連載小説
[TOP][目次]
二人の…子供?
パチュッ パチュッ

小屋に水音が響き渡る。

「ア……アン!…ああ…」

それと共に女性の、声からしておそらくまだ成熟していない女の子の嬌声が上げられる。
小屋の中にはすっかり中年の男達が今現在性交をしている一組の男女をグルリと取り囲んでいた。
普通なら魔物が人間を襲う光景が見られるのだが、目の前のグループは逆に人間が魔物を襲っているようだ。
辺りには下卑た笑いが渦巻き、ますます空気が高ぶっていく。

「おら!おら!どうだ!?魔物ちゃん!どうだ!!」

犯されているのはまだ子供、いや、少女から『女』へと変わる年頃のエキドナだ。その目には涙が溜まっている。それは嬉しさに寄るものか、それとも悲しみに寄るものか。

「見ろよ!こいつ涙流して喜んでやがる!流石は魔物だ!」

どうやらここの男達は嬉し涙だと思っているようだ。
と、突然腰を振っていた男の一人がピタリと止まり腰を振るわせる。

「………!…!ん!…」

ひとしきり震えた後少女から離れると白い液体が小さな膣から流れてきた。

「お!終わったか、どけ!次は俺の番だ!!」

そうしてまた新たな男が覆いかぶさり行為が始まった。



こんなはずではなかった、とエキドナは組み敷かれながら思う。
正確に言えば、こんな『もの』じゃない、と思った。
こんなものじゃない。もっと、性交は楽しくて、気持ちよくて、
「アン!」
一際深いところに突き刺さり思わず声が出る。
いや、気持ちいいのは気持ちいいのだがもっとこう、何かあるはずだ。
子供心に複雑に思う。
「ウ…ムン…!」
何かが違う、なのに声が出てしまう。
こんなの、絶対違う…。お母さんが言っていた『もの』じゃない。
少女は今朝母であるエキドナと父と共に買い物に出かけていた。
生まれた所がお城で城下町で遊べたとはいえ、首都で暮らしていた少女には道端にでき不定期市は珍しいものだった。
浮かれていた。
そう、たしかに少女は浮かれていた。
いつもは同い年の子供たちと遊ぶのだが今日は大好きな母と父と初めての場所へでかけるのだ。
嬉しかった。
だが、そこのに巣くう悪意に気付けなかった。
気付けばいつの間にか家族から離れていた。いや、離された。
ここにいる男達が意図的に自分と母との間に割って入り、追い詰めたのだ。
攫い屋、そう思った。そう思うことしかできなかった。
そうして今、目隠しをされてつれて来られたどことも知れぬ場所で性交をしている。少女にとって初めてだった。
普段から『シ』たいなとは思っていた。父と母の情事に耽る音を聞き、自分も混じりたくなった。しかし母は、
『もう少し大人になってから、そう、男を気持ちよくできる技術を身につけたらその時は一緒に交わろう。私達はスライムとは違うからな』
言われて見ればその通りだと思った。どうせならもっと気持ちよくしたい。意味は分からないが、気持ちいい、と本能で感じた。
だから学んだ。全てではないが母から、またその友達、厳密にいえば母と同じ人を愛する魔物達から手ほどきを受けた。
自身はある。気持ちよくできる。今でもそう思っている。
だが、これじゃあだめだ。こんなに気持ちの悪い性交では、何か嫌だ。
母ならどうするであろうか。もちろん捕まること自体あの母だからありえないが、…どうするか。徹底的に搾り取るのか。それもいいかもしれない。
だが、自分が顔も認識していない、自分で選んでもいない男とするのはなぜか嫌だ。
そう考えているうちに涙が出てきた。
初めてだった。処女が消えたことに泣いているのではない。初めてがこんな味気ないものだということに屈辱を感じたのだ。
あんなに楽しみにしていたのに。

「見ろよ!こいつ涙流して喜んでやがる!流石は魔物だ!」

うるさい!、と怒鳴りつけたかった。
これはそんな涙じゃない。もっと私にとって、そう、大切なものを無くしたものなのだ。
そう言ってやりたかった。
なのに体は反応し、嬌声をあげる。
……ちくしょう。
こうなったらとことん搾り取ってやる!そのまま疲れ果てろ!
数人の男達にどこまで自分がもつか分からない。その前に自分の誘いにのるか分からなかったが試してみようと思った。
そうして膣を動かそうとしたとき。


「ハイホー、ハイホー、仕事と食べ物と睡眠が好き〜」
変な声が聞こえてきた。
まぐわっている男も腰は振っているが思わず窓の方見る。もちろんその他の男達も注視する。
だが何も見えない。
「ハイホー、ハイホー、仕事と食べ物と睡眠が好き〜」
声だけが聞こえる。まだ子供のような声だ。といっても少し大人びているのですでに初等学年は超えているのかもしれない。
「ハイホー、ハイホー、仕事と食べ物と睡眠が好き〜」
それにしてもなんだろうか、……この…リズムが変な歌は…。
「おい、やめろその変なリズム」
突然新たな声が沸いた。いや、元から変なリズムを口ずさんでいた子と一緒にいたのかもしれない。
「え、なんで?」
「変なリズムだからだ」
「え〜」
そんなことをいいながらだんだん声が近づく。

「おい、どうする?」
小屋の男の一人が訊く。
「ほっとくか?」
「……いや、捕らえよう」
リーダー格の男が提案する。
「いいのか?」
「ああ、山だがこんなところまで来るガキ共だ、かまわねえだろう」
「へへっへ。臨時収入が多いな今回は」
「ああ、まだ初物のエキドナにガキ二人とは」
「あいつら魔物か?」
「いや、男だからちがうだろう。だがインキュバスとしたらそれも歓迎だ。いい労働力になる」
(下衆め)
少女は男達に侮蔑の視線をなげる。いつしか行為は終わっていたが縄でグルグルに縛られている。その縛り方は蛇でも抜けられない独特の縛り方で魔物のことを熟知、もとい手馴れているということがうかがえた。
(…ちくしょう)
またこころの中で毒づく。
「よし、そいじゃ出るか。なあに、インキュバスだろうがなんだろうがただのガキ共だ。気楽にいこう」
男の一人がそういった時、

「ん?……なんか匂うな?」
子供の一人からそんな声があがった。
「…何がだ?」
もう一人が応対する。
「いやあ、…なんか、うん、匂う匂う」
「…何のだ」
「これは……人の汗の匂いだ、あとは…なんかいろいろ混ざって分かんね。フンフン。複数いるな」
「ちょっとまて………確かに、一部気温が上がっている。それと複数の気配がする。」
「ムムム、これは…」
「これは?」
「鍋でもしてんのかな?」
            ・
            ・
            ・
しばし沈黙が流れる。
「……ごめん」
「…鍋はないだろう。これはそんな温度じゃない不定期に上昇する鍋とは違って微弱に高まっていく上昇だ」
「あ!そこ普通に応対するんだ!」

そんな言葉の掛け合いをしているなか小屋の中は少し静かになっている。
「…おい、どうする」
「一人は匂いで、一人は温度と気配で探知しやがった」
「……もしかして、やべえやつらなんじゃ」
「頭」
視線がリーダー格の男に集中する。
だが彼も判断に迷っているようだ。

床に転がされているエキドナも驚いた。人間にそんな能力があるとは、いやインキュバスかもしれない、でも知り合いの子供でもあんなに敏感じゃないはず。
声からして遠くは無いのだが近くも無い、そんな距離から探知できるとは大人の魔物並みだ。
まさか、インプだろうか。

バタン

突然小屋のドアが開く。
少女は驚いた。男達も驚いた。
「はっけ〜〜ん」
「いたな」
最初に声を発した、変なリズムを口ずさんでいた声の持ち主は首筋まで伸びた栗色の髪に茶色の眼、考えていた年齢通りで背は少女が上半身を起き上がらせた時の高さだ。仮に中等学年としたらまずまずの高さだろう。人懐こそうな顔をしている。明るいオレンジ色の上着と青色のズボンが映える。
現に今も何が楽しいのか少しにやけている。
対して冷静に言葉を返していた子供は、子供、というよりも青年にちかい年頃のような背格好をしていた。こちらはストレートな黒髪が肩付近に伸びている。その黒眼はひたと男達を見据えていた。服もほとんど黒色を基調としている。無表情、と言わないがそれに近い表情であまり物事に関心を持ってなさそうな、悪く言えばやる気のなさそうな顔をしている。
「わーお、セト、見ろよ!魔物娘だぜ!」
「ああ」
「すげえ!美人だよお!」
「ああ」
「やばいやばい!……あれ、なんか胸出てない、あれ?はだけてない!?ふわああおおお!やべえええええ!」
「ああ」
「俺、おれええええええ!!」
「ああ、そうだな」
ちゃんと会話が成り立っているのか不思議な二人組みだ。
「おい、ガキ共」
我に返った男の一人が声をあげる。
「だめだぜえ、こんな所にいきなり入ってきちゃあ。失礼だろ」
嫌にネットリとした声であやすように言う。
「え、そうなの?」
「まあ、基本的にはそうだな」
「だろ?」
そういうと男達は相手を逃がさないように取り囲もうとしている。
一人の男はが窓から出ようとしていた。どうやら挟み撃ちにしようとしているらしい。
(クッ)
少女は加勢したいが縄が邪魔だ。母からは性だけではなく武術の手ほどきも受けている。先程は不覚をとられたがまともに戦える自身はあった。
「えっ、なになに?」
「俺達を捕まえるつもりなんだろ」
「…よ〜く分かってるじゃねえか」
そうして男達が一歩前に進んだところ。

「ガアアアアアアア!」

悲鳴が上がった。窓のほうからだ。
「どうした!?」
男の一人が駆けつける。
「な…」
絶句する。そこには罠があった。狩猟用の罠だがそれが仲間の足、腕を噛んでいる。誰が置いたんだ?なぜか頭に二人の少年の姿が浮かぶ。
「お、おい、これ…」
突然のことに驚いた男が振り返った時、始まった。

「戦闘の第一〜、とにかく打つべし!打つべし!」
栗色の髪の少年が一人の男の鼻頭を連続で叩きつける。
たかが子供の力、と思いきやその男はすぐに昏倒した。
その横では、

ガッ!ガッ!ガッ!

セトと呼ばれた黒色の髪の青年?が無言で敵を殴りつけていた。
「っ!こいつ等!」
そういってナイフを取り出したリーダーにセトは殴りつけた男の体を押し込む。
「うおっ!」
思わずナイフが当たらない様に退く。
そしてまた構えようとしたが、…いない。
どこだ、と思うまでもなくそのあごに拳が叩き込まれた。

「ひ」
一人に窓辺で難を逃れた男は迷う。
すでに戦闘は終わっていた。少年達は傷一つなく圧勝した。
セトが男を見る。
3人目を昏倒させた栗色の髪もこちらに向く。
「ゥ…うわあああ」
そのまま窓から逃走した。



「ふいい、中々熱いバトルだったぜ!」
倒れた男達を近くで採ってきたトトのツルで縛り上げる。このツルは切るのは簡単だがちぎるのは難しいすこし癖のある植物だ。
その言葉には何も返さずセトは淡々と最後の男を縛り上げた。
その光景をエキドナが見ている。今はもう縄は解かれ、服を着ている。
服といっても成長段階の胸を見せ付けるような服なのだが…
「いやあ、でも良かったよ助けられて。いや、もしかしてお楽しみ中だったかな?」
栗色の髪の少年が少女を見て困った笑いを浮かべる。
「いいや、違う。私は犯されてただけだ」
「おおう」
邪魔をしなかったことに安心していいのか、犯されたことを嘆くのか良く分からないんだろう。
「礼を言わせてもらう。その、ありがとう」
同い年のような子に改まって礼をするのは気恥ずかしい。
「いやあ、こっちもあれだよ、その〜、胸見ちゃったし」
照れ笑いを浮かべている。
「ふふ。私はいいんだぞ」
「えっ!まじで!」
驚く後頭部をセトがポカリと殴る。
「あで」
「フフ。そういえば、名前を聞いていなかったな。私の名前はパルメだ」
「おう、これはご丁寧に。俺の名前はラクルだ」
「…セト」
対照的な二人に自然と笑みがわく。
「…本当に、ありがとう」
「いいって」
「別に」
「……そういえば、お前達は人間の子供なのに性の知識を持っているのか?」
「性って…」
「ああ」
「そうなのか!?」
人間とは子供にはあまり性に関心を持たせないかと思った。
だがしかし、目の前の二人は子供というよりもうほとんど青年に近い。自分のようだ。うまく境界線を引けない年頃なのだ。だとすればもう性についても興味がわくのかもしれない。
「知識としてはな」
「そうそう」
「ふむ。そんなものか…」
そうしてしばし風の音に耳を傾けていたが、
「む。すまない、そろそろいかなければ、親が心配してしまう」
「おう、それはわるい。って俺たちも心配させてしまうわ」
「そうだな…」
そうして分かれようとしたところ、ふと、かすかだが疑問がわいた。
「待ってくれ」
「うん?」
すでに反対方向に背を向けていた二人が振り向く。
「その、……お前達、私を見て何も感じなかったか?」
「?感じるって?」
「私と……交わりたい、とか」
「ブフッ!」
ラクルが思わず吹いた。
「しなかったか?」
「いやあ、きれいだ、とか思ったよ。な?」
「ああ」
「いや、そうではなくて」
おかしい、自分も魔物のはずだ。嫌な性交だったとはいえ、辺りには魔力が充満していたはず。それに当てられた男性は大抵理性が吹っ飛ぶはずだ。なのに二人は何もしていない。それも子供、魔物でいえば最も発情する時期に。
きれいとは言われたが、自分に魅力が無いのではと思ってしまう。
「ん〜」
そういう気持ちを察したらしいラクルは困った顔でセトを見る。
セトはそれを見て、頷いた。
「あ〜、まああれだ。俺達が何も感じなかったからって落ち込むことはねえぞ。……俺達は、ちょっと、…特殊なんだ…」
困った顔で言うのが印象的だった。
「だから〜ああ〜、ま、そういうこと」
「……そうか…」
何かもやもやした感情が残ったが、私はそれ以上踏み込むことをためらい別れをつけることにした。
「それでは」
「ああ」
「じゃあな、トルトの加護がありますように!」
今度こそ3人は分かれた。



やはり先に市に戻るべきだろう、そこまでいけば私にも道が分かる。
坂を下りながら考える。
俺達は特殊、か。
なぜだかあの言葉が気になる。
どういう意味なのだろう。
考えてしまう。考えてしまう。考えてしまう。
するといつの間にか自分の下腹部が濡れていることに気付いた。
尾を伝い、地に流れ落ちている。
これは、…これが。
そう自覚したとたん何かが身を走り抜けた。
甘い衝撃だ。眼を閉じる。
再び開けるとその眼は妖しく濡れていた。
そうか、…私は、…あいつを…。
先程のラルクという少年を頭に描く。
これが、母の言っていた『欲しい』というものか…
「フフ…」
声が漏れていた。妖しく、熱く。
どれ程特殊だろうが、…私は、あいつが、

『欲しい』

次の性交のときこそ本当に気持ちよくなれそうだった。
11/11/23 10:50更新 / nekko
戻る 次へ

■作者メッセージ
いや〜書いた書いた。
素人丸出しの書きっぷりですが、楽しめてくれたら嬉しいです。
なるべく2ヶ月坊主にならないように頑張りたいです。
しかしいきなり惚れるのってどうなんでしょう?
でもやっぱり魔物娘ってこれと決めた相手とは、って思っちゃうんですよねえ。

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33