〜Part5!!
〜集団登校〜
最近、子供の魔物を狙う変質者がこの近所に出ているそうだ。
そいつは、真昼間に1人でいる魔物に近づき、体を触って逃げるという手口を使っているそうだ。
昼間なら容易に捕まえられるようにも思うが、逃げ足が異様に速く、周囲に溶け込みやすい性質を持っているようで、ワーラビットやハーピィといった魔物でも捕まえられる事が出来なかったようだ。
変態に変な力を与えた結果がこれである・・・。
魔物といえど、そんな奇妙な変態が野放しの状態だと保護者も心配で仕方が無い。
そのため、近所の子供達で集まり集団で登校させることになった。
その集合場所までは保護者が送っていくので、集合場所に行くまでは安心である。
俺の仕事に行く時間と、3姉妹の登校時間は同じなので、いつも通り4人で集合場所に向った。
集合場所に行くと、生徒達が集まっていた。
どうやら、俺達が最後だったようだ。
「あっ、ひーちゃん!おはよう!!」
「あっ!小羽ちゃんだ!おはよう!!」
翡翠が片手を挙げて挨拶をした相手は、カラステングの『大手山 小羽(オオテヤマ コハネ)』ちゃんと言って、翡翠の同級生だ。
2人は仲がとても良く、家に頻繁に遊びに来る。
何をして遊んでいるかは分からないけど、楽しそうだがから特に気にしないようにしている。
そんな翡翠は、小羽ちゃんと仲良く手を繋いだまま、集団の中に入っていってしまった。
「おはよう。雫」
「雫さん。おはようございます」
「あら、美奈さんと美月さん。おはようございます」
すると、今度は雫の友達の『影山 美奈(カゲヤマ ミナ)』ちゃんと『山内 美月(ヤマウチ ミツキ)』ちゃんがやってきた。
因みに、美奈ちゃんは『クノイチ』で美月ちゃんが『稲荷』である。
クノイチがなんでランドセル背負って集団登校しているのか凄く疑問だけど、聞いたら口封じに暗殺されかねないので、この疑問は飲み込んでおこう。
雫たちも、そのまま集団の中に行ってしまった。
ふむ、後は俺の服の裾を掴んでいる竜胆だけか。
「あっ!竜胆!!こんな所にいた!!」
そういって、こちらに来たのはヴァンパイアの女子生徒。
太陽の下で動いて大丈夫なのだろうか?
「紅!あんた、日傘差さないで大丈夫なの!?」
そうだそうだ、彼女は『宵闇 紅(ヨイヤミ クレナイ)』ちゃんだったな。
竜胆の言った通りなのだが、ヴァンパイアなのに日傘を差さないで大丈夫なのだろうか・・・。
「ちょっと辛いけど、我慢できるわ。それよりも会長なんだから皆を纏めるの手伝ってよ」
「うん。分かったわ」
そう、竜胆は学校の児童会の会長をやっている。
まぁ、小学生だから仕事は殆ど先生がやってくれるので、集会の挨拶やこういった場合の指揮をするのが、大方の仕事である。
そんな竜胆が、先頭に向う後ろを紅ちゃんがついていくが、途中で俺の方を振り向くとこちらを睨みつけてから、再び竜胆を追って走っていった。
そういえば、彼女『百合』だったな・・・。
大好きな竜胆が、男の俺にくっついていたら面白くないか・・・。
さて、3人の送りはやったし俺も仕事に行くか。
これ以上、ここにいたら遅刻してしまいそうだからな。
〜三つ子の魂〜
『三つ子の魂百まで』
という諺は聞いたことあるだろう。
自信はないが『3歳の性格は100まで続く』とかそんな意味の諺である。
俺は、竜胆以外は大体それくらいに雫と翡翠に出会った。
そんな3姉妹が幼少の頃を考えると、どうも疑いたくなるんだよな・・・。
とりあえず、3姉妹が幼少の頃の性格を振り返ってみようとおもう。
・竜胆の場合
「お兄ちゃ〜ん」
「ん?どうした竜胆?」
「抱っこ」
「はいはい」
竜胆は、俺にベッタリだった。
今では「兄貴」だが、昔は俺の事を「お兄ちゃん」と呼んでよく甘えてきたものだ。
この頃は、俺のところに来ると、両手を突き出して抱っこをせがんできたものだ。
しかも、俺が少しでも離れると、「お兄〜ちゃ〜ん!!どこ〜!!」と言って泣き出す始末。
それで、俺が飛んで行くところっと泣き止むような子供だった。
当時は俺も高校生位だったけど、友達と休みの日に遊びに行くときはいつも竜胆が着いてきた。
鬱陶しいと思ったことは無くはないが、竜胆の泣き顔には勝てなかった・・・。
友達は子供好きかロリコンだったから付き合いに関しては、連れてこない時は逆に怒られたくらいだからな。
まぁ、そのときは左右に張り手をプレゼントしてやったがな。
それが、どうしてこんなにも突っ張るようになったのだろうか。
照れ隠しというのも分かるが、やはりドラゴンという種族の問題なのだろうか。
昔に戻ってくれとは言わないが、もう少し柔らかくなって欲しいものだ。
・雫の場合
「お兄たま。雫と一緒に遊びましょう」
「あ〜、ごめんね。今、勉強中だから少し待っててね」
「うぅ〜。勉強が終わったら遊んでくれる・・・?」
「勿論。だから、もう少しだけいい子で待っててね」
「うん」
雫は、とても物静かで自分の思いをあまり外に出さない子だった。
やってほしい事があっても、遠慮しちゃって引いてしまう。そんな子だった。
確か、大学受験〜大学一年生だったと思う。その所為で、少し勉強の方に力を入れていたので、妹達と遊ぶ時間はあまり作ってやれなかった。
この頃には竜胆は既に今の性格になっていたが、それに反比例するかのように雫は大人しかったのを覚えている。
だから、雫が自分から提案してきた時はなるべく答えるようにしていた。
勉強中やどうしても外せない用事の時は、別の時に約束をして我慢をしてもらっていた。
そういえば、通っていた幼稚園で雫と同じ組にラミアの友達がいたな・・・。
名前は思い出せないけど、恐らくその子から伝染したのだろう。
それなら、このラミア種並みの嫉妬深さは納得がいく。
もしかしたら、そのラミアの友達の影響が無くてもこの様な性格になっていたのかもしれないが、愚痴を言っていても仕方ないよな。
でも、職場であった女性くらいは許して欲しいもんだ・・・。
・翡翠の場合
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・(グッ」
「・・・・・・!!(ビクッ!!」
「お願いだから、そんなに怯えないでくれ・・・」
翡翠は、とにかく俺を警戒してビクビクしている子だった。
今でこそ、あんなに元気一杯に飛び回っているけど、当時は俺が近くにいるだけで飛べなくなるほど恐れられていた。
トラウマを植えつけるような事はしていないので、本当になんでこんなに怯えているのか全く分からなかった。
まぁ、答えを言ってしまえば『俺が竜胆と雫に怒っている場面に出くわしてしまい、俺という人物に恐怖を覚えてしまった』かららしい。
よく分からなかったが、これを聞いてから翡翠にはあまり厳しく怒らないことにした。
その所為で、竜胆と雫には『何で私達と差別するの?』見たいな抗議の視線を受けたが、こればかりは無視させてもらった。
これで怒ったら、もっと警戒されてしまうからな。
そのせいか、よく姉妹喧嘩が起きていた。
あの3人とも幼いがドラゴン種の魔物である。
仲裁はいつも命がけだったな・・・。
まぁ、そのかいもあって、ようやく今の明るい性格になってくれた。
少しやり過ぎた気もしなくは無いが、まぁ、恐怖がなくなってくれたら御の字である。
以上が、3姉妹の3つの時の様子である。
とりあえず、俺の苦労は伝わっただろうか。
伝わったのなら幸いである。
それにしても、どうして、あの3人は今の性格になったのだろうか?
種族という問題もあるのだが、それだけという感じがしないんだよね。
これ、論文にしたら結構いい線行くんじゃないかな?
いや、そんな事無いか・・・。
これ以上、性格が変わらないことを祈るか・・・。
12/11/01 01:35更新 / ランス
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