カディニカちゃんと僕は元々、反魔物国家の騎士だった。

　僕が先輩で、彼女が後輩。
　僕が彼女をちゃん付けで呼んだり、彼女が僕をさん付けで呼んだりするのは、その頃の名残みたいなものだ。

　で、なんやかんやあってこの国は魔物の手に堕ち、それに伴ってカディニカちゃんは魔物化。
　僕は、サキュバスになった彼女に逆レ告白されて、今では仲良し新婚ラブラブ夫婦になったというわけである。

「メネリさん……？なんかにやけてますけど、どうかしました……？」

「んー？キミと結ばれたときのこと思い出してさ」

　そして現在。
　僕らはまだ、騎士の仕事を続けている。

　僕は変わらず彼女の先輩で、彼女は変わらず僕の可愛い後輩。
　変わったところがあるとすれば、僕と彼女が夫婦の関係になったことだろうか。

「え、えへへ♡そっか、そうですか……♡」
　また今度、思い出しえっち、しましょうか……♡」

「わーい！やったー！」

　だらしなく笑い、左手薬指の指輪をそっと撫でるカディニカちゃん。
　そんな彼女を優しく抱き寄せ、小ぶりながらも形の整った美乳を揉みしだく。

「ひゃうっ♡も、もうっ！手すきになったらすぐいやらしい事するんですから！」

「んー？」

　生返事をして、彼女の頭や角に口づけをしていく。
　もちろん、柔らかい胸を弄くりながらだ。

「キス、やぁ……♡頭、ふわふわして……♡んっ♡
　おっぱいも、きもちぃ……♡揉まれるの、すきぃ……♡」

　どんどんカディニカちゃんはふにゃふにゃになっていく。
　そうして出来上がった彼女は、熱っぽい息を吐いて、上目遣いで、媚びるように身体を擦り寄せてくる。

「まだ、お仕事中……なのにぃ……♡欲しく、なっちゃいます……♡」

「いいよ、どうせ平和だしさ」

　残った理性でボクを諫めるカディニカちゃんに構わず唇を落とし、頭を撫でる。
　昔はこの国も荒れてたけど、魔界に墜ちた今では平和そのもの。
　一応、今でも騎士や兵士が街を巡回しているが、仕事なんてあってないようなものだ。

　カディニカちゃんから……非常に寂しいが……一瞬だけ視線を外し、辺りを見る。
　視界に映るのは、どこか色っぽい桃色の月光に照らされた、常夜の街。
　街路を歩く者の大半は、想い人と寄り添いイチャついている。
　そうじゃない者は未婚の魔物か、これから既婚になる独り身の男性。

　兎にも角にも、この魔界は甘ったるいほど平和で、誰もが蕩けて微笑み合い、愛する人と睦み合う幸せを貪っていた。

「ほら見てよ、先輩夫婦も仕事サボって路地裏に向かってるよ」

　指差す先には、僕らと同じ制服を着た、騎士の魔物夫婦。
　厳つい印象の屈強な騎士様が、小柄……幼女とも言える外見の女性に連れ込まれる光景が広がっていた。
　あーあ。先輩、奥さんにおねだりされたらついつい甘やかしちゃうしなぁ。
　僕には「夫として締めるときは締め、妻をリードせねばならん」だなんて言っておきながら、奥さんのワガママに逆らえないだから。

「サボりとかいけないんだ。あぁいや、魔物的には模範的な騎士なのかな？
　カディニカちゃん的にはどう？僕は、どうすれば理想の騎士様になると思う？」

　さらさらとした緋色の髪を撫で、耳元でそっと問いかける。
　そんな自分の性格の悪さを自嘲しつつ、カディニカちゃんの物欲しげな目を見つめる。

「お、お仕事は……ちゃんと、やったほうが…………いいと、思います……」

　口ではそう言いながら、彼女はより一層身体を寄せてくる。

「そっか。じゃ、頑張ろうかな」

　胸や腰を擦りつけてくる彼女から……もじもじと物欲しげな彼女から、スッと離れる。
　あんまりにもあっさりと、すんなり簡単に距離を取って、歩き出す。

「ぁ………………」

　後ろからカディニカちゃんの寂しげな声が聞こえた。
　それから少し遅れて、彼女の小さな靴音がついてくる。

「────────────────」

「んっ♡！？」

　前触れもなく振り返り、彼女の手を捕まえて強引に唇を奪う。
　伏せられていた赤い目が大きく開かれ、けれど与えられたキスの快楽に甘え始める。
　数秒、触れるだけの口づけを交わして、ゆっくりと離す。
　カディニカちゃんは、まだ目をパチクリとさせたまま。

「ほら、行くよ。カディニカちゃんの言う通り、真面目にお仕事しにさ」

　朗らかに笑い、僕は彼女の手を引く。

「……メネリさんは、意地悪です……っ」

「ははっ！好きになったほうが悪いんだよ」

　じゃあ僕はきっと大悪人だな。
　カディニカちゃんに終身刑の、どうしようもない悪人だ。

　なんてことを考えながら、僕らは平和で爛れた街の巡回に戻る。
　ぎゅっと握ってくるカディニカちゃんの手を、同じように握り返しながら。
















　そうやって街をふらついて、ふらついて。
　けれどその道中には、なんにも起こらなかった。

　主神教団が陰陽師を送り込んでくるだとか、反魔物国家の兵士が紛れ込んでるだとか、そんなことも一切ない。
　事件といえば精々、パン屋の青年が白蛇のお嫁さんふたりに同時に迫られ軽い修羅場になっていたくらいか。
　パン屋のご夫婦は仲睦まじくじゃれ合っていただけみたいなので、僕らは普通にアップルパイを２つ買っていった。

「うん、美味しいね。あのパン屋さん、ご贔屓にさせてもらおうかな」

　アップルパイの残った一欠片を噛み、その甘さと触感を味わう。
　ごちそうさまでしたと呟いて、指先に付いたパイ生地の破片と砂糖のベタつきを落とそうとする。

「あっ……指、アタシが綺麗にしますよ」

　そう言うや否や、カディニカちゃんが僕の指を掴んで、躊躇うことなく口に含む。
　彼女は柔らかな舌で僕の指先をしゃぶり、磨いてくれた。

「ちゅっ♡じゅっ♡れぇ……♡んん……♡」

　その奉仕に、ゾクゾクとした感覚が背骨に這う。
　彼女の咥える物が、僕の指ではなく僕のモノであれば。
　指の上に感じるこれを、僕の愚息にしてもらえたら。

　愛する妻にこんなことをされて欲情しない男はいない。
　相手が何度も身体を重ねた、誰よりも愛する極上の女であるならばなおさら。

「ん♡…………綺麗に、なりましたね♡」

　最後に優しく指を舐め、カディニカちゃんが口を離す。

「え、えへへ……♡どう、でした……♡」

　その“どう”が、なにを指すのかは分からなかった。
　でも、仮に今、僕が彼女を路地裏や宿屋に引きずり込んでも、たぶん許されるだろうなと、そう思った。

　さて、僕を煽って微笑むこのいやらしくも愛おしくも悪い妻をどうしようか。
　そう考えていると…………ふと快活な声が僕らにかけられた。

「こんにちはー！」

「わー！騎士様だー！」

「……おっと。こんにちは、お嬢さんたち」

　声の主は子どもたちだった。
　小さな魔物数人と、小さな男の子数人の仲良しグループだ。
　僕はにっこりと笑い、元気な子どもたちに挨拶を返す。

「おつとめごくろうさまです！」

「今日もラブラブですね！」

「えへへ……いやぁ……え、えへへ……」

　騎士という職業はそれなりに人気がある。
　どうやら人間も魔物も、剣を執って戦う者には憧れるらしい。
　ゆえにこうして子どもの羨望の的になったりするし、ちょっとした英雄として親しまれたりするわけで。

「なーなー！騎士様って強いの？」

「ん？僕？単純な剣の腕ならてんでだよ。最低限国のために働けるくらいしかないさ。
　昔はカディニカちゃんに剣を教えてあげてたんだけどねぇ」

「その節はお世話になりましたね…………今は、アタシのほうが強いですけど」

「ははっ。尻に敷かれちゃってるよ」

　僕ら答えを聞いて、質問してきた男の子は「やっぱおよめさんの方がつよいのかー」なんて言っている。
　しょうがないしょうがない、魔物は強いからね。
　人間時代はそこそこだった僕も、今となっては善戦できたら良いほうだ。

（まぁベッドの上だったら今でも勝てるけど）

　鋼の剣じゃカディニカちゃんを倒せないが、僕の肉の名剣なら彼女を鳴かせられる。
　といっても、僕のはカディニカちゃんの手で名剣に育てられたので、はたして僕の勝ちと言っていいのかは微妙だが……。

「オレねオレね！騎士になるのが夢なんだー！」

「おっ、いいねぇ。どうして騎士になりたいんだい？」

「オレ、騎士になって好きな子をまもって、カッコいいところ見せて、それからけっこんしたいんだー！」

「ははっ、いいね。それ好きな子に言ってあげたらイチコロだよ」

　どんな剣よりも鋭い殺し文句だ。
　これを言って堕ちない未婚の魔物はいないだろう。

「騎士様たちは、どうして騎士になったんですか？
　その……わたしも騎士になりたくって……」

　子どもたちの後ろ方で、落ち着いた雰囲気の女の子がおずおずと聞いてくる。
　彼女の目線は僕らと……そしてちらちらと、先程の少年の方を行ったり来たりしていた。

　あーあ。彼の夢は半分くらいしか叶わないかもなぁ。
　彼の運命の人は守られる少女ではなく、背中を預け合う戦友みたいだから。

　ま、それはそれ。
　いつかゴールインしたときにからかってあげるとして、今はこの女の子の質問に答えるとしよう。

「僕はとりあえず職が欲しかったからかな。ここが魔界になる前はそこそこ簡単に兵士になれたし。で、出世してたらいつの間にか騎士に落ち着いてたんだったかな」

「アタシは魔物と戦いたくて……当時は、魔物とは仲が悪かったので……それで騎士を志して…………メネリさんの後輩になったんですよね」

「あー……そんなだったっけ？」

「もうっ。覚えてるくせにとぼけないでくださいよ！」

　そりゃまぁカディニカちゃんとの日々のことは完璧に覚えてはいるが。
　いやはや、それにしても懐かしい。

「出会った頃からは色々変わったよねぇ。『国の剣になる』とか言ってた女騎士の同僚は魔物化して幼なじみと結婚して引退したし。先輩も魔物に捕まって今じゃお洒落な雑貨店の店主してるし」

「アタシの友達も、国が魔界化した際に剣を置きましたね…………今では、旦那さんと１日中子作りに励んでいるそうです…………羨ましいですね……」

「あー……そういや知り合いのほとんどが陥落と同時に引退してたっけ。
　じゃあもう、騎士続けてる奴のほうがもう少ないんじゃないかな？」

　顎に手を当てて、ざっと思い返してみる。
　ふむ、結構な数の結婚式に参列したが、その大半は騎士辞めて、今は夫婦でイチャつき続ける生活をしているな。

「じゃあじゃあ、どうして騎士様たちはまだ騎士様なの？」

「ははっ。騎士ってかっけーじゃん。だからだよ」

「むっ…………子ども相手だからって、適当言うのは良くないですよ？」

　僕ととんと中身のない受け答えに、カディニカちゃんが頬を膨らませ、呆れたような顔をする。

「『世界の誰よりも大切なキミに、いい生活をさせてあげたいから、給料のいい騎士の仕事を続けさせてくれ』って、アタシに頼み込んできたくせに……」

「カディニカちゃん？」

「それから、『騎士として、一生涯キミに仕え、愛し、護ることをお許しください』でしたよね？
　２回目のプロポーズだったので、よく覚えてます」

「それはオフレコでって言ったじゃんカディニカちゃん……！」

　恥っずい。気取ったプロポーズの言葉を曝露されるのは、控えめに言って地獄だった。
　それを聞いた魔物の子どもたちは「きゃー！」だなんて黄色い声を上げているが、張本人としてはたまったものじゃない。

「アタシは仕事辞めて、永遠に交わり合いたかったんですけど……結局、メネリさんに負けちゃいましたよね……♡
　とはいえ、稼ぎでよく旅行に連れて行ってもらえますし……なにより毎晩しっぽり愛してくれるので、文句はないですけど……♡」

　すすすとカディニカちゃんが近づき、腕を絡めてしなだれかかってくる。
　羽と尻尾も巻き付けてきて、彼女はとても上機嫌そうだった。

「騎士様たちってとってもなかよしなんですね！」

「どーしたらそんなにラブラブになれるんですか？」

「ふーふえんまんのひけつはなんですかー？」

　魔物の子どもたちが矢継ぎ早に質問を投げかけてくる。
　やっぱり魔物……というか女の子は、恋のお話が大好物らしい。

「えー……夫婦円満の秘訣ねぇ。別に難しいことはしてないよ」

　そっとカディニカちゃんの顎を指で持ち上げる。
　それから見せつけるように、カディニカちゃんとキスを交わす。
　子どもに見せられる程度の、ちょっと唇を食む軽めの口づけだ。

　唇が触れ合う音がして、カディニカちゃんの目が驚きから恍惚に変わっていく。
　少しの間キスの快感を楽しみ、最後にリップを鳴らして、重なっていた影を分かつ。

「分かりやすい方法で愛を伝えること。あー……もちろん、殿方のほうからね？」

「…………言葉もあると……もっといいですよね……♡」

「ははっ。そうだねぇ」

　遠回しのおねだりに応えるべく、カディニカちゃんの髪をかき上げ、赤くなった耳に口を近づける。
　それから、彼女にだけ聞こえるくらいの声で、そっと囁く。

「愛してる。騎士として、一生涯キミに仕え、愛し、護ることをお許しください」

「っ〜〜〜〜〜〜〜♡♡♡」

　僕の仕返しは、思ったより効いたらしい。
　カディニカちゃんは腰砕けになって、全体重を僕に委ねてきた。

「こんな感じ。男子諸君は恥ずかしくっても好きな子にはちゃんと愛情表現するんだよー」

　寄りかかる可愛い伴侶を抱きしめつつ、子どもたちを伺う。
　男の子たちは顔を真っ赤にして、魔物の女の子たちはもじもじそわそわと落ち着かない様子だった。

「っ、はぁ……♡女の子たちは……愛してもらえたら、ちゃんと、お返ししなきゃ、ですよ……♡」

　もぞりと、腕の中のカディニカちゃんが身じろぎし、しゃがみ込む。
　それから彼女は俊敏な動作でズボンを開け、僕の逸物を取り出した。

「はぁっ♡はぁっ♡あぁ……♡メネリさんの……すっかり、硬くなってる……♡」

　カディニカちゃんが荒い呼吸をして、僕のモノに頬ずりをする。
　滑らかな頬を愛おしそうに擦りつけられるだけで、僕のは情けなく痙攣してしまった。

「カディニカちゃん、いいの？小さな子どもたちが見てるけど？」

「メネリさんの……メネリさんの……♡すき、すきです……♡ちゅっ♡」

　どうやらすでに僕の男根に夢中になっているらしい。
　子どもの前だということも忘れて、彼女は唇を裏筋に押し当ててくる。

「アタシに、ご奉仕、させてください……♡メネリさんの、欲しい……♡
　メネリさんの精液、アタシに注いでくださいぃ……♡」

　媚びに媚びた猫なで声が、僕の頭を甘く犯す。
　結局僕も、妻の本気のおねだりには敵わないようだ。

「口でシてもらっていい？」

「ひゃぁい……♡たぁくさん、気持ちよくします……♡」

　僕が優しく頬を撫でたのを合図に、カディニカちゃんが亀頭を咥える。
　彼女はそのまま、じゅぷぷと口内に僕のを受け入れていった。

「んむっ♡んんぅ……♡じゅじゅじゅっ♡じゅむっ♡」

　子どもが見てるとかは、僕も忘れることにした。
　というか、僕のにしゃぶりつく彼女が可愛すぎて、忘れさせられた。

　必死に咥えて、吸って、舐めて、ひたすらに心地よい快楽が与えられる。
　とろとろの唾液が竿にまとわりつく感覚さえも気持ちいい。

「ちゅっ♡んじゅっ♡メネリひゃんのっ♡おいしひぃ……♡しゅき♡しゅきぃ……♡」

　頬の内側で先端を擦り、舌の上で転がし、声で煽る。
　やがて彼女はゆっくりと頭を動かし、口全体で男性器を刺激し始める。

「んっんっ♡んぐっ♡ぐちゅっ♡ぐじゅっぐじゅっ♡」

　喉奥に肉棒を招き、根本まで貪欲に咥え込む。
　それは僕への奉仕のためか、彼女が欲しがってるからか、あるいは両方か。

「いいよ、カディニカちゃん。すごく気持ちいいよ」

「んんっ……♡♡」

　頭を撫でててカディニカちゃんを褒める。
　その返事とばかりに、口の動きがいやらしさを増す。

「じゅじゅっ♡じゅぷ♡じゅぷぷっ♡んんっ♡んむっ♡」

　ただひたすらに心地いい快楽。
　僕を悦ばせることだけに特化した口淫。
　なにより、大好きな彼女が僕の男性器を一心不乱にしゃぶっているという征服感。

「カディニカちゃん……ッ」

　男根がさらに硬くなる。
　それを彼女はねぶり、舌で裏筋をすり上げ、吸いつく。

「んくっ♡おいひっ♡しゅきっ♡しゅきぃ♡ぐちゅっ♡
　先走り、もっと、もっとぉ♡メネリさんおちんぽ♡もっと♡
　じゅじゅじゅっ♡ずじゅっ♡ぐちゅちゅぅ♡」

　舌先が鈴口をほじり、先走りを絡め取って嚥下する。
　飲めば飲むほどカディニカちゃんは盛り、鳴らす水音の淫猥さが加速していく。

「そろそろ出すよ……ッ」

　口の中にぶちまけようと、角を握ってカディニカちゃんを固定する。
　が、角に触れたことでなにかしらのスイッチが入ったらしく、彼女はとろんと蕩けた。

「あぁ……♡ずじゅじゅ……っ！じゅぞぞぞぞっ！んちゅっ！ちゅっちゅっちゅっ……ぐちゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ！！」

　本気の吸いつき。
　本気の蠢き。
　伴侶の精を啜ることだけを考えた、淫魔の本気。
　肉棒に意識と技術を集中させたその快楽に、僕はまったく耐えられなかった。

「出すよ……ッ！飲んで、カディニカちゃんッ！」

　口の奥に男性器を突き挿れ、溜まっていた精を吐き出す。
　放たれた白濁液が彼女の喉と口を蹂躙し、僕に染め上げていく。

「んむぅっ！？んんんっ♡んぁっ♡」

　溢れ出た欲望を、彼女は全部受け止めてくれる。
　喉奥にかかる白濁はそのままお腹に収め、逆流する精液も口に留めて、ほんの少しも漏らさない。
　僕から出た欲の液は、一滴残らず彼女の中。

「んっ、れぇ……♡れろ、れろ……♡ちゅぅぅ♡」

　挿れたままの男根が何度も脈打つ。
　それを彼女は労るように舐めてくれる。
　唾液と精液でぬめる舌でよしよしと撫でられ、温かい口に包まれる。
　その充足感に、僕は思わず息を吐いた。

「……すごく良かったよ、カディニカちゃん」

　名残惜しさを覚えつつも、一度肉の棒を抜く。
　亀頭と唇にかかった淫粘液の橋が……先程までの情事の証が、なんとも淫靡だった。

「はぁ……♡んっ♡メネリさんの、素敵ぃ……♡おいしくて、ムラムラしてぇ……♡
　お口とろけて……♡子宮もきゅんきゅんしちゃいますぅ……♡」

　カディニカちゃんが口をもごもごさせ、何度か喉を鳴らす。
　精液を舌の上で転がした後、じっくりと飲み込み、味わっているのだろう。

　再び開いた彼女の口内に、白濁は残っていなかった。
　美味しそうに、僕のを飲んでくれた。
　それが嬉しくて、幸せで……興奮が、高まる。

「あぁん……♡メネリさんの、まだおっきいぃ……♡」

　一度出しても僕のは硬いまま。
　もっとカディニカちゃんに奉仕されたいと、勃起を保っている。
　やはり僕も、たった一回じゃ満足できない。
　彼女の口の中が僕の味だけになるまで、注ぎまくりたい。

「はぁ♡素敵です……♡こんなの、我慢、できません……♡
　お腹たぷたぷになるまで、飲ませてください……♡」

　だらしなく口を開き、発情した犬のように舌を垂らすカディニカちゃん。
　彼女の足元には、上と下の口から漏れた涎でできたシミ。

　ほんの僅かに残った理性が、周囲を見させる。
　けれどここには、僕とカディニカちゃんしかいなかった。

　あの子どもたちは、気を利かせて行ってくれたのか。
　あるいは情欲にあてられて、想い人と同じことをしにどこかへ消えたのか。

　ただひとつ確かなのは、僕の理性はもういらないってこと。

「んぐっ♡ん、むぅっ♡」

　彼女の角を掴み直し、今度は僕から怒張をねじ込む。
　僕ので口を塞がれたカディニカちゃんは、蕩けたうめき声を漏らした。

　腰を動かし、カディニカちゃんの口を犯す。
　口の中が淫猥に動き、僕のモノを悦ばせる。

　しばし僕らは、なにもかもを忘れた。
　ただ、最愛の妻の奉仕を受け、精をぶちまける快楽に溺れた。
　ひたすらに、愛する夫の精の味と悦楽に酔った。

　そうして、僕の白濁でお腹を満たし、舌が僕の味しかしなくなったカディニカちゃんは、とっても上機嫌そうだった。