読切小説
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星輝く蛾と無表情な蟷螂
「どこがにいいおとこいないがな〜?」
モスマンのスモモは、羽をはばたかせながら呟く。
巣立ちから一週間、魔物娘としての本能に従い、男を探して各地を転々としている。
その間に、男を数人見つけて、襲おうとしたが、「魔物は悪だと」と言いながら矢を放たれた。
びっくりして、その場から逃げたけど、特に気にしていない。
「おとこ〜おとこ〜」
男を見つけて捕らえたからどのようにしてイチャイチャしよう
「あたしがうえになろうがな〜?」
微かに光る地上を眺める。
「それともあたしがしたになろうがな〜?」
身体を仰向けにして輝く星を眺める。
「やっぱり、あたしがうえになろうがな〜?」
スモモは天と地の光を眺めながら、繰り返し呟く。
彼女にとって、天と地の輝きの違いに全く興味を示さない。
何故なら、それ以上の輝きを探しておりーー。
「あ」
見つけた。
山の梺の教会、そこにある輝きを。
男性の“精”の輝きを。
「おとこ〜」
スモモは、羽を大きくはばたかせ、急降下する。
「一月分の果物です。領収書にサインをお願い」
「おとこ〜」
入り口の前で誰かに果物を届けていることに気にすることなく輝きを取り押さえる。
「え、なに、うわっ助けて」
「うふふ〜」
スモモは、抵抗する輝きをよそに羽を羽ばたかせる。
「モスマン!?」
玄関から男の声が聞こえる。
どうやら玄関にも“精”の輝きを感じるが、その輝きは既に他のメスの物だと直感で分かる。
だから、イチャイチャするのはまだ誰の物でもない新鮮な輝き。
幸い、矢で追い払われることは無かったので
「それじゃ」
邪魔されることなく
「いただき」
顔を近付けて
「まーす」
仕切りらしきものが目の前に入った。
スモモが顔を上げると、マンティスが自身の腕の鎌を、スモモと男の間に入れていた。
「しきり〜?」
「鎌だけど」
マンティスは無表情で言う。
突然の邪魔に、驚いたがスモモは気にしていない。
ましてやこれから待ち受ける楽しみを思うと、楽しみで楽しみで仕方ないので、羽を大きくはばたかせー ー
「だめ」
られなかった。
いつの間にかマンティスが背後に回り込み、羽を押さえつけられた。
「ここではだめ」
「おい、フェイ。穏便に」
玄関にいる男がマンティスを宥めようとするが、彼女は表情を変えず、スモモと配達員を抱えて走る。
「うわ〜?」
「え、助けてくれるんじゃないの?」
下にいる配達員を余所に、スモモは普段自分が飛ぶより早いスピードで教会が離れてゆくを感じる。



気付けば、スモモと配達員は町の中心部らしきところに下ろされていた。
「ここならいい」
マンティスは無表情で、イチャイチャの許可をだす。
「ちょっと、僕にはまだ配達が」
「サインなら書く」
「だから、そういう問題じゃ」
二人の会話を気にすることなく、スモモは羽を大きく羽ばたかせる。
さっき出来なかった分だけ、大きく、大きく。
スモモの羽からは輝く粉らしきものが振りまかれる。
地上の灯りよりも、夜空の星よりも輝く燐粉をーー。

◆◆◆

マンティスはその光景を無表情で見つめる。
自分がしたことを最後まで責任を持つかのようにーー。

◆◆◆

ちなみにスモモはさっきまでのことは気にしていないかのように、配達員に口付けを交わす。何度も
「あ、あああ」
燐粉を浴びたせいか、配達員の顔はだらけきっていた。
「ねぇねぇ〜こづくりしよ〜」
スモモは当然かのように配達員に言う。
「うん、する、きみと、こづくり」
燐粉で思考が単純になったせいか、配達員はズボンを下ろしながら途切れ途切れに言う。
「わ〜おおきい〜おおきい〜」
「おおきい、おおきい」
何に対して言われてるのかにも気付かないまま、おうむ返しに言う。
「じゃあ、いれるね〜」
スモモは、股を覆っていた綿を消しーーそして、二人は一つになった。出会ったばかりにも関わらず、お互いに愛を深めてゆく、それを祝福するかのように燐粉が舞い、夜空の輝く星を増やしてゆき、地上の灯りをより強めてゆくーー。

◆◆◆

「さっきはごめんなさい」
休憩に入ったことを見て、マンティスはモスマンに頭を下げる。
「なんのこと〜?」
「一度貴女の邪魔をしたこと」
「ん〜きにしてないよ〜」
「それでも謝る」
マンティスは事情を説明する。
「あそこには身寄りの無い子供たちが住んでる」
「こども〜?」
「そう」
基本寡黙なマンティスが、淡々とだけど想いを込めてモスマンに伝える。

「貴女があそこでやっていたら、燐粉が子供たちに降注いでいた、子供たちには伸び伸びと育ってほしい、ボクとは違って伸び伸びと、幸せに」

「ん〜?」
モスマンは首を傾げる。
「すごくしあわせそうにみえるよ〜」
「今は」
「ふ〜ん」
「でも貴女の燐粉は否定しない」
マンティスは少し口元を緩め
「教会は駄目だけどこの町の中なら良い」
そして、マンティスは歓迎する。
「ようこそ星の海の町または人と魔物娘が愛する町スターシャンへ」
「すた〜しゃん?」
「今夜はいつもより人と魔物娘が愛し合う」
「お〜」
「貴女の燐粉によって」
「らぶらぶ〜」
「もちろんボクも」
「よがった〜じゃあつづきやるね〜」
「じゃあまた明日」
恋人との行為を再開したモスマンを背にマンティスは帰る。



今日は大変だったけど、同時にありがたい歓迎だったと思う。
本来なら子供たちにおやすみを言うのが日課だが今日は無理だろう。
自分の服に付着した燐粉を持ち込まないのもあるが、それ以上に彼と愛したい。今夜は独り占めにしたいくらい愛したい。
彼もそれを察して、子供たちの寝顔を見届けた後、我が家へと戻っている。
そんな彼に「お疲れさま」と言ったらどんな顔をするのかな?
感情を出さないボクはどんな顔で言うのかな?
それが楽しみでボクは走りだす。
モスマンを抱えて走った時よりも早く、速く、

大好きな恋人の下へ。
13/11/17 15:26更新 / ドリルモール

■作者メッセージ
キャラクター紹介
【名前】
スモモ

【性別】


【年齢】
わかんな〜い

【種族】
モスマン

【能力・特技】
燐粉

【概要】
夫を探すため巣立ちしてきたモスマン。
カントリーガールのため、「か」を「が」という訛りがある。
モスマンらしく陽気で周囲を気にせず行動するため、子供たちが住む教会の前で配達員を襲おうとしたが、マンティスのフェイによって一時は止められたが、場所を町の中心部へと移動し夫と行為に及ぶことが出来た。
その後、配達員と結婚、配達員のお手伝いをしながら、夜は彼とイチャイチャしている。

【補足事項】
夫の股間はマンモス級の大きさなので、がなり満足。

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