魔物娘の日々の1ページ

・アルラウネとバードウォッチャー
「今日も鳥を見に来たの?」
「ああ。ほら、見てみろ。あの木にツグミが止まってるぞ」
「え、どこどこ?」
「ほら、ここだよ」
「あ〜、ほんとだ。そーがんきょうってすごいね〜」
「そうだろ。だからもう一つ持って来てるから、それでみとけって」
「でも、一つで十分だよ〜。ほら、レンズが二つあるから、こうすれば〜」
「……見づらい。あ〜〜〜、わかったから蔓を絡めるなって!」


・スライムと下宿生
「こんにちわ〜」
「どわぁ! 蛇口から出てくるんじゃねえって!」
「ごはんちょーだい」
「飯なら栄養飲料渡したから飲めっていっただろ」
「やだー。一緒に飲みたい〜」
「はいはい」
「好きだからー、ご飯も一緒〜」
「〜〜〜、はいはい」


・レッドスライムと同級生
「あれ、まだ絵を描いてるの?」
「そうなんだよ。コンクールの題材が全然決まらなくってさ」
「たしか、人物絵だったよね」
「そうなんだけど。風景画しか描いてないからさぁ」
「あれ。でも、私の絵はよく描いてるよね。なんでダメなの?」
「……他の人に見せたくないから」
「え、え〜〜〜、あ、うん。それじゃ、えっと、しかたないよね」
「うん、しかた、ないんだ」


・ゴーレムと教授
「機材お持ちしました」
「助かる。そこへ置いておいてくれ」
「かしこまりました。他に何を致しましょうか」
「隣に座っていてくれ」
「わかりました。何を致しましょうか」
「……座っていてくれ」
「わかりました。でも、何かをしたいのです」
「傍に居てくれるだけでいい」
「……はい。教授」
「……あまり照れることを言わせないでくれ」


・ジャイアントアントと従兄
「にーちゃんにーちゃん。あそぼ!」
「今勉強中だから後にしろ」
「やーだー。にーちゃん、あそぼ!」
「こら、持ち上げるな! 運ぶな!」
「あそぼ! あーそーぼー!」
「他の魔物娘と遊んで来い!」
「やだ! にーちゃんがいい!」
「なんでだ!」
「大好きだから!」
「俺もだ! だから養えるようにするためにも、今は勉強に集中させてくれ!」


・ラミアと園児
「子供ってかわいいのよねー」
「ねー」
「無邪気でさ。蛇の体を見ても怖がらないし」
「うねうねー」
「やわっこいし」
「ふにふにー」
「きいてる?」
「だーいすき」
「はいはい。大人になったらまた言ってよね」
「うん。ずっとだーいすき!」


・ハーピーと飼育員
「こんにちわー。今日も遊びに来たよー」
「おう。お前が来ると鳥たちもおとなしくなるから助かるよ」
「えへへ〜。ほら、貴方たちもしっかり働くんだよっ」
「魔物娘ってのもすごいもんだな。動物とも話せるんだからなぁ。俺らより向いているんじゃないか?」
「え〜。でもさ。番になってほしいって言われたり大変なんだよ」
「あー。そりゃ確かに、大変だな」
「私ね、愛妻弁当を持って旦那さんの仕事場に行くの、あこがれてるんだー」
「そっか。その夢、適うといいな」
「うんっ。じゃあ、協力してよね?」
「そりゃまたどういう……ん、この包みは?」
「えっへへー。愛妻弁当!」
「おう。うまそうだな。こりゃ、未来の旦那さんも喜ぶぞー」


・ブラックハーピーと新聞配達
「今日も配達? 朝から元気だねぇ」
「生活費のためだからな」
「ねぇ、デートしようよ」
「断る」
「えー。ちょっとくらいいいでしょ?」
「デートなら毎朝やってるだろ。こんな風に」
「……そ、そういうのじゃ、なくってさ!」
「俺と一緒に朝飛ぶの嫌なのか?」
「いやじゃ、ないけど。〜〜〜〜ばかっ!」


・デビルバグと家出少年
「今日も路地裏のゴミ箱相手に残飯漁り?」
「そうだよ。悪いか」
「別にー。あ、それ腐ってるから君じゃ無理」
「ちっ」
「そっちもダメ。これ食べなって」
「うっせぇな。なんだって俺に構うんだよ」
「私らの縄張りに顔突っ込むと、群れに襲われて大変なことになるよ?」
「知ったことかよ」
「そうなんだ。じゃあ、えーい」
「わっ! なにしやがる!」
「おねーさんが大変なことがどんなことか。体で教えてあげる!」
「服脱ぐなって! こら、脱がすなって! せめて、一目の付かないところにしてくれぇ!」


・メドゥーサとあやとり少年
「これをこうして、どう?」
「はい。こうやってこう」
「はやっ! なんで指が10本しかないのにそんなに器用なのよ」
「いや、髪の蛇を使おうとする方が難しいでしょ」
「む〜〜〜。なんであんたは怖がらないのよ。私、メドゥーサよ? 私の髪蛇とか目とか、怖くないの?」
「ぜんぜん。はい、とって」
「こう?」
「じゃ、こう」
「う〜〜。うまく取れない」
「はぁ。せっかく赤い糸を使っているんだからちゃんとやってよね」
「わかったわよ。でも、なんで色が関係するのよ」
「……内緒」


・ハニービーと養蜂業者
「とってきたよー」
「おう。ついでに蜂達も連れてきてくれたか」
「うん。いっぱい呼んできたよ」
「ここいらの花の蜜は美味いからなぁ。今回もいい蜂蜜ができそうだ」
「蜂蜜につけた物もおいしいよね?」
「そうそう。蜂蜜の桃漬けも逸品だよなぁ」
「うんうん。ということで、私の桃もたっぷり漬かっているから、いつでもたべていいよ〜」
「はいはい。また今度な」
「ぷ〜〜〜。ほら、やわらかそうでしょ? おいしそうでしょ?」
「わかったから抱き着くな! 蜂蜜がつく! ああもう、べたべたひっつくのはお前さんだけいいんだよ、ったく」


・ピクシーと虫とり少年
「ほらほら、そっちに逃げたよ!」
「待て待て〜!」
「ってこら! また私を捕まえて!」
「あははは、ごめんごめん」
「まったく。これで一体何匹のセミを逃したっていうのよ」
「気にしなくてもいいって」
「ちょっと。私を籠に入れる気?」
「えー、だってさ。ほしいものを捕まえて入れるのが虫取りだろ?」
「あんたってさ、コレクター?」
「ううん。未来の旦那さん!」


・リザードマンと剣道部
「今日も朝練か」
「ああ。訓練は嘘をつかないからな」
「ああ、そうだな。繰り返せば実るものだからな! 恋愛の様に!」
「恋愛はわからんが、そうだな」
「骨身になるぞ、ずっといっしょになるのだぞ。恋愛に様に!」
「訓練、続けていいか?」
「そうだな。好きだから、一緒にやろう! 好きだからな!」
「……いいから黙って手を動かせって」


・ガーゴイルと警備員
「今日も夜勤お疲れさん」
「ふぁ。ほんと、疲れるなぁ、夜の警備って」
「退屈だよねー。暗い廊下をただ歩くだけってさ」
「お前さんは日が昇る間はずっと寝ているんだろうけど、俺ら人間はそうもいかないからなぁ」
「んぐんぐ、っくん。人間ってめんどうだねぇ」
「そうだなぁ。生活リズムが他の連中と合わないから嫁さがしもできん」
「あ、そうだ。あたし立候補するよ! お嫁さん」
「やめとけって。俺みたいなおっさんじゃなくて、他の若い警備員にしとけ」
「料理も作るよ! 作り方知らないけどさ!」
「警備は静かにやろうぜ、嬢ちゃん」


・エキドナと保父
「今日もみなさん、気持ちよさそうに寝ていますねぇ」
「そうですねぇ」
「私、この保育園に来ることができて良かったと思っています」
「私も大変助かっています」
「子供がずっと好きだったのですけれど、この蛇の体を怖がられると思ってずっと、お外に出ることもできなくて」
「良かったじゃないですか、外に出られて」
「ええ。あなたに会えましたしね」
「……えっと、その?」
「そろそろみんなが起きる時間ですね。準備をしてきます」
「……告白は、まだ早いですよね、さすがに」


・ゾンビと引きこもり
「ごはんー」
「……そう」
「おなかすいたー?」
「……そう」
「おそときらいー?」
「……そう」
「ごはんたべたー?」
「……そう」
「あのねー」
「……そう」
「だいすきー」
「……、……そう、なんだ」


・ゆきおんなと除雪作業員
「今日もいい天気ですね。ほら、雪に日の光が反射して綺麗ですよ」
「いや仕事してくれ」
「見てください。あれ、カラスですよ。寒い中、カラスも大変ですね」
「早く仕事をしてくれ」
「ゆきって一つ一つは小さくて堅そうな結晶ですけど、集まるとこんなにもふわふわになるんですよ」
「仕事をしてくれって」
「……だって、せっかく新しいお洋服を着たのに、何も言ってくれないんですもの」
「俺は美味いものは後で食う主義なんだよ。あとはわかってくれ、というかわかれ!」


・コカトリスと警察官
「好き〜〜〜!」
「ちょ、なに口走りながら逃げてるんだ! 待て!」
「やだ〜〜〜〜! 好き〜〜〜!」
「黙れといっている! おまえの被害者を減らすためにも捕まえてやる!」
「あなたが好き〜〜〜〜〜!」
「お、おれもだ! だから待て!」


・インプとプログラマー
「あはは、このゲーム面白ーい」
「そうか? 単純なアルゴリズムでできてるから、すぐに作れるぞ」
「ほんと!? 作って作って!」
「はいはい。前に作ったゲームがあるからそれでもやってろ」
「ありがとっ! これが終わったら、他にもあるの?」
「幾らでも作ってやるからおとなしく遊んでろって」
「やったー、だいすき!」
「やれやれ。こんな子供に好かれてもなぁ」

・ワーウルフと高校生
「おーい」
「なんだ」
「字の練習したんだ。みてくれ〜」
「ああ。なになに……読めと?」
「(わくわく、わくわく)」
「……『だいすき、けっこんしよう』」
「うまくかけた〜!(しっぽぶんぶん)」
「(こいつ、天然か? 天然なのかぁ!?)」


・ワーバットと同居人
「ふふふ。夜這いだ、夜這いだ!」
「うるさいぞ」
「きゃっ! で、でんきつけないでよ」
「寝込みを襲われたら適わないからな」
「わかったから。でんき、けしてよぉ」
「はいはい」
「かかったな! よばい、きゃ〜〜〜っ」
「おまえなぁ。なんでそう襲ってばかりなんだ」
「だ、だって。いつまでたっても、おそって、くれないから」
「……まだ早い。今日はもう寝ろ」


・ゴブリンと小学生
「おねーちゃんが鬼だねっ」
「わー、にげろー!」
「まてまてー!」
「わっ、つかまった!」
「よーし。このままお前を私の旦那さんにしてやるー」
「わ〜〜〜! にげろー!」
「にがさないぞー!」
「今度はこっちが鬼だー!」
「捕まったー」
「もう、すぐ捕まったらつまらないじゃない」
「つまんなくてもいいから、一緒になりたいの!」
「むー。わかんない!」


・ホーネットとゲーマー
「ちっ、また落ちた」
「またかよ。お前弱いなぁ」
「当たり前だろ! こういう細かいの、苦手なんだよ!」
「はいはい。ここをこうやって、はい兎のぬいぐるみゲット」
「す、すげぇ!」
「やるよ」
「え? いいのか?」
「欲しがってたろ、お前」
「いいのか!? い、一生大事にするから!」
「こんなのでいいのならいつでもとってやるから、いつでも言えよ」


・アカオニとベビーシッター
「こ、これでいいのか!?」
「いや熱すぎだろ。ミルクはひと肌っていったろ」
「いや、熱いほうが消毒できていいかなぁって」
「そんなわけないだろう。はぁ、先が思いやられる」
「だ、だってさ。こういう細かいの、苦手だって知ってるだろ?」
「それじゃ将来が不安だっての」
「あたしにそんな機会があるかっての!」
「俺が作るっての!」
「……え?」
「……ミルク、やり直し」


・おおなめくじと漁師
「おかえりー」
「あ、また外に出てきて。潮風に当たると背が縮むから出てくるなって言っただろ」
「でもー。おむかえー」
「はいはい。今日も大量だったから帰ろうな」
「うん。だっこー」
「わかったから粘液を抑えててくれよ。ずり落ちそうになるんだから」
「うん。ぎゅー」
「はいはい、ぎゅー」
「えへへー」
「まったく。俺はロリコンじゃないって言うのに。こいつ限定だってのに。この光景じゃ、ひどい誤解を受けちまうよなぁ」


・スキュラと焼き鳥屋
「らっしゃいらっしゃい! 焼き鳥はいかがー!」
「調子に乗って自分の足を焼くなよ! うちは焼き鳥屋なんだからな!」
「あいよ! よっ、ほっ」
「しくじったら隣のたこ焼き屋に放り込んでやるからな!」
「ちょ、それだけは勘弁してくれ! ここにずっと置いといてくれよぉ!」
「わかったらしっかり働け!」
「わかったって。(せっかく拾ってくれたんだから恩返ししないと。けっして、下心じゃないんだから!)」
「(しっかり働いてもらわねぇと。軍資金がなけりゃ、こいつと結婚なんて夢のまた夢だぜ)」


・シースライムと水族館員
「ふらふらー」
「今日ものんびりしてるねぇ」
「それがお仕事ー」
「ふふ。本当に君は気持ちよさそうに踊るよねえ」
「おどるー?」
「うん。まるで水の踊り子みたいに見えるよ」
「えへへー。もっとふらゆらー」
「結婚しちゃいたいくらい」
「え、あう〜〜〜」
「お。今日の踊りはキレがいいね」


・サキュバスと登山家
「なんで山に登るの?」
「そこに山があるからだ。なんでサキュバスは男を誘惑するんだ?」
「そこに男がいるからよ」
「その割に、お前さんは露出の少ない登山装備で、山を登るんだな」
「誘惑の仕方にもいろいろあるのよ。登山ルートだって複数あるでしょ?」
「それもそうか。で、お前さんはどのルートでどんな男を攻略しているんだ?」
「山好きの男の攻略中よ」
「物好きだな」
「いい男好きなのよ♪」
「よくわからんが。その笑顔は気に入った」


・ミミックと引っ越し業者
「せんぱーい。荷物、これで最後でーす」
「おっけ。ご苦労さん」
「いえいえー。仕事ですからー」
「お茶や弁当までごちそうになっちまったな」
「いえいえー。仕事ですからー」
「ん? 何の仕事だ?」
「旦那さんさがしです!」
「そうか。じゃ、次行くぞ」
「相手はせんぱ……え、ちょっと。先輩、置いてかないで〜〜!」
「ったく。なんで俺が、あいつの、旦那探しの手伝いをしなきゃいけないんだ! おら、次行くぞ!」


・マーメイドと客船船長
「今日の海はおだやかですよ」
「そうか。海の幸、助かる。おかげでお客様方も満足されている」
「いえいえ。あなたのためですから」
「お客様のため、と言ってくれると私もうれしいのだが」
「私が好きなのは貴方です。だから、貴方が喜んでくれれば私はうれしいのです」
「……私は、君との語らいは嫌いではない」
「私は大好きです」
「……今日もいい天気だな」
「はい、そうですね」
「次の交代まで、少し歓談に付き合ってもらえるかな」


・カラステングと刑事
「こっちだよ!」
「そうか。ホシの動きは?」
「ないよ。そっちで何か情報は掴んだ?」
「やつら、やべぇ麻薬を取引してるらしい」
「うわぁ厄介だね。じゃ、私が先制するから後からついてきて」
「馬鹿言うな。俺が威嚇射撃をしながら突撃するからお前は空から援護だ」
「却下。魔物娘の私の方が怪我に強いんだから私が先行」
「論外だ。訓練を積んだ俺のほうが銃撃戦は強い。だから俺が行く」
「分からず屋! バカ!」
「そっちこそ分からず屋だ!」
「怪我してほしくないって言ってるの!」
「そりゃこっちの科白だ!」


・ワーラビットとボーイスカウト
「この草は食べれるよー」
「そうなんだ。えっと、これは……」
「こっちの草もおいしいよ〜」
「今度はそっち? あのさ。それ、ほんとに食べれるの?」
「兎さんはみんな食べてるよー」
「人間は無理だって! あと、じっとしてくれないと、話もちゃんとできないんだけど」
「兎さんは止まると死んじゃうの〜」
「そんな訳ないでしょ。ほら」
「あっ、うぅ、うう〜〜〜」
「止まった。というか顔が赤いけどどうしたの?」
「なんでもないから。何でもないから〜〜〜」
「よくわからないけど。もう少し落ち着いたら?」


・つぼまじんと骨董品屋
「この壺は魔物娘いないよー」
「そうか。じゃあ預かっててくれ」
「はーい。こっちはミミックかなぁ。で、こっちは妖怪〜」
「げ、そうなのか。それじゃあ売り物にならないから、ちょっと説明しておいてくれるか」
「はーい。ところで、おじさーん」
「なんだ」
「なんで私をアルバイトで雇うって決めたの?」
「一目ぼれだ」
「ひゃっ!? え、あう!?」
「壺にな」
「え〜〜〜! もう、おじさんのばか!」
「(中身を見て二度惚れたなんて言えるか)」


・ドリアードと盆栽家
「こんなに小さいと別荘にしても小さいですね」
「別荘じゃなくて観賞用だからなぁ」
「枝ぶりといい、発育といい。可愛らしい松ですね」
「そうか。お前さんが言ってくれるなら良いものなのだろう」
「あの。もしよかったら、私たちの家になるような木、育てて頂けませんか?」
「私と君とでは、釣り合わないよ。君の様に愛らしいお嬢さんは、もっといい人を探すべきだよ。無論、良い気を育てることは承ろう」
「私の方が年上なんですよ?」
「姐さん女房となるわけか。良い旦那が見つかるとよいなぁ」
「既に見つけているんですけれど。いえ、貴方のことなんですよ?」
「ははは。枯れ木に花は似合わんよ。力強い若木を探しなさい」


・レッサーサキュバスと幼馴染
「うふふ〜」
「なんだよ。急に腕に抱きついてきて」
「わからないけど〜。急にしたくなっちゃったんだよ」
「そうか。羽が生えたり角が生えたりしてからだよな」
「そうだよ〜。不思議だよね〜」
「甘ったるい匂いもそれが理由か」
「(あれ〜。なんであたし、こんなに抱き着いてるんだろ〜。ま、いいか〜)」
「(なんかいつもよりこいつがかわいく見えるけど、似合っているからまぁいいか)」


・ベルゼブブと清掃員
「こら! 掃除をするなって言ったろ!」
「俺の仕事だから仕方がないだろ」
「私の仕事だ! こう、味わい深さから汚れ具合を」
「まったく味がしないならきれいなんだろ。はい、掃除終了」
「くそぉ! 知っている場所で唯一汚れがたまっているのはお前の部屋くらいじゃないか!」
「清掃員って薄給だからな。効率よく汚れを落とさないと」
「こうなったら、今晩もお前の部屋に押しかけてやるからな! 掃除しないで待っていろ!」
「(やっかいなやつに惚れちまったもんだな、俺も)」


・アラクネとコスプレ好き
「はい、新作できたよ」
「おお! ●●じゃねえか! 再現率ハンパねぇ!」
「そう? でも、下半身が蜘蛛だから上半身しか再現できていないけど?」
「何言っているんだ。下半身が蜘蛛だからいいんじゃないか」
「蜘蛛好きの変態?」
「いや、おまえが好きな一般人だ」
「……え?」
「……ん?」


・バブルスライムとシャボン玉少年
「あわあわ〜」
「ぷくぷく〜」
「あわあわあわ〜」
「むー。負けないよ! ぷ〜〜〜〜!」
「あわあわあわ〜〜〜!」
「ぷ〜〜〜〜〜〜!」
「君はなんで泡が出るの?」
「え? 石鹸を泡立てると、泡が出るんだよ」
「なんで石鹸?」
「きれい好きだから?」
「ん〜。なんできれい好き?」
「ん〜。内緒っ(バブルスライムさんのまねがしたかっただけなんだよね、実は)」


・ケンタウロスと競輪選手
「ふん。その程度か」
「畜生。めちゃくちゃ早え。だが、これならどうだ?」
「下り坂は、やや不利か。だが、上りはどうだ?」
「へっ。のぼりは軽いほうが有利なんだよ。そのでかい図体でどこまで走れる?」
「賢者の知恵を舐めるな。有利に事を運ぶ方法くらい心得ている」
「へぇ? やってみなよ」
「ふっ。……好きだ!」
「は?」
「……、〜〜〜〜〜〜〜!(どたたたたたたたたたたたたたたた)」
「は? いや、おい逃げるなよ! 返事くらい聞けよ、おい!」


・ラージマウスと遊園地のお兄さん
「わ〜、あれみてよ! あのおっきな観覧車! あれ、乗ってみようよ!」
「ああ、いいよ。でも、お兄さんは仕事中なんだ」
「これ美味しいよ! ほら、甘いし。あーん」
「ありがとう。でもね、お兄さんは仕事中なんだ。あと、お金は払おうね」
「あ、あの大きな耳の鼠っぽいの。あたしのまねしてるの?」
「それ以上はいけない」
「ぶ〜〜。せっかくのデートなんだからもっと盛り上げてよ!」
「はいはい。迷子センターまで連れていくから、それまでデート気分で歩こうね」


・サイクロプスとパチンコ店員
「……」
「あの、お客様? パチンコの玉は打つものであって、観賞するものではないのですよ」
「……」
「お客様? パチンコの玉でタワーを作る器用さはわかりましたから、席についてください」
「……」
「オキャクサマ。涙目で抱き着かれては仕事ができません。お帰りください」
「……景品、げっと」
「おい。俺は今アルバイト中なんだからとっとと出てけ」
「……いじわる」
「あー、はいはい。このうるさい中でぼそぼそしゃべられてもわからんから、家でゆっくり話を聞くっての」
「……ん。じゃあ、キス」
「きこえねーな。とっとと帰れ、サイフの中身ゼロプス」


・エルフと自殺志願者
「この森に何の用だ」
「お前には関係ないだろ」
「そうはいかん。この森では自殺者が多いのでね。こうやって警備をしている」
「ちっ」
「どこへ行く。自殺か?」
「だったらどうなんだ!」
「自殺か。……はぁ」
「なんだよ。文句あるのか?」
「……疲れた。死にたい」
「は? おい、ちょ、なにナイフ出してるんだ! おい、まてって!」
「やめろ! もう私は疲れたんだ! 止めるな!」
「ふざけんな! そのナイフ寄越せ! 俺が自殺するんだよ!」
「私だ!」
「俺だ!(ぐらっ)」
「あ(ぐらっ)。……(じぃ)」
「……(なんか押し倒したみたいになっちまった。き、きまずい)」


・ダークエルフと数学者
「あんたさぁ。私の縄が効かないの?」
「縄の結び目の数をXとし、各結び目間の距離をYとした場合。Xの数とYの長さは反比例の関係にある。すなわち」
「鞭でたたいてもつまらないしなぁ」
「鞭の速さを初動と終点で比較した場合、その加速度は」
「蝋燭であぶっても、なぁ」
「蝋燭の融点をY、火をつけてから蝋燭が溶けきるまでの時間は」
「……はぁ。どうやって驚かせよう」
「ふん。俺に責め苦を与えようなど、片腹痛い。能無しめ」
「……(ぐすっ)」
「む!? 涙をXYZ、あれ、この先がない、えっと、そうだ! すいへいりーべーぼくのアイディア尽きた! ど、ど、どう、した!?」
「……(ぷいっ)」
「……計算不能だ。女性とは不思議なものだ」


・フェアリーと塾講師
「うー、ひま! ひま〜」
「はぁ。俺の授業中に部屋中飛び回っておいて、ひまなのかよ」
「ひまだよー。妖精は暇になったら死んじゃうの!」
「退屈は最悪の猛毒とはいうけどさ。なんだって俺に付きまとってくるんだ?」
「面白そうだったから」
「はぁ。そこに座れ。お前に人間世界の常識を教えてやる」
「そんなことより、おにーさんのことをもっと教えてよ」
「それは月謝も払わんやつに誰が特別講義をするか」
「払うよ!」
「どうやって?」
「体で!(働いて!)」
「……まず日本語から徹底的に勉強させるから、そこ動くな」


・妖狐とタクシー運転手
「あ〜、今日もいっぱいのんだ〜♪」
「また飲み会か。魔物娘ってのは何時でも騒いでばかりだな」
「あら、いいじゃない。よく食べて、よく寝て、よくセックスする。それが健康の秘訣よ♪」
「そうか? よく飲んで、よくうなされて、よくリバースしているやつを見ると、その秘訣ってのも怪しいもんだ」
「う。い、いいじゃない。まだタクシーの中で吐いてないでしょ?」
「吐かれてたまるか」
「うー。常連さんを大切に扱わないと、商売人としてはおしまいだと思うけどー」
「お生憎様。俺の客はたーっくさんいるよ」
「むっ。なら、こうして、こうして、こうして〜」
「こら! なにをごろごろ転がってやがる!」
「……」
「どうした? おい、まさか、おい、まじか!? もう少し待て! あと数秒、路肩に止めてすぐ外に出すから、あと数秒だけまってくれえええええええええ」


・ワーキャットと釣り好き
「みゃ〜」
「お? 猫どもを連れてやってきたか。ほれ、今日の魚だ」
「やったー。って、このおっきな魚はあんまりおいしくない〜」
「我慢しろ。うまい魚をこいつらが食ってるんだ。こいつらを減らさないと、お前たちの食う分がなくなるぞ」
「う〜〜。おまえらにやる!」
「こら責任転嫁するな。おまえが魚なら何でもいいって言ったんだろうが」
「あきた〜〜! 早くおいしー川魚たべたいー」
「はいはい。猫どももうるさいし、たまには普通の魚でも釣るか」
「ほんと!? やった〜〜!」
「こら抱き着くな! 手元が狂って、魚が釣れないだろうが!」


・ローパーと書道家
「こうやって、こう、ですね」
「上手いものだな。触手を使っているとは思えないほどの達筆だ」
「いえ、この触手って手よりも器用に動くんですよ」
「ほほぉ」
「だから複数の触手を使ってこうやって、こう、こう……あれぇ?」
「絡まってしまっているではないか」
「あれ? あれ? ほどけない〜」
「まったく。貸してみなさい」
「へ? や、やめ、ぁああ〜〜〜〜♪」
「は? い、いったいなにが?」
「いえ、AVにこういうシーンがあったので、つい」
「よくわからないが。解き終わったので、次の文字に移るぞ」
「うぅ。もっと反応してくださいよぉ」
「(幼い頃は可愛らしかったのだが。いまは、いやいまでも、いや、それより書に集中しなければ)」


・魔女と家政夫
「もっと遊んでよー」
「掃除が終わってからにしてくれ。まったく、この家はでけぇな」
「だってサバトの支店だもん。広いに決まってるよ」
「さばと? よくわからんけど、これ捨てていいのか?」
「だめ! それは大事な儀式の道具なの!」
「じゃあこれは?」
「それもだめ! 下手に使うと、おにーさんなんてあっという間にあへあへあになっちゃうよ!」
「じゃあこれは?」
「それは……もっとだめぇ! それ、それ」
「下着だろ。後で洗濯しとくぞ」
「れ、レディの下着の扱いがなってないわよ!」
「子供は黙って世話されていろ」
「ぷぅ〜!」
「やっぱり子供だな」


・バフォメットと飲み屋のおじさん
「よいか! 我々の教義は、幼い少女の清らかさを問うのではない!」
「ほぉほぉ」
「幼い少女の愛らしさ! これに尽きるのだ!」
「なるほどなぁ」
「よいか! 愛しいお兄様、兄さん、お兄ちゃんなど様々な『兄』を追い求めるのもまた、愛らしさからくるものなのだ!」
「がんもどき、食うかい?」
「いただこう! しかるに、我々は現在支店に魔女たちを揃え、水鏡に広がる波紋のごとく、我々の教義を広め!」
「ところでそろそろ閉店なんだけど」
「むぅ。ならば明日、また来よう!」
「お代金」
「む、むぅぅ。つ、ツケ払いは、可能なのか?」
「問題ないよ。お仕事、頑張ってきな」
「う、うむっ! では、行ってくるぞ!」
「行ってきな」


・河童と八百屋
「きゅうり、きゅうりはいかがー! 夏場においしいきゅうりだよー!」
「スイカはいかが? 芯まで詰まった美味しいスイカだよ。ほら、もってご覧? この重さ、スーパーじゃ手に入らないよ」
「きゅうり! きゅうり! 食べてよし! かじってよし! ペットのえさに良し! 上の口によし、下の口に良し!」
「暑い日こそ薬味が美味いよ。ショウガにミョウガ。これをそーめんに添えたら、夏のけだるさも」
「昼には潮もみしたきゅうり! 夜に突け込み、浅漬けを朝に食べる! どうです、そこのお姉さん、あたっ」
「お前さんは真面目に接客しているのか」
「してます! 魔物娘にはこれくらいでちょうどいい、むしろ足りないくらいです!」
「主に河童限定の宣伝だよな」
「きゅうりは美味いのです!」
「西瓜も南瓜も冬瓜も、胡瓜と同じウリ科なんだから、そっちも宣伝してくれ」
「やです!」
「なんでだ」
「ここで最初にもらったのが胡瓜だからです!」
「だからなんだって」
「うれしかったのです! すごく、うれしかったのです! だから、お勧めするんです!」
「……そうか」


・ジョロウグモと和菓子職人
「今日も良い織物が出来ました」
「そうですか。おぉ、これは素晴らしい。しかし、宜しいのですか? こうも何度も、見事な織物をいただいて」
「いえいえ。下心あってのことですから」
「それはまたどうして」
「秘密ですわ」
「ほぉ。では、いつも通り茶菓子をお出ししないと」
「いつも催促しているようで申し訳ありませんわ」
「いえいえ。下心あってのことですから」
「あら、それはまたどうして」
「少しばかり思うところがありまして」
「思い人かしら」
「言わぬが花というものですよ」
「では、それまではいつも通り。この思いを耐え忍びましょう」
「ふむ。貴女が思いを寄せる人はきっと果報者でしょうね」
「(相思相愛になれれば。そう思い通っていますけれど。真意を知ることは恐ろしいものですわね)」
「(思い人に気づかれないならば、押し殺すもまた一興。さてはて)」


・稲荷と用務員
「今日も暑いですね。はい、お茶です」
「こりゃどうも。稲荷さんも暑くないですかな? そこまできっちりと和服を着なくとも」
「私たち妖怪は魔力で体温の調整も可能なのですよ。ほら、この通り」
「おぉ、こりゃ涼しい。さっきまでの暑さが嘘のようだ」
「お役に立てて光栄ですわ」
「それなら、学生たちも涼ませてやってはいただけませんか。私は十分涼みましたのでね」
「わかりましたわ。でも、一つだけ宜しいですか?」
「ああ。なにかな」
「もう少しだけ。こうして隣に座っていてもよろしいですか?」
「はっはっは。かまわんよ。こんなおやじの隣でよければいつでも」


・デュラハンと文学少年
「また本を読んでいるのか」
「まーね。図書室はひんやりするし、本はたくさんあるし。至れり尽くせり」
「たまには外に出て体を動かしたらどうなんだ」
「そっちはどうなんだ。国語の授業、隠語だけは得意なんて言うなよな」
「私はそこらの色ボケ魔物娘とは違うぞ」
「じゃ、この漢字は何て読む?」
「ん? これは、『こい』だな」
「じゃあこれは?」
「これは『すき』か」
「……じゃあ次は」
「愛している」
「は?」
「いや、わざわざ、『鯉』や『鋤』なんて読ませるから、告白されているのかと思って」
「おまえのことは好きだけど、それとこれとは、え?」


・クィーンスライムと組長
「あんたぁ。今日のアガリ、持ってきたよ」
「おう」
「おじきー。ご飯作ったよー」
「おう」
「パパー。今日もえっちしていっぱい稼いできたよー」
「おう」
「兄貴ぃ。余所者が馬鹿やってたんでとっちめたぞ」
「おう」
「貴方ぁ。今日も一日お疲れ様♪」
「おう。(一家を持つ協力をするとは言われたけど。なんで俺、いつの間にかヤクザの組長になってんの?)」


・ミノタウルスとピッチャー
「そら、どんとこい!」
「おらぁ!」
「甘い! いま外角にずれたよ! もっと、足腰を鍛えないと!」
「これならどうだ!」
「甘い甘い! もう今日は走り込みだ! ほら、いくよ!」
「自分が走りたいだけじゃないのか? お前、実は牛じゃなくてバッファローとか」
「あたしと一緒に走るのが嫌なのかい?」
「じゃ、行ってくる」
「ちょ、置いてくな! 待てって!」
「追ってくるなって! そんなんだからクラスのやつらに、ああ、もう! 逃げ切ってやる!」


・ホルスタウルスと茶道部
「いい天気ですね〜」
「そうですねー」
「……」
「……」
「本当にいい天気ですね〜」
「そうですねー」
「……」
「……」
「すぅ。すぅ」
「おや、また僕の膝で寝てますね。この人、本当によく寝る人ですねー」


・エンジェルと不良
「いけません! その様に人を殴ってはいけません!」
「うっせぇな。俺らは俺らの会話ってのがあるんだよ」
「人を傷つけて得られる理解などあるはずがありません!」
「殴り合わなきゃわかんねえことだって世の中あるんだよ!」
「痛みでは人とのつながりは得られません!」
「奪い取らなきゃいけねぇ時だってあるんだよ!」
「どんなときですか!」
「惚れた女を勝ち取る時だよ!」
「では、その女性を連れてきてください! その人に説教をします」
「……いま、俺の目の前にいるんだけど?」


・ダークエンジェルと優等生
「べんきょーべんきょーって。たまには遊んだらどう?」
「わかっていないですね。これは僕の趣味ですよ」
「外国の言葉に歴史に、よくまぁこれだけたくさんの本を相手に出来るものだよね」
「貴女もかつてはそうだったのでしょう?」
「忘れたよ。今はただのえっち好きのいけない堕天使ちゃんだよ♪」
「それでも天を求める、ですか」
「求めるのはたった一人の愛情だけ。でも、その愛情が片道で寂しいんだよ」
「そうですね。頑張っても報われない。それは悲しいことです」
「誰のことを言っていると思ってるの! この、朴念仁!」
「誰のために魔界や魔物娘のことを勉強していると思っているんですか、この分からず屋!」


・アマゾネスとコック
「獲物、とってきたよ」
「いやそこは買い物してきた、でしょ」
「近所に熊がいたからついでに」
「ええぇ。まぁ、熊料理は作れるけどさ」
「一番うまい飯を頼む」
「はいはい。座ってゆっくりしてて」
「ああ。ところでお前は伴侶はいないのか?」
「いないよ。食材をどう美味しくするか考えていたら、もうこの年だからね」
「そうか。なら、私の伴侶となれ」
「直球だね」
「嫌か?」
「とんでもない。それじゃあこれからもよろしくね」


・リャナンシーと警察官
「うむむ。この似顔絵にはセンスがない!」
「いや。犯人の似顔絵にセンスはいらないよ」
「違うの! センスは大事なの! ここをこうやって、こうやって!」
「あああああ! 犯人の似顔絵に髭を追加しないでくれぇ!」
「じゃあ、これならどう?」
「花を頭に咲かせちゃだめだろう! これ、上司に見せたり捜査に使う大事な似顔絵なんだよ!」
「だからこうやって手直ししてあげているんじゃない」
「どこをどうやったら、これが手直しになるんだよ!」
「なにをぉ! 芸術の妖精、リャナンシーに対して言うセリフ?」
「お前は音楽担当の妖精だろう! ああ、もう。何で音楽も何もやってない俺に付きまとうんだよぉ」
「理由はあるけど、言わない!」
「なんでだ!」
「芸術の妖精だから!」
「……」
「(だって。ちっちゃなころからの夢。ミュージシャンになる夢、まだ残ってるでしょ? それなのにこんな仕事、似合わないもん!)」
「(理不尽だ。無意味に理不尽だ)」


・オークとバイク好き
「おらおらおらぁ! どけどけどけぇ! 道を開けなぁ!」
「……」
「俺らの邪魔をするやつぁ、全部バイクでひき殺してやるよぉ!」
「それはだめ」
「はい、ご主人様♪」
「……」
「おらおらおらあ! どけどけどけぇ! 道を開けなぁ!」
「……」
「俺らの邪魔をするやつぁ、全部ミンチにしてやらぁ!」
「女の子らしい言葉をしてね。その方がかわいいから」
「はい、ご主人様♪」
「……(元気な方も好きなんだけどね。放っておくとその内誰かと喧嘩になるかもしれないから、二人きりの時だけでいいよね?)」


・マミーとサーファー
「わ、わわ、わわわわ」
「しっかり掴まってろよ。おっこちたら大変だからなぁ」
「包帯が濡れて貼りついたら、ワタシ、ワタシ」
「おっと」
「やああああ! こわい! みずこわい! しおみずもっとこわい!」
「あっはっは。次は大波に乗るぞぉ!」
「や、やめ、きゃあああああああ!!」
「おーら、よっと。あっはっは。どうだった?」
「……ぶぅ」
「なんだよ、ムクれて」
「意地悪するの、やだ。もっとふつーにして」
「やーだね」
「ばか。きらい。…………でも、すき」
「俺も愛してるよ、ってイキナリ好きとか言うなよっ」


・スケルトンと弟
「きょうは、シチュー」
「へぇ、美味しそう。いただきまーす」
「出汁はよく出てる」
「何の出汁?」
「私」
「ぶーーーー!!」
「冗談だから、大丈夫」
「いや、洒落ならないから! 前に一度、骨を入れかけたの見てたから!」
「入れたのは、もっと秘密の液体」
「何それ!? めちゃくちゃ怖いんだけど」
「愛情たっぷりのエキス」
「そんな愛情重すぎるって! つか、姉ちゃん! いったん死んでから性格変わったよね!?」
「愛情は変わってない」
「何か違う。家族愛とこれは何か違う」
「……でも好きだから」
「……うん。ご飯、食べようか」


・ナイトメアとトップブリーダー
「あはは。かおなめちゃ、やですよ〜」
「ティーはナイトメアに良くなついているねぇ。男の子だからかな?」
「そうなんですか? あ、そこで寝られると、私起き上がれないです〜」
「毛皮がふさふさしているから気持ちいいんだろうね。猫にとっては格好の昼寝ポイントだ」
「うぅ。添い寝してほしい人に添い寝してもらえないのに。どうして猫ちゃんだけなんですか〜」
「じゃあ、添い寝しましょうか?」
「う、うう?」
「それじゃ、おやすみなさい」
「やっ、あ、あの、そ、そそそそそそれはええとあのあのあのあのあのあの〜〜!?」
「(かわいいな、ほんとに)」


・アントアラクネとNEET
「はたらきたくなーい」
「働いたら負けだと思ってる」
「ごはんないのー?」
「絶望せよ」
「おなかすいたぁ」
「おれもだ」
「……えっちする?」
「その前に餓死する」
「はぁ。でもはたらきたくなーい」
「そうだなぁ」
「他の人の家に寄生しよう」
「そうしよう」
「つれってってー」
「よろしくたのむ」
「……はぁ」
「……あふ」
「おなかすいたー」
「もうねるか」
「ぎゅーってしてねよう」
「……そうしよう」


・アリスと家出少年
「どうしたの? 迷子?」
「似たようなもんだよ。お前は?」
「私はおうちに帰るところー。今日の晩ごはんは、なんと! ホワイトしちゅーなのです!」
「そっか」
「えっへん」
「なんでお前が威張るんだよ」
「あ、いまおなかなった」
「なってない」
「なった!」
「なってない!」
「もう、意地っ張り! うちにおいでよ! ごはん、いっぱいあるから!」
「ちょ、おい! ひっぱるなって! おい、おいったら!」


・マンドラゴラと旅行客
「……(どきどき)」
「なんか、地面に埋まっている明らかに魔物娘っぽい植物系の女の子と目が合った」
「……(どきどき、どきどき)」
「……スルーで」
「だめぇええええええ!」
「うお、しゃべった!」
「放置しないでぇ! 私を抜こうとした人、半端に抜いて逃げちゃったせいで、私、独り立ちできなくって」
「次に出会った人によろしく頼んでくれ」
「やあああああ! おいてかないでええええ!」
「すっげぇこえ。あれ、でもこれやばくね? 俺が変質者に思われる」
「やあああああああ、きゃっ!?」
「ほかく、そして流れるように逃走!」
「え、あ、あの、うわ、わたし今すごい恰好してる、きゃ、きゃー」
「走れ走れ! 目指す先? そんなの太陽に聞いてくれ! とりあえずにげろおおお!」
「(あ、でもこの人。一生懸命な顔、ちょっといいかも)」
「(俺はロリコンじゃない俺はロリコンじゃない俺はロリコンじゃない)」


・ケサランパサランといじめられっ子
「どしたの?」
「……」
「げんきない? どしたの?」
「放っておいて」
「やだ。げんきない? どして?」
「放っておいてよ!」
「わー。(ちょこちょこ)どしたの?」
「……なんで僕に構うの」
「んー? わかんない」
「なにそれ」
「ぎゅーってするとわかるかも。ぎゅー」
「わかるわけないでしょ。そんなことで」
「ぎゅ〜♪」
「わかるわけ、ないけど。……どうせ、僕の言うことなんて聞かないんでしょ」
「きゅぎゅ〜♪ ……すやぁ」
「寝てるし。……はぁ。ま、いいか」


・スフィンクスと窓際族
「なぞなぞいくよー。第一もーん。この仕事はすぐにやらないといけない仕事?」
「いや。1年後でもいい」
「せいかーい。次、第二もーん。この部署は出世コースであーる」
「間違い。ここは会社の墓場」
「せいかーい。じゃあ、次はー」
「まだあるのかい」
「私はあなたのことが好きー?」
「……」
「じぃ〜〜〜」
「……パス」
「ええええええ?! ひどい、あの夜のことは嘘だったのね!」
「何もなかっただろ。嘘も本当もあるか」
「じゃあ、本当にしてくれるの? あの夜のこと」
「……夜まで待て発情猫」


・アヌビスとピアニスト
「本日13時55分に舞台に入り、13時57分に席につく。そのあと……」
「今日も分刻みで忙しいね」
「当たり前だ。お前はプロのピアニストだ。本当は秒単位で管理をしたいところなのだぞ」
「そうか。プロなら仕方ないね」
「そうだ。そして私は管理のプロだ。だからこそ、管理に手を抜くことはできない」
「プロって大変だ。本当に」
「ああ。それがプロフェッショナルということだ」
「でも恋愛のプロとしては、夜の時間を空けておいてほしいのだけど」
「わふっ!? な、ななななな何をする気だ!?」
「え? 告白だけど?」
「……」
「ほら、管理のプロ。そろそろ時間だよ」
「……きゅーん」
「はぁ。これじゃあ先が思いやられるね」


・ダークスライムと殺し屋
「今日も軽快にヤっちゃったねー♪」
「それが仕事だ」
「ねぇ。ヤっちゃった後はヤっちゃわない? 私と、あっつあつでねっとねとのやつを♪」
「断る。次の仕事の準備がある」
「も〜。そういう仕事熱心な処。き・ら・い・じゃ、ないよ♪」
「お前もしつこいやつだ。俺は殺しをやめない。お前は俺を取り込めない。終わりはないぞ」
「いいんだって♪ だって、こうして一緒にいられるだけで幸せだもん♪」
「好きにしろ」
「だから、さ。たまには言いたいことを言ってよ。ほら、私って液体生物だから、どんな衝撃的な事実だって、言葉だって、なんだって耐えられるんだから♪」
「そうか。なら」
「ふふ〜、なら?」
「愛している。ずっと傍に居てくれ」
「……ひゃっ!?」
「と言えばどうなる?」
「え、あ、ちょっと、いまの冗談なの!? さすがに怒るよ!」
「俺は嘘は苦手だ。知っているだろう?」
「え、あ、そういえば。え、ちょっと、それって、え、あの、え!?」
「準備に取り掛かる。ついて来るのなら好きにしろ」


・ゴーストと小説家
「にひひ〜。そんな妄想で読者は満足するの〜?」
「お前の妄想にはだれもついてこれないだろ」
「そうかな〜? 新規開拓。掛け算の時代は終わったの! これからは、新しいステージへ!」
「降りて来い。妄想の空に飛びあがりすぎて天井すり抜けてるぞ」
「降りれない〜♪ 怖いの〜♪ 大人の階段上りすぎちゃって降りれない〜♪」
「いつでも妄想の世界に浸っているお前は幸せそうだな」
「うん♪ だって、好きな人の妄想は、女の子の幸せだもん♪」
「そうか。そいつはよかったな」
「あなたのおかげだよ〜♪」
「……せめてノーマルな妄想にしておいてくれ」
「や・だ♪」
「……はぁ。仕事、しよう」


・セイレーンと盲目
「ねぇ、今日の歌は何がいい?」
「とびきり明るいのがいいかな」
「おっけ〜。♪〜」
「君の歌は本当にきれいだね。まるで天使のようだ」
「あはは、ありがと♪ 天使みたいに背中に羽はないけどね」
「目に見えない僕にとっては同じだよ。澄んだ歌声。風を撫でる優しい羽の動き。僕にとっては、それが天使の証だよ」
「……も〜、恥ずかしいこと言っちゃって〜♪」
「あはは、ごめんごめん。次は、夏らしい歌、お願いしていいかな?」
「まっかせて〜! とびきり熱い、燃え上がるようなのを歌っちゃうよ!」
「ありがと。……綺麗な声をした、歌の天使さん」


・ヴァンパイアと守衛
「ほら、差し入れだ。今日も不審人物はいないのか」
「ありがと。そう簡単に居てくれちゃ困るけどね」
「ただ飯ぐらいの言うことは違う」
「それは違う。俺たち守衛は不審人物を捕まえるためにいるんじゃない。不審人物が入りたくないような環境を生み出すためにいるんだよ」
「ガーゴイルの像や鬼瓦の様なものか」
「そういうこと」
「ならばガーゴイルにやらせればいいだろう」
「いや。夜になると動き出すじゃないか。君たちみたいに」
「ふん。我ら夜の眷属と、夜しか動けない連中を同列に扱うな」
「でも昼が昇るとずっと寝てるよね」
「仕方ないだろう! お前がずっと外に出ているんだから」
「それで不貞寝?」
「そう……、じゃない! 不貞寝、してない!」
「はいはい。わかったから、一緒に見回りしようか」


・ダークプリーストと隣人
「汝隣人を愛せよ! と言うことで突撃して来ました♪」
「帰れ」
「そんなぁ! こんな肉感的な肢体を露わにした女性に対する対応ですか、それが!」
「帰れ」
「うっうっ。故郷のお母さん。都会の人は冷たいです」
「故郷に帰れ」
「そんなぁ、ひどい。私だって、都会にあこがれて来たんですよ。それなのに」
「それで就職に失敗してサバトに彷徨いこんで、宗教の勧誘をしてりゃ誰だって無視したくなる」
「でも。お母さんに仕送りはしたいんですよ! それなのに、勧誘は全然うまくいかなくって。私、魔物娘になっても、駄目駄目なのかなぁ」
「……はぁ。お前、こっち来い」
「え、なに、あの、勧誘成功、じゃなくて、いたい! みみひっぱらないでください!」
「またチャーハン作ってやるから、食ってから寝ろ。どうせ翌朝にはいつもの調子に戻っているんだろ。黙って食え」


・ユニコーンと大逃走男
「うふふふふふふふふふふふふふふふ♪」
「ちょ、今の当たったら死んでる! 死んでるから、角で串刺しになって!」
「ケーキ入刀。ああ、幸せな新婚生活。うふふふふふふふふふふふふ♪」
「入刀ってその角危険物だから! 人間の男性はそれを受け入れるようにできてないから!」
「うふふふふふ、ま〜て〜♪」
「待てるか! 待ったら死ぬ! 確実に死ねる!」
「砂浜で追いかけっこが夢だったの♪」
「ここ都会だから! 思いっきりアスファルトあふれるコンクリートジャングルだから!」
「お父様、お母様♪ 私、大人になります♪」
「大人になるんだったら現実見据えてくれぇえええ!」
「愛は突撃! 恋は戦争! 当たって砕けるの〜♪」
「その愛情は痛すぎるから! 死ぬほど愛しているというより死んだら元子もないからぁああああ!」


・ギルタブリルとカバティ野郎
「しゃっ!」
「カバティ!」
「しゃっ、しゃしゃしゃっ!」
「カバティ、カバティカバティカバティ!」
「ちぃ。私の尻尾が当たらないなんて。あんた、何者?」
「ふん。町内会カバティ同好会の一メンバーに過ぎないが、なにか」
「カバティって何だ?」
「カバティだ」
「……があああああああ!」
「カバティカバティカバティカバティカバティ!」
「(なんであたし、こんな奴に一目ぼれなんてしちまったんだ? ああ、魔王様。こんな風にしたあんたを恨むよぉ)」
「(ところで、何でこんなことになっているんだ? 早くカバティの会場に向かいたい)」


・シービショップとカトリック
「海神様の教えは海の様に広いのです」
「は〜、そうなんですか。宗教にもいろいろありますね〜」
「神様はたくさんいらっしゃいます。大切なことは強要ではなく知ること、そして共有することです」
「ところで、あの。質問があるのですけど」
「はい、なんでしょう?」
「異なる宗教同士で結婚するとき、どちらの宗教に合わせるのですか?」
「それは好きな方を選んでもかまいませんし、両方行ってもかまいませんが。それが何か?」
「ええと。結婚を前提に押し倒したいのですけど、いいですか?」
「ええ、結婚を前提におしたお……押し倒したい!?」
「……あ、ちがい、違います! お付き合いです!」
「お突き合い(性的な意味で)!?」
「違いますってぇ!」

・メロウと雑誌記者
「今日もで〜と、明日もで〜と♪」
「いや明日は普通に仕事だから」
「いいじゃない〜。会社の先輩公認の仲なんでしょ?」
「公私混同しない人だから無理」
「ぷ〜。じゃあ、仕事でいない分だけ纏めてでーとしてよ。ね〜?」
「マジか?」
「マジです」
「は〜。何日分だ」
「一生分♪」
「……は?」
「そろそろ、指輪、ほし〜な〜。こう、薬指にぴったり入りそうな指輪〜♪」
「……宝飾店、行くか」


・カリブティスとデイトレーダー
「あ、おかえり〜」
「ただいま。今日もいい子にしていたか」
「うん! 今日も公園で遊んでいる男の子とか見てたよ〜」
「そうか。海底から全面ガラス張りの高層ビルに引っ越したいと言い出したときはどうなるかと思ったけど。何とかなったね」
「うん〜」
「ああ、でもそろそろ別の処に引っ越さないか? 管理人が水漏れやらが心配らしくって」
「そーなの? ここって危ないの?」
「億単位つぎ込んで改装工事をしたから大丈夫だろうけど。なんていうか」
「ん〜?」
「部屋全てが水没していると電化製品も何もあったもんじゃないなぁ。というか床と天井以外ガラス張りで、あとは海水だし」
「ぎゅ〜」
「はいはい、ぎゅ〜。(問題は、得意の手料理が振舞えないことだけど。どうやったらこの子に恋人認定してもらえるんだか。サンゴ礁でも買いとるか、真珠のネックレスか。ん〜)」


・ネレイスとスキューバダイバー
「今日のデートはあの岩陰の方に行ってみましょうか」
「お、いいね」
「あの辺りは水流が少し強いですから、手をつなぎましょうか」
「いや大丈夫だって。もう色んなところをデートして慣れてきたから」
「……手を、つなぎましょうか」
「いや大丈夫だって」
「……朴念仁」
「なんか言った? それより、早く来ないとおいてくぞ」
「はーい、わかりました」
「早いところ並んで泳げるようになりたいってのに、いつまでも手を引かれてばかりでいられるか」


・ドラゴンと猫好き
「いつも思うのだが。どうして猫はこう、人の膝の上で丸まったり頭に乗ってきたりするのだ?」
「甘えているからだろうねぇ」
「私の尻尾は爪とぎ板じゃないのだけど」
「爪のほうが負けちゃうよね、それって
「10匹も乗ると、私の翼も過積載だと思うんだけど。あ、11匹目」
「猫って高いところが好きだからねぇ」
「なぁ。これって私がいる意味あるのか?」
「あるよ」
「どこにあるんだ。デートの一つもできない。手料理は作れない」
「結婚する前に家族に相談するものでしょ? これがそれだよ」


・ダークマターと小料理屋
「枝豆お待ちしました〜」
「ちょ、まった! それ、黒豆じゃなくて黒い魔力が載ってるだけだから! お客さん食べちゃだめええ!」
「生4つおまちど〜」
「それ本来は黒ビールじゃないから! お客さん、待ったああああ!」
「もぉ。なんで私の接客サービスに文句言うのよ」
「ただでさえ室内真っ暗の準魔界状態にしてるのに、お客さんを片っ端から魔力漬けにしたら営業停止になりかねないって!」
「だーいじょーぶ。リピーターは多いと思うよ♪」
「ウチの常連が逃げていきそうだけど」
「もぉ。未来の旦那さんがそれじゃ、先行き不安だなぁ」
「(これがあるから、嫁に来てくれと言い辛いのは、つらいなぁ。いい子なんだけど)」


・ウィンディーネとペットショップ店長
「今日も水はきれいですよ〜」
「金魚がガチで成長している。魔物娘にならないのがおかしいくらいの、すっげぇ成長」
「あらあら、大丈夫ですよ〜。私は『まだ』そこまで進んでませんから〜(じぃ)」
「進まれちゃ困る。ウチはペットショップであって、魔物娘紹介屋じゃないんだ」
「わかってますよ〜。でも、もうちょっとぐらい欲を出してくれてもいいと思うんですけど〜。ほら、私はいつでもOKですよ〜?」
「友人が似たような誘いを受けてえらいことになったのを知っているんだけど」
「よそはよそ、ウチはウチですよ〜」
「水の精霊だろ? そこは清流の様に清い交際ってことで」
「清濁併せ呑むのが水なのですよ〜。あ、そういえば今日は濁流になりたい気分〜」
「押し倒そうとするな! 水を操作するな! 仕事しろ仕事〜!」


・イグニスと一人っ子
「今日もいい天気だねぇ。山火事になったら盛大に燃え上がるよ」
「危ないから駄目だよ」
「あの犬っころ、また家の前で小便しやがって。丸焼きにするぞ!」
「放っておいていいから」
「あぁもう。なんだってそう冷めてるんだ」
「君が湿っぽいだけだよ。火の精霊なのに」
「お前がカラカラに乾ききってるんだよ。枯れ木みたいに」
「面倒なやつ」
「寂しい時は寂しいっていうのが当たり前だろ。腹が立ったら腹が立ったって言うもんだろ」
「今は寂しくないし腹も立っていないよ」
「嘘つくな!」
「嘘じゃないよ。騒がしい精霊が隣にいるから、寂しいと思う暇さえないよ」


・シルフと自転車旅行者
「今日もいい風吹いてるね〜」
「追い風のおかげでスピードも出ているしね」
「今日はどこまで行く?」
「二つ向こうの町まで行こうか」
「さんせー。じゃ、競争ね!」
「今日は勝って見せるから」
「そう? じゃ、逆風〜♪」
「ちょ、それずるい! くっ、ペダルが重いし」
「がんばれがんばれ〜、あはははは♪」
「このぉ、負ける、かぁ!」
「♪〜」
「(まったく。なんて顔して楽しそうに踊ってるんだか。こっちの気も知らないで)」


・ノームと農家
「今日もたくさん実りました」
「実ったねぇ。頑張ったから」
「うん。頑張りました。褒めて褒めて」
「いやむしろこっちを褒めてほしい。毎晩毎晩。おかげで周囲はすっかり魔界だよ」
「好きモノこそナニを上手なれ」
「好きこそものの上手なれ、だよ。否定は、しないけどね」
「……嫌だった?」
「嫌じゃないから困るんだよ」
「……♪」
「はいはい。じゃあ今日もしっかり収穫しようか。今晩のためにもね」


・ドワーフと開発者
「この構造、ちょっと複雑すぎないか?」
「加わった衝撃を分散させるためには本数を増やさないといけないからなぁ」
「だからって数だけ増やしちゃ、弱い部分に力が集中するぞ」
「その辺の問題はここの部分で誤差を吸収するから大丈夫だ」
「……あたしら、最後にデートしたのっていつだっけ?」
「デート(資材調達)なら何時もしてるだろ」
「デート(子作り前提)は全然してないぞ!」
「……ん?」
「……ん?」
「……まぁいいか。続き、進めるぞ」


・オーガとフリーター
「よぉ暇人。今日も仕事なしか?」
「アルバイト先をクビになった」
「またかぁ。おまえ、長続きしないなぁ」
「血の気が多いからなぁ」
「それでまたしょげて川を眺めてたのかよ」
「悪いか」
「ああ、悪いさ。悪いから酒でも飲もうか」
「どこから酒を、いや今昼だし。……ま、いいか。いっぱいもらうぞ」
「なー」
「なんだ」
「養ってやろうか?」
「お断りだ。自分で何とかする」
「ちぇー。せっかく勇気を出したってのによぉ」
「お前それ何十回目だと思ってるんだ。いいから酒飲むぞ」


・サハギンと老人
「……」
「こんにちは、お嬢さん」
「……」
「今日も魚をくれるのかい。ありがとうね」
「……」
「お茶は美味しいかい? おぉ、そうかい」
「……」
「はは。君は甘えん坊だね。いいよ、ゆっくりしていきなさい」
「……」
「そうだね。今日もいい天気だ」
「……き」
「ん? どうかしたかい?」
「……」
「ふむ。では今日は新しいお菓子を持ってきたから、ぜひ食べていってくれないかな」


・グリズリーと世話好き少年
「今日は何してたの〜?」
「えっとね〜。パンを焼いたの! ほら!」
「そうなんだ〜。おいしそ〜」
「えっと、食べてみて?」
「おいし〜。あまい〜」
「あ、あのさっ。毎朝それ、焼いてあげるからさ。一緒に住もうよ!」
「もっと食べたい〜」
「お、おーけーなの!?」
「zzZZZ」
「もう、真面目に聞いてよ〜〜〜!」


・ホブゴブリンと近所のお兄さん
「わ〜〜、とつげき〜〜、あうっ」
「またこけてる。大丈夫か?」
「あう〜〜、はっ!」
「ん?」
「て、てったい〜〜!」
「なんだありゃ」
「……じぃ〜〜」
「なんか見られている」
「よし、と、とつげき〜〜、あうっ」
「またこけた。大丈夫か?」
「あ〜〜、はっ!」
「ん?」
「て、てったい〜〜!」
「何がしたいんだか。子供はよくわからないなぁ」


・ワーシープと寝坊助
「すー、すー」
「すかー、すかー」
「すぴー、すぴー」
「ぐごごごごごごごご」
「はぅ、んぅ、はぅぅ」
「……」
「すー、すー」
「お前絶対起きてるだろ」
「すー?」
「起きろ。飯だぞ……すかー、すかー」


・マンティスと園芸職人
「……狩った」
「おぉ。綺麗にカットされているね。さすがだよ」
「……次の獲物は」
「こんどは向こうの木をお願いするね」
「……迅速に狩る」
「うん。頼んだよ」
「……怖くない?」
「ん? 何が?」
「……なんでもない」
「どちらかというと可愛らしいお嬢さんだと思うけどね」
「……っ」
「おやおや。本当に仕事熱心だね。たまにカットしすぎるのが玉に瑕……あ、またやっちゃってるみたいだね」


・グールと大食い選手
「くうぞー!」
「くうどー!」
「どんどんこい! いくらでも食い尽くしてあげるワヨ!」
「お代わりお代わりお代わり!」
「はっはっは! 全部平らげて見せるワヨ!」
「負けてたまるか!」
「アタシが勝ったら何でもいうことを聞く約束、忘れてないヨネ?」
「そっちこそ、約束守れよ!」
「(相手の得意分野で心を折れば、結婚まで一直線!)」
「(相思相愛だったらいいなぁと思うけど。まずは結婚を前提に、だな)」


・アルプと同級生
「それでさー。あいつ、俺に色目とか使うんだぜ?」
「そりゃ大変だ。魔物娘になるってのも楽じゃないな」
「そうそう! 色々変わってさぁ。ほら、オナニーとか」
「おいおい。まだ昼だぞ?」
「いいだろ? こういう話さ、お前とじゃないと出来ないんだし」
「そういうもんか」
「そういうもんだよ! 今日もラーメン食べて帰ろうぜ」
「いいぞ。お前のおごりな?」
「やーだよ♪」
「……(時々こいつの笑顔がすっげぇかわいいと思うんだけど。これは異常なのか? 魔物娘相手だから普通なのか?!)」


・サラマンダーと阪神ファン
「うてー、うちやがれえええええ!」
「タマとったれぇえええ!」
「燃え上がれぇええ! オマエの熱いベースボール魂はその程度かぁあああああ!」
「こちとら仕事も金も女も全部放棄してんだぁあああ! 根性みせろやぁああああ!」
「……え?」
「いてこませぇええ! かっとばせぇえええええ!」
「……こちとら仕事も酒も金も全部放棄してんだああああああ! うちやがれえええええええ! ついでに失恋までしたんだぞおおおおおおお!」
「……え、誰がお前振ったんだ?」


・ドッペルゲンガーと小説家
「あ、あの」
「何だ?」
「色々なキャラクターを書かれているのですけど」
「うん」
「どうして私の姿はこのままなのですか?」
「え? その姿がかわいいから」
「……え? で、でも、地味で、その、あの」
「うわなにこの生き物めっちゃかわいい」
「え? か、かわ、かわい、え、あ、あう!?」
「とりあえず頭撫でてよう」


・リリムと市長
「ご協力感謝いたしますわ、市長さん♪」
「こちらとしても経済の活性化や目の上のタンコブを無視で来て、せいせいしてるさ」
「けれど。残念なことに足りないことがあるのですわ」
「ふむ。魔物娘の雇用問題か? 法的な問題か?」
「私の伴侶の問題ですわ」
「無視」
「……そんなぁ」
「当分は秘書としてこき使う予定だ。諦めてくれ」
「秘所として?」
「秘書として」
「……ふふ。そんな貴方だから、私も惚れたのですわね」
「……まだ仕事中だ。あまり恥ずかしいことを口にしないでくれ。では、次の案件に移るぞ」

リハビリがてら(_’

この魔界都市がどこにあるのかはわからないけど(。。
魔界の深度は浅いというイメージで。
海とか山とか農地とかいろいろあるけど。
魔界だから別にいいよね♪(_’

なお、現在、感想欄にて市民募集中。
だそうです(−・−

14/07/20 12:13 るーじ

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