読切小説
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帽子屋の恋文
拝啓 あたしの親友殿

 よぉ親友。

 こんな風に恋文を書くのは初めてでさ、いくら知性的になってもいざ文章にすると下手なところがあるからそこは多目に見てよ。



 読み終えてムラムラしたらいつでもあたしで抜いていいから♥



 読み返してみたらいきなりエロありな発言になってしまったな。書いてるときは全然に気づかなかったけどにな〜まっ、マッドハッターはエロいことを言うのは当然だから仕方ないか。

 そもそもこんな風に恋文を書くことになったのはな、一つは今あたしがこういう状況になっていること、もう一つはお茶会で知り合ったチェシャ猫から夫に対して手紙を書くのを薦められたからなんだ。ほら、最近あたし達の関係って親友というより夫婦じゃん。子供の頃は男子に混じってサッカーしてさ、家も近所でたまたま同じサッカークラブに入ってたのがきっかけで互いにパスを出したりして、何度もゴールを決めて、監督からお前たちは息のあったコンビだなって褒められてそれから親友という形でずっとサッカーしてきたじゃん。



 それは今となっては、セックスのときは互いに絶頂する息のあった夫婦って皆から言われてるんだよね♥



 そうそう、恋文を書くきっかけは、想いを文字にすることでお互いの本音が解るって言われたんだ。マッドハッターなら尚更それが伝わるって言われてね。マッドハッターもしてるのかって聞いてみたら、チェシャ猫は吹き込みが恋文のようなもので、マーチヘアは思い込みが激しすぎて恋文が官能小説化して、ドーマウスは眠りながら書いたら羊皮紙が唾液と途切れた文章の跡しか残らないし、ジャバウォックは夫から恋文を貰うだけでノックダウンらしい。他の種族も聞いてみる?と言われたけど、あたしはそれだけで充分に納得したから断ったよ。

 どこから話したらいいかなって思ったらまずは二人一緒にこの国に迷いこんだ時の話から書くことにする。

 ある日突然、あたしと親友、二人で不思議の国に迷いこんで、今となっては慣れっこだけど…変な植物に逆さに建てられたビル、あたし達の横を石膏で出来た女神像がムーンウォークで通りすぎてさ、その時の親友のポカーンとした表情が忘れられないよ。

 それから突然現れたチェシャ猫に案内されてたどり着いたお茶会に出席したんだよな。マーチヘアが色とりどりのお菓子を用意して、ドーマウスが無理矢理ポットの中へ押し込まれて、ジャバウォックがソフトクリームを舐めながら触手で夫のキノコを舐めてたのが今でも印象に残ってるよね〜

 成り行きで席に座って、喉乾いたからジュースを飲んでお菓子を食べたらそれが美味しくてさ、あたしはどちらかと言えば甘いものよりしょっぱいものを好むじゃん。その理由は普段から二人で身体を動かしてるから塩分を消費するって、マッドハッターになった今だからこそ解ることだけどね。



 今でも互いに身体を舐めあって汗の塩分を摂取してるけどね♥



 腹も減ってることもあって、お互いにお菓子をバリボリ食ってさ、マッドハッターからいい食べっぷりだねって言われるくらい食べたよな。

 マッドハッターから国のことや魔物娘のことを解りやすく話してくれて、当時のあたしもまるで乾いたスポンジが水を吸収するように自然と飲み込めたもんさ。

 それから何の前触れもなくマッドハッターからあたしと親友は恋人同士かってたずねられたときは、あたしはどんな気持ちだったったと思う。



 今なら言えるけど、その時のあたしの顔は真っ赤になっちまった。



 その理由は後で書くけど、あたしの本心を見抜いたそのマッドハッターは自分が被っていた帽子をあたしに被せてさ、その過程は省略するけど、それがきっかけであたしは半分マッドハッター化したのさ。

 その時の親友は変わり果てたあたしに慌てふためいたけど、寄生体である帽子とあたしはまだ別々の意思だったよ。親友に余計な心配をかけたくないから表向きは落ち着いていただけで。

 その後は、スクールみたいな施設でマッドハッターとしてのカリキュラムを受けた。

 同じくキノコに寄生された少女達と一緒に紅茶の飲み方、言葉遣い、燕尾服の着用といった基礎を学んだ。元から備わってた本能なのかキノコで脳が活性化したのかわからんけど、頭より身体が動くあたしでも要領よく身につけることが出来た。



 親友に対する恋愛を除いてはな。



 親友に学校生活の話は普通に出来るけど、愛の言葉だけは緊張して口がパクパクしてしまう。天気の話をするかのようにサラリと口にするマッドハッターとしてはおかしな話だよな。

 そんな状態では押し倒すことすら儘ならないもんで、苦悩の日々が続いたよ。



 親友のキノコが欲しい欲しいと夜な夜なオナニーするくらいにね♥



 だけどあたしだけが悩んでいた訳じゃなくてさ。あたしと同じカリキュラムを受講してるマッドハッター達も形は違えど色々な悩みを抱えていたんだ。淫猥な思考ばかり考えてるのにそれが普通だと思ってしまう冷静すぎる自分が異常だと思ったり、普通に服を着るのが面倒だったり、自分は男だと言い聞かせたり。特にいかにも上流貴族育ちっぽいお嬢様が、気弱な自分から脱却したいたいけど中々変われないと打ち明けた時は、何一つ不自由なく裕福な家庭に育った奴にも悩みがあるんだな〜と思ってさ、そしたらそんなことで悩んでいた自分がバカらしくなってきてね。



 だから恋人ではなく、親友としてもう一度やり直そうと思ったんだ。



 もうわかってると思うけど、それが親友との一対一のサッカー対決の申し込みさ。

 紳士らしく決闘の証に親友に向かって手袋を投げつけようとしたけど、親友に当たることなく地面に落ちた時は、あたしが如何にベースボールの才能が無いか実感したよ。

 マッドハッター達が見守る中始まった親友との試合。一対一のボールの奪い合い、先にシュートを十回決めたほうが勝ちの子供の頃からやっていた試合。勝ったり負けたりの繰り返しだった試合。互いにシュートを繰り返して、九対九になったところで互いに負けられない気持ちになって、気づけば頭で考えるより身体が先に動いていたよ。

 結果はあたしの勝利。

 互いに仰向けになって、雲がくるくる周回する青空を眺めながら、久しぶりにいい汗をかいたと言った親友の笑顔はここに来る前とは何も変わらないとびきりの笑顔で、あたしも久しぶりに大笑いしたよ。



 見物に来ていたマッドハッター達は、ハプニング無しの試合に「あれが本当のサッカーなんだ…」って開いた口が塞がらなかったけどな。



 それから試合でかいた汗を流すために親友と二人でシャワールームに入って、一緒にシャワーを浴びたよな。

 親友は横目であたしをチラチラ見ていることに気づいてさ。

 どうしたの?さっきからあたしをジロジロ見て、ってカマをかけたら、顔を逸らしたのが可笑しくて



 女の裸をジロジロ見てしまうのは男として当然のことなのにさ♥



 だからあたしは親友の身体に手を伸ばした、石鹸で親友の身体を洗ってあげようと思ってさ。

 まさかいきなり交わると思った?子供の頃から互いに身体を洗いっこしてたじゃないか。まず先に親友の身体を洗うのは当然だろ?

 石鹸で親友の引き締まった腕や足、腹筋、首筋を綺麗に洗って泡が流れてももう一度石鹸で泡立てて、丁寧に洗ってさ。

 次はあたしの身体を洗ってくれよと頼んだら一瞬躊躇したけど、ちゃんと洗ってくれてありがとな、まずは手のひらから始まって二の腕から肩、それから足、膝、腰、腹、首筋の順で洗ってくれて



 それからあたしの胸を優しく洗いはじめたんだよな♥



 大きすぎずかつ小さすぎない引き締まった胸を優しく傷つけないようにゆっくりとなで回すように、それだけでも充分興奮したあたしの胸の先端がピンと張っちゃって、あたしがここも丁寧に洗ってって頼んだから人差し指で押し潰すように綺麗に洗ってくれて



 あたしの股間がじんわり濡れちゃったよ♥



 次はあたしの尻を洗いはじめたけど、その時のあたしはうなじから吐息を何度も感じていたことに気づいていたかい?



 胸よりも尻が好きなんだね♥



 激しくなで回すようにスポーツで引き締まった尻がぐにぐにと形を変えてゆくのをうなじの吐息と一緒に感じたさ。

 次はココね?ってあたしの股間を指したら、恥ずかしくなりながら洗ってくれて、あたしも親友のキノコを優しく洗って



 互いに股間を洗いながら立って挿入しちゃった♥



 あたしは処女を、親友は童貞を、互いに奪って奪われて、あたしは魔物娘の本能と寄生体の思考に従って、腰をゆっくりと動かしはじめて。

 キノコがあたしの中を動くたび、スポーツで身体を動かすとは違った快感を感じちゃって、親友も同じように感じてるんだなって思った。

 親友のキノコが急に大きくなったのを察した瞬間、親友のキノコから精液が出てきてさ、あたしは最初びっくりしたけど、親友から飛びだす精液が美味しくて、お茶会で食べたお菓子とは比べ物にならないくらい。



 それと同時に寄生体のキノコとあたしの思考が一つなってゆくのを感じたさ、これでようやく一人前のマッドハッターになれたってね。

 その時のあたしはキノコを帽子のように脱いでいたから、あたしの身体の中にある胞子が精を受けて急成長、頭から新しいキノコが生えてきたのには感動したよ。



 これがあたしと親友の永遠の友情の証だってね♥



 それから親友と会うたび、いつも通り練習で一汗かいて、別の練習で一汗かく日々。

 カリキュラムを修了した後も、それが当然のように続いている。

 さて、もう一度改めて言うけど。





 あたしは親友のことが男として好きだったんだ。





 いつからかはわからないけどある日、女として親友を見るようになって

 だけど告白して、それが良い結果でも悪い結果でも、親友としての関係が壊れてしまうのが怖かったんだ。

 魔物娘は男を愛している

 寄生体は精を求めている

 魔物娘として寄生体として親友と交わっても、それで親友の関係が壊れてしまうのも怖かった。

 だけど、夫婦になろうが、恋人になろうが、親友であることは何も変わらない。ただ親友の中に交わりが含まれるようになっただけだったんだ。





 と、数ヶ月前は思っていたけど





 あっ、動いてる♥





 この文章を書いている最中にもお腹の中が動くのを感じている。

 医者からは魔物娘の身体は丈夫だけど、無理な運動は控えなさいと言われてるから、親友と一緒にスポーツは控えていてモヤモヤしている。

 これを書いている時にも外に出て運動したいと思うくらいだ。

 だからそろそろ筆をおくことにする。あたしもこれから大事な用事が控えてるから。入院してから毎日しなければならないことだからな。

 この恋文を読み終えたら、返信を書いてほしい。

 今度は親友の本音を知りたいからだ。

 親友も親友で大事な用事があるから慌てて書かなくていい。あたしが入院してから毎日欠かさず取り組んでいるからだ。



 出来ればあたしのお腹で動いてる命が産声を上げる前に寄越してほしい。



 だって、今度は三人で身体を動かすことになるから♥











P.S.
 医者からは交わりならオッケーと言われてるから、今日も宜しく頼む♥
15/05/23 23:54更新 / ドリルモール

■作者メッセージ
ドリルモールです。


5月23日は5(こ)23(ふみ)の語呂合わせでこふみ→こいぶみ→恋文の日だそうです。

なので連載の息抜きとしてスポーツ少女系のマッドハッターが夫宛に書きそうな恋文を書き上げてみました。


ここまで読んでくれて本当にありがとうございます。

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