ショゴスのいる夜
季節外れの台風が去り、親魔物領にあるこの港町では活気が戻っていた。
空は快晴、雲一つ無い。
海に出る事が出来なかった分、遅れを取り戻さねばと男達はやる気に溢れ、海に住む様々な魔物娘達もまた彼らの手助けしようと朝から働いていた。
そんな活気とは対照的に、男は暗く影を持ちながら歩いていた。
その顔はまるで人生に疲れた、この世の悪も地獄も見てきたような顔だった。
(何なんだ、アイツは…)
そんな男は困惑していた。
酒を買った帰り道、何かが付いて来ているような気配がしたので振り返ってみると、柱の陰から何かがこちらを見ていたのだ。
青黒い肌に、ジッとこちらを見つめている金色の瞳。給仕服のようなものを身にまとっているが、ところどころスライムのような粘液に覆われている。足下には黒く蠢く何かが広がっている。
目が合うと柱の陰に隠れてしまうが、しばらくすると顔を出して男を見てくる。その顔には確かな笑みが浮かんでいる。
それは人間ではありえなかった。一目で魔物娘だと分かった。
(…しかし、物好きな魔物娘もいるものだ)
40過ぎた自分をストーカーする魔物娘がいるとは。
大半の魔物娘は情熱的であり、気に入った男性には積極的にアプローチをしたり、有無を言わさず交わってしまうと聞いた事がある。
親魔物領となって多くの魔物娘を見かけるようになったこの港町では別に珍しくも何ともない。時々、若い男が魔物娘に言い寄られているのを何度か見た事はあれば、魔物娘にプロポーズしているのも見た事があるくらいだ。
魔物娘という非日常は気が付けば、日常に寄り添い溶け込んでいた。それを受け入れられない土地もあるらしいが、人間は適応できる生き物だ。いずれ、時代は人間と魔物娘が支えていくものとなり、歴史は築かれていくだろう。
ため息を吐き出し、男は帰路に着いた。後ろの魔物娘の気配は消えないが、男は気にしなかった。
もしも、あの魔物娘が自分に危害を加えると言うのなら男に抗うつもりは無い。それを受け入れるまでだ。
「…ショゴス?」
魔物娘図鑑を開き、あの魔物娘が何者なのか、調べてみるとすぐに見つかった。
ショゴス。かつて、混沌の魔物達に奉仕生物として生み出された存在。彼女達は魔王が代替わりした際に感情と知能を手に入れて、自分達が仕える主人を求めているのだと言う。
彼女達は自分達を使役する事を望む男性、もしくは気に入った男性に仕える事を望む。
何故、そんな魔物娘が男の目の前に現れたのか。男はショゴスの存在を知らなかった。だから、前者はあり得ない。となれば、後者だろう。男はあのショゴスに気に入られたのだ。
「…どうして俺なんだ」
図鑑を閉じると、男は疲れたように椅子にもたれて部屋中を見回す。
白い小さな埃が舞い、その向こうにゴミくずの山が見える。目を覆うばかりの、しかし、見慣れた光景だ。男は今後もゴミくずに埋もれ、精神力をつぎ込む価値のある問題が訪れるのを待つ事になるだろう。しかし、今までの経験からしてそれはしばらく訪れない。
足下の酒瓶を蹴飛ばし、男はベッドに倒れ込んだ。洗濯もしていなければ、日光に干してもいない薄汚れたベッドが今では男の安住の地だった。
「……また今日も生きていかなければいけないのか」
ぼそっと呟くと、男はベッドに転がっていたゴミを床に落とし、眠りに落ちた。
−やれ、ジャック!今更怖気ついたのか!?−
−…ッ!−
−やらなければ、お前も死罪だぞ!やるのだ、ジャック!!−
−…お、俺には…俺には…!−
−…もう良い!他の者を連れて来い!この腰ぬけの処罰は後ほどだ!!−
「…ッア!」
男…ジャックは夢の途中で飛び起きた。
体が嫌な汗で濡れ、息が荒い。肺は酸素を求め大きく激しく動いていた。
悪夢と呼ぶに相応しいその夢はジャックの決して消える事の無い心の傷を映像化したものだった。
(…分かっているさ)
額から落ちる汗を拭い、ジャックは静かに目を閉じた。
分かっている。
そう、分かっているのだ。
顔を手で覆い、天井を見上げると、額に冷たいものが当たった。それと同時に聞こえる静かで甘い声。
「大丈夫ですか?旦那様」
ジャックは慌てて見ると、ベッドの横にあのショゴスがいた。
ショゴスは心配そうにジャックを見つめ、その手には薄い紫色のタオルが握られている。恐らく、ジャックの汗を拭こうとしたのだろう。
「キ、キミは…」
喉から出た声は耳障りな音だった。
ショゴスはそれに不快感を示すでもなく、ニッコリと笑い深々と頭を下げた。その仕草にジャックは何か違和感のようなものを覚えた。まるで昔から自分に仕えていたような、ずっと前からこの家にいたようなそういった不思議なものを感じていた。
「まずはお詫びを。旦那様のご自宅に無断で上がった無礼をお許しください。ですが、どうしても私には旦那様を放っておく事が出来ませんでした」
「…いや、それは……って、何だって?だ、旦那様?」
「はい、申し遅れました。私はショゴスのネロと申します。旦那様に仕える事を望んでおります」
それが当然の事とばかりにネロは笑い、嬉しそうに目を細めた。
「……俺に、仕える…?」
「はい、それをネロは所望しております。どうか、側に置いていただけないでしょうか?」
ジャックの顔が曇る。それをネロは見逃さず、ジャックの手に優しく自分の手を置いた。
「失礼ですが、旦那様にはネロが必要かと思います。身勝手ではありますが、旦那様のお部屋を綺麗にさせていただきました」
言われて見まわしてみれば、確かに部屋が見違えるものになっていた。部屋を覆い尽くしていたゴミの山は姿を消し、床も壁もすっかり綺麗に拭かれていた。ジャックがこの部屋に引っ越してきた時と同じ、いや、それ以上になっていた。
それもこのネロの仕業だろう。
しかし、ジャックは首を振った。
「ありがたい話だが…断らせてもらう」
「え…?」
その言葉にネロの表情は凍った。
添えられた手を優しくどけて、ジャックは正面からネロを見据えた。
「俺にキミは必要ない。俺よりもキミに相応しい人がいるはずだ。キミは…その人の所に行った方がいい」
「だ、旦那様…?」
「その呼び方も止めてくれ。俺はキミの旦那様じゃない…悪いが、出て行ってくれ」
「……」
「頼む…」
段々と辛そうな表情へなっていくジャックをネロは悲しそうな目で見つめ、何か言おうとしたが無言で立ち上がると、軽く頭を下げて静かに部屋から出て行った。
ネロのいなくなった部屋でジャックは窓を見つめていた。カーテンは以前、足をひっかけて壊してしまいそれ以来日光が入りっぱなしだった。しかし、今は薄紫色のカーテンがかけられており、日の光を優しく遮断してくれていた。
「…これでいい。これでいいんだ」
誰ともなしに呟く。
俺は誰かに愛される資格なんて無いのだ。
−何故、斬らなかった−
−……−
−助けてやったつもりだろうが、他の処刑人がやるだけだぞ−
−……ッ!−
−無意味なんだよ、お前のやった事は。それでお前まで首を斬られるんだから、ザマぁないな?−
−……−
「…ッ!!」
ジャックは飛び起きた。脳がこれ以上見る事を拒否し、ジャックを覚醒させたのだ。しかし、夢の中とはいえあれはジャックが体験したまぎれもない事実なのだ。
ジャックはかつてとある教団勢力下で処刑人の任を任されていた。そこである罪人の処刑を命じられたが、ジャックには出来なかった。
罪人は無実の老人だった。老人はたまたま魔物娘に貰った魔界産の物を持っていた。ただそれだけの理由だった。
老人に罪は無い。
ジャックにそんな老人を処刑する事など出来なかった。それが怒りを買う事となり、ジャックは処刑されそうになったところを逃げ出したのだ。それ以来、彼の首には賞金がかかっていた。
老人を助ける事は出来ず、自分の命すら危うく失いかけた。
ジャックはそれ以降、人と関わる事を避けて生きてきた。このゴミ屋敷で暮らしていたのもそういった理由からだ。
窓の外には月が昇り、夜になっていた事を教えてくれている。
不意に、喉の奥から何かが上がり、ジャックは口をおさえた。そして、そのままベッドから起き上がり、洗面台へと向かいそして、吐き出した。
口の中に独特の嫌なものが広がり、息が出来ず、喉が焼けるように痛い。涙目になりなりながら、ジャックはそのまま吐き続けた。朝から何も食べていなかったから、口から出るのは胃液と白い泡のようなものだけだった。
「はぁ…はぁ…」
胃が空になり、何も出なくなるとジャックはそのまま倒れ込んだ。
「う、ぐ…!」
立ち上がろうにも体が言う事を聞かず、力も入らない。何かをつかもうと伸ばした手が何処かに触れたが、つかむ事は出来なかった。
胃の中の物だけでなく、もしかしたら魂と呼べる物すら吐き出したのではないだろうか。ジャックはそんな事を思いながら暗黒へ落ちていきそうになる。
不意に、扉が開き、何かが男の体を優しく立ち上がらせた。
「旦那様!しっかり!旦那様!」
ネロは倒れたジャックを介護するようにベッドへと運び、その身体をゆっくりと横たえた。そこには静かに、冷静に奉仕するショゴスの姿は無い。
「キ、キミは…どうして…?」
「その事は後です、旦那様!さ、どうぞこれをお飲みになってください!」
そう言うとネロは何処からかコップを取りだすとジャックの口元に優しく運んだ。コップの中身がジャックの口に流し込まれると、ジャックはまるで生き返ったような感じがした。
とろみがあり、ツーンとした刺激がありながらも体に馴染むような甘い味に体は喜び、細胞が甦る。さっきまでの死ぬような苦しみは何処かへ消え、まるで今この瞬間に生まれたような清々しい気持ちになっていた。
その液体を飲み干すと、ジャックは先ほどまでの容体が嘘のように回復した。体中に溢れるまるで生きる意志のようなものを確かめるように手を握り、ジャックはネロに向き直った。
「…これは?」
「魔界から取り寄せた薬でございます。旦那様の体は重度の栄養失調、睡眠不足から来る疲労でボロボロの状態でした」
「……」
ジャックの体は既に健康そのものだ。しかし、それでもネロは心配そうにジャックを見つめている。
彼女は自分を心配してくれている。それに嘘偽りはないようだ。ジャックは急に照れくさくなり、それを隠すように口を開いた。
「どうして、戻ってきた…?」
「ネロの旦那様は貴方だけです。旦那様以上の方をネロは思いつきません」
「……ずっと家の外にいたのか」
その言葉にネロはコクリと頷いた。追い出してからだいぶ経つ。すっかり夜となった今の今まで彼女は外にいたのだ。
ジャックの中に罪悪感が湧き上がる。
「すまなかった…でかい口を叩いておきながら…俺は」
「旦那様」
ネロベッドに身を乗り出し、優しくジャックを抱き締めた。ジャックは一瞬、体を固くしたが力を抜きネロに身を委ねる事にした。
「何も言わないでください、旦那様」
「……すまない」
「謝らないでください。これはネロが好きでやっている事ですから」
しばらく、ネロはジャックを抱き締めたままだった。ジャックも特に抗うつもりも無く、ただネロに全てを任せていた。こうやって抱き締められていると幼い頃、母親に抱き締められていた事を思い出す。
「キミは不思議だな。何て言えばいいのかな…すごく落ち着くんだ」
「ふふふ、ありがとうございます」
柔らかくどこかヒンヤリとしたネロの体は気持ち良い。給仕服もジャックを受け止めるかのようにゆっくりと包み込んでくれている。その身体を作っている混沌のようなスライムのような何かがジャックの下半身を覆い、まるで布団のような安心感を与えてきた。顔に当たっている胸が呼吸をするたびにジャックを支えていた。
女性の象徴でもあるその胸は大き過ぎず、かといって小さくも無い。優しく頭を撫でてくる手が心地良い。鼻をくすぐるようなどこか甘酸っぱい、優しい香りが脳をリラックスさせる。
「む…」
「あら…?」
不意に、ジャックは自分のモノが熱を持ち、固くなってきているのを感じた。
慌ててそれを隠そうとしたものの、ネロに気付かれたようだ。ジャックは照れくさくなり、顔を反らす。
「……すまない」
「謝らないでください。それは旦那様が元気になった証拠です。ふふふ…」
ネロはそう言いながらゆっくりとジャックの股間をまさぐり始めた。その表情に熱がこもり、目をトロンとさせながら掌でさするように撫でまわし、ジャックの顔にそっと唇を近付ける。
「旦那様のココ…こんなになって♪ふふ、それもネロにお任せください…」
ベッドに横になったジャックに跪くようにネロは股間に顔を寄せ、肉棒の先端に口を近付けると先端に軽くキスをした。
「ん、はぁあ……ふふ」
ネロは熱い息を吐き、ついばむようにキスをする。そして、舌を出すと先端から滲むカウパー液を舐めすすり、肉棒に舌を絡ませる。
「御立派ですわ、旦那様♪ちゅ…んぷ…」
「う、ネロ…!」
恍惚の表情を浮かべるジャックの声に乗せられたように、ネロの動きは加速する。絡ませた舌を上下に動かしたり、舌で尿道をほじくるように舐め回す。
鉄のように硬く、溶岩のように熱い肉棒に魅せられたネロの顔は淫らという言葉では表現できないものだった。頬張ったまま口の端から涎を垂らし、頭を激しく上下に動かすネロは雌犬そのものだった。肉棒を咥えたまま、ネロはにんまりと笑い上目づかいにジャックの反応を楽しんでいる。
「んふふ…♪きもひいいれふか?
「あぁ、く…!最高だ」
その言葉で更にネロは気を良くしたのか、淫欲と狂気の混じり合った表情を浮かべただただジャックへの奉仕に夢中になった。
強すぎる快感にジャックの腰は引くが、ネロはそれを許さず唇で締めつけて逃がさないという意思表示を見せる。唾液とカウパー液の混じり合う音、頬の粘膜に肉棒を擦り付けながら、ぬらぬらとした舌を肉棒に絡みつかせ射精へと促すその動きにジャックは耐え切れそうになかった。
「ネ、ネロ…俺、そろそろ」
不意にネロの口内でジャックが膨張した。そして、ネロの喉に大量の精液が浴びせられた。
「ん!ん、んんんんん♪」
突然の射精にネロは驚いたように目を開いたが、すぐにウットリと目を細めると唇をすぼめ決して放さないと肉棒を締め、精を受け止めた。痙攣するたびに溢れてくる精液をネロは喉を鳴らしながら飲み込んでいく。
「あは♪旦那様の精…とても美味です♪ネロは、ネロは幸せ者でございますぅ…♪」
苦く、生臭い異臭を放つ精液を飲み干すとネロは唇を放し嬉しそうに微笑んだ。スライムのように不定形の体が喜びと興奮、欲情にブルリと震える。ジャックへの口の奉仕で体が熱く、疼きが収まらない。
「ネロ…」
「え?あ…」
射精したばかりだというのにジャックのモノはまだ硬さを持ち、ドクンドクンと脈打っていた。それを見て、ネロの瞳に淫欲の炎がさらに強く眩しく灯り、自分を求めて凶暴なまでに勃起した肉棒から目を離せなくなっていた。
「旦那様、嬉しいです♪ネロでこんなに興奮していただけるのですね」
「う…すまない」
「すぐ謝るのは旦那様の悪い癖ですよ?ネロは嬉しいのですから、ね?謝らないでください」
ネロは子どもをたしなめるように優しく微笑むと、ゆっくりとジャックに跨るように馬乗りになった。それと同時に、給仕服がまるで蝋燭のように溶け、その下からネロの裸体が露わになった。
青い肌は濡れたように光っており、大きな果実のような乳房はお椀のように盛り上がってボリュームがある。腰はキュッと締まっており、肉付きの良い太ももと尻がジャックの欲望という炎に油を注ぐ。
「さ、旦那様…どうぞ御体を楽に。全て、ネロにお任せ下さい♪」
ネロはジャックの肉竿を握ると、ゆっくりと腰を下ろした。
「んん♪あ、あぁぁ…」
粘膜に触れ、膣肉をかき分けて奥へと進んでくる肉の感触にネロは思わず声を上げ、胸を反らして喘いだ。そして、ジャックの肉棒を根元まで飲み込むとその身体が喜びに震えた。
「ふふふ…旦那様のすごぉいぃ♪」
ネロはそう呟きながら小さく尻を揺らしていたが、湧き上がる快楽を感じると、徐々に動きが大きくなっていく。
「ネロ…!」
「んひゃあ!だ、旦那様ぁ!あ、あぁぁ」
ジャックが手を伸ばし、すっかり硬くなった紺色の乳首を下から摘みとネロの体がビクンと跳ねた。そのまま指を乳房に沈ませ、荒々しく揉みしだく。乱暴に揉まれ、手の中で揉まれるがままに形を変える乳房はジャックの手を受け入れていた。
「あぁ、旦那様!それ、それいいぃぃ!」
胸を弄られる快感に煽られたようにネロはさらに激しく腰を動かす。肉棒を軸にして、ネロは体をくねらせる。その淫らなダンスは見ているジャックの目を楽しませた。
「ひうぅ!旦那様!あ、旦那様ぁぁぁ♪」
ジャックを呼びながらネロは自分で胸を揉み、夢中になって腰を振った。肉棒を深く咥え込んだまま、腰を前後左右に揺すりたて、まるで絞るように締め上げる。
口から涎を垂らし、喘ぎ声を上げるネロの姿に物静かなメイドの姿は無い。まるで今まで待てをされて焦らされてきた雌犬のようだった。
されるがままなのは性に合わないと思ったジャックはネロを下から腰を突き上げる。秘所を貫かれ、ジャックの動きに何かをこらえるようにぶるぶると首を振った。
「んあぁ!旦那様は、あ!う、動いてはダメぇぇ♪ネロが、ネロがするのぉぉ♪」
そう言いながら、ネロは器用にジャックの動きに合わせるように腰を上下する。胸が動きに合わせて揺れ、打ちつけられるたびに歪む尻、快楽に酔いしれるネロがジャックはたまらなく愛おしかった。
「ぐぅぅ!旦那様、ネロはもう!んいぁ、あぁぁぁぁッ!!」
ネロが膣肉を収縮させ、肉棒を絞り上げた。ジャックの勃起がネロの中で一段と大きく膨れ上がる。
「ネロ…!ネロ!ッあァ!」
「来て!旦那様ぁ!ネロが全て!全て受け止めますからぁぁぁ♪」
「ぐ、うぅぅー!」
「は、あ!あああああぁぁあぁッ!!」
ジャックが唸ると同時に、大量の精液がネロの中に吐き出された。精液が噴射するたびにネロの体はビクンと痙攣し、恍惚の笑みを浮かべている。軽く腰を揺らすと結合部から精液と愛液の混じり合った物が垂れ落ちる。
絶頂の余韻と疲れからジャックとネロは抱きあい、お互いの口内を貪るように口づけを交わした。舌を絡ませ、唾液を交換しそれを飲み込む。しばらくそうしていたが、ネロは荒い息を吐きながら上体を起こし、結合を解いた。ぽっかりと開いた膣からはまるで塊のような精液がこぼれおち、ネロの太ももを白く染め上げる。
「旦那様ぁ…今すぐ旦那様を綺麗にさせていただきますね♪」
そう言うと、ネロは白濁液で汚れた肉棒に口を近づけ、根元に指を添えると深々と咥え込んだ。
「むぐ…!ネロ、そこまでしなくても…!」
「んんん、いいんれふ♪」
射精し終えて敏感になっている先端に唾液で濡れた舌と唇がまとわりつき、しゃぶり、舐め回す。その強烈な快楽に、ジャックは呻き声を上げるのが精一杯だった。
「んはぁ♪これ、しゅきぃぃ♪あむ…んふ、ん…」
うっとりとした表情で肉棒を舐め回し、ネロは綺麗にしていった。根元まで咥えたかと思うと、ハーモニカを吹くように舌をなぞらせる。時折、その細い首が動いて精液を飲み干しているのが良く分かった。
再び硬くなっている事をジャックは感じ、ネロは頭を激しく動かし新しい精液をねだるかのように肉棒に吸いつく。
「ッ!ぅああぁ…!」
「ん!んぐ、んんんんんん♪」
結局、ジャックはこの日、3度目の射精をした。
ネロは喉を叩くような勢いの射精に驚きつつも、決して口を離さずそのまま飲み込んだ。飲みきれなかった精液を口から溢れさせながら、ネロは恍惚の表情を浮かべた。
「ネロ…ありがとう」
行為を終え、2人はベッドの上で抱きあいながら横になっていた。ベッドはネロがいつの間にか何処からか調達してきた紫色の物であり、以前のベッドはどこに行ったのか。気にはなったが、どうでもよかった。
ジャックの言葉にネロは首を傾げた。
「?えっと、どうしたのでしょうか…?」
「いや、助けられたのに礼の一つも言っていなかった、と思ってね」
「ふふふ、旦那様。良いのです♪ネロは旦那様に仕える事が出来て幸せですから」
嬉しそうに笑い、ジャックの胸に頬ずりをしてくるネロの頭を撫でながら、ジャックは下半身に目をやった。
ネロの腰下に広がる紫色の混沌がジャックの下半身をすっかり包み込み、蠢いている。
しかし、それによる不快感は無い。むしろ、安らぎのようなものをジャックは感じていた。
心地良い混沌。それも良いのかもしれない。
そんな事を思いながら、ジャックはこの愛おしく何よりも大切な混沌のメイドをより強く抱きしめ、ゆっくりと眠りに落ちて行った。
だから、ネロの言葉を聞く事が出来なかった。
これで、ネロは旦那様のモノ。そして、旦那様はネロのモノ。誰にも渡しませんし、旦那様はもう逃げられませんよ……うふ、うふふふふふ♪
終わり
空は快晴、雲一つ無い。
海に出る事が出来なかった分、遅れを取り戻さねばと男達はやる気に溢れ、海に住む様々な魔物娘達もまた彼らの手助けしようと朝から働いていた。
そんな活気とは対照的に、男は暗く影を持ちながら歩いていた。
その顔はまるで人生に疲れた、この世の悪も地獄も見てきたような顔だった。
(何なんだ、アイツは…)
そんな男は困惑していた。
酒を買った帰り道、何かが付いて来ているような気配がしたので振り返ってみると、柱の陰から何かがこちらを見ていたのだ。
青黒い肌に、ジッとこちらを見つめている金色の瞳。給仕服のようなものを身にまとっているが、ところどころスライムのような粘液に覆われている。足下には黒く蠢く何かが広がっている。
目が合うと柱の陰に隠れてしまうが、しばらくすると顔を出して男を見てくる。その顔には確かな笑みが浮かんでいる。
それは人間ではありえなかった。一目で魔物娘だと分かった。
(…しかし、物好きな魔物娘もいるものだ)
40過ぎた自分をストーカーする魔物娘がいるとは。
大半の魔物娘は情熱的であり、気に入った男性には積極的にアプローチをしたり、有無を言わさず交わってしまうと聞いた事がある。
親魔物領となって多くの魔物娘を見かけるようになったこの港町では別に珍しくも何ともない。時々、若い男が魔物娘に言い寄られているのを何度か見た事はあれば、魔物娘にプロポーズしているのも見た事があるくらいだ。
魔物娘という非日常は気が付けば、日常に寄り添い溶け込んでいた。それを受け入れられない土地もあるらしいが、人間は適応できる生き物だ。いずれ、時代は人間と魔物娘が支えていくものとなり、歴史は築かれていくだろう。
ため息を吐き出し、男は帰路に着いた。後ろの魔物娘の気配は消えないが、男は気にしなかった。
もしも、あの魔物娘が自分に危害を加えると言うのなら男に抗うつもりは無い。それを受け入れるまでだ。
「…ショゴス?」
魔物娘図鑑を開き、あの魔物娘が何者なのか、調べてみるとすぐに見つかった。
ショゴス。かつて、混沌の魔物達に奉仕生物として生み出された存在。彼女達は魔王が代替わりした際に感情と知能を手に入れて、自分達が仕える主人を求めているのだと言う。
彼女達は自分達を使役する事を望む男性、もしくは気に入った男性に仕える事を望む。
何故、そんな魔物娘が男の目の前に現れたのか。男はショゴスの存在を知らなかった。だから、前者はあり得ない。となれば、後者だろう。男はあのショゴスに気に入られたのだ。
「…どうして俺なんだ」
図鑑を閉じると、男は疲れたように椅子にもたれて部屋中を見回す。
白い小さな埃が舞い、その向こうにゴミくずの山が見える。目を覆うばかりの、しかし、見慣れた光景だ。男は今後もゴミくずに埋もれ、精神力をつぎ込む価値のある問題が訪れるのを待つ事になるだろう。しかし、今までの経験からしてそれはしばらく訪れない。
足下の酒瓶を蹴飛ばし、男はベッドに倒れ込んだ。洗濯もしていなければ、日光に干してもいない薄汚れたベッドが今では男の安住の地だった。
「……また今日も生きていかなければいけないのか」
ぼそっと呟くと、男はベッドに転がっていたゴミを床に落とし、眠りに落ちた。
−やれ、ジャック!今更怖気ついたのか!?−
−…ッ!−
−やらなければ、お前も死罪だぞ!やるのだ、ジャック!!−
−…お、俺には…俺には…!−
−…もう良い!他の者を連れて来い!この腰ぬけの処罰は後ほどだ!!−
「…ッア!」
男…ジャックは夢の途中で飛び起きた。
体が嫌な汗で濡れ、息が荒い。肺は酸素を求め大きく激しく動いていた。
悪夢と呼ぶに相応しいその夢はジャックの決して消える事の無い心の傷を映像化したものだった。
(…分かっているさ)
額から落ちる汗を拭い、ジャックは静かに目を閉じた。
分かっている。
そう、分かっているのだ。
顔を手で覆い、天井を見上げると、額に冷たいものが当たった。それと同時に聞こえる静かで甘い声。
「大丈夫ですか?旦那様」
ジャックは慌てて見ると、ベッドの横にあのショゴスがいた。
ショゴスは心配そうにジャックを見つめ、その手には薄い紫色のタオルが握られている。恐らく、ジャックの汗を拭こうとしたのだろう。
「キ、キミは…」
喉から出た声は耳障りな音だった。
ショゴスはそれに不快感を示すでもなく、ニッコリと笑い深々と頭を下げた。その仕草にジャックは何か違和感のようなものを覚えた。まるで昔から自分に仕えていたような、ずっと前からこの家にいたようなそういった不思議なものを感じていた。
「まずはお詫びを。旦那様のご自宅に無断で上がった無礼をお許しください。ですが、どうしても私には旦那様を放っておく事が出来ませんでした」
「…いや、それは……って、何だって?だ、旦那様?」
「はい、申し遅れました。私はショゴスのネロと申します。旦那様に仕える事を望んでおります」
それが当然の事とばかりにネロは笑い、嬉しそうに目を細めた。
「……俺に、仕える…?」
「はい、それをネロは所望しております。どうか、側に置いていただけないでしょうか?」
ジャックの顔が曇る。それをネロは見逃さず、ジャックの手に優しく自分の手を置いた。
「失礼ですが、旦那様にはネロが必要かと思います。身勝手ではありますが、旦那様のお部屋を綺麗にさせていただきました」
言われて見まわしてみれば、確かに部屋が見違えるものになっていた。部屋を覆い尽くしていたゴミの山は姿を消し、床も壁もすっかり綺麗に拭かれていた。ジャックがこの部屋に引っ越してきた時と同じ、いや、それ以上になっていた。
それもこのネロの仕業だろう。
しかし、ジャックは首を振った。
「ありがたい話だが…断らせてもらう」
「え…?」
その言葉にネロの表情は凍った。
添えられた手を優しくどけて、ジャックは正面からネロを見据えた。
「俺にキミは必要ない。俺よりもキミに相応しい人がいるはずだ。キミは…その人の所に行った方がいい」
「だ、旦那様…?」
「その呼び方も止めてくれ。俺はキミの旦那様じゃない…悪いが、出て行ってくれ」
「……」
「頼む…」
段々と辛そうな表情へなっていくジャックをネロは悲しそうな目で見つめ、何か言おうとしたが無言で立ち上がると、軽く頭を下げて静かに部屋から出て行った。
ネロのいなくなった部屋でジャックは窓を見つめていた。カーテンは以前、足をひっかけて壊してしまいそれ以来日光が入りっぱなしだった。しかし、今は薄紫色のカーテンがかけられており、日の光を優しく遮断してくれていた。
「…これでいい。これでいいんだ」
誰ともなしに呟く。
俺は誰かに愛される資格なんて無いのだ。
−何故、斬らなかった−
−……−
−助けてやったつもりだろうが、他の処刑人がやるだけだぞ−
−……ッ!−
−無意味なんだよ、お前のやった事は。それでお前まで首を斬られるんだから、ザマぁないな?−
−……−
「…ッ!!」
ジャックは飛び起きた。脳がこれ以上見る事を拒否し、ジャックを覚醒させたのだ。しかし、夢の中とはいえあれはジャックが体験したまぎれもない事実なのだ。
ジャックはかつてとある教団勢力下で処刑人の任を任されていた。そこである罪人の処刑を命じられたが、ジャックには出来なかった。
罪人は無実の老人だった。老人はたまたま魔物娘に貰った魔界産の物を持っていた。ただそれだけの理由だった。
老人に罪は無い。
ジャックにそんな老人を処刑する事など出来なかった。それが怒りを買う事となり、ジャックは処刑されそうになったところを逃げ出したのだ。それ以来、彼の首には賞金がかかっていた。
老人を助ける事は出来ず、自分の命すら危うく失いかけた。
ジャックはそれ以降、人と関わる事を避けて生きてきた。このゴミ屋敷で暮らしていたのもそういった理由からだ。
窓の外には月が昇り、夜になっていた事を教えてくれている。
不意に、喉の奥から何かが上がり、ジャックは口をおさえた。そして、そのままベッドから起き上がり、洗面台へと向かいそして、吐き出した。
口の中に独特の嫌なものが広がり、息が出来ず、喉が焼けるように痛い。涙目になりなりながら、ジャックはそのまま吐き続けた。朝から何も食べていなかったから、口から出るのは胃液と白い泡のようなものだけだった。
「はぁ…はぁ…」
胃が空になり、何も出なくなるとジャックはそのまま倒れ込んだ。
「う、ぐ…!」
立ち上がろうにも体が言う事を聞かず、力も入らない。何かをつかもうと伸ばした手が何処かに触れたが、つかむ事は出来なかった。
胃の中の物だけでなく、もしかしたら魂と呼べる物すら吐き出したのではないだろうか。ジャックはそんな事を思いながら暗黒へ落ちていきそうになる。
不意に、扉が開き、何かが男の体を優しく立ち上がらせた。
「旦那様!しっかり!旦那様!」
ネロは倒れたジャックを介護するようにベッドへと運び、その身体をゆっくりと横たえた。そこには静かに、冷静に奉仕するショゴスの姿は無い。
「キ、キミは…どうして…?」
「その事は後です、旦那様!さ、どうぞこれをお飲みになってください!」
そう言うとネロは何処からかコップを取りだすとジャックの口元に優しく運んだ。コップの中身がジャックの口に流し込まれると、ジャックはまるで生き返ったような感じがした。
とろみがあり、ツーンとした刺激がありながらも体に馴染むような甘い味に体は喜び、細胞が甦る。さっきまでの死ぬような苦しみは何処かへ消え、まるで今この瞬間に生まれたような清々しい気持ちになっていた。
その液体を飲み干すと、ジャックは先ほどまでの容体が嘘のように回復した。体中に溢れるまるで生きる意志のようなものを確かめるように手を握り、ジャックはネロに向き直った。
「…これは?」
「魔界から取り寄せた薬でございます。旦那様の体は重度の栄養失調、睡眠不足から来る疲労でボロボロの状態でした」
「……」
ジャックの体は既に健康そのものだ。しかし、それでもネロは心配そうにジャックを見つめている。
彼女は自分を心配してくれている。それに嘘偽りはないようだ。ジャックは急に照れくさくなり、それを隠すように口を開いた。
「どうして、戻ってきた…?」
「ネロの旦那様は貴方だけです。旦那様以上の方をネロは思いつきません」
「……ずっと家の外にいたのか」
その言葉にネロはコクリと頷いた。追い出してからだいぶ経つ。すっかり夜となった今の今まで彼女は外にいたのだ。
ジャックの中に罪悪感が湧き上がる。
「すまなかった…でかい口を叩いておきながら…俺は」
「旦那様」
ネロベッドに身を乗り出し、優しくジャックを抱き締めた。ジャックは一瞬、体を固くしたが力を抜きネロに身を委ねる事にした。
「何も言わないでください、旦那様」
「……すまない」
「謝らないでください。これはネロが好きでやっている事ですから」
しばらく、ネロはジャックを抱き締めたままだった。ジャックも特に抗うつもりも無く、ただネロに全てを任せていた。こうやって抱き締められていると幼い頃、母親に抱き締められていた事を思い出す。
「キミは不思議だな。何て言えばいいのかな…すごく落ち着くんだ」
「ふふふ、ありがとうございます」
柔らかくどこかヒンヤリとしたネロの体は気持ち良い。給仕服もジャックを受け止めるかのようにゆっくりと包み込んでくれている。その身体を作っている混沌のようなスライムのような何かがジャックの下半身を覆い、まるで布団のような安心感を与えてきた。顔に当たっている胸が呼吸をするたびにジャックを支えていた。
女性の象徴でもあるその胸は大き過ぎず、かといって小さくも無い。優しく頭を撫でてくる手が心地良い。鼻をくすぐるようなどこか甘酸っぱい、優しい香りが脳をリラックスさせる。
「む…」
「あら…?」
不意に、ジャックは自分のモノが熱を持ち、固くなってきているのを感じた。
慌ててそれを隠そうとしたものの、ネロに気付かれたようだ。ジャックは照れくさくなり、顔を反らす。
「……すまない」
「謝らないでください。それは旦那様が元気になった証拠です。ふふふ…」
ネロはそう言いながらゆっくりとジャックの股間をまさぐり始めた。その表情に熱がこもり、目をトロンとさせながら掌でさするように撫でまわし、ジャックの顔にそっと唇を近付ける。
「旦那様のココ…こんなになって♪ふふ、それもネロにお任せください…」
ベッドに横になったジャックに跪くようにネロは股間に顔を寄せ、肉棒の先端に口を近付けると先端に軽くキスをした。
「ん、はぁあ……ふふ」
ネロは熱い息を吐き、ついばむようにキスをする。そして、舌を出すと先端から滲むカウパー液を舐めすすり、肉棒に舌を絡ませる。
「御立派ですわ、旦那様♪ちゅ…んぷ…」
「う、ネロ…!」
恍惚の表情を浮かべるジャックの声に乗せられたように、ネロの動きは加速する。絡ませた舌を上下に動かしたり、舌で尿道をほじくるように舐め回す。
鉄のように硬く、溶岩のように熱い肉棒に魅せられたネロの顔は淫らという言葉では表現できないものだった。頬張ったまま口の端から涎を垂らし、頭を激しく上下に動かすネロは雌犬そのものだった。肉棒を咥えたまま、ネロはにんまりと笑い上目づかいにジャックの反応を楽しんでいる。
「んふふ…♪きもひいいれふか?
「あぁ、く…!最高だ」
その言葉で更にネロは気を良くしたのか、淫欲と狂気の混じり合った表情を浮かべただただジャックへの奉仕に夢中になった。
強すぎる快感にジャックの腰は引くが、ネロはそれを許さず唇で締めつけて逃がさないという意思表示を見せる。唾液とカウパー液の混じり合う音、頬の粘膜に肉棒を擦り付けながら、ぬらぬらとした舌を肉棒に絡みつかせ射精へと促すその動きにジャックは耐え切れそうになかった。
「ネ、ネロ…俺、そろそろ」
不意にネロの口内でジャックが膨張した。そして、ネロの喉に大量の精液が浴びせられた。
「ん!ん、んんんんん♪」
突然の射精にネロは驚いたように目を開いたが、すぐにウットリと目を細めると唇をすぼめ決して放さないと肉棒を締め、精を受け止めた。痙攣するたびに溢れてくる精液をネロは喉を鳴らしながら飲み込んでいく。
「あは♪旦那様の精…とても美味です♪ネロは、ネロは幸せ者でございますぅ…♪」
苦く、生臭い異臭を放つ精液を飲み干すとネロは唇を放し嬉しそうに微笑んだ。スライムのように不定形の体が喜びと興奮、欲情にブルリと震える。ジャックへの口の奉仕で体が熱く、疼きが収まらない。
「ネロ…」
「え?あ…」
射精したばかりだというのにジャックのモノはまだ硬さを持ち、ドクンドクンと脈打っていた。それを見て、ネロの瞳に淫欲の炎がさらに強く眩しく灯り、自分を求めて凶暴なまでに勃起した肉棒から目を離せなくなっていた。
「旦那様、嬉しいです♪ネロでこんなに興奮していただけるのですね」
「う…すまない」
「すぐ謝るのは旦那様の悪い癖ですよ?ネロは嬉しいのですから、ね?謝らないでください」
ネロは子どもをたしなめるように優しく微笑むと、ゆっくりとジャックに跨るように馬乗りになった。それと同時に、給仕服がまるで蝋燭のように溶け、その下からネロの裸体が露わになった。
青い肌は濡れたように光っており、大きな果実のような乳房はお椀のように盛り上がってボリュームがある。腰はキュッと締まっており、肉付きの良い太ももと尻がジャックの欲望という炎に油を注ぐ。
「さ、旦那様…どうぞ御体を楽に。全て、ネロにお任せ下さい♪」
ネロはジャックの肉竿を握ると、ゆっくりと腰を下ろした。
「んん♪あ、あぁぁ…」
粘膜に触れ、膣肉をかき分けて奥へと進んでくる肉の感触にネロは思わず声を上げ、胸を反らして喘いだ。そして、ジャックの肉棒を根元まで飲み込むとその身体が喜びに震えた。
「ふふふ…旦那様のすごぉいぃ♪」
ネロはそう呟きながら小さく尻を揺らしていたが、湧き上がる快楽を感じると、徐々に動きが大きくなっていく。
「ネロ…!」
「んひゃあ!だ、旦那様ぁ!あ、あぁぁ」
ジャックが手を伸ばし、すっかり硬くなった紺色の乳首を下から摘みとネロの体がビクンと跳ねた。そのまま指を乳房に沈ませ、荒々しく揉みしだく。乱暴に揉まれ、手の中で揉まれるがままに形を変える乳房はジャックの手を受け入れていた。
「あぁ、旦那様!それ、それいいぃぃ!」
胸を弄られる快感に煽られたようにネロはさらに激しく腰を動かす。肉棒を軸にして、ネロは体をくねらせる。その淫らなダンスは見ているジャックの目を楽しませた。
「ひうぅ!旦那様!あ、旦那様ぁぁぁ♪」
ジャックを呼びながらネロは自分で胸を揉み、夢中になって腰を振った。肉棒を深く咥え込んだまま、腰を前後左右に揺すりたて、まるで絞るように締め上げる。
口から涎を垂らし、喘ぎ声を上げるネロの姿に物静かなメイドの姿は無い。まるで今まで待てをされて焦らされてきた雌犬のようだった。
されるがままなのは性に合わないと思ったジャックはネロを下から腰を突き上げる。秘所を貫かれ、ジャックの動きに何かをこらえるようにぶるぶると首を振った。
「んあぁ!旦那様は、あ!う、動いてはダメぇぇ♪ネロが、ネロがするのぉぉ♪」
そう言いながら、ネロは器用にジャックの動きに合わせるように腰を上下する。胸が動きに合わせて揺れ、打ちつけられるたびに歪む尻、快楽に酔いしれるネロがジャックはたまらなく愛おしかった。
「ぐぅぅ!旦那様、ネロはもう!んいぁ、あぁぁぁぁッ!!」
ネロが膣肉を収縮させ、肉棒を絞り上げた。ジャックの勃起がネロの中で一段と大きく膨れ上がる。
「ネロ…!ネロ!ッあァ!」
「来て!旦那様ぁ!ネロが全て!全て受け止めますからぁぁぁ♪」
「ぐ、うぅぅー!」
「は、あ!あああああぁぁあぁッ!!」
ジャックが唸ると同時に、大量の精液がネロの中に吐き出された。精液が噴射するたびにネロの体はビクンと痙攣し、恍惚の笑みを浮かべている。軽く腰を揺らすと結合部から精液と愛液の混じり合った物が垂れ落ちる。
絶頂の余韻と疲れからジャックとネロは抱きあい、お互いの口内を貪るように口づけを交わした。舌を絡ませ、唾液を交換しそれを飲み込む。しばらくそうしていたが、ネロは荒い息を吐きながら上体を起こし、結合を解いた。ぽっかりと開いた膣からはまるで塊のような精液がこぼれおち、ネロの太ももを白く染め上げる。
「旦那様ぁ…今すぐ旦那様を綺麗にさせていただきますね♪」
そう言うと、ネロは白濁液で汚れた肉棒に口を近づけ、根元に指を添えると深々と咥え込んだ。
「むぐ…!ネロ、そこまでしなくても…!」
「んんん、いいんれふ♪」
射精し終えて敏感になっている先端に唾液で濡れた舌と唇がまとわりつき、しゃぶり、舐め回す。その強烈な快楽に、ジャックは呻き声を上げるのが精一杯だった。
「んはぁ♪これ、しゅきぃぃ♪あむ…んふ、ん…」
うっとりとした表情で肉棒を舐め回し、ネロは綺麗にしていった。根元まで咥えたかと思うと、ハーモニカを吹くように舌をなぞらせる。時折、その細い首が動いて精液を飲み干しているのが良く分かった。
再び硬くなっている事をジャックは感じ、ネロは頭を激しく動かし新しい精液をねだるかのように肉棒に吸いつく。
「ッ!ぅああぁ…!」
「ん!んぐ、んんんんんん♪」
結局、ジャックはこの日、3度目の射精をした。
ネロは喉を叩くような勢いの射精に驚きつつも、決して口を離さずそのまま飲み込んだ。飲みきれなかった精液を口から溢れさせながら、ネロは恍惚の表情を浮かべた。
「ネロ…ありがとう」
行為を終え、2人はベッドの上で抱きあいながら横になっていた。ベッドはネロがいつの間にか何処からか調達してきた紫色の物であり、以前のベッドはどこに行ったのか。気にはなったが、どうでもよかった。
ジャックの言葉にネロは首を傾げた。
「?えっと、どうしたのでしょうか…?」
「いや、助けられたのに礼の一つも言っていなかった、と思ってね」
「ふふふ、旦那様。良いのです♪ネロは旦那様に仕える事が出来て幸せですから」
嬉しそうに笑い、ジャックの胸に頬ずりをしてくるネロの頭を撫でながら、ジャックは下半身に目をやった。
ネロの腰下に広がる紫色の混沌がジャックの下半身をすっかり包み込み、蠢いている。
しかし、それによる不快感は無い。むしろ、安らぎのようなものをジャックは感じていた。
心地良い混沌。それも良いのかもしれない。
そんな事を思いながら、ジャックはこの愛おしく何よりも大切な混沌のメイドをより強く抱きしめ、ゆっくりと眠りに落ちて行った。
だから、ネロの言葉を聞く事が出来なかった。
これで、ネロは旦那様のモノ。そして、旦那様はネロのモノ。誰にも渡しませんし、旦那様はもう逃げられませんよ……うふ、うふふふふふ♪
終わり
15/10/12 00:04更新 / ろーすとびーふ泥棒