act.1 少年は少女と共に
「ほぁ〜……でけぇ町だなぁ」
見渡す限り人、人、人!
右を見れば露店に人が集まって人垣を作り、左を見れば道を行きかう人々。
小さな村で暮らしてきた俺にとって、この活気、エネルギッシュな空気には圧倒されるばかりだ。
『こ〜ら、そうやって田舎者丸出しな顔しないでよダーリン!恥ずかしいでしょ!?』
「いや、仕方ねぇだろ?俺こういうとこ初めてなんだからさ。それとダーリン言うな」
『はぁ……まぁいいけど。とりあえず、目的は忘れないでね?』
そんな俺の頭の中に響く声に、俺は現実に引きもどされる。
田舎者といわれたことに、少しカチンと来ながらもこの声の言うことは正論なので俺は人ごみのを掻き分けるようにある場所を目指した。
え?俺は誰かって?
おっと、紹介が遅れたな。
俺はランド、ランド・カルタスだ。
これから冒険者になる冒険者見習いってところだな。
『ねぇダーリン、私の紹介は〜?』
「お前は後だ、後」
『え〜!?』
この俺の頭の中に響く声の主の紹介はまた後でな。
「……はい、ではランドさん、これでギルドへの登録は完了しました。これからはこのギルドの施設を自由に利用できますよ」
「分かりました」
受付のお姉さんの話が終わると同時に、俺はギルドの中を見渡す。
そこには屈強な戦士や、いかにも知的な魔道士がうじゃうじゃといた。
そして、その全員が冒険者。
俺も今からその一員になったんだな……
『ダーリン、顔、ニヤけてる』
「む」
頭に響く声に指摘され、急いで顔を揉み解す。
……よし、これでいいかな?
『うん、相変わらず男前♪』
「さっきは田舎者言ったくせに、調子いい奴だな」
周りから痛い人扱いされないために、小声で声に返事する。
声は悪びれた風も無く『えへへ〜』となにやら笑っているらしい。
「しっかし、腹減ったな。さっさと依頼受けるのもありだけど、ココは腹ごしらえのほうが先か?」
『そうね。ダーリンが空腹で戦えませんでした〜なんて目も当てられないわ』
こいつはいっつも一言多いな、おい。
それはともかく、腹ごしらえのためにギルドの中にあった食事処に行き、席に座る。
「いらっしゃいませ〜!あら?始めてみる顔ね?新しく冒険者になったの?」
「へ?あ、ああ。ランドって言うんだあんたは……」
「アニーよ、よろしく」
「こちらこそよろしく……ん?」
注文をとりに着たウェイトレスのお姉さん、アニーさんに自己紹介をすると、アニーさんはじっとこちらを見つめてきた。
な、なんだ?
「あの、どうかしたんですか?」
「へ?ああ、うん、ちょっとねー。ま、それよりご注文は?」
「はぁ……それじゃあ……」
アニーさんが手渡してきたメニューを見て、注文を済ませる。
注文を聞いたアニーさんはそそくさと厨房へと向かっていった。
『……なに?あの女。ダーリンじっと見つめちゃって』
「怒るなよ、あとダーリン言うな」
頭の中の声にそう言い放ちながら、俺は注文した料理が来るのを待っていた。
「ん?」
あれから十数分。まだ注文の品は来てなかった。
いくらなんでも遅すぎる。
『ねぇダーリン、あっちの方が騒がしいけど、なにかあったのかしら?』
「ダーリン言うなっての。……んん?あれは……」
頭の中の声が言った方向を見ると、そこにはアニーさんがいた。
ただし、酔っ払ってるのと思われる男に絡まれている状況で、だ。
「……アレのせいで遅れてんのか?」
アニーさんを見ると、両手に俺が注文したと思われる料理を持っており、そのせいで男を追い払うこともできないようだった。
「はぁ……おい、『サリサ』」
『アイサー、ダーリン』
頭の中の声に呼びかける。
すると、その声の主、サリサは呼びかけにこたえた後、ぶつぶつと何かを唱え始めた。
それを確認したと同時に、俺はアニーさんたちの方へと歩いていく。
「おいアンタ、いい加減にしておけよ。アニーさん迷惑してるだろ?」
「んぁ?ガキはすっこんでろぉ!!」
男は、顔を真っ赤にし、こちらに吼えてきた。
こりゃ完璧に酔っ払ってるな。
「まったく……昼真から酒かっくらって恥ずかしいと思わないのかよ、おっさん」
「あぁん?オメェ、俺に喧嘩売ってんのかぁ!?」
男がアニーさんから離れ、こちらに向かってくる。
さすが酔っ払い。
すぐさまこちらの思うとおりに動いてくれる。
「俺をナメてんじゃねぇぞ!クソガキがっ!」
「…………」
男がその拳を振り上げる。
酔っ払ってるこいつに自制なんて言葉は無いだろう。
そして、その拳に当たったら俺は間違いなくノックダウン。
でも、俺はあえて動かない。
そして、男が振り上げた拳を振り下ろそうとした瞬間。
「サリサ!!」
『酔っ払いはこれでも浴びておきなさい!』
ザッバーン!
「うぶぉあ!?」
俺の目の前から突然水の塊が現れ、それが男の顔面に当たる。
「ぺっぺっ……な、何だってんだぁ!?」
「おい、おっさん、酔いは……醒めたかよっ!?」
「うぐぉ!!」
急な展開に隙だらけな男の隙をついて脚を思いっきり振るう。
その上段回し蹴りはきれいに男のこめかみ辺りにヒットし、男はもんどりうって倒れた。
「酒は夜寝る直前に一人で飲んどきな。少なくとも、周りに迷惑かけるうちはな」
「あ、ランド君。ありがとね?」
「いえいえ、俺もそろそろ待ちくたびれたもんで」
「へ?……あ!ごめんね!?今持っていくから!!」
アニーさんがあわてた風にそういうと、急いで俺がさっきまで座っていた席に料理を持っていく。
俺はそれについていき、そして席に着いた。
『ダーリン、すっかり注目されちゃってるわ』
「だろーな」
サリサの言うとおり、周りの冒険者はみんな俺の方を見ている。
そりゃそうだろう。
周りからすれば、ほとんど無詠唱で魔法をぶっ放したんだからな、見た目魔道士でもなんでもない俺が。
実際は違うんだがなぁ、周りにゃそんなの分からんしな。
「ねぇねぇ、さっきのアレ、何だったの?」
「さっきの、ねぇ……」
アニーさんが興味津々と言った感じでこちらを見つめてくる。
別に説明することはやぶさかじゃあないんだけど……
「飯食いながらでいいっすかね?腹減っちゃってて」
「え?いいわよいいわよ!」
『ダーリン、私も食べたいわ食べさせて?』
「え?何?今の声」
急に聞こえた少女の声にアニーさんは周りを見回す。
しかし、ここに少女はいない。
いるのは屈強な戦士や、ある程度成熟した大人の女性だ。
『うふふ、ここよ、ここ』
「ここ?」
『アナタの……目の前、よ』
「へ?」
そして、急に。
ほんとに急にアニーさんの目の前に少女が現れる。
ちなみに、アニーさんの目の前にいると言うことは、その少女はテーブルを突き破ってそこにいると言うことであり。
実際、アニーさんが下に視線をずらしていくと、テーブルから少女の体が生えているのが見えただろう。
「きゃああああああああああああああああああ!!!!?」
『あはっ!大成功ね♪やっぱりお化けって言うのは人を驚かせてナンボだと思うのよ』
案の定、アニーさんはしこたま腰を抜かしたらしく、椅子から転げ落ちてしまっている。
「おい、サリサ……さすがにやりすぎだ」
『そうかしら?』
「ん」
サリサがとぼけるので、俺はある一点を指差す。
サリサがそちらを見ると、そこには目を回したアニーさんがいた。
『あ、あら〜……ちょっとアナタ、大丈夫?』
「……このお馬鹿が」
「サリサはゴーストって言う魔物で、まぁ見たまんまの存在ってわけですよ」
「へ、へぇ〜……そうなんだ……」
目を覚ましたアニーさんは、未だにサリサを警戒しているのか、サリサからは一定以上の距離をとっている
『そこまで警戒しなくてもいいじゃない、もう』
「自業自得だ阿呆……で、さっきのは俺が発動した魔法じゃなくて、こいつがあらかじめ詠唱してた魔法をあのタイミングで発動させただけってことですよ」
「そうだったの……」
タネを明かせば単純明快。
さっきの奇襲はこういうことだ。
「そうだったんだ……私はてっきりキトさんと同類かと……」
「キトさん?」
「ああ、こっちの話こっちの話」
「ふ〜ん……」
キトさんって誰なんだろうか?
アニーさんがその名前を言った瞬間、なにやら寂しそうな顔をした気がしたけど……
「……と、ところでさ!ランド君は何で冒険者になったの?」
「へ?え〜っと……」
あからさまな話題換えだが、気まずい雰囲気になった今じゃむしろありがたい。
『ダーリンはねぇ〜、私と結ばれようとがんばってるのよ〜』
「そうなの?」
「違います。サリサも適当言ってんじゃねぇ」
『え〜?違うの?』
「当たり前だ」
俺の隣でふよふよ漂いながら魔力を使って料理に乗っかっていたさくらんぼを浮遊させて遊んでいるサリサに釘を刺しておく。
コイツは黙ってればあること無いこと、本当嘘お構いなくぺちゃくちゃばら撒いていくからな。
「まぁ、コイツ関係ってのは間違ってませんけどね。俺は……コイツを引っぺがすための情報がほしくて冒険者になったんですよ」
「引っぺがす?」
「はい」
そう、コイツを引っぺがすために俺は冒険者になった。
冒険者になれば依頼でいろんな土地に訪れる。
そこに、こいつを引っぺがすための情報があると考えての行動だ。
「えっと……それって除霊するってことかな?」
「いえ、言葉のとおり『引っぺがす』んですよ」
『んふふ〜、ダーリンと私はぁ、一身同体なのよ〜』
「はいは〜い、少し黙ってようね〜?……まぁ、あながち間違いじゃないんですけどね」
「どういうこと?」
「俺とこいつは、魂まで融合しちまってるんですよ」
見渡す限り人、人、人!
右を見れば露店に人が集まって人垣を作り、左を見れば道を行きかう人々。
小さな村で暮らしてきた俺にとって、この活気、エネルギッシュな空気には圧倒されるばかりだ。
『こ〜ら、そうやって田舎者丸出しな顔しないでよダーリン!恥ずかしいでしょ!?』
「いや、仕方ねぇだろ?俺こういうとこ初めてなんだからさ。それとダーリン言うな」
『はぁ……まぁいいけど。とりあえず、目的は忘れないでね?』
そんな俺の頭の中に響く声に、俺は現実に引きもどされる。
田舎者といわれたことに、少しカチンと来ながらもこの声の言うことは正論なので俺は人ごみのを掻き分けるようにある場所を目指した。
え?俺は誰かって?
おっと、紹介が遅れたな。
俺はランド、ランド・カルタスだ。
これから冒険者になる冒険者見習いってところだな。
『ねぇダーリン、私の紹介は〜?』
「お前は後だ、後」
『え〜!?』
この俺の頭の中に響く声の主の紹介はまた後でな。
「……はい、ではランドさん、これでギルドへの登録は完了しました。これからはこのギルドの施設を自由に利用できますよ」
「分かりました」
受付のお姉さんの話が終わると同時に、俺はギルドの中を見渡す。
そこには屈強な戦士や、いかにも知的な魔道士がうじゃうじゃといた。
そして、その全員が冒険者。
俺も今からその一員になったんだな……
『ダーリン、顔、ニヤけてる』
「む」
頭に響く声に指摘され、急いで顔を揉み解す。
……よし、これでいいかな?
『うん、相変わらず男前♪』
「さっきは田舎者言ったくせに、調子いい奴だな」
周りから痛い人扱いされないために、小声で声に返事する。
声は悪びれた風も無く『えへへ〜』となにやら笑っているらしい。
「しっかし、腹減ったな。さっさと依頼受けるのもありだけど、ココは腹ごしらえのほうが先か?」
『そうね。ダーリンが空腹で戦えませんでした〜なんて目も当てられないわ』
こいつはいっつも一言多いな、おい。
それはともかく、腹ごしらえのためにギルドの中にあった食事処に行き、席に座る。
「いらっしゃいませ〜!あら?始めてみる顔ね?新しく冒険者になったの?」
「へ?あ、ああ。ランドって言うんだあんたは……」
「アニーよ、よろしく」
「こちらこそよろしく……ん?」
注文をとりに着たウェイトレスのお姉さん、アニーさんに自己紹介をすると、アニーさんはじっとこちらを見つめてきた。
な、なんだ?
「あの、どうかしたんですか?」
「へ?ああ、うん、ちょっとねー。ま、それよりご注文は?」
「はぁ……それじゃあ……」
アニーさんが手渡してきたメニューを見て、注文を済ませる。
注文を聞いたアニーさんはそそくさと厨房へと向かっていった。
『……なに?あの女。ダーリンじっと見つめちゃって』
「怒るなよ、あとダーリン言うな」
頭の中の声にそう言い放ちながら、俺は注文した料理が来るのを待っていた。
「ん?」
あれから十数分。まだ注文の品は来てなかった。
いくらなんでも遅すぎる。
『ねぇダーリン、あっちの方が騒がしいけど、なにかあったのかしら?』
「ダーリン言うなっての。……んん?あれは……」
頭の中の声が言った方向を見ると、そこにはアニーさんがいた。
ただし、酔っ払ってるのと思われる男に絡まれている状況で、だ。
「……アレのせいで遅れてんのか?」
アニーさんを見ると、両手に俺が注文したと思われる料理を持っており、そのせいで男を追い払うこともできないようだった。
「はぁ……おい、『サリサ』」
『アイサー、ダーリン』
頭の中の声に呼びかける。
すると、その声の主、サリサは呼びかけにこたえた後、ぶつぶつと何かを唱え始めた。
それを確認したと同時に、俺はアニーさんたちの方へと歩いていく。
「おいアンタ、いい加減にしておけよ。アニーさん迷惑してるだろ?」
「んぁ?ガキはすっこんでろぉ!!」
男は、顔を真っ赤にし、こちらに吼えてきた。
こりゃ完璧に酔っ払ってるな。
「まったく……昼真から酒かっくらって恥ずかしいと思わないのかよ、おっさん」
「あぁん?オメェ、俺に喧嘩売ってんのかぁ!?」
男がアニーさんから離れ、こちらに向かってくる。
さすが酔っ払い。
すぐさまこちらの思うとおりに動いてくれる。
「俺をナメてんじゃねぇぞ!クソガキがっ!」
「…………」
男がその拳を振り上げる。
酔っ払ってるこいつに自制なんて言葉は無いだろう。
そして、その拳に当たったら俺は間違いなくノックダウン。
でも、俺はあえて動かない。
そして、男が振り上げた拳を振り下ろそうとした瞬間。
「サリサ!!」
『酔っ払いはこれでも浴びておきなさい!』
ザッバーン!
「うぶぉあ!?」
俺の目の前から突然水の塊が現れ、それが男の顔面に当たる。
「ぺっぺっ……な、何だってんだぁ!?」
「おい、おっさん、酔いは……醒めたかよっ!?」
「うぐぉ!!」
急な展開に隙だらけな男の隙をついて脚を思いっきり振るう。
その上段回し蹴りはきれいに男のこめかみ辺りにヒットし、男はもんどりうって倒れた。
「酒は夜寝る直前に一人で飲んどきな。少なくとも、周りに迷惑かけるうちはな」
「あ、ランド君。ありがとね?」
「いえいえ、俺もそろそろ待ちくたびれたもんで」
「へ?……あ!ごめんね!?今持っていくから!!」
アニーさんがあわてた風にそういうと、急いで俺がさっきまで座っていた席に料理を持っていく。
俺はそれについていき、そして席に着いた。
『ダーリン、すっかり注目されちゃってるわ』
「だろーな」
サリサの言うとおり、周りの冒険者はみんな俺の方を見ている。
そりゃそうだろう。
周りからすれば、ほとんど無詠唱で魔法をぶっ放したんだからな、見た目魔道士でもなんでもない俺が。
実際は違うんだがなぁ、周りにゃそんなの分からんしな。
「ねぇねぇ、さっきのアレ、何だったの?」
「さっきの、ねぇ……」
アニーさんが興味津々と言った感じでこちらを見つめてくる。
別に説明することはやぶさかじゃあないんだけど……
「飯食いながらでいいっすかね?腹減っちゃってて」
「え?いいわよいいわよ!」
『ダーリン、私も食べたいわ食べさせて?』
「え?何?今の声」
急に聞こえた少女の声にアニーさんは周りを見回す。
しかし、ここに少女はいない。
いるのは屈強な戦士や、ある程度成熟した大人の女性だ。
『うふふ、ここよ、ここ』
「ここ?」
『アナタの……目の前、よ』
「へ?」
そして、急に。
ほんとに急にアニーさんの目の前に少女が現れる。
ちなみに、アニーさんの目の前にいると言うことは、その少女はテーブルを突き破ってそこにいると言うことであり。
実際、アニーさんが下に視線をずらしていくと、テーブルから少女の体が生えているのが見えただろう。
「きゃああああああああああああああああああ!!!!?」
『あはっ!大成功ね♪やっぱりお化けって言うのは人を驚かせてナンボだと思うのよ』
案の定、アニーさんはしこたま腰を抜かしたらしく、椅子から転げ落ちてしまっている。
「おい、サリサ……さすがにやりすぎだ」
『そうかしら?』
「ん」
サリサがとぼけるので、俺はある一点を指差す。
サリサがそちらを見ると、そこには目を回したアニーさんがいた。
『あ、あら〜……ちょっとアナタ、大丈夫?』
「……このお馬鹿が」
「サリサはゴーストって言う魔物で、まぁ見たまんまの存在ってわけですよ」
「へ、へぇ〜……そうなんだ……」
目を覚ましたアニーさんは、未だにサリサを警戒しているのか、サリサからは一定以上の距離をとっている
『そこまで警戒しなくてもいいじゃない、もう』
「自業自得だ阿呆……で、さっきのは俺が発動した魔法じゃなくて、こいつがあらかじめ詠唱してた魔法をあのタイミングで発動させただけってことですよ」
「そうだったの……」
タネを明かせば単純明快。
さっきの奇襲はこういうことだ。
「そうだったんだ……私はてっきりキトさんと同類かと……」
「キトさん?」
「ああ、こっちの話こっちの話」
「ふ〜ん……」
キトさんって誰なんだろうか?
アニーさんがその名前を言った瞬間、なにやら寂しそうな顔をした気がしたけど……
「……と、ところでさ!ランド君は何で冒険者になったの?」
「へ?え〜っと……」
あからさまな話題換えだが、気まずい雰囲気になった今じゃむしろありがたい。
『ダーリンはねぇ〜、私と結ばれようとがんばってるのよ〜』
「そうなの?」
「違います。サリサも適当言ってんじゃねぇ」
『え〜?違うの?』
「当たり前だ」
俺の隣でふよふよ漂いながら魔力を使って料理に乗っかっていたさくらんぼを浮遊させて遊んでいるサリサに釘を刺しておく。
コイツは黙ってればあること無いこと、本当嘘お構いなくぺちゃくちゃばら撒いていくからな。
「まぁ、コイツ関係ってのは間違ってませんけどね。俺は……コイツを引っぺがすための情報がほしくて冒険者になったんですよ」
「引っぺがす?」
「はい」
そう、コイツを引っぺがすために俺は冒険者になった。
冒険者になれば依頼でいろんな土地に訪れる。
そこに、こいつを引っぺがすための情報があると考えての行動だ。
「えっと……それって除霊するってことかな?」
「いえ、言葉のとおり『引っぺがす』んですよ」
『んふふ〜、ダーリンと私はぁ、一身同体なのよ〜』
「はいは〜い、少し黙ってようね〜?……まぁ、あながち間違いじゃないんですけどね」
「どういうこと?」
「俺とこいつは、魂まで融合しちまってるんですよ」
11/03/16 18:56更新 / 日鞠朔莉
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