ヤミヤミ症候群 |
最近、私は体調がよくない。
どうしてだろう。 昨日、近くの森に山菜を取りに行った時から少しずつ体調が悪くなった。 おかしい。 体が熱を持っている。 風邪を引いたのかと思うけれど体は軽い。 何故だろう。 私は森があまり好きではなかったのに、最近はよく森に通っている。 不思議だ。 私は社交的なタイプではなかったのに、最近はよく人と話をしている。 本当に不思議だ。 君と話をしていると、どうしてこんなにも温かな気持ちで居られるのだろう。 君は一人を好む人だ。 いつも家の中に篭り、羽ペンにインクをつけて質の悪い紙に何枚も絵を描いている。 私には君の描く絵は理解できないし、誰も君の描く絵を理解できていない。 けれど私は一心に絵を描き続ける君を見ているとそれだけで幸せな気持ちになる。 君は邪魔をされなければ誰が傍にいても気に留めない。 だから私はただただじっと君の姿を傍で見続けている。 誰にも興味を抱かないその背中。 女性である私に比べても細く頼りないその背中がとても可愛らしい。 衣服に気を使わない君の服はとても君らしさが表れている。 君は私のほうを一度も見ないし、私は一度も君から目をそらさない。 ああ、だから私はとても不思議だ。 今まで君の事をこんなに長く見るようになった事はなかった。 どうしてだろう。 君から目を離せない。 どうしてだろう。 君を思うだけで私は幸せになれる。 君は私に問いかける。 なぜ私は毎日の様にここへ訪れるのかと。 私は一言だけ答える。 君に会いたいから。 私の答えに君はさほど興味を抱いた風でもなく、あっそう、と背を向ける。 私は問いかける。 なぜ君は絵を描くのかと。 君は振り向かずに答える。 描きたいから。 私はそれを聞いて、そうなんだ、と返す。 ただそれだけ。 ある日、君の元に誰かが訪れていた。 君は私と話をするよりも長くその誰かと話をしていた。 君は私と話をするよりもよく感情を声に出していた。 君は私と話をするよりも長く顔を見ていた。 君は私と話をするよりもよく笑っていた。 君は私と話をするよりも楽しげな顔をしていた。 君は私と話をするよりも嬉しそうに相手と接していた。 君は私と共に居るよりも長く絵を描く手を止めていた。 君は私と共に居るよりも長く話をしていた。 君は私と共に居るよりも長く笑っていた。 君は私と共に居るよりも長く相手のほうを向いていた。 君は私と共に居るよりも長く話をしていた。 君は私と共に居るよりも元気そうにしていた。 君はどうして私にそんな風に笑ってくれないのだろう。 君はどうして私にそんな風に楽しそうに話をしてくれないのだろう。 君はどうして私と居る時は絵ばかりを描いているのだろう。 君はどうして私と居る時に沢山話をしてくれないのだろう。 不思議だ。 彼女は君の幼馴染であるらしい。 年は私より下で、君より少しだけ上。 君と彼女は昔からよく共に遊んだ仲で、君は昔から彼女によく食事を作ってもらっていたらしい。 君が彼女の家へ遊びにいく事も多いらしい。 彼女が君の家へ遊びに行く事も多いらしい。 君と彼女は幼馴染で、とても仲がよいのだそうだ。 小さな頃から君と彼女はよく会っていたそうだ。 私は君の事を良く知らなかった。 私は君と彼女の事を良く知らなかった。 けれど興味が沸いた。 これからはドンドンと君の事を知っていこう。 不思議だ。 こんな気持ち、初めてだ。 君は魚が好きで肉類がとても苦手だ。 君は肉よりも野菜が好きで、野菜よりも果物が好きだ。 君は昔、吟遊詩人に憧れて歌を歌っていた頃があった。 君の歌を聞いてみたいけれど、君は歌が下手だといわれて以来一度も歌わなくなってしまった。 君は運動する事が苦手で、でも彼女のために木に上って帽子をとってあげたことがあった。 君はこの町から殆ど出た事がなくて、町から出る時はいつも彼女と一緒だ。 君の事を知ろうとすると、いつも彼女の事が出てくる。 私は君を見ていたいのに。 君だけを見ていたいのに。 君を見ようとすると、彼女がそこに居る。 君と話をしようとすると、君は彼女と話をしている。 どうしてだろう。 なぜ彼女は君と一緒に居るのだろう。 私は彼女と話をする事にした。 彼女はとても話が上手く、口下手な私との会話も楽しんでいるようだ。 彼女はよく話、よく聞き、よく笑う。 彼女は甘い物が大好きで、私が焼いたクッキーをまた食べたいと喜んでいた。 彼女があまりに甘い物が食べたいと言っていたので、たっぷりと蜂蜜を塗りこんだケーキを焼いた。 私は彼女とよく話をするようになった。 彼女の友達ともよく話をするようになった。 私は君と会う時間を減らす代わりに、彼女と会うようになった。 私は彼女とたくさん話をして、私は彼女にたくさんクッキーを焼いた、ケーキを焼いた。 私の体の熱は収まるどころか、日増しに熱さを増していく。 止まらない。 理性が何であったか、覚えていない。 少し前に書いていた日記に、覚えのない文章が書いてある。 「はやく町からでないといけない」 私はそのページを破りゴミ箱に捨てた。 私は久しぶりに君に会いに来た。 君はどうしてか、いつもよりもよく笑っている。 君はどうしてか、いつもよくも私とよく会話をしている。 だから私は君と話をする。 君が私に近付く。 君が私に触れる。 君が私に。 キスをする。 甘い甘いキスをする。 私の中の熱をさらに上げるようにキスをする。 私は笑って、キスをする。 君は私を抱きしめる。 君は私の服を脱がせる。 君が私に触れる。 ああ、とても不思議だ。 君が触れるだけで私はとても幸せになる。 君が傍にいるだけで私はとても幸せになる。 君とずっと一緒に居たい。 君もそうだろう。 君はとても嬉しそうに笑っている。 だから君も幸せなのだろう。 どうして君は。 そんな顔をして泣いているんだ。 さぁ、幸せになろう。 私と君とで幸せになろう。 ずっと一緒、ずっとずっと一緒だ。 君と私が一つになってから、長い時間が経ったように思える。 町には沢山の人があちこちにいる。 みな二人が一人に、一つとなって繋がっている。 私は繋がったまま君と共に町を歩く。 彼女はやはり誰かと繋がっていて、やはりよく笑っている。 前に試したけれど、彼女はもう甘いクッキーも甘いケーキも食べたがらない。 頭にキノコが生えてからはずっと、甘いクッキーも甘いケーキも食べていない。 君は涙を流しながら幸せそうに笑って私に振れ、動く。 彼女は幸せそうに笑いながら泣いて、誰かに触れて動く。 だから私も、笑って動く。 私は君と一緒。 それ以外は考えない。 それでいい。 それだけでいい。 |
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愛している。
ずっと前から、あるいはつい最近から。 でも、どうしてだろう。 時々、とても悲しい。 ----作者より ヤンデレに挑戦してみたけど、どうでしょう(’’ ヤンデレは難しいのです、というか無理です!(。。 11/06/17 20:10 るーじ |