〜Part6!!
Q,お兄さんの彼女になれたらどうしますか?
竜胆
「う、嬉しいけど・・・、そんこと・・・。とりあえず、私だけの兄貴にしたい・・・」
雫
「勿論、私以外の女に触れられないようにします!!」
翡翠
「私に乗せてお空を飛んだ後に、ベッドでイチャイチャしたい!!」
兄
「・・・ノーコメントで・・・」
〜雫の誕生日〜
梅雨が降るこの季節は、雫がこの世に生を受けた日でもある。
今日は雫の誕生日。
鬱陶しいほどに雨が降る中、産声を上げた雫は今、俺と同じ傘の下で寄り添いながら歩いていた。
なんでこんな状況になったかというと、数日前に雫から『私の誕生日は一緒にお出かけしてください』と言われたからだ。
そんなんでいいのかと正直思ったが、本人がそれでいいなら、深く言うのは止めておこうと思い、こうして付き合っているのである。
まぁ、本人は俺とデートしている感覚でいるのだろうけどな。
でなければ、こんなに嬉しそうに俺の腕にしがみついて来ることなんてないだろう。
ちなみに、竜胆と翡翠は家で留守番してもらっている。
雫と出かけることに渋っていたが、雫の誕生日と分かると納得してくれた。
流石、姉妹といったところだろう。
そんな訳で俺と雫は雨の中、川の土手の上を散歩している。
「なぁ、本当にここでいいのか?」
「はい。ここは私のお気に入りの場所ですから」
こんな何もない場所のどこがいいのだろうか…?
しかも、家の近所である。
「お兄様。そろそろ後ろを向いてくれますか?」
「ん?後ろ?」
しばらく歩いていると、雫がいきなりそんなことを言ってきた。
「!!」
何かと思って雫の言うとおりに後ろを向いた瞬間、俺は息をのんでしまった。
そこは、曇天の薄暗い空が大きく現れた。
後ろを向いただけなのだが、先ほどまで見ていた景色とは一転した不思議な感覚を覚える景色が俺の目に飛び込んできた。
「いかがですか?とてもいい景色でしょ」
「…ああ、なんか言葉にできないかも…」
「ふふ、私も初めてここを見つけたとき、そんな感じがしました。ここから景色を見ていると、地面に足が付いていないような感覚がします」
「ああ、なんかふわふわした感じだ」
ここで、この景色を見ていると360°空の中にいるような感じがする。
後ろには住宅地があるのが嘘のように感じてしまう。
「晴れていればもっといい景色なんですが、私は雨の景色も嫌いじゃないです」
「そうなんだ」
「はい。それに、今この瞬間もすごく大好きです」
そういうと、雫は俺の横から前に抱きついてきた。
「こうして、お兄様と同じ空間で二人っきりなんですから…」
「おいおい、まだ甘えたいのか?」
「はい。今日は私の生まれた特別な日です。だから、今日はいっぱい甘えるんです」
「はははっ。それなら仕方ないか」
「えへへ、仕方ないんです」
嬉しそうな笑みを浮かべた雫は、そのまま俺の顔に自分の顔を近づけてきた。
「だから…」
そして、そのまま目を閉じて近づいてきた。
「それはダメだ」
雫の思惑に気づいた俺は傘の先で雫の額を小突いた。
『コツンッ』といい音がするのと同時に雫が涙目でこっちを見上げてきた。
「うぅ〜。どうしてだめなんですか?」
「兄妹なんだから駄目に決まってんだろ」
「でも、魔物娘にそんなの関係ないですよ?」
「そうだね。俺の知り合いにも兄妹で結婚したやついるしな」
「じゃあ、お兄様は何でだめなんですか?はっ!!もしかして、もう他の女に…」
雫の瞳孔が少し開いた。
これはすごい嫉妬しているな。
「それなら、お前たちがすぐに気付くだろ。安心しろ。お前たちが独り立ちするまでは誰とも一緒にならないから」
「…本当ですか?」
「お前は、もう少し兄を信じろ。それとも、雫の兄は信用できない人間か?」
「そんなことありません!!」
「なら、疑うな」
「…はい…」
「全く、これで我慢してくれ」
そういうと、俺は雫のおでこにキスをしてあげた。
「!!」
俺の不意打ち気味のキスで顔を真っ赤にして、キスされた所を両手で押さえる雫。
「さ、そろそろ帰ろうか。雨に打たれすぎて流石に寒くなってきた」
一応この傘は一人用だから、雫がぬれないように俺が少し体の半分を雨に当たる感じで入っているのだ。
すでに、雨に打たれているところはずぶ濡れで肌が透けて見えてしまっている。
「は、はい!でも、お兄様。ひとつ約束してください」
「ん?なんだ?」
「もし、私が大人になるまでに相手を見つけなかったら、お兄様が私をもらってください」
「いやだね」
「何でですか!!」
「今のままだと、分が悪すぎるからな。ブラコンを直したら約束してやるよ」
「む〜…」
「その代り、ずっと一緒にいてやるからさ。さ、帰ろうぜ」
「は〜い」
少し、納得がいかない雫を連れて家に帰った。
雫の告白に、正直ドキドキしたが、俺はあくまでこいつらの兄である。
過去に何かあったわけではないが、ケジメみたいなものだ。
さて、折角なんだし、今日は雫の好きな料理でも作ってやるかな。
〜新しい家族〜
「親父・・・その人とその子は誰だ・・・?」
久しぶりに親父から連絡があった。
何でも大事な話があるとか・・・。
嫌な予感を抱えながら親父の訪問を待っていると、雫のように下半身が灰色の鱗に包まれた蛇のような龍体をした女性と女の子を連れてやってきやがった。
嫌な予感が更に強まった気がする・・・。
「この人か?この人はお前の新しい母s・・・ヘブッ!!」
気付いた時には、このクソ親父の言葉が終わる前にその顔面に拳をめり込ませていた。
「いったい、どこで拉致って来たんだ?」
「拉致とは人聞きの悪い。ちゃんと両者の同意の上だから問題ないさ!!やったね兄ちゃん。家族が増えr・・・ゴバッ!!」
「黙んないと顔面蹴るよ?」
「蹴ってから言うとは、成長したな。我が息子よ」
あまりにも『イラッ』っと来たので、思わずクソ親父の蹴り飛ばしてしまった。
すると、後ろから視線を感じたので、振り返ってみると、親父が連れてきた2人が驚いた表情でこちらを見ていた。
「ハァ・・・、とりあえず、ここで立ち話もあれだから、中に入りな」
「その言葉を待っていた!!それじゃあ、琥珀と土筆。行こうか」
「は、はい・・・」
「・・・(コクンッ)」
そういうと、一瞬で回復した親父が2人を連れて部屋の中に入っていた。
さすがドラゴン種を手なずけただけはあるという事か・・・。
人間離れした回復力である。
今度からもっと激しくしても大丈夫そうだな。
「あっ!パパだ!!」
「お父様、お久しぶりです!!」
「父様!久しぶり!!」
「おおっ!我がエンジェル達久しぶりだ!!」
リビングで遊んでいた竜胆たちが親父が来た途端親父の下に駆け寄ってきた。
親父も気持ち悪い台詞を吐いて竜胆たちを纏めて抱きしめていた。
「あれ?ねぇ、パパ。後ろの人はだ〜れ?」
「この人たちかね。この人は君達の新しいママと妹だ!!」
やっぱりか・・・。
こっちのちっこいのは親父の新しい娘って訳か・・・。
また、腹違いの兄妹が増えたって訳か・・・。
「ほら、皆。これから親父には拷m・・・色々お話があるんだからちょっと大人しくしていてくれないか?」
「今、拷問って言おうとしたよね!?」
「なんだ、親父まだボケていないみたいだな」
「失礼な!?」
「良いから早く座れ。今飲み物入れてくるから」
「・・・分かった・・・、テーブルに座ってまっていよう」
「あいよ。本当にテーブルに座ってたら、また殴るからな」
そういうと、キッチンへ行って飲み物を取りに行った。
とりあえず、冷たいお茶でいっか。
全員分のコップにお茶を入れるとリビングに戻った。
戻ると、親父達が大人しく椅子に座って雑談をしていた。
「ん?早かったな」
「あんまり時間かけると、何するか分からないからな。主に親父が・・・」
「お前は俺の事をどう思っているんだ?」
「言わないと分からない?」
「・・・・・・」
親父が黙った所で全員にお茶を配ると俺も自分の席に座った。
「さて、まず同じ質問をするぞ。その人たちは誰だ?」
「お前達の新しい琥珀母さんと妹の土筆だ!!」
「初めまして。5人も息子娘が出来て嬉しい琥珀(コハク)母さんよ。因みに種族は『ワーム』よ」
ワーム。
確か『地龍』だったか?
純粋な力では火燐母さんのようなドラゴンに勝るドラゴン種だったな・・・。
「・・・・・・」
「どうしたの土筆。恥かしいかもしれないけど、貴方のお姉ちゃんやお兄ちゃんにちゃんとご挨拶しなさい」
「・・・つ、土筆(ツクシ)です・・・」
恥かしいのか、それだけを言うと琥珀母さんの後ろに隠れてしまった。
歳は翡翠よりも下かな?
「んで、琥珀母さんを俺に紹介しに来たのか?それなら、俺は反対しないぜ。親父が誰とくっつこうが構わないからな」
「そういってももらえると父さん嬉しいよ」
「で、式はもう挙げたのか?」
「さすが、察しが良いな!!式のほかにも新婚旅行も初夜も終わっt・・・ヘブシッ!?」
「前にも言ったけど、順序を飛ばすな!!」
思わずもう一発親父の顔面に拳を叩き込んでしまった。
「いいストレートだな・・・」
「フックだ」
机くらいの距離なら難なく拳は届く。
「全く、そんなに人を殴ったらダメじゃないか」
「誰の所為か、その胸に手を当ててよ〜く考えてみな」
「ふむ」
ムニュ・・・。
「いやん&hears;も〜♥皆が見ている前で」
「柔らかいな・・・」
「琥珀母さんのじゃなくて、自分の胸に手を当てろ!!」
「ゴハッ!!」
机の上に手をついて、それを軸に親父の顔面に蹴りをお見舞いする。
椅子ごと部屋の隅に飛んでいく親父。
何でこんなコントみたいなことやっているんだろう・・・。
「んで、土筆を一緒に連れてきたってことは皆と同じことで良いのか?」
「あ、ああ。頼めるか?」
「今更1人増えた程度で困りはしないさ。でも、土筆には言ったのか?」
「言ったが、『会ってから決める』と言ってたぞ」
「そうか・・・」
それならちょっとやばいかもしれないな。
土筆、さっきのを見てから俺のことドン引きしているからな・・・。
そんな土筆に近づいて目線を合わせると、『ビクンッ!!』と体を強張らせて琥珀母さんの影に隠れてしまった。
ふむ、昔の翡翠みたいな反応だな。
「土筆って言ったね」
「・・・うん」
「俺は君のお兄ちゃんだ。さっきは怖い思いをさせてごめんね。あのクソ親父から聞いているかも知れないけど、ここで俺達と一緒に暮らすかい?」
「・・・・・・」
まだ迷っているようだ。
あんなのを見たら迷うよな・・・。
「土筆ちゃん。一緒に暮らそうよ」
そんな迷っている土筆に翡翠が駆け寄ってきた。
「そうです。お姉ちゃん達と一緒に暮らしましょ」
翡翠に続き、雫もやってきた。
「そうだよ。兄貴はバカだけど、私達には優しいから」
最後に竜胆もやってきた。
というか、バカは余計だ。
「お姉ちゃん達・・・」
「えへへ、お姉ちゃんか。あっ、私は翡翠っていうのよろしくね」
「雫です。いつかお兄様の伴侶になるのが夢よ」
「私は竜胆。兄貴に何かされたら私が守るから!!」
姉妹達の微笑ましい絵がここにある。
というか、俺に何かされたらって・・・。
俺が何かすると思っているんだろうか・・・?
それにしても、ドラゴン種が4人も集まると壮観だな。
「・・・うん。私、ここでお姉ちゃんたちと暮らす!」
すると、土筆はここで暮らすことを決意したようだ。
竜胆たちも嬉しそうにしている。
やっぱり、兄妹が増えるのは嬉しいみたいだな。
「うんうん。それじゃあ、今までどおり頼んだぞ!!」
「あいよ。琥珀母さんもこれからよろしくね」
「ええ。よろしくね」
そういって、琥珀母さんと握手をしたが、その手は堅く、さすがドラゴン種といった貫禄を感じた。
「あ、あの・・・」
「ん?」
呼ばれたほうを見てみると、土筆が俺のほうを見上げていた。
「に、兄ぃ。これからよろしくね」
「うん。これからよろしくね」
「! ふに〜・・・」
そういって、頭を撫でてやると、驚いた表情から緩んだ表情に変わった。
「うんうん。それじゃあ、父さん達はこれで帰るぞ!!」
「ああ、さっさと帰れ。あっ、琥珀母さん」
「あら、どうしたの?」
「他の母さん達に負けるなよ」
そういって、琥珀母さんに親指立てると、琥珀母さんも親指を立てて返してくれた。
そして、何か言おうとしていた親父を抱えて帰っていってしまった。
親父、大丈夫だと思うけど搾り取られすぎてミイラになるなよ・・・。
心の中で親父に敬礼していると、俺の服を土筆が引っ張った。
「ん?」
「ねぇ、兄ぃ・・・。もっとなでなでして・・・」
上目遣いで見つめてくる土筆の表情は若干朱が混じっているように見える。
もしかして、フラグ立てちゃった?
「また後でな」
「いや。今して」
そういって、俺の足に巻きついてくる。
「こ、こら!足に巻きつくな!!」
「撫でて?」
「ずるいです!!お兄様私も撫でてください!!」
と、今度は雫が土筆の反対の足に巻き付いてきた。
「私も!私も〜!!」
今度は、翡翠が俺の肩に乗りながら頭に抱きついてきた。
「兄貴!私の頭も撫でろ!!」
最後に竜胆が俺の前から抱き着いてきた。
なんだ!?
一体何が起こった!?
「お前ら!!歩けないから離れろ!!」
「「「「な〜で〜て〜!!」」」」
「分かったから!分かったから、とりあえず、離れて落ち着け!!」
この日から俺たちの家族に甘えん坊のワーム『土筆』が加わった。
正直、苦労は増えたと思っている。
これから、どうなるかは想像したくないが、きっといい方向に行くだろう。
そう信じて、5人で過ごすこれからの生活を楽しもうと思う。
竜胆
「う、嬉しいけど・・・、そんこと・・・。とりあえず、私だけの兄貴にしたい・・・」
雫
「勿論、私以外の女に触れられないようにします!!」
翡翠
「私に乗せてお空を飛んだ後に、ベッドでイチャイチャしたい!!」
兄
「・・・ノーコメントで・・・」
〜雫の誕生日〜
梅雨が降るこの季節は、雫がこの世に生を受けた日でもある。
今日は雫の誕生日。
鬱陶しいほどに雨が降る中、産声を上げた雫は今、俺と同じ傘の下で寄り添いながら歩いていた。
なんでこんな状況になったかというと、数日前に雫から『私の誕生日は一緒にお出かけしてください』と言われたからだ。
そんなんでいいのかと正直思ったが、本人がそれでいいなら、深く言うのは止めておこうと思い、こうして付き合っているのである。
まぁ、本人は俺とデートしている感覚でいるのだろうけどな。
でなければ、こんなに嬉しそうに俺の腕にしがみついて来ることなんてないだろう。
ちなみに、竜胆と翡翠は家で留守番してもらっている。
雫と出かけることに渋っていたが、雫の誕生日と分かると納得してくれた。
流石、姉妹といったところだろう。
そんな訳で俺と雫は雨の中、川の土手の上を散歩している。
「なぁ、本当にここでいいのか?」
「はい。ここは私のお気に入りの場所ですから」
こんな何もない場所のどこがいいのだろうか…?
しかも、家の近所である。
「お兄様。そろそろ後ろを向いてくれますか?」
「ん?後ろ?」
しばらく歩いていると、雫がいきなりそんなことを言ってきた。
「!!」
何かと思って雫の言うとおりに後ろを向いた瞬間、俺は息をのんでしまった。
そこは、曇天の薄暗い空が大きく現れた。
後ろを向いただけなのだが、先ほどまで見ていた景色とは一転した不思議な感覚を覚える景色が俺の目に飛び込んできた。
「いかがですか?とてもいい景色でしょ」
「…ああ、なんか言葉にできないかも…」
「ふふ、私も初めてここを見つけたとき、そんな感じがしました。ここから景色を見ていると、地面に足が付いていないような感覚がします」
「ああ、なんかふわふわした感じだ」
ここで、この景色を見ていると360°空の中にいるような感じがする。
後ろには住宅地があるのが嘘のように感じてしまう。
「晴れていればもっといい景色なんですが、私は雨の景色も嫌いじゃないです」
「そうなんだ」
「はい。それに、今この瞬間もすごく大好きです」
そういうと、雫は俺の横から前に抱きついてきた。
「こうして、お兄様と同じ空間で二人っきりなんですから…」
「おいおい、まだ甘えたいのか?」
「はい。今日は私の生まれた特別な日です。だから、今日はいっぱい甘えるんです」
「はははっ。それなら仕方ないか」
「えへへ、仕方ないんです」
嬉しそうな笑みを浮かべた雫は、そのまま俺の顔に自分の顔を近づけてきた。
「だから…」
そして、そのまま目を閉じて近づいてきた。
「それはダメだ」
雫の思惑に気づいた俺は傘の先で雫の額を小突いた。
『コツンッ』といい音がするのと同時に雫が涙目でこっちを見上げてきた。
「うぅ〜。どうしてだめなんですか?」
「兄妹なんだから駄目に決まってんだろ」
「でも、魔物娘にそんなの関係ないですよ?」
「そうだね。俺の知り合いにも兄妹で結婚したやついるしな」
「じゃあ、お兄様は何でだめなんですか?はっ!!もしかして、もう他の女に…」
雫の瞳孔が少し開いた。
これはすごい嫉妬しているな。
「それなら、お前たちがすぐに気付くだろ。安心しろ。お前たちが独り立ちするまでは誰とも一緒にならないから」
「…本当ですか?」
「お前は、もう少し兄を信じろ。それとも、雫の兄は信用できない人間か?」
「そんなことありません!!」
「なら、疑うな」
「…はい…」
「全く、これで我慢してくれ」
そういうと、俺は雫のおでこにキスをしてあげた。
「!!」
俺の不意打ち気味のキスで顔を真っ赤にして、キスされた所を両手で押さえる雫。
「さ、そろそろ帰ろうか。雨に打たれすぎて流石に寒くなってきた」
一応この傘は一人用だから、雫がぬれないように俺が少し体の半分を雨に当たる感じで入っているのだ。
すでに、雨に打たれているところはずぶ濡れで肌が透けて見えてしまっている。
「は、はい!でも、お兄様。ひとつ約束してください」
「ん?なんだ?」
「もし、私が大人になるまでに相手を見つけなかったら、お兄様が私をもらってください」
「いやだね」
「何でですか!!」
「今のままだと、分が悪すぎるからな。ブラコンを直したら約束してやるよ」
「む〜…」
「その代り、ずっと一緒にいてやるからさ。さ、帰ろうぜ」
「は〜い」
少し、納得がいかない雫を連れて家に帰った。
雫の告白に、正直ドキドキしたが、俺はあくまでこいつらの兄である。
過去に何かあったわけではないが、ケジメみたいなものだ。
さて、折角なんだし、今日は雫の好きな料理でも作ってやるかな。
〜新しい家族〜
「親父・・・その人とその子は誰だ・・・?」
久しぶりに親父から連絡があった。
何でも大事な話があるとか・・・。
嫌な予感を抱えながら親父の訪問を待っていると、雫のように下半身が灰色の鱗に包まれた蛇のような龍体をした女性と女の子を連れてやってきやがった。
嫌な予感が更に強まった気がする・・・。
「この人か?この人はお前の新しい母s・・・ヘブッ!!」
気付いた時には、このクソ親父の言葉が終わる前にその顔面に拳をめり込ませていた。
「いったい、どこで拉致って来たんだ?」
「拉致とは人聞きの悪い。ちゃんと両者の同意の上だから問題ないさ!!やったね兄ちゃん。家族が増えr・・・ゴバッ!!」
「黙んないと顔面蹴るよ?」
「蹴ってから言うとは、成長したな。我が息子よ」
あまりにも『イラッ』っと来たので、思わずクソ親父の蹴り飛ばしてしまった。
すると、後ろから視線を感じたので、振り返ってみると、親父が連れてきた2人が驚いた表情でこちらを見ていた。
「ハァ・・・、とりあえず、ここで立ち話もあれだから、中に入りな」
「その言葉を待っていた!!それじゃあ、琥珀と土筆。行こうか」
「は、はい・・・」
「・・・(コクンッ)」
そういうと、一瞬で回復した親父が2人を連れて部屋の中に入っていた。
さすがドラゴン種を手なずけただけはあるという事か・・・。
人間離れした回復力である。
今度からもっと激しくしても大丈夫そうだな。
「あっ!パパだ!!」
「お父様、お久しぶりです!!」
「父様!久しぶり!!」
「おおっ!我がエンジェル達久しぶりだ!!」
リビングで遊んでいた竜胆たちが親父が来た途端親父の下に駆け寄ってきた。
親父も気持ち悪い台詞を吐いて竜胆たちを纏めて抱きしめていた。
「あれ?ねぇ、パパ。後ろの人はだ〜れ?」
「この人たちかね。この人は君達の新しいママと妹だ!!」
やっぱりか・・・。
こっちのちっこいのは親父の新しい娘って訳か・・・。
また、腹違いの兄妹が増えたって訳か・・・。
「ほら、皆。これから親父には拷m・・・色々お話があるんだからちょっと大人しくしていてくれないか?」
「今、拷問って言おうとしたよね!?」
「なんだ、親父まだボケていないみたいだな」
「失礼な!?」
「良いから早く座れ。今飲み物入れてくるから」
「・・・分かった・・・、テーブルに座ってまっていよう」
「あいよ。本当にテーブルに座ってたら、また殴るからな」
そういうと、キッチンへ行って飲み物を取りに行った。
とりあえず、冷たいお茶でいっか。
全員分のコップにお茶を入れるとリビングに戻った。
戻ると、親父達が大人しく椅子に座って雑談をしていた。
「ん?早かったな」
「あんまり時間かけると、何するか分からないからな。主に親父が・・・」
「お前は俺の事をどう思っているんだ?」
「言わないと分からない?」
「・・・・・・」
親父が黙った所で全員にお茶を配ると俺も自分の席に座った。
「さて、まず同じ質問をするぞ。その人たちは誰だ?」
「お前達の新しい琥珀母さんと妹の土筆だ!!」
「初めまして。5人も息子娘が出来て嬉しい琥珀(コハク)母さんよ。因みに種族は『ワーム』よ」
ワーム。
確か『地龍』だったか?
純粋な力では火燐母さんのようなドラゴンに勝るドラゴン種だったな・・・。
「・・・・・・」
「どうしたの土筆。恥かしいかもしれないけど、貴方のお姉ちゃんやお兄ちゃんにちゃんとご挨拶しなさい」
「・・・つ、土筆(ツクシ)です・・・」
恥かしいのか、それだけを言うと琥珀母さんの後ろに隠れてしまった。
歳は翡翠よりも下かな?
「んで、琥珀母さんを俺に紹介しに来たのか?それなら、俺は反対しないぜ。親父が誰とくっつこうが構わないからな」
「そういってももらえると父さん嬉しいよ」
「で、式はもう挙げたのか?」
「さすが、察しが良いな!!式のほかにも新婚旅行も初夜も終わっt・・・ヘブシッ!?」
「前にも言ったけど、順序を飛ばすな!!」
思わずもう一発親父の顔面に拳を叩き込んでしまった。
「いいストレートだな・・・」
「フックだ」
机くらいの距離なら難なく拳は届く。
「全く、そんなに人を殴ったらダメじゃないか」
「誰の所為か、その胸に手を当ててよ〜く考えてみな」
「ふむ」
ムニュ・・・。
「いやん&hears;も〜♥皆が見ている前で」
「柔らかいな・・・」
「琥珀母さんのじゃなくて、自分の胸に手を当てろ!!」
「ゴハッ!!」
机の上に手をついて、それを軸に親父の顔面に蹴りをお見舞いする。
椅子ごと部屋の隅に飛んでいく親父。
何でこんなコントみたいなことやっているんだろう・・・。
「んで、土筆を一緒に連れてきたってことは皆と同じことで良いのか?」
「あ、ああ。頼めるか?」
「今更1人増えた程度で困りはしないさ。でも、土筆には言ったのか?」
「言ったが、『会ってから決める』と言ってたぞ」
「そうか・・・」
それならちょっとやばいかもしれないな。
土筆、さっきのを見てから俺のことドン引きしているからな・・・。
そんな土筆に近づいて目線を合わせると、『ビクンッ!!』と体を強張らせて琥珀母さんの影に隠れてしまった。
ふむ、昔の翡翠みたいな反応だな。
「土筆って言ったね」
「・・・うん」
「俺は君のお兄ちゃんだ。さっきは怖い思いをさせてごめんね。あのクソ親父から聞いているかも知れないけど、ここで俺達と一緒に暮らすかい?」
「・・・・・・」
まだ迷っているようだ。
あんなのを見たら迷うよな・・・。
「土筆ちゃん。一緒に暮らそうよ」
そんな迷っている土筆に翡翠が駆け寄ってきた。
「そうです。お姉ちゃん達と一緒に暮らしましょ」
翡翠に続き、雫もやってきた。
「そうだよ。兄貴はバカだけど、私達には優しいから」
最後に竜胆もやってきた。
というか、バカは余計だ。
「お姉ちゃん達・・・」
「えへへ、お姉ちゃんか。あっ、私は翡翠っていうのよろしくね」
「雫です。いつかお兄様の伴侶になるのが夢よ」
「私は竜胆。兄貴に何かされたら私が守るから!!」
姉妹達の微笑ましい絵がここにある。
というか、俺に何かされたらって・・・。
俺が何かすると思っているんだろうか・・・?
それにしても、ドラゴン種が4人も集まると壮観だな。
「・・・うん。私、ここでお姉ちゃんたちと暮らす!」
すると、土筆はここで暮らすことを決意したようだ。
竜胆たちも嬉しそうにしている。
やっぱり、兄妹が増えるのは嬉しいみたいだな。
「うんうん。それじゃあ、今までどおり頼んだぞ!!」
「あいよ。琥珀母さんもこれからよろしくね」
「ええ。よろしくね」
そういって、琥珀母さんと握手をしたが、その手は堅く、さすがドラゴン種といった貫禄を感じた。
「あ、あの・・・」
「ん?」
呼ばれたほうを見てみると、土筆が俺のほうを見上げていた。
「に、兄ぃ。これからよろしくね」
「うん。これからよろしくね」
「! ふに〜・・・」
そういって、頭を撫でてやると、驚いた表情から緩んだ表情に変わった。
「うんうん。それじゃあ、父さん達はこれで帰るぞ!!」
「ああ、さっさと帰れ。あっ、琥珀母さん」
「あら、どうしたの?」
「他の母さん達に負けるなよ」
そういって、琥珀母さんに親指立てると、琥珀母さんも親指を立てて返してくれた。
そして、何か言おうとしていた親父を抱えて帰っていってしまった。
親父、大丈夫だと思うけど搾り取られすぎてミイラになるなよ・・・。
心の中で親父に敬礼していると、俺の服を土筆が引っ張った。
「ん?」
「ねぇ、兄ぃ・・・。もっとなでなでして・・・」
上目遣いで見つめてくる土筆の表情は若干朱が混じっているように見える。
もしかして、フラグ立てちゃった?
「また後でな」
「いや。今して」
そういって、俺の足に巻きついてくる。
「こ、こら!足に巻きつくな!!」
「撫でて?」
「ずるいです!!お兄様私も撫でてください!!」
と、今度は雫が土筆の反対の足に巻き付いてきた。
「私も!私も〜!!」
今度は、翡翠が俺の肩に乗りながら頭に抱きついてきた。
「兄貴!私の頭も撫でろ!!」
最後に竜胆が俺の前から抱き着いてきた。
なんだ!?
一体何が起こった!?
「お前ら!!歩けないから離れろ!!」
「「「「な〜で〜て〜!!」」」」
「分かったから!分かったから、とりあえず、離れて落ち着け!!」
この日から俺たちの家族に甘えん坊のワーム『土筆』が加わった。
正直、苦労は増えたと思っている。
これから、どうなるかは想像したくないが、きっといい方向に行くだろう。
そう信じて、5人で過ごすこれからの生活を楽しもうと思う。
12/11/06 01:55更新 / ランス
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