◇スターシャン・ヴァリエ家・フェイの部屋◇
◇フェイト視点◇
◇夜の時間◇


夜明けまでは遥かに遠い真夜中の刻


星の灯が天窓に注がれ寝室を照らす


その灯の下


久しぶりに夫婦二人で夜の営みを行う


｢んっ｣


僕の手が性感帯を刺激したのか 声にならない声をあげる


｢あっ、んっ、んーっ｣

ｽｯと指先を掌から 二の腕 肩 胸板までなぞり

｢ちょっ、そこは｣

寄り道 回り道 乳首の周りを何度も周回させる

｢何度もｺﾘｺﾘしないで｣

普段の僕はここまで焦らしたりはしないが


今の僕は気分が高揚しているためか 普段とは違う事をしたくなる

｢フェイ、ﾑｸﾞｯ｣

これ以上声を出せないよう不意に口付けを交わし

ｸﾁｭﾍﾟﾁｬｼﾞｭﾑｼﾞｭﾙﾙ

舌を入れ込み その舌で唾液を貪る

ﾈﾁｮｸﾁｮﾚﾛｯﾁｭﾙ

僕の口内で分泌される物とは違う唾液を


最愛の味 唯一無二の味 他の相手では決して味わうことない 最高の味を再認識するように


ﾈﾁｮ

ﾍﾟﾛｯ

ﾐﾁｬ




｢ぷはっ｣


呼吸をするのも忘れていたのか 一旦口付けをやめて息継ぎをする

｢長く出来た｣

だけど普段より長く口付けが出来たから満足している


｢久しぶりだよ。こんなにもフェイと長くキスしたのは｣


夫も僕の考えに同意してくれて――



｢まぁ、いつもなら途中でエミかマリアが止めに入るからだろうけど｣



むっ



｢こちょこちょ｣
｢あははははは｣

僕は指先全てを総動員して夫の身体中をくすぐり始める

｢今夜は僕だけ｣
｢あははははは｣

夫は笑い声をあげながら

｢今は二人きり｣
｢あははははは｣

僕は無表情でくすぐる

｢いつものベッドしゃなく｣
｢あはははははははははは｣

指の動きを変えながら

｢僕のベッドで｣
｢あははははは｣

決して刺激に慣れないよう

｢独り占め｣
｢あははは｣

首筋をくすぐり

｢エミは出張｣
｢あはははは｣

腰の周りをくすぐり

｢マリアは実家に帰省｣
｢あはははははははは｣

脇の下をくすぐり

｢だから僕だけ愛して｣
｢あははははﾝｯ｣

笑い声が途中で止める口付け

んっ ん ん ん ん〜

何度も 何度も キスと舌入れを繰り返す

口を離すと 二つの口を結ぶ 透明の糸

口と口がまだ繋がってることにちょっと嬉しくなる

ﾌﾟﾂｯ

唾液の糸が切れてちょっと残念

｢ふぅー、フェイ｣
｢何？｣
｢いくら二人きりとはいえ、今日はやけに激し過ぎない？｣
｢鱗粉｣
｢そうだったね、フェイはモスマンの鱗粉をたっぷり吸い込んでｲｯ！ｱｯ!ｱｯ!ｱｯ-!｣


僕は男性器を擦る


｢ああっ、フェイの手が俺の陰茎をゆっくりとシコシコしてる｣


魔物の本能に従った技巧と


｢と思ったら急に強く！｣


早く精液が欲しいメスの本能と


｢ああっ、先端がキュッキュッって｣


変わらぬ夫への愛を旨に


優しく


激しく


丁寧に


乱暴に




愛を込めて



｢大きい｣

鎌に付着した鱗粉を吸引させて正解


僕達に喜びを与え 興奮させて 肌を白く染め 膣内を淫らに濡らし お腹を満たしてくれる精を放出する性器が


いつもより大きくそそり勃っていた

｢きれい｣

夜空に輝く星の次に綺麗な男性器は


天窓からの星光に照らされ 煌めきを増す


あのモスマンもこんな風に 夜空の星と同じくらいの輝きに 誘われたのかもしれない


オスの中で光る精を


僕は性器の刺激を再開する


身体の中でも最も熱い温もりが僕の掌へと伝わる

｢フェイ、もう限界｣
｢出して｣

僕は刺激のリズムを速める

｢ちょっと、そんなに激しくされたら、ひいいっ｣

予想以上の刺激にその顔が歪み 苦しみ

｢そう？｣
｢ああっ｣

だけど

｢悦んでるよ｣
｢あひっひひ｣

そこに悦びがあるのが僕には判る

｢本当は悦んでる｣
｢ひゃあんひゃん｣

何百年も妻をやっているからこそ 大きな表情の変化から僅かな感情が手に取るように読み取れる


笑い

喘ぎ

苦痛

快感


豊かな表情をくるくると出る


僕には出せない表情を

｢はぁはぁ……フェイは凄いな｣
｢何が？｣
｢だって、モスマンの鱗粉を吸ってもいつもの表情を保ってるから｣

対して僕は感情を変えず 無感情で精を搾り取ろうとしている



マンティスは感情を出さない種族



この鎌で 顔色一つ変えず獲物を仕留める蟷螂の暗殺者



だからこそ 感情の変化に憧れる



愛する人の前では少しだけ表情を変えて 感情を出したい欲求が芽生える

｢でも俺にははっきり見える｣
｢何が？｣
｢フェイが俺を愛してることが｣
｢うん｣

その一言で僕は嬉しくなる


顔には出さないけど


だからこそ行為で示す


そろそろ開放してあげる

｢あーフェイの手が精液を搾り出す方向に｣

僕は男性器への刺激を変える

｢気持ちいいのが混み上がってくるー｣

尿道口から白い精液を流し出すように

｢出る、出るっ、出る―｣

夫が出す射精直前の表情


絶頂寸前の僕でさえ


僕の膣に精を放出する時でさえ


ここまでイキ狂った表情はしない


だけどいい


それがいい


とてもいい


だって僕の手でこんなに気持ちよくさせながらイカせることができる


これだから手での搾精はやめられない

｢あっー！｣


鈴口から白い塊が一塊飛び出す



それを合図に



｢出てる、出てる、出てるよっ！｣

火山が噴火したように白い塊が連続して噴き出す


人間の量では出せないインキュバスの精液が噴頭


僕の指に 手の甲に 手首に 腕に 鎌にも熱い精が降り注ぐ


出会い 付き合い 契りを交わし 時の経過と共に量が増え質が増す精だけど


ﾍﾟﾛｯ


この日は今までの中で五指に入るほどの量と質


ﾍﾟﾛﾘﾍﾟﾛﾘ と精を舌で味わい 喉元を潤し 胃の中へ お腹と心が満たされてゆく


もっと欲しい

｢はぁはぁ｣

噴頭が終わっても熱は冷めず 堅さを保ち 収縮することない男性器

｢ふぅー｣

精気はまだまだ充分ある


僕は興奮冷め遣らぬ夫の耳元に唇を当てて



｢好き｣



と囁く



ﾄﾞｸﾝ



男性器へ流れる血液の速度が増し また少し膨張する



｢好き｣



ﾄﾞｸﾝ



その一言で 男性器は強さを増す

｢大好き｣

僕はエミやマリアと違ってお喋りじゃないけど

｢愛してる｣

だからこそ一言一言に想いを込める

｢俺も好きだよ｣

その瞳が僕の顔を映し出す


無感情ないつもの表情


その瞳は僕だけを映し出す


もっと味わせて


僕は搾精を再開する



◇



細い指先で鈴口を擦り

｢うっ…｣

飛沫のように精を放出させる

あれから何度も精を放出させて その度に僕の部位を汚していった

手に 指に 腕に 腋に 胸に 臍に 尻に 膝に 足に 顔に精液を降り注ぎ

｢髪に…射精か、フェイの鉄色が白く錆びてる｣

鉄色の髪が白く染まり

｢昆虫の部位も…白く汚れてる…綺麗｣

昆虫の複眼と触角にも精の塊が付着

｢ねばねば｣

触角の先を指で触れ 粘り気のある白い粘液が指先に引っ付く

｢フェイ｣
｢なに？｣
｢流石に…もう限界｣

未だに男性器は硬さを保っているけど

流石に精を放出しすぎたのか

その瞼が閉じられ 僕の表情が見えなくなっていた

｢そろそろ…眠る｣
｢うん｣
｢おやすみ｣

ベッドに横たわり全身に布団を被る


僕もｺﾞｿｺﾞｿと布団の中へ入り込み

｢ぎゅっ｣

夫を抱き締めるように眠る


営みにより火照った温もりを全身に伝える

｢フェイの身体、暖かい｣

夫も抱き返してきて


同じく営みで火照った温もりが僕の全身に伝わってくる

｢おやすみ、フェイ｣

再度おやすみの挨拶をする


僕も微睡みながら

｢おやすみ｣

夫におやすみの挨拶をする



｢シュウ｣



◇早朝◇
◇風呂場◇



ｼｬｱｱｱｱ――



僕は眠気覚ましにシャワーを浴びる


お湯の温もりが僕の意識を覚醒してゆく


僕は細指で部位一つ一つに付着した精液を洗い流す


顔をそっと撫で 首筋へ


形の整った美乳を軽く押し潰すように洗い 指の圧力で潰れた部分は胸の弾力で元に戻る


鼠径部に沿って汚れを流し


華奢なようで力強さがある細足を滑るように床へ


精液が流れても 身体中に染み付いた精の匂い 感触 口の残る味は消えることはない


それが心地いい

｢まだ残ってる｣

塊となった精液は流水だけでは中々落ちない


そこでこの鎌の出番


鎌の面にそって肌の上を優しく滑らせ 白い塊のみを掬う

｢綺麗になった｣

ルーンに手を翳し シャワーの流水を止める


流水音が止まり 風呂場は静けさを取り戻す


タオルで水気を拭き取り


僕はバスローブを羽織って脱衣所を出る


◇フェイの部屋◇


｢〜〜！｣

扉越しで声が聞こえたので

｢シュウ｣

おきてる？ と聞こうとすると



｢ごめん、寝坊した！｣



シュウが通話をしていた

『遅い！』

受話器ごしからキツ目の声が響く マリアの声だ

｢昨日、ちょっとトラブルがあって｣
『何？あんたにしては珍しく言い訳するわね』
｢いや、本当に大変だったんだ、昨日教会に魔物娘が現れて｣

『もう、知らない！』ｶﾞﾁｬﾝ！ﾂｰﾂｰ

通話がそこで途切れる

｢どうしよう、マリア、凄く機嫌悪いよね？｣
｢かもしれない｣
｢かもしれないか、声だけじゃ相手の気持ちが読みにくいよ…｣


マリアと喧嘩したことにシュウが頭を抱えている


いつものことだけど


だから僕はいつも通り

｢どうどう｣

頭を撫でる

｢マリアはいつも怒る｣
｢…｣
｢だから気にしないで｣
｢うん、そうだね。俺達はまだしも、マリアにとっては三十年くらいだっけ？久しぶりの魔王城だからふわぁ〜｣
｢眠い？｣
｢ん〜いつもより多く射精したかふわぁ〜｣
｢おやすみ｣
｢おやすみ…｣

シュウは横になり枕に顔を埋める

｢�促

僕の匂いを堪能しているのだろう

嬉しそうに足をもぞもぞと動かしている


僕は着替えを始める


まずタンスの引き出しを開けて 下着を一着取り出す


乳揺れを抑える程度の生地の薄いブラで胸を支え


女性器を被う程度のＴバックを履く


｢今日は黒｣


色は派手すぎないシンプルな黒


続いてクローゼットを開け 白のカッターシャツを一着取り出す


右側のボタンを上から順に一つずつ止める


次に出すのは紺色に統一されたスーツと長ズボン


ズボンを履いて スーツを着て


鏡を見ながら襟を整え


｢止め忘れなし｣


向かって左側にあるボタンを確認


鎌を櫛代わりに寝癖を直し 鉄色のショートヘアがビシッと決まる


髪から飛び出す昆虫の触角も元気よく動く


尾がズボンに引っ掛かってないかを確認


これが僕のいつもの服装


露出を抑えたスーツと長ズボンは身軽な動作が可能で 飛翔しても下着が見えることはない


他人から見れば男装と呼ばれるが 僕は特段気にしていない


それに



｢似合ってるよ…｣



と シュウは顔を上げながら僕の男装姿を褒めてくれる



ﾁｭｯ



僕はシュウの唇に軽く口付け


特段照れる場面ではないので いってきますのキスをして 部屋を出る


テーブルにある水を飲み


戸締りを確かめ 家を出る


その前に


庭にある二本の樹の様子を一目見る

｢大きくなった｣

それぞれの木に実る赤い果実と青い果実が育ってるのを見届け 歩き出す


星が眠り 朝日が昇り始める青空の下


山を降りて

｢おはよう｣

｢おはよう、フェイおねーちゃん｣
｢夕べはお楽しみだった？｣
｢も〜笑い事じゃなかったのよ｣

｢いってきます｣
『いってらっしゃーい』

教会の子供達に挨拶して町へ向かう


そこは星と海の町 スターシャン


人と魔物が愛し合う町


町の方は モスマンの鱗粉で軽く騒ぎになってる筈


昨夜はお楽しみでしたね
子を孕んだかも
(性的に)大歓迎だったよ


と言う意味で


まずは僕が所属する自警団の集会所へ向かおう


モスマンと 彼女の夫となった配達員がいる筈だから


◇続く◇

■作者メッセージ
夜遅く失礼します
ドリルモールです

　ようやく始まりました、マンティスSS
　星と海の町スターシャンを舞台に、マンティスのフェイとそこに住む住民達の日常です。
　現在進行中の連載とは別に息抜きとして書きますのでよろしくお願いします。

　キャラクター紹介、最初に紹介するのはこの連載のメインを務めるフェイことフェイト=ヴァリエです。


◇


キャラクター紹介
【名前】フェイト=ヴァリエ(愛称:フェイ)
【性別】女
【年齢】秘密
【種族】人間→マンティス
【容姿】鉄色の髪＋ショートヘア＋イケメン寄りの美顔＋美乳(Ｄｶｯﾌﾟ)＋男物のスーツ
【一人称】僕
【口調・口癖】鎌だけど
【能力・特技】鉄鎌の錬成・拡張
【魔宝石】冷徹な鉄色
【概要】
　スターシャンに住むマンティス
　元々は人間の少女だったが、呪われた装備品である鎌を使い続けることでマンティス化した

　スターシャンにある自警団兼ギルド『天煌団』に所属し、清掃から戦闘まで様々な仕事を受け持つ

　彼女の武器である鎌は自身の魔力を鎌に注ぐことで鎌の再生及び拡張が可能で、鎌を様々な道具に代用する器用さを持つ

　動きやすい服装として男物のスーツを着ていること及びイケメンに近い顔立ちにより『男装の麗人』のイメージが強くなっており、彼女のクールビューティーな部分が更にそれを助長させている

【補足事項】
　道具の例えを言われる度｢鎌だけど｣で返す