連載小説
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透明の休憩所と保留されるハンガー
※不思議の国・ばす停留所※
※リコ視点※


「ふぅ…」
「どうした!我が妹よ、具合でも悪いのか?」

停留所で寄生スライムばすを待つ最中に、ロザリーちゃんが座り込みました。

「パラカ貴様、日傘の役目を果たしていなかっただろ!?」

だからこそロザリーの体力が人間の少女以下になったんだ、とロザリーちゃんの兄兼夫のS-50(以下シスコンさん)が唐傘おばけのパラカさんに詰め寄ります。

「いえお兄様、日光には当たっておりません。ただ暑くて…喉が乾いただけです」
「うふ、濡れタオルよ」

パラカさんはそんなロザリーちゃんに濡れたタオルを差し出します。

「待て、ヴァンパイアは水に弱いんだぞ」
「それは真水の話でしょ?安心して、真水以外の水で濡らしているわ」

ロザリーちゃんはタオルを額に軽くあて

「ひんやりして気持ちいいです…冷たさが身体中に浸透するみたい」
「うふ、どういたしまして。次は水分補給よ」

ロザリーちゃんはパラカさんからストロー式水筒を受け取り

「いただきます」

ストローを口につけようと

「ふん!」

する前にシスコンさんが奪い取り

チュウウウ

「自分が飲んじゃうのですか!?」

その行動にわたしは驚きを隠せません。

「ぷはっ、中身を確認しただけだ。味からして真水ではなさそうだ」
「うふ、それは『スポーツドリンク』よ。水分の他にも塩分等の栄養が補給できるの」
「ロザリー、『すぽーつどりんく』だ」

まるで自分が用意したかのようなどや顔でロザリーちゃんに差し出すシスコンさん。

「こくこく、美味しいです」

疲れがとれたロザリーちゃんは微笑みます。

「妹と間接キッス……♥」

そんなロザリーちゃんの微笑みにシスコンさんはニヤニヤ。

「うふ、初めからそのつもりだったのね」

パラカさんはシスコンさんが起こした行動の意図を察したようです。

「間接キッスか…いいね。今度、オレが飲んだティーカップを…」

コーンも何かを閃いたようにわたしを見ながらニヤニヤ。

「何をなさっているのですか?」

ロザリーちゃんはシャンプさんが操作する刑示板(すまーと型)に興味津々。

「仲間達にめーるを送っているの。パーティー成功の報告をね」
「成る程、手紙のようなものですね」
「この通信端末は便利よ、手紙の他にも不思議の国内なら十中八九通話が可能、映像も映すことも出来るの」

シャンプさんが刑示板の映像機能を出力



映し出される酒池肉林の宴

その中心にはチェシャ猫のシャーシャさん

シャーシャさんは球にした魔力を、投げたり、蹴り飛ばしたり、地面に転がしたりして、討伐隊にぶつけます

魔力をぶつけられた者達は正気を失い、男女ペアで交わります

正常位

騎乗位

バック

彼等の体内に蓄積された魔力で魔物化、交わりはより過激に――



「不思議の国の住人は白昼から堂々と交わるのですね」
「それが不思議の国よ。来訪者はそんな淫らな光景を目の当たりにしながら、やがてこの国に適応するの」
「わたくしとしてはこの目で見たほうが印象に残りやすいと実感しました」

お二方のように、とロザリーちゃんはわたしとコーンに言います。

「子供も淫らに交わるのですね」
「う〜そんなに淫らじゃないですよ。大人の方がもっと大胆ですから」

「お前たちをパーティーに招待して正解だったようだ。性別という想定外のことがあったが…だが、大人化した姿を見て納得した。十年後に再会したら、誰もがお前達のビフォーアフターに驚くことだろうな」
「だろ?お袋曰く、オレの十年後の姿は自分の若い頃によく似ているらしいぜ?」

十年後か…とシスコンさんはパラカさんに

「改めて言うがここに戻ってきたら十年経ってたというオチはないよな?」
「うふ、心の底から望まない限りは未来へ行くことはないわ」
「未来か……ならば過去へ行くことも可能なのか?」



過去



その質問に、わたしは一瞬『あの日』を思い出します。

「うふ、そうともいえないわね」

ですが、パラカさんはそう答えて

「時間軸は現在進行形で進むの。向こうの世界へから行って、またここに戻ってきた時間の差は、一秒後が最短記録よ」

つまり過去へ戻った事例はないわ、と結論付けます。

「逆もまた然り、元の世界に戻ったら過去だった事例も聞かないわね」

この国と魔王様の世界を往復する場合だけどね、とパラカさんの補足に、シスコンさんはそうか…、と納得します。


「うふ、もしかして過去へ戻りたいの?」
「そうでもないのだが……」

シスコンさんは間を空けて



「以前所属していた部隊の悲劇を回避できるかと思っただけだ」



「悲劇、ですか?」

わたしは思わずその話に食いつきます。

「詳しくは言えんが、仲間の一人が殉職してな」

ある意味勇敢な奴だったよ、とシスコンは続けます。

「悲しかったのですか?」
「別に、そいつ男だったし」

妹や年下の女なら泣いていたかもな、と言って

「ただ、そいつの親友の嗚咽がどうしても忘れられなくてな」
「お兄様にそんな過去が…」

初耳です、とロザリーちゃん。

「別に聞かれなかったからな、それに俺は今の時間、妹と過ごす時間を大切にしたい」
「お兄様…」
「例えエネミス帝国へ戻っても、一秒後にはここへ戻るつもりだ」
「お兄様の行くところどこまでもついて行きますわ」



今の時間が大切…確かにそうかもしれませんね。



「ばすが来たわ」

ようやく寄生スライムばすが到着。

シャンプさんが運賃として自分の帽子をスライムキャリアに差し出します。

「ホーケー…じゃなかったオッケーです」

スライムキャリアの許可が降りたので、わたし達はばすに乗車

ロザリーちゃんとシスコンさんは椅子の形をとったスライムに座ります。

「ぷよんぷよんしてますね」
「乗り心地は悪くないな」

「はっしゃしまーす♥」

スライムキャリアは素早く夫のキノコを手コキ

「あひっ!」

ビュッビュッ

夫の発射を合図にばすが発車

ヨツンバウェイ行きのゲートをくぐります。

「まずは透明SAで着替えるわよ。いつまでもコスプレしてる訳にはいかないし」


※透明SA※


「ここは透明SA、装飾店が連なるサービスエリアよ」
「シャンプ、『さーびすえりあ』って何?」
「リンスまた忘れたの?移動する途中で立ち寄る休憩所のようなものよ」
「確かに周りには休憩する人達だらけだな。あと交わる奴等も」

「ハァハァ! ハァハァ!」
「あん♥ ああん♥」

当然のように交わる男女が多く
中には四つん這いで交わるドーマウスもいますが、その中で変わった場所で交わりを行うカップルが一組

「あれ?、便器の上でマーチヘアの夫婦が座位で交わってるような…」

その様子が徐々に目視できるようになります

まるで壁が透明になったかのように。

「うふ、ここのSAは住人の精神状態に応じて壁の透明度が変化するの。頭の中がエロありになるほど、壁が透明になって、中の様子が判るの」
「つまりあの夫婦は、実際はトイレの中で交わっているのですね」
「うふ、正解」

外から見えてるのに気づいているのかいないのか、マーチヘアは大きな胸を弾ませ、結合部から精液が漏らしています。

『子宮の中で精子が泳いでる〜妊娠しちゃうかも〜♥』
『じゃあ後で産院SAに行こうハァハァ』
『しゃんせ〜い♥』

そんな交わりの様子を何度も目にしながら、わたし達はまるでお城のような造りをした装飾店へ到着

「うふ、装飾店の中で大人気なのがここよ」

わたし達は『着衣の王様』と書かれた装飾店へ入ります。


※装飾店・着衣の王様※


「フォフォフォ、ようこそ我が装飾店に。我輩が店長のネイキッドであーる」

立派な髭を生やした小太りの男性が出迎えます

上半身裸で。

「あーっ、デカイ人だ」

店長の隣に立つアリスがリンスさんを指し

「あーっ、あの子、男なのに魔女の格好してる」

次にわたしを指します。

「我が妻オネスは思ったことを口にするのであーる」

「うふ、オネスちゃん、試着室はどこかしら?」
「あっち」

オネスちゃんの案内で、試着室が連なるベースへ向かいます。

ここも当然というか、試着室の中で交わる夫婦がいるようです。

「衣服を持ってきたわ」

シャンプさんはミミックもどきから、着替え用の燕尾服を取りだすと

「使うか?」

シスコンさんがハングハンガーをシャンプさんに差し出しました。

「どうして?」
「脱いだ服の収納に便利かなと思って」
「結構よ、脱いだ衣服は箱に入れればいいだけだし」
「そっか…せっかく持ってきたのに」

シスコンさんはちょっと残念そう。

シャンプさんはリンスさんを連れて試着室の中へ

「リコ、着替えるぞ」
「待ってよ、コーン」

わたしはコーンと一緒にシャンプさん達とは別の試着室に入ります。


※着替え開始※


わたしは魔女のローブを脱いで、下着姿になります。

「あ〜重かった…」

コーンも鎧を脱いで、下着姿に

わたしも鏡で自分の身体を見ます。

真っ白な肌に、可愛いお尻、微かに膨みのある鳩胸



そして、身体の所々に微かに残る傷痕



「リコ、無理して自分の身体を見なくていいんだぜ?」
「大丈夫だよ、ほら、だいぶ傷跡も目立たなくなってきたから」

コーンはせっせと燕尾服に着替えます。

こうして鏡を見ると、共に未発達の体格

でも、十年後にはコーンは女性らしく、わたしは男性らしくなるのです。

コーンの十年後はおかーさんのような美人になるんだ…

わたしは成長したコーンの姿を想像していると



「えいっ」



コーンが後ろからわたしのブリーフをずらし

ボロン、と大きくなったわたしのキノコがブリーフからはみ出ます。

「キノコが勃ってるじゃねーか、ビンビンに」
「やめてよ、恥ずかしいよ」
「硬い硬い〜」
「触らないで〜」

抵抗してコーンから離れると

ドンッ!

コーンが手を壁に添えて、わたしに急接近

「リコ、オレのナニを想像して大きくなった?」
「そ、それは…コーンの十年後の姿」
「ふーん、それでこんなに大きくなったのか、何ならここでそのキノコをスッキリさせてもいいんだぜ?」
「…どうやって?」
「着衣セックス」
「…まだお昼だよ」
「リコはいつもそう言うけどさ、オレ達いつも里のお茶会で交わっているだろ?」
「それは、コーンから積極的に襲うから…」
「愛する者同士が繋がるのは当然だろ?」

あっさりと話すコーンは肉食獣のような目でわたしを見つめています。

耳元で囁くコーンが一言

「本当はシ足りないんじゃね?」

微かに覚えているパーティーでの交わりを思いだしてしまい

「またデカくなったな」

わたしのキノコがますます大きく、そして硬くなります

まるでタケリダケのように

「どうせ誰も見てないしさ…いいだろ?」

コーンの息がわたしの鼻を燻ると、劣情が込み上げてきて――



『くすくす、昼間から大胆ですわね』



ロザリーちゃんが微笑みながら、わたしを見ています。

いつの間にか試着室を囲んでいた壁の透明度が増していたようです。

「……」

コーンは壁に添えた手を離し

『お兄様、簡閲SAに着いたら二人で交わりましょう』
『ココで交わってもいいだろ?』
『仲間達に披露した方が盛り上がると思いますよ?』
『そうだな、我が妹との交わりこそが淫らであることを奴等に知らしめてやる!』

「あー、興が醒めた」

コーンはせっせとズボンを履いて試着室を出ます。
わたしも着替えを済ませて、試着室を出ます。


※着替え終了※


「シャンプ達はまだ着替え終わってのか?」
「あいつらのことか?」

シスコンさんが指した試着室では

『んっ♥ちゅっ♥』

シャンプさんとリンスさんが立位で交わっていました。

壁が透明になり丸見えの状態で。

『出る!出る!』
『中にリンスの精が沢山…あはっ、またキノコが生えてきた…』

シャンプさんは頭から生えたキノコを脱ぎ捨て

『まだイケるわね?』
『ああ、イケる』

リンスとの交わりを続けます。

「すげぇ…」
「う〜やっぱり大人の方が大胆だよ…」

大人達の情事は当分終わりそうにありません。


※続く※
15/05/04 21:30更新 / ドリルモール
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■作者メッセージ



シスコン「このハンガー、果たして使う機会があるのだろうか…?」





ドリルモールです。

 ロザリーちゃんとシスコンのヨツンバウェイツアー(違)の前編。
 本来なら一話で終わらせるつもりでしたが、思ったより長くなってしまったので二分割します。

 次回こそあのコンビが再登場する予定です。

 今回のキャラクター紹介は着衣の王様を経営するアリス夫妻、用語集は透明SAです。





キャラクター紹介@
【名前】ネイキッド
【性別】男
【年齢】35であーる
【種族】インキュバス
【容姿】立派な髭+小太り体型+上半身裸(王族風服)+縦縞模様のトランクス
【一人称】我輩
【口調・口癖】語尾の末尾に「であーる」をつける
【能力・特技】半透明の魔術
【概要】
 透明SAにある装飾店『着衣の王様』の店長
 他人の裸を見ることが快楽に感じる特殊な性癖を持っており、販売している商品全てに『半透明の魔術』を施しては、男女問わず購入した服が透明になるのを楽しんでいる
 自身は王族風服を着ているが、常にスケベなことを考えているため透明になってしまうので、第三者からはいつも上半身裸だと思われている

【補足事項】
 ハートの女王の前では恐縮して服が元に戻る





キャラクター紹介A
【名前】オネス
【性別】女
【年齢】10才だよ
【種族】アリス
【容姿】図鑑のアリス+嘘をつけない無邪気な印象+薄い茶髪+ふわふわなウェーブヘア
【一人称】オネス
【口調・口癖】相手に対して「あーっ」の後に思ったことを言う
【能力・特技】質問には正直に答える
【概要】
 ネイキッドの妻であるアリス
 思ったことを正直に言う性格で誰も言えなかったネイキッドの格好を正直に暴露、魔物の本能に従い彼を押し倒した
 結婚後は店員として客に店の案内をしている

【補足事項】
 思ったことは何でも口にするため、客から苦情がくることが多い





用語集
【透明SA】
 不思議の国にある名所で、ヨツンバウェイ内にある四つのSA(サービスエリア)の一つ
 閉鎖空間内での男女の交わりを他者にもよく見れるようハートの女王が建設した
 建築物が特殊な資材で作られており、周囲の住人の精神状態によって透明度が変化する
 主に好色であればあるほど透明度が増し、特に男女の交わりの際は周囲の住人からはっきりとその様子が視認されるようになる
 最近はネイキッドがその資材を基に透明度が増す衣服や装飾品を製作、性的なことを考えると服が消え全裸になる効果から、脱衣を省いてすぐに交わりたい夫婦には重宝されている

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