連載小説
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エネミス城→二角獣会会場
★エネミス帝国・路地裏★
★ダイヤ視点★


「すっきりしましたか? お嬢様」
「はぁはぁ、ふぅー……ええ、これですっきりしたわ」

大声で叫んだ私は息を整える。


「それにしても煌羅、よくあの子がアルプだってわかったわね」
「魔物娘特有の匂いや身体から放たれる魔力で察知しましたよ。彼女が少年でないことを」

「そうなの、流石キキーモラね」
「お嬢様、もしやまた男と見間違えたのですか?」

「マ、マサカ、ソンナコトナイヨー」
「『見間違えた』と顔に書いていますよ」

「さあ、城へ戻るわよ」
「『見間違えた』と顔に書いていますよ」

「二角獣会が待っているわ」
「『見間違えた』と顔に書いていますよ」


★エネミス城★


「『見間違えた』と顔に書いていますよ」

煌羅が耳元で同じワードを囁くのを無視して、私はさっきのことを振り返る。

あのフードを被った男の子がまさかアルプだったなんて…
どうも私は男女の判別が苦手なようだ。
フェイ義姉さんと初めて会った時も、男装と凛々しい顔立ちからこの人が話で聞いていた私のお兄ちゃんだって勘違いしちゃったし。


かといってそれを煌羅に打ち明けても、こう言い返されるわ。


お嬢様は魔物娘としての訓練を怠っているからです

五感を使い精や魔力を感じ取れば、性別だけではなく未婚者・既婚者、素質次第ではアルプ化の兆候も察することも可能

現に人化の術だって、練習さえすれば習得可能です

なぜなら魔物娘は半分「人間」、アルラウネもデビルも人間に化けることができます

わざわざ人化用の道具やネレイス船長の魔術に頼らなくても、二本の足で歩くことができるのです


「――ですのでさっさと人化の術を習得して、人化した生足をペロペロさせてください」
「そうね、煌羅のために私の生足をペロペロさせてあげる…………ねぇ、煌羅。途中から私の耳元で囁く内容が別の物になっているのはどういうわけ?」

「お嬢様が先程のことを振り返っていたようでしたので、ご奉仕として囁く言葉を変えました」
「そんなご奉仕、飲み込みなさいよ!」

「嫌です。この言葉を飲み込んだら胃に到達しますよ。太ったらどうするのですか?」
「言葉を飲み込んだだけで太るか!」

「ひどい、さっきからお嬢様のために用意した料理(暴言)を口にするのを拒むなんて」
「そんな料理(暴言)、いちいち食い尽くせないゎよ!」



「大変です、魔界豚が砂漠にあるデザートを食い荒らしています!」



え?

「西にある巨大プリンが消滅、北にあるコーヒーのオアシスも枯渇しました」
「特に氷菓系の被害が大きいとのことです」

城では兵士達がデザートの被害で大騒ぎしているみたい…

「捕縛せよ、何なら討伐しても構わん!」

魔界豚……

「T-1隊長、それが対象は山よりも遥かに巨体が故に、捕縛どころか倒すことさえ困難です」
「そもそも何故魔界豚がここにいるのだ!」

山よりも遥かな巨体……

「おそらく本日開かれる二角獣会の参加者と共にやってきたと思われます」
「ええい、飼い主はどこにいる!」


「あの……その魔界豚の飼い主は、私です」
「何てことをしてくれたのだ! ようやく家族、いや国内の食糧問題が解決できたというのに!」

「申し訳ございません、トンスケは大食いなのです」

煌羅が私を庇うように、私と隊長の間に割って入る。

「普段は近くにある触手の森で触手を食べているのですが、ここは砂漠地帯ですので触手の代わりにデザート、特に氷菓子の被害が大きいのは雪代わりに食べているものかと思われます」
「そ、そうなの、夏になると煌羅と一緒に故郷の近くにあるウェンディゴの集落に行って、村長さんからトンスケが雪を食べる許可を頂くの。お中元として籠いっぱいの夫婦の果実を差し出してね」

これは毎年兄貴達がしてきたことを私と煌羅が代わりにやるようになっただけだが、今はそこまで説明する必要は無いと思う。

とにかく責任はとってもらうぞ、と隊長が怒鳴り散らす中、一人の兵士が隊長の下へやってきて

「T-1隊長、ピスコ様からの伝言です」
「やはり魔界豚の件でお怒りか……」
「いえ、『お菓子が無いなら交わればいいのジャ』とのことです」
「……………そうだな、交わりさえすれば飲まず食わずでもいいのか……討伐へ向かった部隊へ撤退命令を出せ」
「了解、現場で指揮をとっているE-603隊長に連絡します」


「これでトンスケが退治される心配はなさそうですね、お嬢様」
「そもそも山よりも遥かに大きい魔界豚を倒そうとするほうが無謀なのよ」


★二階渡り廊下★


「うふ、そろそろ入れてあげる」
「はぁはぁ、ずぶずぶ入ってる」

トンスケ騒動が一段落ついたので、一旦クロ魔女さん達と別れて行動することにしたわ。

「ンアッ、パンパンされてるっ」
「君の中、こりこりしてイクッ」

クロ魔女さんと栗恵さん達は二角獣会への貢物であるコーハを連れて、先に会場へ
私と煌羅は廿火ちゃんと一緒に、シロービさん達がいる地下浴場へ向かうため、二階の渡り廊下を歩く。

「うわぁぁ、もう限界だぁぁ!」
「あは、もういっちゃったの?」

それにしても妙に嬌声が多いわね…城下町といい勝負だわ。

「おー、これはすごいアル」
「廿火ちゃん、中庭に何かあるの?」

私も同じように中庭を覗くと――

「すごく気持ちいいだろ?」
「ちゅっちゅしてあげるよ」
「あなたのソレ凄く最高よ」
「あーんあっ!イっちゃう」

魔物達による酒池肉林が繰り広げられていたわ。


「中庭では兵士が休憩として交わるスペースとして解放されております。渡り廊下ではその様子を自由に見学することができます」


ガイドであるチェシャ猫が私達に解説をする。

「この枝長くて太いわぁ」
「もっといい声で鳴いて」
「羽根で擽っちゃうよ〜」
「ねぇおっぱい触って?」

「ふーん、ジャブジャブ達が多く集まっているわね」
「ジャブジャブって何アルか?」
「不思議の国に住むハーピー属の固有種よ」
「へぇーハーピーの仲間アルか。それにしてもあんな豪快に腰を振るハーピーは珍しいアル」
「兄貴曰くジャブジャブは一年中発情期で、止まり木として寝ても覚めても男性との性交を求めているそうよ」
「じゃあ何でおっぱい大きいアルか?」
「知らん、そこまでは教えてもらってないわ」

「ジャブジャブは飛行よりも抱き心地に特化した柔らかな肉体を持っているのです。胸部が肥大化しているのはその影響だといわれます」
「へぇー、きらきらは物知りアル」

「くっ、煌羅ったら余計なことを……って白い卵が並んでいるゎ!」
「大声を出さないでください、周囲の人の迷惑になりますから」
「あんなでかい卵が転がっていたら驚くわよ。ん、そういえば確か……」

不思議の国には卵の魔物娘がいるって兄貴達から聞いたような――

「あの卵ってもしかして、ハンプティ・エッグ?」
「鋭い、あれはハンプティ・エッグの殻です。中では夫婦同士での激しい性交が繰り広げられております」

ガイドの言葉通り、ゆりかごのように揺れる卵もあれば、ギシギシと飛び跳ねる卵と外からでも大体想像がつく。

「しこしこ〜しこしこ〜」
「あひっ、ぬるぬるの感触が、たまらないっ!」

その中に中身が顕わになっている卵が一つ、黄身の身体をした少女が少年の逸物を優しく擦っているわ。

「だすよ、だすよぉ!」
「でたでた〜しろみがいっぱい〜」
「あへぇ、もっとしこしこしてぇ〜」


「手コキされている男の子、気持ちよさそうな顔をしているわね…」
「当然です。彼らはスライムでのオナニーに嵌った者たちですから」

ガイドの説明に私は首を傾げる。

「鞍替え前は性交が制限されていましたので、男性兵士の性欲処理としてスライムで射精することが多かったのです」
「……」
「なおスライムに放出された精は処分せずに精補給剤の材料として――」
「ちょっと待ってよ」
「どうかしましたか? バイコーンのお嬢さん」
「それって変よ、だって――」



「股間にスライムを包む時点で、それはオナニーじゃなくてセックスよね?」



「クスクス…」
「な、何が可笑しいの?」
「申し訳ありません、言葉が足りませんでしたわ。スライムといっても玩具のスライムでして、魔物娘のスライムではありません」
「マジで?」
「確かにお嬢さんの言うとおり、不思議の国のスライム属といえるハンプティ・エッグが現れてからはスライムでセックスしているも同然ですね」
「黄色い身体が男の白身でべったりだわ……」
「因みに未だに玩具のスライムで射精する快楽が忘れられず、わざわざ玩具を持ち込んで嫁に抜いてもらう夫もいますよ」
「正に変態ね。もし私だったらそんな捻くれ根性は叩き直し「おらぁ!とっとと運べ!」パシィン!――って何なの!?」

怒鳴り声がする方を向くとバイコーンが男に鞭で叩かれながら卵を運んでいた。
その後ろでは、同じく獣系の魔物三体も卵を運んでいる。
相当過酷な労働なのだろうか、ワーシープの足取りが覚束ない。


「何なの、あの男は…」
「彼はこの国の奴隷商です」
「奴隷商!? この国にそんな奴がいるの」


「おい、後ろの奴もちんたらしてないで運べ!」

奴隷商がワーシープに鞭を振るおうとしたところに、オークとヘルハウンドが彼女を庇うように間に割り込む

「ブヒィ、そう言われましても」
「こいつ、ワーシープなんだぜ」

「口答えする気か!たかがオークと!」バシン!「ヘルハウンドの分際で!」ビシッ!
「ご主人様、さすがにそこまでは…」

バイコーンが奴隷商に彼女達の弁護を図ろうとするけど

「元はといえば、お前が」バシッ!「きちんと」バシッ!「こいつらを調教しきれてないからこんなことになるだろうが!」バシッン!
「ごめんなさい、ご主人様…」

涙を流しながらバイコーンはただ謝る
そんな奴隷商の男が二階で見物する私達に気づき


「見せもんじゃねーぞ!」


「逃げましょう、お嬢様」
「あいつヤバイアル」
「うん!」

私達は逃げるように階段へ向かって走り出す。


★階段踊り場★


「はぁはぁ……いくら魔物だからってあそこまですること無いのに……」
「この国にも様々な事情を抱えた人がいるということです。いいですかお嬢様、ああいう輩には下手に係わってはいけませんよ?」
「わかっているわ、といいたいけど奥さんがバイコーンである以上、二角獣会で出会う可能性があるけどね」
「用心してくださいよ? ああいうバイコーンこそ意外と執念深いのですから」
「バイコーン? 奴隷商じゃなくて」

私は首を傾げていると


「なぁ、今日の二角獣会のことだけどさ」


警備中の兵士達の会話が耳に入ってきたわ。

「コンバクっていうバイコーンがアンデッドを蘇生させてハーレムに加えようとする催しがあるって聞いたよな?」
「確か会場の近くは墓場だよな。俺が嫁と再会した運命の場所」

「実はE-603隊長を筆頭にそのことに強く反対している者が多いそうだ」
「大切な人が蘇ることに何の不満がある? 俺の嫁もゴーストだぞ」

「どうやらずっと前に墓地で蘇生魔術を試みたことがあってさ、H-30000って奴が蘇生しなくてE-603隊長は相当落ち込んでいたよ」
「意外だな、死んだ彼女は例えゾンビやグールに転生しても最愛の人と繋がりたいと思っているかもしれないだろ? 俺の嫁のように」

「彼女じゃないぞ、そいつは男だ」
「男なの? てっきり将来を誓い合った恋人かと思ったぞ、俺の嫁がそうだったように」

「……」
「どうした? 結局のところ反対派を上手く説得できたのか?」

「お前、さっきから自分の嫁ばかり自慢していないか? 嫁のいない僕へのあてつけか?」
「魔物娘は夫を自慢するのが普通だろうが! そんなに嫁が欲しけりゃ、ハンプティ・エッグのところに飛び込んでこい」

「生憎僕は幼児を抱く趣味は無くてね」
「このBBA厨め! 少しは少女を愛する心を持ったらどうだ、この俺の様に!」


「……行きましょう、お嬢様」
「そうね」
「口喧嘩よりも拳と拳をぶつけあうのが好ましいアル」

男共の言い争いをスルーして、私達は地下浴場へと向かう。


★地下浴場・脱衣場★


「シロービ、みんな、どこにいるアルか?」


「私達も廿火ちゃんのハーレムを探しましょう」
「お待ちくださいお嬢様、シロービ様達は湯船に浸かっている可能性があります」

「浴場である以上その可能性はあるわね」
「つまり私達は湯船に入る必要があります」

「それで?」
「よって、お嬢様は服を脱がなければなりません」

「……いや、別にわざわざ脱がなくても」
「恥ずかしがることはありません、タオルを巻かず真っ裸で、湯船へダイブしてください」

「せめて下着を履いたままタオルで隠すぐらいはさせてよ!」
「下着で恥部を隠すなんて、そこまでして安心したいのですか?」

「安心も何も、探すだけならわざわざ裸になる必要はないでしょ!」
「さてはお嬢様はスタイル抜群の魔物娘を見るのが嫌なのですね? あの女性のように」


「ごくらくでしたわ〜」


曇りガラスの扉から出てきたのは背中に綺麗な翅を持つ女性。

「ちょっとのぼせましたわ〜」

モデル並の長身、大きな胸に細いくびれ、弾力のあるお尻、如何にも大人の女性って感じね

「バスタオル〜バスタオル〜」

ぺたぺたと歩く振動に合わせて、二つの巨乳が小刻みに揺れている

「あれ〜もう戻っているかと思いましたけど?」

誰かを探すように首を左右に振る度、それと連動して胸も左右に相手を探す

みぎへ、ひだりへ、ぷるん、ぷるん、と――

「いいな〜私だとあそこまで揺れないからさ、だから裸は嫌なの」
「って、煌羅? さっきから私の代弁をして何の意味があるのかしら?」

「ここは地下浴場、お嬢様がいやらしいエロネタに走っても不思議じゃありません」
「誰が走るか、ネタにしても滑っているわよ」

「風呂場だけに?」
「そうそう風呂場は濡れているから走ると危ない――って誰が上手いことを言えと?」

「確かに濡れた床で転倒したら、服の一部が濡れてしまいます」
「濡れる以前に転倒したら、怪我するって!」

「運悪く湯船に落ちたら、全身が濡れてお嬢様の貧相な体が強調されることに」
「だからどうして私が服を着たままお風呂場に入ることになっているのよ?」

「なのでお嬢様も服を脱いでください」
「だったら煌羅が先に脱ぎなさいよ!」


「きらきら、ダイヤ、既にシロービ達はお風呂から上がっているアル。シロービ、みんな〜」

廿火ちゃんが嬉しそうにシロービさんの所へ掛けて行く。

「これで服を脱ぐ必要はなさそうね」
「チッ!」

煌羅の舌打ちをスルーした私は、シロービさんがドリンク入りのボトルを自分のハーレムに差し出していることに気づく。

「「「「はぁー、癒される〜」」」」

ドリンクを飲んだハーレム達は皆緩んだ表情をしており、あのディマさんでさえも悪くは無いな、と微笑む。


「まさかあのドリンクには、怪しいものが一服盛られていて――」
「ただの栄養ドリンクアル」
「へ?」
「飲んでみるアルか?」

私は恐る恐る、廿火ちゃんから受け取ったドリンクを一口飲む。

「うまい……味からして、特に薬とか怪しいものは入っていないわね」
「あらあら、夫がディマちゃんに襲われたのがきっかけでユニコーンからバイコーンになったけど、そんなに淫乱にはなっていないわ。武道家は健康が第一、鍛錬の疲れを癒して、精力が付く料理を振舞うのが、第一夫人としての役目よ」
「そうですか、シロービさんはエロなしに気を使うタイプでしたか」
「体力が万全になったことで、夜の鍛錬も頑張ってくれたら御の字よ」
「あー、結局はエロありにつながるのね」

「なるほど、それが貴女の調教というわけですね。胃袋で嫁の心を掴むとは」
「煌羅、何食いついているわけ?」


「ねぇ、どうしてなの?」


不意の叫びに私達は振り向く
先程の女性が妖精を引き連れた夫に口論していた。

「さっきカフェで見かけた妖精ハーレムね」
「安心してください、彼女はもうバスタオルを巻いていますよ?」


「ターニィは妖精の女王ティターニアだって知ってるよね?」
「ごめんね、放っておくつもりはなかったんだ、ターニィが気持ちよさそうにお風呂を楽しんでいたから……それに昨日はターニィといっぱい遊んだし」
「そうじゃないよ!」

しかし、彼女は別の事で怒っていたわ

「ターニィが怒っているのは、戻ってきても寂しそうな顔をしていないことだよ」

腕を上下に上げ下げして

「帰ってくるなり、寂しかったよ〜ってターニィに抱きつくかと思った」

地団太を踏んでいる

「少しはお姉ちゃんぶらせてよね、ぷんぷん!」
「待ってよ、ターニィ」

ティターニアは頬を膨らませながら、脱衣所を出て行ったわ。


「安心してください、(バスタオルを)巻いたままですよ?」
「それって安心していいの?」


「ダイヤ、シロービ達の着替えが終わったアル」
「ならもうここには用は無いわね」

私は脱衣所から出ようとすると



「ダイヤ、傘落ちているアルよ?」



廿火ちゃんの指摘で、折りたたみ傘を落していることに気づく。

「変ね。ちゃんと腰に装着したはずなのに」

私は傘を拾い上げる。

「水滴が付着しているわね……ここはお風呂場だから当然だけどさ」

私は撫でるように傘についた水滴を軽く拭き取る。
お姉ちゃんらしく撫でるのってこんな感じかしら? と思いつつ、折りたたみ傘を腰に装着して脱衣所を後にした。


★二角獣会会場★


「――それで抑えが利かなくなったディマちゃんは、その場で夫を押したしちゃったの」
「みんなの前で第二ラウンド開始だったよ」

「それで旦那さんの精にディマさんの魔力が混じっちゃったのですね」
「その状態で交わって精が注がれば、ユニコーンの魔力がバイコーンへと変質しますからね」

シロービさん達と話をしながら、私達は会場へと続く通路を歩く。


「バイコーン達か」
「名前を確認させてもらう」

門の前に立つ男女が私達の確認をしてきた。

「ダイヤです」
「煌羅と申します」
「シロービです。こちらはわたしの夫とハーレムです」

二人は参加者リストらしき紙にチェックを入れてゆく

「名前確認、今から扉を開けるから」
「開けたら直ぐに入ってくれ」

二人が力を込めて重厚な扉を開くとモワッとするくらい甘ったるい空気を感じた。
だけど、不思議と心地よい。

「ここの魔力は濃度が高くて、人間にとって毒のようなもの」
「入場したらすぐに閉めるからな」

二人は、私達が入るのを確認するとすぐさま扉を閉ざしてゆく

「やっと二角獣会は開かれるか」
「E-603隊長に連絡だ」

閉まり際に二人の会話を耳にしながら、私は辺りを見回してみると

白色と灰色の石が一列に規則正しく並んでおり、石には名前と日付が刻まれていて――

「あー本当に墓地が会場なのね」
「お嬢様、墓地は死者が蘇る場所、ゾンビやグール、ゴーストといった未婚の魔物娘を探すのにうってつけなのです」

「私にとっては薄気味悪いわ〜なんでここが会場なのかしら?」
「お嬢様、ホラーネタを怖がっているようでは、ハーレムなんて出来ませんよ」

「べ、別に怖がってないゎよ! 墓石に名前が刻まれているだけあって、その人が墓の下で安らかに眠っているって思っただけよ!」
「ハイハイ」

私はお守り代わりに折りたたみ傘を握り締めて、墓地改め会場を見渡す。
会場には多くのバイコーンとそのハーレム達が集まっていた。


「あらあら、張り切っているわね」

シロービさんが、バイブルさんとダイバさんに声をかける。
バイブルさんは、ハーレム達と共に祈りの姿勢をとり
ダイバさんのほうは、リズムに合わせて身体を動かしていた。

「堕落神様にお祈りをしておりました」
「準備体操はしっかりしないとね」
「じゃあ、わたし達も軽くウォーミングアップをしましょう」

廿火ちゃん達がそれぞれペアを組んで、組み手を始める。

他のバイコーン達もそれぞれの準備で大忙しのようね。


「ほらほら、そこ、リズムが合ってない」

眼鏡のバイコーンが、ゾンビやキョンシーにダンスの指導をしていたり


「儀式用の祭壇はこれでよろしおすな」

巫女服を着たバイコーンが、魔女やラミア達が組み立てた儀式用の祭壇をチェック


「土の湿度、感触、アンデットハイイロナゲキタケの栽培に最適」

そして麦わら帽子を被ったバイコーンが墓地の土を調べている。


「金髪のレンシュンマオもいるわね…………あっちゃー、やっぱりあの奴隷商も参加しているのか……ってあれ?」


「おーほっほっほ」ビシィ!「たっぷりと」バシィ!「ご奉仕してあげる」
「はい」ベチン!「我々の業界では」パァン!「ご褒美です」

先程とは立場が一転、奴隷商がバイコーンに鞭でしばかれていた。

「どうだブヒ? マンズリの感触は?」
「すごく、気持ちいいです……」

「もっとオマンコ舐めろよ」
「はい、喜んで、ぺろぺろ」

しかも先程まで奴隷商に鞭を打たれていたはずのオークとヘルハウンドが、今度は奴隷商を虐めている。

「zzz」

因みにワーシープは何事も無かったかのように爆睡中。


「さっきと立場が逆のような……?」

「お嬢様、奴隷商が率いる魔物娘の大半は自ら飼ってもらうことを志願しているのですよ?」
「あっ(察し)」

「それにしても見事な鞭捌きですね」
「お母様といい勝負ね」

「ぜひ見習わなければ」
「煌羅、見習わなくてもいいのよ?」


「見て、もっと見て!」


そんな痴態を奴隷商は周りのバイコーン達に見せ付けている。


「うふふふ、思うがまま遊びなさい」
「よしよし、もっと甘えてくれていいですわ〜」

妖精ハーレム達も夫の周りに群がり、ティターニアも満足そうに夫を撫でている。
安心して、彼女はもう服をきているから。


城下町で見かけた黒馬に乗った僧正と三人娘もいる。
あの人達も二角獣会の参加者だったのね。

「べぇー」

孫と呼ばれた少女が、私に向かってあっかんべをする。
子供っぽい挑発にムカッとしたが、もう大人なのでそこは我慢。


城下町で見かけたバイコーン達以外にも参加者が盛り沢山。


「さあ、楽しい、楽しい、二角獣会の始まりだよ、ラユキ」
「そうね……もぐもぐ」
「姫様」「いつもどおり」「りんご」「食べる」「美味しそうに」「もぐもぐと…」「腹減った」

バイコーンに跨る王子風の青年、傍らにはりんごを齧る少女と七人のドワーフ。


「リリラウネが二人一緒に胸を押し付けているわ、ニゾン」
「ドッペル達も二人同時に性器を舐めているわよ、ユゾン」

容姿がそっくりな二頭のバイコーンが言うように、リリラウネに左右から胸を夫の胸板に押し付け、まるでそこに鏡があるかのように全く同じ容姿をした女性が同じ動作で夫の性器を舐めている。


「はぁー、ドキドキする〜」
「あー、あー」
「……」
「チューニングは良好、っと」

何やら緊張した表情で木琴を鳴らすバイコーンと、発声練習をするマインドフレイア、奥で仁王立ちをするウェンディゴ、そしてショゴスが複数の楽器を生み出して演奏している。


「じー」「じぃー」

他のハーレムの様子をじっと眺めるバイコーン夫妻、何故かあの夫婦にだけハーレムが一人もいないのが気になるけど……


「ダイヤちゃん」
「となり空いてとるで」

クロ魔女さんと栗恵さん達を見つけた私達はその隣に着席。
その後ろでコーハがきりっとした態度で待機。


「全員そろったようね」


一頭のバイコーンがこの場にいる全員に告げる。
地下深くに照らされる赤い月を彷彿させるかのように赤く照らす瞳と、所々に赤い瞳の宝石が装飾された服が特徴的ね。

「デネル、デネモラ、トゥルス。調子はどうかしら?」

彼女がそう声を掛けた背後には


「あんっ、いやらしいゾ」グッチュ!
「ここはどうかしら?」グッチョ!
「ちゅっちゅっ」ジュブペチャ


デビルとデーモン、白髪のインプが一人の男と交わっていた。
彼女達も赤い瞳の宝石を着飾っている。


「どうやら万全のようね……おほん、皆様本日は遠くからお越しいただき誠にありがとうございます。主催を勤めさせていただきますローゼットと申します。ハーレムはデビル、デーモン、アークインプの悪魔系で構成されています」

彼女の真っ赤な舌が唇をペロリと舐めながら、赤い瞳はさらに怪しく輝く――


「これより二角獣会を始めます」


★続く★
15/11/11 22:22更新 / ドリルモール
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■作者メッセージ


コーハ「あの真っ白なカーテンの向こうに白い花嫁……いやもうじき黒い花嫁になるユニコーンがいるんだね♪」 ニカッ





 ドリルモールです。

 ここ最近多忙でしたので、久しぶりの投稿となりました。

 皆さんもくれぐれも濡れた床の上で走らないよう注意しましょう。足を滑らせての打撲は地味に痛いので……

 バイコーン紹介、今回は武道家ハーレムを築く元ユニコーンのシロービです。





キャラクター紹介B
【名前】シロービ
【性別】女
【年齢】あらあら、変わったことを聞くわね?
【種族】ユニコーン→バイコーン
【容姿】ショートポニーテール+白の柔道着
【一人称】わたし
【口調・口癖】あらあら
【能力・特技】料理
【調教】食事
【ハーレム】リザードマン,河童,火鼠,ミノタウロス
【概要】
 リリムのガロムが領主を務める闘技国家・イカシアムに住むバイコーンにして柔道家。

 元々はユニコーンであったが、夫のチャンプが打ち負かしたリザードマンが本能に逆らえず彼を犯してしまったことで、夫の精に他の魔物の魔力が混ざりバイコーン化、以来武道家を集めたハーレムを結成している。

 従来のバイコーンと比べ優しい性格で、栄養満点で精がつく料理を振舞いハーレムの健康や夜の営みをサポートする。

【補足事項】
 柔道の階級は未だに白帯(魔物娘は人化の必要があるため)

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