。
「いいわ。もう少しカリムの精を貰ったら、ここを出て行きましょう」
「はい。引越しの準備を致します」
「ええ。ところでエリナ」
「は、何でしょう」
「貴女も混ざらない?」

エリナが咳き込んで首が落ちた。
そしてエリナも混ざった。
私たちは熱くなってきたので屋敷から出る事にした。

「結局、あのお嬢様が自分で自分に呪いをかけていたって事?」
ラージマウスはまだ顔が赤い。
「そのようだ。ゾンビにあのように高い魔力があるとは思えなかったが。あの屋敷に漂っていた魔力は全てお嬢様の物だった」
眼鏡ラージマウスの顔も赤い。
そして私との距離も近い。

「魔法使いだったのかな」
「わからないが。私も全ての魔物を知っているわけではない」
「私も色々と知っているけど、アンデッドについてはねー」
金槌リザードマンも顔が赤い。
リザードマンは屋敷を出てからも一言もしゃべっていないけど、顔が赤い。

「……困ったな」
リザードマンが呟くと、みんな頷く。
首をかしげる。
お引越しで問題解決なのにどうして?
「いや、あくまでも我々の問題だ」
リザードマンがもじもじしている。

そういえば、この間の討伐隊。
「ん?」
リザードマンが首をかしげる。
ワーウルフやゴブリンたちより多かったから、余っているかも。

みんなが一斉に私を囲んだ。
「場所はどこ!」
「討伐隊はみな強い者たちだったな!」
「久しぶりに私もがんばっちゃうよー!」
「ふふふ。たまに野性に帰るのもいいな!」
みんな怖い。

「あれ、皆は?」
ハーピーとピクシーにみんなが行った場所を伝えると、二人揃って飛んで行った。
「なんでそんな場所に?」
首をかしげる。

「そっかぁ。魔界に引っ越すんだね」
たぶん、糸目のお兄さんと一緒に。
「よかったね」
うなずく。

「でも。今日は、えっと」
首をかしげる。
「いつもより、えっと、抱きついてくるね」
うなずく。

少年と一緒にいると体が熱くても気にならない。
何時もより少年と一緒に過ごして、ベッドに入った。

「ちょ、ちょっと! 服は脱がないで!」
少年に怒られたので、服は着て寝た。

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13/02/17 22:45 るーじ

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