沈黙の裏門と沈着の会議
▲不思議の国・女王の城裏門▲
▲コルヌ視点▲
「まさかこんな条件だなんて」
「このままじゃ入場出来ないよ」
両親が困った顔をしている。
「おはよう、コルヌ」
ウェイトレスの少女がウェイターの青年と共にやって来た。
「グレーテルさん、それにヘンゼルさん。二人も緊急召集ですか?」
「そうよ、お陰でお菓子のカフェは臨時休業する羽目になったわ。それよりまた門の前で立ち往生してるの?」
「はい……」
ヘンゼルさんが門に立て掛けられた看板を読む。
「えっと……『門を開くにはアリス十人分の魔力認証が必要です』」
「城の仕掛けってホント気まぐれよね」
「いいじゃない、これでアリスが一人よ。一歩前進よ前進」
「アリスがあと九人来れば門が開くんだ。前向きにね」
「コルヌの両親は相変わらず呑気ね」
「羨ましい限りだよ」
「普段はああだけどボク達家族を大事にしてくれるよ。コーンやリコも母の日のイベント頑張ったし」
「そうそう、母の日にリコとコーンが私にプレゼントを渡したときの笑顔、とても嬉しかったわ」
「ママは幸せ者だね」
「これも何百回も樹増の塔に挑戦したお陰ね、パパ」
「子宝宝樹に三回もお願いしたお陰だね、ママ」
「正直ちょっと羨ましい、アタシも赤ちゃん欲しいな……」
「グレーテル、焦ることは無いって」
「やぁコルヌ君」
「カミラ先生、ごきげんよう」
燕尾服のヴァンパイア――カミラ園長先生。
ボクは紳士として優雅に挨拶する。
「君をみていると君が白百合の花園を訪れた時の事が鮮明に思い出されるよ。可愛らしい蕾だった少女が可憐な百合へと開花し、花園を巣だった後は競技場のカード競技で連戦連勝。僅か一年でフォーカードの座につくという競技場きっての超新星、それから暫くして君は今にも枯れそうな花を連れて白百合の花園へと舞い戻った」
「マドラのことですね」
「そう、深窓の令嬢だった彼女は華麗な麗人へと生まれ変わり、花の成長を見守った君と共に素晴らしい百合を大舞台へと披露した。決して忘れはしない、光無き世界で輝く二人のダンスを。マドラ君のタキシード姿とコルヌ君のドレ「カミラ様、演技はそこまでにしてください」
秘書でアリスのローラさんがカミラ先生を止める。
「せっかくノッテキタのに――ぷんぷん」
「ぷんぷんじゃありません。もうすぐ会議の予定時刻ですよ。門は沈黙したままなのですか?」
「裏門の沈黙を破るには十人のアリスが必要なんだ」
「なんと、それは困りましたね……」
♪,♪,♪,
軽快な音楽が聞こえてきた。
「何ですかこのふざけた音楽は……ってカミラ様もじっとしてください、気が散ります」
「いや、違うんだ、この音楽を聴いてると、何だか踊りたくなって」
「奇遇だな、僕たちも楽しくなってきたよ」
「私もよ、何だか懐かしいメロディだわ」
両親もノリノリで踊り出す。
「聴いてるうちにだんだん踊りたくなる音楽……まさかダンダンシティーの音楽?」
「グレーテル、それってこの国の北側にある住人たちが音楽に合わせて常に踊っている都市――」
「ヨォ♪ヨォ♪ヨォ♪」
赤を基調としたシューズでステップを踏みながら
「ヨォ♪ヨォ♪チェケラッチョ♪ダンダンシティーのカリスマ♪DJ可憐参上♪」
ヒップホップな衣装を着た十一歳くらいのアリスが軽快なリズムで現れる。
「悪いけど、音楽止めてくれない?」
「オゥ失礼♪でしたか♪“音楽停止”♪」
ローラさんに指摘され、可憐さんが指パッチンをすると音楽が鳴り止んだ。
「いやー楽しかったよ」
「身体が暖まって、このあと滅茶苦茶セックスしたい気分だわ」
両親が可憐さんに礼を言う。
「二人ともセックスはもう少し我慢してよね」
「ええ〜」
「コルヌちゃんのケチ〜」
「どうせヤるなら会議中の方がいいでしょ?」
「「はーい」」
「ムシャムシャ…」
次にやって来たのはリンゴを咀嚼する七歳くらいのアリス。
「ラユキさん」
「ムシャムシャ…おはようコルヌ」
「ラユキはリンゴ大好きアリスちゃん♪不思議美術館の副館長♪」
「ムシャムシャ…解説ありがと」
「やっと着いたねカイ」
「ああ、ここが女王様の城だ」
次にやって来たのは防寒着を着用した十三歳くらいのアリスとその夫。
「寒々村のカイ&ゲルダ♪常に雪降る村の住人♪防寒着着用は必然♪」
「これでアリスは五人……おやあれは?」
巨大な犬――犬の姿をした金貨兵がこちらに向かってくる。
犬から降り立つ三つの影
「到着でござる」
ジパングの鎧を着用したアリス
「とうちゃーく」
ピクシー並みに小さいアリス
「たまにはこんな移動も悪くはないね」
緑色の羽帽子、緑色の半ズボン、緑色の服を着たショタ――風のアリス
「オーガス島のもも♪マイクロードの三瓶莉菜♪ネバリケランドのピータ♪三人とも未婚でショタ募集中」
「拙者は純真無垢な子供が好きなだけでござる!」
「あちしはーお腹を空かせた子供にー食べ物を分け与えてるだけよー」
「僕はただ大人が好きじゃないだけさ」
「俺もいるぜ!」
犬の上でカッコつける男。
「三人とも目星の男の子は見つかった?」
「全然でござる」
「食べ盛りーの子供はそう簡単には見かけないわー」
「空を飛びながら一桁台の少年を探してるんだけどね」
「俺を無視するな!」
「彼は迷信集落のカミオ♪見栄はりとハッタリが有名な男♪そのせいで奥さんから逃げられた♪」
「逃げられてねぇ、フレードは狩り目的で放浪してるだけだ!」
「お兄ちゃ〜ん」
「てやんでぇ、ちったあ加減ってものを知らんのか……うっ!」
「あ〜また出ちゃったね〜」
「バフォメットと褌の男♪飛脚運送の経営者♪ブルーグと土気衛門夫妻♪ブルーグは大きな胸をひっさげ♪夫のデカチン挟み♪パイズリ♪ズリズリ♪ビュービュー射精♪」
『でけぇ!』
「全員に衝撃走る♪つるぺた王道バフォメット♪巨乳邪道バフォメット♪摩訶不思議♪奇想天外♪ありえないっ♪」
ズシーンズシーン
「長い柱のような♪三つ編みが向かってくる♪触手だらけの迷宮♪樹増の塔の管理人♪毛娼妓のラプンツェル♪」
「種族名で言われるのは好きじゃありませんわ」
長い髪が動き、女性が地に足をつける。
犬型の金貨兵が空を見上げると、金色の身体を溶かし始めた。
「うわあああっ!」
突然の変化にカミオは転げ落ちる。
カミオが尻を押さえてる間に金貨兵が巨大な猿へと変化し、何かを受け止めた。
「饅頭?」
猿が受け止めたのは巨大な饅頭
ボク達が空を見上げると
巨大饅頭が大量に飛来するのが見えた。
「空から饅頭が降ってきた」
「饅頭怖いわー」
「家来よ、雉の姿になるでごさる!」
ももの命に従い猿から雉へと変わった金貨兵が飛翔、突進で饅頭を遠くへと払いのける。
「みんな、ボクの下に避難して!」
ボクも掌から巨大なキノコを生やして盾を形成する。
「おい、まだ避難してない奴がいるぞ!」
カミオが指差した先。
「あはは〜おっぱいもみもみ」
「うっ!うわあっ!」
ブルーグさんはお構い無しに夫にパイズリ射精中だ。
「饅頭が落ちてくる」
「あのままじゃーアンコまみれになっちゃうわー」
「間に合わないでござる」
ブルーグ夫妻に向かって落下する饅頭が
ダンッ!パサッ、ゴロゴロ……
ブルーグ夫妻の上に落下することなく彼方へと転がった。
「饅頭が網に包まれてゆく。まさか……」
カミオが何かに気付く間
ダンッ、ダンッ、ダンッ
饅頭が次々と網に包まれ
「コンプリートでちゅ」
誰もアンコまみれになることなく、饅頭が全て捕獲された。
赤い頭巾を被った五歳くらいの少女が魔法銃を掲げてながら草むらから出てきた。魔法銃口の先から魔力が出続けている。
「流石俺の妻だ、痺れるっ憧れるっ」
カミオが嬉しそうだ。
「赤い頭巾を被ったアリス♪言伝集落のフレード♪野良貨兵や魔界魚を仕留めるハンター♪」
「会いたかったよ〜」
カミオはフレードを抱きつこうとするが、フレードは躊躇なくその手を払いのける。
「調子に乗るなでちゅ!この嘘ちゅきめ!」
「ええ〜嘘なんてついてないよ」
「野球の試合を観たでちゅ、また予告ホームランをとるなんて見栄を張ってたでちゅね」
「だって、その方が決まった時カッコいいじゃん」
「これでアリスは九人か」
「見て、コルヌ」
「渡りにアリスよ――」
清掃員さん登場。
「アリス十人分の魔力検知♪ついに扉オープン♪」
「ちょ、まだ話は終わって」
「さっさと会議室に行くでちゅよ、仮にもアタシ達は夫婦なんでちゅから」
「ありがとうございます……清掃員さん」
清掃員さんは無言で石の床をモップ掛けする。
「今日も不思議の国の清掃頑張ってください」
▲女王の城・会議室行き通路▲
両親とカミラ先生を先頭にボク達は会議室へ向かう。
ボクの後ろには九人のアリス及びその夫
土気衛門さんは逆立ちのブルーグさんを抱えるというパイズリ駅弁スタイルで歩行する。
ブルーグさんの巨乳によって挟まれたペニスから精液が漏れながら。
最後尾のラプンツェルさんの髪が蛇のように動く。
「何か邪魔くさい髪だな、切ればいいんじゃね?」
「好きでこんな髪になったわけじゃありませんわ!」
カミオの心無い言葉にラプンツェルさんが抗議する。
ボク達は茶色の木製扉にたどり着いた。
プレートには『会議室』と書かれてある。
「みんな、トランプを翳すぞ」
「カミオが仕切るなでちゅ!」
ボク達がトランプを翳すと、扉が開く。
さわやかで清涼感のある匂いがボクたちを包んだ。
円上に並んだテーブルには、それぞれ各町や施設の代表者夫妻が集まる。
彼等は住人同士で話し合ったり、夫婦交じりあったりしているが、ストイック・ラヴで正気を保っているので会議に支障はない。
中心には豪華できらびやかな椅子。椅子を囲む四つのテーブルにはそれぞれスペード、ハート、ダイヤ、クラブの紋章が刻まれている。
スペードにはチェシャ猫、ハートにはマーチヘア、クラブにはジャバウォック、計三組の夫婦が着席していた。
「あれ?今まで何をしてたの……って何この巨乳!?重っ!」
会議室の芳香を嗅いだブルーグさんも正気に戻るわけで
「おバカ薬の影響でぃ!」
「はぁー、肩がこる」
ブルーグさんはため息をつきながら着席。
「シャーシャさん、マッチさん、セバスさん、待たせてゴメン」
「コルヌ、やっと来ましたか」
「寄りエッチしてたのデス?」
「もうすぐ会議が始まりますよ」
ボクはダイヤの席に座る。
両親達はそれぞれ後ろの席に着席。
「全員、というわけではないが、予定時刻となったのでこれより会議を始める」
出席していない者は刑示板を用いてテレビ会議。
「皆に集まって貰ったのは重要な用件だ。討伐隊一万人の召集の協力をお願いしたい」
「それなら前の会議で、ボク達フォーカードと城の住人達で話し合ったじゃないか。先日の競技中止だってその一環だったし」
「流石に一万人は多すぎた」
「競技場にいた討伐隊をヨツンバウェイにある簡閲SAまで連行して数えてみたが、彼らを含めても全体の九割しか集まっていない。残りは逃亡中もしくは――」
「召集する意志がないとの事だ」
「確かに私の町にもS-50という討伐隊の一人が吸血鬼の城に滞在中よ。一応交渉はしてるけど……」
「ジュリーさんも大変ですね。私が住むジャーバレーにもS-08という元討伐隊のジャバウォックがいます。己の鞘に納めるドラゴンスレイヤーを持つ人間を求めてるだとか何とかで……」
「ジャッジさんも大変だね」
「そうですよ、この会議だって本来なら両親が出席すべきなのに、代わりに出席してってトランプを押し付けられて」
「今こそ国中がエッチ団結するのデス」
「一致団結と言っても、行方知れずの連中はどうすんの?」
「カミオは一言多いでちゅ」
「その点はご心配なく」
「女王様が快く用意してくれたのデス」
「人間のままこの国から脱出するチャンスをね」
セバスさんは四枚の光り輝く紙を取り出す。
「それは……脱出チケット、あとの一枚はボクの分だね」
時はマドラ達が社員旅行の最中の出来事。
「我々フォーカードが脱出チケットを掛けて討伐隊と戦います」
▲続く▲
▲コルヌ視点▲
「まさかこんな条件だなんて」
「このままじゃ入場出来ないよ」
両親が困った顔をしている。
「おはよう、コルヌ」
ウェイトレスの少女がウェイターの青年と共にやって来た。
「グレーテルさん、それにヘンゼルさん。二人も緊急召集ですか?」
「そうよ、お陰でお菓子のカフェは臨時休業する羽目になったわ。それよりまた門の前で立ち往生してるの?」
「はい……」
ヘンゼルさんが門に立て掛けられた看板を読む。
「えっと……『門を開くにはアリス十人分の魔力認証が必要です』」
「城の仕掛けってホント気まぐれよね」
「いいじゃない、これでアリスが一人よ。一歩前進よ前進」
「アリスがあと九人来れば門が開くんだ。前向きにね」
「コルヌの両親は相変わらず呑気ね」
「羨ましい限りだよ」
「普段はああだけどボク達家族を大事にしてくれるよ。コーンやリコも母の日のイベント頑張ったし」
「そうそう、母の日にリコとコーンが私にプレゼントを渡したときの笑顔、とても嬉しかったわ」
「ママは幸せ者だね」
「これも何百回も樹増の塔に挑戦したお陰ね、パパ」
「子宝宝樹に三回もお願いしたお陰だね、ママ」
「正直ちょっと羨ましい、アタシも赤ちゃん欲しいな……」
「グレーテル、焦ることは無いって」
「やぁコルヌ君」
「カミラ先生、ごきげんよう」
燕尾服のヴァンパイア――カミラ園長先生。
ボクは紳士として優雅に挨拶する。
「君をみていると君が白百合の花園を訪れた時の事が鮮明に思い出されるよ。可愛らしい蕾だった少女が可憐な百合へと開花し、花園を巣だった後は競技場のカード競技で連戦連勝。僅か一年でフォーカードの座につくという競技場きっての超新星、それから暫くして君は今にも枯れそうな花を連れて白百合の花園へと舞い戻った」
「マドラのことですね」
「そう、深窓の令嬢だった彼女は華麗な麗人へと生まれ変わり、花の成長を見守った君と共に素晴らしい百合を大舞台へと披露した。決して忘れはしない、光無き世界で輝く二人のダンスを。マドラ君のタキシード姿とコルヌ君のドレ「カミラ様、演技はそこまでにしてください」
秘書でアリスのローラさんがカミラ先生を止める。
「せっかくノッテキタのに――ぷんぷん」
「ぷんぷんじゃありません。もうすぐ会議の予定時刻ですよ。門は沈黙したままなのですか?」
「裏門の沈黙を破るには十人のアリスが必要なんだ」
「なんと、それは困りましたね……」
♪,♪,♪,
軽快な音楽が聞こえてきた。
「何ですかこのふざけた音楽は……ってカミラ様もじっとしてください、気が散ります」
「いや、違うんだ、この音楽を聴いてると、何だか踊りたくなって」
「奇遇だな、僕たちも楽しくなってきたよ」
「私もよ、何だか懐かしいメロディだわ」
両親もノリノリで踊り出す。
「聴いてるうちにだんだん踊りたくなる音楽……まさかダンダンシティーの音楽?」
「グレーテル、それってこの国の北側にある住人たちが音楽に合わせて常に踊っている都市――」
「ヨォ♪ヨォ♪ヨォ♪」
赤を基調としたシューズでステップを踏みながら
「ヨォ♪ヨォ♪チェケラッチョ♪ダンダンシティーのカリスマ♪DJ可憐参上♪」
ヒップホップな衣装を着た十一歳くらいのアリスが軽快なリズムで現れる。
「悪いけど、音楽止めてくれない?」
「オゥ失礼♪でしたか♪“音楽停止”♪」
ローラさんに指摘され、可憐さんが指パッチンをすると音楽が鳴り止んだ。
「いやー楽しかったよ」
「身体が暖まって、このあと滅茶苦茶セックスしたい気分だわ」
両親が可憐さんに礼を言う。
「二人ともセックスはもう少し我慢してよね」
「ええ〜」
「コルヌちゃんのケチ〜」
「どうせヤるなら会議中の方がいいでしょ?」
「「はーい」」
「ムシャムシャ…」
次にやって来たのはリンゴを咀嚼する七歳くらいのアリス。
「ラユキさん」
「ムシャムシャ…おはようコルヌ」
「ラユキはリンゴ大好きアリスちゃん♪不思議美術館の副館長♪」
「ムシャムシャ…解説ありがと」
「やっと着いたねカイ」
「ああ、ここが女王様の城だ」
次にやって来たのは防寒着を着用した十三歳くらいのアリスとその夫。
「寒々村のカイ&ゲルダ♪常に雪降る村の住人♪防寒着着用は必然♪」
「これでアリスは五人……おやあれは?」
巨大な犬――犬の姿をした金貨兵がこちらに向かってくる。
犬から降り立つ三つの影
「到着でござる」
ジパングの鎧を着用したアリス
「とうちゃーく」
ピクシー並みに小さいアリス
「たまにはこんな移動も悪くはないね」
緑色の羽帽子、緑色の半ズボン、緑色の服を着たショタ――風のアリス
「オーガス島のもも♪マイクロードの三瓶莉菜♪ネバリケランドのピータ♪三人とも未婚でショタ募集中」
「拙者は純真無垢な子供が好きなだけでござる!」
「あちしはーお腹を空かせた子供にー食べ物を分け与えてるだけよー」
「僕はただ大人が好きじゃないだけさ」
「俺もいるぜ!」
犬の上でカッコつける男。
「三人とも目星の男の子は見つかった?」
「全然でござる」
「食べ盛りーの子供はそう簡単には見かけないわー」
「空を飛びながら一桁台の少年を探してるんだけどね」
「俺を無視するな!」
「彼は迷信集落のカミオ♪見栄はりとハッタリが有名な男♪そのせいで奥さんから逃げられた♪」
「逃げられてねぇ、フレードは狩り目的で放浪してるだけだ!」
「お兄ちゃ〜ん」
「てやんでぇ、ちったあ加減ってものを知らんのか……うっ!」
「あ〜また出ちゃったね〜」
「バフォメットと褌の男♪飛脚運送の経営者♪ブルーグと土気衛門夫妻♪ブルーグは大きな胸をひっさげ♪夫のデカチン挟み♪パイズリ♪ズリズリ♪ビュービュー射精♪」
『でけぇ!』
「全員に衝撃走る♪つるぺた王道バフォメット♪巨乳邪道バフォメット♪摩訶不思議♪奇想天外♪ありえないっ♪」
ズシーンズシーン
「長い柱のような♪三つ編みが向かってくる♪触手だらけの迷宮♪樹増の塔の管理人♪毛娼妓のラプンツェル♪」
「種族名で言われるのは好きじゃありませんわ」
長い髪が動き、女性が地に足をつける。
犬型の金貨兵が空を見上げると、金色の身体を溶かし始めた。
「うわあああっ!」
突然の変化にカミオは転げ落ちる。
カミオが尻を押さえてる間に金貨兵が巨大な猿へと変化し、何かを受け止めた。
「饅頭?」
猿が受け止めたのは巨大な饅頭
ボク達が空を見上げると
巨大饅頭が大量に飛来するのが見えた。
「空から饅頭が降ってきた」
「饅頭怖いわー」
「家来よ、雉の姿になるでごさる!」
ももの命に従い猿から雉へと変わった金貨兵が飛翔、突進で饅頭を遠くへと払いのける。
「みんな、ボクの下に避難して!」
ボクも掌から巨大なキノコを生やして盾を形成する。
「おい、まだ避難してない奴がいるぞ!」
カミオが指差した先。
「あはは〜おっぱいもみもみ」
「うっ!うわあっ!」
ブルーグさんはお構い無しに夫にパイズリ射精中だ。
「饅頭が落ちてくる」
「あのままじゃーアンコまみれになっちゃうわー」
「間に合わないでござる」
ブルーグ夫妻に向かって落下する饅頭が
ダンッ!パサッ、ゴロゴロ……
ブルーグ夫妻の上に落下することなく彼方へと転がった。
「饅頭が網に包まれてゆく。まさか……」
カミオが何かに気付く間
ダンッ、ダンッ、ダンッ
饅頭が次々と網に包まれ
「コンプリートでちゅ」
誰もアンコまみれになることなく、饅頭が全て捕獲された。
赤い頭巾を被った五歳くらいの少女が魔法銃を掲げてながら草むらから出てきた。魔法銃口の先から魔力が出続けている。
「流石俺の妻だ、痺れるっ憧れるっ」
カミオが嬉しそうだ。
「赤い頭巾を被ったアリス♪言伝集落のフレード♪野良貨兵や魔界魚を仕留めるハンター♪」
「会いたかったよ〜」
カミオはフレードを抱きつこうとするが、フレードは躊躇なくその手を払いのける。
「調子に乗るなでちゅ!この嘘ちゅきめ!」
「ええ〜嘘なんてついてないよ」
「野球の試合を観たでちゅ、また予告ホームランをとるなんて見栄を張ってたでちゅね」
「だって、その方が決まった時カッコいいじゃん」
「これでアリスは九人か」
「見て、コルヌ」
「渡りにアリスよ――」
清掃員さん登場。
「アリス十人分の魔力検知♪ついに扉オープン♪」
「ちょ、まだ話は終わって」
「さっさと会議室に行くでちゅよ、仮にもアタシ達は夫婦なんでちゅから」
「ありがとうございます……清掃員さん」
清掃員さんは無言で石の床をモップ掛けする。
「今日も不思議の国の清掃頑張ってください」
▲女王の城・会議室行き通路▲
両親とカミラ先生を先頭にボク達は会議室へ向かう。
ボクの後ろには九人のアリス及びその夫
土気衛門さんは逆立ちのブルーグさんを抱えるというパイズリ駅弁スタイルで歩行する。
ブルーグさんの巨乳によって挟まれたペニスから精液が漏れながら。
最後尾のラプンツェルさんの髪が蛇のように動く。
「何か邪魔くさい髪だな、切ればいいんじゃね?」
「好きでこんな髪になったわけじゃありませんわ!」
カミオの心無い言葉にラプンツェルさんが抗議する。
ボク達は茶色の木製扉にたどり着いた。
プレートには『会議室』と書かれてある。
「みんな、トランプを翳すぞ」
「カミオが仕切るなでちゅ!」
ボク達がトランプを翳すと、扉が開く。
さわやかで清涼感のある匂いがボクたちを包んだ。
円上に並んだテーブルには、それぞれ各町や施設の代表者夫妻が集まる。
彼等は住人同士で話し合ったり、夫婦交じりあったりしているが、ストイック・ラヴで正気を保っているので会議に支障はない。
中心には豪華できらびやかな椅子。椅子を囲む四つのテーブルにはそれぞれスペード、ハート、ダイヤ、クラブの紋章が刻まれている。
スペードにはチェシャ猫、ハートにはマーチヘア、クラブにはジャバウォック、計三組の夫婦が着席していた。
「あれ?今まで何をしてたの……って何この巨乳!?重っ!」
会議室の芳香を嗅いだブルーグさんも正気に戻るわけで
「おバカ薬の影響でぃ!」
「はぁー、肩がこる」
ブルーグさんはため息をつきながら着席。
「シャーシャさん、マッチさん、セバスさん、待たせてゴメン」
「コルヌ、やっと来ましたか」
「寄りエッチしてたのデス?」
「もうすぐ会議が始まりますよ」
ボクはダイヤの席に座る。
両親達はそれぞれ後ろの席に着席。
「全員、というわけではないが、予定時刻となったのでこれより会議を始める」
出席していない者は刑示板を用いてテレビ会議。
「皆に集まって貰ったのは重要な用件だ。討伐隊一万人の召集の協力をお願いしたい」
「それなら前の会議で、ボク達フォーカードと城の住人達で話し合ったじゃないか。先日の競技中止だってその一環だったし」
「流石に一万人は多すぎた」
「競技場にいた討伐隊をヨツンバウェイにある簡閲SAまで連行して数えてみたが、彼らを含めても全体の九割しか集まっていない。残りは逃亡中もしくは――」
「召集する意志がないとの事だ」
「確かに私の町にもS-50という討伐隊の一人が吸血鬼の城に滞在中よ。一応交渉はしてるけど……」
「ジュリーさんも大変ですね。私が住むジャーバレーにもS-08という元討伐隊のジャバウォックがいます。己の鞘に納めるドラゴンスレイヤーを持つ人間を求めてるだとか何とかで……」
「ジャッジさんも大変だね」
「そうですよ、この会議だって本来なら両親が出席すべきなのに、代わりに出席してってトランプを押し付けられて」
「今こそ国中がエッチ団結するのデス」
「一致団結と言っても、行方知れずの連中はどうすんの?」
「カミオは一言多いでちゅ」
「その点はご心配なく」
「女王様が快く用意してくれたのデス」
「人間のままこの国から脱出するチャンスをね」
セバスさんは四枚の光り輝く紙を取り出す。
「それは……脱出チケット、あとの一枚はボクの分だね」
時はマドラ達が社員旅行の最中の出来事。
「我々フォーカードが脱出チケットを掛けて討伐隊と戦います」
▲続く▲
14/09/08 23:58更新 / ドリルモール
戻る
次へ