◇スターシャン・自宅◇
◇フェイト視点◇


我が家の妻達は人前では露骨に肌を出さないと決めている

理由は様々あるが、主に教会の子供達へ悪い影響を与えないため

サキュバスのような布地の少ない服を着ると子供達も真似しかねない

僕としては胸元を開けた時のシュウの反応が見たいけど

それを子供達の前でやるのは非道徳


だけど自宅の場合になると話は別

僕達の家は町外れの教会の更に奥の小さな山

その頂上にある喉かな草原の中に立つ木造の一軒家

滅多に人が訪れないからこそ、家の中では開放的になれる

無論、性交もシ放題

普段は『動きやすい』という理由でスーツに長ズボン『男装』をしている僕だけど

家の中では上はワイシャツ、そしてボトムスはショートパンツという比較的ラフな格好


その用途は主に――


｢ただいま、フェイ｣
｢おかえり、シュウ｣


僕は帰宅した夫――シュウに声をかける


｢モスマンの結婚式に出ないのか？｣
｢まだ時間がある｣


｢そうは言っても、結婚式は夕方五時のはずじゃ｣


シュウは時計を見る

今の時刻は四時五十分

僕がシュウを抱えて全速力で走れば梺の教会には間に合うけど


｢交わりで予定を繰り下げた｣
｢交わりなら仕方ないな｣


僕の返答でシュウは納得


｢それで結婚式は何時？｣
｢連絡は来てない｣
｢……｣

シュウは察したようだ

未だに性交中もしくは事後のピロートークに入っていることに

シュウは部屋にある通信機『糸伝話』を見ながら

｢連絡が来るまで待つか｣

シュウは僕の隣――ではなく、向かい側にある椅子に腰をかける


｢……｣



｢……｣



｢……｣



家には沈黙が流れる



僕とシュウだけだから許される沈黙の時



ここに他の人物がいるとこうはならない



例えばエミなら官能小説を読ませたり、挙式をあげた夫婦の話等々、何かとつけて話題をつくりシュウに寄り添う


マリアだと教会の子供達の愚痴を、シュウを無理矢理聞かせたり、自らの髪をシュウに絡ませ誘惑の言葉を囁いてシュウに執着する


今は従者の煌羅と共に旅に出ているけど、シュウの妹――ダイヤなら、性交に消極的な兄に素っ気ない態度をとりつつ、どこか淡い期待を抱いたりするだろう


因みに煌羅なら暇なら家事を手伝うよう急かすに違いない



僕はシュウに対して愛の言葉も、誘惑の囁きも、生意気で寂しげな態度も、家事の催促もしない



僕はマンティス



キューピッドと同様、言葉数が少ない種族



静かな蟷螂





だからこそ行動で愛を示す



僕はソファーで寝そべり雑誌を読みながら、足をパタパタ動かす



泳ぐように、ばた足で



シュウの視線は僕に向けられている



特に足に向かっているのは明白



シュウは腕を組んだり、伸ばしたり、ポーズを度々変える



それでいくら視線を誤魔化しても、僕には誤魔化されない



もう少しアピールを露骨にしてみよう


僕は起き上がり横の姿勢から着席の姿勢をとる



雑誌を読みつつ



足を組む



鎌で袋とじを素早く丁寧に破りながら



足を組み替える



注目すべき文章に鎌の先端でチェックを入れながら



片足を片膝に乗せる



シュウの目線は僕の足に釘付け



僕が足を動かす度に瞳孔の収縮が起こる



長ズボンを履くと見えなくなる細足

地面を駆け抜け、木々を飛びうつり

かつ傷ひとつない綺麗な足



そんな僕の足でシュウの目線を独り占め



さあ、いつでもおいで

君は家に迷い混んだ蝶

僕は蝶を捕食しようとする蟷螂

いつ足の誘惑に負けて此方へ来ても構わないよ

その時は僕の足で君の大事なモノを――



｢なぁ、フェイ｣
｢何？｣


｢そういえば、あのモスマン騒動の翌朝、ドラゴン団長から事情聴取があっただろ？｣
｢うん｣
｢その時、色々と大変だったんじゃない？｣
｢何が？｣
｢ほら、モスマンの影響で被害にあったとかさ｣
｢モスマンは歓迎の対象｣
｢確かにそうだけど、性的に魔物に襲われたとかさ｣
｢クラーケンのカップルが誕生｣
｢でも、一人くらいにトラブルがあっても｣
｢清水病院の患者が一名、応急処置を受けただけ｣
｢じゃあ、えっと事情聴取の内容とか｣


僕の露骨な誘惑を、シュウはモスマンの話題で上手くはぐらかすそうと試みる

それがシュウの照れ隠しだけど

こうして焦らされて、結婚式再開の連絡が来るのも何だから

とりあえず、手短に話しておこう

｢わかった｣

シュウは安堵の表情を浮かべて椅子に深く腰掛ける



でも僕は諦めた訳じゃない



狙った獲物は逃がさないのが狩人だから



◇回想◇
◇スターシャン・天煌団集会所◇


｢それでガオトが、胸を揉んでくれて〜｣
｢ふんふん、それで？｣

｢腰を振ってくれて〜｣
｢で、最後には？｣

｢オチンポで子宮をぱんぱんしてくれたの〜｣
｢成る程｣

モスマンのスモモはお腹を優しく撫でながら昨夜のことを嬉しそうに語る

｢ふむふむ、成る程。これまでのスモモの証言から察するに｣

事情聴取をしていたドラゴン団長は

｢昨晩スモモはガオトを襲って、一晩中交尾をしていたということだね？｣

そう結論づける

｢みんな、これが昨夜の事件の真相だよ。彼女には何の悪気も無い、フェイも正当防衛のために二人を教会から引き離した、新たなカップルも誕生して、独り身だったガオトにも春が来た。よってこの件は無罪放免！｣


｢これにて一件落着！｣
｢こどもができるといいな〜｣

当のスモモはドラゴン団長の話そっちのけ



一方、昨夜は僕以上に搾ったのだろう

｢あ゛〜｣

配達員ことガオトは椅子に座ったまま真っ白に燃えつきていた

昨晩までは未婚の童貞であるせいか、まだインキュバス化していない模様

｢ガオトの精が光ってる〜昨日よりも強くてあったかい〜交尾すればまだまだ精は出るがも〜｣

スモモはそんなガオトを尻目に交わろうと襲い掛かる

｢やめてーガオトの体力はもうゼロだよ｣
｢あ〜｣

ドラゴン団長がスモモを止めようと彼女の背中を掴む

小さな少女らしかぬ筋力で押さえつけようするけど

｢こうび〜こうび〜｣

スモモの翅が強く羽ばたき、翅から鱗粉が落ちる

｢……ルービィ｣

少量であるが鱗粉を直接吸ったドラゴン団長は

｢こうびしよー♥｣

魔物のメスのように、ルービィ副団長に襲い掛かる


◇回想終了◇


｢それでドラゴン団長はそのままルービィを押し倒したのか｣
｢不意討ちだったから防壁魔術は間に合わなかった｣
｢ただでさえ性交に肯定的なドラゴン団長がモスマンの鱗粉で思考が単純化したら、どんなエロありを繰り広げられるのやら｣
｢小さな足を無理矢理腰に回して拘束｣
｢小さな身体で？ 人化を解く時間すらも省きたいくらい深く交わりたかったのか…｣
｢再現してみる？｣
｢へ？｣

僕は音もなくシュウの背後へと回り

両足を回して膝の上に乗せて拘束

力を込めてシュウを椅子から立てないようにする

｢ホールド｣
｢いや、これって普通逆じゃないの？ 向かいあうように抱きついて、夫が腰を引いて逃げないように足を腰に回して――｣
｢前だと足で刺激を与えることはできない｣

僕は器用に右足の膝を曲げる

｢あっ、膝が…すべすべしてる｣



膝や太股をシュウの手や頬に来るように



そして爪先でシュウの局部を刺激する



ズボン越しでもわかる突起物



僕には無くて、シュウにはあるモノ



膝を動かしながら、爪先でピンポイントに突起物に刺激を与える



｢フェイの膝が、健康的な肌が、女の子の感触を感じる｣



同時に僕の生足をシュウに感じてもらう



その心地よい刺激にもうひとつの刺激への抵抗を奪う



刺激を受けた局部が膨張してズボンがはい回る



さながら蝶へ羽化する前の芋虫みたい



僕は左手の鎌をシュウのズボンへと宛がう



この鎌でズボンを切り裂いて、局部を傷つけることなく外気にさらけ出す手もあるけど



それでは羽化への準備している蛹を無理矢理抉じ開けるようで呆気が無さすぎる



僕は鎌でズボンのチャックを引っ掻けてゆっくりと下げる



｢やめてよ、恥ずかしいよ…｣



口ではそう言ってもシュウは一切の抵抗を見せるつもりはない



その間にも僕は鎌を器用に使い、ズボンをずらして、蛹から蝶を羽化させる



すっかり膨張した蝶は外の世界を知ろうと羽ばたかせている



しかし、根本が固定された蝶は宙を舞うことなくその場でばたつかせるだけ



モスマンとは違って、自由に空を飛べない可愛い蝶

芋虫のようにはい回る元気な蝶



この僕が君を美味しく食べてあげる



足裏で蝶の胴体を優しく擦る



足の裏を通して鼓動と温もりを感じる



両足で挟み込むように擦る



優しく、時に強く、また優しく、小刻みに



蝶の身体の膨張は増し



蝶は大きく羽ばたく



白濁の鱗粉を飛び散らせて



この前交わっても出し足りなかったかのかな

勢いよく飛び散った鱗粉は、僕の膝と共にシュウの顎に付着

僕は鎌で、白く粘性のある鱗粉を掬いあげる


僕は足の拘束を解き、シュウの前へと回る

｢汚れちゃった…風呂に入って洗わないと…｣

シュウは椅子から立ち上がろうとして

｢まだ｣

僕は鎌の先端でシュウの額を押さえる

シュウは椅子から立てなくなる

座ってる相手に額に指を押さえると立ち上がれないアレ、理屈は解らないけど


｢次は直に汚して｣


僕は誘うようにワイシャツのボタンを第二ボタンまで外し

ワイシャツの裾を軽く握ってまくりあげる

胸元と細長い臍が見える程度に


シュウは無言で頷く

局部の蝶も僕に捕食されることを望んでいる



これぞ露出の醍醐味



僕は普段使わない口角の筋肉を少しだけ使う



ゆっくりとシュウの膝に座る



膝は僕とシュウの間、局部に挟み込むように入れ込む



細くすらりとした僕の膝が蝶を優しく包み込む



柔らかい肌を滑るように蝶は嬉しそうに動いてくれる



今は顔と顔が向かい合っているので、僕はシュウに口付けをする



長年も交わしている口付けに、味わうかのように要領よく舌を捩じ込む



膝の感触の次は、舌の感触で抵抗を奪う

右膝で蝶を押し潰し

左膝で蝶を包み込むように擦る


僕の膝はエミやマリアと違い、とても細くむっちりとした弾力性はない


だけど地面を蹴り、木々を飛びうつり、森を駆ける器用さでシュウを翻弄させる


｢――フェイの膝、気持ちいい｣


僅かな息継ぎから出た微かな声で僕は嬉しくなる



顔には出さないけど



そろそろ仕上げといこう



僕は腰を打ち付けて、その反動を利用して膝で蝶を捕食してゆく



蝶は最後の力を振り絞り、自らを動かす



モスマンが夫の子を孕んだ時の感動のように



最高の羽ばたきで、盛大に鱗粉を散らす



僕とシュウの間に、白くて熱い鱗粉が散る



僕とシュウのワイシャツをべとべとに濡らしてゆく



｢はぁ、はぁ…｣

シュウは息を整える


ジリリリ、と『糸伝話』の呼び出しベルがなる

｢もしもし｣

僕は膝に鱗粉が垂れるのを気にすることなく受話器をとる


『フェイ君、やっとスモモちゃんが夫を連れて教会に来てくれたよ』
｢わかった、すぐ行く｣
『式は三十分後に開くから、だーりんを連れて教会に来てよね！』 ｶﾞﾁｬﾝ


｢直ぐに着替えなきゃ、あとシャワーも…おおっ！｣

僕はシュウは抱き抱えて風呂場へ向かう


僕のワイシャツがまたシュウの精液で染まった

精液は洗えば流れ落ちるけど染み込んだ精の匂いは残り続ける

いつかまた、このワイシャツを着るときには精の匂いを嗅ぎながらこの時の嬉しさを思い出すのだ



｢御馳走様｣



僕は眠っている蝶にそう告げる



また美味しく食べてあげるからね。


◇続く◇

■作者メッセージ
ドリルモールです。


　今回のポイントはマンティスの生足です。

　細く繊細なあの足で森を駆け抜け、自慢の鎌で獲物を素早く仕留める

　狩りの要となるあの生足で夫の獲物も仕留めると思ったらワクワク♪


　ここまで読んでくださって、誠にありがとうございます。