水着姿の住人と優しい女王様の自分撮り
Μ初太視点Μ
「本当にマドラの家なのか?」
「はい、あそこでシーツを運ぶメイドさんも、木箱を運ぶ下男も見覚えがあります――あっ」
階段奥の扉から高級そうなドレスを着た女性が出てくる
「どうしよう、隠れなきゃ」
慌てふためるマドラ
「こっちだ」
俺は咄嗟にマドラを連れて適当な扉へ入る。
ガチャリ
ΜΜΜ
扉を開けると洋式トイレだった。
「あれ?俺の家のトイレ?」
二人が隠れるには狭すぎたので、折り返すと
ガチャリ
ΜΜΜ
「デカいテーブル?」
「わたし達家族が食事するための場所です」
「何故俺とマドラの家がごっちゃになってる?」
「まるで俺とマドラの記憶が一つになったような……」
「聞いたことがあります。郷愁の霧は夫婦や繋がりの深い恋人同士が巻き込まれた場合、二人の郷愁が一つになってしまうと…」
「まさか、この場所は……」
「わたしと初太、二人の記憶が合わさった幻覚なんです」
※不思議の国・城下町※
※満知子視点※
「おお〜あのチェシャ猫の姉ちゃん、ビキニの谷間が半端ねぇ」
「マッドハッターのハイレグ姿もムチムチだ〜」
「褌姿のジャバウォックもイイネ!」
「参ったわ、へーくんが城下町の住人に釘付けよ」
「仕方ないだろ、水着姿で町中を歩いてたら思わずそっちに目がいくだろ?」
「確かにそうだけど、アタシは給油所が気になるわね」
「男が四つん這いのマーチヘアに燃料を注入するのが気になるのか」
「そうそう、マーチヘアの給油口にノズルが入り、ハイオク満タン入ります……って違う違う、隣、隣、マーチヘアがばいくにガソリンを注入してるでしょ」
「あれはドーマウスの紅茶ですの」
「ガソリンじゃないの?」
「原型のままのばいくは高濃度のドーマウスの紅茶を燃料代わりにしてますの」
「ラピッドタウンのばいくやすくーたーと言えば魔力に反応して動くタイプが主流だからね」
魔物娘ばいくには夫の精
原型のばいくには紅茶
似ているようで違う二つの給油に気を取られていたら
ドンッ!
誰かとぶつかった。
「すみません、余所見しちゃって…え゛?」
目の前にいたのは
「サンタさん?」
「メリークリスマス!」
サンタさんは笑いながら、袋からプレゼント箱を取りだし
「サンタからのプレゼントだよ」
アタシに手渡す。
「君にもプレゼントだ」
それからサンタさんは意気揚々とキジコさんにプレゼント箱を渡す。
「サンタさん、いつもありがとうですの」
「君にも」
「君にも」
「君にもだ」
へーくん、コルヌさん、チェルにもプレゼントを渡す。
「良いクリスマスを♪」
サンタさんはスキップしながら他の住民にもプレゼントを渡す。
「あのサンタさんは毎日奥様と一緒にプレゼントを配ってますの」
「魔界魚の燻製ですニャ」
「ボクは捕縛用のロープだ」
「プレゼントにはお菓子やオモチャが入ってますの」
「いいサンタね」
「中には子供化や大人化する煙に、身体から食品が生えるガス、開けると中の媚薬が破裂したり、寄生スライムが飛び出して性的に弄られるトラップレゼントがありますの」
「嫌なサンタね…」
「オレのは何かな〜何かな〜」パカッ「……何も入ってないぞ?」
「空っぽの場合もありますの」
「ショボーン」
「参ったわ、サンタの格好をした人がいるとはね…」
「サンタさん以外にもいますの」
「明けましておめでとうございます」
「今年も宜しくお願いします」
振袖を着たチェシャ猫が同じく振袖を着たマーチヘアに新年の挨拶をしている。
「彼女達は毎日振袖を着て、毎日新年の挨拶をしてますの」
「正月気分が抜けてねーのか」
それからキジコさんとへーくんは、場違いの風習をする住民を観察する。
「鬼は外〜」パラパラ
「福は内〜」ポイポイ
「あのジャバウォックの子供達は、毎日豆まきをしてますの」
「いつも節分してんだなー」
「結婚おめでとう〜」
「二人ともお幸せに〜」
「教会型の家に住むドーマウスの新婚夫妻は毎日結婚式を開いていますの」
「毎日が結婚記念日なのかー」
「参ったわ、不思議の国の住人は変わり者が多いと再認識させられるわね」
「そうですニャ、ここは国の中心部ニャので、それがより顕著にニャってますニャ」
「気にしたら負けかもね」
そんな中、道端でマーチヘアに犯されている討伐隊を見かけた。
「あはははー童貞ニンジン美味しいー美味しいー」
「うわぁぁ、そんなに激しく動いたら」
「出して出してー初めての種付けしてー」
「あうっ!」
「出ちゃったねー嬉しいなー赤ちゃん出来るくらい出してねー」
そんな二人の前に初老の男が立つと、両手に持った紙を読み上げる。
「卒業証書授与、この度は童貞を卒業し、オトコになったことをここに記す――」
本日の日付を読み終えると、男に卒業証書を渡し無言で立ち去った。
「あの校長先生は――」
「大体解ったわ、童貞奪われた男に卒業証書を授与するのが日課なのね」
Μ商店街Μ
「商店街の奥にキャンディー恋愛相談所がありますの」
「商店街だけに店が立ち並んでるなー」
「店には交わりに適した商品が販売されてますの例えば――」
「お客様、ブローチは如何ですか?身体が軽くなるスペード,恋するハート,快眠を約束するクラブ,高貴なダイヤ,身につけるだけで貴女をワンダーランドへ導いてくれるでしょう」
「アクセサリーショップでは魔物化するアクセサリーを販売してたり」
「いらっしゃいませ〜只今快楽のルーン服の大安売りですよ〜」
「洋服店では快楽のルーンが刺繍された服が販売されてますの」
「じゃあエッチなことをしてもいいのか?」
「勿論店内でイチャついたり、交わりも許可するお店も多いので、店内デートも可能ですの」
「いよっ、二人ともまだデートかい?」
「もう魚屋さん、からかわないでください」
「今日はパン屋でパンを買いに来ただけです」
「おっ、肉屋の旦那、ジャバウォックの奥さんとデートしにいくのかい?」
「いや、肉の仕入れをするために」
「魔界獣狩りに出かけるだけだ……」
流石不思議の国
お出かけ=デート
の方程式が成り立っているようだわ。
「どうせ堕落の果実タルトを食べたら身体中に彼氏の生クリームをトッピングしたり、虜の果実を食って自分の夫を狩るんだろ?ウヒヒ〜」
あと、エロありの方程式も。
アタシはベンチに座るカップルに気づく。
「休憩用のベンチもあるのね」
「あれは弁を置くと書いて『弁置』と言いますの。女王様が作った城下町名物の仕掛けですの」
「弁置?」
「百聞は一見にしかずですの」
カップル同士で熱い口付けを交わす。ここら辺はラピッドタウンでもよくある光景だけど――
ブシューッ!
突如、男の真下からガスが吹き出した。
「あれ?男のズボンが急激に膨らんで――きゅうりが顔を出したわ!?」
「へぇ〜それ程までに長い性器なのか」
「違うの、本当にきゅうりが生えてるのよ!」
「きゅうりだとぉ!?」
「奥さんも奥さんで、きゅうりを食べてるわ!」
「行為を行えば身体から食料が生えるガスが噴出されますの」
「最後まで残さず食べたわ」
「見ろよ、本物も大きくなってるぜ」
ブシューッ!
今度は奥さんにガスが吹き付けられる。
「奥さんの胸が肉まんになっただとぉ!?」
「旦那さんが肉まんをかじり出したわ」
ブシャー!
「今度は男の胸元から蜜が溢れだしただとぉ!?」
「こうして代わる代わるガスが吹き付けられますの。昼食代わりに利用する夫婦が多いですの」
「弁当に最適だな」
「城下町の出身者の他にも、買い物や観光目的で国中の住人が城下町に集まりますの」
「ふーん、個性的な住人が多いから区別がつかないけどね」
「例えば、あそこで碁盤を見ているジャバウォック夫妻は……ジャーバレー出身ですの」
「ふーん」
「ドーマウスを背負って買い物する男性は……ソーンファームから来ましたの」
「そうなの?」
「路地裏で立位で交わるマーチヘアのカップルは――」
「判ったわ、ラピッドタウンね」
「いえ、ビーンズビレッジ出身ですの」
「参ったわ、何で見ただけで出身地が判るわけ?」
「そういう満知子も見た目で決めつけるなんて、マーチヘア特有の思い込みだー」
「む、そういうへーくんは判るの?」
「判るぜ、さっきから水着を着用してる住人が多いだろ?」
「言われてみればそうね」
「ありゃ肌を見せることで異性を誘惑する算段だぜ」
「そうなのかな?アタシには泳ぎに行くだけだと思うけど……」
「満知子ちゃんの言う通りですの、彼等は泳ぎに来てますの」
「マジ?」
「今、城下町は水泳ブームで――」
「おーい、キジコー」
エプロンを着た青年が駆け付けてきた。
「ツトム、どうしたのですの?」
「相談者が来てるんだ」
「今日の相談は夕方からと通知したはずですの」
「そう言ったんだけど、全然伝わらなくて……」
「判ったですの、すぐ行きますの」ピューン
「速っ!」
「キジコさんは俊足だからね」
Μキャンディー恋愛相談所Μ
「わん!わん!」
「人に向かって吠えるな!」
「わぉん♪わぉん♪」ペロペロ
「だから、顔をペロペロ、あはは」
「ツトムさん、相談所の前に立ってるチェシャ猫と男が」
「そうだ、彼等が今回の相談相手だよ。四つん這いで犬に成りきってるチェシャ猫はB-6、隣にいる男が夫のB-1007だ」
「討伐隊か…」
「チェシャ猫なのになぜ犬の鳴き声?」
「わんわん!」
「参ったわ、何て言ってるのかさっぱりだわ」
「彼女は『ビースト様の望みよ!』と言ってますの」
「彼女の言葉が判るの!?キジコさん」
「これですの」
キジコさんが刑示板(すまーと型)をアタシに見せる。
「『這いリンガル』?」
「これは犬語、豚語、馬語を自動的に翻訳してくれる優れものですの」
「くぅーん、くぅーん」
「おい、股間に顔を埋めるな!」
「彼女は『そろそろシたくなってきました』と言ってますの」
キジコさんが刑示板の液晶画面を夫に見せる。
「おい、それをくれ」
「これは特注品だからあげられませんの、だからこのあぷりが入った一般機種をあげますの」
ツトムさんが彼に刑示板(すまーと型)を差し出す。
「助かる、いくらだ?」
「討伐隊特典で無料提供してますの。ただ、これからは夫として彼女の気持ちを少しでも解ってほしいですの」
「わん♪わん♪」
「何々、『ヨツンバウェイでたっぷり愛し合いましょう』うわぁっ!」
四つん這いのチェシャ猫は尻尾で夫を背中に乗せると
「うわぁぁ!」
チーターのごとく町の外へ出た。
「お達者ですのー」
「それにしても変わったアプリね。本当に通訳してるの?」
「試しに刑示板に向かって豚の鳴き声を言ってみるですの」
豚の鳴き声って言われても……
「ぶ……ぶひぃ?」
こ、こんな感じかしら?
ピポンッと液晶画面に文字が出力
『こ、こんな感じかしら?』
「ウソッ!?アタシが今考えてたことそのものじゃない!!」
「紅茶を飲んで犬化した男性と会話する際に重宝されてますの」
「成る程、キジコちゃんはアプリを使って住人の出身地を当てたのか」
「ああ、それはあぷりではなくあたしの能力ですの」
「キジコちゃんの能力?」
「ドッペルゲンガーの能力を使って一定の範囲にいる相手の記憶を読み取ることが出来ますの」
「それで記憶から出身地を特定したのか」
「そうですの、先程のB-6の記憶から、二人の手がかりが得られましたの」
キジコさんは刑示板を自分に向けて
『自分撮り』
パシャリ
「あれ?一瞬チェシャ猫の姿に」
「綺麗に録れてますの」
とキジコさんがアタシにもそれを見せる。
刑示板の動画にはプールで泳ぐ住人達
何故かプールのど真ん中に討伐隊一ヶ所に集まっており
次の瞬間
光と共に現れたのは
初太とまどっちらしき姿
「これは…?」
「記憶ですの」
「キジコは読み取った記憶を写真や映像に出力することが出来るんだ」
「ここは地民プールですの。位置は……北側ですの」
「なら美術館に行く前に、先に地民プールに行こう」
「そもそも地民プールってどこにあるの?」
「ここですの」
キジコさんが地面を指さす。
「女王の城の地下深くにある巨大な市民プールですの」
Μ続くΜ
「本当にマドラの家なのか?」
「はい、あそこでシーツを運ぶメイドさんも、木箱を運ぶ下男も見覚えがあります――あっ」
階段奥の扉から高級そうなドレスを着た女性が出てくる
「どうしよう、隠れなきゃ」
慌てふためるマドラ
「こっちだ」
俺は咄嗟にマドラを連れて適当な扉へ入る。
ガチャリ
ΜΜΜ
扉を開けると洋式トイレだった。
「あれ?俺の家のトイレ?」
二人が隠れるには狭すぎたので、折り返すと
ガチャリ
ΜΜΜ
「デカいテーブル?」
「わたし達家族が食事するための場所です」
「何故俺とマドラの家がごっちゃになってる?」
「まるで俺とマドラの記憶が一つになったような……」
「聞いたことがあります。郷愁の霧は夫婦や繋がりの深い恋人同士が巻き込まれた場合、二人の郷愁が一つになってしまうと…」
「まさか、この場所は……」
「わたしと初太、二人の記憶が合わさった幻覚なんです」
※不思議の国・城下町※
※満知子視点※
「おお〜あのチェシャ猫の姉ちゃん、ビキニの谷間が半端ねぇ」
「マッドハッターのハイレグ姿もムチムチだ〜」
「褌姿のジャバウォックもイイネ!」
「参ったわ、へーくんが城下町の住人に釘付けよ」
「仕方ないだろ、水着姿で町中を歩いてたら思わずそっちに目がいくだろ?」
「確かにそうだけど、アタシは給油所が気になるわね」
「男が四つん這いのマーチヘアに燃料を注入するのが気になるのか」
「そうそう、マーチヘアの給油口にノズルが入り、ハイオク満タン入ります……って違う違う、隣、隣、マーチヘアがばいくにガソリンを注入してるでしょ」
「あれはドーマウスの紅茶ですの」
「ガソリンじゃないの?」
「原型のままのばいくは高濃度のドーマウスの紅茶を燃料代わりにしてますの」
「ラピッドタウンのばいくやすくーたーと言えば魔力に反応して動くタイプが主流だからね」
魔物娘ばいくには夫の精
原型のばいくには紅茶
似ているようで違う二つの給油に気を取られていたら
ドンッ!
誰かとぶつかった。
「すみません、余所見しちゃって…え゛?」
目の前にいたのは
「サンタさん?」
「メリークリスマス!」
サンタさんは笑いながら、袋からプレゼント箱を取りだし
「サンタからのプレゼントだよ」
アタシに手渡す。
「君にもプレゼントだ」
それからサンタさんは意気揚々とキジコさんにプレゼント箱を渡す。
「サンタさん、いつもありがとうですの」
「君にも」
「君にも」
「君にもだ」
へーくん、コルヌさん、チェルにもプレゼントを渡す。
「良いクリスマスを♪」
サンタさんはスキップしながら他の住民にもプレゼントを渡す。
「あのサンタさんは毎日奥様と一緒にプレゼントを配ってますの」
「魔界魚の燻製ですニャ」
「ボクは捕縛用のロープだ」
「プレゼントにはお菓子やオモチャが入ってますの」
「いいサンタね」
「中には子供化や大人化する煙に、身体から食品が生えるガス、開けると中の媚薬が破裂したり、寄生スライムが飛び出して性的に弄られるトラップレゼントがありますの」
「嫌なサンタね…」
「オレのは何かな〜何かな〜」パカッ「……何も入ってないぞ?」
「空っぽの場合もありますの」
「ショボーン」
「参ったわ、サンタの格好をした人がいるとはね…」
「サンタさん以外にもいますの」
「明けましておめでとうございます」
「今年も宜しくお願いします」
振袖を着たチェシャ猫が同じく振袖を着たマーチヘアに新年の挨拶をしている。
「彼女達は毎日振袖を着て、毎日新年の挨拶をしてますの」
「正月気分が抜けてねーのか」
それからキジコさんとへーくんは、場違いの風習をする住民を観察する。
「鬼は外〜」パラパラ
「福は内〜」ポイポイ
「あのジャバウォックの子供達は、毎日豆まきをしてますの」
「いつも節分してんだなー」
「結婚おめでとう〜」
「二人ともお幸せに〜」
「教会型の家に住むドーマウスの新婚夫妻は毎日結婚式を開いていますの」
「毎日が結婚記念日なのかー」
「参ったわ、不思議の国の住人は変わり者が多いと再認識させられるわね」
「そうですニャ、ここは国の中心部ニャので、それがより顕著にニャってますニャ」
「気にしたら負けかもね」
そんな中、道端でマーチヘアに犯されている討伐隊を見かけた。
「あはははー童貞ニンジン美味しいー美味しいー」
「うわぁぁ、そんなに激しく動いたら」
「出して出してー初めての種付けしてー」
「あうっ!」
「出ちゃったねー嬉しいなー赤ちゃん出来るくらい出してねー」
そんな二人の前に初老の男が立つと、両手に持った紙を読み上げる。
「卒業証書授与、この度は童貞を卒業し、オトコになったことをここに記す――」
本日の日付を読み終えると、男に卒業証書を渡し無言で立ち去った。
「あの校長先生は――」
「大体解ったわ、童貞奪われた男に卒業証書を授与するのが日課なのね」
Μ商店街Μ
「商店街の奥にキャンディー恋愛相談所がありますの」
「商店街だけに店が立ち並んでるなー」
「店には交わりに適した商品が販売されてますの例えば――」
「お客様、ブローチは如何ですか?身体が軽くなるスペード,恋するハート,快眠を約束するクラブ,高貴なダイヤ,身につけるだけで貴女をワンダーランドへ導いてくれるでしょう」
「アクセサリーショップでは魔物化するアクセサリーを販売してたり」
「いらっしゃいませ〜只今快楽のルーン服の大安売りですよ〜」
「洋服店では快楽のルーンが刺繍された服が販売されてますの」
「じゃあエッチなことをしてもいいのか?」
「勿論店内でイチャついたり、交わりも許可するお店も多いので、店内デートも可能ですの」
「いよっ、二人ともまだデートかい?」
「もう魚屋さん、からかわないでください」
「今日はパン屋でパンを買いに来ただけです」
「おっ、肉屋の旦那、ジャバウォックの奥さんとデートしにいくのかい?」
「いや、肉の仕入れをするために」
「魔界獣狩りに出かけるだけだ……」
流石不思議の国
お出かけ=デート
の方程式が成り立っているようだわ。
「どうせ堕落の果実タルトを食べたら身体中に彼氏の生クリームをトッピングしたり、虜の果実を食って自分の夫を狩るんだろ?ウヒヒ〜」
あと、エロありの方程式も。
アタシはベンチに座るカップルに気づく。
「休憩用のベンチもあるのね」
「あれは弁を置くと書いて『弁置』と言いますの。女王様が作った城下町名物の仕掛けですの」
「弁置?」
「百聞は一見にしかずですの」
カップル同士で熱い口付けを交わす。ここら辺はラピッドタウンでもよくある光景だけど――
ブシューッ!
突如、男の真下からガスが吹き出した。
「あれ?男のズボンが急激に膨らんで――きゅうりが顔を出したわ!?」
「へぇ〜それ程までに長い性器なのか」
「違うの、本当にきゅうりが生えてるのよ!」
「きゅうりだとぉ!?」
「奥さんも奥さんで、きゅうりを食べてるわ!」
「行為を行えば身体から食料が生えるガスが噴出されますの」
「最後まで残さず食べたわ」
「見ろよ、本物も大きくなってるぜ」
ブシューッ!
今度は奥さんにガスが吹き付けられる。
「奥さんの胸が肉まんになっただとぉ!?」
「旦那さんが肉まんをかじり出したわ」
ブシャー!
「今度は男の胸元から蜜が溢れだしただとぉ!?」
「こうして代わる代わるガスが吹き付けられますの。昼食代わりに利用する夫婦が多いですの」
「弁当に最適だな」
「城下町の出身者の他にも、買い物や観光目的で国中の住人が城下町に集まりますの」
「ふーん、個性的な住人が多いから区別がつかないけどね」
「例えば、あそこで碁盤を見ているジャバウォック夫妻は……ジャーバレー出身ですの」
「ふーん」
「ドーマウスを背負って買い物する男性は……ソーンファームから来ましたの」
「そうなの?」
「路地裏で立位で交わるマーチヘアのカップルは――」
「判ったわ、ラピッドタウンね」
「いえ、ビーンズビレッジ出身ですの」
「参ったわ、何で見ただけで出身地が判るわけ?」
「そういう満知子も見た目で決めつけるなんて、マーチヘア特有の思い込みだー」
「む、そういうへーくんは判るの?」
「判るぜ、さっきから水着を着用してる住人が多いだろ?」
「言われてみればそうね」
「ありゃ肌を見せることで異性を誘惑する算段だぜ」
「そうなのかな?アタシには泳ぎに行くだけだと思うけど……」
「満知子ちゃんの言う通りですの、彼等は泳ぎに来てますの」
「マジ?」
「今、城下町は水泳ブームで――」
「おーい、キジコー」
エプロンを着た青年が駆け付けてきた。
「ツトム、どうしたのですの?」
「相談者が来てるんだ」
「今日の相談は夕方からと通知したはずですの」
「そう言ったんだけど、全然伝わらなくて……」
「判ったですの、すぐ行きますの」ピューン
「速っ!」
「キジコさんは俊足だからね」
Μキャンディー恋愛相談所Μ
「わん!わん!」
「人に向かって吠えるな!」
「わぉん♪わぉん♪」ペロペロ
「だから、顔をペロペロ、あはは」
「ツトムさん、相談所の前に立ってるチェシャ猫と男が」
「そうだ、彼等が今回の相談相手だよ。四つん這いで犬に成りきってるチェシャ猫はB-6、隣にいる男が夫のB-1007だ」
「討伐隊か…」
「チェシャ猫なのになぜ犬の鳴き声?」
「わんわん!」
「参ったわ、何て言ってるのかさっぱりだわ」
「彼女は『ビースト様の望みよ!』と言ってますの」
「彼女の言葉が判るの!?キジコさん」
「これですの」
キジコさんが刑示板(すまーと型)をアタシに見せる。
「『這いリンガル』?」
「これは犬語、豚語、馬語を自動的に翻訳してくれる優れものですの」
「くぅーん、くぅーん」
「おい、股間に顔を埋めるな!」
「彼女は『そろそろシたくなってきました』と言ってますの」
キジコさんが刑示板の液晶画面を夫に見せる。
「おい、それをくれ」
「これは特注品だからあげられませんの、だからこのあぷりが入った一般機種をあげますの」
ツトムさんが彼に刑示板(すまーと型)を差し出す。
「助かる、いくらだ?」
「討伐隊特典で無料提供してますの。ただ、これからは夫として彼女の気持ちを少しでも解ってほしいですの」
「わん♪わん♪」
「何々、『ヨツンバウェイでたっぷり愛し合いましょう』うわぁっ!」
四つん這いのチェシャ猫は尻尾で夫を背中に乗せると
「うわぁぁ!」
チーターのごとく町の外へ出た。
「お達者ですのー」
「それにしても変わったアプリね。本当に通訳してるの?」
「試しに刑示板に向かって豚の鳴き声を言ってみるですの」
豚の鳴き声って言われても……
「ぶ……ぶひぃ?」
こ、こんな感じかしら?
ピポンッと液晶画面に文字が出力
『こ、こんな感じかしら?』
「ウソッ!?アタシが今考えてたことそのものじゃない!!」
「紅茶を飲んで犬化した男性と会話する際に重宝されてますの」
「成る程、キジコちゃんはアプリを使って住人の出身地を当てたのか」
「ああ、それはあぷりではなくあたしの能力ですの」
「キジコちゃんの能力?」
「ドッペルゲンガーの能力を使って一定の範囲にいる相手の記憶を読み取ることが出来ますの」
「それで記憶から出身地を特定したのか」
「そうですの、先程のB-6の記憶から、二人の手がかりが得られましたの」
キジコさんは刑示板を自分に向けて
『自分撮り』
パシャリ
「あれ?一瞬チェシャ猫の姿に」
「綺麗に録れてますの」
とキジコさんがアタシにもそれを見せる。
刑示板の動画にはプールで泳ぐ住人達
何故かプールのど真ん中に討伐隊一ヶ所に集まっており
次の瞬間
光と共に現れたのは
初太とまどっちらしき姿
「これは…?」
「記憶ですの」
「キジコは読み取った記憶を写真や映像に出力することが出来るんだ」
「ここは地民プールですの。位置は……北側ですの」
「なら美術館に行く前に、先に地民プールに行こう」
「そもそも地民プールってどこにあるの?」
「ここですの」
キジコさんが地面を指さす。
「女王の城の地下深くにある巨大な市民プールですの」
Μ続くΜ
14/12/25 23:37更新 / ドリルモール
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