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第1章 執事の仕事
「チッチッチッと、小鳥の鳴き声が気持ちいい朝。

モーニングコーヒーを入れ、朝の日差しを浴びながら今日の訪れを全身で感じていた。

ふむ・・・。

わざわざ、反魔物国家にまで、買いに行っただけはあって中々美味しいコーヒーだ。

『むぅ・・・んん・・・』

と、私のベッドの方からくぐもった声が聞こえる。

そちらの方に目を向けてみると、手足を縛られ、口には猿轡、目には目隠し、耳栓、口にギャグボールといった拘束具のオンパレードで、自由を奪われた女性がそこに存在していた。

そんな彼女の股には、どす黒い色をしたバイブが暴れまわっている。

暴れまわるバイブも抜けないように固定している。

そんな状態で、一晩中放置していたせいか、彼女の周りには愛液で出来た水溜りが出来てしまっている。

全く、私の優雅な時間を邪魔しただけでなく、部屋を汚すとは・・・。

これは、お仕置きが必要だな・・・。

そう思った私は、彼女の股間で暴れているバイブに向って足を振り上g・・・」

「ふんッ!!」

スパーン!!

「キャフッ!!」

「朝っぱらから、何『陵辱』タグが付きそうな妄想垂れ流してんだ!!」

朝、机に向っていた妻が何かにたにたしていると思ったら、いきなり妄想を垂れ流し始めた。

きっと、妄想していた事が溢れてしまったんだろう。

「うう・・・、ロイ、痛いよ・・・」

叩かれた所に手を当てながら、潤んだ目でこちらを見上げてくるのは、頭に角、背中から白いコウモリのような翼、そして、同じ色の先がハート型になっている人外だった。

彼女は、魔王の娘の「リリム」と呼ばれる魔物であり、私の妻でもある。

彼女の名前は『ヘカテー』。魔王第2皇女とかなりのお嬢様である。

しかし、兄弟又は姉妹のどちらかがしっかりしていたら、もう片方は残念な事になるのは世の心理である。

このヘカテーも例外なくそれに当てはまる。

こいつの姉であるリリムはとてもしっかりした性格で、今の魔王に変わって、魔王城の城下街を治めている。

旦那も見つけ、快楽の日々を送ってはいるが、政には一切手を抜かない凄い人物で、次期魔王として城下の魔物娘とその夫、教会の人間に一目置かれているほどの実力者である。

それなのに、その1つ下の妹のヘカテーは、そんな姉の正反対。

普通の魔物娘や人間達に比べると、知識や魔力、筋力は強いが他の姉妹に比べると全然敵わない。

そのため、当の本人も『政みたいな難しい事は、お姉様や妹達にお任せ!』とか宣言した始末。

そんな彼女の夫をしている私は、『ロイ』と呼ばれている。

この魔王城でヘカテーの夫に城に勤める魔物娘(メイド)達を纏める『執事長』をやっている。

俺とヘカテーの出会いについてはまた次回にいう事にしよう。

「いつものハリセンだから、大丈夫だ」

これは、ドリアードにお願いをして作ってもらった特製の厚紙で作られたツッコミ用のハリセンである。

強度は高く、水や炎にも強い特殊な紙なので、どんな場所でも突っ込みを入れる事が出来る。

突っ込みの行き先の大半がヘカテーなのだがな・・・。

「それじゃあ、ヘカテー。俺は魔王様の所に行ってくるから、片付け位はしておけよ」

「は〜い。行ってらっしゃい」

そういうと、ヘカテーは俺に近づき、俺の頬に触れるだけの口付けをする。

「行ってくるよ」

それに答えるように、俺もヘカテーの頬に触れるだけの口付けをした。

これが、俺が魔王様に朝の挨拶に行く時に行う儀式のようなものだ。

深いのをしてしまうと、我慢できなくなるので、触れるだけのキスで我慢している。

朝の儀式を終えた俺は、笑顔で送ってくれるヘカテーに見送られながら魔王様の部屋に向った。





−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



「魔王様、旦那様。おはようございます」

私は、今、魔王様の部屋の前でノックをした後朝の挨拶をした。

なぜ、こんな行為をしたのかと言うと、中から、喘ぎ声やベッドのきしむ音が聞こえるからだ。

恐らく一晩中交わっていたのだろう。

「あら、もうそんな時間?」

「少し、休憩にするか」

良かった。今日はちゃんと聞こえたようだ。

たまに、周りの音が聞こえないくらい激しい交わりをしている時があるからな。

今日は、別に謁見の予定は無いが、いつも今日のように反応してくれると、助かるな・・・。

「失礼します」

そういって、中に入ると、体にシーツを巻いただけの魔王様に、何もまかず全裸のままの旦那様がベッドに腰掛けていた。

その所為で、旦那様の股間の肉棒が天に向ってそり立っているのが良く見える。

部屋の中に篭る淫気をみる限り、月が出ている間は相当激しく燃えていたようだ。

この淫気は、取り除いておくか・・・。

「おはようございます。魔王様。旦那様」

「おはよう、ロイ。今日も相変わらずだな」

旦那様が今の姿に似合わず、とても爽やかな笑みを浮かべてきた。

「おはよう。ヘカテーとは上手くやってる」

魔王様も、聖母のような優しい笑みを浮かべながらそういってきた。

「ヘカテーとは、上手くやっております。さて、朝食はいつものバターロールに旬の野菜のサラダ、オニオンスープを準備させておりますがいかがなさいますか?」

「なら、部屋に持ってきて頂戴」

「畏まりました。今日は面会の予定もありませんので、ごゆっくりして下さって構いません。御用の時はいつも通り、こちらのベルを鳴らして知らせてください」

そういって、白濁した液体で汚れたテーブルを拭いて綺麗にすると、ガラスで出来たベルを取り出し、その机に置いた。

「それでは、私はk・・・」

「ロイ」

「はい。何か御用ですか?」

立ち去ろうとしたその時、不意に旦那様が呼び止めた。

何か頼みごとでもあるのだろうか?

「そろそろ、その敬語はやめないか。私達は血は繋がっていないが家族なんだぞ」

「・・・ありがとうございます。ですが、私は執事として仕える事でご恩をお返ししようと思っております。なので、これだけは譲れません」

「ふふ、相変わらずね」

「これでも執事ですから」

「貴方もあまり気にしなくても、どんな態度でもこの子は私達の子供よ」

旦那様は、納得が行かないような表情だが、御二人に拾ってもらった恩は、執事として仕える事で返そうと思っている。

ヘカテーと結婚したのも、俺が吹っ切れるのにかなり時間を使ってしまったしな。

「そうだ。ロイ。貴方に頼みがあるの」

ほのぼのとした空気が満たされていた時、不意に魔王様が私の方をみてそういってきた。

「はい。なんでしょうか?」

「ちょっとお使いをしてきて欲しいの。渡すものは後で渡すわ」

「了解しました。それで、それはどちらにお届けすればよろしいですか?」

「それはね・・・・」






−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−




「皆さん、おはようございます」

『おはようございます』

魔王様達への朝の挨拶と、朝食の運搬を終えた私はメイド達を集め朝のミーティングを行っていた。

「今日もまた数が減りましたね。ミーはどうしましたか?」

「昨日、旦那を見つけたみたいで、恐らく仕事やめると思います」

「・・・そうですか・・・」

魔王城での人事移動は激しい。

別に人事部の横暴という訳ではない。

夫を見つけた魔物娘は、旦那と交わる事しか考えられなくなり、仕事をやめていくのである。

そんな魔物娘の忠誠心の低さ、自分の欲望への正直さが私の悩みの種でもある。

「それでは、今日のミーティングを行います。今日は、特に予定はありませんが、それぞれに割り振ってある班で、各場所の掃除を行ってください」

『はい!』

「それが終わった後は魔王城の物を壊さない、汚さないを守る事が出来るなら好きにしてかまいません」

『やった〜!!』

おいおい・・・。

お前達は普段から好き勝手にやっているだろうが・・・。

中には、仕事サボる奴もいるし・・・。

「後、アリア」

「は、はい!」

魔王様のお使いの事を思い出し、メイド長(私の1つ下の部下になります)のアヌビスのアリアに話しかけた。

「私は魔王様の命でしばらく城を空けます。その間、メイドたちの統括はお願いします」

「ま、魔王様にですか!?」

「はい。今回は少し長くなりそうなので、貴女にとってもいい経験になると思います。頑張ってください」

「は、はい!!」

少し、不安げではあったが力強い返事を聞けたので、笑顔でうなづいた。

「それでは、皆さん。各自作業に取り掛かってください。くれぐれもサボろうとは思わないように」

そういうと、メイドたちはおしゃべりをしながらそれぞれの担当の場所に行ってしまった。

アリアも他の魔物娘と一緒に行ってしまった。

さて、それじゃあ、俺も準備をするか・・・。




−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−




「ヘカテー」

「おかえりーーーー!!!」

自分の部屋のドアを開けると、ヘカテーが満面の笑みで飛び掛ってきた。

俺は、それを半歩足を横に広げ、そちらの方に体重を移動させながら体を90度回転させ、ヘカテーの抱きつきを回避した。

ゴンッ!!

とても、良い音を立てながらヘカテーは壁に激突してしまった。

「今は勤務中だから、我慢しなさい」

「うぅ・・・、はい・・・」

ぶつかった所を両手で押さえ、上目遣いでこちらを見てくるヘカテーの頭を撫でてやると、打って変わって、とても幸せそうな表情で、俺の手に擦り寄ってきた。

本当に可愛いやつめ・・・。

「っと、そうだ。ヘカテー、魔王様にお使いを頼まれたんだ」

「お使い?」

「ああ、遠くにいるヘカテーの姉妹に手紙を渡して欲しいそうだ」

「ふむふむ・・・」

「かなりの遠出になるから数日かかる予定なんだ」

段々と、ヘカテーの表情が曇ってきた。

「お使いが終わるまで城には帰られないの?」

「ああ、終わるまでは帰るつもりはない」

「そうなんだ・・・」

ついには泣きそうになってしまった。

惚れた弱みかもしれないが、こういう子供っぽい表情もとても可愛くていい。

「そこで、ヘカテー。今から二つの提案をする。どちらか好きなほうを選んで」

「ん?」

「1つ、俺の帰りを魔王城で待つこと」

「・・・」

「2つ、俺と一緒にお使いの旅に出る事。さあ、どれがいい?」

聞くまでは無いだろう。

ヘカテーの表情が先程とは打って変わってとても輝いている。

俺も仕事とはいえ、ヘカテーと離れるのはいやだ。

だから、この提案をしたのだ。

「勿論2つ目よ!!それじゃあ、早速準備してくるね!!」

そういうと、ヘカテーは自分の部屋に向って走っていってしまった。

やれやれ、急いで準備をするのはいいけど、荷物はあまり多くないようにしてくれよ。



ー数時間後ー



「ヘカテー、その荷物はなに?」

魔王様の手紙の準備が出来たので、それを受け取り、必要最低限の荷物だけを持ち、魔王城の城門のところでヘカテーを待っていたのだが、現われたヘカテーは、大きな荷物を両手いっぱいに持って現われた。

これから、長距離を歩くのにその荷物は確実に邪魔になる。

「えへへ、私の姉妹にも会えるんでしょ?だから、遊び道具いっぱい持ってきた〜」

「うん。それ、全部置いてきなさい」

「えぇ〜〜!!」

衣類や食料品ならまだ分かる。

でも、中身が玩具とはどういうことだろうか。

「玩具はいらない!とりあえず、お金と着替えでいいからそれを持ってきなさい!!」

「うぅ・・・、お仕事モードのロイは厳しいです・・・」

そういうと、ヘカテーは自分の荷物を持って、自分の部屋に戻っていった。

全く、あんなの持っていたら、歩くのに邪魔だ。

野宿をするためのテントや、料理道具一式、食料品、飲料水を入れる水筒などは、私が持ったから、とりあえずヘカテーはそれ位でいいだろう。

さて、とりあえず、最初に会いに行く姉妹は決まっている。

リリム姉妹の中でも指折りの過激派で、大きな教国を落とした姉妹の元だ。

彼女は過激すぎるから、魔王様も心配していた。

だから、まずは彼女に会い、伝言とこの手紙を渡して欲しいそうだ。

しかし、手紙の数をみて改めて思ったが、リリム姉妹は本当に多いな・・・。

濡れないように、皮に蝋を塗って水がしみないようにした袋に入れているが、それがパンパンである。

全部配り終えるのに何年かかるだろうか・・・。

まぁ、長い新婚旅行と思って、ヘカテーとの旅でも楽しむかな。

っと、そんな事を考えていたらヘカテーが戻ってきた。

先程に比べると、荷物の量が一気に減ったのを見ると、本当に衣服とお金だけを持ってきたようだ。

さてはて、一体どんな旅になるのだろうか・・・。

不安なようで楽しみでもある。
12/11/18 01:52更新 / ランス
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■作者メッセージ
どうも、ちょっと短めになりましたが、いかがだったでしょうか。

ロイとヘカテーの最初の目的地は勘のいい読者様なら、もう分かると思います。

これから、この2人はどんな出会いをしていくのでしょうか。

次回がいつになるか分かりませんが、これからよろしくお願いします。



コラボ等もお待ちしております。

こんな作品とコラボしてやるよという方は感想でも、メールでもいいので連絡をしてください!!



それでは、また次回でお会いしましょう。

作者のランスでした!!

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