騎士の仕事は忙しい。
　見回りをしたり、訓練をしたり、遠征に出たり、あと伴侶のお相手をしたり……。

　いや、伴侶の相手は騎士の業務外か？
　でも放っておくと拗ねちゃうしな……
　そうなったらもう奥さんの気が済むまで逆レ搾精されるしかないし。
　うん、伴侶とイチャつくのも大事な仕事だってことにしとこう。

（えーと、午後からは見回りがあって、仕事が終わったらお買い物して……。
　マナ・ケージも溜まってたから魔法道具店にもいかなきゃか。
　あれ？クリーニングに出してたドレスの受取日って今日だっけ？）

　頭を指で軽く叩きながら、今日の予定を思い出す。

（……あぁ、明々後日だったか。じゃあ後はなにがあるっけかな……。
　プレゼントの服はさっき買ったし……うん、これくらいか）

　がさり、手に下げた紙袋が揺れる。
　中にあるのは、可愛らしいワンピースが１着と、僕の個人的な趣味で買った服。
　お昼休憩中にこっそり駐屯所を抜け出し、ショップで買ったものだ。

「そろそろ戻らなきゃだけど…………うん、まだ余裕あるね」

　懐中時計（妻にもらった今年の誕プレ）で時間を確認する。
　まだお昼休みは終わらない。
　時間はまぁまぁあるし、ゆっくりしてても問題なく戻れそうだ。
　……とはいえ、職場に奥さんを置いてきちゃってるので急がないと不味いか。

「あっ」

　時計に落としていた目線を戻すと、目の前にひとり、少女がいることに気づいた。
　セミロングの艶やかな緋色髪が特徴的な、スレンダーな女の子だ。
　その子の頭には曲がった角があり、腰のあたりからは悪魔のような羽と尻尾が生え、それをやや不機嫌そうに揺らしている。
　見る人が見れば、その少女が魔物────サキュバスであるとすぐに分かるだろう。

　腰に剣を差し、きっちりとしたシャツとロングスカートを着た、可憐な騎士のサキュバスだ。
　どちらかというと丸めな赤い目と、まだ幼さの残る顔立ちが、彼女のかわいらしさをこれ以上ないほどに演出している。

　もし世界で一番かわいくて、美しくて、魅力的な女性を答えろと言われたら、僕は彼女だと答えるだろう。
　そう心の底から思うくらいに、彼女は僕の心を奪っていた。

　────彼女は僕の、僕だけの妻なのだから、そう思うのはごく自然なことなのだが。

「や、やぁカディニカちゃん。こんなところで会うなんて奇遇だね？」

「……どこ行ってたんですか」

　不機嫌そうな彼女に気さくに話しかけてみたが、思いっきり不機嫌な彼女は、これまた不機嫌に頬に手をあて、ふくれっ面を見せた。

「えーと……ショップ。服買ってた。
　そういうわけで、はい。どうぞ」

「どうぞって……なんですか、これ？」

「片方はワンピース。ほら、この前リビングでファッション誌読んでたとき、キミが欲しそうにしてたやつ」

「えっ、見てたんですか？」

「そりゃ見てるよ。目が離せないくらい愛してるから」

「っ……♡」

　持っていた紙袋を渡すと、彼女……カディニカちゃんはわずかに頬を赤く染め、口元をにやけさせる。
　が、このまま流されるのは癪みたいで、カディニカちゃんはどうにかこうにかしかめっ面を作り直そうとした。
　とはいえ、にやけ顔がいまいち直ってなくて、なんだかかわいい顔になってしまっているけど。

「プ、プレゼントで釣ろうったってそう簡単には……」

「もう１個は僕の趣味なんだけどさ、ウサギ耳のヘアバンドとバニー衣装だよ。
　今度それを着てもらって、発情したキミに跨ってもらいたいんだけど、いいかな？」

「うっ……おねだりするのはズルです……
　アタシ、メネリさんにそう言われたら、断れないですし……♡」

「ホント？やったー！」

　頬に手をあてて照れた様子のカディニカちゃん。
　そんな彼女の髪に、ありがとう代わりのキスを落とす。

「ん……ぁ♡……って、そうじゃなくってですねっ！」

「そうじゃない……？あっ、犯すより犯されたい気分だった？」

「それはメネリさんが望むならどっちでもいいですけどっ♡
　いや、だからそうじゃないんですって！」

　むむむ。頑張ってカディニカちゃんの機嫌を直そうとしたが無理だったか。
　そりゃそうか。じゃあ仕方がない。大人しく叱られるとしよう。

「なんでアタシを置いてどっか行っちゃったんですか！」

　カディニカちゃんが大きな声で、僕への不満をぶつけてくる。
　僕はそれを、肩をすぼめて受け止めるしかなかった。

「そりゃ家の外ではアタシとメネリさんはただの騎士団の先輩と後輩ですけど！
　その前に夫と妻の関係じゃないですか！」

「それは、まぁ…………はい」

「じゃあなんで愛すべきお嫁さんを放置しちゃったんですか！」

　カディニカちゃんは頬に手をあて、怒りの感情を発露させる。
　おっしゃる通りだ。ぐうの音も出ない。

「……言い訳を、してもよろしいでしょうか」

　とはいえ責められるのは普通に辛いので、僕は言い訳を並べることにした。
　これでちょっとでも罪が軽くなったりしないかなぁ。……無理かなぁ。

「…………聞くだけ聞いてあげます」

「あざっすですカディニカちゃん」

　慈悲深きカディニカちゃんに感謝しつつ、僕はワンチャンに賭けて弁明をする。

「いやその……カディニカちゃん食堂で友達と話してたし……邪魔したら悪いかなって」

「はぁ！？メネリさんが傍にいて邪魔に思うわけないじゃないですか！！」

　オーノーだ。
　ワンチャンで地雷を踏んだらしい。
　ダメだった。もっと怒らせちゃった。

「メネリさんといないと息が詰まっちゃいますし、ていうか友達に『メネリさんはこんなにも素敵でかっこいい旦那様なんですよ〜』って自慢したかったんです！」

「あー……それはなんとも悪いことを……」

「いつもアタシのこといやらしい目で見てくれて、暇になったらアタシの身体を弄ってくれて、アタシが欲しくなったらいつでもシてくれて、すぐアタシの子宮に精液注いでくれるとってもとっても素敵な人なんですってみんなに自慢するつもりだったんですっ！」

「おぉう、めっちゃ褒めてくれるね？」

　一通り怒ったカディニカちゃんが、肩で息をする。
　それから、また彼女は頬に手を当てた。

「それ、さっきからしてるね」

「……なんですか」

「また頬に触ってる。どうしたの？虫歯？」

「違いますよ。メネリさんが去り際に、ここにキスしたから……」

　あー……言われて思い出した。
　彼女が友達と談笑し始めたすぐ後くらいに、邪魔にならないようにと席を立って……。
　で、その際なんとなく口寂しかったから、カディニカちゃんの頬に軽くキスをしたんだったか。

「キスされたところ、ずっとムズムズするし…………どうせなら、その先までやってほしかったし……おあずけなんて、あんまりです……！」

「……ごめんね、カディニカちゃん。切ない気持ちにさせちゃったね」

　そっと彼女を抱き寄せ、もう一度頬にキスをする。

「んっ♡メネリさん……っ♡」

　それから彼女の顎を人差し指で軽く持ち上げ、つぅ、となぞるように指先を上気した頬へと滑らせる。
　腕の中のカディニカちゃんはされるがまま。
　ただ潤んだ瞳で僕を見て、求めるように口を開ける。

「ちゅっ♡んぅ……♡ちゅっ、ちゅっ♡ちゅぱ……♡はぁ、ん♡」

　その唇を奪って、舌を彼女の口へと滑り込ませる。
　頬の裏側を舐め、だらんとした舌を捕まえて、卑猥な水音を立てながら貪っていく。

　カディニカちゃんは、僕を拒まなかった。
　今はただ、僕からシて貰いたいのだろう。

「っ、ぁ……♡メネリ、さ……んむっ♡ちゅぅ……♡」

　一度唇を離して、息継ぎをしたらまたすぐに唇を塞ぐ。
　それから、頬に添えた指を彼女の後頭部に回して、優しく頭を撫でてあげる。
　なでなでしたかった、というとわけじゃない。
　彼女を逃さないために頭の後ろに手を回しただけ。

「…………♡」

　その独占に、カディニカちゃんは身体を弛緩させる。
　体重を僕に預けて、とろんとした目で僕を見つめてくる。
　彼女は、自分から動かない。
　好きにされたいから、好き放題求められたいから、動かない。

（いいね。本当に可愛いなぁ……）

　心の中で呟いて、僕はより強く唇を押しつけた。
　テクニックとかは知らない。ただ、もっと深くまで彼女と繋がっていたかった。

　あぁ、それでもまだ足りない。
　貪れば貪るほど、もっともっとと求めてしまう。

「ひゃんっ♡」

　ロングスカートのスリットから手を潜り込ませ、彼女の素肌に指を這わせる。
　すべすべとした太ももに触れ、それからゆっくりとお尻へ指を向かわせる。

「ぁ♡んん……♡ちゅっ♡ちゅ♡……はぁ♡あんっ♡」

　欲望のままに彼女のお尻を撫で回し、揉みしだく。
　柔らかくてみずみずしいそこに指が沈ませ、その肉の感触を楽しむ。

　しっとりと吸い付くような感覚がなんとも心地いい。
　手のひらに感じる確かな弾力が楽しませてくれる。
　そしてなにより、僕の手指の動きに合わせて悩ましげな声を漏らすカディニカちゃんが、愛おしい。

「メネリ、さん……♡もっとシて、ください……♡」

　キスと喘ぎ声の間で、彼女が切なげに懇願する。
　それは堕落へ導く淫魔のように。
　オスに媚びるメスのように。
　あるいは、夫に甘えてくれる妻のように。

「んっ♡」

　応えない理由は、どこにもなかった。
　もう一度だけ口づけをして、僕は彼女を後ろから抱きしめ直す。

「カディニカちゃん。そこの壁に手をついてもらっていい？」

「はい……♡どうぞ、です♡」

　背後から耳元で囁やけば、彼女はスカートを下ろし、言われた通りに壁に手をつく。
　それからカディニカちゃんは、先程弄ばれていたお尻を僕へと突き出した。

「後ろから、犯したいんですよね……♡
　アタシ、もうとろとろで……メネリさんのおちんぽ、いつでも挿れられますから♡」

　誘うように腰を揺らし、カディニカちゃんが僕を見つめる。
　彼女の顔は、交わりへの期待で赤くなり、唇からは涎を垂らして、それこそとろとろになっていた。
　そんな淫らで魅力的な姿に、元から我慢する気もない僕は抗えず。
　僕は衝動に従い男性器を取り出し、カディニカちゃんの最も淫猥な場所を隠す邪魔な下着をずらす。
　そして、あらわになったソコへ、じゅんと蜜を漏らしヒクヒクと蠢く秘裂へと、先端を押し当てる。

「んぁっ♡……えへへ♡メネリさんの、気持ちいいです……♡」

　亀頭と淫裂が触れあえば、それだけでカディニカちゃんは背中を震わせる。
　それからさらに腰を掴んであげれば、彼女はもう交わりへの期待でいっぱいに。
　よりいやらしく腰を揺すって、僕を誘惑し、ただ繋がる瞬間を心待ちにするばかり。

「きて……♡」

　彼女のその甘えきった声は、僕の理性を吹き飛ばすには充分過ぎた。
　目の前のメスに、思いっきり精液を吐き出して、気持ちよくなりたい。
　そんな獣性が、理性の代わりに僕を支配する。

「いくよ、カディニカちゃん……ッ」

「はっ♡はっ♡はぁっ♡きてっ♡きてぇ♡アタシに、気持ちいいのっ、くださいっ♡
　あんっ♡ひぃぃ♡あ、あっ、あぁっ♡んぁぁああぁぁぁああぁっ♡♡」

　愛蜜で潤んだ女性器に、ぬぷりと男性器が潜り込ませる。
　温かく柔い膣を押し広げられる快楽に、カディニカちゃんは可愛らしい嬌声を上げた。
　そしてその嬌声に煽られて、僕は彼女の深いところを犯し始める、

　そこにあったのは、甘い交尾に耽溺する２匹のケダモノ。
　ただ僕らは、欲望に身を任せ、気が済むまで快楽を貪り合うのだった。