読切小説
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星射る天使と声なき願い
※スターシャン・キュード家寝室※
※キュード視点※


「んっん」


空一面に星が多い尽くす真夜中


「はぁ、はぁ…」


キューピッドのキュードと夫のアロウがベッドの上で一糸纏わぬ姿で交わりを行う

「ふぅ、ふぅ」
「あっあ」

大柄な男の上に股がっての騎乗位
女性としては長身のキュードは長い足をアロウの腰に回し、下から動かないようホールドする

「っんっ」

キュードは膣内で男性器をねじこむようにゆっくりと腰をくねらす

キュードの膣がアロウの男性器を締め付けると同時に、アロウの男性器もキュードの膣に刺激を与える

長年自身の膣に挿入と射精を繰り返し、精と愛情を受け止め、お返しに魔力と愛を流し込んだその男性器は彼の図体に相応しい大きさと固さ、そして高品質で大容量の精を吐き出してくれる

「出そう…」

アロウの声がキュードの耳元で囁く
図体に似つかわしくない小声であるが、キュードにははっきりとアロウが射精目前だと理解できる

「出して」

端的な一言
一見愛が籠っていないように聞こえるが、寡黙なキューピッドにとってその一言はとても意味が大きい

彼女の夫なら尚更

「 ー、 ー、 ー」

声にならない息をあらげながら、アロウの腰は小刻みに運動を繰り返す

それが十数回繰り返した後、キュードの子宮に熱い刺激を感じる



射精の矢を放ってくれた



とうの昔に魔物娘と化したキュードの身体は、子宮に注がれる精を暖かく、甘く、美味しく感じとる

キュードは美味なご馳走を味わいながら、もっと注いでほしいと腰を振ることを再開する



「今日のセックスはここまでにしたい」



――前にアロウの口から出た信じられない言葉を耳にして動きが止まる

一瞬愛想が尽きたのかとキュードは焦ったが

「明日だけはどうしてもやりたいことがあるんだ交わりに夢中になって延ばしたくない」

と、アロウは長々と語る

口下手な夫が珍しく自分を説得するのだ、何か意味があるのだろう

自分も早朝から午前中の巡回の仕事があるから丁度良いのかもしれない

「うんわかった」

キュードは性器同士の結合を解き横になる

セックス疲れなのか、眠気が一気に襲ってくる


「ありがとうこれで――」


眠気眼で、夫の語りを聞きながら、キュードは眠りについた


※翌朝※
※スターシャン中心部・太陽広場※


星が隠れ太陽が顔を出す朝方

キュードは今日も一日、町の巡回を行う。


「うまか食堂準備中」


「世界図館閉館中」


「アプロン営業中」


「清水病院入口看護婦清掃中」


キュードは周囲及び建物を見渡し、不審者がいないことを確認する。


「太陽広場カップル二組確認」


キュードの瞳、ハートのハイライトが輝く眼に二組のカップルが映る。


「ダーリン♥」
「ハニー♥」


男と魔物娘のカップル達は互いに寄り添い合い


「今日もいい天気ですね…」
「そうですね…」


対して人間のカップルの方は互いに照れて会話が進んでいない。


「……」


キュードは腰に装着していた弓を構え、背中にある金の矢を二本取りだし、人間のカップルに狙いを定めて


ヒュン


二本同時に放ち、矢はそれぞれの胸部に射ぬかれる。


流れ星が流れるような刹那の沈黙の後


「あの、実はぼく、あなたのことが好きでした!」
「わ、わたしもあなたが好き、大好き!結婚を前提に付き合って、ううん交わって!」

先程の照れが嘘のように男女は互いに愛し合うようになる。


これがキューピッドの『愛の矢』の力


射抜かれた者は心のうちに秘めた想いを増幅させる


「おっ、キュードちゃんの矢が炸裂したな」
「ひゅーひゅー二人とも末永くお幸せにね」


魔物娘と男のカップルが囃し立てるのを耳にしながらキュードは警備を再開する。


※正午※
※天煌団集会所※


本日の巡回時間終了時刻となったので集会所へ戻ったキュードは、警備兵に挨拶をして団員が集まる部屋へと向かう

部屋ではマンティスと少女がテーブルで茶を飲んでいた。


「お疲れ」
「おつかーれ!」

マンティスは端的に、少女は元気よく挨拶する。


巡回を終えたキュードは、マンティスのフェイに報告を始める

「異常は?」
「なし」

「襲撃は?」
「なし」

「不審者は?」
「なし」

「不審物は?」
「なし」

一見端的な会話だが、基本口数の少ないキューピッドとマンティスにはこれだけで意志疎通がなりたつ。


「矢は?」
「太陽広場にいる人間同士カップルに愛の矢を一本ずつ放った」
「魔物化願望の兆候は?」
「現在のところは魔物化願望の兆候はなし」

「お勤めごくろうさまーキュードはフェイと交代してー」


「うん」
「了解ドラゴン団長」


その少女――天煌団を率いるドラゴン団長ことドラゴンのドラダンから巡回交代の命令が下る。


フェイは席を立ち、自分の名前が刻まれた札を裏返して、町の巡回を行う


「待って」


前に、キュードがフェイに尋ねる。


「アロウは?」


部屋を見渡してもアロウがいないことに気づいたからだ
アロウの札は裏返しになっているため、アロウも仕事に出掛けているのだろう。


「アロウなら大工の依頼にいったよー」

フェイの代わりに答えたのがドラダン。

「どこ?」
「コランダさんの家だよー」
「コランダは確か団長の夫の母の名前」
「そーだよ。ドラにとってはお姑さーん」
「依頼内容は?」
「ゆりかご作りーもうすぐコランダさんに赤ん坊が産まれてくるからねー妹が出来るみたいでドラ、わくわくしちゃう!」


くるりん♪


ドラダンは嬉しさのあまり人化を解いて、人間の少女から大人のドラコンの姿へと変わる。

「また一歩、お姉さんになれて良かったね」
「ありがとーフェイ」



ゆりかご



そのキーワードを聞いたキュードは、昨夜夫が言っていたことを思い出す。



ありがとうこれでもうすぐ生まれてくる赤ん坊のためにゆりかごを作れると――



※スターシャン市民街・四番地※


「ねぇねぇそこのお嬢さん、魔物化に興味ある?」


胸を大きく露出させた赤いカクテルドレスのサキュバスが、キュードに声をかけてきた。


「魔物になるってそんな怖いことじゃないのよ、なってみればなんてないのよ」
「ぼくは既に魔物」
「もうそんなの知ってるわよ、冗談の通じない娘ね」
「夫はどうしたの?」


サキュバスの下腹部から微かに香る精の匂いを嗅ぎながら、キュードは尋ねる。


「百回くらい夫の精を搾ったからね、今日は路地裏を歩く女の子を探そうかなって思ったの」
「夫とのエッチに飽きたの?」
「別に夫とエッチすることに飽きたわけじゃないけど、たまには人間の女の子でも襲ってエッチな魔物娘に変えたくなるときもあるのよ」

つまり夫とのエッチは飽きた訳ではない、と察したキュードはとりあえず彼女をこの場から撤退させるべく背中にある矢のうちの一本だけある『鉛の矢』を弓にセット

ヒュン プスッ

放たれた鉛の矢は見事にサキュバスの胸の谷間に命中

そのままキュードは歩き出す。


「……何かしら、この心に穴が開いたような気分は」


これがキューピッドの『鉛の矢』の力


射抜かれた者の愛を枯渇させ、他者からの愛を極限にまで求めるようになる。

「愛が欲しいわぁ、夫の愛が欲しい、ううん、今すぐにでも夫を抱きたい押し倒したいエッチしたい夫のチンポであたしの寂しいオマンコをギッポギュッポしってほしいぃぅぇぃ!」


「誰よ?いきなり大声出してセックスの邪……近所迷惑よ!」
「見ろ、サキュバスがカクテルドレスを破り捨てながら全裸で走り出しているぞ」
「胸をブルンブルン揺らしてる…ウッ!股間が!」
「痴女よ、痴女の全裸マラソンよ!」
「この町は変わった魔物娘や人間が多いな〜」


突然の大声と全裸で走るサキュバスで住人達がちょっとした騒ぎを起こす中、キュードだけは振り返ることなく目的の場所へと向かう。


※集合住宅※


「ここか」


そこは築四十年以上を超える集合住宅。

「部屋番号は確か608号室」

キュードはそこの階段をのぼりながらフェイが教えてくれた番号の部屋がある階へ到着。

「いた」

部屋のドアの前には大柄な男と一組の夫婦、ドラダンが言っていたコランダ夫妻
妻であるコランダの足にあたる部分はドロドロのスライム状にとけて、服からは触手が突き出るようにうねうね動いていることから彼女がローパーであることがわかる。


「ありがとうございます、注文通りに作っていただいて」


コランダの夫はアロウに礼を言う。


「あれ?貴女は確か、天煌団のメンバーのキュードさんですよね」
「!?」

コランダの台詞で、妻がいることに気づいたアロウは驚きを隠せない。

「どうですか、息子とドラちゃん、天煌団での二人の活躍は?」
「団長も副団長も頑張ってる」
「そう言ってもらえると助かります。未だに子離れが出来ない父親なので」

「アロウさん、この度はゆりかごを作って頂き誠にありがとうございます。これで安心してこの娘を産めます」

コランダは人間の手、そして身体から生える触手で大きく膨らんでいるお腹を優しく擦る。

「ローパーの卵にしては大きい」
「「え?」」

キュードの発言に戸惑う夫婦に、アロウが慌ててキュードに耳打ちをする。

「卵じゃない本当の赤ん坊」
「何!?ローパーの妊娠は卵を産み付けるのではないのか?」
「大半はそうだけどごくまれに胎児を妊娠するときもある」

「妻がローパー化して四十年の月日が経って、やっと身籠った命なのです」
「卵ではないちゃんとした娘が欲しかったから、ひとしおに喜びは大きいの」

あなたが毎日欠かさず子宮の中に精液を注いでくれたおかげよ、とコランダが夫にキスをする。


「子供」


仲睦まじい夫婦の姿を見たキュードの心に何かが刺さるのを感じた


愛の矢とも鉛の矢とも違う何かが。


※夜中※
※キュード宅寝室※


本日の仕事を終えた二人は寝床につく

キュードは束ねていた髪をほどく

今日の夜空も星が輝いている

キュードはタンクトップとブラを脱ぎ

いつもと変わらない星空

キュードはパンツを脱ぎ捨て

だけど今日はその星空はいつもと違って見える

キュードはアロウが待つベッドへ向かうと


「ちゅっちゅ」


早速キュードはアロウの男性器を優しく口づけを行う

刺激だけで男性器の先端から透明な液が滲み出る

水飴のように一舐めをすれば甘い味が舌を燻る

それだけでも充分甘いがそれ以上に甘い水飴は精巣の中

キュードはそれを口でもない、身体でもない

膣(なか)で食べたいという思いが過る


「キュードそろそろ」


アロウの言葉を合図に、キュードは枕元にある金色の矢を手に取り、弓を構えて『愛の矢』をアロウの胸へ向ける

全ては返事の代わりとして

アロウと初めて出会った時からずっと

指南の代わりに

慰めの代わりに

告白の代わりに

婚約の代わりに

放ってきたキューピッドの矢

今日も声なき想いを矢に込めてアロウの胸に放つ





子供が欲しいと





「え?」

暗闇でも金色に光る矢がアロウの胸元へと完全に溶け込む寸前に

アロウはキュードを押し倒す

いつもなら矢が溶け込み、アロウが動き出すまで数秒のタイムラグがあるはず

アロウは何の躊躇もなく膨張した男性器をキュードの膣へねじ込む

「あぁああっ」

獣のような激しいピストンがキュードの子宮を突く

太く硬いアロウの矢がキュードの子宮を突き破るかのように

昨夜よりも激しい快楽がキュードの頭を、心を、支配する。

「あつい」

昨夜とは比べ物にならない程の量を吐き出す精液が子宮全体を包む

射精を終えても尚男性器は衰えることはない

「もっと妊娠させて」

と、キュードは照れながら呟く



夜空に星の矢が一本放たれるのが見えた気がした



※おわり※
15/06/02 23:56更新 / ドリルモール

■作者メッセージ
夜遅く失礼します。
ドリルモールです。

 キューピッドの読み切り如何でしたしょうか。

 キューピッドの挿し絵と説明文を読んだ瞬間からピンと来て、執筆を取りかかりました。前回のフーリー読み切りと違って完成に時間が掛かりましたけど(汗)


 ちなみに二人はその後も昼までずっと、性交を続けましたとさ。めでたしめでたし♪


 キャラクター紹介、今回はキュードとアロウ夫妻です。





キャラクター紹介@
【名前】キュード
【性別】女
【年齢】……(無言)
【種族】キューピッド
【容姿】図鑑のキューピッド+170センチ+両目が見えるヘアスタイル+タンクトップ+ショートパンツ
【一人称】ぼく
【口調・口癖】句読点なしで喋る
【能力・特技】一度に二本の矢を放つ
【概要】
 スターシャンに住むキューピッド。愛の女神の命により口下手なアロウの恋愛成就を手伝ううちにやがて彼に恋をしたため結婚。魔物化したことをきっかけにスターシャンへと移住してきた。
 ギルド兼自警団『天煌団』の矢兵として町の巡回に従事しており、巡回の合間に住人に愛の矢もしくは鉛の矢を放っている。

 そんなある日、妊娠中のローパーとその夫の仲睦まじい光景を見た彼女の心に子供が欲しいという想いが芽生えて、その願いを愛の矢に込めてアロウに放つことでいつもより精液の量が多い交わりを行った。

【補足事項】
 子作りに対して初初しく照れるところが実にキュート。





キャラクター紹介A
【名前】アロウ
【性別】男
【年齢】……(無言)
【種族】インキュバス
【容姿】200センチの大柄
【一人称】自分
【口調・口癖】囁くような小声+句読点なしで喋る
【能力・特技】大工仕事
【概要】
 スターシャンの住人でキュードの夫。かつてはキュードから恋愛成就のサポートを受けていたが、口下手なため中々成就出来なかった。後にキュードと結婚しスターシャンに移住してきた。
 大柄な見た目とは裏腹に気が弱く小声で喋る。また手先が器用で住人から家具作りの依頼が多い。
 性交では奥手であるため、いつもキュードから矢を射抜いて貰っているが、キュードの子作りしたい想いの矢を射ぬかれた際は野獣のようにキュードの子宮に精を注いだ。

【補足事項】
 妻に自分の仕事を見られるのは恥ずかしくて照れるとのこと。

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