読切小説
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疑似彼女
 とある街の郊外の家電量販店。この店には裏の顔がある。
 店の奥にある部屋には、合言葉を知る一部の者だけが入れる特別な部屋がある。この部屋は魔術商品を取り扱っている。
 この店の裏の顔は、魔術ショップだった。

(さてと・・・今日も無駄に長い学校での一日が終わった。これからどうしよう?)
 俺。高梨一樹は、魔術が趣味だというちょっと変わったことを除けば、ごく平凡な高校1年生だ。
 俺はあまり人付き合いが得意ではないため、学校には友達がおらず、休み時間は一人で机に突っ伏して寝ているか、スマホを弄っている。当然、彼女が出来たこともない。所謂非リア充というやつだ。
 この高校では特にいじめのようなことが起こることはない。皆、それぞれ部活や恋愛やバイトと、自分の人生に精を出しているからだ。

 魔物娘入学不可の公立中学のときは学校に馴染めず、いじめを受けてフリースクールに通った。しかし、今となっては過去の思い出である。魔物娘と共学のこの高校ではそういうことはなくなった。
 魔物娘の先生達は人間よりも遥かに生徒を見渡す力が強い。特にゲイザーの先生は学校のことは全てお見通しなのだとか・・・。仮にそういったことがあってもすぐに先生達は対処するし、いじめをした生徒へは厳しい処分が待っている・・・らしい。起きたことがないみたいなので何とも言えないが。

「魔術ショップにでも行ってみるか。」
 俺はそう決めて、学校を後にした。

 郊外の大型家電量販店。家電、ゲーム、DVD、書籍、ホビー。多くのジャンルを網羅しており、品揃えも非常に良い。勿論、これらが目当てでここに立ち寄ることもあるが、本当の目的は別にある。

 俺はいつものように、5つあるうちの一番右の5番カウンターのサキュバスの店員に話しかける。
「いらっしゃいませ! 何か、お探しですか?」
「"魔界にも繋がるラジオはありませんか?"」
「・・・チューニングは?」
「"96SS"」
「こちらへどうぞ。」

 これがこの店の奥に入るための合言葉だ。
「あの、これ、毎回やらないといけないのですか? そろそろ顔パスでも・・・」
「店の決まりですから。フフフッ ようこそ! 魔術ショップへ。ごゆっくりとどうぞ。」

 俺はサキュバスの店員に案内され、魔術ショップに入った。
「こんにちわ。店長。」
「おや、一樹君。いらっしゃい。ゆっくりしていってね。」
 この人はこの家電量販店の店長の刑部狸だ。表向きはこの店の店長だが、裏ではこの魔術ショップを取り仕切っている。何でも、ビジネスの傍ら、ライフワークである魔術を研究していくにつれて多くの人脈を築き、この国にも、ひっそりと魔術師や魔法使いが集まれるような店を作ろうと思ったらしい。
 ちなみに、合言葉は店長から教わった。元々店長とは親しかったが、何故俺が魔術に興味を持っていることを知ったのかは謎だ。

 この店に集まる魔物娘や魔法使い、魔術師達とは顔見知りで、自分が親しく会話できる数少ない人達だ。

「そうだ。君に是非とも勧めたい商品があるんだ。」
 店長はカウンターの奥から白い箱を持って来た。商品名も値段も、何も書かれていない。
「なんですか? これ?」
「開けてごらん。」
「ええ・・・」
 俺は白い箱を開けてみる。

 中には、"ワラ人形"、"謎の液体"、"魔法の杖"、"黒色の赤い六芒星が書かれた大きな布"、"高そうな鏡"、"水晶玉"が入っていた。何かの魔術に使うことは分かるんだけど・・・。
「これ、なんですか?」
「ドッペルゲンガーの材料だよ。そして・・・」
 さらに、店長は人一人分入れるぐらいの大きな棺桶を取り出した。
「か、棺桶!?」
「これで全部だ。名付けて、ドッペルゲンガー召喚セット!」
「ドッペルゲンガーって、あの・・・?」
「そうだ。この道具一式で、ドッペルゲンガーを作り出すことができる。凄いだろ?」
「え、ええ・・・。」
 ドッペルゲンガーの存在は知っている。だけど、ドッペルゲンガーの召喚には、男性の失恋の無念と、魔物娘の大きな魔力が必要で、人間にはそう簡単に召喚できるとは思えないのだが・・・。

「今度から、このセット一式を取り扱おうと思っているんだ。そこで、君には購入者第一号となってもらいたい。」
「は、はぁ・・・(白い箱の方はともかく、この大きな棺桶を持ち帰るのか・・・街中で)」
「値段は、どれも高い魔力で作られたものだから、10万円ぐらいで売ろうと思っている。しかし、君には特別にサービスしてあげよう。」
「え? いいんですか?」
「ああ。そうだな・・・特別会員サービス、そして初の購入者特典として・・・3万円でいい。どうかな?」
「じゅ、10万円を3万円ですか!?」
「そうだ。まぁ、こっちとしても、まだ実績のない商品だから。でも、効果は保証するよ。この道具が一式あれば、君の魔術の知識なら必ずドッペルゲンガーを作り出せる。君にドッペルゲンガーに対する興味があれば、是非とも勧めたい。」
 10万円を3万円に。一般社会なら確実に詐欺だと思われるだろう。しかし、相手は刑部狸。俺は店長とは長い付き合いだし、店長のことも信頼している。この店の商品はどれも効果があったし、今までに何度も魔術を試みて神秘体験もして来た。だから、まがい物ということは絶対にないと思う。

(ドッペルゲンガーか・・・魔術師としては・・・興味ある。しかし・・・)

「ああ。召喚したドッペルゲンガーについては、君の好きにするといい。抱くなり売るなり処分するなりするといい。」
「店長・・・後半の2つは問題発言ですよ・・・でも、買います!」
「お、買ってくれるか! 毎度あり! 一樹君の幸運を祈っているよ。では、頑張ってくれ。」
 こうして俺は、白い箱と棺桶を3万円で買うことにした。

「ふぅ・・・ようやく帰って来れた。」
 俺は夕方に帰宅した。駅から徒歩15分程の住宅街の2階建ての家。そこが高梨家。俺の住まいだ。両親は海外出張が多いのであまり家に帰って来ない。
 この俺の部屋にはゲーム、漫画、アニメ、CDやパソコンなど、それなりに一般的な物も揃っているが、怪しい魔術道具や堕天使の置物、災難から身を守るネックレス、魔法の杖(前に思いきり振ったら物凄い勢いで炎が飛び出して危うく火事になるところだった)などがある。

 俺は友達もおらず、魔術ショップの店長や常連客とは親しいが、一緒にプライベートに遊ぶ程の仲ではない。そのため、俺は常に一人の時間が多いが、それなりに充実していると思う・・・彼女は居ないけど。
 自分の時間を全て自分のために使うことができるし、魔術はとても面白い。将来はオカルト系雑誌のジャーナリストかホラー映画の監督、魔法薬の薬剤師になりたいと思っている。
 勿論、友人に囲まれ、彼女と一緒にデートする・・・そんな一般的な幸せ、リア充に憧れがないと言えば嘘になるが、自分にはこう言った一人の時間の方が合っているのかもしれない。

「さてと・・・早速試してみるか!」
 俺は白い箱を開け、道具を一通り出す。下の方にマニュアルもあった。
 手順はそう複雑な物ではないが、別途用意する物が書かれていた。
・召喚主の精液(この精液によってドッペルゲンガーは主を判別する)
・召喚したい移し絵の写真
・召喚したい移し絵の一部

 移し絵とは、まぁ簡単に言ってしまえばドッペルゲンガーをどんな姿にしたいかということだろう。
 俺が召喚したい人は・・・あの人だ。水島キリエ。俺の中の憧れの人だ。

 水島キリエは、同じクラスのヴァルキリーだ。金髪のサイドテールに、青い瞳に顔立ちの良い顔をしており、容姿端麗だ。性格は真面目だが、優しく面倒見のいい人で、クラスの誰からも愛される存在だ。自分のようなクラスの輪に入れていない者にも、気さくに接してくれる。
 彼女と話したことは数回しかない。掃除のときにたまたま一緒になったときだけだ。普段はクラスメイトの友人達に囲まれていて、あの輪の中に自分は到底入ることはできない・・・いや、自分のような人間は入ることは許されないのだろう。

「う〜ん・・・一つ目はともかく、残りの二つは・・・ある。」
 自分の精液は問題ない。こう見えても、そっちの方は自信がある・・・皮は被っているけど・・・。
 写真は、俺のスマホにはキリエを隠し撮りした写真が666枚ある。プリンターも確か両親の部屋にあったはずだ。
 体の一部は、ちょっと前に体育の時間をサボったときに、女子更衣室からキリエのパンツとブラを入手し、そのときに偶然髪の毛がついていた。その髪は細いビンに入れて、オカズにしている。

(あれがオカズ以外にこんなところで役に立つとは・・・なんていいタイミングだ!)

「えっと、これをこうして、こうやって・・・」
 必要な材料が元から揃っていたので、作業はスムーズに進んだ。あとは、数時間後に、この黒色の赤い六芒星の布の家に置いた棺桶の中に召喚されるらしい。
 俺は召喚に必要な作業を一通り終えると、家のことをやることにした。

 俺は服を洗濯機に入れて洗濯し、夕食をインスタントラーメンで適当に済ませ、洗い物をしていた。

ドンッ! ドンッ!

「なんだろう? あ、もしかして!」
 俺は水を止めて、自分の部屋に向かった。

 ガタガタガタッ!
 棺桶の中から物音がしている。
 俺は、棺桶を開けた・・・棺桶を開けると煙が立ち込めたが、すぐに煙は消えた。そして、目の前には、キリエと全く同じ姿をした、ドッペルゲンガーが現れた。

「や、やったぞ! 成功だ!」
「あなたが、私のマスターですか?」
「そうだ。俺は一樹。君を召喚したんだ。君の名前は・・・そうだな。桐江。君は桐江だ。」
「分かりました。私の名は桐江。一樹様にお仕えします。」
「様はつけなくていいよ。まぁ、さんか君づけで。」
「分かりました。あの・・・」
「何かな?」
 俺はドッペルゲンガーの召喚に成功した達成感。そしてドッペルゲンガーの美しさに目を奪われていた。

「お洋服を着させていただけませんか? その・・・このままでは、恥ずかしいです。」
「そ、そうだな・・・まいったな・・・」
 俺は当然、男の洋服しか持っていない。かと言って、母親の服を着せるというのも変だ。

「分かった。明日、買って来る。今日は、もう寝ようか。」
「はい。一樹さん。」
 俺は桐江をベッドで寝かせ、俺は下のリビングのソファーで毛布を被って寝ることにした。

 目が覚めると、桐江が裸に、エプロンをつけて朝ごはんを作っていた。
「おはようございます。一樹さん。」
「お、おはよう・・・凄い格好をしているね・・・」
「台所にエプロンがありましたので・・・いけませんでしたか?」
「いや、いいよ。元はと言えば、服を用意していなかった俺が悪いんだし。」
 桐江は目玉焼きとトーストを用意した。
 テーブルの向かいには裸の桐江が座り、テーブルにはコーヒーと目玉焼き、トーストが並べられた。
「あの、一樹さん。こんなことを従者が頼むのはおかしいと思うのですが、よろしいですか?」
「何かな?」
「冷蔵庫の中を見ましたが、あまり食材が入っておりません。あと、インスタント食品があまりにも多すぎます。これでは栄養に偏りが出てしまいます。なので、少しお金を頂けませんか?」
「えっ?」
「ほんの少しで構いません。」
 確かに、お金を渡しておかないと買い物が出来なくて不便だろう。両親は俺のために一週間分の生活費を通帳に振り込んでくれる(一ヶ月分だといっぺんに使ってしまうからという理由で)。
 しかし、裸のまま買い物に行かせるわけにもいかない。
「分かった。少しお金を家に置いておくよ。」
「ありがとうございます!」
 桐江は嬉しそうに微笑む。
(あぁ、キリエの笑顔そのものだなぁ・・・。そういえば、キリエは本当に何でもできる人だ。料理も得意なんだろうなぁ・・・楽しみだ)

 前にキリエが家でクッキーを焼いてきて、クラス全員に配ったことがあって、そのときに食べたクッキーはとても美味しかった。

 俺は学校が終わると、魔術ショップに寄って店長に報告し、店長から「頑張ってくれ」と激励された。そのあと、一通り買い物を済ませて家に帰宅した。

「ただいまー」
「おかえりなさいませ。」
「今日は桐江にいろんな物を買ってきたよ。これは食材。適当に買って来ちゃったから、ちゃんとした料理が作れるか分からないけど・・・」
「・・・これだけあれば、簡単な物なら作れます。ありがとうございます。」
「あと、これは服。いくつか買って来たよ。」

 俺は買って来た服を着せてみた。
 俺が買って来た服はどれも女物だったので、とても緊張した。店員からは不審な目で見られたが、彼女へのプレゼントということで上手く誤魔化した。

 買ってきた服は、
・白のワイシャツと青いリボン。青いスカート。
・冬物の茶色のコート。青色のリブ生地のセーター。白色のマフラー。
・上下セットのロングスカートのメイド服。
・学校指定制服のブレザーとスカート(忘れ物の保管室で都合よく調達できた)
・学校指定の体操服とブルマ(キリエの物。前に入手していた)

 俺はいろいろと桐江に着せてみる。
「うん! どれもサイズはぴったりだね! それに似合っているよ!」
「ありがとうございます! あの、でも・・・どの服を着て過ごせばよろしいのでしょうか?」
「そうだなぁ・・・今の季節なら、白のワイシャツと、青いリボンと青いスカートでいいんじゃないかな。あと、出来れば日曜日だけはメイド服も着て欲しい。」
「分かりました。」
 他の服は、機会があるときに試そう。

「それでは、これから夕食の準備をしますので、一樹さんは休んでいてください。」
「分かった。じゃあ、頼むね。」
 俺は2階の自室に戻り、魔法の杖で魔法を試したり、座禅を組んでマントラを唱えたり、魔術本を読んで時間を潰した。

「一樹さん! 夕食の準備が出来ました!」
「わかった! 今行くよ!」
 俺はパソコンの電源を切って、下のリビングに降りた。

 すでに桐江は食事をテーブルに並べており、椅子に座っている。桐江が作った料理は肉じゃがだった。こういうちゃんとした料理を食べるのは久々だなぁ。
「それじゃあ、頂きます。」
「ふふっ 召し上がれ。」

「うん! 美味しい!」
「お口に合いましたか! ありがとうございます! ふふっ 嬉しいです!」
「そ、そんなオーバーだよ・・・」
「私、これからもっともっと一樹さんのことを知って、もっともっと仲良くなりたいです!」
「そ、そうか!(急にこんなことを言われるとビックリするよ! それに、顔はキリエそのものだし!) じゃあ、桐江は俺の従者ではなくて、彼女ということでどうかな?」
「私を彼女にしていただけるのですか!? 嬉しい!」
 桐江は喜んだ。
 ちゃんとした服を着て、そして微笑む桐江の顔は、まさにキリエの顔そのものだった。

 そういえば、今日店長に相談したときに・・・
「召喚には成功しました。しかし、なんというかその・・・感情があまり無いと言うか・・・本来、自分の理想の性格とはちょっと違うんですよね。魔物娘図鑑には、理想の性格になると書いてあったはずなのに・・・」
「それは恐らく、召喚したばかりだからだろう。心配するな。そのうち、君の理想の性格のドッペルゲンガーになるだろう。」

 そういえば、ちょっとずつだけど、感情を出すようになって来ているように感じる。まぁ、しばらくすれば、キリエみたいになっていくだろう。俺は焦らず、様子を見ることにした。

 土曜日この日は午前中で終わりだ。学校では遠目からキリエを眺めて楽しみ、放課後、俺はまっすぐ家に戻った。
「ただいまー」
「おかえりなさい! 一樹君!」
「うわっ」
 帰って来るやいなや、メイド服を着た桐江は俺に飛びついてきた。・・・キリエのパンツの臭いと同じ、いい香りがする・・・。

「あの、桐江。 その格好は?」
「一樹君が、日曜日はメイド服を着るようにとおっしゃったので! 明日は日曜日です。」
「そうだったね・・・」
「どう・・・ですか?」
「似合っているよ。」
「ありがとうございます!」

 俺は夕飯までの時間の間、パソコンで魔法系のサイトを見ながら、考えていた。
(桐江を召喚して2日目。早くもキリエの面影が出始めて来た。彼女はドッペルゲンガーで、俺の彼女。そして俺は彼氏であると同時に召喚主。・・・手を出しても、いいんだよな?)
 年齢=彼女いない歴の俺にとって、生身の女性(ドッペルゲンガーだけど)と裸の関係になるのは悲願だ。しかし、その一歩を踏み出すのは、童貞にとっては高く険しい壁だった。

 俺は頭の中がぐるぐるしていた。
「一樹君ー! ごはん出来ましたー!」
「あ、ああ! 今降りるから!」
 くそっ! 余計に興奮して来た!

 今朝、桐江にお金を渡しておいた。駅と反対方向にスーパーがあり、食材が安く買えるらしい。さすがに、メイド服で外出はしなかったみたいで、安心した。
 桐江は今日、カツカレーを作ったようだ。
「カツカレーか! 久しぶりだなぁ・・・ずっと、カップ麺や冷凍食品ばっかりだったから。」
「ふふっ 喜んでいただけで嬉しいです。」
「それじゃあ、いただきます。」
 俺は桐江の作ったカツカレーを食べた。

「うん! 美味しい!」
「お口に合いましたか? よかったです。あ、お風呂も沸かしてあるので、入ってください。」
「わかったよ。」
「あの、一樹君は明日はお休みですよね?」
「うん。第一と第三土曜日は午前中だけ授業。他の土日は休みだよ。」
「よろしかったら、どこかへ遊びに行きませんか?」
「いいけど・・・俺、あまり楽しい場所とか知らないから、つまらないかもしれないよ?」
「いいんです。一樹君がいつも行っている場所で!」
「わかった。じゃあ、明日は出かけようか。」

 これって、いわゆるデートというやつじゃないか!? 俺は興奮して、心臓が爆発しそうだった。

 夕食後、俺はお風呂に入ることにした。
「一樹君。お背中流します。」
「うわっ! ちょ、ちょっと桐江!?」
 浴室にバスタオルを巻いた桐江が入って来た。咄嗟の出来事に、俺は頭の中が真っ白になり、さらには慌ててイスから立ち上がったため、股間を丸出しになってしまい、慌てて手で隠した。
「ごめんなさい。驚かせるつもりはなかったの。」
「ちょ、ちょっと早く出てよ!」
「いえ。お背中を流させて頂きます。さ、後ろを向いてください。」
 一瞬、桐江の眼が赤色に光った。眼が合った瞬間、俺は硬直して動けなくなった。
「桐江!? 何をしたの!?」
「大丈夫です。一樹君に害を与えるものではありませんから。」
「動けないんだけど! うわっ!」
 桐江は沫を手に付けて、背中を撫でまわすように洗い始めた。
(女の子の手が・・・自分の背中に・・・)
「せっかくですから、体の前も洗ってしまいましょう。」
 桐江はさらに体を密着させる。桐江の柔らかい物が背中に触れる。
(桐江の手が・・・自分の体に・・・)

 桐江は自分のお腹や胸。首筋などを撫でまわすように洗う。既に自分のペニスは限界まで勃起していたが、そんなことはお構いなしに、乳首や首筋、脇の下の敏感なところにも、いやらしく撫でて洗った。
 しかし、わざとらしく、ペニスだけは洗ってくれなかった・・・。

 桐江はシャワーで俺の体についた沫を洗い流す。
「湯加減はいかがですか?」
「だ、大丈夫だよ! それよりも動けるようにして!」
「分かりました。」
 桐江に拘束魔法を解いてもらい、俺は動けるようになった。
「ふふっ 綺麗になりましたね。よかったらこのままご一緒に・・」
「いや、俺はもう出るよ! じゃっ!」
 俺は慌てて浴槽を出て、急いで着替えを済ませて自室に戻った。
 そして、桐江が入浴している間に、オナニーを済ませておいた。
(全く・・・突然あんなことをするなんてビックリしたよ・・・緊張で死ぬかと思った。にしても、桐江はやっぱりドッペルゲンガーなんだな・・・)
 一応、元になったキリエはヴァルキリーで高い魔力を持っているから、桐江が魔法を使えても不思議ではない。それに、ドッペルゲンガーも魔力を持っているはずだ。

「じゃ、じゃあ桐江はベッドで寝ていいよ。俺は下で寝るから!」
「一樹君も一緒に寝ましょう。」
「いや、このベッド、一人用だし・・・じゃあ、おやすみ!」
「体を寄せ合えば2人眠れ・・・行ってしまいましたか。ふふっ」

 この日の夜、俺は興奮してなかなか寝付けなかった・・・。さて、明日はどこへ一緒に行こうか?
(魔術ショップは・・・デートで行くところじゃないな。ゲームセンターは、一人でも行けるし、オタクロードは・・・ドン引きされるから却下。ここは無難に、海沿いにある遊園地に行こう。)
 俺は考えをまとめるうちに、気づいたら眠っていた。

 俺はソファーの上で目を覚ました。既に桐江は起きて朝食の準備をしている。
「おはよう。桐江。」
「おはようございます。一樹君。」
「今日は、遊園地に行こうか。ちょっと遠いけど、海沿いにあるんだ。」
「遊園地ですか! いいですね!」
「夜は夜景も綺麗だから、観覧車から綺麗な景色が見えると思うよ。」
「そうなのですか! 私、観覧車大好きです!」

 俺と桐江は朝食を済ませたあと、支度をして遊園地に向かった。

 休日だけあって、遊園地はかなり人が多かった。俺は受付で一日乗り放題券を買って入園した。

「観覧車は、夜に乗った方がいい景色が見れるから、あとにしよう。」
「分かりました。あの、私、あれ乗りたいです!」
「いきなりジェットコースターはちょっと・・・」
「さっ! 行きましょう!」
「うわちょっと!」
 桐江は俺の手を取ってジェットコースターに向かった。
 キリエもジェットコースターとか好きなのだろうか・・・? ちょっとイメージできない。

「楽しみですね! ふふっ」
「もう、降りたい・・・うわあああ!!」
「きゃあああ!!」
 ジェットコースターのトロッコが下りに差し掛かった途端、一気に下り坂を下る。重力で体が押しつぶされそうな独特な感覚が体を襲う。

「楽しかったわね!」
「刺激が強すぎたよ・・・。そうだ! あそこはどう?」
「お化け屋敷ですか? 私はちょっと、恐いです。」
「君、ドッペルゲンガーなのに?」
「魔物娘でもお化けが恐い子は居ます!」
「わかったわかった。多分、そんなに大した物じゃないと思うから、行ってみよう! ね?」

 俺と桐江はお化け屋敷に入った。
 お化け屋敷の中は、低予算で作られたようだが、それなりに工夫して作られており、よく出来ていた。
 人間のお化け役の人も居たが、アンデッド系の魔物娘もたくさん居た。皆、演技に磨きがかかっている。
「なかなかよく出来ているね。ネズミの遊園地よりも、こういう作り込まれたお化け屋敷の方が見ていて楽しいね。」
「そそ、そうね・・・!」
 桐江は恐がって俺の腕にしがみついたままだ。どうやら桐江はホラーが本当に苦手らしい。

「きゃあああ!!」
「うわっ!」
 グールが脅かしたとき、桐江はびっくりして驚き、俺に抱き着いた。・・・桐江の柔らかい物が肩に・・・
(ありがとうございます! グールさん!)
(ヘヘッ 得したな! 少年!)

 桐江が恐がって肩にしがみついている間に、俺はグールに軽くお辞儀をした。

「もう嫌です! 早く出ましょう!」
「もうすぐ出口だよ。ほらっ!」
 残すところ、コーナーはあと一つだ。

 最後のコーナーは、和式の部屋に昭和時代の古い家具が置かれた部屋に出た。そしてリッチが謎の液体を湯のみに入れて俺と桐江に差し出した。
「・・・飲みなさい・・・」
「ど、どうも・・・・ありがとうございます・・・」
 俺と桐江は謎の液体を飲む。
 ・・・苦い。これは知らない人が飲んだら、お化け屋敷の雰囲気と相まって恐くてたまらないだろう。しかし、自分はこの液体が何かを知っている。この液体の正体は漢方茶だ。東洋魔術ではそこそこ名を知られた銘柄なので毒はない(むしろ体にはいい。苦いけど)。

 突然、上から柔らかい、赤い物体(スライムの分体)が降って来た。
「うわっ! びっくりした。」
「きゃああああ!!」
 桐江は驚いて一人で出口まで走って行ってしまった。
「ちょ、ちょっと! 桐江! あ、お茶、ご馳走様でした。」
「幸運を祈りますよ。」
 リッチはウインクして、俺を見送った。ちなみに、このリッチは魔術ショップ繋がりの知り合いだ。
 出口付近ではゴーストやゾンビ達が出迎えていた。
「お疲れさまでした! またいらしてくださいね!」
「あの、すみません! ちょっと前に、女の子が来ませんでしたか?」
「ええ。先ほど走って出て行ってしまいましたよ。」
「わかりました。ありがとうございます。」

 お化け屋敷を出たところにあったベンチに、桐江は座っていた。
(う〜ん・・・ちょっと申し訳ないことをしたかな・・・何か買って行ってあげよう)

 俺は近くの売店でホットミルクティーを2人分買って、桐江のところに向かった。
「桐江ー 大丈夫ー?」
「・・・もう! 一樹君酷いです!」
「ごめんごめん。はい、これ。」
 俺はホットミルクティーを桐江に渡す。飲み終える頃には桐江の機嫌も治ったようだ。

「次は、何に乗ろうか?」
「コーヒーカップなんてどうかな?」
「いいね。じゃあ、次はコーヒーカップにしようか。」
 俺と桐江はコーヒーカップに向かった。

「ちょっと、調子に乗りすぎた・・・ごめん・・・」
「大丈夫ですよ。ふふっ」
 俺はコーヒーカップで調子に乗りすぎてたくさん回してしまい、酔ってしまった。桐江は終始楽しそうにはしゃいでいたが、何で平気なのだろう?

「そろそろ丁度いいね。」
「ええ。大分暗くなって来ました。」
「行こうか!」
「ええ!」
 夜になり、街灯がつき始めた頃、俺と桐江は観覧車に向かった。

「うわぁ〜 綺麗ね!」
「そうだね。いつか、この観覧車に女の子と一緒に乗りたいってずっと思っていたんだ。一人で乗るのは・・・ちょっとね。」
「ふふっ 私も一樹君と観覧車に乗れて嬉しいです!」
 この観覧車は夜になると7色に光り、外観も綺麗だが、やはり内部から見る夜景は絶景だった。
 高層ビルや高層マンションのライトの光や、高速道路を走る自動車の光。街中の街灯の光。これらが組み合わさる景色は神秘的だった。
「この辺りは夜景が綺麗で、一人のときは、よく海辺の公園で眺めていたよ。そして、この辺りは高級マンションも多いんだ。きっと、夜景も綺麗だろうね。」
「そうでしょうね。最上階の部屋から見る夜景はきっと綺麗でしょうね。」
「心の中では、いつか夜景が綺麗なマンションに住んでみたいと思っているんだ。・・・無理だろうけど。」
「私は、一樹君が一緒ならどんな家でもいいです。」

 観覧車が頂上に達した。あとは少しずつ降りて・・・この神秘的な景色も見られなくなり、地上に戻る。
「一樹君・・・」
「き、桐江?」
 桐江は俺の手を握り、そして唇を合わせた。
(これって・・・桐江の・・・柔らかい・・・それに・・・桐江の臭いがする・・・き、桐江!?)
 桐江は舌を強引に俺の口の中へ入れ、唇も歯も強引にこじ開けられてしまい、口の中を味わうかのように舌を這わせた。

「ぷはっ 桐江・・・」
「愛しています。一樹さん。」
「お、俺もだよ・・・」
 俺は頭で考えるより前に、桐江の肩を掴んだが、そっと払われてしまった。
「桐江? なんで・・・?」
「慌てないでください。家に帰ってからです。」
「そ、そんな・・・もう・・・限界だよ!」
「ほら、もうすぐ地上に着きますよ。大丈夫です。夜は長いですから・・・ふふっ」

 帰り道。俺は胸が張り裂けそうなぐらいに緊張し、肉棒は限界まで張り詰めて勃起し、先走り汁がパンツの上からでも分かるぐらいに溢れていた。
 桐江は電車の中でも、腕を組んだり、首筋に息を吹きかけたり、ゴミがついているから取ってあげると言いながら、俺の太ももを撫でまわしたりしたので、俺はずっと興奮が止まらなかった。
 
 今思うと、あの観覧車のキスのとき、魔力を移された。そして、帰るまでの間、桐江はずっと俺の性欲をそそる行為を取り続けていた。

 ようやく、自室に帰ってきた。

「やっと家に着きましたね。ふふっ 電車に乗ってた女子高生、一樹君がムラムラしているのを分かっていたみたいですよ。顔を赤らめてましたし、チラチラ一樹君のおちんちんを見ていましたよ。」
「き・・・桐江! もう限界だ!!」
「キャッ! だ、ダメです! ちゃんとシャワーを浴びてからでないと!」
「ごめん! もう抑えられない!! 桐江!!」
 俺は服を全部脱ぎ去って裸になると、桐江も自ら服を脱いだ。

「それじゃあ、失礼しますね・・・キャッ!」
「ご、ごめん!」
 桐江の指が俺のペニスに触れた瞬間、あっけなく暴発してしまった。
「大丈夫です。ふふっ まだまだ元気ですね。それじゃあ・・・」
「うっ!」
 桐江は俺のペニスを口に咥え、舌を躍らせ、飴を舐めるかのように、美味しそうにペニスを味わう。
「我慢汁でずっとべとべとだったんですね。ふふっ ちょっと臭いですよ?」
「そ、それは・・・桐江が・・・」
「ふふっ 私のせいにするのですか? 興奮していたのは一樹君ですよ?」
「だ、だって! 桐江が可愛いから!」
「ふふっ ありがとうございます。それじゃあ、また出させてあげますね。」
「ううっ!」
 桐江の激しいバキュームフェラで、俺はまたもやあっけなくイッてしまった。
「うぷっ! ・・・こんなにたくさん・・・一樹君の精子。」
「ご、ごめん・・・大丈夫?」
「謝ることないです。一樹君の精液・・・濃くて・・・量も多くて、臭いも強烈です。でも、美味しいですよ。んっ」
 桐江は口の中で俺の精液を音を立てて味わいながら、全て飲み干した。

(桐江が・・・俺の精子をあんなに美味しそうに・・・!!)
「キャッ!」
「桐江! そろそろ!」
「ええ。いいですよ。さぁ、私の中を、一樹君の立派なおちんちんで思う存分かき回してください。私のおまんこも・・・もう限界です。」
 桐江のおまんこは、入り口が愛液で濡れていて、ペニスを今か今かと待ちわびているように見えた。

「じゃあ、入れるよ・・・」
「はい・・・んっ!」
「うわっ!!」
 亀頭が膣内に入るや否や、桐江の膣は亀頭を咥えてキュッと締まり、俺はたまらず射精してしまった。
「また暴発してしまいましたね・・・ふふっ 一樹君のエッチ。」
「ご、ごめん・・・」
「ほら、ちゃんと奥で中出ししないと、童貞卒業できませんよ?」
「う、うん!」
 俺はペニスを桐江の奥まで一気に入れた。
 桐江の子宮は亀頭に吸い付き、ヒダはうねうねと竿を刺激して射精を促す。まるで生き物みたいだ。
「うう!」
「あら、さっき出したばかりなのにまた・・・。でも、まだまだ収まらなそうですね。」
「ごめん・・・さっきから、すぐイッちゃってばかりで・・・」
「いえ。私で気持ちよくなっていただけているということなので、嬉しいです! ただ、ちょっと早いですね。」
「うっ・・・」
「それはこれからも私が一樹君のおちんちんを鍛えてあげますから安心してください。それよりも、ホラッ! あたしまだイッてないです! 一樹君の方から自由に動いてください! 乱暴でも構いませんから! さ!」
「わ、わかった!」
 俺は何度もペニスを出したり入れたりして、桐江の中を突き上げる。桐江の子宮も突き上げるたびに亀頭に吸い付き、ヒダは竿を刺激したり、巻き付いたりする。
 俺が激しくピストンすると、桐江も徐々に顔を赤らめ、感じていることが分かった。その間何度も射精したが、、それでも萎える様子は全くなかった。

「あぁん! ああぁ! あん!!」
「桐江! イクよ!」
「あたしもイク!」
 俺が今までで最も多くの精液を中に放つと同時に、桐江も絶頂し、潮を吹いた。
 手に着いた桐江の潮を舐めてみると、ちょっとしょっぱかったが、不思議と美味しかった。

「桐江・・・」
「これで、私と一樹君は結ばれました。もう、私は完全に一樹君の女ですよ。」
「うん・・・絶対に、桐江を大切にする。愛しているよ・・・」
「私もです・・・おや、まだ・・・」
「ご、ごめん・・・空気壊して・・・」
「いいえ。私はもう完全に一樹君の女の子なのですから、一樹君が収まるまで、好きにしてください。」
「わ、わかった・・・それじゃあ!」
「キャッ!」

 俺は桐江を押し倒し、桐江のそこそこ大きく、そして形もよく揉み心地のあるおっぱいに顔を沈め、乳首を赤ん坊のように吸った。
 俺はペニスを桐江のおっぱいの谷間に強引に入れ、桐江はおっぱいの乳圧を上げる。強引に出したり入れたりする。これがパイズリセックスというやつだろうか?
 俺は乳内射精し、桐江のおっぱいの谷間からは精液が収まりきらずに溢れ、飛び散った。
 俺は桐江の頭を掴んでイマラチオでペニスを咥えさせ、何度も射精した。さすがにやりすぎてしまったのか、数回後には桐江は口から精液を吐き出してしまった。

 その後、俺は桐江が何度絶頂し、潮を吹こうがお構いなしにセックスをつづけ、早漏なのでイクのも早かったが、精液の量も多く、萎える気配も全然なかった。
 射精しながらのピストンを繰り返し、桐江は完全に果ててしまい、俺も最後には潮を桐江の中に出して、意識を失った・・・。

「う〜ん・・・おはよう。桐江。」
「おはようございます。朝食、出来ていますよ。」
「ありがとう。そうだ、今日、夕方辺りに駅の西口の公園に来てくれないかな? 制服着て。」
「え? いいですけど、制服を着るんですか?」
「うん。よろしく。」
 俺は朝食を済ませて、玄関まで見送られ、学校へ向かった。

 魔物娘彼女が出来た。童貞を卒業した。リア充になった。
 俺の中では人生の大きな転換点となったが、周囲はそれを知る由もないし、学校もいつも通り、何ら変わりない平凡な日常が続く。
 ただ、一つ変わったことと言えば、キリエに対してあまりときめかなくなったのと、クラスの輪を見ても何も思わなくなった。家には桐江が居る。それだけで俺は幸せなのだから。

 放課後、俺は帰り支度を始めていた。
「あの、高梨さん、すみません。体育倉庫の整理を頼まれたのですが、一人来れなくなってしまって・・・。申し訳ないのですが、手伝っていただけませんか?」
「う〜ん・・・すいません。今日は人と会う予定があって、もう待たせてしまっているので・・・」
「そうですか・・・。」
 キリエから体育倉庫の整理を頼まれた。以前の俺なら間違いなく応じていただろう。体育倉庫で二人きり。それを考えると胸が躍ったものだ。しかし、今の俺は以前ほどキリエに対してときめきのような物を抱かなくなっていた。

(キリエさんには悪いけど、桐江を待たせているのは本当だ。そういえば、体操服も前に用意していたよな。今度桐江に着せてみよう)

 駅の西口の公園のベンチに、制服を着た桐江は座っていた。こうして見るとほぼキリエと区別がつかない。だけど、桐江に対しては胸がときめくんだよな。全く同じ外見でも、どうして心が躍るんだろう?

「桐江ー! お待たせ! 待たせちゃったかな?」
「いえ。私も今来たところです。」
「それじゃあ、行こうか。」
「ええ。」

 俺と桐江はゲームセンターに入り、ガンシューティングやミュージックゲーム、UFOキャッチャーをして楽しんだ(UFOキャッチャーでは、アームがぐらぐらでぬいぐるみを取れなかった)。
 その後も店長の家電量販店へ行き、アニメや漫画の商品を見て回った。魔術ショップにも連れて行き、店長にも桐江を紹介した。
 店長は桐江に対してとても興味を持っていたが、なにやら変なクスリを桐江に飲ませようとしていたので止めた。
 店長は帰り際に「君が愛する相手は紛れもなく君の伴侶だ。頑張れよ。」と意味深い謎の言葉を残した。

 そして、最後にカラオケ店にやって来た。

「僕らは今叫ぶ〜♪ 壊レタ世界ノ唄〜♪」
 この曲は俺の好きなとあるゲームの主題歌だ。
 実は俺は未だかつてカラオケ店に入ったことはない。一緒行く友人も居なかったし、かと言って一人で行く気にもならなかったし、俺は音痴だ。中学の合唱コンクールでも口パクで誤魔化していたほどだ。
 だが、カラオケ店に来た本当の目的は歌うためではない。

「ふふっ 一樹君の歌声大好きです!」
「や、やめてよ・・・お世辞だって丸分かりだよ。」
「あら、私はお世辞など言いませんよ? 思ったことをありのままに話しているので!」
「俺はあまり歌うことは好きじゃないんだよ。」
「え? では、どうしてカラオケに?」
「いや〜 それはね・・・ずっと、女の子と制服デートしたいと思っていたんだ。で、男女で密室のカラオケボックスに入ってやることと言えば・・・」
 俺は桐江の脚を掴んで強引に開脚させ、スカートの中に顔を突っ込んだ。

「そうだ! これ飲んでみて!」
「女の子にこんなことをさせるなんて・・・エッチの極みですね!」
 ズズズッ・・・
 桐江にペニスを手でしごいてもらい、何度も空のコップに何度も出した。そして、精液で一杯になったコップを桐江に飲ませた。

「甘さと苦さが混ざった絶妙な味がするわね。ふふっ 一樹君の味。」
「そ、そんなに美味しそうに飲まれると、照れるかも・・・。」
「でも、やっぱり直に味わうのが一番ですね!」
「俺も、直にされるのが好きだ!」
 桐江は俺のペニスを咥え、激しく頭を動かした。
 俺は何回射精したか分からず、桐江もたくさんの精液を飲んで満足し、お互い疲れてソファーに抱き合って寝そべっていた。

「桐江・・・愛しているよ・・・」
「私もです・・・一樹君・・・」
 俺と桐江は唇を重ねた。
 そんな中、カラオケボックスのインターホンが鳴り、時間終了の知らせを聞いた。
「お部屋・・・汚しちゃいましたね・・・」
「まぁ・・・若気の至りってことで・・・」
「ふふふっ」

 カラオケボックス内のソファーとテーブルは俺の精液が四方八方に飛び散っており、部屋中にイカ臭い香りが充満していた。これを掃除する店員はたまったものじゃないだろうな・・・最悪、出禁食らうかも。

 俺と桐江は会計を済ませ、帰宅した。

 今日の学校は確か少し早く終わる。最後の時限の教科の先生が休みだからだ。
 そんな中、クラスメイトの女子から声をかけられた。
「あの、高梨君。ちょっと、いいかな?」
「ん? 何かな?」
「昨日、キリエちゃんと一緒に居た?」
「え、え!? いや・・・」
 そんな中、偶然会話を聞いていたキリエ本人がフォローをしてくれた。
「私は昨日、体育倉庫の整理をしていたわ。あなたも一緒だったでしょう?」
「そ、そうよね! 同じ人が同時に存在するなんてあり得ないわよね! ハハハ・・・ごめんね!」
「ううん。気にしないで。自分も昨日は、まっすぐ帰ったから。」
 どうやら、昨日街で桐江と一緒に歩いているところをクラスの女子に見られていたみたいだ。幸いこの子は昨日、キリエと一緒に体育倉庫で整理を手伝っていたみたいだから、簡単に誤魔化せたけど・・・。
 思えばうかつだった。クラスメイトが居てもおかしくない学校の近くの地元の街中で一緒にデートなんて。変な噂を立てられても困るし、キリエも迷惑だろう。

 俺は一日対策を考えながら、下校した。

 家に帰ると、私服姿の桐江が俺をキスで迎えた。
「あのさ、桐江。ちょっと話があるんだけど・・・」
「何ですか?」
「これからは、あまり駅の周辺を一人で歩かないで欲しいんだ。」
「え? どうしてですか?(スーパーは駅と反対方向にあるからいいんですけど・・・)」
「あと、制服を着て外に出ないように。実は・・・」
 俺は今日の一件を桐江に説明した。
「そうだったのですか。確かに、一樹君のクラスメイトが歩いている可能性は高いですね。」
「うん。学校には、桐江のことは内緒にしておきたいんだ。キリエに迷惑がかかると思うし、何よりも、学校では変に目立ちたくないんだ。」
「学校で、目立ちたくない?」
「そう。俺は学校では常に陰に居ないといけない。教室の隅が俺の居場所。クラスの輪の中には入れないし、入っちゃいけない。でも、いいんだ。慣れっこだから。」
「一樹君・・・」
 桐江は悲しみと哀れみの混ざった表情で、俺を心配する。
「それに、今は桐江が居るから。じゃあ、ちょっと疲れたから寝るね。ご飯できたら起こして。」
「ええ。分かりました。」

 その後、桐江に起こされてリビングに降り、一緒に夕飯のハンバーグを食べた。
 食事を済ませたあとは一緒にお風呂に入って、お互いに体を洗い合った。入浴後は余暇を一緒に、ゲームをしたり、魔術の勉強をしたり(桐江から魔術を教わった)、アニメやAVを一緒に見て過ごした。
 そろそろ寝る時間だ。

「そうだ、桐江。今日から一緒に寝よう。」
「はい!」
「ちょっと狭いけど、ごめんね。」
「私は一樹君と一緒なら床でもいいですよ!」
「ハハハ・・・まぁ、少し貯金が溜まったら、ダブルのベッドを買おうか。」
 このベッドはシングルだが、ギリギリ2人分の寝るスペースはある。

 俺と桐江は抱き合って眠った。
 桐江の匂いがする・・・不思議と、桐江を抱くと心が落ち着いて、一人で眠るよりもよく眠れる。

 放課後。俺は帰ろうとしたときに、キリエに呼び止められた。
「あの、高梨君。ちょっと、いいかな?」
「ごめん! 今日急いでるから! じゃあ!」
「あ、高梨君!」
 何かちょっと変だったような気がするけど、特に気に留めることもなく俺は帰宅した。
 ここのところ外出やデートで出費がかさんだ。デートは1時間以上離れた街で遊ぶ用にしている。地元でクラスメイトと出くわすリスクを減らすためだ。それに、この街は遠いが、同時に地元よりも繁華街が充実している。

「ただいま!」
「おかえりなさい!」
「あー、喉乾いた! ミルクティー作って欲しいな。」
「わかりました!」
「ミルクは桐江のミルクがいいなー なんてっ!」
「ふふっ! エッチ! それなら、一樹君が頑張って私を妊娠させてくださいね!」
「う・・・さすがに、高校生で子持ちになるのは・・・」
「あら、私は今すぐにでも一樹君の赤ちゃんが欲しいですわ! 一樹君の子は、きっと可愛いですよ!」
「ははは・・・どうかな・・・」
 桐江はミルクティーを作り始めた。

 ガチャンッ!
 桐江がカップを落としてしまったようだ。
「大丈夫!?」
「え、ええ・・・ごめんなさい・・・」
 俺と桐江はカップの破片を片づけた。
「桐江・・・なんだか、顔が赤いよ?」
「ええ・・・実は一樹君が帰って来てからずっと・・・胸の動悸が止まらないの。」
「ちょっと、横になろうか。」
 桐江はどうやら俺が帰宅した辺りから様子がおかしいようだ。顔は赤いし、呼吸も乱れている。発情とは雰囲気が違うし、かと言って病気・・・というわけでもなさそうだ。確かに額に手を当てると少し熱かったが、体温計で体温を測ると平熱だった。
「そうでした・・・今・・・洗濯物・・・入れないと・・・」
「無茶だよ! 今は安静にしていないと!」
「大丈夫です・・・」
 桐江は立ち上がり、俺の静止を振り切って立ち上がったが、直後に倒れてしまった。
「桐江!? 桐江! しっかりして!」
 俺は倒れた桐江をソファに寝かせ、肩を揺さぶったり呼びかけたりしてみる。しかし、意識を失ったままだ。

(一体どうしたんだ!? 桐江に何が起こっているんだ!? 救急車を・・・いや、ダメだ! 桐江はドッペルゲンガーだ! 人間の医者には治せない! かと言って魔物娘の病院は電車で2時間以上かかる・・・そうだ! 店長だ!)

 桐江の状態は発情ではない。かと言って病気でもない。しかし、体に何かしらの悪影響がある。それが何なのか分からないが、刑部狸の店長ならば、何か分かるのではないか?
 俺は店長に電話した。
「もしもし!」
「おお、一樹君か。どうした? 今日は店に来ないのか?」
「それどころじゃないんです! 桐江の様子がおかしくて・・・倒れたんです!」
「なんだって!? それで、容態は!?」
「なんだか発情しているかのように、目がとろんとしていて、顔が赤くなって、汗がたくさん出て・・・でも、発情しているにしてはおかしいんです!」
「熱は?」
「平熱でした! でも、額は熱いです!」
「何か引っかかるな・・・分かった。これからそっちへ行く!」
「お願いします!」
 電話を切って数秒後、店長は移動魔法でリビングに現れた。

 店長は白衣を着て、聴診器を首からぶら下げ、大きなバッグを持っていた。ちなみに、店長は魔術医の免許も持っている。昔は薬剤師と並行して医師をやっていたようだが、当時のこの国には魔術医を認めておらず、廃業させられたという話を聞いた。

「これは・・・う〜ん・・・」
「何か、分かりますか?」
「魔力が暴走している。それに、魂が強く共鳴しているな・・・これは!」
 店長はバッグから魔術雑誌を取り出した。

「これだ! 感応現象。ジャリエとオフィーリアという学者が唱えた学説なんだが、症状がそれに酷似しているな。」
「ジャリエとオフィーリアって言ったら・・・」
「ああ。魔術協会では知らない者は居ない、感応論の権威さ! 感応現象が本格的に研究され始めたのは近年に入ってからだが、私もまさか本当に起こるとは思っていなかったよ・・・。」
「あの、桐江は一体どうなってしまったのですか!?」
「とりあえず、命に別状はない。しばらくすれば目を覚ますだろう。だが、問題は、ドッペルゲンガーである彼女が、何者かと感応してしまっていることだ。普通、感応現象は愛し合う者同士か、縁の深い者同士で起こると言われている。一樹君。君に何か変わったことは?」
「いえ。俺は何も。」
「そうか。となると考えらえるのは、ドッペルゲンガーの元になった素体。つまり、君が思い描いた人物だ。その子はどんな子なんだ?」
「美して、育ちのよくて、性格もいいヴァルキリーです。名前はキリエ。」
「キリエ・・・か。まずいな・・・名前があまりにも似すぎている。どうやら、その元のキリエと、ドッペルゲンガーである桐江の間に、何らかしらの絆が出来てしまったようだ。」
「それで、どうしたらよいのですか?」
「ちょっと、待ってくれ。」
 店長はバッグから水晶玉を取り出し、呪文を唱えた。
 水晶玉に、キリエの姿が映される。数分前まで、オナニーし、そして果てたようだ。・・・あの清楚なキリエが・・・オナニーするなんて想像もしたことなかった。
 そういえば、キリエの様子が、最近ちょっとおかしかったような気がする。今考えると・・・だけど。

「そういうことか!」

 店長曰く、キリエと桐江の間に魔術的な絆が出来てしまい、感応してしまったようだ。俺のキリエに対するかつての恋心と、桐江に対する恋心がリンクし、感応現象を引き起こしてしまったようだ(名前が似ていたのも原因だった)。
 現在の桐江の状態は、魔力が暴走状態にあり、理性も不安定になっている。また、キリエとの間で魂だけでなく、肉体的な意識までもが繋がってしまう。
 つまり、桐江が痛がればキリエも痛がり、桐江が気持ちよくなればキリエも気持ちよくなるということだった。

「感応によって繋がれた絆は切り離すことは困難だし、大きなリスクを伴う。最悪、死ぬ。」
「じゃあ、どうしたら!?」
「魔力の暴走を抑えるしかない。そうすれば、ある程度感応状態を制御できるはずだ。それにはまず、2人が繋がっていることを本人達が自覚しなければならない。そして、君がキリエに対して、真実を告げるんだ。」
「そ、そんな!? 俺が愛しているのは桐江であって、キリエじゃない! まして、俺の勝手な片想いを押し付けろって言うんですか!?」
「それしか方法はない! ・・・医者というのはね。体の病は治せても、心の病までは治せないのだ。あとは、君次第だよ・・・。」
 店長は道具を一式しまい、帰宅の準備をした。

「店長。今日はありがとうございました。あの、診察料は?」
「いや、いらないよ。今の私は家電量販店魔術ショップの店長。魔術医はとっくの昔に廃業している。それに、感応現象をこの目で見たのは初めてだよ。ある意味では、貴重な経験だった。」
「あの、桐江は今後、どうなってしまうのですか?」
「さっきも言ったように、君がキリエに真実を告げ、感応していることを自覚させない限り、魔力は暴走を続ける。それによって死に至ることはないだろうが、理性や感情がどうなるかは想像もつかない。彼女はしばらくすれば目を覚ますだろう。しかし、まともな状態では目を覚まさないだろう。気を付けてくれ。」
「分かりました。」

 俺は桐江の服を脱がせてパジャマを着せ、ベッドへ運び、氷嚢をおでこに乗せた。
「う〜ん・・・一樹君・・・?」
「桐江!? 大丈夫!?」
「一樹君・・・一樹君!一樹君!一樹君!」
「き、桐江? うわっ!」
 桐江は目を覚ますや否や、俺をベッドへ押し倒した。

「えへへぇ。いつきくぅ〜ん〜大好き〜」
「ちょ、ちょっと、桐江!落ち着いて!」
 桐江は強引に俺のズボンを脱がせた。
「いつきくんのおちんちんガッチガチだぁ〜 いまらくにしてあげるねぇ〜」
 桐江は俺のペニスを強引に咥える。
「ううっ!」
「らしてぇ〜 きりえのおくちまんこにぃ〜 いしゅきくんのこいざぁーめんいっひゃいちょうひゃい」
 桐江はフェラチオしながらも、呂律の回らない口調でしゃべり続け、その舌の動きがかえってペニスを刺激し、俺は射精してしまった。
「んぷっ えへへ〜 いひゅきくんのあかちゃんのもと。おいひぃぃ・・・」

 店長の言った通り、桐江は理性を失っていた。表情はとろけ、目は淫乱そのもので、呂律は回っていない。もはや、桐江の頭の中にあるのは俺に対する愛。それも、本能的な愛だけなのだろう。

(桐江・・・このままじゃあ・・・俺は毎日精子が空っぽになるまで犯されてしまうだろう。俺は桐江が好きだ。いっそのことこのままでも・・・良い訳がないだろ! 確かに今の桐江はエロいが、これじゃあ外にも一緒にデートに行けないじゃないか! それに、俺はありのままの桐江が好きなんだ! 美人で、清楚で、気さくで・・・でも、エッチには積極的で・・・とにかく、桐江を正気に戻さなくては!)

 俺は桐江を正気に戻すにはどうしたらいいか、既に店長に聞いている。しかし、そんなことは出来るわけがない。
 俺がキリエに対する片想いを一方的に打ち明けてどうなる? それどころかドッペルゲンガーまで作り出して今日までヤりまくっていたなんて聞いたら、確実に嫌われる!
 それに、そのことも学校で噂になれば、俺はもう学校へは行けない!
 どの道、俺にはキリエに対して声をかける勇気すらない。
 俺はいつでもそうだ! 勉強から逃げ、いじめから逃げ、学校から逃げ・・・嫌なこと全てから逃げて生きていたんだ! 好きで逃げて生きて来たわけじゃない! でも、逃げることを選んでいたのはいつも自分だ! 問題を後回しにして、現実に向き合わず、問題を解決する努力もして来なかった!
 そうして生きて来た俺が今更、行動を起こせるわけがない・・・。

「桐江! 正気に戻れ!」
「ひゃん! えへへ・・・いひゅきくんにおひひゃおしゃれひゃった〜」
「桐江! 愛してる! 俺を理解してくれたのも、俺と一緒に遊んでくれたのも、俺の彼女になってくれたのも桐江だけだ! 俺は桐江さえ居ればそれでいい!」
「あひゃひも〜 いひゅきくんがひょばにいへぇくれればいい〜」
「桐江! ずっと一緒だ! 俺の全てを受け止めてくれ!」
「ひゃああああん!!」
 俺は桐江の膣にペニスを一気に挿入し、乱暴に腰を動かした。

「えへへ〜 いひゅきくんのせーえき〜 しひゅうにいっぴゃい〜 いひゅきくんのあかひゃん〜」
「ああ! 必ず孕ませてやる! 桐江をママにしてやる!」
「うん〜 ひりえ・・・ママになるぅ〜 いひゅきくんはぱぱぁ〜」
「そうだ! 俺はパパになる! お前もお前の子供も絶対に幸せにするから!」

 その後の記憶はほとんどない。俺はただ、本能のままに腰を振り、桐江の体中を舐めまわした。桐江も無我夢中で腰を振り、俺の体の隅から隅までを舐めまわした。
 何十回、何百回イッたのか分からないが、最後に意識を失う前に見たものは、俺の精液でパンパンにお腹が膨らんだ桐江のお腹だった・・・。

 ・・・くん・・・一樹君!
「う〜ん・・・」
「一樹君! しっかりしてください!」
「うぅ・・・き、桐江・・・?」
「はぁ〜よかった! 無事なんですね!?」
「うん・・・桐江は?」
「私は、大丈夫です。」

 俺が目を覚ました時、俺はベッドに寝かされていた。桐江のお腹は元に戻っており、服もちゃんと着ていた。理性もしっかりと戻っていた。しかし、倒れてからの記憶はあまり覚えていないらしい。

 その後、やはり俺はキリエに対して打ち明けることはできなかった。そして、進学したとき、学校内でキリエの姿を見ることはなくなった。偶然見かけないのか、それとも転校してしまったのか、それか退学してしまったのかは分からない。ただ、今でも何らかしらの影響がある可能性は否定できない。

 桐江は今では理性を失うこともなくなり、普段と変わらない笑顔を見せている。一緒に買い物に行ったり、遊びに行ったり、エッチをしたりと、普通のカップルと変わらない。
 月の出ない夜、桐江はドッペルゲンガーの正体である黒髪の幼女の姿に戻ってしまう。当初は少し不安になったが、ベッドの下に隠れていることが分かると(服の袖がベッドからはみ出していた)慣れた。そして次の日には、またいつもの桐江として俺に接してくれる。

 店長にこれまでのことを報告すると、どうして桐江が正気を取り戻せたのかは分からないが、君の桐江に対する想いがドッペルゲンガーの本能を呼び覚まし、正気に戻ったのではないかと言った。ドッペルゲンガーは主の理想の女性の姿、性格を再現する。俺は本来の桐江を愛した。だから、その想いにドッペルゲンガーとしての本能が応えてくれたのかもしれない。

 両親が長い海外出張から帰って来て、また一緒に暮らすようになった。勿論桐江も一緒だ。
 ・・・いろいろと、根回しはした。魔術ショップで催眠ライトを買い、両親に「桐江は家族。また、俺と桐江がエッチすることをおかしいと思わない」という催眠をかけた。催眠ライトの値はかなり張ったが、まぁ、また貯金すればいい。

 桐江が妊娠していることが発覚した。まぁ、あんな大量に中出ししたのだから、当然と言えば当然だが・・・。
 当初、俺は罪悪感と後悔が頭をよぎったが、桐江が喜んでくれたのと、両親が喜んでくれた(催眠ライトを使ったけど)のですぐに喜びに変わった。
 店長や魔術ショップの知り合いも、桐江の妊娠を祝福してくれた。店長曰く、魔物娘の子育ては手間は人間に比べて手間はかからないから安心しなさいとのことだった。

 俺と桐江の子。ドッペルゲンガーの女の子が生まれた。今はまだ、ドッペルゲンガーの正体の黒い髪の幼女の姿から、化けることができない。この子は俺のことが大好きみたいだ。もしかしたら、俺がこの子のこの姿を好きなのを、本能的に知っているから化けないだけなのかもしれない。
 家には父、母、俺、桐江、そしてこの子と5人の賑やかな生活になった。

 俺は進路について、桐江と子供を養うために就職を考えたが、桐江のことだ。すぐに俺が本当は大学に行きたいことを見抜いてしまった。いろいろ言い合いをした挙句、桐江は「進学しないなら消えたまま二度と戻って来ない」と言いだしてしまい、子供からも「ママを泣かせたらあたしも消える」と言われてしまい、さらには両親までもが進学を勧める始末。
 
 結局、俺は薬学系の大学に進学することに決めた。元々俺は薬剤師になることが夢だった。医療と魔術の融合。薬学ではそれが実現できると桐江に話したことがあり、桐江もそれに賛同してくれた。

 そして現在。俺と桐江と子供達は両親の元を離れ、郊外にある一軒家に暮らしている。
 家は郊外だったこともあり、思ったよりも安く買えた(保証人は親だけど)。駅までは車を使えば10分ほどで行けるし、自転車でもなんとか行けるので子供達に不便はない(移動魔法も使えるから尚更)。
 俺の仕事は薬剤師。地元の小さな薬局に勤務している。

 今では子供が3人居る。皆、まだ幼いせいか化けることはできない。皆、俺のことが大好きで、3人でよく俺の取り合いになってしまうので、俺が3人をなだめることも多い。時には桐江までもが混ざってしまうことも・・・。
 平日の勤務は忙しく、帰りはいつも夜になってしまうが、桐江も子供達も俺が帰るまで起きていてくれて、暖かく迎えてくれる。

 俺は今、とても幸せだ。桐江と、3人の子供達の笑顔を見られる日々に、充実感を感じている。
18/08/23 01:28更新 / 幻夢零神

■作者メッセージ
ちょっと、桐江の理性を失う場面が上手く書けたかわからないです。
ちなみに、一樹がカラオケで歌った曲は、自分が尊敬しているゲームクリエイターの人が製作したゲームの主題歌の歌詞を少し変えたものです。さすがに、そのまま引用するのはまずいと思ったので・・・。

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