第2話 執事と旅立ち
「よっと・・・。さて着きました」
王魔界からポータルに乗り着いた所は、上空に禍々しいまでの黒い雲が多い日光を遮っている。
しかし、頑強な城壁に囲まれ、その内側の街には活気の溢れた街並みが広がっている。
しかし、この街は本来、教会の教えが強く娯楽らしい娯楽が無く、貧民街と富裕層が住む街に分かれたそんな街だった。
ここは、そんな不自由と差別の街が変わり、快楽と自由を得た街「魔界国家『レスカティエ』」である。
「さて、早速着いた事だし、早速仕事しにいくかな」
「う、う〜・・・。ロ、ロイ・・・」
意気込んでいたら、後ろから弱々しい声が聞こえてきた。
振り返ってみると、真っ白の肌を更に青くして、見るからに不調そうなヘカテーが私の転移魔法陣の中から這い出てきた。
綺麗な銀髪もすっかり乱してしまって、折角の美貌が台無しである。
「大丈夫か?」
「う、うう〜・・・。酔った・・・」
どうやら、ポータルを渡る最中で酔ってしまったらしい。
貴女は一応魔王の娘なんだから、これ位耐えてもらわないとこっちも困るんだよね。
「ほら、しっかりして」
そういって、ヘカテーの背中を優しく擦ってあげた。
「うぷ・・・。ロ、ロイ・・・。擦らないで・・・、で、出ちゃう・・・」
口を押さえて必死で耐えるヘカテーに、何かのスイッチが入った。
私は、ヘカテーの要求を無視してヘカテーの背中を擦り続けた。
「ちょ、ちょっと・・・ロイ・・・、本当に・・・止めて・・・」
「・・・・・・」サスサス
「ほ、本当に・・・だ、ダメ・・・だって・・・」
「・・・・・・」サスサスサスサス
「本当に・・・や、やめ・・・て・・・。・・・も、もう・・・ダメ・・・」
そういうと、ヘカテーの体がプルプル震えだした。
そして、動きが止まるとそのまま・・・・。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
しばらくお待ちください。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
さて、あれからヘカテーも落ち着いてきたので、私達は街の奥にある城に訪れた。
日中(周りが若干明るいのでそう判断)という事もあって城下町はとても賑わっている。
そんな城下町には、娼婦の館が多い。
魔界になった所ではよく見られる光景である。
まぁ、この娼婦の館の主な使い道は、魔物の夫婦が営みに使う位なんだがな。
独身の男性が使ったら、出てくるときには伴侶が着いているだろう。
そんな城下町全体を見渡せる位置に建っており、厳つい感じがするこの城こそ、魔界国家『レスカティエ』の国王が住まう城である。
さて、ここに来たのは良いけど、本当にいるだろうか・・・。
あの方はじっとしていられない方(いい意味で)だからな・・・。
来ても会える可能性の方が高いんだよな。
さてと・・・。
「なぁ、ヘカテー。そろそろ機嫌直してよ」
「ふ〜んだ」
先程の行為で、すっかり機嫌を悪くしたヘカテー。
私の目の前で吐瀉物を出したのが、かなり許せなかったようだ。
「ほら、これから謁見に行くのだから、機嫌直してよ」
「む〜・・・」
「ほら、可愛い顔が台無しだよ」
そういって、膨れていた頬を両手で押して、中の空気を抜いた。
「俺が悪かったからな」
「む〜・・・、反省してる?」
「うん。反省しているよ」
後悔はしていないがな。と思っているのは伏せておこう。
そういうと、ヘカテーの機嫌も直ったようだ。
それじゃあ、行くかな。
門番の兵士達は最初に私達の事を警戒していたが、私達の身分を提示すると通してくれた。
さて、どこにいるかな・・・。
「ねぇねぇ、これなに?」
城内を歩きながらお目当ての人物を探していると、ヘカテーが何かを見つけたようで、下を指差している。
ヘカテーが指を指す方向を見てみると、そこには先端に小さな穴が開いている赤黒くヌルヌルとした突起物だった。
十中八九触手だろうが、そいつは私達の事を警戒しているのか、その先端をこちらに向けたまま一定の距離を保っていた。
ヘカテーもそれに若干の恐怖心があるのか、私の腕にがっしりと抱きついてきている。
腕から伝わる柔らかい感触は私だけの秘密です。
「これは・・・」
この触手に心当たりのある私は、そっとヘカテーの手を外すと触手に向って頭を下げた。
「初めまして。私、魔王城で執事長を任されているものです。この度は魔王様の命により、この国の国王様とこの国にいらっしゃるリリム様にお会いするために参りました」
そういって、手を指し伸ばすと触手はゆっくりと近づいてきた。
そして、触手が私の手に触れたのを確認すると、ゆっくり手を閉じ触手を優しく掴んだ。
触手はそれに驚いたようであったが、こちらが危害を加える気が無い事が分かると、ゆっくりと力を抜いてくれた。
そんな触手に私の魔力を伝言を乗せて流した。
すると、本体に伝わったらしく、私の手をするりと抜けた触手はこちらをチラチラ見ながら進んで行ってしまった。
恐らく道案内をしているのだろう。
そう判断した私は、まだ恐怖が抜けないヘカテーを連れて触手に付いて行った。
しばらくの間、その触手についていくと、1つの大きな扉にたどり着いた。
どうやら、ここが目的の場所らしい。
魔王様と旦那様の部屋程ではないが、物凄い淫気を感じる。
「道案内ありがとうございました」
そういって、触手にもう一度頭を下げると触手は元来た道を戻っていってしまった。
見回りの最中だったのだろうか。
さて、さっき伝言を送っておいたから待っているはずだ。
あまり待たせても失礼なので、早速部屋の中に入ることにした。
「ようこそいらっしゃいました。あなた方がいらっしゃるのをお待ちしておりましたわ」
そういって、私達を出迎えてくれたのは王座に座った旦那に跨る女性であった。
彼女こそが、この魔界国家レスカティエの国王であるクイーンローパーの『フランツィスカ・ミステルレスカティエ』である。
「急なご訪問誠に申し訳ありません。レスカティエの王、フランツィスカ様。この度は、我が主である魔王様の命により参上いたしました」
そういって深々とお辞儀をする。
よく見ると、王座の周りには数人の女性が恍惚の笑みを浮かべて倒れている。
なるほど、この淫気にしては静かだと思ったら休憩中だったか。
「構いませんわ。デルエラ様のご家族なら、私達は歓迎いたしますわ」
「勿体無きお言葉感謝いたします」
「それで、今日はどういったご用件でしょうか」
そういわれ、俺は預かってきた手紙の内フランツィスカ様宛ての封筒を取り出した。
「魔王様からです」
そういって、手紙を手渡した。
「確かに受け取りましたわ」
「それで、デルエラ様はどちらにいらっしゃいますか?デルエラ様にも魔王様からの手紙を預かっているのですが・・・」
「う〜ん。今日は見ていませんわ」
ふむ、できれば手渡ししたいのだが、いないのであれば仕方ない。フランツィスカ様に渡しておくか。
一応、この国のトップなのだから、他の住人より会う確立は高いだろう。
「私に何か御用かしら?」
そう考えた時、謁見の間の天窓からこのレスカティエを堕落させた天使が舞い降りた。
私が仕える魔王様の娘にして、ヘカテーの妹、第四王女デルエラ様である。
「お久しぶりです。デルエラ様」
「お久しぶり。ロイ義兄s・・・」
「デルエラちゃ〜ん!!」
と、その時、先程まで静かだったヘカテーがいきなりデルエラ様にタックルのような抱きつきで抱きついた。
「ちょっ!ちょっと、ヘカテー姉様!?」
「あ〜ん。デルエラちゃん。相変わらず、スベスベの肌ね〜。ロイが真面目な話を始めちゃったから暇だったの〜」
「わ、分かったから!とりあえず、私の胸に頬ずりするのは止めて!?」
「あぁ〜。こっちも柔らかいわね〜。これでまだ旦那がいないなんて信じられないわ!私が男で、ロイと出合っていなかったらほっとかないのに!!」
「ひゃん!!ちょ、ちょっとヘカテー姉様!?尻尾掴まないで!!」
「尻尾も瑞々しいわね。もう、私がたb」
「落ち着け!バカタレ!!」
「きゃふっ!!」
暴走を始めたヘカテーの後頭部に愛用のハリセンをデルエラ様を巻き込まないように叩き込む。
今日は暴走しないですむと思った私が甘かったようである。
暴走が止まったヘカテーをデルエラ様から引き剥がすと、デルエラ様に向って深々と頭を下げた。
「申し訳ありません、デルエラ様。ヘカテーがご迷惑をおかけしました」
「い、いいのよ。ヘカテー姉様の暴走は私が魔王城にいたときから変わってないから・・・」
この暴走そんな前から続いているんだ・・・。
「それで、私に何かようがあったんじゃないの?」
とと、そうだった。
ヘカテーの暴走の所為で半分忘れていた。
「こちら、魔王様よりデルエラ様にと渡されたものです」
そういって、手紙を渡した。
「あと、魔王様より伝言です『過激なのも構わないけど、あまり食べ過ぎちゃダメよ』だそうです」
「もう、お母様も心配性なんだから・・・、大丈夫よ。しばらくはここに留まるから」
ふむ、力を溜めているのか、それともフランツィスカ様達を心配しているのだろうか。
すこし、気になるが執事の私が深入りするのは止めておこう。
「分かりました。それでは、確かにお渡ししました」
「あら、もう帰っちゃうの?」
「申し訳ありません。他にも回らないといけないお嬢様方が多数いらっしゃいますので、ここら辺で失礼させていただきます」
「え〜。もっとデルエラちゃんとお話したいな」
久々に会った姉妹と積もる話があるのだろう。
でも、旅も始まったばかりだ。
ここに必要以上にいたら遅れてしまう。
「ヘカテー、気持ちは分かるけど我慢してくれないか」
「でも・・・」
「それとも、私と旅するのは嫌になっちゃったかな?」
「ううん。そんな事ないわ。でも・・・、でもね・・・」
「今日は、1晩お泊りになられてはどうですか?」
ヘカテーを説得していると、フランツィスカ様がそうおっしゃった。
「しかし、それではご迷惑では・・・」
「もうすぐ日が沈みますわ。大事なお客様をそんな時間に出発させられるわけがありません。ですので、今夜はどうぞお泊りになってください」
「そうね。私もヘカテー姉様とお話したいわ」
「・・・分かりました。それでは1晩お世話になります」
その後、私達は当てられて部屋で、デルエラ様を含めて、談笑をして時間を潰した。
フランツィスカ様は、復活した他の奥様方と共にフランツィスカ様の旦那様との交わりを始めてしまった。
そして、一晩がたち旅の準備を終えると、ヘカテーと共にリリム様を訪ねる旅を再開させたのだった。
手紙を2枚消費したが、全く厚さの変わらない手紙の束。
私達の旅は、一体いつまで続くのだろうか・・・。
王魔界からポータルに乗り着いた所は、上空に禍々しいまでの黒い雲が多い日光を遮っている。
しかし、頑強な城壁に囲まれ、その内側の街には活気の溢れた街並みが広がっている。
しかし、この街は本来、教会の教えが強く娯楽らしい娯楽が無く、貧民街と富裕層が住む街に分かれたそんな街だった。
ここは、そんな不自由と差別の街が変わり、快楽と自由を得た街「魔界国家『レスカティエ』」である。
「さて、早速着いた事だし、早速仕事しにいくかな」
「う、う〜・・・。ロ、ロイ・・・」
意気込んでいたら、後ろから弱々しい声が聞こえてきた。
振り返ってみると、真っ白の肌を更に青くして、見るからに不調そうなヘカテーが私の転移魔法陣の中から這い出てきた。
綺麗な銀髪もすっかり乱してしまって、折角の美貌が台無しである。
「大丈夫か?」
「う、うう〜・・・。酔った・・・」
どうやら、ポータルを渡る最中で酔ってしまったらしい。
貴女は一応魔王の娘なんだから、これ位耐えてもらわないとこっちも困るんだよね。
「ほら、しっかりして」
そういって、ヘカテーの背中を優しく擦ってあげた。
「うぷ・・・。ロ、ロイ・・・。擦らないで・・・、で、出ちゃう・・・」
口を押さえて必死で耐えるヘカテーに、何かのスイッチが入った。
私は、ヘカテーの要求を無視してヘカテーの背中を擦り続けた。
「ちょ、ちょっと・・・ロイ・・・、本当に・・・止めて・・・」
「・・・・・・」サスサス
「ほ、本当に・・・だ、ダメ・・・だって・・・」
「・・・・・・」サスサスサスサス
「本当に・・・や、やめ・・・て・・・。・・・も、もう・・・ダメ・・・」
そういうと、ヘカテーの体がプルプル震えだした。
そして、動きが止まるとそのまま・・・・。
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しばらくお待ちください。
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さて、あれからヘカテーも落ち着いてきたので、私達は街の奥にある城に訪れた。
日中(周りが若干明るいのでそう判断)という事もあって城下町はとても賑わっている。
そんな城下町には、娼婦の館が多い。
魔界になった所ではよく見られる光景である。
まぁ、この娼婦の館の主な使い道は、魔物の夫婦が営みに使う位なんだがな。
独身の男性が使ったら、出てくるときには伴侶が着いているだろう。
そんな城下町全体を見渡せる位置に建っており、厳つい感じがするこの城こそ、魔界国家『レスカティエ』の国王が住まう城である。
さて、ここに来たのは良いけど、本当にいるだろうか・・・。
あの方はじっとしていられない方(いい意味で)だからな・・・。
来ても会える可能性の方が高いんだよな。
さてと・・・。
「なぁ、ヘカテー。そろそろ機嫌直してよ」
「ふ〜んだ」
先程の行為で、すっかり機嫌を悪くしたヘカテー。
私の目の前で吐瀉物を出したのが、かなり許せなかったようだ。
「ほら、これから謁見に行くのだから、機嫌直してよ」
「む〜・・・」
「ほら、可愛い顔が台無しだよ」
そういって、膨れていた頬を両手で押して、中の空気を抜いた。
「俺が悪かったからな」
「む〜・・・、反省してる?」
「うん。反省しているよ」
後悔はしていないがな。と思っているのは伏せておこう。
そういうと、ヘカテーの機嫌も直ったようだ。
それじゃあ、行くかな。
門番の兵士達は最初に私達の事を警戒していたが、私達の身分を提示すると通してくれた。
さて、どこにいるかな・・・。
「ねぇねぇ、これなに?」
城内を歩きながらお目当ての人物を探していると、ヘカテーが何かを見つけたようで、下を指差している。
ヘカテーが指を指す方向を見てみると、そこには先端に小さな穴が開いている赤黒くヌルヌルとした突起物だった。
十中八九触手だろうが、そいつは私達の事を警戒しているのか、その先端をこちらに向けたまま一定の距離を保っていた。
ヘカテーもそれに若干の恐怖心があるのか、私の腕にがっしりと抱きついてきている。
腕から伝わる柔らかい感触は私だけの秘密です。
「これは・・・」
この触手に心当たりのある私は、そっとヘカテーの手を外すと触手に向って頭を下げた。
「初めまして。私、魔王城で執事長を任されているものです。この度は魔王様の命により、この国の国王様とこの国にいらっしゃるリリム様にお会いするために参りました」
そういって、手を指し伸ばすと触手はゆっくりと近づいてきた。
そして、触手が私の手に触れたのを確認すると、ゆっくり手を閉じ触手を優しく掴んだ。
触手はそれに驚いたようであったが、こちらが危害を加える気が無い事が分かると、ゆっくりと力を抜いてくれた。
そんな触手に私の魔力を伝言を乗せて流した。
すると、本体に伝わったらしく、私の手をするりと抜けた触手はこちらをチラチラ見ながら進んで行ってしまった。
恐らく道案内をしているのだろう。
そう判断した私は、まだ恐怖が抜けないヘカテーを連れて触手に付いて行った。
しばらくの間、その触手についていくと、1つの大きな扉にたどり着いた。
どうやら、ここが目的の場所らしい。
魔王様と旦那様の部屋程ではないが、物凄い淫気を感じる。
「道案内ありがとうございました」
そういって、触手にもう一度頭を下げると触手は元来た道を戻っていってしまった。
見回りの最中だったのだろうか。
さて、さっき伝言を送っておいたから待っているはずだ。
あまり待たせても失礼なので、早速部屋の中に入ることにした。
「ようこそいらっしゃいました。あなた方がいらっしゃるのをお待ちしておりましたわ」
そういって、私達を出迎えてくれたのは王座に座った旦那に跨る女性であった。
彼女こそが、この魔界国家レスカティエの国王であるクイーンローパーの『フランツィスカ・ミステルレスカティエ』である。
「急なご訪問誠に申し訳ありません。レスカティエの王、フランツィスカ様。この度は、我が主である魔王様の命により参上いたしました」
そういって深々とお辞儀をする。
よく見ると、王座の周りには数人の女性が恍惚の笑みを浮かべて倒れている。
なるほど、この淫気にしては静かだと思ったら休憩中だったか。
「構いませんわ。デルエラ様のご家族なら、私達は歓迎いたしますわ」
「勿体無きお言葉感謝いたします」
「それで、今日はどういったご用件でしょうか」
そういわれ、俺は預かってきた手紙の内フランツィスカ様宛ての封筒を取り出した。
「魔王様からです」
そういって、手紙を手渡した。
「確かに受け取りましたわ」
「それで、デルエラ様はどちらにいらっしゃいますか?デルエラ様にも魔王様からの手紙を預かっているのですが・・・」
「う〜ん。今日は見ていませんわ」
ふむ、できれば手渡ししたいのだが、いないのであれば仕方ない。フランツィスカ様に渡しておくか。
一応、この国のトップなのだから、他の住人より会う確立は高いだろう。
「私に何か御用かしら?」
そう考えた時、謁見の間の天窓からこのレスカティエを堕落させた天使が舞い降りた。
私が仕える魔王様の娘にして、ヘカテーの妹、第四王女デルエラ様である。
「お久しぶりです。デルエラ様」
「お久しぶり。ロイ義兄s・・・」
「デルエラちゃ〜ん!!」
と、その時、先程まで静かだったヘカテーがいきなりデルエラ様にタックルのような抱きつきで抱きついた。
「ちょっ!ちょっと、ヘカテー姉様!?」
「あ〜ん。デルエラちゃん。相変わらず、スベスベの肌ね〜。ロイが真面目な話を始めちゃったから暇だったの〜」
「わ、分かったから!とりあえず、私の胸に頬ずりするのは止めて!?」
「あぁ〜。こっちも柔らかいわね〜。これでまだ旦那がいないなんて信じられないわ!私が男で、ロイと出合っていなかったらほっとかないのに!!」
「ひゃん!!ちょ、ちょっとヘカテー姉様!?尻尾掴まないで!!」
「尻尾も瑞々しいわね。もう、私がたb」
「落ち着け!バカタレ!!」
「きゃふっ!!」
暴走を始めたヘカテーの後頭部に愛用のハリセンをデルエラ様を巻き込まないように叩き込む。
今日は暴走しないですむと思った私が甘かったようである。
暴走が止まったヘカテーをデルエラ様から引き剥がすと、デルエラ様に向って深々と頭を下げた。
「申し訳ありません、デルエラ様。ヘカテーがご迷惑をおかけしました」
「い、いいのよ。ヘカテー姉様の暴走は私が魔王城にいたときから変わってないから・・・」
この暴走そんな前から続いているんだ・・・。
「それで、私に何かようがあったんじゃないの?」
とと、そうだった。
ヘカテーの暴走の所為で半分忘れていた。
「こちら、魔王様よりデルエラ様にと渡されたものです」
そういって、手紙を渡した。
「あと、魔王様より伝言です『過激なのも構わないけど、あまり食べ過ぎちゃダメよ』だそうです」
「もう、お母様も心配性なんだから・・・、大丈夫よ。しばらくはここに留まるから」
ふむ、力を溜めているのか、それともフランツィスカ様達を心配しているのだろうか。
すこし、気になるが執事の私が深入りするのは止めておこう。
「分かりました。それでは、確かにお渡ししました」
「あら、もう帰っちゃうの?」
「申し訳ありません。他にも回らないといけないお嬢様方が多数いらっしゃいますので、ここら辺で失礼させていただきます」
「え〜。もっとデルエラちゃんとお話したいな」
久々に会った姉妹と積もる話があるのだろう。
でも、旅も始まったばかりだ。
ここに必要以上にいたら遅れてしまう。
「ヘカテー、気持ちは分かるけど我慢してくれないか」
「でも・・・」
「それとも、私と旅するのは嫌になっちゃったかな?」
「ううん。そんな事ないわ。でも・・・、でもね・・・」
「今日は、1晩お泊りになられてはどうですか?」
ヘカテーを説得していると、フランツィスカ様がそうおっしゃった。
「しかし、それではご迷惑では・・・」
「もうすぐ日が沈みますわ。大事なお客様をそんな時間に出発させられるわけがありません。ですので、今夜はどうぞお泊りになってください」
「そうね。私もヘカテー姉様とお話したいわ」
「・・・分かりました。それでは1晩お世話になります」
その後、私達は当てられて部屋で、デルエラ様を含めて、談笑をして時間を潰した。
フランツィスカ様は、復活した他の奥様方と共にフランツィスカ様の旦那様との交わりを始めてしまった。
そして、一晩がたち旅の準備を終えると、ヘカテーと共にリリム様を訪ねる旅を再開させたのだった。
手紙を2枚消費したが、全く厚さの変わらない手紙の束。
私達の旅は、一体いつまで続くのだろうか・・・。
12/11/18 01:52更新 / ランス
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