食べちゃおうか、食べられちゃおうか、どっちにしようかなぁ♪

 私は邪竜の一角にして、メストカゲの一尾である! 名は、ダーズ!
 番(つがい)を得てからは実に良いメストカゲ生活をしていたのだが、ふと気づいたのじゃ。
 眷属たち、エロくなり過ぎてないか?と。
 正確な表現をすると、エロに染まり過ぎて、皆が皆自室に引き籠ってしまったのだ。
 そのため、私に献上するはずの貢物が減ってしまった。
 由々しき事態なのだ!

「では、行くとしよう」

 古来より続く伝統、貢物による悠々自適の生活を取り戻すため。
 私は愛しき番(つがい)の寝顔にキスをして、窓から飛び立つ。
 目指す先は人の町。
 待っておれ、悠々自適の生活よ!


 町にはまだまだ人間が残っていた。
 眷属たちは加減をしたため男の影も多くみられる。
 そして愛らしい程に弱々しい敵意を含んだ視線も向けられている。

「ふむ?」

 視線の主が気になり、窓から邪魔する事にした。
 どこにでも居るような若い娘は、私の訪問に怯えて座り込んでいる。

「ふむ?」

 何か良い考えが浮かびそうな気がするが、何だろうか。
 旧い時代の記憶だ。中々意識の底から出てこない。

「娘よ。何故、可愛らしくも愛らしい敵意を私に向けたのだ」
「だ、だって」

 怯えながらも娘は私をにらみつける。

「私は、貴方たちが憎いし。そして、羨ましいの」
「ああ、なるほどなるほど」

 そうして、私は試す事にした。

「では、お前も眷属だ」



**************************



 じわりじわりと、私に染み込んだ恐ろしい邪竜の血が私の中に広がる。
 強いお酒を飲んだように熱がこみあげてくる。

「え、あれ」

 お酒を飲んだように、と言うのは少し嘘だったかもしれない。
 だってこれは、こう、なんというか。他人には言えない様な恥ずかしい事をシテいる時に似ていると思う。
 人に怒鳴った事が無い私でも、気になる男性はいるし、付き合えたらいいなぁって思ったりもする。
 だから、一人でシちゃう事もあるんだ。
 仕方ない事なんだよ、うん、きっとみんなもしている事だから。毎晩。

 いま私の体から湧き上がるこの熱は、毎晩感じている熱によく似ている。
 違っているのは、自分で止められない事と。
 毎晩味わう熱よりもっと、もっと。熱くて熱くて堪らないという事。
 目の前に人(じゃりゅう)がいるのに、私の手は止まらない。
 大きくならなくて悩んでいた胸を、私の右手がきつく虐める。服のボタンはいつの間にか外していた。

「ひゃあ♪ なに、これぇ♪」

 いつもの何倍もくすぐったくて、いつもの何倍も気持ちいい。
 頭の片隅で、こんなの続けていたら壊れちゃうんだろうなぁと感じてる。
 でも私は、もっと触ったらもっと気持ちいいんだろうなぁと期待している。
 にちゃりと音がする。くちゅ、くちゅと音がする。
 もうこんなに濡れている。もうこんなに溺れてる。
 口から火を吹き出しそうなほど体が熱いのに、手は止まってくれない。
 気持ちよくて、怖くて、止めたいのに。止まってくれない。

 だって気持ちいいから♪

 頭が変になっちゃう。それが分かってても、止められない。
 この気持ちよさを知ったら、もう戻れない。
 息が、乱れて、凄く走ったみたいに荒いのに、体は疲れていなくて。
 昔読んだ本の一節にあった文章を思い出す。
 恋は身を焦がすほど燃え上がり、快楽は息を許さないほど溺れさせる。
 今の私は恋心さえ水没して、もう快楽から顔どころが指先一つ抜け出すことが出来ない。
 どれだけ手を動かしても、指から響くのは湿った水音だけ。
 どれだけ足を動かしても、ピンと伸びた足先が空を掻くだけ。

 空を見上げる魚になった気分。
 届かない空を見上げて、私は。

 そうして何度も、何度も、気持ちよくなって。

 何時しか、私は溺れていなかった。


 主(じゃりゅう)様が仰るには、どうやら私は主(あるじ)様の下僕になったようです。
 黒曜色の鱗。鋭く尖った爪。大地を踏み砕く丈夫な脚。
 私は竜の一種、半竜人とも言える種族になりました。
 わー、ぱちぱちぱち。

 不思議な気分です。私は元人間だった事を覚えていますし、どんな気持ちでどんな生活をしていたのかも覚えています。
 でも今の私からすると、うじうじして弱々しい人間だったなぁとしか思えないんです。
 芋虫を見下ろす蝶の気分に似ているかもしれません。
 今の私は花の蜜を吸う蝶と違って獰猛です。あぁ、大好きな彼の精液を求めているって事は、蝶とそっくりですね♪

「気分はどうだ?」
「すっごく、えっちな気分です♪」
「そうなるだろうとは思っていたが。やはり、ドラゴニュートもそうなるのだな」

 主(あるじ)様はそれからいくつか話をした後、またご自身の城へと戻られました。
 一人、部屋に残った私は。これからどうしようかなぁと思いました。
 今すぐ彼の所に飛び込んで貪りつくしたい、おちんちんと舐め舐めしたい、彼の匂いを鼻いっぱいに吸い込みたい。
 戸惑う彼をぺろぺろしたい、人間だった頃より膨らんだ胸に彼の顔を埋めたい。
 彼を貪りたい、えっちに淫らに、そして下品なくらい野性的に食べちゃいたい♪

 でも。
 今の世の中は、まだまだ主神の教えが広まっているから、あまり派手に動いても上手く行かないんじゃないかなぁ。
 彼に嫌われないようにいっぱいエッチな事で頭をいっぱいにするつもりだけど、彼の焼くパンが無くなったら他の人が困るだろうし。
 それに主(あるじ)様色にこの町を染めるなら、もっと、えっと、なんだろう。
 良い手があると良いんだけどなぁ。

 だから我慢する。
 主(あるじ)様色にこの町を染めるために、いっぱい考えよう。

 あ、でも、今日も彼を悦ばせられる様に。
 この体をもっともぉっと、えっちにしておこう♪


 私の髪の色は少し桃色がかった赤色で、長く背中の方まで伸ばしている。
 彼が長い髪が好きだって言ったから頑張って伸ばした髪を梳る。
 竜の手でもブラシを扱うのは大丈夫みたい。
 今まで来ていた服も着れるみたい。
 荒々しくて禍々しい黒曜色の鱗は服に合わせて小さくなり、手足も爪も大人しくなっている。
 私は鱗も爪も隠して、今まで通りに見えるよう服を整えている。
 だって、彼をびっくりさせたいから。
 あと他にも理由があるんだけど、一番は彼をびっくりさせて、驚いた彼に襲い掛かりたいから。
 今日も彼は元気にしているかなぁ。

 家の裏で育てた花を片手に、彼のお店にやってきた。

「ハンク、おはよう♪」
「うん、おはよう、サラ。今日も可愛い……ね?」

 彼は私を見ると、ぼぅと見とれちゃったみたい。
 私は鱗も角も全部隠しちゃっているけど、どらごにゅうとになっているから人間だった頃よりもずっと綺麗でずっとえっちになっちゃってるから。
 見ただけで違うって分かるのかなぁ。
 他の人は気づいていなかったみたいだから、彼だけが気付いたのかなぁ。
 あは♪ 気づいて、くれたんだぁ♪

「今日もお花、持って来たよ♪」
「そ、そう? ありがと。うん。良い匂いだね」

 花を受け取る彼の手が、私の手に触れる。
 いつもよりちょっとどぎまぎした彼に悪戯したくなって、一歩、彼に近づく。
 あと一歩近づいたらキスしちゃいそう。キス、しちゃおうかなぁ?

「サラ、今日はちょっと、いつもと違うね?」
「うん。ねぇ、ハンク。良い匂い、する?」
「えっ?」

 もう一歩だけ近づいてあげる。彼が頭を後ろに動かしたから、キスできないけど、すごく顔同士が近くなっちゃった。

「あ、えっと、その」
「お花。良い匂い、する?」
「あ、ああー、うん、する! いい匂いするよ!」

 助け舟を出したら、彼はすぐにそれに乗って。
 とっても可愛いから、思わず笑っちゃって。

「じゃあ、私は?」

 そう聞いたら、彼は顔を真っ赤にして困っちゃった♪


 彼は、ハンク。この町でパン屋をしている。私の幼馴染、じゃないけどそれなりに付き合いのある男の人。
 恥ずかしがり屋なのかな、視線を隠すように前髪を長くしていることが多いし、女の人と話すのが苦手みたい。
 素朴な笑顔が可愛くて、怒鳴ったところは見たことが無い位優しいけど、パンを毎日こねているからああ見えて筋肉がついてる。
 お肉より魚が好きで、苦い野菜が苦手。
 私が話をするときは落ち着いて話せるようにじっとこちらを見てくれていて、困ったことがあったら相談に乗ってくれて。

 だから好きになっちゃったの。
 だから誰にも渡したくないの。
 だから、彼を番(つがい)にするために、いっぱい誘惑する事にしたの♪


 毎日毎日、ちょっとずつ彼と距離を詰める。
 昨日は彼の手を両手でぎゅっと握った。今日は彼の頭に葉っぱがついていると言って体を押し付けた。明日は、うっかりこけそうになった振りをして抱き着いちゃおうか。
 毎日毎日、ああでもないこうでもないと彼を追い詰めるために悩んでる。
 悩む事さえ楽しくて。彼の事だけを考えているのが楽しくて。
 どう食べてあげようか。どう舐めてあげようか。
 彼の事を思うだけで涎が止まらない。
 でもだめ、まだだめ。
 彼の逃げ道を塞いで追い詰めて、絶対ぜったい逃げられないようにして。
 それからぱくっと食べちゃうんだ♪

 あぁ待ち遠しいなぁ。
 いつ気付くのかなぁ。
 もう手遅れだって事。
 他の魔物たちだってもう気づいちゃってるのに。
 私が付けたマーキング♪
 絶対に取れないように念入りに付けた、私のマーキング。

 どんどんエスカレートになるスキンシップ、キスが当たり前になっていく挨拶。
 抱き着いて、頬にキスをして。
 抱き着いて、ちろりと頬を舐めて。
 そうして顔を摺り寄せて、マーキングする。
 ちょっとずつちょっとずつ、彼に魅了のマーキングをする。

 最初の1回くらいは、彼に押し倒されてみたいから♪
 我慢できなくなるまで彼を誘惑してみるの。
 一度味わったらもうぜったいに止まってあげないから。
 でも大大大好きな彼に食べられちゃうのも、いいかなぁって思っちゃったりして。
 尻尾をいやらしく絡ませて。
 組み敷かれて。
 普段のやさしさを投げ捨てたみたいに荒々しく腰を動かす彼に、食べられちゃうの♪

 彼が私をいっぱい食べて落ち着いたら、今度は私がやらしく食べてあげるの♪
 あぁ、あぁ♪
 今日も私は自分の体の感じやすい所を確かめて、彼にどうやってそれとなく誘導してあげるか悩んじゃうの♪

 ねぇ、もう私だけ見ててよ。
 他の女の人を見たら、嫉妬してかぷってしちゃうんだからっ。


 雨が、降ってます。
 今日は濡れて帰るしかないかなぁと思うけど、彼は濡れて帰るのはダメだって言って。
 今晩は彼と私の二人きり。

 だぁいじょうぶ♪
 ちゃんと無防備のまま、ベッドに横になっててあげる♪
 あとは、我慢出来なくなって、そうして。
 食べられちゃうの♪

 息が荒くなってるね♪
 信頼し切って、普段は止めてるボタンも外しちゃって♪
 我慢出来ないよね♪
 私も、我慢出来ないから♪

 早く♪ 私を♪ 食べちゃって♪


 ♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪


 ♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪



「そうして見事、私は彼をげっとしたのです。じゃじゃーん♪」

 たまたま町に訪れた主(あるじ)様に報告すると、主(あるじ)様は分かったような分からない様な顔をしていました。

「何でそう、まどろっこしい方法を取るのだ?」
「だってぇ。犯したいけど、犯されたいからぁ♪ 彼の荒々しい一面も独占したかったからぁ♪」
「なるほどなぁ」

 主(あるじ)様は、やっぱりわかったような分からないような顔をしています。

「わかってくれましたか? 主(あるじ)様♪」
「お前がその人間に心底甘えているのはよぉくわかった」

 あは♪ 彼の肩に尻尾を絡めて、彼に後ろから犯されているからかなぁ♪
 主(あるじ)様は、一言だけ追加されました。

「ところで、何でまた窓を開けて見られるように交尾をしているのだ?」
「だってぇ♪ この方が、彼、乱暴に食べてくれるからぁ♪」
「そーかそーか」

 彼の好みに合うように、上の服は全部脱いで、下はいつもの地味で長いスカートをはいて。
 今日も彼に食べられちゃってます♪

 あぁ、やっぱり一生懸命に私を食べてる彼、かわいいなぁ♪
 もうちょっとだけ、彼に食べられたら、今度はやぁさしく食べちゃおうかなぁ♪





ドラゴニュートさんは乱暴に食べちゃうのも好きだけど、個体によっては乱暴に食べられるのも好きなのかなぁって思うんだ。

だって、一生懸命に腰を振っているのって、すっごく可愛いと思わないかな?(_’

24/01/03 18:26 るーじ

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