読切小説
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給仕と令嬢の温泉巡り
☆魔界火山地帯・トンスケ☆
☆煌羅視点☆



「暑いわね」
「暑いと言うと余計暑くなりますよ。お嬢様」

「暑いものは暑いのよ。煌羅」
「なら馬のボディを脱いだらどうです?」

「……暑い」
「……」

「……暑い」
「……」

「……暑い」
「……」





「突っ込んでください!お嬢様」
「きゃっ」

「どうしたのですか?お嬢様。いつもなら『脱げるかっ!』とツッコむところでしょう!」
「いや、こんな暑さじゃツッコミ以前に何もする気起きないし」

「<女王様>パール様と<鬼畜王>柴様の血を引くダイヤお嬢様が暑さに負けては、パール様のようなハーレムは築けませんよ!」
「流石にお母様のような大所帯は……」

「お嬢様の不調はキキーモラとして、いえお嬢様にお仕えする給仕としての責任!私はパール様に何て言えば」
「わかったわよ。えーと、脱げるかっ」

「お嬢様、私は服まで脱げと言った覚えはありませんが?」
「そこまで脱ぐかっ」

「お嬢様がそこまで言うのなら、私が脱がせて差し上げます」
「だから脱ぐかっ」

「お嬢様、ツッコミがワンパターンですよ?」
「誰のせいよ!」

「火山の噴火です。美しい」
「話を逸らすなっ!」

「お嬢様、町が見えてきました。今日はあの町で一晩過ごします」
「あーはいはい」

「魔界温泉の町、または健康の地獄と呼ばれる観光地ーーヘルスヘル」
「魔界温泉……」



☆ヘルスヘル・街道☆



 私たちは魔界豚のトンスケから降りて温泉街に入りました。

「宿や食事処に土産店特に温泉がいっぱいある。火山地帯ならではね」
「火山以外にも魔界の魔力と水と火の精霊の魔力によって普通の温泉とは違う効能を持つのです」

「例えば?」
「そうですね。ほら、お嬢様。あのカップルを見てください」

 私は温泉に浸かるサキュバスのカップルを指します。

「抱きあいながら温泉に浸かってる」
「ただ抱きあってる訳ではありません。彼らは交わっているのです」

「湯船の中で?」
「愛し合う者同士が入ると興奮して湯船の中で交わってしまうのです」

「へー流石魔界温泉ね」
「他にも人間の女性が入ればサキュバスになれる魔化温泉もあります」

「魔物娘になれるなんて正に天国なのに、何で町の名がヘルスヘルなの?」
「魔物娘には天国でも、教団にとっては地獄のような場所。それを皮肉って健康の地獄ーーヘルスヘルと名付けられました」

「まぁ私には関係ないけど」
「言い忘れましたが、観光目的で来られる独身男性もいますよ」

「マジで!?それを早く言いなさいよ!」
「あらあら張り切って」

「よーし、将来の旦那探し頑張るわよ!」
「お嬢様、早速ですが私の嗅覚が童貞の匂いを察知しました」

「煌羅、案内して」
「了解」

 私はお嬢様を童貞がいる温泉へ案内します。



★ダイヤ視点★



「おいで、放蕩泉の中へ」
「私で良かったの?下半身が馬なのに?」

「君は人間には無い膣を二つも持っている。一粒で二度美味しいのさ」
「まぁ貴方って口説くの上手ね」

「こうして話してみると僕たち気があうね」
「私も貴方を見て運命的な出会いだと思ったわ」

「だから、一つになろう」
「はい、喜んで」

「今、童貞を失うウウッ」
「初めてを貴男にアアン」

「アッアッ君の膣最高だよ!」
「私も貴男の陰茎が、私の膜を、子宮を、押しつけてイクッイクッ」

「僕も出ちゃうよぅ」
「出してぇ私の子宮に貴男の種を注いでぇ」

「ウッ!!出ちゃった……」
「私もイっちゃったぁ」

「じゃあ次は君の馬膣で」
「待って、続きは旅館に戻ってから」

「そうだね。ナイトメアの君なら今夜は最高の夢がみられそうだ」
「ほら、手を繋いで」



「ハァハァ見てくださいお嬢様。ナイトメアの膣からお湯と一緒に白と赤が混じった液体が流れてますよ」

 私はナイトメアと元童貞の旅行客が仲良く手を繋いで歩いていくのを見ながら煌羅に聞く。

「ねえ煌羅?」
「はいお嬢様」

「煌羅は知ってたの?」
「知ってましたよ。あの従業員はナイトメアであることを。気弱な種族である彼女は念願の夫を手に入れてーー」

「私が言いたいのはその従業員。旅館の魔物娘のことよ!『独身者が泊まる際、従業員一名がご奉仕するから出逢いの場に最適』ってパンフに書いてあるじゃない!」

「流石温泉街で働く魔物娘ですね。独身男性に対するオ・モ・テ・ナ・シの精神が素晴らしい」
「私にとってはうまい話にはウ・ラ・ガ・ア・ルゎ!」

「お嬢様は器の小さい方ですね。新たなカップル誕生に嫉妬して。そんな事ではバイコーン検定一級は取れませんよ?」
「悪かったわね器が小さくて。ていうかバイコーン検定一級って何よ?」

「さて、そろそろ宿へ向かいましょう」
「……煌羅ならスルー検定一級取れるわよ」



★旅館・キュートス★



「結構立派な旅館ね」
「この町で一番人気の旅館です」

「よく部屋がとれたわね」
「昔の知り合いが経営してる旅館なので」

「昔の知り合いか……」
「予約していた煌羅です」


「お待ちしておりました。狐の間はこちらです」

 私と煌羅は大柄の女性について行く。

(随分と大柄ね、痩せれば美人なのに)

 ふと、向かいからくる客達に私は凝視する。
 男三名。かなりのイケメン。

 これはラブコメ展開!

 かと思いきや、連れにメドゥーサがいたようだ。

「彼らには手を出さないほうがいいですよ。ラミア属は嫉妬の塊ですから」
「わかってるわよ」

「石化を味わいたいなら止めはしませんが」
「私はそこまでマゾじゃないわ」

「ちぇっ」
「今舌打ちしなかった?」



★狐の間★



「ここが狐の間です」

「ここが私達が泊まる部屋ね。入るわよ」
「うわっ」
「まだ清掃中でしたか」

「あんたまだ掃除終わってなかったのかい!」
「すみません。すぐ終わらせますから」

 童顔のアルプが慌てて部屋を掃除する。

「失礼しました」
「すみません。うちの新入りがご迷惑を」

「いえ、急ぎつつもきちんと掃除してました。お嬢様も彼女を見習ってほしいです」
「うっ、に、荷物を置いたら食事に行くわよ煌羅」

「了解ですお嬢様」



★食事の間★



「ふう、食べた食べた」

 私と煌羅は食事を終え、箸を置く。

「流石はキタが作った鍋料理。昔と変わらない味です」

「キタって?」
「ここの経営者の稲荷ですよ。昔は私の為に鍋料理をご馳走してくれました」

「へー結構親切な稲荷ね」
「さぁそれはどうでしょう?」


「食後の氷菓子です」

 雪女の従業員がアイスクリームを出してきた。

「お嬢様、話は後にしてデザートにしましょう」
「そうね」

 私は木のスプーンでアイスを一口掬い頬張る。
 冷たいバニラが口に広がる。
 アイスを味わっていると向かいにいるメドゥーサ一行略してメド一行に気づいた。
 どうやら、メドゥーサと男の一人が互いにアイスを食べあっているようだ。
 他の男は雪女が作ったアイスを過剰に褒め、別の男は大柄従業員に興味津々。
 ちなみにアルプ従業員は片付けに大忙しだ。

「素敵ですね。お嬢様」
「そう?男三人は同じ女を好いてるかと思ったわ」

「お嬢様、メドゥーサは多夫一妻は望みませんよ」
「知ってるわよ、ただ……」
「ただ?」
「……兄貴達を思い出しただけよ」

「……お嬢様。アイスを食べたら温泉に入りましょう」
「うん。はむっ」

 私は返事をしながらアイスを食べる。
 溶けかけのバニラが口に広がった。



★脱衣場★



「煌羅……ちょっときついよぉ」
「お嬢様、少しの辛抱ですハァハァこれに耐えれば後は気持ち良くなるだけですハァハァ」

「でも、煌羅の手つきが強くてアッアッ」
「あと少しでお嬢様は生まれ変わりますよハァハァ」

「ウッアアアアアン」
「お嬢様ハァハァ素敵……」

「ハァハァ……煌羅、どうなったの?私の体」
「鏡はこちらです」

「これが、私?」
「お嬢様は生まれ変わりましたよ。人に」

 私は鏡に映った姿を見渡す。
 馬の蹄と違う人間の足。

「これが、人の足」

 私は煌羅の手で生まれ変わったんだ。

 人間に。





「と、大袈裟に言ってますが、お嬢様は何度も人化の経験があるでしょう?」
「雰囲気打ち壊すな!ノリよノリ!」

「下半身全体に包帯を巻くのは苦労しました。それは息を切らすくらいハァハァ」
「この包帯って凄いね。巻けば人化してさらにシミや傷が一切無い綺麗な肌になるなんて」

「キタが作った包帯ですから」
「先に行くわ煌羅」

「待ってください、慌て走ったら」
「うわっ、ほげもっ」

 走りだしたら急に転んでしまった。

「四本足の時とはバランス感覚が違いますよ。エミ様の苦労を忘れたのですか?」
「イテテ。エミお姉ちゃんも人化直後はよく転んでたわね」

「お嬢様、転ばないよう私の手を握ってください」
「……判ったわ」

 私は煌羅と手を繋ぎ、浴場への階段を上る。



★眺めの湯★



「外からの眺めは絶景ね」
「ここは眺めの湯と呼ばれる貸切風呂なのです」

「貸切なのによく借りられたわね」
「キタが条件付きで貸してくれたのです」

「本当に入っていいの?」
「どうぞ遠慮なさらずに」

「いい湯加減。人間の足なら全身を浸かれるこそね」
「お嬢様、下を眺めてください」

「どれどれ、あっメドカップルが交じりあってる」
「東西南北。合法的に覗きが出来ます」

「成る程、だから眺めの湯なのね」
「それもありますが、先ずは他の三ヶ所も覗いてみましょう」

 私は他の温泉を合法的に覗いた。
 ここからは私と煌羅の実況をお送りするわ。



「雪女がメド一行の男と洗いっこしてますね」
「雪女の方は熱くないのかしら?」
「愛があれば熱さなんて関係ないでしょう」
「雪女が竿を丁寧に洗ってる」
「熱さと冷たさの相反する未知の感覚に男は気持ち良くなっています」
「泡塗れの竿の先から精液が、いやらしいーー」



「あの温泉にはアルプ一人しか入ってないの?」
「休憩中の入浴でしょう」
「伴侶がいない入浴は淋しくないのかな?」
「だからこそ性器に指を入れてるのですよ。きっと昔は手でシコシコと」
「膨らみかけの胸を乳首と一緒に揉んでる」
「お嬢様も自分の胸を揉んでみテッ、角で突かないで下さいーー」



「ピンク色のお湯が波立ってる。まるで生きてるみたい」
「あれは寄生スライムのローション風呂ですね」
「寄生風呂か。兄貴が入浴を躊躇いそうな風呂ね……ん?あれはメド一行の男と大柄従業員」
「彼女に寄生スライムが纏ってますね。その上から着物を着ていたから大柄に見えたのでしょう」
「大柄と思って失礼だったよね?」
「いえ、客を驚かせないための配慮なのでしょう」



「スライムたちの攻めで男が精液塗れになってる」
「従業員も負けじと攻めていますねハァハァ」


「煌羅、楽しそうだねぇ」

 背後から声がしたので私は振り向いた。
 稲荷が立っていた。

 全裸で。

「きゃっ裸」
「お嬢様、ここは浴場ですよ」

「ごめん、私達はタオルを巻いていたからつい」
「はっはっは、面白いバイコーンに仕えてるね煌羅ぁ」
「キタこそ旅館の経営は順調ですね」

「煌羅が言ってた知り合い?」
「知り合いじゃなく百合合いだったねぇ」
「……むっ」

「百合!?」
「そう昔は、って煌羅そんな恐い顔するなよぉ」
「……例の条件は?」

「条件?」
「今から嬢ちゃんを奉仕するのさぁ」
「百合奉仕ですけどね」

「何だ百合奉仕……マジで!?」
「さぁ、奉仕するわょ」
「私もお嬢様を奉仕します」
「いや奉仕は煌羅で間に合ってーー」



「キタの肌綺麗」
「そうよ触るぅ?」
「うん」
「お嬢様」
「イヤそこはアアンッ」
「お嬢様が一番いやらしい」
「あたしも混ぜてぇ」
「どうぞ一緒に」



「うー」
「起きてくださいお嬢様」

「うーん、あれ?まだ浴場?」
「お嬢様、空を」

 満天の星空達が私達を覗いていた。

「……綺麗」
「これが眺めの湯、もう一つの眺めです」

「綺麗な星空、スターシャンや星空山を思い出すわ」
「私もです。お嬢様と一緒に見た星空を」

「煌羅、いつか愛する人と三人で見たいな」
「はいお嬢様。いつか三人で」



「煌羅、変わったわねぇ」



★翌日★



 キタにお礼を言って

 従業員達に挨拶し

 スライム数匹を持ち帰るメド一行を見ながら

 私と煌羅は旅立つ

 さあ行こうスターシャンへ

★おわり★
13/12/06 00:54更新 / ドリルモール

■作者メッセージ
★あとがき★

夜遅く失礼します。
ドリルモールです。

今回は煌羅とダイヤが魔王城からスターシャンへ行く途中、温泉街へ一泊する話です。

スターシャンへ向かいつつ、温泉街へ夫を探すダイヤと彼女をからかいつつも暖かく見守る煌羅の活躍はいかがでしたでしょうか。

二人の旅はまだまだ続く予定です。
ぜひ見守ってください。

次は不思議の国の冒険を予定しています。
魔王城に住むある人物が不思議の国へ迷い込んだとあるアリス夫妻を探すため、先輩達と共に不思議の国に行くことまでは確定しています。
ただ、舞台が不思議の国なので正気を保てるかどうか心配です。

ではまた次回。







キャラクター紹介
【名前】キタ
【性別】女
【年齢】永遠の二十歳
【種族】稲荷
【口調・口癖】語尾に小文字が付くぅ
【能力・特技】鍋料理・人化包帯作り
【概要】
 ヘルスヘルの旅館『キュートス』の経営者兼料理人の稲荷。

 百合っ気があり、若い頃は煌羅とつるみ、鍋料理を振る舞いつつこっそり媚薬を入れ、後で煌羅を美味しくいただくことが何度もあった。

 現在は旅館を経営し、料理の腕を生かし、鍋料理を振る舞っている。

【補足事項】
 戦闘による身体中の傷を隠すため人化包帯を頭以外の全身に巻いている。



用語集@
【眺めの湯】
 キュートスにある夫婦風呂。

 高台に設置しており、下から東西南北合法的に四つの浴場を覗くことが出来るが、真の見所は真夜中になってから眺める星空であるため、夫婦に限らず一般客からの人気が高い。

 女性限定で稲荷のキタによるご奉仕が受けられる。

用語集A
【人化包帯】
 キタが作った肌色の包帯で巻けばその部分だけ人化する。
 とても丈夫で巻けば傷やシミ一つない肌になるため、魔物娘だけに限らず肌を気にする女性にも人気が高い。

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