デュラハンという魔物は、高い魔力と戦闘力を持つ魔界の精鋭。
　たった一人で一国の騎士団を切り伏せる連中が集まる騎士団なんてものは、勇者か英雄クラスでも無い限り全滅必至だ。
　弱点といえば、首が外れる事くらいだ。
　首が外れると快楽とか本心に素直になってしまう彼女達。
　ある魔界のあるデュラハン。
　彼女は今とてもとても困った事になっている。
「あの。この首輪、何とかなら無いのか。」
「あははー、無理無理ー。バフォ様の呪い付だから一ヶ月は外れないよ。」
「な、い、い、いいい一ヶ月ぅ！？」
　アンダンテは悲鳴を上げた。
「外せ、今すぐ外せ、外せ外せ外せ！」
「ちょ、ま、は、ちょ！」
「外してってお願いだから外して外して！」
「落ち着け、アンダンテ！」
　慌てて止めに入るデュラハンの騎士団長。
　紺色のショートヘアが視界に入り、少しだけアンダンテが落ち着きを取り戻す。
「団長。どうしてここへ。」
「お前が新しい首外れ防止に取り組んでいると聞いて、急いで駆けつけた。それより、あまり揺さぶると危ないぞ。」
「え？　……あ。」
　動揺して魔女の肩を掴んで揺さぶっていた事に気づいた。
　デュラハンの筋力で拘束にシェイクされた魔女は、目を回して泡吹いていた。

　今日の訓練は休んでいい。
　団長にそう言われ、自室で待機するアンダンテ。
　理由はわかっている。
　先ほどから気になって仕方の無い首輪の事だ。
　黒い皮製のベルトに金属製の錠前がついた首輪。
　どういう原理なのかはわからないが、これで首が外れるのを防いでいるらしい。
　ついでに前回の失敗を糧に、若干の隙間を確保しているという。
　但し、これは魔女が「お兄ちゃん」につけるために作った奴隷の首輪を改造した物で、強い好意を持っている相手にはなんたらかんたら。
「くぅ。もう少しよく話を聞くんだった。」
　気が動転して魔女をシェイクしてしまった為、あまり話が聞けなかった。
「というか呪いとか言っていたな、あいつ。」
　まさかこのまま幼女体型になるんじゃ無いだろうか。
　背筋に走る戦慄。
「ありえる。このまま魔物の幼女化を促進してゆくゆくはバフォメットの支配下に魔界を置くつもりか！？」
「んなわけ無いだろうが。考えすぎだろ。」
「甘い、甘いぞハンデル。あいつらには気を許してはいけないんだ！」
「そういうもんか。」
「ああそういう、……？」

　自分の独り言に誰かが反応した気がして、彼女は恐る恐る部屋の一角を見やる。
「何やってんだ、お前。」
　そこには彼女が大好きで大好きで仕方の無い若い兵士が居た。
　今は鎧兜を身につけていなくて、さっぱりとした短い髪もすらりと細身で引き締まった体のラインも良く見える。
　彼が彼女のベッドの上に腰掛けて不思議そうな顔をしている、という所まで確認して彼女は思考停止する。
「おい、だいじょぶかて何だなんだ！？」
　超高速の小刻み歩きで接近してきた彼女に思わず後ずさりして、そのままベッドに押し倒される。
　赤いものを見たミノタウルスかお前。
　ハンデルの心境はそんな風だった。
「なななななんでハンデルがここにいるんだ！？」
「なんでって。団長さんからお前の事診ててくれって言われてさ。」
　少し子供っぽい顔だちに照れくささが混じる。
　仏頂面の彼が時折見せるこういった表情に彼女は弱い。
「一体何が、むぅぅう！？」
　問いかける言葉が途中で飲み込まれる。
　首に手を回して熱烈なキス。
　彼の足に跨り腰を擦りつけながら、彼の胸板にボリュームのある胸を押し付けながら、彼の唾液を残らず飲み干す勢いで舌を割り込ませ口の中を蹂躙する。
　彼女がここまで乱れるのは、ハンデルにとっては３度目だ。
　１度目は様子のおかしい彼女に告白をされた時。
　２度目は体を重ねるようになってから。
　少し激しく動きすぎて、つい彼女の頭が取れてしまったのだ。
　だが３度目の今回は頭が外れていないのにこの乱れよう。
　彼の太ももは彼女から溢れる蜜で既に濡れていて、胸には固くしこった乳首がコリコリと当たっている。
「ぷはぁ、ん、ちょ、待った、待てって！」
　何とか手で押しやって彼女のキスを中断する。
　やっと会話が出来る、と思った彼は彼女の顔を見てぎょっとする。
「どうして。私とキスするの、嫌なのか？」
　拒絶されたと誤解したアンダンテが大粒の涙を目に溢れさせている。
　慌てて両手を振って否定する。
「違う違う。まずは話をしようってんだ。」
「その前に、ハンデルと一つになりたい。」
　言ってまた唇を重ねてくる。
　今は何を言っても話が進まないか。
　腹を括った彼は、愛する彼女の不安を取り除こうと衣服を脱がせていった。


「……すまない。」
「気にするなって。俺もさ、よかったんだし。」
「すまない！」
　もう一度勢い良く頭を下げる。
　気が動転して以降は、まるで首が外れたかのように歯止めが利かなかった。
　まるで首が外れたまま首輪の上に乗っかっているだけのようだった。
　都合３回交わってやっと彼女から解放されたハンデルは、魔界特製の精力剤を飲んで一息入れている。
「やっぱり原因はその首輪か。」
「ああ。詳しい理屈は判らないが、失敗作らしいんだ。」
「大変だよな。首が外れるなんていう弱点があるってのも。」
「魔王の代替わり前の首無し騎士は首が無いのが基本だったらしいんだ。」
　首が無いデュラハンに首がつく様になった。
　弱点になっているというのもそのあたりに理由があるんじゃないか、というのが魔女達の結論なんだとか。
「でもさ。ちょっと強引過ぎる所はあったけど、首なんて外れても良いだろ？」
「よくない！　だって、その。訓練に身が入らないだろう！？」
「落ち着け落ち着けって。」
　また押し倒されるかという勢いに、ハンデルが手で制する。
「でも、ああいうアーちゃんも可愛くて好きだな。」
「っっっっっっ！！」
　火がつくほど顔を真っ赤にさせた彼女は、顔を彼の胸板に押し付けて抱きつく。
　赤くなった顔を隠したいのだろう。
　なんとなくハンデルは、ウルフ系だったら尻尾振ってるんじゃないかなとか思った。
「駄目だ！　それでは私は恥ずかしさのあまり剣を振ることさえ出来なくなるじゃないか！」
「そうなのか？」
「そうだ！　第一我々騎士団は栄えある魔界の精鋭なんだ！　清く正しく勇ましい騎士なんだ！」
「淫乱で乱れ捲くってる魔王を基準にしたら、むしろ正しいんじゃ？」
「私が恥ずかしすぎて死んでしまうんだ！」
「……把握。」
　ポンポンと子供をあやすように背中を撫でると、抱きつく力が少しだけ緩まった。

　彼なりに現状を整理してみた。
　結論。首輪から本音が溢れまくっているという事だ。
　けど魔力は溢れていない。
　その証拠に彼女は恥ずかしがったり思った事を素直に口にするけど、精を補給しようとはしていない。
　たぶん失敗作というのも、魔力の問題は解決したけど本音が出て行く、いわゆる精神的な部分は解決できなかったという意味なのだろう。
　それを彼女に話すとなんとも複雑な表情になった。
「機能としては問題ないのかもしれない。だが、これはその、やはり、あああああ、どうしよう、これがあと１月も続くなんて！」
「恥ずかしくて死んでしまうってか？」
「そうなんだよ！　あああ、どうしよう、どうしよう！」
　本音だだ漏れアンダンテはどこにでも居るような少しそそっかしい女の子に見える。
　普段の凛々しくて頼もしい彼女ではない。
　慌てふためく彼女をハンデルは優しく抱きしめる。
「暫くは休んでていいって言われているんだろ。ゆっくり休んだらどうだ。」
「で、でも。」
「一緒にいたくないってのなら仕方ないけどさ。」
　少しだけ意地悪をしてみたくなって、彼女の肩を少しだけ押しやる。
　反応は劇的だった。
「やだっ！　一緒にいたい！」
　押した倍ほどの勢いで抱きついてくる。
　絶対に離れるものかと抱きつく力に思いが込められている。
「別にいいんじゃないか。いつも何考えているんだかわからないすまし顔よりも可愛くて好きだな。」
「え、そ、そうか、……、……あれ、じゃあ普段の私はすまし顔で可愛くないのか？」
「おいおいそうくるか。」
「だってそうじゃないか！　今日のハンデルは凄く優しいのは、普段と違うからだろう？　という事は普段の私は、あんまり好きじゃないって事だろう！？」
「落ち着けって、いいから落ち着け。」
「ああああ、どうしよう！　首を外してないと嫌われるのか？　好きって言ってくれないのか？　かわいいって言ってくれないのか！？」
　もう一つ要素を追加しよう、と彼は思った。
　今の彼女はとても情緒不安定だ。
　１ヶ月もの間本音が漏れていくことが原因か、首輪が原因かは知らないが。
　どうするかな。
　そう彼は心の中で思った。
　

　首輪のついたデュラハンが嘆いている間も首無し騎士団の訓練は続く。
　今日の訓練は普段はあまり城には寄り付かないミノタウルスの戦士団との合同訓練を行っている。
「うぉおおおおお！！」
「はぁっ、甘い！」
　その腕力は魔物随一。
　半端な防具など必要としない筋肉の鎧が唸り声に比例して盛り上がる。
　岩も壁も関係無しに叩き割る戦斧の一撃を分厚い両刃剣が受け止める。
　剣も盾も断ち切る必殺の威力を誇る戦斧だが、魔力の紫光に包まれた剣は傷一つつかない。
　高い魔力と卓越した剣技。
　魔・技・体の３つを兼ね備えた騎士は一歩も引かず、むしろ戦斧の猛攻を押し返していく。
「おおおおおお！！」
「やれ、やれぇ！」
「団長！」
「猪武者なんかに負けないで下さい！」
「ひょろい首無しなんて蹴散らしちまえ、姉御！」
　双方から野次も応援も交じり合った声援が飛び交う。
　毎回恒例の、団長同士の真剣勝負。
　防ぎ、返し、切り崩し。
　血の匂いのしない戦場に金属の悲鳴が響く。
　既に数百合。
　互いに引かず、攻め切れず。
　瞬きの隙さえ許されない拮抗状態が生まれている。
「ちぃ！」
　魔力の篭った剣の一突き。
　倒した首が皮一枚引き裂かれる。
「くっ！」
　魔力の光さえ弾ける斧の一撃。
　衝撃を殺しきれずに受けた腕が痺れる。
「はぁあああっ！！」
「おぉおおおお！！」
　気合一閃。
　双方の全力攻撃がぶつかり合い、衝撃で破裂した空気が爆音を鳴らす。
　鼓膜を破らんばかりの音。
　破壊の轟音。
「オラオラオラオララ！！」
「ぁああああああああ！！」
　されど両者は止まらず。
　半秒の暇さえ許さない猛攻に次ぐ猛攻。
　その音は既に戦闘ではなく戦争。
　個人の規模を超えた絶大な威力が音となり空気を振るわせる。
　耳朶を揺らす空気の揺れ。
　雷鳴にも似た衝撃は、聞く者に畏怖の感情を抱かせる。

　並のミノタウルスでは持ち上げる事さえも困難な巨大な戦斧を片腕で振り回す。
　魔物の中にあってさえ凶悪過ぎる腕力の持ち主は、戦いの高揚に獰猛な笑みを浮かべる。
　払えば城壁を砕き、握れば鎧も兜も紙くず同然にひしゃげる。
　強すぎる彼女が最初に出会ったこの好敵手との戦いが彼女の最大の娯楽。
「ははっ、楽しいねぇ！」
　剣ごと鎧ごと地面ごと。
　全てを叩き砕こうと戦斧を振り下ろす。
「はぁあああ！！」
　その力任せの一撃を、愚直に受け止める魔界の騎士。
　同族の中ではやや背丈の低い彼女は、しかし潰される事なく戦斧を受け止める。
　彼女もまた魔物の中にあってなお高すぎる魔力の持ち主だ。
　単純な魔力で言えばサキュバスに匹敵するほどの魔力。
　不断の努力と絶大なる魔力が合わされば並ぶ者無し。
　ひときわ強く輝く紫光が圧力を持つ。
「はぁっ！！」
　魔力の紫光を衝撃波に変え、払う剣に乗せる。
「くっ！！」
　彼女の身の丈ほどはある戦斧をその持ち主ごと吹き飛ばす。
　牛角の戦士は敢えて逆らわず、押される勢いに乗り跳び下がる。
　両者の間合いが開き、シンと静まり返る。
　音が消える。
　息さえ止まる沈黙。
　激しい鼓動だけが耳に煩い。
　体に篭る熱が、躍動する肉体が、沸騰し白熱する意識が。
　ただ戦いを欲する。
　合図はなく。
　両者は同時に地面を駆ける。

「はーい、すとっぷ〜。」
「くっ！？」
「ちぃっ！！」
　暢気でノンビリとした、しかし不思議と耳に残る声が響く。
　同時に地面から巨大な茨が何本も突き出て、両者の間に緑色の柵を作り出す。
　土煙立ちこめる中、ふわりと茨の柵の上に降り立つ女性が居た。
「あ？　なに勝手に邪魔しやがんだ！」
　怒りそのままに茨の柵を戦斧が切り払う。
　ふわりと浮いた彼女は蝙蝠に似た羽根を広げて地面に降り立つ。
　彼女は何も武器を持ってない。
　身につけているのは寝巻きとしても薄すぎる、扇情的なピンクのシルクローブ。
「また貴女ですか。お戯れで訓練の邪魔をしないで頂きたい。」
　言葉は大人しい物の、デュラハンは言葉に刃物の鋭さを乗せて現れた女性を睨む。
　反対側のミノタウルスにいたっては今すぐにでも切り殺さんばかりに歯を食い締め、突撃する闘牛さながらに頭を低くし地面を何度も後ろへ蹴り飛ばしている。
「シリアスはご法度なのよ〜。」
　両者の怒りを感じていないのか。
　彼女は二人の頓着せずふわりと笑う。
「これ以上はさすがに怪我じゃ済まないでしょう〜。」
「死ぬのが怖くて戦えるかよ！」
　そうだそうだと彼女の部下達も吼える。
　戦士団全員を含んだ大乱闘に発展してもおかしくないほど、場の空気は沸き立っていく。
「駄目よ〜、だめだめよ〜。」
「はっ、邪魔するってんならあんたから先に叩き潰してやる！」
　楽しい時間を邪魔された怒りか、或いは赤系統の服に反応したか。
　相手がサキュバスである事さえ忘れて、ミノタウルスが巨斧を振り下ろす。
「アンテシールド。」
　子供の駄々を相手にするように彼女が手を動かす。
　斧を受け止めるように顔の前に掲げられた手のすぐ傍に１ｍほどの桃光を放つ魔方陣が生み出される。
　轟音、巨斧が魔方陣にぶつかり、堅い衝撃音を響かせる。
「なっ、オレの一撃を止めただと？」
「あの子にできる事が私に出来ないと、思ったのかしら〜？」
　凄まず、奢らず。
　桃髪のサキュバスは微笑んだまま魔方陣に魔力を流す。
　目を焼くほどの光が魔方陣から生まれ、直後、爆発音を伴って魔力が放たれる。
「ぐぁあああああ！！」
　大きく吹き飛ばされるミノタウルス。
　背中から地面に倒れ、体を震わせる。
「あ、あねごぉ！」
「ちくしょう、やりやがったな！」
　頭に血が上れば止まらない。
　適う適わないも頭になく、曲角戦士団は一斉に襲い掛かる。
「あらら〜、大漁ね〜。」
「ぐっ、な！？」
「ばかな、地面が光ってやがる！？」
「う、動けない！！」
　巨大な桃光の魔方陣に捕らえられたミノタウルスたちが力を振り絞るが、ゆび一本動かせない。
「はいっ、ふぁいあ〜☆」
「ぐあああああ！」
「な、なんだこれは！」
　魔方陣の光が強さを増し、彼女達を飲み込む。

「ん、んあああ、い、いっちゃう、いっちゃううう！！」
「やぁ、舐めないで、きゃうううんっ！！」
　デュラハンの騎士団長は頭を抱えた。
　彼女の心境を一言で表すならば。
　どうしてこうなった。
「やぁっ！　つの、つのが感じちゃうう！！」
「みんな、きす、きすして、はぁううんんっ！！」
　恨みがましく彼女は事の張本人であるサキュバスを睨みつける。
「淫楽の魔方陣なんて使って。どう収拾をつけるおつもりですか。」
「あらやだ。貴女レジストしたの？　無粋ね〜。」
「貴女の魔力をまともに受けては話も出来ないですからね。」
　ちらりと彼女は、着る服もまばらなデュラハンたちを見やる。
　比較的魔力の高いデュラハンでさえ首が外れていない状態で発情させる魔力。
　デュラハンが魔力の高い種族だとしても、サキュバスのそれは桁が違う。
「全く。我々が魔物で無ければ、サキュバスが生まれてもおかしく無いほどの魔力でしょう。」
　そのサキュバスの膨大な魔力を直接放ち注ぎこむ淫楽の魔方陣。
　サキュバスの魔力はそれそのものが相手を魅了する効果を持つ。
　魅了し誘惑するサキュバスの真骨頂。
　とはいえ、サキュバスなら誰でもこれほどの強い力を持っているわけでもない。
「ウチのお姫様程じゃなくても、私だって争いごとは嫌いなのよ〜。」
「確かに少々熱が入りすぎていた事は認めますが。であれば、戦闘後に治療していただければよろしいでしょう。」
「面倒なのよね〜。」
　はぁ。
　思い切りため息をつくと、団長は背を向ける。
「あらどこへ行くのかしら〜？」
「今日はさすがに訓練になりませんから、部屋に帰ります。」
「そして旦那様と激しいＳＥＸをするのね〜？」
「……ええ。」
　僅かに羞恥を混ぜながらも、笑みを浮かべて頷く。
　再び歩き出す彼女を見送りながら、サキュバスは笑う。

「みんながこうやって楽しく幸せになることが、私たちの役目なのよね〜。」

　そうして彼女は「首輪に細工を施した」デュラハンがどうなったかを観察するため。
　ばさりと翼を広げて飛んで行った。


　



　



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「あれ、今日の訓練はどうしたんですか？」
「またあの方が現れて、つぶれてしまったよ。」
「そうなんですか。あ、お茶入りましたよ。」
「助かる。」
「それじゃあ今日は一日、ずっと一緒に居られるんですね。」
「ああ。」
「ふふっ、せっかくですから、おいしいケーキを焼きますね！」
「とびきり甘い物を作ってくれ。」
「うん、わかりました！　……あれ？」
「その前に。もっと甘い物が食べたい。」
「え、えっとー。はい、わかりました。」
「私にとっては君が一番の大好物なんだ。ぜひ味あわせてくれ。」
「はい。僕も、大好物ですよ。」