М不思議の国・タマゴの里М
М初太視点М



｢着いたﾆｬ、ここがお茶会ﾆｬ｣

俺はチェシャ猫のチェルの案内でお茶会に出席した。

友達の捜索は一旦中断し、食事休憩だ。

テーブルにはチェシャ猫,そして燕尾服と帽子を着用したマッドハッター……帽子屋達が座っていた。

｢こっちだよ、チェル｣
｢ニャー会いたかったﾆｬ｣

チェルが夫の隣席へ飛び込む。

俺も空席を探していると、

｢こっちの席が空いてるよ｣

帽子屋の……女が声を掛けた。


……


｢どうしたの？座りなよ｣
｢あ、ああ｣

俺は帽子屋の隣に座る。

｢よろしく｣
｢ああ、よろしく｣

｢全員揃ったので、今から試合終了記念パーティーを始めます。皆さん、いつも通りお茶会を楽しんでください｣

主催者のチェシャ猫の声でお茶会が始まった。



М一時間後М



何なんだ、このお茶会。



周囲の会話がサッカーの試合かと思いきや、途中からハンマー投げや棒高跳び等様々なスポーツが混じってる。

混じってるのは会話だけじゃない。

｢ﾊｧﾊｧチェル、チェル｣
｢にゃーん、極刑より激しくしてﾆｬ｣

男女が裸で交じってやがる。

｢キスするﾆｬちゅっちゅ｣
｢ちゅるっじゅるっ……｣

官能的な口付けを交わすなよ。股間がガチガチになるじゃねーか。



｢大丈夫かい？きみ。さっきから息が荒いよ？｣

隣の帽子屋が紅茶を飲みながら喋る。



何故こいつは普通に紅茶が飲めるんだよ？



｢何が大丈夫って？ふざけるなよ……周囲の奴らが変だから調子が悪くなるんだ｣
｢どこが変なの？｣

帽子屋は虜のタルトを齧りながら喋る。

｢周りの連中が一目を気にせずセックスしてるところだ！なのに皆平然とした顔で茶会を続けてる！｣
｢いつものことだよ。紅茶やお菓子で疼いてきた身体を伴侶に鎮めてもらうのがお茶会の礼儀さ｣
｢鎮めるって、お前ーー｣

帽子屋が俺にタルトを差し出した。

食べ掛けのタルトを。

｢このタルト美味しいよ。キミも食べてみてよ｣

優しく微笑みながら、歯形つきのタルトを俺に差し出す。

｢……皿にあるタルトを食べる｣



間接キッス



その単語が浮かんだ俺はあえて皿にあるタルトに手を伸ばす。

｢いいから食べてよ｣

帽子屋が俺に寄りかかり、



むにゅ



柔らかい感触



俺の手はタルトではなく、帽子屋の片胸に触れた。

フリーズ

再起動

右手の現在位置確認

帽子屋の燕尾服

胸囲部分

柔らか

美乳

胸

…

……

………！

俺は無言の悲鳴を上げ、慌てて胸から手を離す。

｢ゴメン！タルトを取るつもりが｢はい｣

帽子屋は微笑みを崩すことなく、俺にタルト(食いかけ)を差し出す。

｢美味しいよ｣
｢……｣

俺は何も言わずそのタルトを取り口に頬張る。

フルーツの甘味がする。

よく噛み、味わい、触覚を遮断するように、味覚の感度をあげる。

｢美味しい？｣
｢ああ｣

聴覚からも甘味を感じる。

｢そんなに美味しいんだ、ぼくとの間接キッス｣

ﾌﾞｯ！

｢ｹﾎｯｹﾎｯ、何言いだすんだ！｣
｢何って、間接キッスだよ？｣
｢間接キッスって元はと言えばお前が｣

『間接キッスしたんだ』

誰かの囁き。

『その娘が気になるのね』

｢何言ってるんだよ｣

何故か囁きに返事をしてしまう。

『じゃあさっきのパイタッチは何？』

｢あれは不可抗力で｣

『でも結構長く触ってたわよ？』

｢え？嘘｣

『嘘じゃないわよ、一分十二.一秒フリーズしてわ』

｢マジかよ！｣

『その後、手が胸から離れるまで四十五.四五秒掛かったわ』

｢うわああ｣

『叫ばなくていいのよ、パイタッチは健全な男子である証拠よ』

｢健全じゃねぇ！｣

『そんなこと言って、君ってさその娘の事が好きなんじゃない？』

俺がこいつの事が好き？

帽子屋の方を向く。

『よーく見て、その娘のカラダを』

衣装は男,身体は女

未知の美しさ

『ドキドキしてこない？』



ドキドキ？



『唇に食べかすがついてるわ』

囁きの指摘から、彼女の下唇にある食べかすに気付く。

『取ってあげたら？』

俺は彼女の唇にそっと指を伸ばす。

柔らかい唇の感触が指先に伝わり、タルトの食べかすを掬い上げる。

彼女が口にしていたタルトが俺の指先に……



美味しそう



いかんいかん、落ち着け、ちゃんと伝えなければ。

｢食べかす、付いてたぞ｣
｢……ありがとう｣

帽子屋がお礼を言う。





ちゅぱっ



彼女が俺の指を加えた。

｢うわ、き、気持ちいい｣

舌の感触が、指先から手のひら、腕、脳へ伝わる。

彼女が口を開ける。

舌と指先から唾液の糸。

｢ごちそうさま｣

彼女は唇を舌でペロリとした。



可愛い



『指舐めで感じるなんていやらしいんだねぇ』

もはや、言い返す気力は無い。

『そろそろ、遊びはおわりにしましょ』

｢え？うわっ｣

背後から主催者が姿を現し、俺の背中を思い切り押した。

囁きの正体も間違いなく彼女だ。

しかしそれを追求する暇はなく、押された拍子に帽子屋と接触する。

｢きゃっ｣

彼女は可愛らしい声を上げる。



地面にぶつかる！



ふわっとした感触。

地面から巨大キノコが生え、俺達を包んでくれた。

一安心した矢先、俺と帽子屋が急接近していることに気付く。

唇と唇が近い。



キス



いかん、早く離れなければ。

ここは公共の場。

初対面で互いの事を知らないのに口付けを交わすなど彼女に対して失礼だ。

｢悪い、転んでしまって、離れるから｣

俺は彼女に謝罪しながら離れる



が、



帽子屋がうっとりとした表情で、両腕を俺の背中に回し、

｢……嬉しい、きみの方から誘ってくれるなんて｣

彼女の方から口付けを……してくれた。



｢ちゅ、ちゅ｣
｢んーんーんー｣

彼女の唇と俺の唇が密着する。

俺は離れようとするが、彼女のキス＆ホールドがそれを許してくれない。

指先以上の快楽が俺を蝕む。

やめての言葉が出ない。

｢ぷはっ、はぁはぁ｣
｢どう、ぼくのキス？｣

やっと喋れる。

｢ああ、最高だよ｣
｢やった、嬉しい｣

あれ？台詞が違う？

『やっと正直になったわね』

正直？

『もう一度言う。君は彼女に恋してる。隣席に誘われたときからからずっと』

主催者が最後の仕上げとして、俺を導く。

『ほら、大好きな娘が身体の疼きを鎮めてくれるのよ。彼女の礼儀を受け入れてみたら？』

｢そうだなお茶会だよな……｣

ここはお茶会の場。

疼いた身体を鎮めてもらうのが礼儀。

鎮めてくれ、この疼きを、



君の愛で



｢そういえば……名前聞いてなかった｣
｢ぼくもきみの名前を聞くの忘れてた｣

｢俺の名は初太｣
｢ぼくはマドラ｣

｢マドラ……好きだ｣
｢ぼくも初太が好き｣

｢マドラ｣
｢初太｣

俺達はキノコの上で、深い口付けを交わす。

互いの舌が絡み合う。

ソフトキスも気持ち良かったが、これもソフトと違う気持ち良さがある。

キスだけでこんなに気持ちいいなんて。

キス以外の快楽も……欲しい。

俺の声が届いたのか、マドラが俺の腕を自分の胸へと導く。



柔らかい



燕尾服越しからでもわかる、胸の形、感触、膨らみ。

舌と舌、手と胸で愛し合う。



｢……ぷはっ、初太のテクニック最高だよ、初めてとは思えないよ｣
｢マドラが俺に教えてくれるおかげさ｣
｢おかげでぼくのズボンが濡れちゃった｣

マドラのズボンが濡れて、股間から薄らと縦筋が見える。



はいてない？



俺のズボンが大きく盛り上がった。

｢初太のズボンに入ってるこれは何？キノコ？｣
｢こ、これは｣
｢ぼくのズボンにこんな立派なキノコは入ってないな〜ねぇ脱がせていい？｣
｢まだそれは……って勝手にベルトを緩めるなよ｣
｢ぼくはベルトを外してるだけだよ。脱がせるのは初太の返事を待ってから｣
｢……わかったよ、脱がしてもいいぞ｣
｢やったー、ズボンのチャックを下ろして、ぐいっと！｣
｢トランクスも脱がしやがった……｣
｢これが初太のキノコ……胡桃が二個もついてる｣
｢じろじろ見るなよ、恥ずかしいだろ｣
｢とても立派だよ、初太のキノコがこれからぼくの中に入ると思うと……また濡れてきちゃった｣

マドラのズボンの染みがさらに広がり、ズボンから水滴が垂れてくる。

｢ねぇ、ぼくのズボンを初太の手で脱･が･せ･て｣

マドラのお願いを断る理由もなく、俺はズボンに手を掛けゆっくりと脱がす。

やはり、当然、予想通り



はいてない



股間も俺とは違う。割れ目が入っており、そこから樹液が滲みだしていた。

｢どう？ぼくの中身｣
｢綺麗だ……｣
｢初太のキノコから透明な液体が滲んでる……嬉しい、ぼくの中身で興奮するなんて……もう準備万端だね。初太のかったいキノコをここに入･れ･て｣

マドラは細い指で、自分の割れ目を開く。

｢ああ、入れるぞ｣

俺のキノコをゆっくりと、桃色の割れ目に入れる。



｢あれ？何か膜みたいなのが邪魔してる｣
｢……押し込んで｣
｢いいの？｣
｢お願い、初太にならわたしは……｣

一瞬マドラの顔が、おとなしい令嬢に見えた。

俺は彼女の願いに応え、膜を押し破る。

｢あっ｣



彼女の一声



割れ目から流れる



処女の証



｢ありがとう。初太｣



マドラの目に一筋の涙。



それは傷み？嬉しさ？



｢今度は初太の初めてを頂戴……｣

マドラが俺とキスをしながら、腰を動かし始めた。

キノコと襞が擦りあう。

俺も腰を動かすが、中々うまく動かせない。



気持ちいい



でも、ちゃんと動かせばもっと気持ち良くなるのに。

悔しいな。マドラを気持ち良く出来ないなんて。

｢うっ｣
｢あっ熱い｣

あっさりと漏れた。

｢はぁはぁ……｣

射精の脱力感なのか、

急に眠くな



МММ



…

……

………！

｢おはよう｣

少女が挨拶をした。

｢ここはどこだ？｣
｢わたしの家よ｣

ワンピースを着用した令嬢風の少女が言う。

｢確か俺はマドラとセックスしてる最中に眠って｣
｢そうね、おかげで運ぶの大変だったわよ｣

｢そうか、君が運んでくれたのか。ありがとう｣
｢……ねぇもしかして｣
｢君、マドラの家知らない？彼女に謝りたいんた｣
｢……あぁやっぱり｣

令嬢は落ち込んでる。

｢マドラの家知らない？｣
｢ここよ｣
｢ここ？……そうか、君はマドラの妹さんか｣

確かに顔立ちがマドラと瓜二つ。

マドラが麗人なら、妹は令嬢。

令嬢改め妹が立ち上がり、クローゼットの扉を開ける。

中には燕尾服と帽子。

妹がワンピースを脱ぎ捨て、裸になる。

｢ちょ｣

俺の驚愕を余所に妹が髪を結って、燕尾服と帽子を着用。

｢これでどう？｣

妹がマドラに変身した。


…

……

………！

｢マドラ!?｣
｢気付くの遅〜い｣

妹改めマドラが言う。

｢何で男装したの!?素でも可愛いのに｣
｢里の風習というか、女王様の命令というか……｣

マドラは恥ずかしそうに言う。

｢命令って……いやまずは謝らないと……ごめん、セックスの途中で寝てしまって｣

他にも謝る事がいっぱいあるけど……

しかし、マドラは怒るどころか、微笑んで。

｢いいわよ、気にしてないわ｣
｢いいの｣
｢うん、だってわたし達は夫婦だよ｣
｢夫婦……俺はまだ17だぞ｣
｢ここは不思議の国、愛し合うのに年齢は関係ないわ｣
｢でも……｣
｢わたしじゃだめ？｣

哀しげな顔をするマドラ。

｢……いや、そんな事無い。ただ俺は……｣



ｸﾞｩ〜



｢……腹減った｣

マドラはくすくす笑い

｢まずは食事にしましょ。外では新住民歓迎パーティーが開かれているわ｣
｢またお茶会か、身体が疼きそうだ｣
｢大丈夫……ｺﾎﾝ、ぼくが鎮めてあげるよ｣
｢マドラ、さっきはああ言ったけど、男装や男口調も可愛いよ｣



マドラ赤面



｢……い、行くよ初太｣
｢行こうマドラ｣

俺とマドラはお茶会へ向かう。

あの時感じた

ドキドキを

この胸に

二人一緒に。



М続くМ

■作者メッセージ
　ドリルモールです。

　始まりました不思議の国の新シリーズ。

　マッドハッターが暮らす里の話です。

　これから、初太とマドラ、そしてあらすじに出てきた謎のマッドハッター。
　彼らが中心となって、タマゴの里の住民。
　つまり様々なマッドハッターが登場する予定です。



　また次回。



Ｍ



キャラクター紹介�@
【名前】初太
【性別】男
【年齢】17
【種族】人間
【身長】170cm
【一人称】俺
【能力・特技】特になし
【概要】
　不思議の国に迷い込んだ少年。

　図鑑世界の住民ではなく、我々の言う現代の日本から不思議の国にやってきた。

　チェシャ猫のチェルの案内のもと、タマゴの里のお茶会に出席することになり、マッドハッターのマドラと出会い、契りを交わし夫婦となる。

　これからはタマゴの里を拠点に、一緒に迷い込んだ二人の友人を探すことにした。

　マドラとの交わりで、思考が不思議の国の色に染まりつつある。

【補足事項】
　童貞卒業おめでとう。


キャラクター紹介�A
【名前】マドラ
【性別】女
【年齢】17
【種族】マッドハッター
【身長】160cm
【一人称】ぼく(通常)/わたし(自宅)
【能力・特技】早着替え
【概要】
　マッドハッター達が暮らす集落『タマゴの里』の住民であるマッドハッター。

　元は図鑑世界の住民で、不思議の国に迷い込み、タマゴの里にたどり着いた際に、お茶会にて魔物化してしまう。

　定期的に水分を補給するため、お茶会に出席する日々を送る中、初太と出会い、契りを交わし夫婦となった。

　不思議の国の住民らしい価値観を持っているが、
　マッドハッターの服装を恥ずかしがる等、元人間の頃の一面を見せるときがあり、
　お茶会では男言葉を使うが、家の中では女言葉になる。

【補足事項】
　以前は令嬢で、窮屈な生活に嫌気を感じていた。