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闘争の町マグドラン |
【主な種族:リザードマン、サラマンダー、ドラゴン、他戦いが好きな魔物】
【マグドランという町】 竜車に乗って、はいとーちゃく。 「ふぅ。思ったより距離がありましたね。幌に空いた窓から見る景色も良かったですけど、この町は凄い所ですね」 車を牽いてるのは魔界大蜥蜴だけど、竜車。 昔から竜車っていう乗り物はあったけど、ドラゴン扱いすると怒るドラゴンが多い。 だから竜車を牽いていても、魔界大蜥蜴はドラゴンじゃない。 でも呼び方は竜車。 それはともかく、到着した。 ここはマグドラン。 見ればわかるけど、闘技場が多い。 屋根のある闘技場もあるけど、大体屋根が無い。 理由は簡単。 ドラゴンもそうだけど、空で戦う魔物も多いから。 この町は闘技場が集まってる場所と、戦いに来た人が休む場所に分かれてる。 この町は戦うのが好きな魔物とか、強くなりたい魔物が多い。 あと喧嘩大好きな魔物が多い。 この町を人間一人で来るのはあんまりお勧めしない。 学者さんなら弱そうだから大丈夫だと思うけど、血の気の多い魔物ばっかりだから関係なしで押し倒されるかな。 この町の歴史はすごく簡単。 ドラゴンが強い相手と戦いたくて。 ドラゴンの王様も強い相手と闘いたくて。 いっぱい魔物を集めて、暴れて、城の周りが毎回大変な荒れ具合になったから離れた場所で暴れて。 周りが散らからない様に大きな囲いを作ったら闘技場になった。 闘技場だけだったからみんな疲れたらそこら辺で雑魚寝してたり。 食べ物が無いから近くの町と行ったり来たりしてたから、休む場所が作られた。 ほんとに、それだけ。 「すごい簡単な説明なんですね」 強くなりたい人間や魔物はまずこの町に案内される。 この町は強くなろうとする人にはとてもやさしい。 ずっと竜車に乗っていたら疲れるらしいから、ご飯食べる所に行こう。 【大衆食堂ポトポト】 ここが大人気の食堂。 お肉とか沢山食べれる。 ボリュームたっぷり、安くて美味しい、お任せコースなら体にいいものを選んでくれる。 この町で闘技場に登録してる人は闘技者って言うんだけど、闘技者なら割引がある。 新人の闘技者なら、なんと無料。 店主さんは元闘技者の人で、昔は働いて宿代を稼ぎながら闘技者をしてて大変だったんだって。 それで自分が引退した後は、新人闘技者はとにかく強くなることだけに専念して欲しいってことで無料にした。 あと強い人が大好きで、店主さんと腕相撲で勝てば食べた分は全部半額とか、予選を突破したら3割引きとか。 闘技者の人に一杯ご飯を食べて欲しいからこのお店を開いたって聞いた。 私はあんまり来ちゃいけないけど、今日はちょっとだけにするから大丈夫。 「え? なにをやらかしたんですか」 幾らでも食べていいって言われて食べたら、その日の在庫が無くなった。 「それは、すごいですね」 一杯食べてくれてうれしいけど、他の人にも食べて欲しいからって言われた。 凄く残念だったけど、店主さんはもっともっと残念そうにしてた。 「良い人なんですね」 元々は戦うなんとかって事でずっと戦ってたみたい。 「戦う奴隷だよ」 あ、店主さん。 こんにちは。 「おう! 今日は何を食べるんだ?」 ステーキ3人前。 「それだけでいいのかい?」 他のお店も回るから。 「そうかいそうかい! おし! そいじゃ、テルミんとこの魔界豚ステーキ、特盛3人前だな! 兄さん、あんたは何にするんだ?」 この人、魔界学者の人だから少な目で。 「学者さんか! てこたぁ、案内してるんだな!」 案内してるんだ。 「よぉしわかった! 一般向けで旨い焼き飯作ってやろう!」 「あ、はい。よろしくお願いします」 もぐもぐ。 「美味しいですね。労働者向けに安くて沢山の料理を作ってくれる食堂は色々と知っていますが、ここはその中でもとびきり美味しいです」 この国は戦いと食べ物の国。 美味しい食材はあちこちから集めてる。 だから料理も美味しい。 「料理人の腕も良い、だろ?」 もぐもぐ。 ステーキ1人前お代わり。 「あいよぉ!」 「え、もう食べたんですか!? あの分厚くて大きなステーキ!」 美味しいからすぐ無くなった。 次のステーキ食べたら他のお店回るから、ぱぱっと食べよう。 「は、はぃい!」 ちなみに、戦うなんとかやってた店主さん。 闘技場では凄い有名人。 竜王杯っていう一番大きな大会で何回も優勝してた人。 「そうなんですね!」 それに惚れたドラゴンが求婚したけど、10回優勝するまで待ってくれって。 10回優勝するくらい強かったら、ドラゴンの旦那として申し分ないだろうって。 それで10回目は求婚ドラゴンが決勝の後に出てきて、戦って、旦那さんが勝って、優勝おめでとうと結婚おめでとうを一緒にした。 旦那さんは、本当にめんどい。 すぐ結婚したらよかったのに。 「色々あったのでしょう」 ドラゴンたちの間じゃ、10回優勝って言う前に押し倒したらよかったってずっと噂になってた。 でも、奥さんはその話を聞くたびに、旦那さんを自慢するから、あれはあれでよかったのかな。 【闘技場ギガントスタンプ】 闘技場到着。 学者さん、大丈夫? 「一杯ご飯、食べました。もう入らないです」 人間はみんな小食。 「いや、あれは明らかに量が多いでしょう」 それはおいておくとして。 この国の名物、そしてこの町の一番の特徴。 それが闘技場。 一番小さい所なら家の庭に柵で囲っただけのものだし。 大きいものならすっごく大きくて丈夫。 毎日あちこちで大会があるし、予選もある。 川のある闘技場もあるし、山の急斜面に作った闘技場もある。 色んな闘技場を思いついた先からドンドン作ったら、闘技場だけで町になった。 その中でも一番大きい闘技場が、ここ。 「すごいですね。ハザマの町を出てすぐに見えていた建物ってこれですよね」 むかしむかし、巨人の人たちはすごく大きかった。 その巨人が大暴れしても大丈夫なぐらい大きくて丈夫な闘技場が、ここ。 普段は4つのステージを使って戦うんだけど、大きな大会の本選になると4つのステージを一つにしちゃう。 「豪快ですね」 理由がある。 本選になると、動きが速くなるから狭いステージだと動き辛い。 空を飛ぶ魔物は闘技場の外に出なかったら場外にならないけど、飛べない人は動き回れる広さが大事になる。 あと、魔法とか弓とか使う人は距離が遠い方が戦いやすい。 ラミアとかケンタウロスとかも広い方が戦いやすいし。 グレムリンが用意した大きな機械鎧もあったなぁ。 「何でもありなんですね」 夫婦杯の時は物凄い大変になる。 「ふうふはい」 ドラゴン夫婦とホーネット6姉妹&旦那の戦いは有名。 種族的にドラゴンの方が強いはずなのに、息の合った連携でチクチク攻撃してドラゴンを倒した。 「数が違い過ぎじゃないですか!」 夫婦ならあり。 悔しかったらドラゴンを6人、奥さんにすればいい。 夫婦杯には、そういう強さもある。 他には合コン杯とかある。 「ごうこんはい」 男性だけのチームと女性だけのチームが戦う。 大体6チームずつで、総当たり戦。 6対6の戦いをいっぱいやって、終了。 大会が終わったら、気の合う男女がくっつく。 「どうしてごうこんはい、という名前なんでしょう」 さぁ。 他にもいろいろな大会があちこちでやってる。 決まった大会に出る闘技者もいるし、決まった闘技場だけで戦う闘技者もいる。 みんな自分に合った戦い方で頑張る。 嫁さん旦那さん欲しい人は大体合コン杯に出てる。 闘技場で稼いだお金で宿に泊まったりご飯食べて、そのまま結婚する人もいる。 「そこは魔界らしいですね」 だって魔物だから。 学者さんも一人で食べ歩きしていたら、ぱっくり食べられてたと思う。 ほら、あの串焼き屋台のオークも狙ってる。 「あ、あはは」 この町はご飯を作ったり食べるのも戦い。 宿屋さんで一杯お世話するのも戦い。 気を抜いたら、負け。 町になったばかりの頃は悪さをする人が居たけど、今は全然いない。 悪さをする様な弱い人は、ずっと戦ってきた人に勝てないから。 ぱくっと魔物に食べられる。 「様々な強さを手にした人たちが居るのですね。この町には」 強さを求めた人たちを集めて出来たのがこの町だから。 【ひと時の癒し】 ここは宿屋。 元闘技者の旦那さんとネズミとゴブリンとハーピーの宿。 「ネズミって、ラージマウスですか?」 そう。 元闘技者の人が結婚引退してお店を開くことはそこそこある。 夫婦生活をしたいけど、闘技場も恋しいから町に残る。 そういう人が多いんだって。 ちなみにネズミとゴブリンとハーピーはたまたまこの町に流れてきてタダでご飯を食べてて、旦那さんに出会って色々あって夫婦になったんだって。 「色々が気になりますが。魔界では良くある話ですね」 ハーピーが買い出しとか色々して、スライムは掃除とか洗濯とかして、ネズミは料理作ったり料理配ったりする。 この国はお金以外にも、闘技場コインがあって、闘技場コインがあるとお店を作ってもらったり色々できる。 「この国特有の通貨なんですね」 お金はまた別でもらえる。 闘技場コインを沢山持ってる人は、すごく強い人。 じゃらじゃら鳴らしたらドラゴンがすぐやってくる。 ドラゴンは金銀財宝と強い人が大好きだから、闘技場コイン持っている人は見かけたらすぐ急降下してくるレベルで狙われる。 「うわぁ、凄い町ですね」 国全体でそれ。 闘技者はこの国で優遇される。 でも闘技者だって、ずっと、ずーっと戦ってばかりだと寂しいと思うし、どこかで闘技者を辞める日が来る。 そういう人のために闘技場コインはある。 元闘技者がお店を開いて、これから頑張る闘技者を応援する。 この町はそうやって大きくなってきた。 あ、そうそう。 引退した闘技者が復活するのはありだし、宿屋さんしながらたまに大会に出るのもあり。 どこのお宿でもそうだけど、男の人が一人で宿に泊まるのは、実はよくない。 襲われるから。 「あー、えっと、魔物の人に、ですか」 この宿は夫婦がやってる宿だし、店員さんを雇ってないからまだ大丈夫な方だけど。 宿に泊まるのは男の人だけじゃないから。 闘技者じゃない人の部屋に入って襲うことは少ないけど、これから二人で一緒に強くなろうよって人もいるから安心しちゃダメ。 魔物は魔物だから。 前に、夜中に部屋を出たら魔物に部屋に引きずり込まれたって人が居て。 理由が、一目惚れしちゃったんだって。 学者さんもこの辺りじゃ見かけないタイプだから、案外あっさり一目惚れされるかもしれない。 「あはは。結婚生活は夢見ていますけど、まだまだ魔界の事を研究したいので遠慮したいですね」 そうなんだ。 じゃあ、これ。 独身希望って言う札。 これがあると、ある程度は配慮してくれる。 「ある程度、なんですね」 ちなみに。 結婚生活悪くない、みたいなこと言ってた時、他の部屋にいる魔物が何人か反応してた。 「え」 悪くない、って言ったら話の続きをする前に押し倒されて、そのまま夫婦になるとか。 魔界では良くある話。 今後も魔界研究を続けたいなら、言葉には注意する事。 いい? 「はい」 それじゃ、また明日。 |