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023.ワンちゃんじゃない

ディリアとカナシャの3人で、町に出てみた。
隊長さんはサーシャと一緒に難しいお話し中。
外交とか警備とかよくわからない。
私たちは暗くて熱っぽい町を歩いてる。
町を歩いている人より、街角でえっちをしている人のほうが多い。
でも、たまにワーウルフが歩いてる。

「ワン公の警備か」
カナシャはワーウルフはあんまり好きじゃないみたい?
「いや、さぁ。全然当たらんし。殴っても蹴ってもさ」
「ワーウルフは特別速いというわけでもないはずよ。格闘術に長けた魔物や、俊敏さがウリの魔物がいるけれど、ワーウルフはそうでもないのだから」
噛んで仲間を増やす、群れの魔物。
ラージマウスみたいに噛んで仲間が増える。
「噛んで増えるなら楽なもんだよなぁ」
「ドラゴンの数の少なさからすれば羨ましい限りね」
「あれだろ。弱っちいから群れるために増えやすくなってるんじゃないのか?」
カナシャもディリアも、ワーウルフにはあまりいい印象は無さそう。

「なんだ。お前はワーウルフが好きなのか?」
格闘の先生がワーウルフ。
「そうなのか。強いんだな」
「いや、あれは別の魔物だったはずよ? そもそも、翼と尻尾のあるワーウルフって、もうワーウルフじゃないでしょ」
すごいワーウルフ。
「すげえな、そいつ」
「ああもう。貴女達は」
ディリアが何だかお疲れ。
なんか食べる?
「呆れてるだけよ。それと、食べるより飲みたいわね」
「お、いいね! 何飲む?」
リューマカイモのお酒?」
「却下で」
「えー。あれ美味いのに」
火がつくあるこぉる度数。


「お代わり!」
「同じものを私にも」
おーかーわーりー。
陶器の固いジョッキで木製のテーブルを叩く。
呼び鈴代わりに机を叩こう。
カナシャも尻尾で床を叩いて催促してる。

「あんたたち。他の人に迷惑だからやめなさい」
あ、ワーウルフっぽい人発見。
「っぽいってなによ。ぽいって」
「なんだぁ? エルフみたいなワーウルフだな。なりそこないか?」
「なんですってぇ!?」
ワーウルフっぽい人が弓を構えた。
カナシャにドロドロな矢が当たった。
「なんだこりゃ? 痛くねぇぞ」
でも熱くなる。
「確かに熱いけど。これがどうしたんだ?」
「ふん。ドラゴンは鈍感ね。でも、もう2,3本増やせばどうかしら?」
「へぇ、やるってのか」
おさけー。
おーかーわーりー。

あと、二人とも。
「なんだ?」
「なに?」
喧嘩したら、放り投げるから。
「……ちぇ」
「放り投げるって、なにそれ」
「ちなみに、この子は本来の姿をしたドラゴンを雲の高さまで投げたりするわよ」
「……マジで?」
「ええ、マジで」
お酒飲もう、お酒。

ワーウルフっぽい人は、後から来た蛇っぽい人と一緒にお酒を飲み始めた。
ワーウルフっぽい人は、えーっと。
「プリメーラよ!」
うん、ぷり……?
「プ、リ、メー、ラ!」
プリメーラ。
うん、きっと覚えた。
「きっとじゃなくて、ちゃんと覚えなさい!」
プリメーラが怒った。
おなかすいた?
「ああ、もう」
「あっはっは。中々に個性的だな、竜王ってのは」
えっへん。

蛇っぽい人はメルセ。
エキドナみたい?
昔は大げんかもできたみたいだけど、今はどうなんだろう。
「今でも斧槍片手に暴れたりはするよ。この国を守るためにな」
メルセが持っていた棒が変化して、武器に変わった。
ポールウェポン。
槍に斧が引っ付いたみたいな武器。
「へぇ。つええのか、あんた」
「強さを誇るのは引退したよ。ただ、愛する『あいつ』を守るために、武器を振るうだけさ」
「つまり強いんだな」
「なんていうか。ドラゴンってこんなのが多いのか?」
メルセがディリアを見ると、ディリアが肩をすくめた。

「ドラゴンは強さ第一主義が多いから」
強ければよいのだー。
「この子が竜王に持ち上げられたって所から察してほしいわ」
「ふーん。この子がおーさま、ねぇ」
「こいつが一番強いからなぁ」
私より強いのがいたらすぐ代わる。
ということで、カナシャもディリアもガンバ。
「へーへー」
「努力はするわ」
二人ともやる気はないけど、断らない。
プリメーラとメルセは不思議そうにしてる。

「他に変わろうとするドラゴンは居ないの?」
「野良ドラゴンの中にはいるかも知れないわね」
「けどなぁ。巣にやってきたドラゴン連中は、ありゃ駄目だ」
ディリアもカナシャも、巣のドラゴンには辛口。
私もあんまり会ってないからわかんない。
「なんでよ。王様でしょ?」
うなずく。
「だったら王様らしく、あれこれ言ったらいいじゃない」
めんどい。
「やる気ないわねぇ」
だって。
押し付けられただけだから。

あの時。
ドラゴンの大きな巣が襲われたって聞いて、駆けつけた。
いっぱい襲ってきたから、叩きのめした。
そしたら、王様にさせられた。
やりたくもないのに。
「あー、なんていうのかしら」
「ドラゴンの国のことだからあたしらには何とも言えないけどなぁ」
プリメーラとメルセが変な顔をした。


お酒を飲みながら、プリメーラとメルセが話してくれた。
二人は魔物になる前は、立場や種族に縛られてやりたいことが出来なかったって。
ここの女王様も、王様っぽい男の人の周りにいる人たちはみんな、似たような苦しさを味わっていたんだって。
あのえっちだけ大好きみたいな女の子も、そうだったみたい。
でも。
「ん、どうかしたの?」
えっちが好きなのはいいんだけど。

ご飯を食べないとおっきくなれないから、ちゃんとご飯は食べないといけない。

「ぷっ、あはははははは!」
「そりゃそうだな! つっても、魔物にとっちゃその『えっち』が食事なんだけどなぁ」
むー?
「ドラゴンにはピンと来ないか」
「あんた、そういう相手いないの?」
むー。
むー。
……。
むー?

「ああ、この子はとりあえず置いといて、会計済ませましょ」
「えっと。どうしちゃったの?」
「こいつは、まだ自分の気持ちに気づいてないらしいんだよなぁ」
「ほんと。困った幼馴染ね」
「あっはっは。あたしらは自分の気持ちに気づいたり素直になったのは魔物になったおかげだから、あんまり笑えないなぁ」
「笑ってるじゃない、貴女」


えっちしたい相手。
えっちしたい相手?
むー。
いるのかなぁ。
むー。
むむむー。

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15/04/06 22:39 るーじ

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